傍接円をもつ四角形(ex-tangential quadrilateral)とは、4 本の辺の直線すべてに、四角形の外から接する円(傍接円)をもつ凸四角形である。凸四角形 $ABCD$ が、角 $A$ の内側で直線 $BC$、$CD$ について $A$ と反対側にある傍接円をもつことは、$AB+BC=AD+DC$ かつ $\angle A+\angle B<180^\circ$ と同値である。等式は頂点からの接線の長さの差から出て、逆は辺を延ばして作る 3 つの二等辺三角形で示せる。平行四辺形でなく等式を満たす凸四角形では、$\angle A+\angle B$ が $180^\circ$ より小さいか大きいかで、傍接円が頂点 $C$ と頂点 $A$ のどちらの先にあるかが決まる。
Pitotの定理 では、4 辺すべてに接する円(内接円)をもつ四角形を調べ、向かい合う辺の和が等しいこと $AB+CD=BC+DA$ を見た。三角形には内接円のほかに、辺の延長に接する傍接円が 3 つある(三角形の内心と傍心)。四角形でも、4 本の辺を延ばした直線に、四角形の外から接する円を考えられる。そのような円があるとき、辺の長さにはどんな関係があるだろうか。
4 点 $A(0,0)$、$B(3,0)$、$C\left(\dfrac{24}{11},\dfrac{12}{11}\right)$、$D(0,2)$ を頂点とする四角形 $ABCD$ と、中心 $I(6,6)$、半径 $6$ の円 $\omega$ を考える。
(1) 辺の直線。直線 $AB$ は $y=0$、直線 $DA$ は $x=0$ である。直線 $BC$ は $4x+3y=12$、直線 $CD$ は $5x+12y=24$ である。実際、$B(3,0)$ は $4\cdot3+0=12$ を、$C$ は $4\cdot\dfrac{24}{11}+3\cdot\dfrac{12}{11}=\dfrac{132}{11}=12$ を満たし、$D(0,2)$ は $0+24=24$ を、$C$ は $5\cdot\dfrac{24}{11}+12\cdot\dfrac{12}{11}=\dfrac{264}{11}=24$ を満たす。$C$ は 2 本の直線 $4x+3y=12$ と $5x+12y=24$ の交点として求めた(1 本目を 4 倍して引くと $11x=24$)。
(2) 円と 4 本の直線の距離。$I(6,6)$ から直線 $y=0$、$x=0$ までの距離はどちらも $6$ である。直線 $BC$、$CD$ までの距離は
$$
\frac{\lvert4\cdot6+3\cdot6-12\rvert}{\sqrt{4^2+3^2}}=\frac{30}5=6,\qquad \frac{\lvert5\cdot6+12\cdot6-24\rvert}{\sqrt{5^2+12^2}}=\frac{78}{13}=6
$$
である。4 本の直線までの距離がどれも半径 $6$ なので、円 $\omega$ は 4 本の直線に接する。
(3) 接点。$I$ から 4 本の直線に下ろした垂線の足が接点で、直線 $AB$ 上は $P(6,0)$、直線 $BC$ 上は $Q\left(\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$、直線 $CD$ 上は $R\left(\dfrac{48}{13},\dfrac6{13}\right)$、直線 $DA$ 上は $S(0,6)$ である。$P$ は辺 $AB$ を $B$ の先へ延ばした所に、$S$ は辺 $AD$ を $D$ の先へ延ばした所にある。$Q$ は $\overrightarrow{BQ}=\left(-\dfrac95,\dfrac{12}5\right)=3\cdot\left(-\dfrac35,\dfrac45\right)$、$\overrightarrow{BC}=\left(-\dfrac9{11},\dfrac{12}{11}\right)=\dfrac{15}{11}\left(-\dfrac35,\dfrac45\right)$ なので、半直線 $BC$ の上で $B$ から距離 $3$、$C$ は距離 $\dfrac{15}{11}$ にある。つまり $Q$ は辺 $BC$ を $C$ の先へ延ばした所にある。同じく $R$ は半直線 $DC$ の上で $D$ から距離 $4$、$C$ は距離 $\dfrac{26}{11}$ にあり、$R$ は辺 $DC$ を $C$ の先へ延ばした所にある。円は四角形の外にあり、頂点 $C$ の向こう側から 4 本の直線に接している。
