Neumann級数

同義語:Neumann seriesノイマン級数

概要

Neumann級数(Neumann series)とは、単位元をもつ Banach 代数の元 $a$(たとえば Banach 空間上の有界線形作用素)について、等比級数にならって作った級数 $\sum_{n\ge0}a^n$ のことである。この級数がノルム収束することは、$a^n\to0$ であることとも、ある $m$ について $\|a^m\|<1$ であることとも同値で、そのとき和は $1-a$ の逆元になる。複素 Banach 代数では収束はスペクトル半径が $1$ 未満であることと同値だが、実数体の上ではスペクトルだけでは判定できない。逆元の摂動の評価や、Volterra 型の積分方程式を逐次代入で解くときに使う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Banach代数, Banach空間, 等比級数

等比級数を作用素へ

複素数 $x$ が $|x|<1$ をみたすとき、等比級数 は $\sum_{n\ge0}x^n=1/(1-x)$ を与える。同じ式を行列や有界線形作用素に当てはめたものが Neumann級数(Neumann series)$\sum_{n\ge0}T^n$ である。収束すれば、その和は $I-T$ の逆を与える。方程式 $u-Tu=f$ を $u=f+Tf+T^2f+\cdots$ と逐次代入で解くことに当たり、積分方程式・逆元の摂動・反復法の基本の道具になる。
Banach代数 の記事の命題「Neumann 級数」は、$\|a\|<1$ という十分条件で収束と逆元を示している。この記事では、収束が $a^n\to0$ とも、ある $m$ での $\|a^m\|<1$ とも同値であることを示し、条件 $\|a\|<1$ では捉えられない収束を扱う。あわせて、複素数体と実数体で、スペクトルが収束を判定できるかどうかが分かれることを例で確かめる。

定義

以下、$A$ は $\mathbb R$ または $\mathbb C$ 上の単位的 Banach 代数とする。つまり、単位元 $1$ をもつ結合的な代数で、ノルムについて完備であり、$\|ab\|\le\|a\|\,\|b\|$ と $\|1\|=1$ をみたすものである(複素数体の場合が Banach代数 の定義「単位的 Banach 代数」で、実数体の場合も同じ条件で定める)。代表例は、実または複素の Banach 空間 $X\ne\{0\}$ 上の有界線形作用素の全体 $L(X)$ に作用素ノルムを入れたもので、単位元は恒等作用素 $I$ である。$a^0=1$ とする。

Neumann 級数

$a\in A$ について、級数 $\sum_{n=0}^{\infty}a^n$ を $a$ の Neumann 級数 という。部分和を $s_N:=\sum_{n=0}^{N}a^n$ と書き、$(s_N)_N$ が $A$ のノルムで収束するとき、Neumann 級数は収束するという。$A=L(X)$ の元 $T$ については $\sum_{n\ge0}T^n$ である。

部分和については、積を展開して打ち消し合う項を消すと、
$$ (1-a)s_N=s_N(1-a)=1-a^{N+1} $$
が成り立つ。$a$ の冪どうしは可換なので、非可換な $A$ でも左右の両方で成り立つ。

収束の判定

Neumann 級数の収束の判定

$A$ を実または複素の単位的 Banach 代数、$a\in A$ とする。次の 4 条件は同値である。

  1. $\sum_{n\ge0}\|a^n\|<\infty$。
  2. Neumann 級数 $\sum_{n\ge0}a^n$ が収束する。
  3. $n\to\infty$ のとき $a^n\to0$。
  4. ある整数 $m\ge1$ について $\|a^m\|<1$。
    これらが成り立つとき、$1-a$ は $A$ で可逆で、
    $$ (1-a)^{-1}=\sum_{n=0}^{\infty}a^n,\qquad (1-a)^{-1}-s_N=a^{N+1}(1-a)^{-1}\quad(N\ge0) $$
    である。さらに 4 の $m$ について $1-a^m$ も可逆で、$(1-a)^{-1}=(1+a+\cdots+a^{m-1})(1-a^m)^{-1}$ である。
冪を $m$ 個ずつまとめて評価する

