Grothendieckの非消滅定理

同義語:Grothendieck's non-vanishing theoremGrothendieck nonvanishing theoremグロタンディークの非消滅定理

概要

Grothendieckの非消滅定理(Grothendieck's non-vanishing theorem)とは、Noether 局所環 $(A,\mathfrak m)$ 上の零でない有限生成加群 $M$ について、局所コホモロジー $H^i_{\mathfrak m}(M)$ が $\operatorname{depth}M\le i\le\dim M$ の外で消え、両端の次数 $i=\operatorname{depth}M$ と $i=\dim M$ では零でないという定理である。中心となる最上次数の非消滅は、完備化と Cohen の構造定理で完備正則局所環上の正の階数の加群に帰着し、最上次の Čech コホモロジーが忠実であることから示される。系として、Cohen–Macaulay 性は局所コホモロジーが一つの次数に集中することと同値になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 局所コホモロジー, 深さ, パラメータ系, Čech複体

Grothendieckの非消滅定理(Grothendieck's non-vanishing theorem)とは、Noether 局所環 $(A,\mathfrak m,k)$ 上の零でない有限生成加群 $M$ について、極大イデアルに台をもつ局所コホモロジー $H^i_{\mathfrak m}(M)$ が
$$\operatorname{depth}M\le i\le\dim M$$
の範囲の外では $0$ になり、両端の次数 $i=\operatorname{depth}M$ と $i=\dim M$ では $0$ でない、という定理である。局所コホモロジーは、加群の深さと次元という $2$ つの不変量をちょうど両端の次数として読み取る。とくに $M$ が Cohen–Macaulay であることは、$H^i_{\mathfrak m}(M)$ が $1$ つの次数でしか $0$ でないことと同値になる。
$4$ つの主張のうち、次元を超える次数での消滅は Čech 複体の長さから、深さの次数での振る舞いは正則元についての帰納法から、比較的すぐに分かる。中心は最上次数での非消滅 $H^{\dim M}_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である。この記事では、完備化と Cohen の構造定理で「完備正則局所環上の正の階数の加群」の場合に帰着させ、最上次の Čech コホモロジーの忠実性からこれを直接に証明する。局所双対定理(局所双対定理(Grothendieck))を経由する証明もあるが、ここでは使わない。
Noether 位相空間の上の層コホモロジーが次元を超える次数で消えるという定理(Grothendieckの消滅定理)とは別の主張である。

記号と基本事項

この記事では環は単位元をもつ可換環とする。Noether 環 $A$ のイデアル $I$ と $A$ 加群 $M$ について、$\Gamma_I(M)=\{v\in M\mid\text{ある}\ n\ \text{で}\ I^nv=0\}$ の右導来関手を $H^i_I(M)$ と書く(局所コホモロジー の定義「イデアルに関する局所コホモロジー」)。$(A,\mathfrak m)$ が局所環のとき $H^i_{\mathfrak m}(M)$ を考える。有限生成加群 $M\ne0$ の次元 $\dim M$ は $\operatorname{Supp}M=V(\operatorname{Ann}_AM)$ の Krull 次元、すなわち $\dim A/\operatorname{Ann}_AM$ である。
元の列 $\mathbf f=f_1,\dots,f_r\in A$ の Čech 複体を
$$\check C^\bullet(\mathbf f;M):\ 0\to M\to\bigoplus_iM_{f_i}\to\bigoplus_{i< j}M_{f_if_j}\to\cdots\to M_{f_1\cdots f_r}\to0$$
とする($M$ を $0$ 次に置く。Čech複体)。次の 5 つの事実を繰り返し使う。

