Gauss整数

同義語:Gaussian integerガウス整数Gauss整数環

概要

Gauss整数(Gaussian integer)とは、実部と虚部がともに整数である複素数 $a+bi$ のことであり、その全体 $\mathbb{Z}[i]$ は複素数体の部分環をなす整域(Gauss 整数環)である。ノルム $N(a+bi)=a^2+b^2$ は乗法的で、単元は $\pm1,\pm i$ の 4 つに限る。ノルムを用いた余りのある割り算ができるので $\mathbb{Z}[i]$ は Euclid 整域であり、素因数分解が一意に定まる。素数 $p$ は、$p=2$ なら $-i(1+i)^2$ となり、$p\equiv1\pmod4$ なら $5=(2+i)(2-i)$ のように 2 つの共役な Gauss 素数の積に分解し、$p\equiv3\pmod4$ なら分解しない。この分類から Fermat の二平方定理が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素数, 整数, 可換環, 整域, 単元

定義

$i$虚数単位$i^2=-1$)とする。

Gauss整数

実部と虚部がともに整数である複素数 $a+bi$$a,b\in\mathbb{Z}$)を Gauss整数(Gaussian integer)という。その全体を
$$ \mathbb{Z}[i]:=\{a+bi\mid a,b\in\mathbb{Z}\} $$
と書く。

$\mathbb{Z}[i]$$1$ を含み、
$$ (a+bi)\pm(c+di)=(a\pm c)+(b\pm d)i,\qquad (a+bi)(c+di)=(ac-bd)+(ad+bc)i $$
により和・差・積で閉じているので、$\mathbb{C}$部分環である( の記事の例「Gauss整数環と数の体」)。体の部分環なので $\mathbb{Z}[i]$整域であり、これを Gauss 整数環という。$\mathbb{Z}[i]$$\mathbb{Z}$$i$ を添加して生成される部分環であり、多項式の代入 $\mathbb{Z}[x]\to\mathbb{Z}[i]$$x\mapsto i$ によって $\mathbb{Z}[i]\cong\mathbb{Z}[x]/(x^2+1)$剰余環)と表される(剰余環 の記事の注意「関係式による環の表示」)。その商体$\mathbb{Q}(i)=\{r+si\mid r,s\in\mathbb{Q}\}$ である(商体 の記事の例「Gauss整数環と平方根を添加した環の商体」)。
$\alpha=a+bi$複素共役 $\bar\alpha=a-bi$ も Gauss 整数であり、$\alpha\mapsto\bar\alpha$$\mathbb{Z}[i]$ の環の自己同型である。

Gauss整数のノルム

Gauss 整数 $\alpha=a+bi$ に対し
$$ N(\alpha):=\alpha\bar\alpha=a^2+b^2=|\alpha|^2 $$
$\alpha$ノルム(norm)という。

ノルムは次の性質をもつ。

  1. $N(\alpha)$$0$ 以上の整数であり、$N(\alpha)=0$ となるのは $\alpha=0$ のときに限る。
  2. $N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)$ である。実際 $N(\alpha\beta)=\alpha\beta\overline{\alpha\beta}=\alpha\bar\alpha\beta\bar\beta$ である。
    2 から、$\alpha\mid\beta$$\mathbb{Z}[i]$ の中で割り切る)ならば $N(\alpha)\mid N(\beta)$$\mathbb{Z}$ の中で割り切る)である。ノルムは $\mathbb{Z}[i]$ の算術を $\mathbb{Z}$ の算術に写す道具である。以下、整域の元について、単元同伴(単元倍だけ異なること)・既約元$0$ でも単元でもなく、単元でない 2 元の積に書けない元)・素元$0$ でも単元でもなく、$\pi\mid\alpha\beta$ なら $\pi\mid\alpha$ または $\pi\mid\beta$ を満たす元)の言葉を用いる。$\mathbb{Z}[i]$ の素元を Gauss 素数(Gaussian prime)という。

