有限型射

同義語:morphism of finite type有限型の射

概要

有限型射(morphism of finite type)とは、スキームの射 $f\colon X\to Y$ であって、$Y$ の各アフィン開集合 $\operatorname{Spec}B$ の逆像が有限個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_i$ で覆われ、各 $A_i$ が有限生成 $B$ 代数になるものをいう。有限個の条件を外せば局所有限型、関係式も有限個なら有限表示で、Noether 底上では両者は一致する。アフィン開被覆によらず定まり、合成・底変換・積で閉じ、閉埋め込み・有限射・射影射は有限型である。体上有限型なら閉点は剰余体がその体上有限次の点で、Chevalley の定理により像は構成可能集合になる。$\operatorname{Spec}\mathbb{Q}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ は有限型でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: スキーム, アフィンスキーム, スキームの射, 有限生成代数, 準コンパクト, ファイバー積, Noether環

定義

有限型射は、スキームの射のうち「底の上で有限個の変数と有限個の方程式で書ける」ものを、アフィン開被覆を用いて定義したものである。まず環の言葉を固定し、次に射の定義を述べる。

環の準同型の有限型と有限表示

$B$ を可換環、$A$ を $B$ 代数(環準同型 $\varphi\colon B\to A$ をもつ可換環)とする。

  1. $A$ が $B$ 上有限型(of finite type)、または有限生成 $B$ 代数(有限生成代数)であるとは、有限個の元 $a_1,\dots,a_n\in A$ が存在して、$B$ 代数の全射 $B[x_1,\dots,x_n]\to A$、$x_i\mapsto a_i$ が存在することをいう。すなわち $A\cong B[x_1,\dots,x_n]/I$ となる多項式環のイデアル $I$ が存在することである。
  2. $A$ が $B$ 上有限表示(of finite presentation)であるとは、1 の表示で $I$ を有限生成イデアルにとれることをいう。すなわち有限個の多項式 $g_1,\dots,g_m$ があって $A\cong B[x_1,\dots,x_n]/(g_1,\dots,g_m)$ となることである。

$B$ が Noether環なら、Hilbertの基底定理により $B[x_1,\dots,x_n]$ も Noether 環なので、$B$ 上有限型の代数はすべて有限表示である(prop-finite-type-noetherian)。一般の $B$ では両者は異なる。

局所有限型・有限型・有限表示の射

$f\colon X\to Y$ をスキームの射(スキームの射)とする。

  1. $f$ が局所有限型(locally of finite type)であるとは、$Y$ のアフィン開被覆(開被覆)$Y=\bigcup_jV_j$、$V_j=\operatorname{Spec}B_j$ が存在して、各 $j$ について $f^{-1}(V_j)$ がアフィン開集合(アフィン開集合)の族 $U_{ij}=\operatorname{Spec}A_{ij}$ で覆われ、各 $A_{ij}$ が $B_j$ 上有限型になることをいう。
  2. $f$ が有限型(of finite type)であるとは、1 の被覆 $\{U_{ij}\}_i$ を各 $j$ について有限個にとれることをいう。有限型の射を有限型射という。
  3. $f$ が局所有限表示(locally of finite presentation)であるとは、1 で各 $A_{ij}$ を $B_j$ 上有限表示にとれることをいう。$f$ が有限表示(of finite presentation)であるとは、局所有限表示かつ準コンパクト(下の def-finite-type-quasi-compact)かつ準分離的(準分離射)であることをいう。
    スキーム $S$ 上のスキーム $X$(構造射 $X\to S$ をもつスキーム)について、構造射が有限型であるとき $X$ は $S$ 上有限型である、あるいは有限型 $S$ スキームという。$S=\operatorname{Spec}k$($k$ は体)のとき、$k$ 上有限型のスキームを $k$ 上の代数的スキームということがある。

この定義は EGA1 §6.3 および Har77 II §3 のものである。定義 1・2 は「ある」アフィン開被覆の存在を要求しているが、実際にはどのアフィン開被覆についても同じ条件が成り立つ(prop-finite-type-affine-local)。これが有限型の概念を扱いやすくしている基本事実である。有限型は、大まかには「局所有限型かつ準コンパクト」である(cor-finite-type-quasi-compact)。

準コンパクトな射

スキームの射 $f\colon X\to Y$ が準コンパクト(quasi-compact)であるとは、$Y$ の任意のアフィン開集合 $V$ について $f^{-1}(V)$ が準コンパクトな位相空間(任意の開被覆が有限部分被覆をもつ)になることをいう。$Y$ の準コンパクトな開集合はアフィン開集合の有限和なので、これは「準コンパクトな開集合の逆像が準コンパクト」と言っても同じである。

