準射影多様体

同義語:準射影代数多様体quasi-projective variety

概要

準射影多様体(quasi-projective variety)とは、代数閉体 $k$ 上の射影空間 $\mathbb P^n$ の中の射影多様体の空でない開集合のことであり、同じことだが $\mathbb P^n$ の既約な局所閉集合である。アフィン多様体・準アフィン多様体・射影多様体はすべて準射影多様体であり、古典的な代数幾何で扱う多様体はこの形をしている。各点はアフィン多様体と同型な開近傍をもち、空でない開集合の次元は全体の次元に等しいので、局所的な問題はアフィンの場合に帰着できる。一方、アフィン平面から原点を除いたものは、アフィンでも射影的でもない準射影多様体の例である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影多様体, アフィン多様体, Zariski位相

射影空間の中の曲線から有限個の点を抜いたもの、アフィン平面から原点を抜いたもの、行列式が $0$ でない行列の全体。これらは射影多様体でもアフィン多様体でもないことがあるが、どれも「射影多様体の開集合」である。準射影多様体(quasi-projective variety)はこの形の多様体の総称で、アフィン多様体と射影多様体を両方含む。古典的な代数幾何で扱う多様体はすべて準射影多様体であり、各点はアフィン多様体と同型な開近傍をもつので(thm-qpv-affine-basis)、局所的な性質はアフィンの場合に帰着できる。一方、大域的には、アフィンでも射影的でもない準射影多様体がある(thm-qpv-punctured-plane)。

定義

この記事では $k$ を代数閉体とし、射影多様体の節「古典的な射影多様体」の言葉を使う。$\mathbb P^n=\mathbb P^n(k)$ に Zariski 位相(斉次多項式の共通零点の集合を閉集合とする位相)を入れ、$\mathbb P^n$ の既約な閉集合を射影多様体という。

準射影多様体

射影多様体 $X\subset\mathbb P^n$ の空でない開集合 $Y$ に、$\mathbb P^n$ からの相対位相を入れたものを準射影多様体という。$Y$ の次元とは、位相空間としての次元(既約閉集合の真の減少列の長さの上限)である。

$U_i:=\{x_i\neq0\}\subset\mathbb P^n$ は $\varphi_i\colon U_i\to\mathbb A^n$、$[a]\mapsto(a_0/a_i,\dots,\widehat{a_i/a_i},\dots,a_n/a_i)$ によって $\mathbb A^n$ と同相であり(Har77 Proposition I.2.2、p. 10)、多様体としても同型である(Har77 Proposition I.3.3、p. 18)。$\mathbb A^n$ の既約閉集合をアフィン多様体、その空でない開集合を準アフィン多様体という。
スキームの言葉では、準射影多様体は「射影多様体の開部分多様体と同型な多様体」である(射影多様体の定義「射影多様体と準射影多様体」)。$k$ が代数閉体のとき、ここでの準射影多様体はその閉点の集合にあたり、点の局所環も一致する(Har77 Proposition II.2.6、p. 78)。
正則関数と射:$Y$ を準射影多様体とする。関数 $f\colon Y\to k$ が点 $P$ で正則であるとは、$P$ の開近傍 $U\subset Y$ と同じ次数の斉次多項式 $g,h$ があって、$U$ 上で $h\neq0$ かつ $f=g/h$ となることをいう。$Y$ の全点で正則な関数の環を $\mathcal O(Y)$ と書く。準射影多様体の間の射とは、連続写像であって、開集合上の正則関数を引き戻すと正則関数になるものをいう。逆射をもつ射を同型という。準アフィン多様体では、正則関数は局所的に多項式の商 $g/h$ である。アフィン多様体 $Y$ では $\mathcal O(Y)$ は座標環 $A(Y)=k[x_1,\dots,x_n]/I(Y)$ に等しく、$Y$ の点と $A(Y)$ の極大イデアル $\mathfrak m_P=\{f\mid f(P)=0\}$ は 1 対 1 に対応する(Har77 Theorem I.3.2(a)(b)、p. 17)。準射影多様体がアフィンであるとは、アフィン多様体と同型であることをいう。

局所閉集合による言い換え

$Y\subset\mathbb P^n$ を空でない部分集合とする。

  1. $Y$ が準射影多様体であることと、$Y$ が既約で、閉包 $\overline Y$ の中で開集合であることは同値である。このとき $Y$ は射影多様体 $\overline Y$ の開集合である。
  2. 準射影多様体 $Y$ の空でない開集合、および $Y$ の既約な閉集合は、準射影多様体である。
  3. 準アフィン多様体 $V\subset\mathbb A^n$ について、$\varphi_0^{-1}(V)\subset U_0$ は準射影多様体である。とくにアフィン多様体と射影多様体は準射影多様体である。
既約空間の空でない開集合は稠密