  1. Čech 複体による計算:$A$ が Noether で $I=(\mathbf f)$ なら $H^i(\check C^\bullet(\mathbf f;M))\cong H^i_I(M)$ である(局所コホモロジー の定理「Noether環の局所コホモロジーとの比較」)。
  2. 根基だけで決まる:$\sqrt I=\sqrt J$ なら、$I$ の冪と $J$ の冪は互いに相手を含むので $\Gamma_I=\Gamma_J$、よって $H^i_I=H^i_J$ である。
  3. 環の取り替え:環準同型 $A\to B$ と $B$ 加群 $N$ について、$f\in A$ による局所化 $N_f$ は $f$ の像による局所化と同じなので、$\check C^\bullet(\mathbf f;N)$ は $\mathbf f$ の $B$ での像の Čech 複体と一致する。$A,B$ が Noether なら、1 により $H^i_I(N)\cong H^i_{IB}(N)$ である。
  4. 最上次数の右完全性:$r$ 次の Čech コホモロジーは $\bigoplus_iM_{f_1\cdots\widehat{f_i}\cdots f_r}\to M_{f_1\cdots f_r}$ の余核であり、局所化は $-\otimes_AA_f$ なので
    $$H^r(\check C^\bullet(\mathbf f;M))\cong M\otimes_AH^r(\check C^\bullet(\mathbf f;A)).$$
    とくに全射 $M\to N$ は $r$ 次の Čech コホモロジーの全射を引き起こす。
  5. 捩れ性と平坦基底変換:$H^i_I(M)\cong\varinjlim_n\operatorname{Ext}^i_A(A/I^n,M)$ であり(局所コホモロジー の命題「Extの帰納極限」)、$\operatorname{Ext}^i_A(A/I^n,M)$ は $I^n$ で消えるので、$H^i_I(M)$ の各元は $I$ のある冪で消える。また Noether 環の平坦な拡大 $A\to B$ について $H^i_I(M)\otimes_AB\cong H^i_{IB}(M\otimes_AB)$ である(同じ記事の命題「分母とテンソルによる比較」)。

主定理

Grothendieckの非消滅定理

$(A,\mathfrak m,k)$ を Noether 局所環、$M\ne0$ を有限生成 $A$ 加群とし、$t=\operatorname{depth}M$、$d=\dim M$ とする。

  1. $i< t$ なら $H^i_{\mathfrak m}(M)=0$ であり、$H^t_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である。
  2. $i>d$ なら $H^i_{\mathfrak m}(M)=0$ である。
  3. $H^d_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である。
    したがって $t=\min\{i\mid H^i_{\mathfrak m}(M)\ne0\}$、$d=\max\{i\mid H^i_{\mathfrak m}(M)\ne0\}$ である。
深さの次数と次元を超える次数

1. $t$ についての帰納法で示す。$t=0$ なら $\Gamma_{\mathfrak m}(M)\ne0$ であり(ソクル の定理「深さ零の判定」)、これは $H^0_{\mathfrak m}(M)$ に等しい。
$t>0$ とし、$M$ 正則な元 $x\in\mathfrak m$ をとる。$M/xM\ne0$ の深さは $t-1$ である(深さ の定理「正則列とExtによる深さ」)。短完全列 $0\to M\xrightarrow{x}M\to M/xM\to0$ の長完全列
$$H^{i-1}_{\mathfrak m}(M/xM)\to H^i_{\mathfrak m}(M)\xrightarrow{\ x\ }H^i_{\mathfrak m}(M)$$
を考える($i=0$ では左端を $0$ とする)。$i< t$ なら、帰納法の仮定から $H^{i-1}_{\mathfrak m}(M/xM)=0$ なので、$x$ 倍は $H^i_{\mathfrak m}(M)$ の上で単射である。一方、基本事項 5 により $H^i_{\mathfrak m}(M)$ の各元は $x$ のある冪で消えるので、$H^i_{\mathfrak m}(M)=0$ である。$i=t$ では、長完全列の一部
$$0=H^{t-1}_{\mathfrak m}(M)\to H^{t-1}_{\mathfrak m}(M/xM)\to H^t_{\mathfrak m}(M)$$
と帰納法の仮定 $H^{t-1}_{\mathfrak m}(M/xM)\ne0$ から $H^t_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である(StacksDC Tag 0AVZ は $\operatorname{Ext}^i_A(A/I,M)$ を経由して、一般のイデアル $I$ について同じことを示している)。
2. $B=A/\operatorname{Ann}_AM$ は $d$ 次元の Noether 局所環なので、パラメータ系 $y_1,\dots,y_d$ をもつ(パラメータ系 の定理「パラメータ系の存在」)。$\mathfrak m$ の生成元の $B$ での像は $\mathfrak m_B$ を生成し、$\sqrt{(y_1,\dots,y_d)}=\mathfrak m_B$ なので、基本事項 3、2、1 により
$$H^i_{\mathfrak m}(M)\cong H^i_{\mathfrak m_B}(M)\cong H^i(\check C^\bullet(y_1,\dots,y_d;M))$$
である。右辺の複体は $d$ 次までしか項をもたないので、$i>d$ で $0$ である(StacksLC Tag 0DXC は一般の有限生成イデアルについて同じ消滅を示している)。

