指数方程式・対数方程式

同義語:exponential and logarithmic equations指数方程式指数不等式対数不等式対数方程式

概要

指数方程式・対数方程式(exponential and logarithmic equations)とは、未知数が指数の位置や対数の真数の位置にある方程式である。$a>0$、$a\ne1$ のとき $a^{f(x)}=a^{g(x)}\iff f(x)=g(x)$、「$f(x)>0$、$g(x)>0$、$\log_af(x)=\log_ag(x)$」$\iff$「$f(x)=g(x)>0$」であり、不等式では $a>1$ なら向きを保ち、$0<a<1$ なら向きが逆になる(対数では真数が正の範囲で)。理由は指数関数と対数関数の狭義単調性である。$t=a^x$ とおくと、$a^{2x}+pa^x+q=0$ の実数解は $t^2+pt+q=0$ の正の解と 1 対 1 に対応する。真数条件を確かめないと余分な解が残り、$\log_ax^2=2\log_ax$ と書き換えると負の解を失う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 対数の底の変換, 指数関数・対数関数のグラフと逆関数, 2次不等式

高校での出発点:指数と対数を外す

未知数 $x$ が指数の位置にある方程式を 指数方程式、対数の真数(や底)の位置にある方程式を 対数方程式 という。解き方の基本は、「$2^{\square}=2^{\triangle}$ なら $\square=\triangle$」のように指数や対数を外して、ふつうの方程式に直すことである。3 つの例で、外すときに何に気をつけるかを見る。

底をそろえる

$2^{x+1}=16$ を解く。$16=2^4$ なので、方程式は $2^{x+1}=2^4$ である。指数関数 $y=2^x$ は増加関数で、異なる $x$ に異なる値を対応させるので、$2^{x+1}=2^4$ なら $x+1=4$ である。よって $x=3$ である。確かめると $2^{3+1}=16$ である。

置き換えて 2 次方程式にする

$4^x-3\cdot2^{x+1}+8=0$ を解く。$4^x=\left(2^2\right)^x=\left(2^x\right)^2$、$2^{x+1}=2\cdot2^x$ なので、$t=2^x$ とおくと
$$ t^2-6t+8=0,\qquad(t-2)(t-4)=0,\qquad t=2,\ 4 $$
である。$2^x=2$ から $x=1$、$2^x=4$ から $x=2$ である。確かめると、$x=1$ では $4-12+8=0$、$x=2$ では $16-24+8=0$ である。

対数を外すと余分な解が出る

$\log_2(x-1)+\log_2(x+1)=3$ を解く。左辺をまとめると $\log_2\{(x-1)(x+1)\}$、右辺は $3=\log_28$ なので、$(x-1)(x+1)=8$、$x^2=9$、$x=\pm3$ である。
ところが $x=-3$ を元の方程式に入れると $\log_2(-4)+\log_2(-2)$ となり、真数が負で対数が定まらない。$x=-3$ は元の方程式の解ではない。$x=3$ では $\log_22+\log_24=1+2=3$ で、確かに解である。答えは $x=3$ だけである。

ex-elq-start-log では、変形の途中で「元の方程式の解でない数」が紛れ込んだ。これは、左辺をまとめる変形 $\log_2(x-1)+\log_2(x+1)=\log_2\{(x-1)(x+1)\}$ が、$x-1>0$ かつ $x+1>0$ のときにしか成り立たないのに、まとめた後の式は $x<-1$ でも意味をもつからである。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 指数や対数を外す変形は、どんな条件のもとで解を変えないか。→ thm-elq-rules
  2. 置き換え $t=a^x$ をしたとき、$t$ の方程式の解と $x$ の方程式の解はどう対応するか。→ thm-elq-subst
  3. 余分な解や、失われる解は、どこで生まれるか。→ ex-elq-cx、rem-elq-injective
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $2^{\square}=2^{\triangle}$ なら $\square=\triangle$同値変形の規則単射な関数は外せる
    真数条件を確かめる定義域をそろえる関数の定義域
    底が $1$ より小さいと不等号が逆減少関数で不等式を外す順序を逆にする写像
    $t=2^x$ とおく($t>0$)置き換えと解の対応全単射 $\mathbb{R}\to\mathbb{R}_{>0}$