ここで射 $f\colon X\to Y$ が準分離的であるとは、$Y$ の任意のアフィン開集合 $V$ と $f^{-1}(V)$ に含まれる $X$ の任意の 2 つのアフィン開集合 $U,U'$ について $U\cap U'$ が準コンパクトになることをいう(対角射 $X\to X\times_YX$ が準コンパクトであることと同値。準分離射、Stacks Tag 01KO)。有限表示の定義に準分離性が入るのは Grothendieck EGA4 §1.6 の流儀であり、Har77 にはこの語は現れない。局所 Noether スキーム(局所Noetherスキーム)からの射は自動的に準分離的なので、Noether 的な状況では「有限表示=局所有限表示+準コンパクト」と読んでよい。

直感

$B$ 上有限型の代数 $A=B[x_1,\dots,x_n]/I$ のスペクトル $\operatorname{Spec}A$ は、$B$ 上の $n$ 次元アフィン空間 $\mathbb{A}^n_B$ の閉部分スキームである。したがって局所有限型の射 $X\to Y$ とは、「$Y$ の各アフィン開集合の上で、$X$ が局所的に有限次元アフィン空間の閉部分スキームになっている」射であり、有限型はさらにその個数が有限であることを要求する。古典的な代数多様体は体 $k$ 上の有限個の多項式の共通零点を貼り合わせたものであり、「$k$ 上有限型」はまさにこの有限性を一般のスキームに拡張したものである。
有限型でない射の典型は、$\operatorname{Spec}\mathbb{Q}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ や $\operatorname{Spec}k[\![t]\!]\to\operatorname{Spec}k$ のように、局所化や完備化で作られる「無限個の分母・無限個の係数」をもつ環のスペクトルである(ex-finite-type-spec-q、ex-finite-type-power-series)。有限型の仮定があると、点が閉点かどうかを剰余体で判定でき(prop-finite-type-closed-points)、像が構成可能集合になり(thm-finite-type-chevalley)、連接層の理論や次元の理論が働く。多くの定理が「$Y$ 上有限型のスキーム」を対象とするのはこのためである。有限表示は、底が Noether でないときに有限型の代わりに使う概念で、「有限個の方程式で定義される」ことまで保証する(prop-finite-type-noetherian)。

例と反例

アフィン空間と射影空間

任意のスキーム $Y$ について、$n$ 次元アフィン空間 $\mathbb{A}^n_Y=\mathbb{A}^n_{\mathbb{Z}}\times_{\operatorname{Spec}\mathbb{Z}}Y\to Y$ と射影空間 $\mathbb{P}^n_Y=\mathbb{P}^n_{\mathbb{Z}}\times_{\operatorname{Spec}\mathbb{Z}}Y\to Y$ は有限型射である。実際、$Y$ のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ の逆像はそれぞれ $\mathbb{A}^n_B=\operatorname{Spec}B[x_1,\dots,x_n]$ と $\mathbb{P}^n_B=\operatorname{Proj}B[x_0,\dots,x_n]$ であり、後者は $n+1$ 個のアフィン開集合
$$ D_+(x_i)=\operatorname{Spec}B[x_0/x_i,\dots,x_n/x_i]\qquad(i=0,\dots,n) $$
で覆われ、各 $B[x_0/x_i,\dots,x_n/x_i]$ は $B$ 上の $n$ 変数多項式環である。どちらも有限表示である。より一般に、$\mathbb{A}^n_Y$ や $\mathbb{P}^n_Y$ の閉部分スキームは $Y$ 上有限型であり(prop-finite-type-standard)、とくに射影射は有限型である。

体上の代数多様体

$k$ を体とする。$k$ 上有限型のスキームとは、有限個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}k[x_1,\dots,x_{n_i}]/I_i$ で覆われるスキームのことである。$k$ 上の代数多様体($k$ 上有限型・分離的(分離射)・整(整スキーム)なスキーム)はその代表例であり、アフィン多様体 $\operatorname{Spec}k[x_1,\dots,x_n]/\mathfrak{p}$、射影多様体 $\operatorname{Proj}k[x_0,\dots,x_n]/\mathfrak{p}$($\mathfrak{p}$ は斉次素イデアル)はいずれも $k$ 上有限型である。$k$ 上有限型のスキームは Noether スキーム(Noetherスキーム)であり(cor-finite-type-noetherian-scheme)、その閉点(閉点)は剰余体(剰余体)が $k$ 上有限な点にほかならない(prop-finite-type-closed-points)。
体の拡大 $\operatorname{Spec}K\to\operatorname{Spec}k$ が有限型であることは、$K$ が $k$ 上有限生成な体(体の拡大)であること、すなわち有限個の元 $\alpha_1,\dots,\alpha_n$ で $K=k(\alpha_1,\dots,\alpha_n)$ となることと同値ではない。$K$ が $k$ 代数として有限生成であることが必要十分であり(prop-finite-type-affine-local)、これは $K$ が $k$ 上有限次拡大(有限次拡大)であることと同値である(thm-finite-type-zariski)。たとえば $\operatorname{Spec}k(t)\to\operatorname{Spec}k$ は有限型でない。

