非可算集合

同義語:uncountable set非可算無限集合

概要

非可算集合(uncountable set)とは、有限でも可算無限でもない集合、すなわち自然数全体 $\mathbb{N}$ との間に全単射がなく、有限でもない集合のことである。空でない集合 $A$ が非可算であることは、$\mathbb{N}$ から $A$ へのどの写像も全射でないこと、元を $a_0,a_1,a_2,\dots$ と並べると必ず取りこぼしが出ることと同値である。実数全体 $\mathbb{R}$、2 点以上を含む区間、無理数全体、冪集合 $\mathcal{P}(\mathbb{N})$、Cantor 集合は非可算であり、非可算集合を含む集合や、非可算集合から可算集合を除いた集合も非可算である。一方、非可算集合の部分集合や共通部分は可算になりうる。$\mathbb{R}$ の非可算な部分集合がすべて $\mathbb{R}$ と対等かを問うのが連続体仮説である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 集合, 写像, 全単射, 可算集合, 実数

定義

本記事では 可算集合 の記事の用語に従う。自然数 全体の集合を $\mathbb{N}=\{0,1,2,\dots\}$ と書き、集合 $A$ が 可算無限 であるとは $\mathbb{N}$ から $A$ への 全単射 が存在することをいい、可算 であるとは $A$ が 有限集合 であるか可算無限であることをいう。

非可算集合の定義

集合 $A$ が 非可算(uncountable)であるとは、$A$ が可算でないこと、すなわち $A$ が有限でもなく可算無限でもないことをいう。非可算な集合を 非可算集合(uncountable set)という。

「可算」を可算無限の意味に限り、有限または可算無限であることを「高々可算」と呼ぶ流儀もある(可算集合 の記事の注意「用語の流儀」)。どちらの流儀でも、非可算とは「有限でも可算無限でもない」ことであり、意味は変わらない。非可算集合は有限でないので 無限集合 である。
非可算性は、写像が存在しないことで言い換えられる。可算集合 の記事の命題「単射・全射による特徴づけ」によれば、空でない集合 $A$ について、$A$ が可算であることと、$A$ から $\mathbb{N}$ への 単射 が存在すること、$\mathbb{N}$ から $A$ への 全射 が存在することは同値である。空集合は有限なので非可算でない。したがって次が成り立つ。

写像による言い換え

集合 $A$ について、次は同値である。

  1. $A$ は非可算である。
  2. $A$ から $\mathbb{N}$ への単射は存在しない。
  3. $A\neq\emptyset$ であり、$\mathbb{N}$ から $A$ への全射は存在しない。
    3 は「$A$ の元を $a_0,a_1,a_2,\dots$ と(重複を許して)並べると、どう並べても取りこぼしが生じる」ことを意味する。$A$ が非可算であることを示すには、任意の写像 $h\colon\mathbb{N}\to A$ に対して $h$ の 像(写像) に属さない $A$ の元を作ればよい。

濃度 の言葉では、$A$ が可算であることは $|A|\le\aleph_0$ と書かれ、非可算であることはその否定である。選択公理(実は 可算選択公理)を仮定すれば、非可算集合 $A$ は可算無限な部分集合をもち $\aleph_0<|A|$ となるが、選択公理を仮定しなければこれは一般には証明できない(rem-uncountable-set-choice)。

直感

可算無限集合は、元に $0,1,2,\dots$ と番号を付けて一つずつ数え上げられる無限集合である。非可算集合は、無限でありながら、どのような番号の付け方をしても数え上げきれない集合である。有理数 全体は数直線上に隙間なく詰まっているように見えるが数え上げられ(可算)、実数 全体は数え上げられない。Cantor が示したこの違いは、無限にも大きさの違いがあることの最初の例である。
非可算性を示す方法の中心は「どんな列 $x_0,x_1,x_2,\dots$ が与えられても、そのどれとも異なる元を作る」ことである。対角線論法 では $n$ 番目の元と $n$ 番目の桁で違えることでそうし(可算集合 の記事の定理「実数全体の非可算性」)、本記事の thm-uncountable-set-interval では、区間を 3 等分して $n$ 番目の点を含まない側に移ることを繰り返してそうする。どちらも、列の各項を 1 つずつ避ける操作を無限回行い、最後に残る元を取り出す点が共通である。