言葉の準備:同値と真数条件

以下、底 $a$ は $a>0$、$a\ne1$ を満たす実数とし、未知数 $x$ は実数とする。

同値な方程式・不等式と真数条件

$x$ についての 2 つの条件(方程式や不等式)$P(x)$、$Q(x)$ が 同値 であるとは、$P(x)$ を満たす実数 $x$ 全体と、$Q(x)$ を満たす実数 $x$ 全体が一致することをいう。$P(x)\iff Q(x)$ と書く。
式 $\log_af(x)$ は $f(x)>0$ のときにだけ定まる。対数方程式・不等式に現れるすべての真数が正であるという条件を、その方程式・不等式の 真数条件 という。対数方程式・不等式の解とは、真数条件を満たし、かつ等式・不等式を満たす $x$ のことである。

方程式を解くとは、同値な変形を重ねて、解がひと目で分かる形($x=3$ など)にすることである。変形が同値でなく「$P\Rightarrow Q$」の向きしか成り立たないときは、$Q$ の解の中に $P$ の解でないもの(余分な解)が混じりうるので、最後に $P$ に戻して確かめる。逆に「$Q\Rightarrow P$」しか成り立たないときは、解を失うおそれがある。

同値な変形と同値でない変形
  1. $2x+1=7$ と $x=3$ は同値である。両辺から $1$ を引いて $2$ で割る変形も、$2$ を掛けて $1$ を足す逆の変形もできるからである。
  2. $\sqrt{x}=x-2$ と $x=(x-2)^2$ は同値でない。後者の解は $x=1,4$ だが、$x=1$ では $\sqrt1=1\ne-1$ で、前者の解は $x=4$ だけである。2 乗する変形は「$\Rightarrow$」の向きしか成り立たない(無理関数のグラフ)。
  3. $\log_2(x-1)+\log_2(x+1)=3$ と $(x-1)(x+1)=8$ は同値でない(ex-elq-start-log)。前者の解は $x=3$ だけ、後者の解は $x=\pm3$ である。

主定理 1:指数・対数を外す規則

指数や対数を外してよい理由は、指数関数と対数関数が 狭義単調 であることにある。狭義単調増加とは $u< v\Rightarrow\varphi(u)<\varphi(v)$、狭義単調減少とは $u< v\Rightarrow\varphi(u)>\varphi(v)$ となることである。次の補題で、狭義単調な関数は等式も不等式も外せることを確かめる。

狭義単調な関数を外す

関数 $\varphi$ が集合 $D$ の上で狭義単調増加なら、$D$ の 2 数 $u,v$ について
$$ \varphi(u)=\varphi(v)\iff u=v,\qquad\varphi(u)<\varphi(v)\iff u< v $$
である。狭義単調減少なら、$\varphi(u)=\varphi(v)\iff u=v$、$\varphi(u)<\varphi(v)\iff u>v$ である。

背理法で逆向きを示す

増加の場合を示す。「$\Leftarrow$」の向きは、等式では $u=v$ なら同じ数の値なので $\varphi(u)=\varphi(v)$、不等式では狭義単調増加の定義そのものである。
「$\Rightarrow$」の向き(不等式)。$\varphi(u)<\varphi(v)$ とし、$u< v$ でないと仮定する。すると $u=v$ か $u>v$ である。$u=v$ なら $\varphi(u)=\varphi(v)$、$u>v$ なら定義により $\varphi(u)>\varphi(v)$ で、どちらも $\varphi(u)<\varphi(v)$ に反する。よって $u< v$ である。
「$\Rightarrow$」の向き(等式)。$\varphi(u)=\varphi(v)$ とし、$u\ne v$ と仮定する。$u< v$ なら $\varphi(u)<\varphi(v)$、$u>v$ なら $\varphi(u)>\varphi(v)$ で、どちらも $\varphi(u)=\varphi(v)$ に反する。よって $u=v$ である。
減少の場合は、不等号の向きを入れ替えて同じように示せる。$\square$

