Hopf曲面

同義語:ホップ曲面Hopf surface

概要

Hopf曲面(Hopf surface)とは、普遍被覆が $\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$ に双正則なコンパクト複素曲面である。$0<|\alpha_1|\le|\alpha_2|<1$ に対し $(z_1,z_2)\mapsto(\alpha_1z_1,\alpha_2z_2)$ が生成する無限巡回群による商は、$S^1\times S^3$ に微分同相な Hopf 曲面で、$b_1=1$、$b_2=0$ なので Kähler 計量をもたない。正則 1 形式も多重標準形式ももたず小平次元は $-\infty$ で、Hodge 対称性も破れる。$\alpha_1=\alpha_2$ なら $\mathbb{P}^1$ 上の楕円ファイブレーションをもち、代数的でない楕円曲面の例になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素多様体, 被覆空間, 基本群, Kähler多様体, Hartogsの拡張定理

Hopf 曲面(Hopf surface)とは、普遍被覆が $W:=\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$ に双正則なコンパクト複素曲面である。最も簡単な例は、$W$ を $z\mapsto2z$ で生成される無限巡回群で割った商で、H. Hopf が 1948 年に導入した(BHPV04 V.18、p. 225)。この曲面は $S^1\times S^3$ に微分同相で、$b_2=0$ であるため Kähler 計量をもたない。Kähler 計量をもたないコンパクト複素曲面の最初の例であり(同所)、Hodge 理論の結論($b_1$ が偶数であること、Hodge 対称性、$\partial\bar\partial$ 補題)が Kähler 条件なしでは崩れることを示す標準的な例として使われる。
Hopf 曲面の一部は楕円曲線をファイバーとする $\mathbb{P}^1$ 上の楕円ファイブレーションをもち、代数的でない 楕円曲面 の例にもなる。曲面の分類では、小平次元が $-\infty$ で $b_1=1$ の曲面(類 VII)に属する。小平邦彦(Kunihiko Kodaira)は Hopf 曲面を詳しく調べ、位相や不変量による特徴づけを与えた。
この記事では、対角的な縮小写像による商 $H_\alpha$ を作り、それが $S^1\times S^3$ に微分同相なコンパクト複素曲面であることを証明する。そこから Kähler でないこと、正則 1 形式と多重標準形式をもたないこと(小平次元が $-\infty$)を示し、$\alpha_1=\alpha_2$ のとき楕円ファイブレーションをもつことを証明する。

定義

Hopf 曲面

コンパクト連結な $2$ 次元複素多様体 $X$ が Hopf 曲面であるとは、その普遍被覆が $W:=\mathbb{C}^2\setminus\{0\}$ に双正則であることをいう。Hopf 曲面 $X$ の基本群が無限巡回群 $\mathbb{Z}$ に同型であるとき、$X$ を一次 Hopf 曲面(primary Hopf surface)という。そうでない Hopf 曲面を二次 Hopf 曲面という。

$W$ は $\mathbb{R}\times S^3$ に微分同相で単連結なので(下の thm-hopf-diffeo の証明)、Hopf 曲面 $X$ は $W$ をその被覆変換群 $\pi_1(X)$ で割った商 $W/\pi_1(X)$ である。ここで $\pi_1(X)$ は $W$ に自由かつ固有不連続に双正則変換として作用する。

対角的な Hopf 曲面 $H_\alpha$

複素数 $\alpha_1,\alpha_2$ が $0<|\alpha_1|\le|\alpha_2|<1$ をみたすとし、$\alpha=(\alpha_1,\alpha_2)$、
$$ g_\alpha\colon W\to W,\qquad g_\alpha(z_1,z_2):=(\alpha_1z_1,\ \alpha_2z_2) $$
とおく。$g_\alpha$ が生成する無限巡回群を $G_\alpha=\langle g_\alpha\rangle$ とし、$H_\alpha:=W/G_\alpha$ とおく。$\alpha_1=\alpha_2=\frac12$ のときの $H_{(1/2,1/2)}$ が Hopf の原論文の曲面である。

直感

$W$ の点は、原点からの「距離」と、原点を中心とする単位球面 $S^3$ の上の「方向」で決まる。$g_\alpha$ は方向をほぼ保ちながら距離を一定の割合で縮めるので、$W$ を $g_\alpha$ で割ると、距離の方向 $\mathbb{R}_{>0}$ が円周 $\mathbb{R}_{>0}/(\text{縮小})\cong S^1$ に巻き取られ、$S^1\times S^3$ ができる。$S^3$ にも $S^1$ にも $2$ 次元の穴がないので、$H^2$ が $0$ になる。Kähler 形式は $H^2$ の $0$ でない類を与えるはずなので、この曲面は Kähler でありえない。

