篩法(sieve method)とは、整数の有限列から有限個の素数の倍数を取り除いた残りの個数(篩関数)を、正確に表したり上下から評価したりする方法である。残りの個数は Möbius 関数を使った約数にわたる和に等しい(Legendre の恒等式)が、項の数が素数の個数について指数的に増えるため、そのままでは $x$ 以下の素数の個数について $x/\log\log x$ 程度の評価しか得られない。包除の和を偶数段で打ち切ると上からの評価になり(Brun の純粋篩)、これにより $x$ 以下の双子素数の個数は $x(\log\log x)^2/(\log x)^2$ の定数倍以下で、双子素数の逆数の和は収束する(Brun の定理)。
篩法(sieve method)は、整数の集まりから、小さい素数で割り切れるものを取り除いた残りの個数を数える、あるいは上下から評価する方法である。Eratosthenesの篩 は $\sqrt x$ 以下の素数の倍数を消して $x$ 以下の素数を取り出すが、篩法はこの「消して残りを数える」操作を、素数の個数だけでなく、双子素数(差が $2$ の素数の組)や $n$ と $N-n$ がともに素数になる $n$ など、さまざまな数え上げに使う。
この記事では、まず篩の問題を定式化し、残りの個数を約数にわたる和で表す Legendre の恒等式を示す(thm-sv-legendre)。この恒等式は正確だが、項の数が素数の個数について指数的に増えるので、そのままでは $x$ 以下の素数の個数 $\pi(x)$ について $x/\log\log x$ 程度の評価しか得られない(prop-sv-legendre-bound)。そこで包除の和を途中で打ち切る Brun の純粋篩(lem-sv-truncation)を使い、$x$ 以下の双子素数の個数が $x(\log\log x)^2/(\log x)^2$ の定数倍以下であることを証明する(thm-sv-brun)。その帰結として、双子素数の逆数の和が収束する(cor-sv-brun-sum)。
以下、$p$ はつねに素数を表す。正の整数 $d$ の相異なる素因数の個数を $\nu(d)$ と書き、$\mu$ は Möbius関数 とする。
$\mathcal{A}=(a_1,\dots,a_N)$ を整数の有限列(同じ値の重複を許す)、$\mathcal{P}$ を素数の有限集合とし、$P:=\prod_{p\in\mathcal{P}}p$ とおく。
$$
S(\mathcal{A},\mathcal{P}):=\#\{i\mid 1\le i\le N,\ \gcd(a_i,P)=1\}
$$
すなわち $\mathcal{A}$ の項のうち $\mathcal{P}$ のどの素数でも割り切れないものの個数を 篩関数 という。$P$ の正の約数 $d$ について
$$
A_d:=\#\{i\mid 1\le i\le N,\ d\mid a_i\}
$$
とおく。$\mathcal{A}$ から $\mathcal{P}$ の素数の倍数を取り除いて $S(\mathcal{A},\mathcal{P})$ を求める、あるいは評価する問題を 篩の問題 といい、そのための方法を 篩法 という。$\mathcal{P}$ を $z$ 以下の素数(またはその一部)にとることが多く、$z$ を 篩の水準 と呼ぶ。
篩法では、$A_d$ が「$\mathcal{A}$ の大きさ $X$」と「$d$ で割り切れる割合 $g(d)$」の積で近似できる状況を扱う。$A_d=Xg(d)+r_d$ と書いて、$r_d$ を 剰余項 と呼ぶ。代表的な例は次の 2 つである。
def-sv-sifting の記号で
$$
S(\mathcal{A},\mathcal{P})=\sum_{d\mid P}\mu(d)A_d
$$
である。和は $P$ の正の約数 $d$ 全体にわたる。
各 $i$ について $g_i:=\gcd(a_i,P)$ とおく。$P$ の約数 $d$ が $a_i$ を割り切ることと、$d$ が $g_i$ を割り切ることは同値である。Möbius関数 の記事の定理「約数にわたる和」により
$$
\sum_{d\mid P,\ d\mid a_i}\mu(d)=\sum_{d\mid g_i}\mu(d)=\begin{cases}1&(g_i=1)\\0&(g_i\ge2)\end{cases}
