Keplerの法則(高校数学)

同義語:Kepler's laws of planetary motion (high school mathematics)ケプラーの法則(高校数学)

概要

Kepler の法則(Kepler's laws of planetary motion)とは、惑星は太陽を焦点とする楕円の上を動き(第 1 法則)、太陽と惑星を結ぶ線分は等しい時間に等しい面積を掃き(第 2 法則)、公転周期 $T$ の 2 乗は長半径 $a$ の 3 乗に比例する(第 3 法則)という 3 つの法則である。もとは観測から得られた経験則だが、運動の法則と万有引力の法則を仮定すると数学の定理として導ける。$xy'-yx'$ が一定であることから第 2 法則が、速度から作ったベクトル $\vec v-\frac{\mu}{h}\vec w$ が一定であることから第 1 法則が出て、楕円の面積から $T^2=\frac{4\pi^2}{GM}a^3$ が出る。力が距離に比例する場合は、太陽が楕円の中心に来て第 1・第 3 法則が崩れる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 速度と加速度, 2次曲線の焦点と準線, 極座標で表された図形の面積, 置換積分

高校での出発点:惑星の運動の 3 つの法則

Kepler は、Tycho Brahe の精密な観測記録を分析して、惑星の運動について次の 3 つの法則を見いだした(LSM16 §13.5)。

Kepler の 3 つの法則
  1. (第 1 法則)惑星は、太陽を 1 つの焦点とする楕円の上を動く。
  2. (第 2 法則)太陽と惑星を結ぶ線分は、等しい時間に等しい面積を掃く。
  3. (第 3 法則)公転周期の 2 乗は、軌道の楕円の長半径の 3 乗に比例する。
惑星のデータで第 3 法則を見る

対数目盛と片対数グラフ の例「惑星の軌道の大きさと公転周期」では、8 つの惑星について、長半径 $a$ と周期 $T$ を地球を $1$ とする単位で表すと、$\dfrac{T^2}{a^3}$ が水星 $1.002$、火星 $1.000$、木星 $0.998$、海王星 $0.975$ などと、どれも $1$ に近いことを確かめている。たとえば火星は $a=1.524$、$T=1.881$ で、$T^2=3.538\ldots$、$a^3=3.539\ldots$ である。

この 3 つは、もともと観測から見つかった 経験則 である。のちに Newton は、運動の法則と万有引力の法則から、3 つの法則が数学的に導かれることを示した。この記事では、物理の仮定をはっきり書いたうえで、高校の微分・積分とベクトルだけを使って 3 つの法則を導く。

  1. 物理の何を仮定するのか。→ rem-kep-physics
  2. 第 2 法則(面積速度一定)はなぜ成り立つか。→ prop-kep-second
  3. 軌道が楕円になり、太陽が焦点に来るのはなぜか。→ thm-kep-first
  4. 周期の 2 乗が長半径の 3 乗に比例する比例定数は何か。→ thm-kep-third
  5. 万有引力が「距離の 2 乗に反比例」でなかったら、どうなるか。→ ex-kep-hooke
    法則高校の道具ボックス
    第 2 法則積の微分、置換積分、極座標の面積prop-kep-second
    第 1 法則単位ベクトルの微分、焦点と準線による 2 次曲線thm-kep-first
    第 3 法則楕円の面積、第 1・第 2 法則thm-kep-third

物理の仮定と運動方程式

この記事で認める物理の法則

次の 4 つを物理の仮定として認める。数学で証明するのは、ここから先である。

  • (P1)太陽の位置を原点に固定する(太陽は惑星よりはるかに重い。太陽も動く場合は rem-kep-two-body)。
  • (P2)惑星の位置ベクトルを $\vec p(t)$、質量を $m$ とすると、運動方程式 $m\,\vec p\,''(t)=\vec F$ が成り立つ(Newton の運動の第 2 法則)。
  • (P3)惑星にはたらく力は太陽からの万有引力だけで、$G$ を万有引力定数、$M$ を太陽の質量、$r=|\vec p|$ とすると $\vec F=-\dfrac{GMm}{r^2}\cdot\dfrac{\vec p}{r}$ である(太陽の向きに、距離の 2 乗に反比例する大きさ)。
  • (P4)ほかの惑星からの力は無視する。