最上次数の非消滅 3 の証明には、完備正則局所環の上での次の計算を使う。

正則列の最上次Čechコホモロジーの忠実性

$(S,\mathfrak n)$ を $d$ 次元の正則局所環、$z_1,\dots,z_d$ を正則パラメータ系とし、$E=H^d(\check C^\bullet(z_1,\dots,z_d;S))$ とおく。このとき $E$ は忠実な $S$ 加群である。すなわち $0\ne c\in S$ なら $cE\ne0$ である。

$d=0$ なら $S$ は体で $E=S$ なので明らかである。$d\ge1$ とし、$u=z_1\cdots z_d$、$J_t=(z_1^t,\dots,z_d^t)$ とおく。$E$ は $S_u$ を、$1$ つの $z_i$ を逆にしない局所化 $S_{u/z_i}$ の像の和で割った商である。$a\in S$ に $a/u^t$ の類を対応させる写像 $\varphi_t\colon S\to E$ は $J_t$ を消す。実際 $a=z_i^tb$ なら $a/u^t=b/(u/z_i)^t$ は $S_{u/z_i}$ の像に入る。
$\varphi_t$ の核がちょうど $J_t$ であることを示す。$a/u^t$ の類が $0$ なら、ある $s\ge t$ と $b_i\in S$ で $a/u^t=\sum_ib_i/(u/z_i)^s$ となる(分母を共通の大きな冪にそろえた)。両辺に $u^s$ を掛けると $S_u$ で $au^{s-t}=\sum_ib_iz_i^s$ である。正則局所環は整域であり(正則局所環 の命題「正則局所環は整域」)、$S\to S_u$ は単射なので、この等式は $S$ で成り立つ。よって $au^{s-t}\in J_s$ である。$z_1,\dots,z_d$ は正則列であり(同じ記事の命題「正則パラメータ系は正則列で、正則局所環は Cohen–Macaulay」)、局所環の正則列は置換しても冪に置き換えても正則列なので $J_{r+1}:u=J_r$ が成り立つ(局所コホモロジー の補題「正則列の置換と冪」)。これを $s-t$ 回使って $a\in J_t$ を得る。
$0\ne c\in S$ とする。Krullの交叉定理 により $\bigcap_t\mathfrak n^t=0$ であり、$J_t\subset\mathfrak n^t$ なので、$c\notin J_t$ となる $t$ がある。このとき $c\,\varphi_t(1)=\varphi_t(c)\ne0$ なので $cE\ne0$ である。

$\varphi_t$ が $S/J_t$ からの単射を与え、$\varphi_{t+1}(ua)=\varphi_t(a)$ となることから、$E$ は $u$ 倍を遷移写像とする $S/J_t$ の帰納極限である。$S=k[\![z_1,\dots,z_d]\!]$ なら、$E$ は指数がすべて負の単項式 $z_1^{-a_1}\cdots z_d^{-a_d}$($a_i\ge1$)の張る空間であり、これは剰余体の入射包の逆多項式による記述(Matlis双対 の例「逆多項式による $E$ の記述」)と一致する。