位相と複素構造

$H_\alpha$ は $S^1\times S^3$ に微分同相

$G_\alpha$ は $W$ に自由かつ固有不連続に作用し、$H_\alpha$ はコンパクト連結な複素曲面である。$W\to H_\alpha$ は普遍被覆で、$\pi_1(H_\alpha)\cong\mathbb{Z}$ である。さらに $H_\alpha$ は $S^1\times S^3$ に微分同相である。とくに $H_\alpha$ は一次 Hopf 曲面である。

$e^{a_j}=\alpha_j$ となる複素数 $a_j$ を選ぶ。$|\alpha_j|<1$ なので $\operatorname{Re}a_j<0$ である。実数 $t$ について
$$ \phi_t(z_1,z_2):=(e^{ta_1}z_1,\ e^{ta_2}z_2) $$
とおくと、$\phi_t$ は $W$ の微分同相(双正則写像)で、$\phi_s\circ\phi_t=\phi_{s+t}$、$\phi_1=g_\alpha$ である。
動径の座標.$z\in W$ を止めて $N(t,z):=|\phi_t(z)|^2=e^{2t\operatorname{Re}a_1}|z_1|^2+e^{2t\operatorname{Re}a_2}|z_2|^2$ とおく。$\partial N/\partial t=2\operatorname{Re}a_1e^{2t\operatorname{Re}a_1}|z_1|^2+2\operatorname{Re}a_2e^{2t\operatorname{Re}a_2}|z_2|^2<0$($z\ne0$)であり、$t\to-\infty$ で $N\to\infty$、$t\to\infty$ で $N\to0$ である。よって $N(t,z)=1$ となる $t$ がただ 1 つあり、それを $\tau(z)$ と書く。陰関数定理により $\tau\colon W\to\mathbb{R}$ は $C^\infty$ 級である。
積への分解.$\Phi\colon W\to\mathbb{R}\times S^3$、$\Phi(z):=(-\tau(z),\ \phi_{\tau(z)}(z))$、$\Psi\colon\mathbb{R}\times S^3\to W$、$\Psi(s,w):=\phi_s(w)$ とおく。どちらも $C^\infty$ 級である。$w\in S^3$ なら $\phi_{-s}(\phi_s(w))=w$ のノルムは $1$ なので $\tau(\phi_s(w))=-s$ で、$\Phi\circ\Psi(s,w)=(s,\phi_{-s}\phi_s(w))=(s,w)$ である。また $\Psi\circ\Phi(z)=\phi_{-\tau(z)}\phi_{\tau(z)}(z)=z$ である。よって $\Phi$ は微分同相である。
作用の書き換え.$\phi_{\tau(z)-1}(g_\alpha z)=\phi_{\tau(z)-1}\phi_1(z)=\phi_{\tau(z)}(z)$ のノルムは $1$ なので $\tau(g_\alpha z)=\tau(z)-1$ で、
$$ \Phi(g_\alpha z)=\bigl(-\tau(z)+1,\ \phi_{\tau(z)}(z)\bigr) $$
である。すなわち $\Phi$ で移すと $g_\alpha$ は $(s,w)\mapsto(s+1,w)$ になる。$\mathbb{Z}$ の $\mathbb{R}$ への平行移動による作用は自由かつ固有不連続なので、$G_\alpha$ の $W$ への作用も自由かつ固有不連続であり、$H_\alpha=W/G_\alpha$ は $(\mathbb{R}/\mathbb{Z})\times S^3\cong S^1\times S^3$ に微分同相である。とくに $H_\alpha$ はコンパクト連結である。
複素構造.$g_\alpha$ は双正則なので、自由かつ固有不連続な作用による商 $H_\alpha$ には、射影 $W\to H_\alpha$ が局所双正則になる複素構造がただ 1 つ入る。$W\cong\mathbb{R}\times S^3$ は単連結($S^3$ が単連結)なので、射影 $W\to H_\alpha$ は普遍被覆で、被覆変換群 $G_\alpha\cong\mathbb{Z}$ が基本群に同型である(被覆空間)。$\square$

$\alpha_1=\alpha_2=e^{-1}$ のとき、この構成は $W\cong S^3\times\mathbb{R}$ の動径方向の平行移動として Wel08 Ch. V §5(pp. 200–201)にあり、商が複素多様体になることは同書 Proposition 5.3 による。Künneth の公式(Künnethの公式)により $H_\alpha$ の Betti 数は $b_0=b_1=b_3=b_4=1$、$b_2=0$ で、Euler 数は $0$ である。