(P2) と (P3) から $m$ が消えて、$\mu=GM$ とおくと
$$ \vec p\,''=-\frac{\mu}{r^3}\,\vec p\qquad(r=|\vec p|>0)\qquad\text{(E)} $$
となる。以下、$\vec p(t)$ はすべての実数 $t$ で定義された 2 回微分可能な関数で、(E) を満たし、原点を通らない($r>0$)とする。ベクトルの関数の微分は成分ごとに行い、内積の微分 $(\vec a\cdot\vec b)'=\vec a\,'\cdot\vec b+\vec a\cdot\vec b\,'$(速度と加速度 の補題「内積の微分」)を使う。

太陽も動く場合

太陽の位置を $\vec s$、惑星の位置を $\vec q$ とし、$\vec p=\vec q-\vec s$ とおく。作用・反作用により、太陽には惑星の向きに同じ大きさの力がはたらくので、$m\vec q\,''=-\dfrac{GMm}{r^3}\vec p$、$M\vec s\,''=\dfrac{GMm}{r^3}\vec p$ である。前の式を $m$ で、後の式を $M$ で割って引くと $\vec p\,''=-\dfrac{G(M+m)}{r^3}\vec p$ となる。これは (E) で $\mu=G(M+m)$ としたものなので、この記事の結果は $\mu$ を取りかえればそのまま成り立つ(Tes12 §8.5 も、2 つの物体の問題を同じように相対的な位置の問題に直している)。

運動は平面の上で起こる

空間の運動 $\vec p=(x,y,z)$ が (E) を満たし、$\vec L=(yz'-zy',\ zx'-xz',\ xy'-yx')$ が $\vec0$ でないとする。このとき $\vec L$ は時刻によらず一定で、$\vec p(t)$ はつねに、原点を通り $\vec L$ に垂直な平面の上にある。

成分ごとに微分する

各成分を微分すると $0$ になり、$\vec L\cdot\vec p=0$ が展開で確かめられる。

計算を開く

$\vec L$ の第 3 成分を微分すると、積の微分で $(xy'-yx')'=xy''-yx''$ となり、(E) の $x''=-\frac\mu{r^3}x$、$y''=-\frac\mu{r^3}y$ を代入すると $-\frac\mu{r^3}(xy-yx)=0$ である。第 1・第 2 成分も同じく $0$ なので、$\vec L$ は一定である。また、$x(yz'-zy')+y(zx'-xz')+z(xy'-yx')$ を展開すると 6 つの項が 2 つずつ打ち消し合って $0$ になる。つまり $\vec L\cdot\vec p=0$ で、$\vec p$ は一定のベクトル $\vec L$ に垂直である。なお $\vec L=\vec0$ なら、$\vec p\ne\vec0$ なので $\vec p\,'=\lambda\vec p$($\lambda=\frac{\vec p\cdot\vec p\,'}{r^2}$)と書け、$r'=\frac{\vec p\cdot\vec p\,'}r=\lambda r$ から $\bigl(\frac{\vec p}r\bigr)'=\frac{\vec p\,'}r-\frac{r'}{r^2}\vec p=\vec0$ となる。よって運動は原点を通る 1 本の直線の上にあり、やはり平面の運動とみてよい(ex-kep-radial)。 $\square$

prop-kep-plane により、座標軸を回して運動の平面を $z=0$ にとってよい(回転は (E) の形を変えない)。以下、$\vec p=(x,y)$ を平面の運動とし
$$ h=xy'-yx' $$
とおく。$h$ は 速度と加速度 の命題「加速度が原点を向く運動の面積速度」により一定である。(E) では加速度 $-\frac\mu{r^3}\vec p$ が位置ベクトルに平行だからである。$h=0$ の場合は ex-kep-radial で扱い、以下 $h\ne0$ とする。さらに、必要なら $y$ 軸の向きを反対にして($y$ を $-y$ に替えると $h$ の符号が変わる)、$h>0$ としてよい。