直感

Gauss 整数は複素平面の格子点(格子)であり、$\mathbb{Z}[i]$ は平面に置かれた正方形の網目である。ノルム $N(\alpha)$ は原点からの距離の 2 乗である。任意の複素数の近くには距離 $1/\sqrt2$ 以内に格子点があるので、$\mathbb{Z}$ と同じように「余りの小さい割り算」ができ、その結果 $\mathbb{Z}[i]$ でも素因数分解が一意に定まる。整数の素数$\mathbb{Z}[i]$ の中ではさらに分解することがあり、$5=(2+i)(2-i)$ のように分解することは、$5=2^2+1^2$ が 2 つの平方数の和であることと同じである。どの素数が分解するかは $4$ で割った余りで決まり(thm-gaussian-integer-primes)、これが Fermat の二平方定理(Fermatの二平方定理)の代数的な理由である。

例と反例

5 の分解と単元の違い

$5=(2+i)(2-i)$ であり、$5=(1+2i)(1-2i)$ でもある。$1+2i=i(2-i)$$1-2i=-i(2+i)$ なので、2 つの分解は因子を単元倍して並べ替えたものにすぎない。$N(2\pm i)=5$素数なので、$2\pm i$ は Gauss 素数である(prop-gaussian-integer-norm-prime)。$2+i$$2-i$ は同伴でない($2-i$ の同伴は $\pm(2-i)$$\pm(1+2i)$ で、$2+i$ はこの中にない)。

いくつかの素数の分解
  1. $2=-i(1+i)^2$ である。実際 $(1+i)^2=2i$ である。$N(1+i)=2$ なので $1+i$ は Gauss 素数であり、$2$ は Gauss 素数 $1+i$ の平方の単元倍になる。
  2. $3$ は Gauss 素数のままである(thm-gaussian-integer-primes)。$3=\alpha\beta$ を単元でない 2 元の積とすると $N(\alpha)N(\beta)=9$$N(\alpha)=N(\beta)=3$ だが、$a^2+b^2=3$ は整数解をもたない。
  3. $13=(3+2i)(3-2i)$$17=(4+i)(4-i)$$29=(5+2i)(5-2i)$ である。
  4. $65=5\cdot13=(2+i)(2-i)(3+2i)(3-2i)$ で、$(2+i)(3+2i)=4+7i$$(2+i)(3-2i)=8-i$ から $65=4^2+7^2=8^2+1^2$ と 2 通りの平方和の表示が得られる。
余りのある割り算の計算

$\alpha=7+2i$$\beta=2-i$ で割る。$\alpha/\beta=\alpha\bar\beta/N(\beta)=(7+2i)(2+i)/5=(12+11i)/5=2.4+2.2i$ なので、実部・虚部に最も近い整数をとって $q=2+2i$ とおく。$r=\alpha-q\beta=(7+2i)-(2+2i)(2-i)=(7+2i)-(6+2i)=1$ であり、$N(r)=1< N(\beta)=5$ である。この割り算を Euclidの互除法 として繰り返すと、$2-i=(2-i)\cdot1+0$ で止まり、$7+2i$$2-i$最大公約元$1$(の単元倍)である。

反例:素因数分解が一意でない $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$

$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]=\{a+b\sqrt{-5}\mid a,b\in\mathbb{Z}\}$$\mathbb{C}$ の部分環で、ノルム $N(a+b\sqrt{-5})=a^2+5b^2$ は乗法的である。この環で
$$ 6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5}) $$
である。ノルムはそれぞれ $4,9,6,6$ で、$a^2+5b^2=2$$a^2+5b^2=3$ も整数解をもたないので、4 つの元はどれも既約元である。単元はノルム $1$ の元 $\pm1$ だけなので、$2$$1\pm\sqrt{-5}$ のどちらとも同伴でない。したがって $6$ は既約元の積に 2 通りに分解する。
$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は「整数に虚数の平方根を添加した整域」「乗法的なノルムをもつ」を満たすが「一意分解整域」を満たさず、含意「$\mathbb{Z}[\sqrt{-d}]$$\mathbb{Z}[i]$ と同様に一意分解整域である」を破る。$\mathbb{Z}[i]$ で一意分解が成り立つのは、ノルムを用いた割り算(thm-gaussian-integer-euclidean)ができるからであり、$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ では $\alpha/\beta$ から距離 $1$ 未満の格子点がとれない場合があって、この割り算ができない。