(4) 頂点から接点までの長さ。
$$
AP=AS=6,\quad BP=BQ=3,\quad CQ=CR=\frac{18}{11},\quad DR=DS=4
$$
である($CQ=3-\dfrac{15}{11}$、$CR=4-\dfrac{26}{11}$)。
(5) 辺の長さは $AB=3$、$BC=\dfrac{15}{11}$、$CD=\dfrac{26}{11}$、$DA=2$ で、
$$
AB+BC=3+\frac{15}{11}=\frac{48}{11},\qquad AD+DC=2+\frac{26}{11}=\frac{48}{11}
$$
と等しい。一方、Pitot の等式は $AB+CD=\dfrac{59}{11}$、$BC+DA=\dfrac{37}{11}$ で成り立たない。この四角形に内接円はない。
四角形 ABCD の外にある円が、4 本の辺の直線に P、Q、R、S で接する。同じ頂点から接点までの 2 本を同じ色で描いた
4 点 $A(0,0)$、$B(3,0)$、$C\left(\dfrac{12}7,\dfrac{12}7\right)$、$D(0,3)$ を頂点とする凧形($AB=AD=3$、$CB=CD=\dfrac{15}7$)を考える。直線 $BC$ は $4x+3y=12$、直線 $CD$ は $3x+4y=12$ で、交点が $C$ である。
(1) 中心 $(6,6)$、半径 $6$ の円は、ex-ext-start と同じ計算で 4 本の直線に接し、頂点 $C$ の向こう側にある。$AB+BC=3+\dfrac{15}7=AD+DC$ である。
(2) 中心 $(1,1)$、半径 $1$ の円も 4 本の直線に接する。直線 $BC$ までの距離は $\dfrac{\lvert4+3-12\rvert}5=1$、直線 $CD$ までも $\dfrac{\lvert3+4-12\rvert}5=1$ である。この円は四角形の内接円で、$AB+CD=3+\dfrac{15}7=BC+DA$ も成り立つ。
凧形では $AB=AD$、$CB=CD$ なので、2 つの等式がどちらも成り立つ。
凧形は、内接円(赤)と、頂点 C の向こう側から 4 本の直線に接する円(青)の両方をもつ
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 内接円(Pitotの定理) | 頂点 $C$ の先の傍接円(この記事) | |
|---|---|---|
| 円の位置 | 四角形の内部 | 角 $A$ の内側で、頂点 $C$ の向こう側 |
| 辺と接線の長さ | $AB=t_A+t_B$ など、4 辺とも和 | $AB=t_A-t_B$、$BC=t_B-t_C$、$DC=t_D-t_C$、$AD=t_A-t_D$ |
| 辺の等式 | $AB+CD=BC+DA$ | $AB+BC=AD+DC$ |
| 逆向きに要る条件 | 凸であること | 凸であることと $\angle A+\angle B<180^\circ$ |
| 逆向きの証明 | 二等辺三角形 3 つ(場合分けあり) | 二等辺三角形 3 つ(場合分けなし) |
この記事では、四角形 $ABCD$ はいつも頂点をこの順に結んだものとし、頂点の角の大きさを $\angle A$、$\angle B$、$\angle C$、$\angle D$ で表す。四角形が 凸 であるとは、4 辺のどの直線についても、残りの 2 つの頂点がその直線の同じ側にあることをいう(Pitotの定理 の定義と同じ)。
凸四角形 $ABCD$ と円 $\omega$ が次の 3 つの条件を満たすとき、$\omega$ を四角形 $ABCD$ の 頂点 $C$ の先の傍接円 という。
(R1) $\omega$ は 4 本の直線 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ に接する。
(R2) $\omega$(周と内部)は角 $\angle BAD$ の内側(2 本の半直線 $AB$、$AD$ を含む)にある。
(R3) $\omega$ は、直線 $BC$ についても直線 $CD$ についても、$A$ と反対の側(直線を含む)にある。
頂点 $A$ の先の傍接円は、$A$ と $C$ の役割を入れかえて同じように定める。頂点 $B$、$D$ の先の傍接円も、頂点の名前をずらして同じように定める。4 つの頂点のどれかの先に傍接円をもつ凸四角形を 傍接円をもつ四角形(傍接四角形)という。