例と反例

代表的な非可算集合
  1. 実数全体 $\mathbb{R}$、および 2 点以上を含む任意の 区間($[0,1]$、$(0,1)$、$[0,\infty)$ など)は非可算である(thm-uncountable-set-interval、cor-uncountable-set-reals)。
  2. $\mathbb{N}$ の 冪集合 $\mathcal{P}(\mathbb{N})$ と、$0$ と $1$ の無限列全体 $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ は非可算である(可算集合 の記事の系「自然数の冪集合の非可算性」)。自然数の無限列全体 $\mathbb{N}^{\mathbb{N}}$ も、$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ を部分集合として含むので非可算である(prop-uncountable-set-superset-difference の 1)。
  3. 無理数 全体 $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ と 超越数 全体は非可算である(cor-uncountable-set-reals)。
  4. Cantor集合 は非可算である(prop-uncountable-set-cantor)。
  5. $\mathbb{R}^n$($n\ge1$)や 複素数 全体 $\mathbb{C}$ は $\mathbb{R}$ と対等な部分集合(1 つの座標軸、実軸)を含むので非可算である。
  6. 任意の集合 $X$ について、冪集合 $\mathcal{P}(X)$ への $X$ からの全射は存在しない(Cantorの定理、可算集合 の記事の定理「冪集合への全射の不存在」)。したがって $\mathcal{P}(\mathbb{R})$ や、$\mathbb{R}$ から $\{0,1\}$ への写像全体は、$\mathbb{R}$ よりも真に大きい非可算集合である。
反例:稠密だが可算な集合

有理数全体 $\mathbb{Q}$ は、任意の 2 つの実数 $x< y$ の間に元をもつ($\mathbb{R}$ で 稠密)が、可算無限である(可算集合 の記事の例「有理数全体の可算性」)。代数的数 全体(ここでは、$0$ でない有理数係数の多項式の根となる実数全体)も、$\mathbb{Q}$ を含むので $\mathbb{R}$ で稠密であり、可算である(可算集合 の記事の補足、Rud76 Exercise 2.2。選択公理を使わない証明を cor-uncountable-set-reals の 3 の証明で与える)。満たす性質:無限集合で、$\mathbb{R}$ で稠密である。満たさない性質:非可算である。破る含意:「$\mathbb{R}$ で稠密な集合 ⇒ 非可算」は成り立たない。「隙間なく詰まっている」ことと「数え上げられない」ことは別の性質である。

反例:区間を含まない非可算集合

Cantor集合 $C$ は非可算である(prop-uncountable-set-cantor)が、2 点以上を含む区間を部分集合にもたない。実際、prop-uncountable-set-cantor の記号で $C\subset C_n$ であり、$C_n$ は長さ $3^{-n}$ の $2^n$ 個の閉区間の和集合なので、区間 $[p,q]\subset C$($p< q$)があれば、有限個の区間で覆われた区間の長さは覆う区間の長さの和以下であることから $q-p\le2^n3^{-n}=(2/3)^n$ がすべての $n$ で成り立ち、$q-p\le0$ となって矛盾する。同じ評価から、$C$ は長さの和がいくらでも小さい有限個の区間で覆える(Lebesgue測度 が $0$ である)。満たす性質:非可算である。満たさない性質:2 点以上を含む区間を含む。破る含意:「$\mathbb{R}$ の非可算な部分集合は区間を含む」「長さ $0$ の集合(Lebesgue 測度 $0$ の集合)は可算である」はともに成り立たない。無理数全体も、区間を含まない非可算集合の例である(どの区間も有理数を含むので)。

反例:非可算性が保たれない操作

可算集合の全体は、部分集合・像(写像)・有限個の 直積・可算個の 和集合(可算選択公理のもとで)をとる操作で閉じている(可算集合 の記事の性質の節)。非可算集合の全体は、このうち部分集合・像をとる操作では閉じておらず、共通部分・差をとる操作でも閉じていない。一方、有限個の直積(非可算集合 $A,B$ と $b_0\in B$ について $a\mapsto(a,b_0)$ は $A$ から $A\times B$ への単射)・和集合・上位集合・可算集合の除去では閉じている(下の段落)。