1⇒2:$A$ は完備なので、絶対収束する級数は収束する($M>N$ なら $\|s_M-s_N\|\le\sum_{n=N+1}^{M}\|a^n\|$ で、$(s_N)$ は Cauchy 列である)。
2⇒3:$a^{N+1}=s_{N+1}-s_N$ で、$(s_N)$ が収束するので右辺は $0$ に近づく。
3⇒4:$a^n\to0$ なら、十分大きい $m$ で $\|a^m\|<1$ である。
4⇒1:$\theta:=\|a^m\|<1$、$C:=\max_{0\le k< m}\|a^k\|$ とおく($\|a^0\|=\|1\|=1$ なので $C\ge1$)。任意の $n\ge0$ を $n=qm+k$($q\ge0$、$0\le k< m$)と書くと、劣乗法性から
$$ \|a^n\|=\|(a^m)^qa^k\|\le\|a^m\|^q\,\|a^k\|\le C\theta^q $$
である。$q$ を固定したとき $n=qm+k$ の形の $n$ は $m$ 個なので、$\sum_{n\ge0}\|a^n\|\le mC\sum_{q\ge0}\theta^q=mC/(1-\theta)<\infty$ である。
逆元:和を $s$ とおく。部分和の恒等式 $(1-a)s_N=s_N(1-a)=1-a^{N+1}$ で $N\to\infty$ とすると、3 と積の連続性から $(1-a)s=s(1-a)=1$ となる。よって $1-a$ は可逆で、$s$ がその逆元である。誤差の式は、
$$ s-s_N=\sum_{n>N}a^n=a^{N+1}\sum_{k\ge0}a^k=a^{N+1}s $$
による(左から $a^{N+1}$ を掛ける写像は連続なので、和の中に入れてよい)。
最後の式:$p:=1+a+\cdots+a^{m-1}$ とおくと、部分和の恒等式と同じ計算で $(1-a)p=p(1-a)=1-a^m$ である。$\|a^m\|<1$ なので、ここまでに示したこと(4⇒1 と逆元の段)を $a^m$ に $m=1$ として使うと、$1-a^m$ は可逆である。$p$ と $1-a^m$ は可換なので $(1-a^m)^{-1}$ とも可換で、$(1-a)\cdot p(1-a^m)^{-1}=1$、$p(1-a^m)^{-1}\cdot(1-a)=(1-a^m)^{-1}p(1-a)=1$ となる。逆元は一意なので、$(1-a)^{-1}=p(1-a^m)^{-1}$ である。$\square$

条件 4 で $m=1$ とすると Banach代数 の命題「Neumann 級数」の仮定 $\|a\|<1$ になる。このとき誤差の式から
$$ \Bigl\|(1-a)^{-1}-\sum_{n=0}^{N}a^n\Bigr\|\le\|a\|^{N+1}\,\|(1-a)^{-1}\|\le\frac{\|a\|^{N+1}}{1-\|a\|} $$
を得る。有限個の項で打ち切ったときの誤差が、幾何級数の速さで小さくなる。実 Banach 空間上の作用素について、$\|T\|<1$ のときの逆のノルムと打ち切りの誤差の評価は Bre11 の演習 6.14(p. 174)で、ある $n\ge2$ で $\|T^n\|<1$ のときの $(I-T)^{-1}$ の表し方は演習 6.16 の 4(p. 175)で問われている。

ノルムが $1$ より大きいのに収束する例

$A=M_2(\mathbb C)$ に、$\mathbb C^2$ の最大値ノルム $\|(x_1,x_2)\|=\max(|x_1|,|x_2|)$ から決まる作用素ノルムを入れる。これは各行の成分の絶対値の和の最大値である。
$$ a=\begin{pmatrix}1/2&1\\0&1/2\end{pmatrix},\qquad a^n=\begin{pmatrix}2^{-n}&n2^{1-n}\\0&2^{-n}\end{pmatrix} $$
($a^n$ の式は $n$ についての帰納法で確かめられる)。$\|a\|=3/2>1$ だが、$\|a^n\|=(2n+1)2^{-n}$ で、$\|a^3\|=7/8<1$ である。thm-ns-criterion により Neumann 級数は収束し、成分ごとに $\sum_n2^{-n}=2$、$\sum_nn2^{1-n}=4$ を足すと
$$ (1-a)^{-1}=\sum_{n\ge0}a^n=\begin{pmatrix}2&4\\0&2\end{pmatrix} $$
となる。実際 $\begin{pmatrix}1/2&-1\\0&1/2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2&4\\0&2\end{pmatrix}=I$ である。