閉埋め込み・開埋め込み・有限射

閉埋め込みと有限射は有限型射である。開埋め込み $j\colon U\to X$ は局所有限型(さらに局所有限表示)であるが、有限型であるのは $j$ が準コンパクトなとき、すなわち $X$ の任意のアフィン開集合 $V$ について $U\cap V$ が準コンパクトなときに限る。$X$ が Noether スキームならこれは常に成り立つ。証明は prop-finite-type-standard で与える。準コンパクトでない開埋め込みの例として、$k$ を体、$X=\operatorname{Spec}k[x_1,x_2,\dots]$(可算無限変数の多項式環のスペクトル)、$U=X\setminus V(x_1,x_2,\dots)$ をとると、$U=\bigcup_nD(x_n)$ であり、有限個の $D(x_{n_1}),\dots,D(x_{n_r})$ では覆えない(点 $(x_{n_1},\dots,x_{n_r})$ は $U$ に属するがどの $D(x_{n_l})$ にも属さない)ので、$U\to X$ は準コンパクトでなく、有限型でない。

反例:無限変数の多項式環

$k$ を体、$A=k[x_1,x_2,x_3,\dots]$ を可算無限個の変数の多項式環とする。構造射 $f\colon\operatorname{Spec}A\to\operatorname{Spec}k$ は準コンパクト(アフィンスキームの位相空間は準コンパクトである)だが、局所有限型でない。したがって有限型でもない。
実際、$f$ が局所有限型なら prop-finite-type-affine-local により $A$ は $k$ 上有限型、すなわち有限個の元 $a_1,\dots,a_r\in A$ で $k$ 代数として生成される。各 $a_i$ は有限個の変数の多項式なので、十分大きい $N$ をとれば $a_1,\dots,a_r\in k[x_1,\dots,x_N]$ であり、これらが生成する $k$ 部分代数は $k[x_1,\dots,x_N]$ に含まれる。しかし $x_{N+1}\notin k[x_1,\dots,x_N]$ なので矛盾する。
この例は「準コンパクトかつ局所有限型」の 2 条件のうち後者だけが破れる例である。なお、Krull次元は無限であり、$k$ 上有限型のスキームの次元が有限であること(Noether正規化定理)とも整合する。

反例:有理数体の整数環上のスペクトル

$\operatorname{Spec}\mathbb{Q}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ は有限型でない。$\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ 自身がアフィンだから、prop-finite-type-affine-local により、有限型なら $\mathbb{Q}$ が $\mathbb{Z}$ 上有限型の代数になる。有限個の有理数 $a_1/b_1,\dots,a_r/b_r$($a_i,b_i\in\mathbb{Z}$、$b_i\ne0$)が生成する $\mathbb{Z}$ 部分代数は、$N=b_1\cdots b_r$ とおくと $\mathbb{Z}[1/N]=\{m/N^e\mid m\in\mathbb{Z},\,e\ge0\}$ に含まれる。$N$ を割らない素数 $p$ をとると $1/p\notin\mathbb{Z}[1/N]$ である。実際 $1/p=m/N^e$ なら $N^e=pm$ となり、$p$ が $N$ を割らないことに反する。よって $\mathbb{Q}$ は $\mathbb{Z}$ 上有限型でない。
この射は準コンパクトで、平坦(平坦射)で、スキームの圏のモノ射であり、$\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の生成点への埋め込みである。像 $\{(0)\}$ は $\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の構成可能集合でない。実際、$\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の空でない開集合は有限個の素数を除いた集合であり、$\{(0)\}$ を含む局所閉集合(局所閉集合)$U\cap Z$($U$ 開、$Z$ 閉)は $Z=\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ となるので開集合であって、1 点にはなりえない。構成可能集合は局所閉集合の有限和であり、$\{(0)\}$ に含まれる局所閉集合は空集合だけなので、$\{(0)\}$ は構成可能でない。したがって Chevalley の定理(thm-finite-type-chevalley)の有限型の仮定は外せない。同じ理由で、一般に環 $A$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ による局所化 $\operatorname{Spec}A_{\mathfrak{p}}\to\operatorname{Spec}A$ は有限型とは限らない。たとえば $\operatorname{Spec}\mathbb{Z}_{(p)}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ も有限型でない($\mathbb{Z}_{(p)}$ の有限個の元が生成する部分代数は $\mathbb{Z}[1/N]$ に含まれるが、$1/q\in\mathbb{Z}_{(p)}$($q\ne p$ は $N$ を割らない素数)はそこに入らない)。

