半内積(ノルムの方向微分)

同義語:semiscalar productsemi-scalar product

概要

半内積(ノルムの方向微分)(semiscalar product)とは、実ノルム空間の元 $x,y$ について、$t\mapsto\|x+ty\|^2/2$ の $t=0$ での右微分係数 $[x,y]_+$ と左微分係数 $[x,y]_-$ のことである。凸性によりこれらはいつも存在し、内積空間では内積に一致する。双対写像 $F$ を使うと $[x,y]_+$ は $F(x)$ の元の $y$ での値の最大値、$[x,y]_-$ は最小値に等しい。とくに $[x,y]_+=[x,y]_-$ がすべての $y$ で成り立つことは $F(x)$ が 1 点であることと同値であり、$x\ne0$ ではノルムが $x$ で Gâteaux 微分可能であることとも同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ノルム空間, 凸関数, Hahn–Banachの定理, 双対写像(Banach空間)

何を捉える概念か

実内積空間では、内積はノルムの 2 乗の微分として取り出せる。実際
$$ \frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t}=(x,y)+\frac t2\|y\|^2\longrightarrow(x,y)\qquad(t\to0) $$
である。一般のノルム空間でも左辺は意味をもつが、$t\to0$ の極限は存在するとは限らない。たとえば $(\mathbb R^2,\|\cdot\|_1)$ で $x=e_1$、$y=e_2$ とすると、$\|x+ty\|_1^2=(1+|t|)^2$ なので、$t\downarrow0$ では $1$ に、$t\uparrow0$ では $-1$ に近づく。
それでも、片側の極限はいつも存在する。$t\mapsto\|x+ty\|^2$ が凸関数だからである。この片側極限を半内積(semiscalar product)といい、$[x,y]_+$、$[x,y]_-$ と書く。半内積は内積の代わりとして働き、双対写像(Banach空間) $F$ を使って
$$ [x,y]_+=\max_{f\in F(x)}\langle f,y\rangle,\qquad[x,y]_-=\min_{f\in F(x)}\langle f,y\rangle $$
と表される(主定理)。とくに $[x,y]_+=[x,y]_-$ がすべての $y$ で成り立つこと、すなわち各 $y$ について $t\mapsto\|x+ty\|^2$ が $t=0$ で微分可能であることは、$F(x)$ が 1 点であることと同値になる。
名前について:「半内積」という語は、Cauchy–Schwarzの不等式 の記事の定義「半内積と内積」のように、正定値性だけを外した内積(双線形または半双線形な形式)の意味でも使われる。この記事の半内積は双線形ではなく、それとは別の概念である。
以下、$X$ を実ノルム空間、$X^*$ をその連続双対空間とし、$\langle f,x\rangle=f(x)$、双対ノルム $\|f\|=\sup_{\|x\|\le1}\langle f,x\rangle$、双対写像
$$ F(x)=\{f\in X^*:\|f\|=\|x\|,\ \langle f,x\rangle=\|x\|^2\} $$
は 双対写像(Banach空間) の定義「双対写像(Banach空間)」のとおりとする。

定義

$x,y\in X$ と $t\ne0$ について
$$ h_{x,y}(t)=\frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t} $$
とおく。

差分商の単調性と有界性

$x,y\in X$ とする。

  1. $h_{x,y}$ は $(0,\infty)$ 上で単調増加である。
  2. $t>0$ なら $|h_{x,y}(t)|\le\|y\|\bigl(\|x\|+\frac t2\|y\|\bigr)$ である。
  3. $t>0$ なら $h_{x,y}(-t)=-h_{x,-y}(t)$ である。

1:$\varphi(z)=\frac12\|z\|^2$ は $X$ 上の凸関数である($\|tz+(1-t)w\|^2\le(t\|z\|+(1-t)\|w\|)^2\le t\|z\|^2+(1-t)\|w\|^2$)。$h_{x,y}(t)=(\varphi(x+ty)-\varphi(x))/t$ なので、劣微分 の補題「凸関数の方向微分」の 1 による。
2:$\bigl|\|x+ty\|^2-\|x\|^2\bigr|=\bigl|\|x+ty\|-\|x\|\bigr|\,\bigl(\|x+ty\|+\|x\|\bigr)\le t\|y\|\,(2\|x\|+t\|y\|)$ を $2t$ で割ればよい。
3:$h_{x,y}(-t)=\dfrac{\|x-ty\|^2-\|x\|^2}{-2t}=-h_{x,-y}(t)$ である。$\square$