1:$Y$ を射影多様体 $X$ の空でない開集合とする。既約な空間 $X$ の空でない開集合は既約かつ稠密なので、$Y$ は既約で $\overline Y=X$ であり、$Y$ は $\overline Y$ の開集合である。逆に $Y$ が既約で $\overline Y$ の開集合なら、既約集合の閉包は既約なので $\overline Y$ は射影多様体であり、$Y$ はその空でない開集合である。
2:$Y=\overline Y\cap O$($O$ は $\mathbb P^n$ の開集合)と書く。空でない開集合 $W=Y\cap O'$ は $\overline Y\cap(O\cap O')$ なので射影多様体 $\overline Y$ の空でない開集合である。$Z\subset Y$ が既約閉集合なら $Z=Y\cap\overline Z=\overline Z\cap O$ であり、$Z$ は射影多様体 $\overline Z$ の空でない開集合である。
3:$V=\overline V\cap O$($\overline V$ は $\mathbb A^n$ の閉包、$O$ は開集合)とする。$\varphi_0$ は同相なので $\varphi_0^{-1}(V)$ は既約で、$U_0$ の局所閉集合であり、$U_0$ は $\mathbb P^n$ の開集合だから $\mathbb P^n$ の局所閉集合である。1 により準射影多様体である。射影多様体はそれ自身の開集合である。$\square$

種類定義例
アフィン多様体$\mathbb A^n$ の既約閉集合$V(y-x^2)$、$\mathbb P^n\setminus V_+(F)$(同型の意味で)
準アフィン多様体アフィン多様体の空でない開集合$\mathbb A^2\setminus\{0\}$
射影多様体$\mathbb P^n$ の既約閉集合$\mathbb P^n$、平面 3 次曲線
準射影多様体射影多様体の空でない開集合上のすべて

アフィン開集合の基

アフィン多様体の基本開集合 $D(g)$ は、変数を 1 つ増やすとアフィン多様体として実現できる。

基本開集合はアフィン

$Y\subset\mathbb A^n$ をアフィン多様体、$g\in k[x_1,\dots,x_n]$ を $g\notin I(Y)$ とし、$Y_g:=\{P\in Y\mid g(P)\neq0\}$ とおく。$W:=V\bigl(I(Y)+(x_{n+1}g-1)\bigr)\subset\mathbb A^{n+1}$ はアフィン多様体であり、$\psi\colon Y_g\to W$、$P\mapsto(P,1/g(P))$ は同型である。

逆写像は射影

$g\notin I(Y)$ だから $Y_g$ は $Y$ の空でない開集合で、既約である。$W$ は閉集合であり、$(P,b)\in W$ は $P\in Y$ かつ $bg(P)=1$ を意味する。$\psi$ の成分 $x_j$ と $1/g$ は $Y_g$ 上の正則関数なので $\psi$ は射であり(Har77 Lemma I.3.6、p. 20)、射影 $\pi\colon W\to Y_g$、$(P,b)\mapsto P$ も多項式で与えられる射である。$\pi\circ\psi$ と $\psi\circ\pi$ は恒等写像なので($(P,b)\in W$ では $b=1/g(P)$)、$\psi$ は同型である。とくに $W$ は既約な $Y_g$ と同相なので既約であり、アフィン多様体である。$\square$

アフィン開集合の基

$Y$ を準射影多様体、$P\in Y$、$U\subset Y$ を $P$ を含む開集合とする。$P\in V\subset U$ となる開集合 $V$ で、アフィン多様体と同型なものが存在する。とくに $Y$ は、アフィン多様体と同型な有限個の開集合で覆われる。