反例:整数の素数は Gauss 素数とは限らない

$5$$\mathbb{Z}$ の素元だが、$5\mid(2+i)(2-i)$ でありながら $5$$2+i$$2-i$ も割り切らない($(2\pm i)/5\notin\mathbb{Z}[i]$)ので、$\mathbb{Z}[i]$ の素元ではない。$5$ は「$\mathbb{Z}$ の素元」を満たすが「$\mathbb{Z}[i]$ の素元」を満たさず、含意「部分環 $\mathbb{Z}\subset\mathbb{Z}[i]$ の素元は $\mathbb{Z}[i]$ でも素元である」を破る。素数 $p$ が Gauss 素数のままであることは $p\equiv3\pmod4$ と同値である(thm-gaussian-integer-primes)。

性質

単元

Gauss整数環の単元

$\alpha\in\mathbb{Z}[i]$ が単元であることと $N(\alpha)=1$ であることは同値である。$\mathbb{Z}[i]$ の単元はちょうど $1,-1,i,-i$ の 4 つであり、単元群 $\mathbb{Z}[i]^\times$$i$ で生成される位数 $4$巡回群である。

$\alpha$ が単元で $\alpha\beta=1$ なら、ノルムの乗法性から $N(\alpha)N(\beta)=N(1)=1$ であり、$N(\alpha),N(\beta)$ は正の整数なので $N(\alpha)=1$ である。逆に $N(\alpha)=\alpha\bar\alpha=1$ なら $\bar\alpha\in\mathbb{Z}[i]$$\alpha$ の逆元なので $\alpha$ は単元である。$\alpha=a+bi$ について $a^2+b^2=1$ の整数解は $(a,b)=(\pm1,0),(0,\pm1)$ だけなので、単元は $\pm1,\pm i$ である。$i^2=-1$$i^3=-i$$i^4=1$ より、これらは $i$ の冪である。$\square$

したがって $\alpha=a+bi\neq0$ の同伴は $\alpha,\ i\alpha=-b+ai,\ -\alpha,\ -i\alpha=b-ai$ の 4 つで、複素平面では $\alpha$ を原点のまわりに $90^\circ$ ずつ回したものである。$0$ でない各 Gauss 整数は、同伴のうち $a>0$$b\ge0$ を満たすもの(第 1 象限の、虚軸を除く部分にあるもの)をただ 1 つもつ。

Euclid 整域であること

Gauss整数環における余りのある割り算

任意の $\alpha,\beta\in\mathbb{Z}[i]$$\beta\neq0$ に対し、
$$ \alpha=q\beta+r,\qquad N(r)\le\frac12N(\beta)< N(\beta) $$
を満たす $q,r\in\mathbb{Z}[i]$ が存在する。したがって $\mathbb{Z}[i]$ はノルム $N$ を Euclid 写像とする Euclid整域であり、単項イデアル整域かつ一意分解整域である。