第 2 法則:面積速度は一定

$h=xy'-yx'$ が面積を掃く速さの $2$ 倍であることを、掃く部分の面積を積分で定めて示す。そのために、惑星の方向を表す角を時刻の関数として用意する。

単位ベクトルと偏角の微分

$\vec u=\dfrac{\vec p}r=(u_1,u_2)$、$\vec w=(-u_2,u_1)$($\vec u$ を $90^\circ$ 回したもの)とおく。

  1. $\vec u\,'=\dfrac h{r^2}\vec w$、$\vec w\,'=-\dfrac h{r^2}\vec u$ である。
  2. 微分可能な関数 $\theta(t)$ で、$\vec u(t)=(\cos\theta(t),\sin\theta(t))$ と $\theta'(t)=\dfrac h{r(t)^2}$ をすべての $t$ で満たすものがある。
成分の計算と、2 つの単位ベクトルの差

1。$r^2=x^2+y^2$ を微分して $rr'=xx'+yy'$ である。商の微分により
$$ u_1'=\Bigl(\frac xr\Bigr)'=\frac{x'r-xr'}{r^2}=\frac{x'r^2-x(xx'+yy')}{r^3}=\frac{x'y^2-xyy'}{r^3}=\frac{-y(xy'-yx')}{r^3}=\frac h{r^2}\Bigl(-\frac yr\Bigr) $$
で、これは $\frac h{r^2}w_1$ である。同じ計算で $u_2'=\frac h{r^2}\cdot\frac xr=\frac h{r^2}w_2$ である。$\vec w\,'=(-u_2',u_1')=\frac h{r^2}(-u_1,-u_2)$ も分かる。
2。$\vec u(0)$ は単位ベクトルなので、$\vec u(0)=(\cos\theta_0,\sin\theta_0)$ となる $\theta_0$ がある。$\theta(t)=\theta_0+\displaystyle\int_0^t\frac h{r(s)^2}\,ds$ と定めると、$\theta'=\frac h{r^2}$ である(定積分で表された関数 の定理「積分の上端についての微分」。$\frac h{r^2}$ は連続である)。$\vec U=(\cos\theta,\sin\theta)$ とおき、$\vec D=\vec u-\vec U$ の長さの 2 乗を微分すると $0$ になることから、$\vec u=\vec U$ が分かる。

計算を開く

$\vec U\,'=\theta'(-\sin\theta,\cos\theta)=\frac h{r^2}J\vec U$ である。ここで $J(a_1,a_2)=(-a_2,a_1)$ は $90^\circ$ の回転で、1 は $\vec u\,'=\frac h{r^2}J\vec u$ と書ける。よって $\vec D\,'=\frac h{r^2}J\vec D$ で、$J\vec D$ は $\vec D$ に垂直なので、$\bigl(|\vec D|^2\bigr)'=2\vec D\cdot\vec D\,'=\frac{2h}{r^2}\,\vec D\cdot J\vec D=0$ である。$|\vec D(0)|=0$ なので、いつも $\vec D=\vec0$、つまり $\vec u=\vec U$ である。 $\square$

$\theta$ は惑星の極座標の偏角で、$x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$ である。$h>0$ なので $\theta$ は増加関数で、惑星は原点のまわりを反時計回りに回る。

第 2 法則

$t_1< t_2$ で $\theta(t_2)-\theta(t_1)\le2\pi$ とする。時刻 $t_1$ から $t_2$ までに、原点と惑星を結ぶ線分が通る部分の面積は $\dfrac h2(t_2-t_1)$ である。