条件 4 は $\inf_{m\ge1}\|a^m\|^{1/m}<1$ と同値である。スペクトル半径 の記事の命題「冪のノルムの根の極限」により、この下限は極限 $\lim_n\|a^n\|^{1/n}$ に等しい。$A$ が複素 Banach 代数なら、同じ記事の定理「Gelfand のスペクトル半径公式」によりこの極限はスペクトル半径 $r(a)$ に等しいので、次が従う。

複素 Banach 代数での判定

$A$ を複素単位的 Banach 代数、$a\in A$ とする。Neumann 級数 $\sum a^n$ が収束することと、$a$ のスペクトルが開単位円板 $\{\lambda\in\mathbb C:|\lambda|<1\}$ に含まれること(すなわち $r(a)<1$)は同値である。

行列 $a\in M_d(\mathbb C)$ なら、スペクトルは固有値の全体なので、$a^n\to0$ はすべての固有値の絶対値が $1$ 未満であることと同値になる。ex-ns-jordan の行列の固有値は $1/2$ だけである。

逆元があっても級数は収束しない

$1-a$ が可逆であることから、Neumann 級数の収束は出ない。$A=\mathbb C$、$a=2$ なら $1-a=-1$ は可逆だが、$\sum2^n$ は発散する。$a=-1$ でも $1-a=2$ は可逆で、$a^n=(-1)^n$ は $0$ に近づかない。Neumann 級数で逆元が得られるのは、thm-ns-criterion のとおり $a$ の冪が $0$ に近づく場合に限られる。
実数体の上では、さらに cor-ns-spectral の判定が成り立たなくなる。実 Banach 空間 $E$ 上の $T\in L(E)$ のスペクトルは、$T-\lambda I$ が $E$ から $E$ への全単射でない実数 $\lambda$ の全体として定める(Bre11 §6.3、pp. 162–163)。

実スペクトルが $\{0\}$ でも収束しない例

$E=\mathbb R^3$ に Euclid ノルムを入れ、$J=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}$($90^\circ$ の回転)を使って
$$ T=\begin{pmatrix}0&0\\0&J\end{pmatrix}\qquad(\text{区分けは }1+2) $$
とおく。$T$ の実スペクトルは $\{0\}$ で開区間 $(-1,1)$ に入るが、$\|T^n\|=1$ がすべての $n\ge1$ で成り立つので、Neumann 級数 $\sum T^n$ は発散する。一方 $I-T$ は可逆である。$\mathbb C^3$ の上で同じ行列を考えると固有値は $0,\pm i$ で、絶対値が $1$ の固有値があるので、複素の判定 cor-ns-spectral とは矛盾しない。

要点:回転は等長写像なので冪のノルムが減らない。

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$J^2=-I$ なので $(J-\lambda I)(J+\lambda I)=J^2-\lambda^2I=-(1+\lambda^2)I$ で、すべての実数 $\lambda$ について $J-\lambda I$ は可逆である。$T-\lambda I$ は $-\lambda$ と $J-\lambda I$ を対角に並べたものなので、$\lambda\ne0$ なら可逆、$\lambda=0$ なら第 1 成分を $0$ に送るので全単射でない。よって実スペクトルは $\{0\}$ である。$T^n$ は $0$ と $J^n$ を並べたもので、$J^n$ は回転なので Euclid ノルムを保つ。したがって $\|T^n\|=1$ で、$T^n\not\to0$ だから thm-ns-criterion により級数は発散する。$I-T$ は $1$ と $I-J$ を並べたもので、$1$ は $J$ の実スペクトルにないので可逆である。$\mathbb C^3$ では $J$ の特性多項式が $\lambda^2+1$ なので、固有値は $0,\pm i$ である。$\square$