$$
である。これを $i=1,\dots,N$ について足すと、左辺の和の順序を入れ替えて $\sum_{d\mid P}\mu(d)\,\#\{i\mid d\mid a_i\}=\sum_{d\mid P}\mu(d)A_d$ となり、右辺は $\gcd(a_i,P)=1$ となる $i$ の個数 $S(\mathcal{A},\mathcal{P})$ である。$\square$
これは 包除原理 を「$p\in\mathcal{P}$ で割り切れる項の集まり」に当てはめたものにほかならない(包除原理 の記事の命題「素数で割り切れない数の個数」は $\mathcal{A}=(1,\dots,N)$ の場合である)。
$\mathcal{A}=(1,\dots,100)$、$\mathcal{P}=\{2,3,5,7\}$、$P=210$ とすると、thm-sv-legendre により
$$
S=100-(50+33+20+14)+(16+10+7+6+4+2)-(3+2+1+0)+0=22
$$
である(各項は $\lfloor100/d\rfloor$ で、$d$ は $1$、$2,3,5,7$、$6,10,14,15,21,35$、$30,42,70,105$、$210$ の順)。$\sqrt{100}=10$ なので、残った $22$ 個は $1$ と、$11$ 以上 $100$ 以下の素数 $21$ 個である。これに $2,3,5,7$ を加えて、$100$ 以下の素数は $25$ 個である。
Legendre の恒等式は正確な式だが、$\mathcal{P}$ が $k$ 個の素数からなると和の項は $2^k$ 個あり、各項の剰余項が $1$ 程度でも、誤差は全体で $2^k$ 程度になりうる。篩の水準 $z$ を大きくとって素数の候補を絞ろうとすると、$k$ は $z/\log z$ 程度まで増え、誤差が主要な項を飲み込んでしまう。Brun の発想は、包除の和を「$\nu(d)$ が小さい $d$ だけ」で打ち切ることである。打ち切りの段数が偶数なら上からの評価、奇数なら下からの評価になり(lem-sv-truncation)、項の数は大幅に減る。捨てた項は、主要な項の積 $\prod(1-g(p))$ の展開の「尾」として小さいことを別に示す。
$x\ge e^2$ ならば
$$
\pi(x)<\frac{x}{\log\log x}+x^{\log2}+\log x
$$
である。とくに $\pi(x)/x\to0$($x\to\infty$)である。
$2\le z\le x$ とし、$\mathcal{A}=(1,\dots,\lfloor x\rfloor)$、$\mathcal{P}=\{p\le z\}$ に thm-sv-legendre を使う。$\lfloor x/d\rfloor=x/d-\theta_d$($0\le\theta_d<1$)と書くと
$$
S(\mathcal{A},\mathcal{P})=x\sum_{d\mid P}\frac{\mu(d)}d-\sum_{d\mid P}\mu(d)\theta_d\le x\prod_{p\le z}\Bigl(1-\frac1p\Bigr)+2^{\pi(z)}
$$
である。ここで $\sum_{d\mid P}\mu(d)/d=\prod_{p\le z}(1-1/p)$ は右辺の積を展開したものであり、$P$ の約数は $2^{\pi(z)}$ 個ある。素数の無限性 の記事の命題「Euler積の下からの評価」により $\prod_{p\le z}(1-1/p)<1/\log z$ である。
$x$ 以下の素数のうち $z$ 以下のものは $\pi(z)\le z$ 個である。$z$ より大きいものは $z$ 以下のどの素数でも割り切れないので $S(\mathcal{A},\mathcal{P})$ に数えられ、$1$ も数えられる。よって
$$
\pi(x)\le z+S(\mathcal{A},\mathcal{P})-1< z+\frac{x}{\log z}+2^{\pi(z)}
$$
である。$z=\log x$ とおくと($x\ge e^2$ より $z\ge2$)、$2^{\pi(z)}\le2^{\log x}=x^{\log2}$ なので主張の不等式を得る。$\log2<1$ なので右辺を $x$ で割ったものは $0$ に収束する。$\square$