$H_\alpha$ は Kähler 計量をもたない

$H_\alpha$ はどんな Kähler 計量ももたない。

$H_\alpha$ が Kähler 形式 $\omega$ をもつとする。$\omega$ は $d$ 閉な実 $2$ 形式で、$\omega\wedge\omega$ は複素多様体の自然な向きについて正の体積形式である(各点で $\omega=\frac i2\sum_j\lambda_j\theta_j\wedge\bar\theta_j$、$\lambda_j>0$ と対角化すると $\omega^2$ は $\lambda_1\lambda_2$ の正の倍の体積形式)。よって $\int_{H_\alpha}\omega\wedge\omega>0$ である。一方 $b_2(H_\alpha)=0$ なので $H^2_{dR}(H_\alpha)=0$ で、$\omega=d\eta$ と書ける。すると $\omega\wedge\omega=d(\eta\wedge\omega)$ で、Stokes の定理から $\int_{H_\alpha}\omega\wedge\omega=0$ となり矛盾する。$\square$

$b_1(H_\alpha)=1$ が奇数であることからも、Hodge 分解(Hodge分解 の命題「Hodge 数の関係」)によって Kähler でないことが分かる。上の証明は $b_2=0$ だけを使い、$b_1$ の偶奇を使わない。すべての Hopf 曲面は一次 Hopf 曲面による有限不分岐被覆をもち(BHPV04 V.18、p. 227。この記事では証明しない)、一次 Hopf 曲面は $S^1\times S^3$ に同相である(同 V.18.4。この記事では証明しない)。Kähler 計量は有限不分岐被覆に引き戻せるので、この 2 つの事実と同じ議論から、どの Hopf 曲面も Kähler 計量をもたない。

正則形式と小平次元

正則 1 形式と多重標準形式

$H_\alpha$ について次が成り立つ。

  1. 正則関数は定数だけである。
  2. $H^0(H_\alpha,\Omega^1)=0$ である。
  3. すべての $n\ge1$ について $P_n(H_\alpha):=\dim H^0(H_\alpha,K^{\otimes n})=0$ である。とくに $p_g=P_1=0$ で、小平次元は $-\infty$ である。

$H_\alpha$ 上の正則なテンソルは、$W$ 上の $g_\alpha$ 不変な正則なテンソルと 1 対 1 に対応する。$W$ 上の正則関数は Hartogs の拡張定理(Hartogsの拡張定理)により $\mathbb{C}^2$ 上の正則関数に延び、$\mathbb{C}^2$ 全体で収束する冪級数 $f=\sum_{a,b\ge0}c_{ab}z_1^az_2^b$ で表される。
1.$f$ が $g_\alpha$ 不変なら $f(\alpha_1z_1,\alpha_2z_2)=f(z)$ で、係数を比べると $c_{ab}\alpha_1^a\alpha_2^b=c_{ab}$ である。$(a,b)\ne(0,0)$ なら $|\alpha_1^a\alpha_2^b|<1$ なので $c_{ab}=0$ で、$f$ は定数である。
2.正則 1 形式 $\theta=f\,dz_1+h\,dz_2$ について $g_\alpha^*\theta=\alpha_1f(g_\alpha z)\,dz_1+\alpha_2h(g_\alpha z)\,dz_2$ なので、不変性は $\alpha_1f(g_\alpha z)=f(z)$、$\alpha_2h(g_\alpha z)=h(z)$ である。$f$ の係数について $c_{ab}\alpha_1^{a+1}\alpha_2^b=c_{ab}$ で、$|\alpha_1^{a+1}\alpha_2^b|<1$ だからすべて $0$ である。$h$ も同様で、$\theta=0$ である。
3.$K^{\otimes n}$ の切断は $W$ 上で $f\,(dz_1\wedge dz_2)^{\otimes n}$ と書け、$g_\alpha^*(dz_1\wedge dz_2)=\alpha_1\alpha_2\,dz_1\wedge dz_2$ なので、不変性は $(\alpha_1\alpha_2)^nf(g_\alpha z)=f(z)$ である。係数について $c_{ab}\alpha_1^{a+n}\alpha_2^{b+n}=c_{ab}$ で、$n\ge1$ なら $|\alpha_1^{a+n}\alpha_2^{b+n}|<1$ だからすべて $0$ である。$P_n$ がすべて $0$ なので小平次元は $-\infty$ である(BHPV04 I.7.2、p. 29)。$\square$