条件 (ii) と (iii) は、円が「角 $A$ の口の中で、頂点 $C$ を越えた所」にあることをいう。定義は $B$ と $D$ の役割を入れかえても変わらない。ex-ext-start の円は、中心 $(6,6)$ が $x>0$、$y>0$ にあって半径 $6$ なので円は第 1 象限(軸を含む)に入り、条件 (ii) を満たす。直線 $BC$ の式 $4x+3y-12$ の値は、$A$ で $-12<0$、円の中心で $30$ で、中心と直線の距離がちょうど半径なので円は $4x+3y-12\ge0$ の側にある。直線 $CD$ でも同じで、条件 (iii) を満たす。
道具は Pitotの定理 と同じく、接線の長さである。
円の外の点 $V$ から円に 2 本の接線を引き、接点を $X$、$Y$ とすると $VX=VY$ である。
円の中心を $I$、半径を $\rho$ とする。接線は接点で半径に垂直なので、$\angle VXI=\angle VYI=90^\circ$ である。三平方の定理から $VX^2=VI^2-IX^2=VI^2-\rho^2$ であり、同様に $VY^2=VI^2-\rho^2$ である。よって $VX=VY$ である(Pitotの定理 の補題「接線の長さ」と同じ議論)。$\square$
次の補題は、傍接円の接点がどこにあるかを決める。証明で凸であることを使う。
$\omega$ を凸四角形 $ABCD$ の頂点 $C$ の先の傍接円とし、直線 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ との接点を $P$、$Q$、$R$、$S$ とする。このとき 4 つの頂点はどれも $\omega$ の外にあり、
要点:頂点は 2 本の接線の交点なので円の外にある。接点 $P$ は条件 (ii) から半直線 $AB$ の上にあり、条件 (iii) から直線 $BC$ について $A$ と反対側にあるので、$B$ を越えた所にある。接点 $Q$ は条件 (iii) から直線 $CD$ について $A$ と反対側にあり、凸なので $B$ は $A$ と同じ側にあるから、$Q$ は $C$ を越えた所にある。$S$、$R$ も同じである。
段 1(頂点は円の外)。頂点 $B$ は 2 本の直線 $AB$、$BC$ の交点で、どちらも $\omega$ の接線である。$B$ が $\omega$ の上にあれば、2 本とも $B$ で $\omega$ に接することになるが、円の 1 点での接線は 1 本だけなので矛盾する。接線の上の点は、接点のほかは円の外にある。よって $B$ は $\omega$ の外にあり、接点ではない。ほかの頂点も同じである。
段 2($P$ の位置)。$P$ は $\omega$ の上の点なので、条件 (ii) により角 $\angle BAD$ の内側(半直線を含む)にある。直線 $AB$ の点で角の内側にあるのは半直線 $AB$ の点である(反対向きの半直線の点は、直線 $AD$ について $B$ と反対側にある)。また条件 (iii) により、$P$ は直線 $BC$ について $A$ と反対の側(直線を含む)にある。$P$ が直線 $BC$ の上にあれば $P$ は 2 直線 $AB$、$BC$ の交点 $B$ になり、段 1 に反する。よって $P$ は直線 $BC$ について $A$ と真に反対側にある。半直線 $AB$ は $B$ で直線 $BC$ と交わり、$A$ の側から反対側へ移るので、$P$ は $B$ を越えた所にあり、$B$ は線分 $AP$ の上にある。
段 3($S$ の位置)。段 2 で直線 $BC$ の代わりに直線 $CD$ を使うと、$S$ は半直線 $AD$ の上で $D$ を越えた所にある。
段 4($Q$ の位置)。$Q$ は直線 $BC$ の上にあり、条件 (iii) により直線 $CD$ について $A$ と反対の側にある。$Q=C$ なら $C$ が円の上にあり段 1 に反するので、$Q$ は直線 $CD$ について $A$ と真に反対側にある。四角形は凸なので、$B$ は直線 $CD$ について $A$ と同じ側にある。直線 $BC$ は $C$ で直線 $CD$ と交わるので、直線 $BC$ の点で直線 $CD$ について $A$ と真に反対側にあるのは、$C$ から $B$ と反対向きに進んだ点である。よって $C$ は線分 $BQ$ の上にある。