指数関数 $y=a^x$ は、$a>1$ なら実数全体で狭義単調増加、$0< a<1$ なら狭義単調減少である(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「指数関数の増減と値域」)。対数関数 $y=\log_ax$ も、正の実数全体で同じ向きに狭義単調である(同記事の命題「対数関数の増減」)。lem-elq-monotone をこの 2 つに当てはめると、次の規則になる。

指数・対数を外す規則

$a>0$、$a\ne1$ とし、$f(x)$、$g(x)$ を $x$ の実数値の式とする。
(R1) $a^{f(x)}=a^{g(x)}\iff f(x)=g(x)$
(R2) 「$f(x)>0$ かつ $g(x)>0$ かつ $\log_af(x)=\log_ag(x)$」$\iff$「$f(x)=g(x)$ かつ $f(x)>0$」
(R3) $a>1$ なら、$a^{f(x)}< a^{g(x)}\iff f(x)< g(x)$ であり、「$f(x)>0$ かつ $g(x)>0$ かつ $\log_af(x)<\log_ag(x)$」$\iff0< f(x)< g(x)$
(R4) $0< a<1$ なら、$a^{f(x)}< a^{g(x)}\iff f(x)>g(x)$ であり、「$f(x)>0$ かつ $g(x)>0$ かつ $\log_af(x)<\log_ag(x)$」$\iff f(x)>g(x)>0$

補題を指数関数と対数関数に当てはめる

$x$ を 1 つ固定し、$u=f(x)$、$v=g(x)$ とおく。
(i) $a>1$ でも $0< a<1$ でも、$\varphi(u)=a^u$ は実数全体 $D=\mathbb{R}$ の上で狭義単調である。lem-elq-monotone の等式の部分により $a^u=a^v\iff u=v$ である。
(ii) 左辺の条件のもとで $u,v$ は正の実数全体 $D=\mathbb{R}_{>0}$ に入り、$\varphi(u)=\log_au$ はその上で狭義単調である。lem-elq-monotone により、$u>0$、$v>0$ のもとで $\log_au=\log_av\iff u=v$ である。したがって左辺は「$u>0$ かつ $v>0$ かつ $u=v$」と同値で、$u=v$ なら $v>0$ は $u>0$ と同じなので、「$u=v$ かつ $u>0$」と同値である。
(iii) $a>1$ のとき $a^u$ と $\log_au$ は狭義単調増加なので、lem-elq-monotone の不等式の部分により $a^u< a^v\iff u< v$ である。対数の方は、$u>0$、$v>0$ のもとで $\log_au<\log_av\iff u< v$ なので、左辺は「$u>0$ かつ $v>0$ かつ $u< v$」、つまり $0< u< v$ と同値である($0< u< v$ なら $v>0$ は自動的に成り立つ)。
(iv) $0< a<1$ のときは狭義単調減少なので、(iii) と同じ議論で不等号の向きが逆になり、$a^u< a^v\iff u>v$、対数の方は $u>v>0$ と同値である。$\square$

等号付きの不等式 $\le$ は、「$<$ または $=$」なので、指数では (i) と (iii)・(iv)、対数では (ii) と (iii)・(iv) を組み合わせて同じように外せる。