反例:形式冪級数環

$k$ を体とし、$A=k[\![t]\!]$ を 1 変数形式冪級数環とする。$\operatorname{Spec}A\to\operatorname{Spec}k$ は有限型でない。
$A$ は離散付値環であり、その素イデアルは $(0)$ と $(t)$ の 2 個だけである。したがって $\operatorname{Spec}A=\{\eta,s\}$($\eta=(0)$ は生成点、$s=(t)$ は閉点)で、閉集合は $\emptyset$、$\{s\}$、$\operatorname{Spec}A$ の 3 個である。閉点 $s$ の閉包は $\{s\}$ であり、$\operatorname{Spec}A$ 全体ではない。ところが $k$ 上局所有限型のスキームでは、閉点の全体はどの空でない閉集合においても稠密(稠密)である(prop-finite-type-closed-points)。よって $\operatorname{Spec}A$ は $k$ 上局所有限型でない。
なお、閉点 $s$ の剰余体は $k$、生成点 $\eta$ の剰余体は $k(\!(t)\!)$($k$ 上無限次)であり、prop-finite-type-closed-points の 1 の同値「閉点 ⟺ 剰余体が $k$ 上有限次」自体はこの $\operatorname{Spec}A$ でもたまたま成り立っている。破れているのは 2(閉点の稠密性)である。満たす性質:準コンパクト、局所 Noether、閉点の剰余体が $k$ 上有限次。満たさない性質:$k$ 上局所有限型。破る含意:「$k$ 上のスキームで閉点の剰余体がすべて $k$ 上有限次なら有限型」は成り立たない。$\operatorname{Spec}k[\![t]\!]$ は $\operatorname{Spec}k[t]$ の原点における完備化(完備化)であり、形式スキームやHensel局所環が現れる局所的な議論では「$k$ 上有限型」の仮定が失われることに注意が要る。同様に、$\operatorname{Spec}k[\![t]\!]\to\operatorname{Spec}k[t]$ も有限型でない(有限型なら合成 $\operatorname{Spec}k[\![t]\!]\to\operatorname{Spec}k[t]\to\operatorname{Spec}k$ が有限型になり、prop-finite-type-composition に反する)。

性質

アフィン開被覆によらないこと

定義はアフィン開被覆の存在を要求するだけだが、実際には任意のアフィン開集合の組で条件が成り立つ。鍵となるのは、環の有限型性が「基本開集合による被覆で確かめられる」ことである。

2 つのアフィン開集合に共通な基本開集合

$X$ をスキーム、$U=\operatorname{Spec}A$、$U'=\operatorname{Spec}A'$ を $X$ のアフィン開集合、$x\in U\cap U'$ とする。このとき $a\in A$、$a'\in A'$ が存在して、$x\in D_U(a)=D_{U'}(a')$ となる。ここで $D_U(a)$ は $U$ の基本開集合(基本開集合)$\{y\in U\mid a\notin\mathfrak{p}_y\}=\operatorname{Spec}A_a$ である。とくにこの開集合 $W$ について構造層の切断は $\mathcal{O}_X(W)=A_a=A'_{a'}$ である。

基本開集合を 2 度とる

$U\cap U'$ は $U$ の開集合で $x$ を含むので、$x\in D_U(b)\subset U\cap U'$ となる $b\in A$ がある。$D_U(b)$ は $U'$ の開集合で $x$ を含むので、$x\in D_{U'}(a')\subset D_U(b)$ となる $a'\in A'$ がある。$a'\in A'=\mathcal{O}_X(U')$ を開集合 $D_U(b)\subset U'$ に制限したものは $\mathcal{O}_X(D_U(b))=A_b$ の元であり、$c/b^n$($c\in A$、$n\ge0$)と書ける。点 $y\in D_U(b)$ において $a'$ の芽(芽)が局所環 $\mathcal{O}_{X,y}$ の単元であることと $c$ の芽が単元であることは同値である($b$ は $D_U(b)$ 上で単元)。$D_{U'}(a')\subset D_U(b)$ だから
$$ D_{U'}(a')=\{y\in D_U(b)\mid a'_y\ \text{は単元}\}=\{y\in D_U(b)\mid c_y\ \text{は単元}\}=D_U(b)\cap D_U(c)=D_U(bc) $$
となる。$a:=bc$ とおけばよい。最後の主張は $\mathcal{O}_X(D_U(a))=A_a$、$\mathcal{O}_X(D_{U'}(a'))=A'_{a'}$ が同じ開集合の切断であることから従う。

有限型性の基本開集合による貼り合わせ

$B\to A$ を環準同型、$f_1,\dots,f_r\in A$ を単位イデアルを生成する元($\sum_ia_if_i=1$ となる $a_i\in A$ がある)とする。各 $i$ について局所化 $A_{f_i}$ が $B$ 上有限型ならば、$A$ は $B$ 上有限型である。