  1. 部分集合:$\mathbb{N}\subset\mathbb{R}$ であり、非可算集合の部分集合は可算でありうる。
  2. 共通部分:$[0,1]$ と $[2,3]$ はともに非可算であるが、共通部分 は空集合である。減少列 $(0,1)\supset(0,1/2)\supset(0,1/3)\supset\cdots$ の各項は非可算であるが、共通部分 $\bigcap_{n\ge1}(0,1/n)$ は空集合である。
  3. 像:定数写像 $\mathbb{R}\to\{0\}$ による像は 1 点である。
  4. 差:$\mathbb{R}\setminus(0,\infty)=(-\infty,0]$ は非可算であるが、$\mathbb{R}\setminus(\mathbb{R}\setminus\mathbb{N})=\mathbb{N}$ は可算である。非可算集合から非可算集合を取り除くと可算になりうる。
    一方、非可算集合を含む集合は非可算であり、非可算集合から可算集合を取り除いても非可算である(prop-uncountable-set-superset-difference)。したがって、非可算集合を少なくとも 1 つ含む集合族の和集合は、和をとる個数によらず非可算である。

性質

以下の証明では選択公理を使わない。

上位集合と可算集合の除去

$A$ を非可算集合とする。

  1. $A\subset B$ ならば $B$ は非可算である。
  2. $C$ が可算集合ならば、差集合 $A\setminus C$ は非可算である。
  1. $B$ が可算なら、可算集合 の記事の命題「部分集合の可算性と有限性」の 1 により、その部分集合 $A$ も可算となり、仮定に反する。
  2. $A\setminus C$ が可算であると仮定する。$A\cap C$ は可算集合 $C$ の部分集合なので可算である(同じ命題)。$A=(A\setminus C)\cup(A\cap C)$ は 2 つの可算集合の和集合なので、可算集合 の記事の定理「可算個の可算集合の和集合」の後半(有限個の和。可算選択公理は要らない)により可算であり、仮定に反する。$\square$

次の定理は、実数の区間が非可算であることを、小数表示を使わずに示す。証明は Cantor が 1874 年に与えた区間の入れ子による議論(Can74)と同じ発想である。実数の性質としては、上に有界な空でない部分集合が 上限 をもつこと(実数の連続性)だけを使う。

区間の非可算性

$a< b$ を実数とする。任意の写像 $h\colon\mathbb{N}\to[a,b]$ に対し、$h$ の像に属さない $x\in[a,b]$ が存在する。したがって閉区間 $[a,b]$ は非可算である。

閉区間の列 $I_n=[a_n,b_n]$($a_n< b_n$)を再帰的に定める。$I_0:=[a,b]$ とする。$I_n$ が定まったとき、$\ell_n:=b_n-a_n>0$ とおき、
$$L_n:=\Bigl[a_n,\ a_n+\frac{\ell_n}{3}\Bigr],\qquad R_n:=\Bigl[b_n-\frac{\ell_n}{3},\ b_n\Bigr]$$
とする。$a_n+\ell_n/3< b_n-\ell_n/3$ なので $L_n$ と $R_n$ は交わらず、$h(n)$ はそのうち高々一方にしか属さない。$h(n)\notin L_n$ なら $I_{n+1}:=L_n$、$h(n)\in L_n$ なら $I_{n+1}:=R_n$ と定める。いずれの場合も $I_{n+1}\subset I_n$、$h(n)\notin I_{n+1}$ であり、$I_{n+1}$ の長さは $\ell_n/3>0$ である。各段の選び方は規則で一意に決まっているので、この再帰に選択公理は要らない。
$I_{n+1}\subset I_n$ より $(a_n)$ は単調非減少、$(b_n)$ は単調非増加である。任意の $n,m$ について $a_n\le b_m$ である。実際、$n\le m$ なら $a_n\le a_m< b_m$、$n>m$ なら $a_n< b_n\le b_m$ である。とくに $\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ は空でなく $b_0$ で上に有界なので、上限 $x:=\sup_n a_n$ が存在し、各 $m$ について $b_m$ は上界だから $a_m\le x\le b_m$、すなわち $x\in I_m$ である。
$x\in I_0=[a,b]$ である。任意の $n$ について $x\in I_{n+1}$ かつ $h(n)\notin I_{n+1}$ なので $x\neq h(n)$ である。よって $x$ は $h$ の像に属さない。
したがって $\mathbb{N}$ から $[a,b]$ への全射は存在せず、$[a,b]\neq\emptyset$ なので、rem-uncountable-set-maps により $[a,b]$ は非可算である。$\square$