一方、$h^{0,1}=\dim H^1(H_\alpha,\mathcal{O})=1$ であり、Hodge 数は
$$ h^{0,0}=1,\quad h^{1,0}=0,\quad h^{0,1}=1,\quad h^{2,0}=h^{0,2}=h^{1,1}=0 $$
である(BHPV04 V.18.1、p. 226。この記事では証明しない)。$h^{1,0}=0\ne1=h^{0,1}$ なので Hodge 対称性が破れ、$b_1=1=h^{1,0}+h^{0,1}$ である(Hodge対称性・Dolbeaultコホモロジー の例「反例:Hopf 曲面」)。Picard 群は $\mathbb{C}^*$ に同型である(同 V.18.1 (iii))。Bott–Chern コホモロジーの計算は Bott–Chernコホモロジー の定理「Hopf 曲面の Bott–Chern コホモロジー」にある。

楕円ファイブレーション

$H_{(\lambda,\lambda)}$ の楕円ファイブレーション

$0<|\lambda|<1$ とし、$H_\lambda:=H_{(\lambda,\lambda)}$ とおく。$W\to\mathbb{P}^1$、$(z_1,z_2)\mapsto[z_1:z_2]$ は正則写像 $f\colon H_\lambda\to\mathbb{P}^1$ を誘導する。$f$ のどのファイバーも、楕円曲線
$$ E_\lambda:=\mathbb{C}/(2\pi i\,\mathbb{Z}+\log\lambda\,\mathbb{Z}) $$
($\log\lambda$ は $\lambda$ の対数の 1 つ)に双正則である。とくに $H_\lambda$ は代数的でない楕円曲面である。

$[\lambda z_1:\lambda z_2]=[z_1:z_2]$ なので、射影 $p\colon W\to\mathbb{P}^1$ は $g_\lambda$ 不変で、正則写像 $f\colon H_\lambda\to\mathbb{P}^1$ を誘導する。$[a:b]\in\mathbb{P}^1$ の上の $p$ のファイバーは $\{(ua,ub):u\in\mathbb{C}^*\}\cong\mathbb{C}^*$ で、$g_\lambda$ はその上で $u\mapsto\lambda u$ として働く。よって $f$ のファイバーは $\mathbb{C}^*/\lambda^{\mathbb{Z}}$ に双正則である。指数写像 $\mathbb{C}\to\mathbb{C}^*$、$w\mapsto e^w$ は $2\pi i\,\mathbb{Z}$ を核とする全射準同型で、$\lambda^{\mathbb{Z}}$ の逆像は $2\pi i\,\mathbb{Z}+\log\lambda\,\mathbb{Z}$ である。$\operatorname{Re}\log\lambda=\log|\lambda|<0$ なので $\log\lambda$ と $2\pi i$ は $\mathbb{R}$ 上 1 次独立で、これは $\mathbb{C}$ の格子である。よって $\mathbb{C}^*/\lambda^{\mathbb{Z}}\cong E_\lambda$ は楕円曲線(複素トーラス)である。$f$ はコンパクト多様体の間の正則写像なので固有で、ファイバーは連結、すべて滑らかな楕円曲線なので、$f$ は楕円ファイブレーションである。$H_\lambda$ は Kähler でない(thm-hopf-not-kahler)ので射影代数的でない。$\square$

$f$ のファイバーはすべて同じ楕円曲線 $E_\lambda$ で、$f$ は $\mathbb{P}^1$ 上の楕円曲線束(ファイバー束)である。楕円曲面 の Euler 数の式 $e(X)=\sum_se(X_s)$ は $e(H_\lambda)=0$ と整合する。より一般に、$H_\alpha$ が $\mathbb{P}^1$ 上の楕円ファイブレーションをもつのは、整数 $k,l\ge1$ で $\alpha_1^k=\alpha_2^l$ となるときに限り、そうでなければ $H_\alpha$ は $z_2=0$ と $z_1=0$ の像の 2 本の楕円曲線しか既約曲線をもたない(BHPV04 V.18.2、pp. 226–227。この記事では証明しない)。