段 5($R$ の位置)。段 4 で $B$ と $D$ の役割を入れかえる($D$ は直線 $BC$ について $A$ と同じ側にある)と、$C$ は線分 $DR$ の上にある。$\square$
ex-ext-start の (3) は、この補題を座標で確かめたものである。
凸四角形 $ABCD$ について、次の 2 つは同値である。
(1) $ABCD$ は頂点 $C$ の先の傍接円をもつ。
(2) $AB+BC=AD+DC$ であり、かつ $\angle A+\angle B<180^\circ$ である。
また (1) が成り立つとき、$\angle A+\angle D<180^\circ$ も成り立つ。
順向き (1) $\Rightarrow$ (2) の等式は、ex-ext-start の (4)・(5) の引き算をそのまま一般にしたものである。角の条件は、円の中心が角の二等分線の上にあることから出る。逆向きでは、Pitotの定理 と同じく二等辺三角形を 3 つ作るが、辺を延ばした所に点をとるので、場合分けが要らない。
以下、角 $\angle V$ の 二等分線 は頂点 $V$ の内角を二等分する直線、外角の二等分線 は $V$ での外角(一方の辺と、他方の辺を $V$ の先へ延ばした半直線がなす角)を二等分する直線である。2 本の直線から等しい距離にある点の集まりは、その 2 直線がなす角の二等分線と外角の二等分線を合わせたものである(三角形の内心と傍心 の定理「2 直線から等距離の点の集まり」)。
順向き (1) $\Rightarrow$ (2) から示す。$\omega$ を頂点 $C$ の先の傍接円、中心を $I$、半径を $r$、接点を $P$、$Q$、$R$、$S$ とする(lem-ext-points の記号)。
段 1(接線の長さ)。lem-ext-points により頂点はどれも $\omega$ の外にあるので、lem-ext-tangent から
$$
AP=AS=t_A,\quad BP=BQ=t_B,\quad CQ=CR=t_C,\quad DR=DS=t_D
$$
とおける。
段 2(引く)。lem-ext-points により $B$ は線分 $AP$ の上にあるので $AB=AP-BP=t_A-t_B$ である。同じく $D$ は線分 $AS$ の上にあるので $AD=t_A-t_D$、$C$ は線分 $BQ$ の上にあるので $BC=t_B-t_C$、$C$ は線分 $DR$ の上にあるので $DC=t_D-t_C$ である。よって
$$
AB+BC=(t_A-t_B)+(t_B-t_C)=t_A-t_C,\qquad AD+DC=(t_A-t_D)+(t_D-t_C)=t_A-t_C
$$
で、$AB+BC=AD+DC$ である。
段 3(角の条件)。$I$ は条件 (ii) により角 $\angle BAD$ の内側にあり、直線 $AB$、$AD$ から等しい距離 $r>0$ にあるので、$\angle A$ の二等分線の上にあり、$\angle IAB=\dfrac{\angle A}2$ である。次に、$I$ は直線 $AB$、$BC$ から等しい距離にあるので、$\angle B$ の二等分線か外角の二等分線の上にある。$\angle B$ の二等分線の点($B$ 以外)は、直線 $BC$ について $A$ と同じ側にあるか、直線 $AB$ について $C$ と反対側にある。ところが $I$ は、条件 (iii) により直線 $BC$ について $A$ と反対側にあり、角 $\angle BAD$ の内側なので直線 $AB$ について $D$ と同じ側、つまり(凸なので)$C$ と同じ側にある。よって $I$ は $\angle B$ の外角の二等分線の上にある。辺 $AB$ を $B$ の先へ延ばした半直線の上の点を $X$ とする。外角の二等分線のうち直線 $AB$ について $C$ と同じ側にあるのは、外角 $\angle CBX$ の内側を通る半直線なので、$I$ はこの半直線の上にある。外角 $\angle CBX=180^\circ-\angle B$ なので $\angle IBX=90^\circ-\dfrac{\angle B}2$、$\angle ABI=180^\circ-\angle IBX=90^\circ+\dfrac{\angle B}2$ である。三角形 $ABI$ の内角の和は $180^\circ$ なので
$$
\frac{\angle A}2+\left(90^\circ+\frac{\angle B}2\right)<180^\circ,\qquad\text{つまり}\qquad \angle A+\angle B<180^\circ