1・2 から、$t\downarrow0$ での $h_{x,y}(t)$ の極限は下限に等しく、$-\|x\|\,\|y\|$ 以上の実数である。

半内積(ノルムの方向微分)

実ノルム空間 $X$ の $x,y$ について
$$ [x,y]_+=\lim_{t\downarrow0}\frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t}=\inf_{t>0}\frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t},\qquad [x,y]_-=\lim_{t\uparrow0}\frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t} $$
とおき、$[x,y]_+$ を上半内積、$[x,y]_-$ を下半内積という。両者をまとめて半内積という。

lem-sip-quotient の 3 から $[x,y]_-=-[x,-y]_+$ であり、下半内積の極限も存在する。$[x,y]_\pm$ は関数 $\varphi=\frac12\|\cdot\|^2$ の点 $x$ での $y$ 方向の右・左の方向微分である。$x\ne0$ なら $\|x+ty\|^2-\|x\|^2=(\|x+ty\|-\|x\|)(\|x+ty\|+\|x\|)$ から
$$ [x,y]_+=\|x\|\lim_{t\downarrow0}\frac{\|x+ty\|-\|x\|}t $$
であり、上半内積はノルムそのものの右方向微分の $\|x\|$ 倍でもある。Bre11 Exercise 1.25(pp. 28–29)は $[x,y]_+$ を $[x,y]$ と書いて半内積(semiscalar product)と呼んでいる。

双対写像による表示

半内積の最大値・最小値表示

すべての $x,y\in X$ について
$$ [x,y]_+=\max_{f\in F(x)}\langle f,y\rangle,\qquad[x,y]_-=\min_{f\in F(x)}\langle f,y\rangle $$
が成り立つ。最大値・最小値は達成される。

$q(y)=[x,y]_+$ とおく。
段 1:$F(x)$ の元は $q$ で抑えられる。 $g\in F(x)$ とする。双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 4 を $x+ty$($t>0$)に使うと $\frac12\|x+ty\|^2-\frac12\|x\|^2\ge t\langle g,y\rangle$ であり、$t$ で割って $t\downarrow0$ とすると $\langle g,y\rangle\le q(y)$ を得る。
段 2:$q$ は劣線形である。 $\mu>0$ なら、$s=\mu t$ と置き換えて $h_{x,\mu y}(t)=\mu h_{x,y}(\mu t)$ なので $q(\mu y)=\mu q(y)$ であり、$q(0)=0$ である。$y,z\in X$、$t>0$ について、$x+t(y+z)=\frac12(x+2ty)+\frac12(x+2tz)$ と $\varphi=\frac12\|\cdot\|^2$ の凸性から $h_{x,y+z}(t)\le h_{x,y}(2t)+h_{x,z}(2t)$ であり、$t\downarrow0$ として $q(y+z)\le q(y)+q(z)$ を得る。
段 3:最大値を与える元の構成。 $y$ を固定し、$G=\{sy:s\in\mathbb R\}$ 上の線形汎関数 $\ell(sy)=s\,q(y)$ を考える($y=0$ なら $\ell=0$)。$s\ge0$ なら $\ell(sy)=q(sy)$ であり、$s< 0$ なら段 2 から $q(y)+q(-y)\ge q(0)=0$ なので $\ell(sy)=-|s|q(y)\le|s|q(-y)=q(sy)$ である。Hahn–Banachの定理 の定理「Hahn–Banachの定理(解析形)」により、$X$ 上の線形汎関数 $f$ で、$G$ 上で $f=\ell$、$X$ 上で $f\le q$ となるものがある。lem-sip-quotient の 2 から $q(z)\le\|x\|\,\|z\|$ なので、$\langle f,z\rangle\le\|x\|\,\|z\|$、$-\langle f,z\rangle=\langle f,-z\rangle\le\|x\|\,\|z\|$ であり、$f\in X^*$、$\|f\|\le\|x\|$ である。さらに $q(x)=\|x\|^2$、$q(-x)=-\|x\|^2$($\|x-tx\|^2-\|x\|^2=(t^2-2t)\|x\|^2$ から)なので、$\langle f,x\rangle\le\|x\|^2$ と $-\langle f,x\rangle\le-\|x\|^2$ から $\langle f,x\rangle=\|x\|^2$ である。双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 1 により $f\in F(x)$ であり、$\langle f,y\rangle=\ell(y)=q(y)$ である。
段 1 と段 3 から最大値の式を得る。最小値の式は $[x,y]_-=-[x,-y]_+=-\max_{f\in F(x)}\langle f,-y\rangle=\min_{f\in F(x)}\langle f,y\rangle$ による。$\square$