同じ評価は Pol09 第 6 章の式 (6.5)(p. 165)にあり、その元になる式 (6.3) は Theorem 6.2(p. 170)の例(p. 171)として導かれている。素数定理 によれば $\pi(x)$ は $x/\log x$ 程度の大きさなので、この評価は真の大きさからはまだ遠い。誤差 $2^{\pi(z)}$ を $x$ より小さく保つために、篩の水準を $\log x$ 程度にしか上げられないことが原因である。
def-sv-sifting の記号で、整数 $r\ge0$ について
$$
S_r:=\sum_{d\mid P,\ \nu(d)\le r}\mu(d)A_d
$$
とおく。$r$ が偶数なら $S(\mathcal{A},\mathcal{P})\le S_r$、$r$ が奇数なら $S(\mathcal{A},\mathcal{P})\ge S_r$ である。
項 $a_i$ を割り切る $\mathcal{P}$ の素数の個数を $m$ とする。$P$ の約数 $d$ で $d\mid a_i$、$\nu(d)=j$ となるものは、その $m$ 個の素数から $j$ 個を選ぶ選び方と一対一に対応し、$\mu(d)=(-1)^j$ である。したがって $a_i$ が $S_r$ に寄与する量は
$$
c_i:=\sum_{j=0}^{r}(-1)^j\binom mj
$$
である($j>m$ の項は $0$)。$m=0$ なら $c_i=1$ であり、$a_i$ は $S(\mathcal{A},\mathcal{P})$ に $1$ だけ寄与する。$m\ge1$ なら $a_i$ は $S(\mathcal{A},\mathcal{P})$ に寄与せず、包除原理 の記事の補題「二項係数の交代和の打ち切り」により $c_i=(-1)^r\binom{m-1}r$ である。これは $r$ が偶数なら $0$ 以上、奇数なら $0$ 以下である。$i$ について足せば主張を得る。$\square$
$r$ を $|\mathcal{P}|$ 以上にとれば $S_r$ は thm-sv-legendre の和そのものであり、等号になる。この補題は 包除原理 の記事の定理「Bonferroniの不等式」を篩の言葉で述べたものである(Pol09 Theorem 6.8・Corollary 6.9、pp. 177–178)。
$z\ge3$ ならば $\displaystyle\sum_{p\le z}\frac1p<4\log\log z+6$ である。
$j\ge1$ について、$2^j< p\le2^{j+1}$ を満たす素数の個数を $N_j$ とする。これらの素数はすべて $2^j$ より大きいので、その積は $2^{jN_j}$ 以上である。一方、その積は $2^{j+1}$ 以下の素数すべての積以下であり、Bertrandの仮説 の記事の補題「素数の積の上からの評価」により $4^{2^{j+1}}=2^{2^{j+2}}$ より小さい。よって $jN_j<2^{j+2}$、すなわち $N_j<2^{j+2}/j$ であり、
$$
\sum_{2^j< p\le2^{j+1}}\frac1p\le\frac{N_j}{2^j}<\frac4j
$$
である。$J:=\lceil\log_2z\rceil-1$ とおくと、$z>2$ より $J\ge1$、$z\le2^{J+1}$、$J<\log_2z$ である。$z$ 以下の素数は $2$ か、ある $1\le j\le J$ について $2^j< p\le2^{j+1}$ を満たすので
$$
\sum_{p\le z}\frac1p<\frac12+4\sum_{j=1}^J\frac1j\le\frac12+4(1+\log J)<\frac12+4+4\log\frac{\log z}{\log2}
$$
である。ここで $\sum_{j=1}^J1/j\le1+\int_1^J dt/t$ を使った。$4\log(1/\log2)<1.47$ なので主張を得る。$\square$
実際には $\sum_{p\le z}1/p=\log\log z+B_1+O(1/\log z)$($B_1$ は定数)が成り立つ(Pol09 Theorem 3.14、p. 97)が、ここでは定数倍の違いを気にしない上の評価で足りる。