実数・無理数・超越数の非可算性
  1. $\mathbb{R}$、および 2 点以上を含む任意の区間は非可算である。
  2. 2 点以上を含む任意の区間 $J$ について、$J$ に属する無理数の全体 $J\setminus\mathbb{Q}$ は非可算である。とくに無理数全体 $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ は非可算である。
  3. 超越数である実数の全体は非可算である。
  1. 区間 $J$ が相異なる 2 点 $a< b$ を含めば、区間であることから $[a,b]\subset J$ である。thm-uncountable-set-interval と prop-uncountable-set-superset-difference の 1 により $J$ は非可算である。$\mathbb{R}$ 自身も区間である。
  2. $\mathbb{Q}$ は可算なので(可算集合 の記事の例「有理数全体の可算性」)、1 と prop-uncountable-set-superset-difference の 2 により $J\setminus\mathbb{Q}$ は非可算である。
  3. まず、実数の代数的数の全体 $K$ が可算であることを、選択公理を使わずに示す。有理数係数の多項式は係数の分母を払えば整数係数になるので、$K$ は $0$ でない整数係数の多項式の実根となる実数の全体である。$\zeta\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{N}$ を 可算集合 の記事の例「整数と偶数の番号付け」の 3 の全単射 $\mathbb{N}\to\mathbb{Z}$ の逆写像とし、次数 $d$ の多項式 $p(t)=c_0+c_1t+\dots+c_dt^d$($c_d\neq0$)に自然数の有限列 $(\zeta(c_0),\dots,\zeta(c_d))$ を対応させ、これを同記事の例「自然数の有限列の全体」の単射 $\Psi$ で $\mathbb{N}\times\mathbb{N}$ に送り、さらに同記事の命題「自然数の対の番号付け」の全単射 $\pi\colon\mathbb{N}\times\mathbb{N}\to\mathbb{N}$ で $\mathbb{N}$ に送る(合成 $\pi\circ\Psi$ は単射である)。こうして $0$ でない整数係数の多項式の全体から $\mathbb{N}$ への単射 $\iota$ が一つの規則で定まる。$x\in K$ に対し、$x$ を根にもつ $0$ でない整数係数の多項式のうち $\iota$ の値が最小のもの $p_x$ をとる($\mathbb{N}$ の空でない部分集合の最小元なので一意に定まる)。$p_x$ は $0$ でないので実根は有限個であり、それらを小さい順に並べたとき $x$ が $i_x$ 番目($0$ から数える)であるとする。写像 $x\mapsto(\iota(p_x),i_x)$ は $K$ から $\mathbb{N}\times\mathbb{N}$ への単射である($\iota(p_x)$ から $p_x$ が、さらに $i_x$ から $x$ が復元できる)。$\mathbb{N}\times\mathbb{N}$ は可算なので(同記事の系「有限個の直積の可算性」)、系「像と単射による可算性の伝播」の 2 により $K$ は可算である。どの段階も規則で一意に決まっているので、選択公理は要らない(同記事の補足では $K$ の可算性を可算個の可算集合の和集合から導いているが、その定理の証明は可算選択公理を使う)。超越数である実数の全体は $\mathbb{R}\setminus K$ なので、prop-uncountable-set-superset-difference の 2 により非可算である。$\square$