複素数 $\alpha/\beta$$u+vi$$u,v\in\mathbb{Q}$)と書く。$u,v$ に最も近い整数 $m,n$ をとると $|u-m|\le1/2$$|v-n|\le1/2$ である。$q:=m+ni\in\mathbb{Z}[i]$$r:=\alpha-q\beta\in\mathbb{Z}[i]$ とおくと、
$$ N(r)=|\alpha-q\beta|^2=|\beta|^2\left|\frac{\alpha}{\beta}-q\right|^2=N(\beta)\bigl((u-m)^2+(v-n)^2\bigr)\le N(\beta)\left(\frac14+\frac14\right)=\frac12N(\beta) $$
であり、$N(\beta)\ge1$ なので $N(r)< N(\beta)$ である。
$N$$0$ 以上の整数値をとり、$N(\alpha)=0\iff\alpha=0$$\beta\neq0$ なら $N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)\ge N(\alpha)$ なので、$N$Euclid整域 の記事の定義「Euclid整域」の 3 条件を満たす。Euclid 整域は単項イデアル整域であり(同記事の命題「Euclid整域は単項イデアル整域である」)、単項イデアル整域は一意分解整域である(単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域は一意分解整域」)。$\square$

同じ証明は Euclid整域 の記事の例「Gauss整数環の除法」にもある。一意分解整域では既約元と素元が一致するので(単項イデアル整域 の記事の補題「既約元は素元」)、Gauss 素数とは $\mathbb{Z}[i]$ の既約元のことである。ノルムについて次の判定がある。

ノルムが素数である元

$\alpha\in\mathbb{Z}[i]$ について $N(\alpha)$ が素数ならば、$\alpha$ は Gauss 素数である。

$N(\alpha)=p$ を素数とする。$p\neq1$ なので $\alpha$$0$ でも単元でもない(prop-gaussian-integer-units)。$\alpha=\beta\gamma$ なら $N(\beta)N(\gamma)=p$ なので $N(\beta)$$N(\gamma)$ の一方は $1$ で、prop-gaussian-integer-units によりその元は単元である。よって $\alpha$ は既約元であり、上に述べたとおり素元である。$\square$

逆は成り立たない。$3$ は Gauss 素数だが $N(3)=9$ である(ex-gaussian-integer-small-primes)。

Gauss 素数の分類

奇素数 $p$ について、$-1$$p$ を法として平方数になるかどうかが分解を決める。

$p$ での $-1$ の平方根

$p$ を奇素数とする。$m^2\equiv-1\pmod p$ を満たす整数 $m$ が存在することと、$p\equiv1\pmod4$ であることは同値である。

$\mathbb{F}_p=\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の乗法群 $\mathbb{F}_p^\times$ は位数 $p-1$ の巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」)。$p$ は奇数なので $-1\neq1$ であり、$a\in\mathbb{F}_p^\times$ について $a^2=-1$ は「$a^4=1$ かつ $a^2\neq1$」、すなわち $a$ の位数が $4$ であることと同値である。位数 $p-1$ の巡回群が位数 $4$ の元をもつのは $4\mid p-1$ のとき、かつそのときに限る(巡回群は位数の各約数 $d$ について位数 $d$ の元をもち、元の位数は群の位数を割り切る)。$\square$

Gauss 素数の分類

Gauss 素数は、同伴を除いて次のものに限る。

  1. $1+i$$N(1+i)=2$ であり、$2=-i(1+i)^2$ である。
  2. $p\equiv3\pmod4$ を満たす素数 $p$$N(p)=p^2$ である。
  3. $p\equiv1\pmod4$ を満たす素数 $p$ に対し、$p=a^2+b^2$ となる $a+bi$$a-bi$$N(a\pm bi)=p$ であり、$p=(a+bi)(a-bi)$ で、$a+bi$$a-bi$ は同伴でない。
    特に、$p\equiv1\pmod4$ を満たす素数は 2 つの平方数の和である。