閉包から除く集合を 1 つの多項式で避ける

$P\in U_i$ となる $i$ をとる。$U\cap U_i$ は $Y$ の開集合で $P$ を含むので、prop-qpv-locally-closed の 2 により準射影多様体であり、$\varphi_i$ で $\mathbb A^n$ に移した $V_1:=\varphi_i(U\cap U_i)$ は既約な局所閉集合、すなわち準アフィン多様体である。$\overline{V_1}$ を $\mathbb A^n$ での閉包とし、$Z:=\overline{V_1}\setminus V_1$ とおく。$V_1$ は $\overline{V_1}$ の開集合なので $Z$ は閉集合であり、$P':=\varphi_i(P)\notin Z$ である。零点定理により $Z=V(I(Z))$ だから、$g(P')\neq0$ となる $g\in I(Z)$ がある。
$\overline{V_1}$ はアフィン多様体で $g\notin I(\overline{V_1})$ なので、lem-qpv-basic-open により $W_1:=\{Q\in\overline{V_1}\mid g(Q)\neq0\}$ はアフィン多様体と同型である。$g$ は $Z$ 上で消えるから $W_1\subset V_1$ であり、$W_1$ は $P'$ を含む $V_1$ の開集合である。$V:=\varphi_i^{-1}(W_1)$ は $P\in V\subset U\cap U_i\subset U$ を満たす開集合で、$\varphi_i$ は同型なので $V$ はアフィン多様体と同型である。
最後の主張:各点にこのような開近傍をとると $Y$ の開被覆が得られる。$\mathbb P^n$ は Noether 空間なのでその部分空間 $Y$ も Noether 空間で、開被覆は有限部分被覆をもつ。$\square$

これにより、非特異多様体や局所環のように点の近くだけで決まる性質は、アフィン多様体で調べれば十分になる。

次元は開集合で変わらない

準射影多様体の次元は、閉包の射影多様体の次元と同じであり、どの空でない開集合をとっても変わらない。アフィン多様体 $Y$ では、素イデアルと既約閉集合の対応(Hilbertの零点定理)により $\dim Y=\dim A(Y)$ である。

飽和した素イデアルの鎖

$B$ を $k$ 上有限生成な整域とし、$0=\mathfrak p_0\subsetneq\mathfrak p_1\subsetneq\cdots\subsetneq\mathfrak p_\ell=\mathfrak m$ を極大イデアル $\mathfrak m$ で終わる素イデアルの鎖で、隣り合う 2 つの間に素イデアルを挟めないものとする。このとき $\ell=\dim B$ である。

高さ 1 の素イデアルで割って帰納する

$\ell$ についての帰納法による。$\ell=0$ なら $\mathfrak m=0$ なので $B$ は体で、$\dim B=0$ である。$\ell\ge1$ とする。$\operatorname{ht}\mathfrak p_1\ge2$ なら $\mathfrak q_0\subsetneq\mathfrak q_1\subsetneq\mathfrak p_1$ となる素イデアルがあり、$0\subsetneq\mathfrak q_1\subsetneq\mathfrak p_1$ が挟めない仮定に反する。よって $\operatorname{ht}\mathfrak p_1=1$ であり、次元公式の命題「有限型整域の高さと残る次元」により $\dim B/\mathfrak p_1=\dim B-1$ である。$B/\mathfrak p_1$ も $k$ 上有限生成な整域で、$\mathfrak p_1/\mathfrak p_1\subsetneq\cdots\subsetneq\mathfrak m/\mathfrak p_1$ は長さ $\ell-1$ の挟めない鎖だから、帰納法の仮定により $\ell-1=\dim B-1$ である。$\square$

開集合と閉包の次元

$Y$ を準射影多様体とすると $\dim Y=\dim\overline Y< \infty$ である。とくに $Y$ の空でない開集合 $U$ について $\dim U=\dim Y$ である。