分母を払う

各 $i$ について $A_{f_i}$ の $B$ 代数としての生成元を有限個とり、分母を払って $b_{i1}/f_i^{n},\dots,b_{is}/f_i^{n}$($b_{ij}\in A$)の形にしておく。$A'\subset A$ を、元 $f_i$、$a_i$、$b_{ij}$($1\le i\le r$、$1\le j\le s$)が生成する $B$ 部分代数とする。$A'$ は $B$ 上有限型であり、$A'=A$ を示せばよい。
$x\in A$ を任意にとる。$A_{f_i}$ において $x/1$ は生成元の多項式で書けるので、$x/1=g_i/f_i^{m}$($g_i\in A'$、$m\ge0$。$m$ は $i$ によらないように大きくとる)と書ける。これは $A$ における等式 $f_i^{e}(f_i^{m}x-g_i)=0$($e\ge0$)を意味するので、$M:=m+e$($e$ もすべての $i$ について共通にとる)とおくと $f_i^{M}x=f_i^{e}g_i\in A'$ である。
一方、$1=(\sum_ia_if_i)^{rM}$ を展開すると、各項は $a_1,\dots,a_r,f_1,\dots,f_r$ の積であり、$f_1,\dots,f_r$ の指数の和が $rM$ なので、いずれかの $f_i$ の指数は $M$ 以上である。よって $1=\sum_ic_if_i^{M}$($c_i\in A'$)と書ける。したがって
$$ x=\sum_ic_if_i^{M}x\in A' $$
である。

局所有限型はアフィン開集合の取り方によらない

スキームの射 $f\colon X\to Y$ について、次は同値である。

  1. $f$ は局所有限型である。
  2. $Y$ の任意のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ と、$f^{-1}(V)$ に含まれる $X$ の任意のアフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}A$ について、$A$ は $B$ 上有限型である。
  3. $Y$ の任意のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ について、$f^{-1}(V)$ はアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_i$($A_i$ は $B$ 上有限型)で覆われる。
共通の基本開集合による帰着

2 ⟹ 3 ⟹ 1 は明らかである(3 ⟹ 1 は $Y$ のアフィン開被覆をとればよい。2 ⟹ 3 は $f^{-1}(V)$ がアフィン開集合で覆われることによる)。1 ⟹ 2 を示す。$Y=\bigcup_jV_j$、$V_j=\operatorname{Spec}B_j$、$f^{-1}(V_j)=\bigcup_iU_{ij}$、$U_{ij}=\operatorname{Spec}A_{ij}$ を定義の被覆とする。$V=\operatorname{Spec}B$、$U=\operatorname{Spec}A\subset f^{-1}(V)$ をとり、$x\in U$ を任意の点とする。
段 1(底の取り替え).$y:=f(x)$ はある $V_j$ に属する。lem-finite-type-common-basic-open を $Y$ のアフィン開集合 $V$、$V_j$ と点 $y$ に適用すると、$y\in W:=D_V(g)=D_{V_j}(h)$($g\in B$、$h\in B_j$)となる開集合 $W$ があり、$\mathcal{O}_Y(W)=B_g=(B_j)_h$ である。$f^{-1}(W)=f^{-1}(V_j)\cap f^{-1}(D_{V_j}(h))$ は、各 $U_{ij}$ において $h$ の像 $h_{ij}\in A_{ij}$ が定める基本開集合 $D_{U_{ij}}(h_{ij})=\operatorname{Spec}(A_{ij})_{h_{ij}}$ で覆われる。$(A_{ij})_{h_{ij}}\cong A_{ij}\otimes_{B_j}(B_j)_h$ は $(B_j)_h=B_g$ 上有限型である($A_{ij}$ の $B_j$ 上の生成元の像で生成される)。$B_g=B[1/g]$ は $B$ 上有限型なので、有限型性の推移律($C$ が $B$ 上有限型で $D$ が $C$ 上有限型なら、両方の生成元を合わせて $D$ は $B$ 上有限型)により、$(A_{ij})_{h_{ij}}$ は $B$ 上有限型である。
段 2(始域の取り替え).$x\in f^{-1}(W)$ はある $\operatorname{Spec}C$($C:=(A_{ij})_{h_{ij}}$)に属する。lem-finite-type-common-basic-open を $X$ のアフィン開集合 $U$、$\operatorname{Spec}C$ と点 $x$ に適用すると、$x\in D_U(a)=D_{\operatorname{Spec}C}(c)$($a\in A$、$c\in C$)となる開集合があり、$A_a\cong C_c$ である。$C_c$ は $C$ 上有限型、$C$ は $B$ 上有限型なので、$A_a$ は $B$ 上有限型である。
段 3(貼り合わせ).段 2 により、$U$ の各点 $x$ に対して $x\in D_U(a_x)$ かつ $A_{a_x}$ が $B$ 上有限型となる $a_x\in A$ がある。$U=\operatorname{Spec}A$ は準コンパクトなので有限個の $a_1,\dots,a_r$ で $U=\bigcup_lD_U(a_l)$ となり、これは $a_1,\dots,a_r$ が $A$ の単位イデアルを生成することを意味する($V(a_1,\dots,a_r)=\emptyset$)。lem-finite-type-gluing により $A$ は $B$ 上有限型である。

有限型は局所有限型かつ準コンパクト

スキームの射 $f\colon X\to Y$ について、次は同値である。

  1. $f$ は有限型である。
  2. $f$ は局所有限型かつ準コンパクトである。
  3. $Y$ の任意のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ について、$f^{-1}(V)$ は有限個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_1,\dots,\operatorname{Spec}A_n$(各 $A_i$ は $B$ 上有限型)で覆われる。
準コンパクト性の局所性