段階 1:各 Gauss 素数はただ 1 つの素数を割り切る。 Gauss 素数 $\pi$ について $N(\pi)=\pi\bar\pi$$1$ より大きい整数なので、$\mathbb{Z}$ で素因数分解 $N(\pi)=p_1\cdots p_s$ ができる。$\pi$ は素元で $\pi\mid p_1\cdots p_s$ なので、ある $p=p_j$ について $\pi\mid p$ である。相異なる素数 $p,p'$ をともに割り切るとすると、$\mathbb{Z}$$1=xp+yp'$ となる整数 $x,y$ があるから $\pi\mid1$ となり、$\pi$ が単元になって矛盾する。$\pi\mid p$ なら $N(\pi)\mid N(p)=p^2$$N(\pi)\neq1$ なので、$N(\pi)=p$ または $N(\pi)=p^2$ である。$N(\pi)=p^2$ なら $p=\pi\varepsilon$ と書くと $N(\varepsilon)=1$$\varepsilon$ は単元なので、$\pi$$p$ と同伴である。
したがって、各素数 $p$ について $p$ を割り切る Gauss 素数を決めれば、すべての Gauss 素数が得られる。$p$ は単元でないので、一意分解整域 $\mathbb{Z}[i]$thm-gaussian-integer-euclidean)で $p$ を割り切る Gauss 素数が少なくとも 1 つある。
段階 2:$p=2$ $2=-i(1+i)^2$ で、$1+i$ はノルムが素数 $2$ なので Gauss 素数である(prop-gaussian-integer-norm-prime)。一意分解により、$2$ を割り切る Gauss 素数は $1+i$ の同伴に限る。
段階 3:$p\equiv3\pmod4$ 整数の平方は $4$ を法として $0$$1$ なので、$a^2+b^2$$4$ を法として $0,1,2$ のいずれかであり、$p$ に等しくならない。よって $p$ を割り切る Gauss 素数 $\pi$ について $N(\pi)=p$ は起こらず、段階 1 により $N(\pi)=p^2$$\pi$$p$ と同伴である。特に $p$ 自身が Gauss 素数である。
段階 4:$p\equiv1\pmod4$ lem-gaussian-integer-minus-one-square により $p\mid m^2+1=(m+i)(m-i)$ となる整数 $m$ がある。$(m\pm i)/p=m/p\pm i/p$ は虚部が整数でないので $\mathbb{Z}[i]$ に属さず、$p$$m+i$$m-i$ も割り切らない。よって $p$ は素元でない。$p$ を割り切る Gauss 素数 $\pi$ をとると、$N(\pi)=p^2$ なら $\pi$$p$ が同伴になり $p$ が素元になってしまうので、$N(\pi)=p$ である。$\pi=a+bi$ と書けば $p=a^2+b^2=(a+bi)(a-bi)$ であり、$a\pm bi$ はノルムが素数なので Gauss 素数である。$p$ の素元分解は $(a+bi)(a-bi)$ なので、一意分解により $p$ を割り切る Gauss 素数は $a+bi$$a-bi$ の同伴に限る。
最後に $a+bi$$a-bi$ が同伴でないことを示す。$a+bi$ の同伴は $a+bi$$-b+ai$$-a-bi$$b-ai$ である(prop-gaussian-integer-units の直後の段落)。$a-bi$ がこのどれかに等しいとすると、それぞれ $b=0$$a=-b$$a=0$$a=b$ となる。$a=0$ または $b=0$ なら $p$ は平方数、$a=\pm b$ なら $p=2a^2$ は偶数であり、いずれも $p$ が奇素数であることに反する。$\square$

Fermat の二平方定理

奇素数 $p$ について、$p=a^2+b^2$ となる整数 $a,b$ が存在することと、$p\equiv1\pmod4$ であることは同値である。このとき表示は、$a,b$ の順序と符号の違いを除いて一意である。

$p\equiv1\pmod4$ なら表示が存在することは thm-gaussian-integer-primes の 3 であり、$p\equiv3\pmod4$ なら存在しないことは同定理の証明の段階 3 で示した。一意性:$p=a^2+b^2=c^2+d^2$ とすると、$p=(a+bi)(a-bi)=(c+di)(c-di)$ で、4 つの因子はノルムが $p$ なので Gauss 素数である。一意分解により $c+di$$a+bi$$a-bi$ の同伴であり、同伴は $90^\circ$ の回転なので $(c,d)$$(a,b)$ の順序と符号を変えたものである。$\square$