$z\ge3$ ならば $\displaystyle\prod_{3\le p\le z}\Bigl(1-\frac2p\Bigr)<\frac4{(\log z)^2}$ である。
$p\ge3$ では $0<1-\frac2p<1-\frac2p+\frac1{p^2}=\bigl(1-\frac1p\bigr)^2$ である。$p=2$ の因子 $(1-\frac12)^2=\frac14$ を補うと
$$
\prod_{3\le p\le z}\Bigl(1-\frac2p\Bigr)<\prod_{3\le p\le z}\Bigl(1-\frac1p\Bigr)^2=4\prod_{p\le z}\Bigl(1-\frac1p\Bigr)^2<\frac4{(\log z)^2}
$$
であり、最後は 素数の無限性 の記事の命題「Euler積の下からの評価」による。$\square$
$x\ge1$ を実数、$d$ を平方因子をもたない正の奇数とし、$A_d:=\#\{n\in\mathbb{Z}\mid 1\le n\le x,\ d\mid n(n+2)\}$ とおく。このとき
$$
\Bigl|A_d-2^{\nu(d)}\frac xd\Bigr|\le2^{\nu(d)}
$$
である。
$d$ の素因数 $p$ について、$p\mid n(n+2)$ は $n\equiv0$ または $n\equiv-2\pmod p$ と同値であり、$p$ は奇数なのでこの 2 つの剰余類は異なる。$d$ は平方因子をもたないので、$d\mid n(n+2)$ は「$d$ の各素因数 $p$ について $n\bmod p$ が 2 つの値のどちらか」と同値であり、中国剰余定理 によりこれは $n$ が法 $d$ のちょうど $2^{\nu(d)}$ 個の剰余類のどれかに属することと同値である。
1 つの剰余類の代表を $1\le c\le d$ にとると、その類に属する $1\le n\le x$ の個数は $c+kd\le x$ を満たす整数 $k\ge0$ の個数である。$x< c$ ならそれは $0$ で、$x/d< c/d\le1$ から $|0-x/d|\le1$ である。$x\ge c$ ならそれは $\lfloor(x-c)/d\rfloor+1$ で、$(x-c)/d$ より大きく $(x-c)/d+1$ 以下であり、$1\le c\le d$ からこれは $x/d-1$ より大きく $x/d+1$ 以下である。いずれの場合も 1 つの類の個数と $x/d$ の差は $1$ 以下なので、$2^{\nu(d)}$ 個の類について足して主張を得る。$\square$
$x$ 以下の素数 $p$ で $p+2$ も素数であるものの個数を $\pi_2(x)$ と書く。
定数 $C>0$ と $x_0$ があって、$x\ge x_0$ ならば
$$
\pi_2(x)\le C\,\frac{x(\log\log x)^2}{(\log x)^2}
$$
である。
段 1(篩への帰着)。$3\le z\le x$ とし、$P(z):=\prod_{3\le p\le z}p$、
$$
S(x,z):=\#\{n\in\mathbb{Z}\mid 1\le n\le x,\ \gcd(n(n+2),P(z))=1\}
$$
とおく。$p\le x$ で $p,p+2$ がともに素数のとき、$p\le z$ となるものは $z$ 個以下である。$p>z$ なら、$z$ 以下の奇素数 $q$ は $p$ とも $p+2$ とも異なり、$p,p+2$ は素数なので $q\nmid p(p+2)$ であり、$n=p$ は $S(x,z)$ に数えられる。よって $\pi_2(x)\le z+S(x,z)$ である。
段 2(打ち切り)。$r\ge0$ を偶数とする。lem-sv-truncation($\mathcal{A}=(n(n+2))_{1\le n\le x}$、$\mathcal{P}=\{3\le p\le z\}$)と lem-sv-twin-count により
$$