$$
である。定義は $B$ と $D$ を入れかえても変わらないので、同じ議論で $\angle A+\angle D<180^\circ$ も成り立つ。
次に逆向き (2) $\Rightarrow$ (1) を示す。$AB+BC=AD+DC$、$\angle A+\angle B<180^\circ$ を仮定する。
段 4(中心 $I$ をとる)。$A$ から $\angle A$ の二等分線を四角形の側へ半直線として引く。$B$ から $\angle B$ の外角の二等分線を、直線 $AB$ について $D$ の側へ半直線として引く。2 本の半直線が辺 $AB$ となす角は $\dfrac{\angle A}2$ と $180^\circ-\left(90^\circ-\dfrac{\angle B}2\right)=90^\circ+\dfrac{\angle B}2$ で、仮定から和が $180^\circ$ より小さいので、2 本は直線 $AB$ の $D$ の側で 1 点で交わる(辺 $AB$ と 2 本の半直線で三角形ができる)。この点を $I$ とする。
段 5(二等辺三角形を 3 つ作る)。辺 $AB$ を $B$ の先へ延ばし、$BE'=BC$ となる点 $E'$ をとる。辺 $AD$ を $D$ の先へ延ばし、$DF'=DC$ となる点 $F'$ をとる。仮定から
$$
AE'=AB+BC=AD+DC=AF'
$$
である。
逆向きの証明の作図。辺 AB を B の先へ延ばして BE′=BC、辺 AD を D の先へ延ばして DF′=DC とすると、角 A の二等分線と B、D の外角の二等分線(灰色の破線)は、C、E′、F′ から等しい距離にある点 I(緑の 3 本の線分が等しい)で交わり、I を中心とする青い円が 4 本の直線に接する
ex-ext-start の四角形で、辺の長さだけから prf-ext-main の段 4〜段 6 の点を作る。$\angle A=90^\circ$、$\cos\angle B=\dfrac35$ で $\angle B<90^\circ$ なので、$\angle A+\angle B<180^\circ$ である。
(1) $BE'=BC=\dfrac{15}{11}$ なので $E'\left(\dfrac{48}{11},0\right)$、$DF'=DC=\dfrac{26}{11}$ なので $F'\left(0,\dfrac{48}{11}\right)$ である。$AE'=AF'=\dfrac{48}{11}$ で、仮定の等式と合っている。
(2) $\angle A$ の二等分線は $y=x$ である。$\angle B$ の外角は、半直線 $BE'$(向き $(1,0)$)と半直線 $BC$(向き $\left(-\dfrac35,\dfrac45\right)$)がなす角で、2 つの長さ $1$ のベクトルの和 $\left(\dfrac25,\dfrac45\right)$ が外角の二等分線の向きである。直線 $(3,0)+s(1,2)$ と $y=x$ の交点は、$2s=3+s$ から $s=3$ で、$I(6,6)$ である。
(3) $IC^2=\left(6-\dfrac{24}{11}\right)^2+\left(6-\dfrac{12}{11}\right)^2=\dfrac{42^2+54^2}{121}=\dfrac{4680}{121}$、$IE'^2=\left(6-\dfrac{48}{11}\right)^2+6^2=\dfrac{18^2+66^2}{121}=\dfrac{4680}{121}$、$IF'^2$ も同じく $\dfrac{4680}{121}$ で、3 点は $I$ から等しい距離にある(図 3 の緑の線分)。
(4) $I$ から 4 本の直線までの距離は ex-ext-start の (2) で求めたとおりすべて $6$ である。
等式 $AB+BC=AD+DC$ は、$A$ と $C$ の名前を入れかえても同じ式($CB+BA=CD+DA$)である。したがって等式だけでは、円が頂点 $C$ の先にあるのか頂点 $A$ の先にあるのかは分からない。それを決めるのが角の条件である。
凸四角形 $ABCD$ が平行四辺形でなく、$AB+BC=AD+DC$ を満たすとする。このとき $\angle A+\angle B\ne180^\circ$ であり、