規則を使って解く
  1. $3^{2x-1}=27^x$。$27^x=\left(3^3\right)^x=3^{3x}$ なので、thm-elq-rules の (i) により $2x-1=3x$、$x=-1$ である。確かめると $3^{-3}=\dfrac1{27}=27^{-1}$ である。
  2. $\left(\dfrac12\right)^x>\dfrac18$。$\dfrac18=\left(\dfrac12\right)^3$ で、底 $\dfrac12$ は $1$ より小さいので、(iv) により不等号の向きが逆になって $x<3$ である。たとえば $x=2$ では $\dfrac14>\dfrac18$、$x=4$ では $\dfrac1{16}<\dfrac18$ で、$x<3$ の方で不等式が成り立つ。
  3. $\log_{\frac13}(x-2)>-1$。$-1=\log_{\frac13}3$ なので、不等式は $\log_{\frac13}3<\log_{\frac13}(x-2)$ である。(iv) を $f(x)=3$、$g(x)=x-2$ として使うと、真数条件と合わせて $3>x-2>0$、つまり $2< x<5$ である。
  4. $\log_3\left(x^2-2x\right)=1$。$1=\log_33$ なので、(ii) により「$x^2-2x=3$ かつ $3>0$」と同値である。$x^2-2x-3=(x-3)(x+1)=0$ より $x=3,-1$ である。どちらも真数 $x^2-2x=3$ は正なので、2 つとも解である。$x=-1$ は負の数だが、真数条件は真数 $x^2-2x$ についての条件で、$x$ の符号とは関係がない。

主定理 2:置き換えと解の個数

ex-elq-start-subst では $t=2^x$ とおいて 2 次方程式に直した。このとき $t$ は正の数しかとらないので、$t$ の方程式の負の解は $x$ の解に対応しない。どの解がどれだけ対応するかを定理にする。

置き換え $t=a^x$ と解の個数

$a>0$、$a\ne1$ とし、$p,q$ を実数とする。$x$ の方程式
$$ a^{2x}+pa^x+q=0 $$
の解 $x$ に $t=a^x$ を対応させると、この方程式の実数解全体と、$t$ の 2 次方程式 $t^2+pt+q=0$ の 正の 解全体とが 1 対 1 に(もれなく、重なりなく)対応する。とくに、$x$ の方程式の異なる実数解の個数は、$t^2+pt+q=0$ の異なる正の解の個数に等しい。

$x\mapsto a^x$ が正の実数全体への 1 対 1 の対応であることを使う

段 1($x\mapsto a^x$ の性質)。$a^x$ の値はつねに正である。値域は正の実数全体なので、どの $t>0$ にも $a^x=t$ となる $x$ がある。thm-elq-rules の (i) により、そのような $x$ はただ 1 つで、それは $x=\log_at$ である。
段 2($x$ の解から $t$ の正の解へ)。$x$ が $a^{2x}+pa^x+q=0$ を満たすとし、$t=a^x$ とおく。指数法則により $a^{2x}=\left(a^x\right)^2=t^2$ なので、$t^2+pt+q=0$ である。段 1 により $t>0$ である。
段 3($t$ の正の解から $x$ の解へ)。$t>0$ が $t^2+pt+q=0$ を満たすとする。段 1 により $a^x=t$ となる $x$ がただ 1 つあり、その $x$ について $a^{2x}+pa^x+q=t^2+pt+q=0$ である。
段 4(1 対 1)。段 2 の対応で、異なる解 $x_1\ne x_2$ は、thm-elq-rules の (i) により異なる $t$ に移る。段 3 により、正の解 $t$ はどれもある解 $x$ から来る。よって解の全体どうしが 1 対 1 に対応し、個数も等しい。$\square$

図 1 と図 2 は、ex-elq-start-subst の方程式で、図 1 に $y=4^x-3\cdot2^{x+1}+8$ のグラフ、図 2 に $y=t^2-6t+8$($t>0$)のグラフを並べたものである。図 1 の $x$ 軸との交点 $x=1,2$ と、図 2 の $t$ 軸との交点 $t=2,4$ が、$t=2^x$ で対応している。図 2 のグラフの最小値 $-1$($t=3$)は、図 1 では $x=\log_23=1.58\ldots$ での値 $-1$ に当たる。

y = 4 の x 乗 − 3・2 の x+1 乗 + 8 のグラフで、x 軸と x = 1、2 で交わる y = 4 の x 乗 − 3・2 の x+1 乗 + 8 のグラフで、x 軸と x = 1、2 で交わる
y = t² − 6t + 8 の t が正の部分のグラフで、t 軸と t = 2、4 で交わる y = t² − 6t + 8 の t が正の部分のグラフで、t 軸と t = 2、4 で交わる