S(x,z)\le\sum_{d\mid P(z),\ \nu(d)\le r}\mu(d)A_d\le x\sum_{d\mid P(z),\ \nu(d)\le r}\mu(d)\frac{2^{\nu(d)}}d+\sum_{d\mid P(z),\ \nu(d)\le r}2^{\nu(d)}
$$
である。
段 3(主要な項)。積を展開すると $\prod_{3\le p\le z}(1-2/p)=\sum_{d\mid P(z)}\mu(d)2^{\nu(d)}/d$ なので、段 2 の右辺の最初の和は、この積から $\nu(d)>r$ の項を除いたものである。$s:=\sum_{3\le p\le z}2/p$ とおく。$s^j$ を展開すると、$\nu(d)=j$ の各 $d\mid P(z)$ について $\prod_{p\mid d}(2/p)=2^j/d$ が $j!$ 回現れるので、$\sum_{\nu(d)=j}2^j/d\le s^j/j!$ である。よって
$$
\sum_{d\mid P(z),\ \nu(d)\le r}\mu(d)\frac{2^{\nu(d)}}d\le\prod_{3\le p\le z}\Bigl(1-\frac2p\Bigr)+\sum_{j>r}\frac{s^j}{j!}
$$
である。$e^j\ge j^j/j!$ から $j!\ge(j/e)^j$ なので、$r\ge e^2s$ ならば $j>r$ で $es/j< es/r\le1/e$ となり
$$
\sum_{j>r}\frac{s^j}{j!}\le\sum_{j>r}\Bigl(\frac{es}j\Bigr)^j\le\sum_{j>r}e^{-j}< e^{-r}
$$
である。lem-sv-product と合わせて、最初の和は $4/(\log z)^2+e^{-r}$ より小さい。
段 4(剰余項)。$z$ 以下の奇素数の個数は $z$ 以下なので、$\nu(d)=j$ の $d\mid P(z)$ は $z^j$ 個以下である。$2z\ge2$ より
$$
\sum_{d\mid P(z),\ \nu(d)\le r}2^{\nu(d)}\le\sum_{j=0}^r(2z)^j\le2(2z)^r
$$
である。段 1〜4 をまとめて、$r\ge e^2s$ を満たす偶数 $r$ について
$$
\pi_2(x)< z+\frac{4x}{(\log z)^2}+xe^{-r}+2(2z)^r
$$
を得る。
段 5($r$ と $z$ の選び方)。$L:=\log\log x$ とおき、$r:=2\lceil30L+45\rceil$、$z:=x^{1/(2r)}$ とする。$r$ は $L$ の 1 次式程度なので、$x$ が十分大きければ $z\ge3$ である。lem-sv-reciprocal と $z\le x$ から $s<2(4\log\log z+6)\le8L+12$ であり、$e^2<7.5$ なので $e^2s<60L+90\le r$ である。また $r\le60L+92$ である。各項を評価すると
定理の定数は大きいが、篩の水準 $z=x^{1/(2r)}$ が $x$ の小さい冪であることが本質である。Legendre の篩(prop-sv-legendre-bound)では水準を $\log x$ までしか上げられなかったが、打ち切りによって項の数を $(2z)^r$ 程度に抑えたので、水準を $x^{c/\log\log x}$ の形まで上げられた。この定理は Brun が 1919 年に得たものである(Pol09 Theorem 6.11、p. 179)。
$p$ と $p+2$ がともに素数となる素数 $p$ すべてにわたる和
$$
\sum_{p}\Bigl(\frac1p+\frac1{p+2}\Bigr)=\Bigl(\frac13+\frac15\Bigr)+\Bigl(\frac15+\frac17\Bigr)+\Bigl(\frac1{11}+\frac1{13}\Bigr)+\cdots
$$
は収束する(双子素数が有限個なら有限和である)。
$\frac1{p+2}<\frac1p$ なので $\sum_p1/p$ の収束を示せばよい。$j\ge1$ について、$2^j< p\le2^{j+1}$ を満たす双子素数の組の $p$ にわたる $1/p$ の和は $\pi_2(2^{j+1})/2^j$ 以下である。thm-sv-brun により、十分大きい $j$ で