極座標の面積の公式に置換積分を使う

方針:掃く部分を極方程式の曲線で囲まれた部分として書き、極座標で表された図形の面積 の公式を、偏角から時刻への置換積分で書き直す。
段 1(掃く部分を極方程式で書く)。$\theta$ は連続な増加関数なので、逆関数 $t=\tau(\varphi)$ をもち、$\tau$ も連続である。$f(\varphi)=r(\tau(\varphi))$ とおくと、偏角が $\varphi$ のときの惑星と原点の距離が $f(\varphi)$ である。時刻 $t_1$ から $t_2$ までに線分が通る部分は、極座標で表された図形の面積 の定義「極方程式の曲線と 2 本の半直線で囲まれた部分」の $D(\theta(t_1),\theta(t_2))$ である。
段 2(面積の公式)。同じ記事の定理「極座標で表された図形の面積の公式」により、面積は $\dfrac12\displaystyle\int_{\theta(t_1)}^{\theta(t_2)}f(\varphi)^2\,d\varphi$ である。
段 3(置換積分)。$\varphi=\theta(t)$ と置換すると、$d\varphi=\theta'(t)\,dt$、$f(\theta(t))=r(t)$ なので、lem-kep-angle の 2 の $r^2\theta'=h$ を使って
$$ \frac12\int_{\theta(t_1)}^{\theta(t_2)}f(\varphi)^2\,d\varphi=\frac12\int_{t_1}^{t_2}r(t)^2\,\theta'(t)\,dt=\frac12\int_{t_1}^{t_2}h\,dt=\frac h2(t_2-t_1) $$
である(置換積分)。$\square$

面積が経過時間 $t_2-t_1$ だけで決まり、どの時刻から測っても同じであることが、第 2 法則「等しい時間に等しい面積を掃く」である。$\frac h2$ を 面積速度 という。
μ = 1、初めの位置 (1, 0)、初めの速度 (0, 0.8) の運動の軌道。太陽は原点(焦点)にある。遠日点のまわりと近日点のまわりで、同じ時間 0.5 の間に掃く部分を塗った。2 つの面積はどちらも 0.2 である μ = 1、初めの位置 (1, 0)、初めの速度 (0, 0.8) の運動の軌道。太陽は原点(焦点)にある。遠日点のまわりと近日点のまわりで、同じ時間 0.5 の間に掃く部分を塗った。2 つの面積はどちらも 0.2 である

図 1 の運動で面積を比べる

図 1 は $\mu=1$、$\vec p(0)=(1,0)$、$\vec p\,'(0)=(0,0.8)$ の運動である。$h=xy'-yx'=1\cdot0.8-0\cdot0=0.8$ なので、時間 $0.5$ の間に掃く面積はどこでも $\frac{0.8}2\times0.5=0.2$ である。数値計算でも、遠日点のまわり(橙)と近日点のまわり(緑)の面積はどちらも $0.2000\ldots$ になる。太陽から遠い所では、細長い部分しか掃けない。近い所では、同じ時間で太い部分を掃く。そのため、惑星は太陽に近いほど速く動く。実際、速度の $\vec w$ 方向の成分は $\frac hr$ である(lem-kep-velocity)。近日点($r=\frac8{17}$)では速さ $1.7$、遠日点($r=1$)では速さ $0.8$ である。

第 1 法則:軌道は 2 次曲線

第 1 法則の鍵は、速度から作った 1 つのベクトルが時刻によらず一定になることである。

速度の分解

速度 $\vec v=\vec p\,'$ は $\vec v=r'\,\vec u+\dfrac hr\,\vec w$ と書ける。とくに $\vec v\cdot\vec w=\dfrac hr$ である。

積の微分

$\vec p=r\vec u$ を積の微分で微分し、lem-kep-angle の 1 を使うと $\vec v=r'\vec u+r\vec u\,'=r'\vec u+\frac hr\vec w$ である。$\vec u\cdot\vec w=0$、$\vec w\cdot\vec w=1$ なので、$\vec w$ との内積をとると $\vec v\cdot\vec w=\frac hr$ である。$\square$

一定になるベクトル

$\vec C=\vec v-\dfrac\mu h\,\vec w$ は時刻によらず一定である。

加速度を $\vec w$ の微分で書く

(E) から $\vec v\,'=-\frac\mu{r^2}\vec u$ である。lem-kep-angle の 1 の $\vec w\,'=-\frac h{r^2}\vec u$ を使うと $-\frac\mu{r^2}\vec u=\frac\mu h\vec w\,'$ なので、$\vec v\,'=\frac\mu h\vec w\,'$、つまり $\vec C\,'=\vec v\,'-\frac\mu h\vec w\,'=\vec0$ である。各成分の導関数が $0$ なので、$\vec C$ は一定である。$\square$