上の証明は、Fermat の二平方定理が $\mathbb{Z}[i]$ の一意分解と $\mathbb{F}_p^\times$ の構造に帰着することを示している(DF04 §8.3、HW08 Chapter 12)。

2 つの平方数の和で表される整数

正の整数 $n$$n=a^2+b^2$$a,b\in\mathbb{Z}$)と表されることと、$n$ の素因数分解において $4$ を法として $3$ に合同な各素数の指数が偶数であることは同値である。

$n=a^2+b^2$ であることは、$n=N(\alpha)$ となる $\alpha\in\mathbb{Z}[i]$ があることと同じである。
$n=N(\alpha)$ とし、$\alpha=\varepsilon\pi_1\cdots\pi_s$$\varepsilon$ は単元、$\pi_j$ は Gauss 素数)と分解すると $n=N(\pi_1)\cdots N(\pi_s)$ である。thm-gaussian-integer-primes により各 $N(\pi_j)$$2$$p\equiv1\pmod4$ なる素数 $p$、または $q\equiv3\pmod4$ なる素数 $q$ の平方 $q^2$ のいずれかである。よって $4$ を法として $3$ に合同な素数は $n$ に偶数回だけ現れる。
逆に $n=2^e\prod_jp_j^{f_j}\prod_kq_k^{2g_k}$$p_j\equiv1$$q_k\equiv3\pmod4$)とする。$2=N(1+i)$$p_j=N(\pi_j)$thm-gaussian-integer-primes の 3)、$q_k^2=N(q_k)$ なので、ノルムの乗法性から $n=N\bigl((1+i)^e\prod_j\pi_j^{f_j}\prod_kq_k^{g_k}\bigr)$ である。$\square$

たとえば $21=3\cdot7$ は 2 つの平方数の和でなく、$45=3^2\cdot5=6^2+3^2$ は和である。表し方の個数($a,b$ の符号と順序を区別した個数)は $n$ の約数を $4$ を法として数えることで求まる(HW08 Chapter 16)。

剰余環

Gauss 素数による剰余環

Gauss 素数 $\pi$ について、$\mathbb{Z}[i]$ は単項イデアル整域なのでイデアル $(\pi)$極大イデアルであり(単項イデアル整域 の記事の補題「既約元は素元」と命題「零でない素イデアルは極大」)、剰余環 $\mathbb{Z}[i]/(\pi)$ は体である。thm-gaussian-integer-primes の 3 種類について次のとおりになる。