準アフィンの場合に帰着する

不等式 $\le$:$Y$ の既約閉集合の真の列 $Z_0\subsetneq\cdots\subsetneq Z_\ell$ について、$Z_j=Y\cap\overline{Z_j}$ なので閉包 $\overline{Z_j}$ も真の列をなし、既約である。よって $\dim Y\le\dim\overline Y$ である。
準アフィンの場合の $\ge$:$Y\subset\mathbb A^n$ を準アフィン多様体、$X:=\overline Y$、$B:=A(X)$ とする。$\dim X=\dim B$ は有限なので、上の不等式から $Y$ の列の長さは有限で抑えられる。点 $P\in Y$ をとり、列 $\{P\}\subsetneq Y$ を、間に既約閉集合を挟めなくなるまで細分した列 $\{P\}=Z_0\subsetneq\cdots\subsetneq Z_\ell=Y$ をとる。閉包の列 $\{P\}=\overline{Z_0}\subsetneq\cdots\subsetneq\overline{Z_\ell}=X$ も挟めない。実際、$X$ の既約閉集合 $T$ が $\overline{Z_j}\subsetneq T\subsetneq\overline{Z_{j+1}}$ を満たすなら、$T\cap Y$ は $P$ を含むので $T$ の空でない開集合であり、既約で $T$ で稠密である。$Z_j\subset T\cap Y\subset Z_{j+1}$ で、$T\cap Y$ は $Y$ の閉集合であり、その閉包は $T$ だから両端のどちらとも異なる。これは挟めない仮定に反する。零点定理により、この列は $B$ の素イデアルの挟めない鎖 $0\subsetneq\cdots\subsetneq\mathfrak m_P$ に対応し、lem-qpv-saturated-chain により $\ell=\dim B$ である。よって $\dim Y\ge\dim X$ である。
一般の場合:$Y$ の既約閉集合の真の列 $Z_0\subsetneq\cdots\subsetneq Z_\ell$ について、$Z_0$ と交わる $U_i$ をとると、各 $Z_j\cap U_i$ は $Z_j$ の空でない開集合で稠密だから、$Y\cap U_i$ の既約閉集合の真の列を与える。逆向きは閉包をとればよい。よって $\dim Y=\max_i\dim(Y\cap U_i)$($Y\cap U_i\neq\emptyset$ となる $i$ にわたる最大)であり、$\overline Y$ についても同様である。$Y\cap U_i$ は $\overline Y\cap U_i$ で稠密な開集合であり、$\varphi_i$ で移すと準アフィン多様体とその閉包になるので、前段により $\dim(Y\cap U_i)=\dim(\overline Y\cap U_i)$ である。以上から $\dim Y=\dim\overline Y$ である。
最後に、$U$ は既約な $Y$ で稠密なので $\overline U=\overline Y$ であり、$\dim U=\dim\overline U=\dim\overline Y=\dim Y$ である。$\square$

この定理はスキームの言葉の代数多様体の定理「次元は関数体の超越次数に等しい」の後半にあたる。たとえば $\dim(\mathbb A^2\setminus\{0\})=\dim\mathbb P^2=2$ である。

アフィンでも射影的でもない例

原点を除いた平面

$X:=\mathbb A^2\setminus\{(0,0)\}$ は準射影多様体であり、$\mathcal O(X)=k[x,y]$ である。$X$ はアフィンでなく、射影多様体とも同型でない。

大域関数を求め、極大イデアルと点の対応に矛盾させる

$X$ は $\mathbb A^2$ の空でない開集合なので、prop-qpv-locally-closed の 3 により準射影多様体である。
大域関数:$D(x):=\{x\neq0\}\subset\mathbb A^2$ は lem-qpv-basic-open によりアフィン多様体 $V(x_3x-1)\subset\mathbb A^3$ と同型である。$k[x,y,x_3]/(x_3x-1)\cong k[x,y]_x$ は整域なので $(x_3x-1)$ は素イデアルであり、零点定理により $I(V(x_3x-1))=(x_3x-1)$、座標環は $k[x,y]_x$ だから $\mathcal O(D(x))=k[x,y]_x$ である。$D(y)$ も同様である。$f\in\mathcal O(X)$ をとると $X=D(x)\cup D(y)$ で、$f=a/x^m$($D(x)$ 上)、$f=b/y^l$($D(y)$ 上)と書ける。$D(xy)$ 上で $ay^l=bx^m$ が関数として成り立ち、$D(xy)$ は $\mathbb A^2$ で稠密で、二つの多項式が一致する点の集合は閉集合だから、$ay^l=bx^m$ は $\mathbb A^2$ 全体で成り立ち、$k$ は無限体なので多項式として等しい。$k[x,y]$ は一意分解整域で $x\nmid y^l$ だから $x^m\mid a$ であり、$c:=a/x^m\in k[x,y]$ について $D(x)$ 上で $f=c$ である。$D(y)$ 上でも $f$ と $c$ は空でない開集合 $D(xy)$ で一致する。正則関数は $\mathbb A^1$ への連続写像なので(Har77 Lemma I.3.1、p. 15)一致する点の集合は閉集合であり、既約な $D(y)$ の稠密な部分を含むので $D(y)$ 全体で $f=c$ である。よって $f$ は多項式 $c$ の制限であり、制限 $k[x,y]\to\mathcal O(X)$ は $X$ が稠密なので単射でもある。
アフィンでない:同型 $\phi\colon X\to Y$($Y$ はアフィン多様体)があるとする。引き戻し $\phi^*\colon A(Y)=\mathcal O(Y)\to\mathcal O(X)=k[x,y]$ は $k$ 代数の同型で、$(\phi^*f)(P)=f(\phi(P))$ を満たす。極大イデアル $(x,y)$ の逆像は $A(Y)$ の極大イデアルなので、ある $Q\in Y$ について $\mathfrak m_Q$ である。$P:=\phi^{-1}(Q)\in X$ とすると、$\phi^*f=x$ となる $f$ は $\mathfrak m_Q$ に属するので $x(P)=f(Q)=0$、同様に $y(P)=0$ であり、$P=(0,0)\notin X$ となって矛盾する。
射影的でない:射影多様体 $Z$ では $\mathcal O(Z)=k$ である(Har77 Theorem I.3.4(a)、p. 18。スキームの言葉では射影多様体の命題「射影多様体の大域関数」)。同型は正則関数の環の同型を引き起こすが、$\mathcal O(X)=k[x,y]\neq k$ である。$\square$