第 1 法則

$\ell=\dfrac{h^2}\mu$、$e=\dfrac{h}{\mu}|\vec C|$ とおく。座標軸を原点のまわりに適当に回すと、すべての時刻で
$$ r=\frac{\ell}{1-e\cos\theta} $$
が成り立つ。したがって、惑星はつねに次の曲線の上にある。

  1. $e=0$ のとき、太陽を中心とする半径 $\ell$ の円。
  2. $e>0$ のとき、太陽 $\mathrm F(0,0)$ を焦点、直線 $x=-\dfrac\ell e$ を準線、$e$ を離心率とする曲線。これは $0< e<1$ なら太陽を 1 つの焦点とする楕円、$e=1$ なら放物線、$e>1$ なら双曲線の片方の枝である。
$\vec C$ と $\vec w$ の内積をとる

方針:$\vec C\cdot\vec w$ を 2 通りに計算して、$r$ を $\theta$ で表す。
段 1(内積の計算)。lem-kep-velocity と $|\vec w|=1$ から
$$ \vec C\cdot\vec w=\vec v\cdot\vec w-\frac\mu h\,\vec w\cdot\vec w=\frac hr-\frac\mu h $$
である。
段 2(座標軸を回す)。$c=|\vec C|$ とおく。座標軸を原点のまわりに回しても、(E) の形、$r$、$h$ は変わらず、偏角 $\theta$ が定数だけずれるだけである。そこで、$c>0$ なら $\vec C=(0,-c)$ となるように軸を回しておく($c=0$ なら回さない)。どちらの場合も $\vec C=(0,-c)$ で、$\vec w=(-\sin\theta,\cos\theta)$ なので $\vec C\cdot\vec w=-c\cos\theta$ である。
段 3($r$ を解く)。段 1 と段 2 から $\frac hr=\frac\mu h-c\cos\theta$ である。両辺に $\frac{hr}\mu$ を掛けると $\ell=r\bigl(1-e\cos\theta\bigr)$ となる($e=\frac{hc}\mu$)。$\ell>0$、$r>0$ なので $1-e\cos\theta>0$ で、$r=\frac\ell{1-e\cos\theta}$ である。
段 4(曲線)。$e=0$ なら $r=\ell$ で一定なので、1 が成り立つ。$e>0$ なら $d=\frac\ell e$ とおくと、段 3 の式は $r=e(r\cos\theta+d)=e(x+d)$ と書ける。$r>0$ なので $x+d>0$ で、点 $\mathrm P(x,y)$ から準線 $x=-d$ までの距離は $\mathrm{PH}=x+d$ である。$\mathrm{PF}=r$ なので $\mathrm{PF}=e\cdot\mathrm{PH}$ となる(2次曲線の焦点と準線 の命題「焦点を極とする極方程式」と同じ式である)。この曲線が $e$ の値によって楕円・放物線・双曲線になり、太陽 $\mathrm F$ がその焦点であることは、同じ記事の定理「離心率による 2 次曲線の分類」による。$e>1$ のとき、$x>-d$ の点だけを考えているので、双曲線の片方の枝である。$\square$

$0< e<1$ のとき、$r$ が最大になるのは $1-e\cos\theta$ が最小の $\theta=0$(遠日点)、最小になるのは $\theta=\pi$(近日点)である。$\vec C=(0,-c)$ を時計回りに $90^\circ$ 回して $\frac h\mu$ 倍すると $(-e,0)$ になり、太陽から近日点へ向かう長さ $e$ のベクトルになる。
軌道が楕円になるか、放物線・双曲線になるかは、エネルギーの符号で決まる。

エネルギーと離心率

$E=\dfrac12|\vec v|^2-\dfrac\mu r$ とおくと、$e^2=1+\dfrac{2h^2}{\mu^2}E$ が成り立つ。とくに $E$ は時刻によらず一定で、軌道が円または楕円($e<1$)であることと $E<0$ は同値である。

$|\vec C|^2$ を展開する

$|\vec C|^2=2E+\frac{\mu^2}{h^2}$ を示せば、両辺に $\frac{h^2}{\mu^2}$ を掛けて $e^2=\frac{2h^2}{\mu^2}E+1$ となる。