3 は、具体的な超越数を 1 つも示さずに超越数の存在を示す Cantor の論法である(Can74)。2 と 3 は「ほとんどすべての実数は無理数であり、超越数である」という意味にもとれる。
Cantor集合 は、区間を含まない非可算集合の代表例である。ここでは次のように定める。$n\in\mathbb{N}$ と $\{0,2\}$ の元の有限列 $a=(a_0,\dots,a_{n-1})$ に対し、$t_a:=\sum_{k=0}^{n-1}a_k3^{-(k+1)}$ とおいて
$$C_n:=\bigcup_{a\in\{0,2\}^n}\bigl[t_a,\ t_a+3^{-n}\bigr],\qquad C:=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}C_n$$
とする($C_0=[0,1]$)。$[t_a,t_a+3^{-n}]$ は $[t_a,t_a+3^{-(n+1)}]$($a_n=0$)と $[t_a+2\cdot3^{-(n+1)},t_a+3^{-n}]$($a_n=2$)に分かれるので、$C_{n+1}$ は $C_n$ の各閉区間から中央の $3$ 分の $1$ の開区間を取り除いたものであり、$C$ は通常の中央 $3$ 分の $1$ を取り除く構成による Cantor 集合である。

Cantor集合の非可算性

写像 $\varphi\colon\{0,1\}^{\mathbb{N}}\to\mathbb{R}$、$\varphi(s):=\sum_{k=0}^{\infty}2s_k\,3^{-(k+1)}$ は、$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ から $C$ への単射である。したがって $C$ は非可算である。

各項は $0$ 以上で、$\sum_{k\ge n}2\cdot3^{-(k+1)}=3^{-n}$(等比級数)により部分和は上に有界なので、級数は収束する。
$\varphi(s)\in C$ であること:$n$ を固定し、$a:=(2s_0,\dots,2s_{n-1})\in\{0,2\}^n$ とおく。$\varphi(s)=t_a+r_n$、$r_n:=\sum_{k\ge n}2s_k3^{-(k+1)}$ と書け、$0\le r_n\le\sum_{k\ge n}2\cdot3^{-(k+1)}=3^{-n}$ なので $\varphi(s)\in[t_a,t_a+3^{-n}]\subset C_n$ である。$n$ は任意なので $\varphi(s)\in C$ である。
単射であること:$s\neq s'$ とし、$s_k\neq s'_k$ となる最小の $k$ をとる。$s_k=1$、$s'_k=0$ としてよい。$k$ より前の項は一致するので
$$\varphi(s)-\varphi(s')=2\cdot3^{-(k+1)}+\sum_{j>k}2(s_j-s'_j)3^{-(j+1)}\ge2\cdot3^{-(k+1)}-\sum_{j>k}2\cdot3^{-(j+1)}=2\cdot3^{-(k+1)}-3^{-(k+1)}>0$$
であり、$\varphi(s)\neq\varphi(s')$ である。
$C$ が可算なら、単射 $\varphi\colon\{0,1\}^{\mathbb{N}}\to C$ により $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ も可算となる(可算集合 の記事の系「像と単射による可算性の伝播」の 2)。これは $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ が非可算であること(同記事の系「自然数の冪集合の非可算性」)に反する。$\square$

実際には $\varphi$ は $C$ への全単射であり($3$ 進展開の桁を $0$ と $2$ だけで書ける実数が $C$ の元である)、$C$ は $\mathbb{R}$ と対等である。本記事では非可算性だけを使うので、この事実の証明は省く。
実数の非可算な部分集合は、数直線上のどこかに集積しなければならない。

実数の非可算部分集合の集積点

$A\subset\mathbb{R}$ が非可算ならば、ある整数 $m$ について $A\cap[m,m+1)$ は無限集合であり、$A$ は 集積点 をもつ。