$$
\frac{\pi_2(2^{j+1})}{2^j}\le2C\,\frac{\bigl(\log((j+1)\log2)\bigr)^2}{\bigl((j+1)\log2\bigr)^2}\le\frac{2C}{(\log2)^2}\cdot\frac{(\log(j+1))^2}{(j+1)^2}
$$
である($(j+1)\log2>1$ のとき $0<\log((j+1)\log2)<\log(j+1)$)。$(\log n)^2\le C'n^{1/2}$($C'$ は定数)なので $\sum_n(\log n)^2/n^2$ は収束し、正項級数の比較により $\sum_p1/p$ は収束する。$\square$
双子素数予想 の記事の定理「Brunの定理」はこの系である。すべての素数の逆数の和は発散する(素数の無限性 の記事の定理「素数の逆数の和の発散」)ので、双子素数は素数全体に比べて非常にまばらである。ただし、収束することは双子素数が有限個であることを意味しない。
$\pi_2(x)$ の値と、$x/(\log x)^2$ を比べると次のようになる。
| $x$ | $10^3$ | $10^4$ | $10^5$ | $10^6$ |
|---|---|---|---|---|
| $\pi_2(x)$ | $35$ | $205$ | $1224$ | $8169$ |
| $x/(\log x)^2$ | $21.0$ | $117.9$ | $754.4$ | $5239.2$ |
比は $1.6$〜$1.7$ 程度で、$\pi_2(x)$ は $x/(\log x)^2$ の定数倍程度に見える。thm-sv-brun はこれに $(\log\log x)^2$ の因子を付けた上からの評価であり、因子のない形 $\pi_2(x)\ll x/(\log x)^2$ も、篩の打ち切り方を工夫した Brun–Hooley の篩で証明できる(Pol09 Theorem 6.19、p. 190)。個数そのものについての予想は 双子素数予想 の記事の予想「双子素数の個数の予想」にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 打ち切りの段数 $r$ が偶数(lem-sv-truncation の上からの評価) | $\mathcal{A}=(15)$、$\mathcal{P}=\{3,5\}$、$r=1$ | $S(\mathcal{A},\mathcal{P})\le S_r$ |
| 篩う素数が奇数(lem-sv-twin-count) | $d=2$、$x=100$ | $\lvert A_d-2^{\nu(d)}x/d\rvert\le2^{\nu(d)}$ |
| 篩の水準を小さくとる(prop-sv-legendre-bound の $z=\log x$) | $z=\sqrt x$、$x=10^6$ | 誤差の評価 $2^{\pi(z)}$ が $x$ より小さい |
1 行目:$15$ は $3$ でも $5$ でも割り切れるので $S(\mathcal{A},\mathcal{P})=0$ である。一方 $S_1=A_1-A_3-A_5=1-1-1=-1$ で、$0\le-1$ は成り立たない。奇数段の打ち切りは下からの評価 $S\ge S_1$ を与える($0\ge-1$)。
2 行目:$p=2$ では $n\equiv0$ と $n\equiv-2\pmod2$ が同じ剰余類になる。$2\mid n(n+2)$ は $n$ が偶数であることと同値なので、$A_2=50$ である。一方 $2^{\nu(2)}x/2=100$ で、差 $50$ は $2^{\nu(2)}=2$ を超える。$2$ を篩うときは割合を $2/p$ ではなく $1/2$ としなければならない。
3 行目:Legendre の恒等式自体はどの $z$ でも正しいが、$z=\sqrt{10^6}=1000$ とすると $\pi(1000)=168$ なので $2^{\pi(z)}=2^{168}>3\times10^{50}$ となり、$x=10^6$ をはるかに超える。誤差の評価が主要な項より大きく、$\pi(x)$ について何も分からない。
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