計算を開く

lem-kep-velocity の $\vec v\cdot\vec w=\frac hr$ を使うと、$|\vec C|^2=|\vec v|^2-\frac{2\mu}h\,\vec v\cdot\vec w+\frac{\mu^2}{h^2}=|\vec v|^2-\frac{2\mu}r+\frac{\mu^2}{h^2}=2E+\frac{\mu^2}{h^2}$ である。$|\vec C|$ は一定なので $E$ も一定である。$e\ge0$ なので、$e< 1\iff e^2< 1\iff E< 0$ である。 $\square$

図 1 の軌道の式

図 1 の運動($\mu=1$)では、$t=0$ で $\vec u=(1,0)$、$\vec w=(0,1)$、$\vec v=(0,0.8)$、$h=0.8$ なので
$$ \vec C=(0,0.8)-\frac1{0.8}(0,1)=(0,-0.45) $$
である。ちょうど $\vec C=(0,-c)$ の形なので軸を回す必要はなく、$\ell=0.64$、$e=0.8\times0.45=0.36$ で、軌道は $r=\dfrac{0.64}{1-0.36\cos\theta}$ である。$\theta=0$ で $r=1$(遠日点 $(1,0)$)、$\theta=\pi$ で $r=\frac{0.64}{1.36}=\frac8{17}$(近日点)である。エネルギーは $E=\frac12\cdot0.64-1=-0.68<0$ で、$1+2\cdot0.64\cdot(-0.68)=0.1296=0.36^2$ と cor-kep-energy に合う。

第 3 法則:周期の 2 乗と長半径の 3 乗

ここからは $0\le e<1$(軌道が円または楕円)とする。楕円の長軸の長さの半分を 長半径 といい $a$ と書く(円なら半径)。まず、惑星が軌道を何度も回ることを確かめる。

惑星は軌道を回り続ける

$0\le e<1$ とする。どの時刻 $t_1$ に対しても、$\theta(t_2)=\theta(t_1)+2\pi$ となる $t_2>t_1$ がただ 1 つあり、時刻 $t_2$ の惑星の位置は時刻 $t_1$ の位置と同じである。

偏角の増え方を下から抑える

thm-kep-first の式で $1-e\cos\theta\ge1-e>0$ なので、$r\le R$($R=\frac\ell{1-e}$)である。よって $\theta'=\frac h{r^2}\ge\frac h{R^2}>0$ で、$t\ge t_1$ では $\theta(t)-\theta(t_1)=\displaystyle\int_{t_1}^t\theta'(s)\,ds\ge\frac h{R^2}(t-t_1)$ となる。右辺は $t\to\infty$ でいくらでも大きくなるので、$\theta(t)-\theta(t_1)>2\pi$ となる $t$ がある。$\theta$ は連続な増加関数なので、中間値の定理(中間値の定理(高校数学))により $\theta(t_2)=\theta(t_1)+2\pi$ となる $t_2$ がただ 1 つある。$\cos\theta$ と $\sin\theta$ は周期 $2\pi$ をもつので、thm-kep-first の式から $r(t_2)=r(t_1)$、また $\vec u(t_2)=\vec u(t_1)$ である。よって $\vec p(t_2)=r\vec u$ は $\vec p(t_1)$ と同じ点である。$\square$

lem-kep-period の $t_2-t_1$、つまり軌道を 1 周する時間を 公転周期 という。それが $t_1$ によらないことも、次の定理で分かる。

第 3 法則

$0\le e<1$ とし、軌道の長半径を $a$ とする。公転周期 $T$ は 1 周を始める時刻によらず、
$$ T^2=\frac{4\pi^2}{\mu}\,a^3 $$
が成り立つ。とくに、同じ太陽のまわりを回る惑星では、$\dfrac{T^2}{a^3}$ はすべて同じ値 $\dfrac{4\pi^2}{\mu}=\dfrac{4\pi^2}{GM}$ になる。