実スペクトルが $\{0\}$ で $\lim_n\|T^n\|^{1/n}=1$ となる $\mathbb R^3$ の例を作ることは、Bre11 の演習 6.23 の 5(p. 178)で問われている。この例は、実 Banach 空間では $\lim_n\|T^n\|^{1/n}$ と実スペクトルの大きさが一致しないことを示す。実数体の上では、thm-ns-criterion のようにノルムの冪で判定するのが確実である。

逆元の摂動

可逆な $b$ に小さい $h$ を加えた $b+h$ の逆元は、$b+h=b(1+b^{-1}h)$ と書けば Neumann 級数で展開できる。Banach代数 の命題「可逆元は開集合」は可逆性と連続性を述べている。ここでは展開の 1 次の項まで取り出す。

逆元の展開と微分

$A$ を実または複素の単位的 Banach 代数、$b\in A$ を可逆、$h\in A$ を $\|b^{-1}\|\,\|h\|<1$ とする。このとき $b+h$ は可逆で
$$ (b+h)^{-1}=\sum_{n=0}^{\infty}(-b^{-1}h)^nb^{-1}, \qquad \bigl\|(b+h)^{-1}-b^{-1}+b^{-1}hb^{-1}\bigr\|\le\frac{\|b^{-1}\|^3\|h\|^2}{1-\|b^{-1}\|\,\|h\|} $$
である。とくに、逆元をとる写像 $b\mapsto b^{-1}$ は可逆元の全体の上で Fréchet 微分可能で、$b$ での微分は $h\mapsto-b^{-1}hb^{-1}$ である。

要点:$1+b^{-1}h$ に thm-ns-criterion を使い、2 次以上の項を幾何級数で押さえる。

詳しい証明を開く

$\|-b^{-1}h\|\le\|b^{-1}\|\,\|h\|<1$ なので、thm-ns-criterion($m=1$)により $1+b^{-1}h$ は可逆で、逆元は $\sum_n(-b^{-1}h)^n$ である。$b+h=b(1+b^{-1}h)$ なので $b+h$ も可逆で、$(b+h)^{-1}=(1+b^{-1}h)^{-1}b^{-1}$ となり、展開の式を得る。$n=0$ の項は $b^{-1}$、$n=1$ の項は $-b^{-1}hb^{-1}$ なので、差は $\sum_{n\ge2}(-b^{-1}h)^nb^{-1}$ で、そのノルムは $\sum_{n\ge2}\|b^{-1}\|^{n+1}\|h\|^n=\|b^{-1}\|^3\|h\|^2/(1-\|b^{-1}\|\,\|h\|)$ 以下である。右辺は $\|h\|\to0$ のとき $o(\|h\|)$ であり、$h\mapsto-b^{-1}hb^{-1}$ は有界線形写像なので、これが微分である。$\square$

$A=\mathbb C$ なら微分は $h\mapsto-h/b^2$ で、$1/x$ の導関数 $-1/x^2$ にほかならない。非可換な $A$ では $-b^{-2}h$ と書いてはならず、$h$ を両側から $b^{-1}$ で挟む形になる。

積分方程式と反復

区間 $[0,1]$ 上の連続関数の空間 $C([0,1])$(実数値または複素数値)に最大値ノルム $\|u\|_\infty$ を入れる。

Volterra 型の積分方程式

$\Delta=\{(x,t):0\le t\le x\le1\}$ 上の連続関数 $k$ をとり、$M:=\max_\Delta|k|$ とする。$C([0,1])$ 上の作用素
$$ (Vu)(x)=\int_0^xk(x,t)u(t)\,dt $$
は有界で、すべての $n\ge1$ について $\|V^n\|\le M^n/n!$ である。したがって任意のスカラー $\lambda$ と $f\in C([0,1])$ について、方程式 $u-\lambda Vu=f$ は $C([0,1])$ にただ一つの解をもち、それは一様収束する級数
$$ u=\sum_{n=0}^{\infty}\lambda^nV^nf $$
で与えられる。