3 ⟹ 1 は明らかである。
1 ⟹ 2.局所有限型は明らかである。準コンパクト性を示す。定義の被覆 $Y=\bigcup_jV_j$ をとると、各 $f^{-1}(V_j)$ は有限個のアフィン開集合の和なので準コンパクトである。$V=\operatorname{Spec}B$ を任意のアフィン開集合とする。$V$ の各点 $y$ に対し、$y\in V_j$ なる $j$ をとり、lem-finite-type-common-basic-open により $y\in W_y=D_V(g_y)=D_{V_j}(h_y)$ となる開集合をとる。$V$ は準コンパクトなので有限個の $W_1,\dots,W_m$ で覆われる。各 $W_l=D_{V_j}(h_l)$ について、$f^{-1}(V_j)$ を覆う有限個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_{ij}$ をとると、$f^{-1}(W_l)$ は有限個の基本開集合 $D_{\operatorname{Spec}A_{ij}}(h_l)=\operatorname{Spec}(A_{ij})_{h_l}$ で覆われ、準コンパクトである。よって $f^{-1}(V)=\bigcup_lf^{-1}(W_l)$ は準コンパクトである。
2 ⟹ 3.$V=\operatorname{Spec}B$ をアフィン開集合とする。$f^{-1}(V)$ は $X$ の開集合なのでアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_i$ で覆われ、prop-finite-type-affine-local により各 $A_i$ は $B$ 上有限型である。$f^{-1}(V)$ は準コンパクトなので有限個で覆える。

局所有限表示・有限表示についても同じ主張が成り立つ。すなわち、局所有限表示は任意のアフィン開集合の組で確かめられる(EGA4 §1.4、Stacks Tag 01TO)。証明は上と同じ筋で、lem-finite-type-gluing の有限表示版($A_{f_i}$ が有限表示なら $A$ が有限表示)を要する。この版は、lem-finite-type-gluing の議論に加えて関係式も有限個で尽きることを確かめる必要があり(有限型代数から有限表示代数への全射の核は有限生成であることを使う)、Stacks Tag 01TO に譲る。

合成・底変換・積

合成で閉じること

$f\colon X\to Y$、$g\colon Y\to Z$ をスキームの射とする。

  1. $f$、$g$ がともに局所有限型(または有限型、局所有限表示、有限表示)なら、合成 $g\circ f$ もそうである。
  2. 合成 $g\circ f$ が局所有限型なら、$f$ は局所有限型である。
生成元の合併

1.$W=\operatorname{Spec}C$ を $Z$ のアフィン開集合とする。prop-finite-type-affine-local により $g^{-1}(W)$ はアフィン開集合 $V_j=\operatorname{Spec}B_j$($B_j$ は $C$ 上有限型)で覆われ、各 $f^{-1}(V_j)$ はアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_{ij}$($A_{ij}$ は $B_j$ 上有限型)で覆われる。$B_j=C[y_1,\dots,y_m]/J$、$A_{ij}=B_j[x_1,\dots,x_n]/I$ と書くと、
$$ A_{ij}\cong C[y_1,\dots,y_m,x_1,\dots,x_n]/(J,\tilde{I}) $$
である。ここで $\tilde{I}$ は $I$ の生成元の $C[y,x]$ への持ち上げが生成するイデアルで、$C[y,x]/JC[y,x]=B_j[x]$ をさらに $I$ で割ったものが $A_{ij}$ であることからこの同型が従う。よって $A_{ij}$ は $C$ 上有限型であり、$J$ と $I$ が有限生成なら $(J,\tilde{I})$ も有限生成なので、有限表示のときは $A_{ij}$ は $C$ 上有限表示である。$(g\circ f)^{-1}(W)=\bigcup_{i,j}\operatorname{Spec}A_{ij}$ だから、$g\circ f$ は局所有限型(局所有限表示)である。$f$、$g$ が有限型なら、cor-finite-type-quasi-compact により $V_j$ も $\operatorname{Spec}A_{ij}$ も有限個にとれるので、$g\circ f$ は有限型である。有限表示の場合は、準コンパクトな射の合成が準コンパクトであること(いま示したとおり)に加えて、準分離射の合成が準分離射であること(準分離射、Stacks Tag 01KO)を用いる。
2.$V=\operatorname{Spec}B$ を $Y$ のアフィン開集合、$U=\operatorname{Spec}A\subset f^{-1}(V)$ を $X$ のアフィン開集合とする。$x\in U$ を任意にとり、$z:=g(f(x))$ のアフィン開近傍 $W=\operatorname{Spec}C\subset Z$ をとる。$f(x)\in V\cap g^{-1}(W)$ であり、これは $V$ の開集合なので、$f(x)\in D_V(b)\subset V\cap g^{-1}(W)$ となる $b\in B$ がある。さらに $U\cap f^{-1}(D_V(b))$ は $U$ の開集合で $x$ を含むので、$x\in D_U(a)\subset U\cap f^{-1}(D_V(b))$ となる $a\in A$ がある。$D_U(a)=\operatorname{Spec}A_a$ は $(g\circ f)^{-1}(W)$ に含まれるアフィン開集合なので、$g\circ f$ が局所有限型であることと prop-finite-type-affine-local により、$A_a$ は $C$ 上有限型である。環準同型 $C\to A_a$ は $C\to B_b\to A_a$ と分解するので、$A_a$ の $C$ 代数としての生成元は $B_b$ 代数としての生成元でもあり、$A_a$ は $B_b$ 上有限型、したがって $B$ 上有限型である。$x$ は任意だったので、$U$ の準コンパクト性により有限個の $a_1,\dots,a_r$ が単位イデアルを生成し、各 $A_{a_l}$ が $B$ 上有限型となる。lem-finite-type-gluing により $A$ は $B$ 上有限型であり、prop-finite-type-affine-local の 2 が成り立つ。