この定理は 劣微分 の定理「連続点での劣微分」を連続な凸関数 $\varphi=\frac12\|\cdot\|^2$ に使ったものと同じ内容である($F(x)$ が $\varphi$ の劣微分であることは 双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 4)。最大値の式は Bre11 Exercise 1.25 の 5(p. 28)にある。

半内積の基本性質

$x,y,z\in X$ とする。

  1. $|[x,y]_\pm|\le\|x\|\,\|y\|$、$[x,x]_\pm=\|x\|^2$、$[x,y]_-\le[x,y]_+$ である。
  2. $y\mapsto[x,y]_+$ は劣線形である:$[x,\mu y]_+=\mu[x,y]_+$($\mu\ge0$)、$[x,y+z]_+\le[x,y]_++[x,z]_+$。
  3. $\lambda\in\mathbb R$、$\mu\ge0$ について $[x,\lambda x+\mu y]_+=\lambda\|x\|^2+\mu[x,y]_+$ である。
  4. $\lambda,\mu\ge0$ について $[\lambda x,\mu y]_+=\lambda\mu[x,y]_+$ である。
  5. $(x,y)\mapsto[x,y]_+$ は $X\times X$ 上で上半連続である。

1〜4 は、$F(x)$ の元 $f$ が $\|f\|=\|x\|$、$\langle f,x\rangle=\|x\|^2$ を満たす線形汎関数であることを thm-sip-max に使う。

詳細

1:$|\langle f,y\rangle|\le\|x\|\,\|y\|$、$\langle f,x\rangle=\|x\|^2$ と、最大値が最小値以上であることによる。2:線形汎関数の族の上限は劣線形である。3:$f\in F(x)$ について $\langle f,\lambda x+\mu y\rangle=\lambda\|x\|^2+\mu\langle f,y\rangle$ であり、$\mu\ge0$ なので $f$ についての最大値は $\lambda\|x\|^2+\mu[x,y]_+$ である。4:$\lambda>0$ なら 双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 3 から $F(\lambda x)=\lambda F(x)$ なので、$[\lambda x,\mu y]_+=\max_{f\in F(x)}\lambda\langle f,\mu y\rangle=\lambda\mu[x,y]_+$ である。$\lambda=0$ なら両辺は $0$ である($F(0)=\{0\}$)。

5:def-sip により $[x,y]_+=\inf_{t>0}h_{x,y}(t)$ であり、各 $t>0$ について $(x,y)\mapsto h_{x,y}(t)$ はノルムの連続性から連続である。連続関数の族の下限は上半連続である。$\square$

5 を連続性に強めることはできない。$(\mathbb R^2,\|\cdot\|_1)$ で $x_n=(1,1/n)\to x=e_1$、$y=-e_2$ とすると、下の ex-sip-finite から $[x_n,y]_+=-(1+\frac1n)\to-1$ だが $[x,y]_+=1$ である。これらの性質は Bre11 Exercise 1.25 の 2〜4(p. 28)にある。