  1. $\mathbb{Z}[i]/(1+i)\cong\mathbb{F}_2$$i\equiv-1\equiv1$ なので、各元は $0$$1$ に合同で、$1\notin(1+i)$ だから元はちょうど 2 つである。
  2. $p\equiv3\pmod4$ なら $\mathbb{Z}[i]/(p)\cong\mathbb{Z}[x]/(p,x^2+1)\cong\mathbb{F}_p[x]/(x^2+1)$ であり、$x^2+1$$\mathbb{F}_p$ 上既約なので(既約多項式 の記事の例「$x^2+1$ と係数の体」)、これは $p^2$ 個の元からなる有限体 $\mathbb{F}_{p^2}$ である。
  3. $N(\pi)=p$ なら $\mathbb{Z}[i]/(\pi)\cong\mathbb{F}_p$$\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}[i]/(\pi)$ の核は $\pi\mathbb{Z}[i]\cap\mathbb{Z}$ で、これは $p$ を含み $1$ を含まないので $p\mathbb{Z}$ である。$\pi=a+bi$$p\nmid b$$p\mid b$ なら $p\mid a$ となり $N(\pi)$$p^2$ で割り切れる)なので、$bb'\equiv1\pmod p$ となる $b'$ をとると $i\equiv-ab'$ を法 $\pi$ として成り立ち($a+bi\equiv0$$b'$ を掛ける)、写像は全射である。
    どの場合も剰余環の元の個数は $N(\pi)$ に等しい。一般に $0$ でない $\alpha=a+bi$ について $\mathbb{Z}[i]/(\alpha)$ の元の個数は $N(\alpha)$ である。$\mathbb{Z}[i]$ を基底 $1,i$自由アーベル群 $\mathbb{Z}^2$ とみると、$\alpha$ 倍の写像は行列 $\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}$ で表され、部分群 $\alpha\mathbb{Z}[i]$指数はその行列式の絶対値 $a^2+b^2$ に等しいからである($0$ でない行列式をもつ整数行列 $M$ について $\mathbb{Z}^2/M\mathbb{Z}^2$ の位数が $|\det M|$ であることは、整数係数の行と列の基本変形で $M$ を対角化すれば分かる。単因子)。これらの剰余環は 剰余体 の記事の節「準同型と剰余体の拡大」で扱う $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}[i]$ の剰余体の拡大と同じものであり、2 は「$p$$\mathbb{Z}[i]$ で分解しない」ことが「$x^2+1$$\mathbb{F}_p$ 上既約」と同じであることを示している。
代数的整数論での位置

$\mathbb{Z}[i]$代数体 $\mathbb{Q}(i)$整数環、すなわち $\mathbb{Q}(i)$ の元のうち整数係数のモニック多項式の根になるもの全体に等しい。実際、$\gamma=r+si$$r,s\in\mathbb{Q}$)について、$s=0$ なら $\gamma\in\mathbb{Q}$ で、既約多項式 の記事の命題「有理根の判定」により、$\gamma$ が整数係数のモニック多項式の根であることと $\gamma\in\mathbb{Z}$ であることは同値である。$s\neq0$ のとき、$\gamma$最小多項式 $m$$x^2-2rx+(r^2+s^2)$ であり、$\gamma$ が整数係数のモニック多項式 $f$ の根であることは、$m$ の係数が整数であることと同値である($f=mh$$h\in\mathbb{Q}[x]$)に 既約多項式 の記事の定理「Gauss の補題」の 3 を適用すると、$\lambda\in\mathbb{Q}^\times$ があって $\lambda m,\lambda^{-1}h\in\mathbb{Z}[x]$ かつ $f=(\lambda m)(\lambda^{-1}h)$ となり、$f$ の最高次の係数 $1$$\lambda m$$\lambda^{-1}h$ の最高次の係数の積に等しいことから両者はともに $\pm1$、特に $\lambda=\pm1$ なので $m=\pm(\lambda m)\in\mathbb{Z}[x]$)。$u:=2r$$w:=2s$ とおくと、$u\in\mathbb{Z}$$r^2+s^2=(u^2+w^2)/4\in\mathbb{Z}$ から $w^2\in\mathbb{Z}$、よって $w\in\mathbb{Z}$ であり、$u^2+w^2\equiv0\pmod4$ から $u,w$ はともに偶数、すなわち $r,s\in\mathbb{Z}$ である。thm-gaussian-integer-primes は、Dedekind整域 $\mathbb{Z}[i]$ における素数 $p$ の分解が、$p=2$分岐$p\equiv1\pmod4$完全分解$p\equiv3\pmod4$惰性となることを述べている。$\omega=(-1+\sqrt{-3})/2$ に対する $\mathbb{Z}[\omega]$Eisenstein整数)も Euclid 整域で、$p\equiv1\pmod3$ の素数が $a^2-ab+b^2$ の形に書けることを同様に導く(HW08 Chapter 12)。

関連項目

参考文献

[1]
David S. Dummit, Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., John Wiley & Sons, 2004, §8.3(一意分解整域と Gauss 整数環、Fermat の二平方定理)

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