負の解は捨てる
  1. $9^x-2\cdot3^x-3=0$。$t=3^x$ とおくと $t^2-2t-3=(t-3)(t+1)=0$ で、$t=3,-1$ である。正の解は $t=3$ だけなので、thm-elq-subst により実数解はちょうど 1 つで、$3^x=3$ から $x=1$ である。$t=-1$ に対応する $x$($3^x=-1$)はない。
  2. $4^x+3\cdot2^x+2=0$。$t=2^x$ とおくと $t^2+3t+2=(t+1)(t+2)=0$ で、$t=-1,-2$ である。2 次方程式は実数解を 2 つもつが、正の解がないので、元の方程式には実数解がない。左辺は正の数の和なので $0$ にならないことからも分かる。
  3. $2^{2x+1}-3\cdot2^x+1=0$。$2^{2x+1}=2\cdot\left(2^x\right)^2$ なので、$t=2^x$ とおくと $2t^2-3t+1=(2t-1)(t-1)=0$、$t=\dfrac12,1$ である。どちらも正なので解は 2 つで、$x=-1,0$ である。$t^2$ の係数が $1$ でなくても、thm-elq-subst と同じ議論が使える。

定数を含む方程式の解の個数

定数 $k$ を含む指数方程式の解の個数も、thm-elq-subst で $t$ の正の解の個数に移して数える。

$9^x-2\cdot3^x+k=0$ の解の個数

$t=3^x$ とおくと $t^2-2t+k=0$ で、thm-elq-subst により、求める個数はこの 2 次方程式の異なる正の解の個数である。$k$ を右辺に移すと
$$ k=-t^2+2t=1-(t-1)^2 $$
なので、$t>0$ の範囲で曲線 $y=1-(t-1)^2$ と直線 $y=k$ の交点の個数を数えればよい(定数を分ける考え方)。曲線は $t=1$ で最大値 $1$ をとり、$t\to+0$ で $0$ に近づき($t=0$ は範囲に入らない)、$t=2$ で $0$、$t>2$ で負になる。図 3 から、交点の個数は次のとおりである。

$k$ の範囲$t$ の正の解$x$ の実数解の個数
$k>1$なし$0$
$k=1$$t=1$$1$($x=0$)
$0< k<1$$0< t<1$ と $1< t<2$ に 1 つずつ$2$
$k=0$$t=2$($t=0$ は正でない)$1$($x=\log_32$)
$k<0$$t>2$ に 1 つ$1$

たとえば $k=\dfrac34$ では $t^2-2t+\dfrac34=\left(t-\dfrac12\right)\left(t-\dfrac32\right)=0$ で、$x=\log_3\dfrac12$、$\log_3\dfrac32$ の 2 つである。$k=-3$ では $t=3,-1$ で、$x=1$ の 1 つだけである(ex-elq-subst の (1))。

t が正の範囲の曲線 y = 1 − (t − 1)² と、いくつかの水平な直線 y = k の交点で、k が 0 と 1 の間なら交点が 2 つある t が正の範囲の曲線 y = 1 − (t − 1)² と、いくつかの水平な直線 y = k の交点で、k が 0 と 1 の間なら交点が 2 つある
「異なる 2 つの実数解をもつ」条件 $0< k<1$ は、2 次方程式 $t^2-2t+k=0$ が異なる 2 つの正の解をもつ条件である。これは、判別式 $\dfrac D4=1-k>0$、軸 $t=1>0$、$t=0$ での値 $k>0$ の 3 つからも求められる(解の配置 の定理「2 つの解がともに p より大きい条件」で $p=0$ とし、解が異なることを足したもの)。

対数の置き換え

対数の式を $s=\log_ax$ とおくときは、事情が違う。$x$ が正の実数全体を動くと、$s=\log_ax$ は 実数全体 を動き、$x\mapsto\log_ax$ は正の実数全体から実数全体への 1 対 1 の対応である(thm-elq-rules の (ii) と、$x=a^s$ で戻せること)。したがって $s$ の方程式の実数解は、どれも $x$ の解に対応し、捨てる解はない。ただし、元の方程式の真数条件で $x>0$ 以外の制限があれば、それも確かめる。