すべての整数 $m$ について $A_m:=A\cap[m,m+1)$ が有限であると仮定する。$A_m$ の元を小さい順に $x_{m,0}< x_{m,1}<\dots< x_{m,k_m-1}$ と並べる(有限個の実数は大小順に一通りに並ぶ)。$x\in A$ に対し、$m:=\lfloor x\rfloor$(床関数)とすると $x\in A_m$ であり、$x=x_{m,i}$ となる $i$ がただ 1 つ定まる。写像 $x\mapsto(m,i)$ は $A$ から $\mathbb{Z}\times\mathbb{N}$ への単射である($(m,i)$ から $x=x_{m,i}$ が復元できる)。$\mathbb{Z}\times\mathbb{N}$ は可算なので(可算集合 の記事の系「有限個の直積の可算性」)、同記事の系「像と単射による可算性の伝播」の 2 により $A$ は可算となり、仮定に反する。この議論は各 $A_m$ の並べ方を大小順で一斉に決めているので、選択公理を使わない。
よってある $m$ について $A_m$ は無限集合である。この $m$ を 1 つ固定し、2 等分を繰り返して集積点を作る。閉区間の列 $J_k=[u_k,v_k]$ を再帰的に定める。$J_0:=[m,m+1]$ とする。$J_k$ が定まり $A\cap J_k$ が無限集合であるとき、$c_k:=(u_k+v_k)/2$ とおき、$A\cap[u_k,c_k]$ が無限集合なら $J_{k+1}:=[u_k,c_k]$、そうでなければ $J_{k+1}:=[c_k,v_k]$ と定める。後者の場合、$A\cap J_k=(A\cap[u_k,c_k])\cup(A\cap[c_k,v_k])$ であり、有限集合 2 つの和集合は有限なので、$A\cap[c_k,v_k]$ は無限集合である。したがって、いずれの場合も $J_{k+1}\subset J_k$、$J_{k+1}$ の長さは $2^{-(k+1)}$ であり、$A\cap J_{k+1}$ は無限集合である($A\cap J_0\supset A_m$ は無限集合)。各段の選び方は規則で一意に決まっているので、この再帰に選択公理は要らない。
thm-uncountable-set-interval の証明と同じく、$(u_k)$ は単調非減少、$(v_k)$ は単調非増加で、任意の $k,l$ について $u_k\le v_l$ であるから、$p:=\sup_k u_k$ が存在し、すべての $k$ について $p\in J_k$ である。$\varepsilon>0$ とし、$2^{-k}<\varepsilon$ となる $k$ をとる。$p\in J_k$ で $J_k$ の長さは $2^{-k}$ なので $J_k\subset(p-\varepsilon,p+\varepsilon)$ である。$A\cap J_k$ は無限集合なので $p$ 以外の元を含み、それは $(p-\varepsilon,p+\varepsilon)$ に属する $p$ と異なる $A$ の元である。よって $p$ は $A$ の集積点である。$\square$

有界な無限集合が集積点をもつことは Bolzano–Weierstrassの定理 の集合の形であるが、点列の形の定理を $A_m$ に適用するには $A_m$ から相異なる点の列を取り出す必要があり、それには一般に可算選択公理が要る(rem-uncountable-set-choice)。上の 2 等分の議論はこれを避けている。
より強く、$A\subset\mathbb{R}$ が非可算なら、$A$ の点のうち「その任意の近傍が $A$ の非可算個の点を含む」という性質(凝集点であること)をもたないものは高々可算個である(Rud76 Exercise 2.27)。$\mathbb{Z}$ のような可算集合には集積点をもたないものがあるので、この命題の仮定「非可算」は「無限」に弱められない。

選択公理との関係

可算選択公理を仮定すれば、任意の無限集合は可算無限な部分集合をもつ(Jech73 第 2 章)。とくに非可算集合 $A$ について $\mathbb{N}$ から $A$ への単射があり、全単射がないので、濃度の意味で $\aleph_0<|A|$ である。選択公理を除いた $\mathsf{ZF}$ が無矛盾ならば、可算無限な部分集合をもたない無限集合が存在する $\mathsf{ZF}$ のモデルがある(Jech73 第 10 章)。そのような集合は有限でも可算無限でもないので非可算であるが、$\aleph_0\le|A|$ を満たさない。したがって「非可算 ⇒ 可算無限な部分集合をもつ」は $\mathsf{ZF}$ だけでは証明できない。本記事の prop-uncountable-set-superset-difference、thm-uncountable-set-interval、cor-uncountable-set-reals、prop-uncountable-set-cantor、prop-uncountable-set-accumulation は選択公理を使わずに証明されている。