スキームの言葉で同じことを示した証明がアフィン多様体の命題「原点を除いた平面はアフィンでない」にある。原点という余次元 $2$ の 1 点を除いても関数は増えず、そのため「関数で点を見分ける」アフィン多様体の性質が壊れる。これに対し、余次元 $1$ の集合を除いた $\mathbb A^2\setminus V(x)=D(x)$ はアフィンである。射影空間でも、超曲面の補集合 $\mathbb P^n\setminus V_+(F)$ はアフィンである(Veronese埋め込みの系「超曲面の補集合はアフィン」)。

準射影多様体の例
  • 一般線形群 $GL_n=\{\det\neq0\}\subset\mathbb A^{n^2}$ は lem-qpv-basic-open によりアフィン多様体 $V(t\det-1)\subset\mathbb A^{n^2+1}$ と同型である。
  • 射影多様体 $X$ から有限個の点を除いたものは、点が閉集合なので準射影多様体である。$X=\mathbb P^1$ のときは、空でない有限個の点 $P_1,\dots,P_m$ を除いたものはアフィンである。実際、$P_j=[a_j:b_j]$ に対し一次形式 $L_j:=b_jx_0-a_jx_1$ は $\mathbb P^1$ 上で $P_j$ だけで $0$ になる($L_j(c)=0$ は $(c_0,c_1)$ と $(a_j,b_j)$ が比例することと同値)。$F:=L_1\cdots L_m$ は次数 $m\ge1$ の $0$ でない斉次多項式で、$k[x_0,x_1]$ は整域なので $F(c)=0$ はある $L_j(c)=0$ と同値だから、$V_+(F)=\{P_1,\dots,P_m\}$ である。よって $\mathbb P^1\setminus\{P_1,\dots,P_m\}=\mathbb P^1\setminus V_+(F)$ はVeronese埋め込みの系「超曲面の補集合はアフィン」によりアフィンである。$m=1$、$P_1=[0:1]$ なら、これは $U_0\cong\mathbb A^1$ にほかならない。
  • 非特異多様体の特異点集合の補集合 $Y\setminus\operatorname{Sing}Y$ は、射影多様体 $Y$ の空でない開集合なので非特異な準射影多様体である。

反例:仮定を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
既約性平面と直線の和 $X=V(x)\cup V(y,z)\subset\mathbb A^3$空でない開集合の次元は全体の次元に等しい
局所閉$Y=D(x)\cup\{(0,0)\}\subset\mathbb A^2$$\overline Y$ の開集合であること(準射影多様体であること)
$\mathbb A^n$ または $\mathbb P^n$ の閉集合であること$\mathbb A^2\setminus\{0\}$大域関数が点を見分ける(アフィン)、または定数だけ(射影的)
  • 既約性:$U:=X\setminus V(x)$ は $X$ の空でない開集合で、直線 $V(y,z)$ から 1 点を除いたものだから $\dim U=1$ だが、$\dim X=2$ である。可約な空間では「開集合が稠密」が成り立たない。
  • 局所閉:$Y$ の閉包は $\mathbb A^2$ である($D(x)$ が稠密)。$\mathbb A^2\setminus Y=V(x)\setminus\{(0,0)\}$ は無限集合で、その閉包は原点を含む直線 $V(x)$ だから閉集合でない。よって $Y$ は $\overline Y$ の開集合でなく、prop-qpv-locally-closed の 1 により準射影多様体でない($\varphi_0$ で $\mathbb P^2$ の中で見ても同じ)。
  • 閉集合であること:thm-qpv-punctured-plane のとおり、射影多様体の開集合ではあるが、アフィンでも射影的でもない。準射影多様体の類はアフィン・射影の 2 つの類の和より真に大きい。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, §I.2 定義と Proposition 2.2, p. 10;§I.3 Lemma 3.1, p. 15、Theorem 3.2, p. 17、Proposition 3.3・Theorem 3.4, p. 18、Lemma 3.6, p. 20;Proposition II.2.6, p. 78

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