要点:頂点の名前を $C,D,A,B$ の順にずらした四角形でも同じ等式が成り立つので、$\angle A+\angle B>180^\circ$(つまり $\angle C+\angle D<180^\circ$)のときは、主定理から頂点 $A$ の先の傍接円がある。$\angle A+\angle B=180^\circ$ のときは、同じように名前をずらして主定理を使うと矛盾が出る。
四角形の内角の和は $360^\circ$ である。$\angle A+\angle B<180^\circ$ のときは thm-ext-main の逆向きそのものである。
$\angle A+\angle B>180^\circ$ のとき、$\angle C+\angle D=360^\circ-(\angle A+\angle B)<180^\circ$ である。頂点を $C,D,A,B$ の順に結んだ四角形 $CDAB$ は同じ凸四角形で、thm-ext-main の (2) の等式は $CD+DA=CB+BA$ となり、仮定の等式と同じである。角の条件は $\angle C+\angle D<180^\circ$ で成り立つ。よって四角形 $CDAB$ は「3 番目の頂点 $A$ の先」の傍接円をもつ。def-ext は $B$ と $D$ の入れかえで変わらないので、これは四角形 $ABCD$ の頂点 $A$ の先の傍接円である。
$\angle A+\angle B=180^\circ$ と仮定して矛盾を導く。平行四辺形でないので $\angle A+\angle D\ne180^\circ$ である($\angle A+\angle B=180^\circ$ かつ $\angle A+\angle D=180^\circ$ なら、2 組の対辺がどちらも平行になる)。$\angle A+\angle D<180^\circ$ なら、四角形 $ADCB$($B$ と $D$ の入れかえ)に thm-ext-main の逆向きを使って頂点 $C$ の先の傍接円を得る。すると thm-ext-main の順向きから $\angle A+\angle B<180^\circ$ となり矛盾する。$\angle A+\angle D>180^\circ$ なら $\angle C+\angle B<180^\circ$ で、四角形 $CBAD$ に逆向きを使って頂点 $A$ の先の傍接円を得る。これを四角形 $CDAB$ の頂点 $A$ の先の傍接円と見て順向きを使うと $\angle C+\angle D<180^\circ$ となるが、$\angle C+\angle D=360^\circ-180^\circ=180^\circ$ なので矛盾する。
最後に、2 つの傍接円が両方あれば、順向きから $\angle A+\angle B<180^\circ$ と $\angle C+\angle D<180^\circ$ が両方成り立ち、内角の和が $360^\circ$ より小さくなって矛盾する。$\square$
ex-ext-start の 4 点に、名前を付けかえる。$A\left(\dfrac{24}{11},\dfrac{12}{11}\right)$、$B(3,0)$、$C(0,0)$、$D(0,2)$ とする(もとの $A$ と $C$ を入れかえた)。辺の長さは $AB=\dfrac{15}{11}$、$BC=3$、$CD=2$、$DA=\dfrac{26}{11}$ で、
$$
AB+BC=\frac{15}{11}+3=\frac{48}{11}=\frac{26}{11}+2=AD+DC
$$
と等式は成り立つ。角は $\angle C=90^\circ$、$\cos\angle D=\dfrac5{13}$ で $\angle D<90^\circ$ なので $\angle C+\angle D<180^\circ$、つまり $\angle A+\angle B>180^\circ$ である($\cos\angle D$ は $\overrightarrow{DC}=(0,-2)$ と $\overrightarrow{DA}=\left(\dfrac{24}{11},-\dfrac{10}{11}\right)$ の内積 $\dfrac{20}{11}$ を $2\cdot\dfrac{26}{11}$ で割って求めた)。cor-ext-which により、傍接円は頂点 $A$ の先にある。実際、中心 $(6,6)$、半径 $6$ の円は、角 $\angle BCD$(第 1 象限)の中で、頂点 $A\left(\dfrac{24}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ の向こう側にある。この名前の付け方では、円は頂点 $C$ の先にはない。