最上次数の非消滅

$d=0$ なら $M$ は有限長で $\Gamma_{\mathfrak m}(M)=M\ne0$ なので、$d\ge1$ とする。$4$ 段階で示す。
段階 1:完備化への帰着。 $\hat A$ を $\mathfrak m$ 進完備化とすると、$\hat A$ は Noether 局所環で $A$ 上忠実平坦であり、$\hat M=M\otimes_A\hat A$ である(完備化 の定理「Noether 環の完備化は平坦」「Noether 環の完備化は Noether 環」、忠実平坦)。基本事項 5 により $H^d_{\mathfrak m}(M)\otimes_A\hat A\cong H^d_{\mathfrak m\hat A}(\hat M)$ なので、右辺が $0$ でなければ左辺の $H^d_{\mathfrak m}(M)$ も $0$ でない。$\hat M/\mathfrak m^n\hat M=M/\mathfrak m^nM$ なので両者の Hilbert–Samuel 関数は一致し、Hilbert–Samuel関数 の定理「Hilbert–Samuel 次元定理」により $\dim\hat M=\dim M=d$ である。以下 $A$ は完備と仮定してよい。
段階 2:整域上の正の階数の加群への帰着。 $R=A/\operatorname{Ann}_AM$ は $d$ 次元の完備 Noether 局所環で、$M$ は忠実な有限生成 $R$ 加群だから $\operatorname{Supp}_RM=\operatorname{Spec}R$ である。$\dim R/\mathfrak q=d$ となる極小素イデアル $\mathfrak q$ をとり、$T=R/\mathfrak q$、$N=M/\mathfrak qM$ とおく。$\mathfrak q\in\operatorname{Supp}M$ なので $M_{\mathfrak q}\ne0$ で、中山の補題により $N_{\mathfrak q}=M_{\mathfrak q}/\mathfrak qM_{\mathfrak q}\ne0$ である。$N_{\mathfrak q}$ は $T$ の商体 $L$ との $N\otimes_TL$ に等しいので、$N$ は $T$ 上正の階数をもつ。
$R$ のパラメータ系 $\mathbf y=y_1,\dots,y_d$ をとると、上の証明の 2 と同じく $H^d_{\mathfrak m}(M)\cong H^d(\check C^\bullet(\mathbf y;M))$ であり、基本事項 4 により全射 $M\to N$ から全射
$$H^d(\check C^\bullet(\mathbf y;M))\twoheadrightarrow H^d(\check C^\bullet(\mathbf y;N))$$
を得る。$T/\mathbf yT$ は Artin 環 $R/\mathbf yR$ の商なので、$\mathbf y$ の $T$ での像の生成するイデアルの根基は $T$ の極大イデアル $\mathfrak m_T$ である。基本事項 3、2、1 により右辺は $H^d_{\mathfrak m_T}(N)$ に等しい。よって $H^d_{\mathfrak m_T}(N)\ne0$ を示せばよい。
段階 3:正則な部分環。 $T$ は $d$ 次元の完備 Noether 局所整域である。Cohen の構造定理により、$T$ は剰余体が $T$ と同じ完備正則局所環 $S$ を部分環として含み、$T$ は有限 $S$ 加群である(Mat89 定理 29.4 (iii)、pp. 225–226。混標数の場合に $T$ が整域であることを使う。Cohenの構造定理)。$S\subset T$ は有限な整拡大なので $\dim S=\dim T=d$ である(整拡大)。$S$ の正則パラメータ系 $z_1,\dots,z_d$ について、$T/(z_1,\dots,z_d)T$ は $S/\mathfrak n$ 上の有限次元の加群、すなわち有限長なので、$(z_1,\dots,z_d)T$ の根基は $\mathfrak m_T$ である。基本事項 3、2、1 により
$$H^d_{\mathfrak m_T}(N)\cong H^d(\check C^\bullet(z_1,\dots,z_d;N))\cong N\otimes_SE,\qquad E=H^d(\check C^\bullet(z_1,\dots,z_d;S))$$
である(最後は基本事項 4)。
段階 4:正の階数の検出。 $S$ の商体を $K$ とする。$N$ は有限 $S$ 加群である。段階 2 により $N\otimes_TL\ne0$ なので、$T$ のどの $0$ でない元にも消されない $n_0\in N$ がある。$S\setminus\{0\}\subset T\setminus\{0\}$ なので、$n_0$ は $S$ のどの $0$ でない元にも消されず、$N\otimes_SK$ で $n_0\otimes1\ne0$ である。$K$ 線形写像 $\lambda\colon N\otimes_SK\to K$ で $\lambda(n_0\otimes1)\ne0$ となるものを選ぶ。$N$ の有限個の生成元の $\lambda$ による値の分母を払う $0\ne c'\in S$ をとれば、$\psi(n)=c'\lambda(n\otimes1)$ は $S$ 線形写像 $\psi\colon N\to S$ で、$c:=\psi(n_0)\ne0$ である。
lem-gnv-faithful により $ce\ne0$ となる $e\in E$ がある。$\psi\otimes1\colon N\otimes_SE\to S\otimes_SE=E$ は $n_0\otimes e$ を $ce\ne0$ に送るので、$N\otimes_SE\ne0$ である。段階 3 により $H^d_{\mathfrak m_T}(N)\ne0$ であり、段階 2・1 により $H^d_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である。

段階 4 では $E$ の入射性も $N$ の平坦性も使っていない。必要なのは、$E$ が忠実であること(lem-gnv-faithful)と、正の階数の加群が $S$ への零でない写像をもつことだけである。$M=A$ の場合の $H^{\dim A}_{\mathfrak m}(A)\ne0$ は、StacksLC Tag 0DXE では局所双対定理と双対化複体を使って示されている。