微分可能性との関係

半内積の一致と双対写像の一意性

$x\in X$ について、次は同値である。

  1. $F(x)$ は 1 点からなる。
  2. すべての $y$ で $[x,y]_-=[x,y]_+$ である。すなわち、すべての $y$ について $t\mapsto\|x+ty\|^2$ は $t=0$ で微分可能である。
  3. $y\mapsto[x,y]_+$ は線形である。
  4. ある $A\in X^*$ がすべての $y$ で $[x,y]_+=\langle A,y\rangle$ を満たす。
    このとき $F(x)=\{A\}$ である。さらに $x\ne0$ なら、これらは「ノルムが $x$ で Gâteaux 微分可能であること」、すなわち、すべての $y$ で極限 $\lim_{t\to0}\frac{\|x+ty\|-\|x\|}t$ が存在して $y$ について連続線形であることとも同値であり、その極限は $\langle A,y\rangle/\|x\|$ である。

1 ⇒ 2:thm-sip-max の最大値と最小値が 1 点の上でとられるので等しい。
2 ⇒ 3:$q(y)=[x,y]_+$ とおく。2 と $[x,y]_-=-[x,-y]_+$ から $q(-y)=-q(y)$ である。劣線形性(cor-sip-basic の 2)から $q(y+z)\le q(y)+q(z)$ であり、$-y-z$ に使うと $q(y+z)=-q(-y-z)\ge-q(-y)-q(-z)=q(y)+q(z)$ なので加法的である。正の数倍と $q(-y)=-q(y)$ から、すべての実数倍について斉次である。
3 ⇒ 4:$|q(y)|\le\|x\|\,\|y\|$(cor-sip-basic の 1)なので $q$ は連続であり、$A=q$ とすればよい。
4 ⇒ 1:$f\in F(x)$ なら thm-sip-max から $\langle f,y\rangle\le\langle A,y\rangle$ がすべての $y$ で成り立ち、$y$ を $-y$ に替えると等号である。よって $F(x)\subset\{A\}$ であり、$F(x)$ は空でないので(双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 2)$F(x)=\{A\}$ である。
ノルムの微分:$x\ne0$ とする。$t\to0$ で $\|x+ty\|+\|x\|\to2\|x\|\ne0$ なので、$\frac{\|x+ty\|^2-\|x\|^2}{2t}=\frac{\|x+ty\|-\|x\|}t\cdot\frac{\|x+ty\|+\|x\|}2$ から、右(左)極限 $\lim\frac{\|x+ty\|-\|x\|}t$ はそれぞれ $[x,y]_\pm/\|x\|$ に等しい。よって両側の極限が存在して $y$ について連続線形であることは、2 と 4 を合わせた条件と同値である。$\square$

双対ノルムが狭義凸な場合

$X^*$ のノルムが狭義凸ノルムなら、$X$ のノルムは $0$ 以外のすべての点で Gâteaux 微分可能であり、$x\ne0$ での $y$ 方向の微分は $\langle F(x),y\rangle/\|x\|$ である。

双対写像(Banach空間) の定理「狭義凸性と双対写像」の 1 により $F(x)$ は 1 点なので、thm-sip-gateaux による。$\square$

たとえば $1< p<\infty$ の $L^p$(σ-有限な測度空間上の実数値関数)では、双対 $L^q$ のノルムが狭義凸なので、$L^p$ のノルムは $0$ 以外で Gâteaux 微分可能である(双対写像(Banach空間) の例「数ベクトル空間の $p$ ノルム」の後の注意)。

例

内積空間

$X$ が実内積空間なら、冒頭の計算から $[x,y]_+=[x,y]_-=(x,y)$ である。半内積は内積に一致し、thm-sip-gateaux により $F(x)$ は $y\mapsto(x,y)$ だけからなる。