thm-ext-main の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\angle A+\angle B<180^\circ$(等号) | ひし形 $A(-4,0)$、$B(0,-3)$、$C(4,0)$、$D(0,3)$ | 等式から傍接円が出る |
| $\angle A+\angle B<180^\circ$(逆向きの不等号) | ex-ext-which | 等式から頂点 $C$ の先の傍接円が出る |
| 凸である | へこんだ凧形 $A(0,0)$、$B(-1,2)$、$C(5,0)$、$D(-1,-2)$ | 等式から頂点 $C$ の先の円が出る |
| 円が頂点 $C$ の先にある | 内接円をもつ台形(Pitotの定理 の最初の例) | $AB+BC=AD+DC$ |
ひし形では、4 本の辺の直線に接する円は赤い内接円だけで、傍接円はない
へこんだ凧形では、4 本の直線に接する円は 2 つあるが、どちらも直線 BC、CD について A と同じ側にある
ひし形 $A(-4,0)$、$B(0,-3)$、$C(4,0)$、$D(0,3)$ の 4 辺はどれも長さ $5$ で、$AB+BC=AD+DC=10$ が成り立つ。$\overrightarrow{AD}=(4,3)=\overrightarrow{BC}$ なので $AD\parallel BC$ で、$\angle A+\angle B=180^\circ$ である(平行線の同側内角)。
4 本の直線に接する円は、平行な 2 直線 $AB$、$DC$ の両方に接するので、中心はその 2 直線からの距離が等しい直線(2 直線の真ん中の直線)の上にある。もう 1 組の平行な 2 直線 $AD$、$BC$ についても同じである。2 本の真ん中の直線はどちらも原点を通るので、中心は原点で、半径は原点から辺の直線 $3x+4y+12=0$ までの距離 $\dfrac{12}5$ である。この円は内接円(図 4)で、条件 (iii) を満たさない。傍接円はない。
平行四辺形ではいつも $AB=DC$、$BC=AD$ なので $AB+BC=AD+DC$ が成り立つが、cor-ext-which が平行四辺形を除いているのはこのためである。
4 点 $A(0,0)$、$B(-1,2)$、$C(5,0)$、$D(-1,-2)$ を順に結ぶと、$A$ が三角形 $BCD$ の内部に入り込んだ、へこんだ四角形(凸でない)になる。$AB=AD=\sqrt5$、$CB=CD=2\sqrt{10}$ なので $AB+BC=AD+DC$ が成り立つ。角を $180^\circ$ 未満の側で測ると、$\cos\angle BAD=\dfrac{(-1)(-1)+2\cdot(-2)}{\sqrt5\cdot\sqrt5}=-\dfrac35$ から $\angle BAD\fallingdotseq126.9^\circ$、$\cos\angle ABC=\dfrac{1\cdot6+(-2)(-2)}{\sqrt5\cdot2\sqrt{10}}=\dfrac{\sqrt2}2$ から $\angle ABC=45^\circ$ で、和は $180^\circ$ より小さく、角の条件の式も満たす(四角形の内側で測った $A$ の角は $360^\circ-\angle BAD\fallingdotseq233.1^\circ$ である)。
4 本の直線 $y=-2x$($AB$)、$x+3y=5$($BC$)、$x-3y=5$($CD$)、$y=2x$($DA$)に接する円は、ちょうど 2 つある。中心は $\left(\dfrac{10\sqrt2-5}7,0\right)\fallingdotseq(1.31,0)$ と $\left(-\dfrac{10\sqrt2+5}7,0\right)\fallingdotseq(-2.73,0)$ である。