$s=\log_2x$ とおく

$\left(\log_2x\right)^2-\log_2x^3+2=0$ を解く。真数条件は $x>0$($x^3>0$ も $x>0$ と同値)である。$x>0$ のもとで $\log_2x^3=3\log_2x$ なので、$s=\log_2x$ とおくと $s^2-3s+2=(s-1)(s-2)=0$、$s=1,2$ である。$x=2^1=2$、$x=2^2=4$ で、どちらも $x>0$ を満たす。確かめると、$x=2$ では $1-3+2=0$、$x=4$ では $4-6+2=0$ である。

対数方程式・不等式を解く手順

thm-elq-rules の (ii)〜(iv) は、両辺が「同じ底の対数 1 つ」になっている形にしか使えない。そこで、次の順に変形する。
(R1) 真数条件を書き出す(すべての真数が正、底に $x$ があれば底も正で $1$ でない)。
(R2) 底をそろえる。底が違えば 対数の底の変換 の定理「底の変換公式」で直す。
(R3) 真数条件のもとで、対数の和・定数倍を 1 つの対数にまとめ、thm-elq-rules で対数を外す。
(R4) 得られた解・範囲と、真数条件との共通部分をとる。
手順 (iii) の「まとめる」変形 $\log_au+\log_av=\log_a(uv)$ は $u>0$ かつ $v>0$ のときにだけ使える。手順 (i) で書き出した条件のもとで変形するので、最後に (iv) で条件と合わせれば、解は元の方程式の解と一致する。

底の違う対数方程式

$\log_4(x+2)=\log_2x$ を解く。
(i) 真数条件は $x+2>0$ かつ $x>0$、つまり $x>0$ である。
(ii) 対数の底の変換 の定理で底を $2$ にすると $\log_4(x+2)=\dfrac{\log_2(x+2)}{\log_24}=\dfrac12\log_2(x+2)$ である。方程式は $\dfrac12\log_2(x+2)=\log_2x$、つまり $\log_2(x+2)=2\log_2x$ である。
(iii) $x>0$ なので $2\log_2x=\log_2x^2$ である。thm-elq-rules の (ii) により $x+2=x^2$ かつ $x+2>0$ である。$x^2-x-2=(x-2)(x+1)=0$ から $x=2,-1$ である。
(iv) 真数条件 $x>0$ を満たすのは $x=2$ だけである。確かめると $\log_44=1=\log_22$ である。

対数不等式
  1. $\log_2(x-1)+\log_2(x-3)<3$。真数条件は $x-1>0$ かつ $x-3>0$、つまり $x>3$ である。このもとで左辺は $\log_2\{(x-1)(x-3)\}$、右辺は $\log_28$ である。底 $2>1$ なので thm-elq-rules の (iii) により $0<(x-1)(x-3)<8$ である。$x>3$ では $(x-1)(x-3)>0$ は成り立っているので、$x^2-4x+3<8$、つまり $x^2-4x-5=(x-5)(x+1)<0$ を解いて $-1< x<5$ である(2次不等式)。真数条件と合わせて $3< x<5$ である。
  2. $\log_{\frac12}(x+1)\ge\log_{\frac12}(3-x)$。真数条件は $x+1>0$ かつ $3-x>0$、つまり $-1< x<3$ である。底 $\dfrac12<1$ なので、thm-elq-rules の (ii) と (iv) により不等号の向きが逆になり、$x+1\le3-x$、つまり $x\le1$ である。真数条件と合わせて $-1< x\le1$ である。たとえば $x=0$ では $\log_{\frac12}1=0\ge\log_{\frac12}3=-1.58\ldots$ で成り立ち、$x=2$ では $\log_{\frac12}3<\log_{\frac12}1$ で成り立たない。