1 周で掃く面積は楕円の面積

方針:1 周で掃く部分は楕円の内部全体なので、prop-kep-second で面積と時間を結ぶ。楕円の面積を $\ell$ と $e$ で書き、$h^2=\mu\ell$ を使う。
段 1(長半径と短半径)。$e>0$ のとき、2次曲線の焦点と準線 の定理「離心率による 2 次曲線の分類」の 2 で $ed=\ell$ とすると、軌道は長半径 $a=\dfrac{\ell}{1-e^2}$、短半径 $b=\dfrac{\ell}{\sqrt{1-e^2}}$ の楕円である。$e=0$ なら半径 $\ell$ の円で、$a=b=\ell$ である。どちらの場合も $a=\frac\ell{1-e^2}$、$b^2=a\ell$ が成り立つ。
段 2(1 周で掃く面積)。$t_1< t_2$ を lem-kep-period のとおりにとる。時刻 $t_1$ から $t_2$ までに太陽と惑星を結ぶ線分は、太陽から出るすべての向きをちょうど 1 回ずつ通り、その向きの軌道上の点まで届く。楕円の周と内部を合わせた図形はへこみのない図形(凸な図形)で、太陽はその内部にあるので、太陽から出る半直線は楕円の周とただ 1 点で交わり、太陽とその点を結ぶ線分は楕円の内部に入る。よって、通る部分は楕円の周と内部の全体である。その面積は $\pi ab$ である(靴ひも公式 の例「楕円の面積」。平行移動しても面積は変わらない)。
段 3(周期)。prop-kep-second により、この面積は $\frac h2(t_2-t_1)$ に等しい。よって $T=t_2-t_1=\dfrac{2\pi ab}h$ で、これは $t_1$ によらない。2 乗して段 1 の $b^2=a\ell$ と $h^2=\mu\ell$ を使うと
$$ T^2=\frac{4\pi^2a^2b^2}{h^2}=\frac{4\pi^2a^3\ell}{\mu\ell}=\frac{4\pi^2}\mu\,a^3 $$
である。$\square$

図 1 の運動の周期

図 1 の運動では $\ell=0.64$、$e=0.36$ なので $1-e^2=0.8704$、$a=\frac{0.64}{0.8704}=\frac{25}{34}=0.73529\ldots$、$b=\frac{0.64}{\sqrt{0.8704}}=0.68599\ldots$ である。$T=\frac{2\pi ab}{h}=3.96160\ldots$ で、$2\pi a^{\frac32}=3.96160\ldots$ と一致する($\mu=1$)。ex-kep-data で地球を単位にすると $\frac{T^2}{a^3}$ がほぼ $1$ になったのは、どの惑星にも同じ $\mu$ が入るからである。

例と反例

rem-kep-physics の仮定や、定理の仮定を外すと何が崩れるかをまとめる。

外す条件反例成り立たなくなること
力が距離の 2 乗に反比例すること((P3) の大きさ)ex-kep-hooke第 1 法則の「太陽が焦点」と第 3 法則
力が太陽の向きであること((P3) の向き)ex-kep-uniform第 2 法則
$h\ne0$ex-kep-radial軌道が 2 次曲線であること
$e<1$($E<0$)ex-kep-escape惑星が軌道を回り続けること(周期がある)
反例:距離に比例する力

力が太陽の向きで、大きさが距離に比例する場合、運動方程式は $\vec p\,''=-k\vec p$($k>0$)になる。$\omega=\sqrt k$、$A>B>0$ として $\vec p=(A\cos\omega t,\ B\sin\omega t)$ はこれを満たす。$h=xy'-yx'=AB\omega$ は一定で、第 2 法則は成り立つ。しかし軌道は $\frac{x^2}{A^2}+\frac{y^2}{B^2}=1$ で、太陽は楕円の中心にあり、焦点 $\bigl(\pm\sqrt{A^2-B^2},0\bigr)$ にはない。周期は $\frac{2\pi}\omega$ で $A$ によらないので、$(A,B)=(1,\frac12)$ と $(2,1)$ の軌道は、長半径の 3 乗が $8$ 倍違うのに周期が等しい。この反例は、(P3) の「距離の 2 乗に反比例」を外すと、第 1 法則の「太陽が焦点」と第 3 法則が成り立たないことを示す。