最小の非可算濃度と連続体仮説

可算な 順序数 全体の集合 $\omega_1$ は、選択公理なしで集合として存在し(Hartogs の議論)、非可算であって、その各元($\omega_1$ の真の始切片)は可算である(Jec03 Chapter 2・Chapter 3)。選択公理のもとでは、$\aleph_1:=|\omega_1|$ が最小の非可算濃度であり、任意の非可算集合 $A$ について $\aleph_1\le|A|$ である。$|\mathbb{R}|=2^{\aleph_0}$ であり(基数 の記事の例「連続体の濃度」)、選択公理のもとでは、とくに $\aleph_1\le2^{\aleph_0}$ である。
「$\mathbb{R}$ の非可算な部分集合はすべて $\mathbb{R}$ と対等である」という主張が 連続体仮説 であり、選択公理のもとでは $2^{\aleph_0}=\aleph_1$ と同値である。この主張は $\mathsf{ZFC}$ から証明も反証もできない(Gödel と Cohen による。基数 の記事の定理「連続体仮説の独立性」、Jec03 Chapter 13・Chapter 14)。一方、$\mathbb{R}$ の非可算な 閉集合 は空でない 完全集合 を含み、したがって $\mathbb{R}$ と対等である(Cantor–Bendixson の定理、Kec95 §6)。同じことは $\mathbb{R}$ の非可算な Borel集合 についても成り立つ(Kec95 §13)。したがって、連続体仮説の反例になる集合があるとしても、それは閉集合や Borel 集合ではない。

補足

  • 濃度の言葉での整理:cor-uncountable-set-reals と 基数 の記事から、$\mathbb{R}$、2 点以上を含む区間、$\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$、$\mathbb{C}$、$\mathcal{P}(\mathbb{N})$、Cantor 集合はいずれも濃度 $2^{\aleph_0}$ をもつ。非可算集合の濃度はこれに限らない。Cantorの定理 により $2^{\aleph_0}<2^{2^{\aleph_0}}<\cdots$ と、いくらでも大きい濃度の非可算集合がある。
  • 証明の 2 つの型:実数の非可算性の証明には、thm-uncountable-set-interval の区間の入れ子による証明と、可算集合 の記事の定理「実数全体の非可算性」の 対角線論法 による証明がある。前者は実数の連続性(上限の存在)だけを使い、後者は小数の桁を読み取る補題を使う。Rud76 Theorem 2.43 とその系は、空でないコンパクト集合の減少列を使う同様の入れ子の議論で、空でない完全集合と区間の非可算性を示している。
  • 位相・測度との関係:非可算性は「大きさ」の 1 つの尺度にすぎない。ex-uncountable-set-no-interval の Cantor 集合は、非可算であるが区間を含まず、Lebesgue 測度が $0$ である。逆に $\mathbb{Q}$ は可算であるが稠密である(ex-uncountable-set-dense-countable)。
  • 文献:基本事項は Mat68 第 2 章、End77 Chapter 6、Jec03 Chapter 3 にある。

関連項目

参考文献

[1]
松坂和夫, 集合・位相入門, 岩波書店, 1968, 第2章(集合の濃度:可算集合、実数の非可算性)
[2]
Herbert B. Enderton, Elements of Set Theory, Academic Press, 1977, Chapter 6 Cardinal Numbers and the Axiom of Choice(可算集合と非可算集合)
[3]
Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976, Theorem 2.43 とその系(完全集合と区間の非可算性)、Exercise 2.2(代数的数の可算性)、Exercise 2.27(凝集点)
[4]
Thomas Jech, Set Theory, Springer Monographs in Mathematics, Springer-Verlag, 2003, Chapter 2(順序数)、Chapter 3(基数、$\aleph_1$、Hartogs の議論)、Chapter 13(構成可能集合)、Chapter 14(強制法)
[5]
T. Jech, The Axiom of Choice, Dover Books on Mathematics, Dover Publications(North-Holland 1973 年版の復刻), 2008, 第2章(可算選択公理と可算無限部分集合)、第10章(可算無限部分集合をもたない無限集合のモデル)
[6]
Alexander S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Graduate Texts in Mathematics 156, Springer, 1995, §6(完全ポーランド空間、Cantor–Bendixson の定理)、§13(Borel 集合の完全集合定理)
[7]
Georg Cantor, Über eine Eigenschaft des Inbegriffes aller reellen algebraischen Zahlen, Journal für die reine und angewandte Mathematik, 1874, 258–262

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