2 の有限型版「$g\circ f$ が有限型なら $f$ は有限型」は、$g$ が準分離的なとき成り立つ(2 と、準コンパクト性の相殺 Stacks Tag 03GI による。Tag 01T8 も参照)。$Y$ が局所 Noether スキームならこの条件は自動的にみたされる(prop-finite-type-noetherian の証明を参照)。

底変換で閉じること

$f\colon X\to Y$ を局所有限型(または有限型、局所有限表示、有限表示)の射、$g\colon Y'\to Y$ を任意の射とする。このとき底変換 $f'\colon X':=X\times_YY'\to Y'$ もそうである。

テンソル積による証明

$Y'$ の各点 $y'$ に対し、$g(y')$ のアフィン開近傍(開近傍) $V=\operatorname{Spec}B\subset Y$ と、$y'$ のアフィン開近傍 $V'=\operatorname{Spec}B'\subset g^{-1}(V)$ をとる。このような $V'$ の全体は $Y'$ のアフィン開被覆をなす。ファイバー積の構成により $f'^{-1}(V')=X\times_YV'=f^{-1}(V)\times_VV'$ であり($V'\to Y$ は $V$ を経由する)、$f^{-1}(V)$ をアフィン開集合 $U_i=\operatorname{Spec}A_i$ で覆えば、$f'^{-1}(V')$ は開集合
$$ U_i\times_VV'=\operatorname{Spec}A_i\times_{\operatorname{Spec}B}\operatorname{Spec}B'=\operatorname{Spec}(A_i\otimes_BB') $$
で覆われる(Har77 II 定理 3.3 の証明)。$A_i=B[x_1,\dots,x_n]/I$ と書くと、テンソル積の右完全性により
$$ A_i\otimes_BB'\cong B'[x_1,\dots,x_n]/IB'[x_1,\dots,x_n] $$
であり、これは $B'$ 上有限型である。$I$ が有限生成なら $IB'[x_1,\dots,x_n]$ も(同じ生成元の像で)有限生成なので、局所有限表示も保たれる。$f$ が有限型なら $U_i$ は有限個にとれるので $f'$ は有限型である。有限表示の場合は、準分離射が底変換で閉じること(準分離射、Stacks Tag 01KO)を用いる。

積で閉じること

$S$ をスキームとする。

  1. $X\to S$、$X'\to S$ が有限型(局所有限型、局所有限表示、有限表示)なら、$X\times_SX'\to S$ もそうである。
  2. $f\colon X\to Y$、$f'\colon X'\to Y'$ が $S$ 上のスキームの射で、ともに有限型(局所有限型、局所有限表示、有限表示)なら、$f\times_Sf'\colon X\times_SX'\to Y\times_SY'$ もそうである。
底変換と合成への分解

1.射影 $X\times_SX'\to X'$ は $X\to S$ の $X'\to S$ に沿った底変換なので prop-finite-type-base-change により有限型であり、それと $X'\to S$ との合成が $X\times_SX'\to S$ である(prop-finite-type-composition)。
2.$f\times_Sf'$ は $X\times_SX'\xrightarrow{f\times\mathrm{id}}Y\times_SX'\xrightarrow{\mathrm{id}\times f'}Y\times_SY'$ と分解し、前者は $f$ の $Y\times_SX'\to Y$ に沿った底変換、後者は $f'$ の $Y\times_SY'\to Y'$ に沿った底変換である。prop-finite-type-base-change と prop-finite-type-composition による。

基本的な射の有限型性

閉埋め込み・開埋め込み・有限射・射影射の有限型性
  1. 閉埋め込み $i\colon Z\to X$ は有限型である。
  2. 開埋め込み $j\colon U\to X$ は局所有限表示である。$j$ が有限型であることと準コンパクトであることは同値である。
  3. 有限射 $f\colon X\to Y$ は有限型である。
  4. $\mathbb{A}^n_Y\to Y$、$\mathbb{P}^n_Y\to Y$ は有限表示であり、射影射(射影射)$X\to Y$ は有限型である。
アフィン開集合の逆像の計算