反例:向きが一定の力

力が太陽の向きでなく、いつも同じ向きの一定の力(地表の重力のようなもの)だとする。$\vec p\,''=(0,-1)$ の解 $\vec p=\bigl(t,\ 1-\frac{t^2}2\bigr)$ では、$h=xy'-yx'=t\cdot(-t)-\bigl(1-\frac{t^2}2\bigr)\cdot1=-1-\frac{t^2}2$ で、時刻によって変わる。lem-kep-angle と prf-prop-kep-second の計算のうち (E) も $h$ が一定であることも使わない部分から、この運動でも原点と点を結ぶ線分が掃く面積の速さは $\frac{|h|}2$ であり、それが一定でないので、等しい時間に等しい面積を掃かない。

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lem-kep-angle の 1・2 の計算は (E) も $h$ が一定であることも使わず、$h=h(t)$ のままで $r^2\theta'=h$ を与える($\vec p$ は原点を通らない)。$x=0$ となるのは $t=0$ だけで、そのとき $y=1>0$ なので、$\vec p$ は真下の向きを一度もとらず、偏角の変化は全体で $2\pi$ 未満である。$h<0$ なので $y$ を $-y$ に替えると(面積は変わらない)$h$ は $1+\frac{t^2}2>0$ になって $\theta$ は増加関数になり、prf-prop-kep-second の段 1・2 と、段 3 の $\frac12\int_{t_1}^{t_2}r^2\theta'\,dt=\frac12\int_{t_1}^{t_2}h\,dt$ までがそのまま使える。$h$ は一定でないので、最後の等号の代わりにこの積分(もとの向きでは $\frac12\int_{t_1}^{t_2}\lvert h\rvert\,dt$)が面積である。たとえば時刻 $0$ から $1$ までの面積は $\frac7{12}$、$1$ から $2$ までの面積は $\frac{13}{12}$ で、同じ時間でも面積が違う。

この反例は、(P3) の「力が太陽の向き」を外すと第 2 法則が成り立たないことを示す。

反例:$h=0$ の運動

$h=0$ とする。lem-kep-angle の 1 の計算は $h=0$ でもそのまま使えて、$\vec u\,'=\vec0$ となる。よって $\vec u$ は一定で、$\vec p=r\vec u$ は太陽から出る 1 本の半直線の上を動く。軌道は 2 次曲線ではない。初めの速度が太陽の向き(またはその反対の向き)だと、こうなる。この反例は、thm-kep-first の仮定 $h\ne0$ を外すと結論が成り立たないことを示す。

反例:エネルギーが $0$ 以上の運動

$\mu=1$、$\vec p(0)=(1,0)$、$\vec p\,'(0)=(0,\sqrt2)$ とする。$E=\frac12\cdot2-1=0$ なので、cor-kep-energy により $e=1$ で、軌道は放物線である。$h=\sqrt2$、$\vec C=(0,\sqrt2)-\frac1{\sqrt2}(0,1)=\bigl(0,\frac1{\sqrt2}\bigr)$ なので、軸を $180^\circ$ 回すと $\vec C=(0,-c)$ の形になり、軌道は $r=\frac2{1-\cos\theta}$ である。$1-\cos\theta>0$ なので $\theta$ は $2\pi$ の倍数をまたがずに増え続け、同じ点に戻ることはない。この反例は、lem-kep-period と thm-kep-third の仮定 $e<1$ を外すと、周期そのものがなくなることを示す。

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  • 太陽と惑星の両方が動く 2 つの物体の問題は、rem-kep-two-body のとおり相対的な位置の方程式に直る。大学の力学や常微分方程式論では、角運動量やエネルギーが保存されることを、方程式の対称性から導く(Tes12 §8.5)。
  • prop-kep-plane の $\vec L$ は位置と速度の外積で、大学では角運動量と呼ぶ。prop-kep-constant-vector のように、運動の間ずっと一定な量を見つけることが、微分方程式を解く代わりになる。
  • (P4) を外して、ほかの惑星からの力も入れると、(E) は成り立たず、軌道は正確な楕円からずれる。

関連項目

参考文献

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