数ベクトル空間の $p$ ノルム

$X=\mathbb R^n$、$x\ne0$、$r=\|x\|_p$ とする。

  1. $p=1$:$[x,y]_+=r\Bigl(\sum_{x_i\ne0}(\operatorname{sign}x_i)\,y_i+\sum_{x_i=0}|y_i|\Bigr)$。
  2. $p=\infty$:$I=\{i:|x_i|=r\}$ とすると $[x,y]_+=r\max_{i\in I}(\operatorname{sign}x_i)\,y_i$。
  3. $1< p<\infty$:$[x,y]_+=[x,y]_-=r^{2-p}\sum_i|x_i|^{p-2}x_iy_i$($x_i=0$ の項は $0$)。
    $[x,y]_-$ は $[x,y]_-=-[x,-y]_+$ から得られる。$x=0$ ならどの $p$ でも $[0,y]_\pm=0$ である。

thm-sip-max を 双対写像(Banach空間) の例「数ベクトル空間の $p$ ノルム」の $F(x)$ に使う。1:$f\in F(x)$ の成分は $x_i\ne0$ なら $r\operatorname{sign}x_i$ に決まり、$x_i=0$ なら $[-r,r]$ を独立に動くので、$\sum_if_iy_i$ の最大値は $f_i=r\operatorname{sign}y_i$($x_i=0$ の $i$)でとられる。2:$f_i=c_i\operatorname{sign}x_i$($i\in I$)、$c_i\ge0$、$\sum_{i\in I}c_i=r$、他の成分は $0$ なので、$\sum_ic_i(\operatorname{sign}x_i)y_i$ の最大値は、重み $r$ を $(\operatorname{sign}x_i)y_i$ が最大の $i$ に集めたときの値である。3:$F(x)$ の唯一の元との積である。$\square$

1 で $x$ の成分に $0$ があると、$y$ をその成分の方向にとれば $[x,y]_+=r|y_i|$、$[x,y]_-=-r|y_i|$ となり、$\|\cdot\|_1$ は $x$ で微分可能でない。2 で $I$ が 2 つ以上の元をもつときも同様である。3 は Bre11 Exercise 1.25 の 6(p. 29)の計算にあたる。

双対写像の値の選択

2 変数関数 $\langle\!\langle\cdot,\cdot\rangle\!\rangle\colon X\times X\to\mathbb R$ で、第 1 変数について線形で、$\langle\!\langle x,x\rangle\!\rangle=\|x\|^2$、$|\langle\!\langle y,x\rangle\!\rangle|\le\|y\|\,\|x\|$ を満たすものを考える。このような関数について、$y\mapsto\langle\!\langle y,x\rangle\!\rangle$ はいつも $F(x)$ の元である(双対写像(Banach空間) の定理「双対写像の基本性質」の 1)。各 $x$ について $f_x\in F(x)$ を 1 つずつ選び $\langle\!\langle y,x\rangle\!\rangle=\langle f_x,y\rangle$ とおけば、この条件を満たす関数が得られ、thm-sip-max から $[x,y]_-\le\langle\!\langle y,x\rangle\!\rangle\le[x,y]_+$ である。ノルムが $x\ne0$ で Gâteaux 微分可能なら、thm-sip-gateaux により $\langle\!\langle\cdot,x\rangle\!\rangle$ は選び方によらず $F(x)$ の唯一の元に等しい。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
$F(x)$ が 1 点であること$(\mathbb R^2,\|\cdot\|_1)$、$x=e_1$、$y=e_2$$[x,y]_-=[x,y]_+$(thm-sip-gateaux)
cor-sip-basic の 3 の $\mu\ge0$同じ $x,y$ で $\mu=-1$、$\lambda=0$$[x,\mu y]_+=\mu[x,y]_+$
$X^*$ の狭義凸性$(\mathbb R^2,\|\cdot\|_\infty)$、$x=(1,1)$、$y=e_2$ノルムの Gâteaux 微分可能性(cor-sip-smooth)

1 行目:ex-sip-finite の 1 から $[x,y]_+=1$、$[x,y]_-=-[x,-y]_+=-1$。$F(e_1)=\{(1,b):|b|\le1\}$ は 1 点でない。2 行目:$[x,-y]_+=1\ne-1=-[x,y]_+$。3 行目:$X^*=(\mathbb R^2,\|\cdot\|_1)$ は狭義凸でなく、ex-sip-finite の 2 から $[x,y]_+=1$、$[x,y]_-=-[x,-y]_+=-\max(0,-1)=0$ なので、ノルムは $x$ で微分可能でない。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Exercise 1.25(pp. 28–29、半内積の定義・性質・双対写像による最大値表示・$\mathbb R^n$ での計算)

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