指数不等式でも置き換えが使える。$t=a^x$ の範囲が $t>0$ であることを条件に加えて $t$ の不等式を解き、thm-elq-rules の (iii)・(iv) で $x$ に戻す。

置き換えて解く指数不等式

$4^x-3\cdot2^x-4>0$ を解く。$t=2^x$($t>0$)とおくと $t^2-3t-4=(t-4)(t+1)>0$ である。$t>0$ では $t+1>0$ なので、両辺を $t+1$ で割って $t-4>0$、つまり $t>4$ である。$2^x>2^2$ で底 $2>1$ なので、$x>2$ である。確かめると、$x=3$ では $64-24-4=36>0$、$x=1$ では $4-6-4=-6<0$ である。

例と反例

指数や対数を外す変形で、条件を確かめずに書き換えると何が起こるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$\log_ab^r=r\log_ab$ の $b>0$$\log_2x^2=2$ を $2\log_2x=2$ と書き換える解 $x=-2$ を失う
真数条件$\log_2(x-1)+\log_2(x+1)=3$余分な解 $x=-3$ が残る
不等号の向きを保つ底 $a>1$$\left(\dfrac12\right)^x>\dfrac18$ を $x>3$ とする解の範囲が逆になる
置き換えた $t$ の範囲 $t>0$$9^x-2\cdot3^x+k=0$ の解の個数$k\le0$ で解を 2 つと数え違える
反例の確認
  1. $\log_2x^2=2$ の真数条件は $x^2>0$、つまり $x\ne0$ である。thm-elq-rules の (ii) により $x^2=4$ で、$x=\pm2$ の 2 つが解である($x=-2$ でも $\log_24=2$)。これを $2\log_2x=2$ と書き換えると、左辺は $x>0$ でしか定まらず、解は $x=2$ だけになる。$\log_ab^r=r\log_ab$ は $b>0$ のときの公式で(対数の底の変換 の命題「対数の基本性質」)、$b=x$ が負になりうるときは使えない。正しくは、$x\ne0$ のもとで $\log_2x^2=\log_2\lvert x\rvert^2=2\log_2\lvert x\rvert$ である。
    残りの 3 行の確認を開く

    (2) ex-elq-start-log のとおり、$(x-1)(x+1)=8$ の解 $x=\pm3$ のうち、$x=-3$ は真数 $x-1=-4$、$x+1=-2$ が負で、元の方程式の解ではない。

    (3) 底 $\dfrac12$ の指数関数は減少なので、thm-elq-rules の (iv) により正しくは $x<3$ である。$x=4$ では $\left(\dfrac12\right)^4=\dfrac1{16}<\dfrac18$ で、「$x>3$」の範囲の数が不等式を満たさない。

    (4) $t^2-2t+k=0$ の実数解の個数だけを数えると、$k<1$ ならいつも 2 つである。しかし $k<0$ では 2 つの解の積が $k<0$ なので、一方は負で $x$ に対応しない。たとえば $k=-3$ では $t=3,-1$ で、$x$ の解は $x=1$ の 1 つだけである(ex-elq-count)。$k=0$ では $t=0$ が正でないので、$x$ の解は $t=2$ から出る $x=\log_32$ の 1 つだけである。