二次 Hopf 曲面

$0<|\lambda|<1$、$n\ge2$、$\zeta$ を $1$ の原始 $n$ 乗根とし、$W$ の自己同型 $g(z)=\lambda z$、$h(z)=\zeta z$ が生成する群 $G=\langle g,h\rangle$ を考える。$g,h$ は可換で、$G\cong\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ である。$g^mh^k(z)=z$($z\ne0$)なら $\lambda^m\zeta^k=1$ で、絶対値から $m=0$、さらに $\zeta^k=1$ なので $G$ の作用は自由である。$W/G$ は $H_\lambda$ を位数 $n$ の巡回群 $\langle h\rangle$ で自由に割った商なので、コンパクトな複素曲面で、その普遍被覆は $W$、基本群は $\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ である。基本群が $\mathbb{Z}$ でないので、これは二次 Hopf 曲面である。$h$ は prop-hopf-elliptic のファイブレーションを保つので、$W/G$ も $\mathbb{P}^1$ 上の楕円曲面である。

小平の結果

Hopf 曲面は位相と不変量によって特徴づけられる。以下はこの記事では証明しない(BHPV04 V.18、p. 227。同書は小平邦彦の論文に帰している)。

一次 Hopf 曲面の特徴づけ

コンパクト複素曲面 $X$ について、次は同値である。

  1. $X$ は一次 Hopf 曲面である。
  2. $X$ は $S^1\times S^3$ に同相である。
  3. $b_2(X)=0$ かつ $\pi_1(X)\cong\mathbb{Z}$ である。
その他の特徴づけ

thm-hopf-kodaira は BHPV04 V.18.4 である。同じ節に、次の結果も小平によるものとして述べられている(この記事では証明しない)。代数次元(有理型関数体の超越次数)が $1$ の極小なコンパクト曲面で $P_{12}=0$ のものは Hopf 曲面である(V.18.5)。代数次元が $0$ のコンパクト曲面は、$b_1=1$、$b_2=0$ で曲線を含むとき、かつそのときに限り Hopf 曲面である(V.18.7)。どの Hopf 曲面も小平次元は $-\infty$ である(p. 227)。

Enriques–小平の分類では、小平次元が $-\infty$ で $b_1=1$ の曲面を類 VII といい、その極小曲面が分類表の 1 つの類をなす(BHPV04 VI 章 Table 10、p. 244)。Hopf 曲面はその代表的な例である。

反例:仮定を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
def-hopf-diagonal の「$\lvert\alpha_2\rvert<1$」$\alpha=(\frac12,2)$、$g(z_1,z_2)=(\frac12z_1,2z_2)$作用は固有不連続でなく、商 $W/\langle g\rangle$ は Hausdorff でない
def-hopf-diagonal の「原点を除く」$g_\alpha$ を $\mathbb{C}^2$ 全体に作用させる原点が固定点で作用は自由でなく、どの軌道も原点に近づくので商は Hausdorff でない
Kähler 多様体の「$b_2\ge1$、$b_1$ は偶数」の「Kähler」$H_\alpha$(コンパクト複素曲面)$b_2=0$、$b_1=1$
表の確かめ

1 行目:$z_n:=(1,2^{-n})$、$w_n:=g^n(z_n)=(2^{-n},1)$ とおくと $z_n\to(1,0)$、$w_n\to(0,1)$ である。$(1,0)$ と $(0,1)$ のコンパクトな近傍 $K$ をとると、十分大きいすべての $n$ で $g^n(K)\cap K\ne\emptyset$ となり、固有不連続性が破れる。商で $(1,0)$ と $(0,1)$ の像は相異なる(同じ軌道にない:$g^n(1,0)=(2^{-n},0)$)が、近傍で分離できない。

2 行目:$g_\alpha(0)=0$。また任意の $z$ について $g_\alpha^n(z)\to0$($n\to\infty$)なので、原点の像の任意の近傍はすべての点の像を含み、商は Hausdorff でない。

3 行目:$H_\alpha$ の Betti 数は thm-hopf-diffeo と Künneth の公式による。コンパクト Kähler 多様体で $b_2\ge1$ となることは thm-hopf-not-kahler の証明の前半、$b_1$ が偶数であることは Hodge分解 の命題「Hodge 数の関係」による。

関連項目

参考文献

[1]
Wolf P. Barth, Klaus Hulek, Chris A. M. Peters, Antonius Van de Ven, Compact Complex Surfaces, 2nd ed., Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete, 3. Folge, 4, Springer, 2004, I.7.2(小平次元の特徴づけ、p. 29)、V.18(Hopf 曲面。定義 p. 225、18.1 Hodge 数と Picard 群 p. 226、18.2 楕円ファイブレーション pp. 226–227、18.4–18.7 小平の特徴づけ p. 227)、VI.1 Table 10(類 VII、p. 244)
[2]
Raymond O. Wells, Jr., Differential Analysis on Complex Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 65, Springer, 2008, Ch. V §5 Proposition 5.3(p. 199)と Hopf 曲面の構成(pp. 200–201)

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