系

Cohen–Macaulay性の判定

Noether 局所環上の有限生成加群 $M\ne0$ が Cohen–Macaulay($\operatorname{depth}M=\dim M$)であることは、$H^i_{\mathfrak m}(M)\ne0$ となる $i$ がただ $1$ つであることと同値である。このときその $i$ は $\dim M$ である。

thm-gnv-main により、$H^i_{\mathfrak m}(M)\ne0$ となる $i$ の最小値は $\operatorname{depth}M$、最大値は $\dim M$ である。両者が等しいことと、そのような $i$ がただ $1$ つであることは同値である。

とくに $d$ 次元の正則局所環 $S$ では $H^i_{\mathfrak n}(S)=0$($i\ne d$)であり、$H^d_{\mathfrak n}(S)$ は lem-gnv-faithful の $E$ である。$H^i_{\mathfrak m}(M)$ がすべての $i$ で Artin 加群であること(局所コホモロジー の定理「最大イデアル支持の局所コホモロジーはArtin」)と合わせると、局所コホモロジーは有限生成加群の深さと次元を「Artin 加群が並ぶ次数の範囲」として表す。

例

深さ0・次元1の環

$A=k[\![x,y]\!]/(x^2,xy)$ では $\operatorname{depth}A=0$、$\dim A=1$ である(ソクル の例「深さ0で次元1の環」の完備化版)。$y$ はパラメータ系で、$A_y$ では $xy=0$ から $x=0$ となるので $A_y=k(\!(y)\!)$ である。よって
$$H^0_{\mathfrak m}(A)=\Gamma_{\mathfrak m}(A)=kx,\qquad H^1_{\mathfrak m}(A)=\operatorname{coker}(A\to A_y)=k(\!(y)\!)/k[\![y]\!]\ne0$$
であり、$0$ でない次数は深さ $0$ と次元 $1$ のちょうど両端である。

1点で交わる2つの平面

$P=k[\![x,y,z,w]\!]$、$A=P/\big((x,y)\cap(z,w)\big)$ とする。$(x,y)+(z,w)$ は極大イデアルなので、短完全列
$$0\to A\to P/(x,y)\oplus P/(z,w)\to k\to0$$
がある。$P/(x,y)\cong k[\![z,w]\!]$ と $P/(z,w)\cong k[\![x,y]\!]$ は $2$ 次元の正則局所環なので、cor-gnv-cm とその後の注意(および基本事項 3)により局所コホモロジーは $2$ 次だけが $0$ でない。$k$ では $0$ 次だけが $k$ である。長完全列から
$$H^0_{\mathfrak m}(A)=0,\qquad H^1_{\mathfrak m}(A)\cong k,\qquad H^2_{\mathfrak m}(A)\twoheadrightarrow H^2_{\mathfrak m}(k[\![z,w]\!])\oplus H^2_{\mathfrak m}(k[\![x,y]\!])\ne0$$
を得る。thm-gnv-main により $\operatorname{depth}A=1$、$\dim A=2$ であり、$A$ は被約だが Cohen–Macaulay でない。

反例と注意

外す条件反例成り立たなくなること
$M$ が有限生成であること$A=k[\![x]\!]$、$M=k(\!(x)\!)$$\dim\operatorname{Supp}M=1$ なのに $H^1_{\mathfrak m}(M)=0$
台のイデアルが $\mathfrak m$ を根基にもつこと$A=k[\![x,y]\!]$、$I=(x)$、$M=A$$\dim M=2$ なのに $H^2_I(M)=0$

1 行目:$x$ は $\mathfrak m$ を根基にもち、$M\to M_x$ は同型 $k(\!(x)\!)\to k(\!(x)\!)$ なので、$H^0_{\mathfrak m}(M)=H^1_{\mathfrak m}(M)=0$ である。$M$ は $\operatorname{Supp}M=\operatorname{Spec}A$ をみたすが、局所コホモロジーはすべて消える。
2 行目:$I$ は $1$ 元で生成されるので、Čech 複体は $1$ 次までしかなく、$H^i_I(M)=0$($i\ge2$)である。最上次数の非消滅は、台が閉点である場合の主張である。
また、最上次数を決めるのは $\dim A$ ではなく $\dim M$ である。$A=k[\![x,y]\!]$、$M=A/(x)\cong k[\![y]\!]$ では $\dim A=2$ だが、$\dim M=1$ なので $H^2_{\mathfrak m}(M)=0$(thm-gnv-main の 2)、$H^1_{\mathfrak m}(M)\ne0$ である。

関連項目

参考文献

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