中心は 2 直線 $y=2x$、$y=-2x$ から等しい距離にあるので、この 2 直線の二等分線である $x$ 軸か $y$ 軸の上にある。$y$ 軸の上の点 $(0,k)$ なら、直線 $BC$、$CD$ までの距離は $\dfrac{\lvert3k-5\rvert}{\sqrt{10}}$、$\dfrac{\lvert3k+5\rvert}{\sqrt{10}}$ で、等しいのは $k=0$ のときだけである。そのとき中心は $A$ で、直線 $AB$ までの距離が $0$ になり円にならない。よって中心は $x$ 軸の上の点 $(h,0)$ である。直線 $2x-y=0$ までの距離は $\dfrac{2\lvert h\rvert}{\sqrt5}$、直線 $x+3y-5=0$ までの距離は $\dfrac{\lvert h-5\rvert}{\sqrt{10}}$ で(直線 $CD$ までの距離も同じ値)、等しいとすると $2\sqrt2\lvert h\rvert=\lvert h-5\rvert$ である。$h\ge5$ では左辺の方が大きいので解はない。$0\le h<5$ なら $2\sqrt2h=5-h$ から $h=\dfrac5{1+2\sqrt2}=\dfrac{10\sqrt2-5}7$、$h<0$ なら $-2\sqrt2h=5-h$ から $h=-\dfrac5{2\sqrt2-1}=-\dfrac{10\sqrt2+5}7$ である。
Pitotの定理 の最初の例の台形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(4,3)$、$D(0,6)$ は、中心 $(2,2)$、半径 $2$ の内接円をもつ。辺は $AB=4$、$BC=3$、$CD=5$、$DA=6$ で、$AB+CD=BC+DA=9$ は成り立つが、$AB+BC=7$、$AD+DC=11$ で、この記事の等式は成り立たない。内接円の接点は辺の上にあり、辺は接線の長さの和になるので、引き算の等式は出てこない。この台形は $\angle A+\angle B=90^\circ+90^\circ=180^\circ$ なので、thm-ext-main の順向きからも頂点 $C$ の先の傍接円はない。
prf-ext-main の段 2 は、4 つの接線の長さ $(t_A,t_B,t_C,t_D)$ から 4 辺の長さへの対応
$$
(t_A,t_B,t_C,t_D)\longmapsto(AB,BC,CD,DA)=(t_A-t_B,\;t_B-t_C,\;t_D-t_C,\;t_A-t_D)
$$
を計算したものである。これは 4 次元の数ベクトルの間の 1 次写像(行列を掛ける写像)である。
この 1 次写像を $f$ とする。$f$ の像のどの点でも
$$
AB+BC-CD-DA=(t_A-t_B)+(t_B-t_C)-(t_D-t_C)-(t_A-t_D)=0
$$
である。また、$t_A,t_B,t_C,t_D$ をすべて同じ数だけ増やしても辺の長さは変わらず($f(1,1,1,1)=(0,0,0,0)$)、$f$ で $0$ に移るベクトルの集まり(核)はちょうど $(1,1,1,1)$ の定数倍になる(下の詳細)。したがって像はちょうど 3 次元で、方程式 $AB+BC-CD-DA=0$ の定める 3 次元の部分空間(超平面)全体になる(次元定理)。主定理の等式は、「辺の長さのベクトルが $f$ の像に入る」という条件である。
Pitotの定理 の内接円では、同じ対応が $(t_A+t_B,\;t_B+t_C,\;t_C+t_D,\;t_D+t_A)$ になり、像は $AB-BC+CD-DA=0$ の超平面、核は $(1,-1,1,-1)$ の定数倍である。符号の付け方が変わると、像を定める 1 次式の係数の符号が変わる。
この記事の $f$ の核がちょうど 1 次元であることは、$f(t_A,t_B,t_C,t_D)=(0,0,0,0)$ から $t_A=t_B$、$t_B=t_C$、$t_D=t_C$ が出て、4 つがすべて等しくなることから分かる。4 次元から 4 次元への 1 次写像で核が 1 次元なので、像は $4-1=3$ 次元である。像は超平面 $AB+BC-CD-DA=0$(これも 3 次元)に含まれるので、両者は一致する。
核があるので、辺の長さだけからは接線の長さは決まらない。四角形は辺の長さだけでは形が決まらない(4 本の棒をつないだ枠は変形できる)ことに対応している。
三角形の 3 本の辺の直線に接する円は、内接円と 3 つの傍接円の 4 つある(三角形の内心と傍心)。4 本の直線に接する円は、4 本から 3 本を選んでできる三角形の、この 4 つの円のうち、4 本目の直線にも接するものである。それが四角形の内部にあれば内接円(Pitotの定理)、頂点の先にあれば傍接円(この記事)になる。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する