冪の評価に階乗が現れる

$Vu$ が連続であることは、$k$ が $\Delta$ 上で一様連続であることと、$|\int_x^{x'}k(x',t)u(t)\,dt|\le M\|u\|_\infty|x'-x|$ から分かる。$V$ は線形である。
すべての $n\ge0$ と $x\in[0,1]$ について
$$ |(V^nu)(x)|\le\frac{M^nx^n}{n!}\|u\|_\infty $$
を $n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では明らかである。$n$ で成り立つとすると、
$$ |(V^{n+1}u)(x)|\le\int_0^x|k(x,t)|\,|(V^nu)(t)|\,dt\le\int_0^xM\cdot\frac{M^nt^n}{n!}\|u\|_\infty\,dt=\frac{M^{n+1}x^{n+1}}{(n+1)!}\|u\|_\infty $$
である。$x\le1$ なので $\|V^n\|\le M^n/n!$ を得る。
$\|(\lambda V)^n\|\le(|\lambda|M)^n/n!$ は $n\to\infty$ で $0$ に近づくので、十分大きい $m$ で $\|(\lambda V)^m\|<1$ である。thm-ns-criterion を $A=L(C([0,1]))$ の元 $\lambda V$ に使うと、$I-\lambda V$ は可逆で、逆は $\sum_n\lambda^nV^n$(作用素ノルムで収束)である。解の存在と一意性は $I-\lambda V$ が全単射であることにほかならず、作用素ノルムで収束する級数を $f$ に施した級数は $C([0,1])$ で、すなわち一様に収束する。$\square$

$\|\lambda V\|$ は $|\lambda|$ が大きいと $1$ を超えるので、$m=1$ の判定では足りない。$k\equiv1$ のとき $V$ は Volterra作用素 で、$L^p(0,1)$ の上でも $\|V^n\|\le1/n!$ となることが Bre11 の演習 6.23 の 6・7(p. 178)で問われている。
同じ考え方は、線形の反復の収束にも使える。

線形反復の収束

$X$ を Banach 空間、$T\in L(X)$ をある $m\ge1$ で $\|T^m\|<1$ をみたすもの、$c\in X$ とする。任意の $x_0\in X$ から $x_{k+1}=Tx_k+c$ で作った列は、方程式 $x=Tx+c$ のただ一つの解 $x_*=(I-T)^{-1}c$ に収束する。

帰納法で $x_k=T^kx_0+\sum_{j=0}^{k-1}T^jc$ である。thm-ns-criterion により $T^k\to0$ で、$\sum_jT^jc$ は $(I-T)^{-1}c$ に収束する。よって $x_k\to(I-T)^{-1}c$ である。$x=Tx+c$ は $(I-T)x=c$ と同じで、$I-T$ は可逆なので解はただ一つである。$\square$

$\|T\|<1$ なら写像 $x\mapsto Tx+c$ は縮小写像で、Banachの不動点定理 からも同じ結論が出る。ex-ns-jordan の行列のように $\|T\|>1$ のときは、与えられたノルムでは縮小写像でないが、反復はやはり収束する。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
完備性多項式環 $\mathbb C[z]$ に閉単位円板上の最大値ノルム、$a=z/2$$\|a\|<1$ なのに級数が環の中で収束せず、$1-a$ が可逆でない
ある $m$ で $\|a^m\|<1$$A=\mathbb C$、$a=2$級数の収束($1-a=-1$ は可逆なのに発散する)
スカラーが複素数$\mathbb R^3$ の $T$(ex-ns-real)スペクトルが開単位円板に入れば級数が収束すること
反例の表の確かめ
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1 行目:$\mathbb C[z]$ は最大値ノルムで劣乗法的なノルム代数で、$\|z/2\|=1/2$ である。部分和 $\sum_{n\le N}(z/2)^n$ は Cauchy 列だが、一様極限 $1/(1-z/2)$ は多項式でない(多項式なら $(1-z/2)\cdot p(z)=1$ となり、次数を比べて矛盾する)。$\mathbb C[z]$ の可逆元は $0$ でない定数だけなので $1-z/2$ は可逆でない。同じ例は Banach代数 の節「どの条件を使ったか」にもある。2 行目は前節のとおりである。3 行目は ex-ns-real である。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, 演習 6.14(p. 174)、演習 6.16 の 4(p. 175)、§6.3 の定義(pp. 162–163)、演習 6.23 の 5–7(p. 178)

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