大学数学で見る:同値変形は単射と定義域の問題

thm-elq-rules と thm-elq-subst で使った性質は、大学の言葉で 2 つに分けて整理できる。

単射な関数は外せる

関数 $\varphi\colon D\to\mathbb{R}$ が 単射 であるとは、$D$ の 2 数 $u,v$ について $\varphi(u)=\varphi(v)$ なら $u=v$ となることをいう(単射)。単射な関数については、$f(x),g(x)\in D$ のもとで
$$ \varphi(f(x))=\varphi(g(x))\iff f(x)=g(x) $$
が成り立つ。したがって同値変形の注意は次の 2 つにまとまる。
(R1) 外す関数が単射か。$a^x$、$\log_ax$ は単射なので外せる。$u\mapsto u^2$ は実数全体では単射でない($(-2)^2=2^2$)ので、2 乗した式から戻すと余分な解が出る(ex-elq-equiv の (2))。
(R2) 定義域がそろっているか。$\log_a$ の定義域は $D=\mathbb{R}_{>0}$ なので、$f(x),g(x)\in D$(真数条件)を付けて初めて同値になる。$\log_2(x-1)+\log_2(x+1)$ と $\log_2\{(x-1)(x+1)\}$ は、$x>1$ では同じ値だが、定義される $x$ の範囲が違う式である(ex-elq-start-log)。
不等式を外すには単射より強い「狭義単調」が要り、減少関数では向きが逆になる(lem-elq-monotone)。置き換え $t=a^x$ は、実数全体から正の実数全体への全単射(単射で、正の実数のどの値もとる)であり、$t$ の方程式の解のうち像 $\mathbb{R}_{>0}$ に入るものだけが $x$ に戻る(thm-elq-subst)。

演習

指数方程式

$2^{2x+3}-9\cdot2^x+1=0$ を解け。

解答を開く

$2^{2x+3}=8\cdot\left(2^x\right)^2$ なので、$t=2^x$($t>0$)とおくと $8t^2-9t+1=(8t-1)(t-1)=0$、$t=\dfrac18,1$ である。どちらも正なので、thm-elq-subst と同じ議論で解は 2 つあり、$2^x=\dfrac18=2^{-3}$ から $x=-3$、$2^x=1=2^0$ から $x=0$ である。確かめると、$x=-3$ では $2^{-3}-9\cdot2^{-3}+1=\dfrac18-\dfrac98+1=0$、$x=0$ では $8-9+1=0$ である。

対数不等式

$\log_3(x+1)+\log_3(x-1)\le1$ を解け。

解答を開く

真数条件は $x+1>0$ かつ $x-1>0$、つまり $x>1$ である。このもとで左辺は $\log_3(x^2-1)$、右辺は $\log_33$ である。底 $3>1$ なので $0< x^2-1\le3$ である。$x>1$ では $x^2-1>0$ なので、$x^2\le4$、$-2\le x\le2$ を解けばよい。真数条件と合わせて $1< x\le2$ である。

解の個数

$k$ を実数の定数とする。$x$ の方程式 $4^x-2^{x+2}+k=0$ の異なる実数解の個数を、$k$ の値で分けて答えよ。

解答を開く

$t=2^x$ とおくと $t^2-4t+k=0$ で、求める個数はこの方程式の異なる正の解の個数である(thm-elq-subst)。$k=-t^2+4t=4-(t-2)^2$ と書くと、$t>0$ での曲線 $y=4-(t-2)^2$ は $t=2$ で最大値 $4$ をとり、$t\to+0$ で $0$ に近づき、$t=4$ で $0$、$t>4$ で負になる。直線 $y=k$ との交点を数えて、$k>4$ なら $0$ 個、$k=4$ なら $1$ 個($x=1$)、$0< k<4$ なら $2$ 個、$k\le0$ なら $1$ 個である($k=0$ では $t=4$、$x=2$ だけ)。

さらに先へ

  • $2^x=3$ のように底をそろえられないときは、対数の定義から $x=\log_23$ と答える。値は 対数の底の変換 で常用対数から求められる($\log_23=\dfrac{\log_{10}3}{\log_{10}2}=1.58\ldots$)。
  • $2^x=x+2$ や $a^x=x$ のように、指数と多項式が混じった方程式は、置き換えでは 2 次方程式にならない。解の個数はグラフの交点で調べる。$a,a^a,a^{a^a},\ldots$ という数列が収束するとき、その極限は $a^x=x$ の解になる。どの $a$ で収束し、解が 2 つあるときにどちらに近づくかは 累乗の塔 で調べる。
  • 不等式を外す規則 lem-elq-monotone は、指数・対数に限らず、狭義単調な関数すべてに使える。たとえば $x\ge0$ で $\sqrt x$ は狭義単調増加なので、$0\le u< v\iff\sqrt u<\sqrt v$ である(無理関数のグラフ)。

関連項目

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する