いずれも cor-finite-type-quasi-compact の 3 または prop-finite-type-affine-local の 3 を確かめる。
1.$V=\operatorname{Spec}B$ を $X$ のアフィン開集合とすると、$i^{-1}(V)$ はアフィンスキーム $V$ の閉部分スキームなので、$B$ のイデアル $I$ によって $i^{-1}(V)=\operatorname{Spec}B/I$ と書ける(閉埋め込み、Har77 II 演習 3.11(b))。$B/I$ は $B$ 代数として 1 個の元 $1$ で生成されるので、$B$ 上有限型である。
2.$V=\operatorname{Spec}B$ を $X$ のアフィン開集合とすると、$j^{-1}(V)=U\cap V$ は $V$ の開集合なので、基本開集合 $D_V(g)=\operatorname{Spec}B_g$ で覆われる。$B_g\cong B[x]/(gx-1)$ は $B$ 上有限表示である。よって $j$ は局所有限表示(とくに局所有限型)であり、cor-finite-type-quasi-compact により、$j$ が有限型であることと準コンパクトであることは同値である。
3.有限射の定義(有限射)により、$Y$ のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ について $f^{-1}(V)=\operatorname{Spec}A$ であり、$A$ は $B$ 加群として有限生成(有限生成加群)である。$A$ の $B$ 加群としての生成元 $a_1,\dots,a_n$ は $B$ 代数としての生成元でもある($A$ の任意の元は $\sum b_ia_i$ と書ける)ので、$A$ は $B$ 上有限型である。$f^{-1}(V)$ は 1 個のアフィン開集合で覆われるから $f$ は有限型である。
4.ex-finite-type-affine-space で見たように、$Y$ のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ について $\mathbb{A}^n_Y$ の逆像は $\operatorname{Spec}B[x_1,\dots,x_n]$、$\mathbb{P}^n_Y$ の逆像は $n+1$ 個のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}B[x_0/x_i,\dots,x_n/x_i]$ で覆われ、いずれの環も $B$ 上の多項式環(有限表示)である。$\mathbb{A}^n_Y\to Y$ はアフィン射(アフィン射)なので分離的(分離射)であり、$\mathbb{P}^n_Y\to Y$ は分離射 $\mathbb{P}^n_{\mathbb{Z}}\to\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の底変換なので分離的である。分離射は準分離的なので、どちらも有限表示である。射影射は閉埋め込み $X\to\mathbb{P}^n_Y$ と $\mathbb{P}^n_Y\to Y$ の合成なので、1 と prop-finite-type-composition により有限型である。

一般に、閉埋め込み $i\colon Z\to X$ が有限表示であることは、そのイデアル層(イデアル層)が有限型の $\mathcal{O}_X$ 加群層であることと同値である(Stacks Tag 01TV)。$X$ が局所 Noether スキームならすべての閉埋め込みは有限表示である(prop-finite-type-noetherian)。固有射は定義により有限型かつ分離的で普遍閉な射であり、滑らかな射・エタール射は局所有限表示の射として定義される。

Noether 底の上では有限型と有限表示が一致すること

Noether 底上の有限型射は有限表示

$Y$ を局所 Noether スキームとする。

  1. 局所有限型の射 $f\colon X\to Y$ は局所有限表示である。
  2. 有限型の射 $f\colon X\to Y$ は有限表示である。
Hilbert の基底定理による証明

1.$V=\operatorname{Spec}B$ を $Y$ のアフィン開集合とすると、$Y$ が局所 Noether なので $B$ は Noether 環である(Har77 II 命題 3.2)。prop-finite-type-affine-local により $f^{-1}(V)$ はアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_i$、$A_i\cong B[x_1,\dots,x_n]/I$ で覆われる。Hilbertの基底定理により $B[x_1,\dots,x_n]$ は Noether 環なので、そのイデアル $I$ は有限生成であり、$A_i$ は $B$ 上有限表示である。
2.1 と cor-finite-type-quasi-compact により、$f$ は局所有限表示かつ準コンパクトである。残るのは準分離性である。$V=\operatorname{Spec}B$ を $Y$ のアフィン開集合、$U,U'$ を $f^{-1}(V)$ に含まれる $X$ のアフィン開集合とする。$U=\operatorname{Spec}A$ で $A$ は Noether 環 $B$ 上有限型なので、$A$ は Noether 環であり(Hilbertの基底定理と Noether 環の剰余環が Noether であること)、$U$ は Noether 位相空間(Noether空間)である。Noether 位相空間の任意の部分集合は準コンパクトなので、$U\cap U'$ は準コンパクトである。

有限型スキームの Noether 性

$Y$ を局所 Noether スキーム、$f\colon X\to Y$ を局所有限型の射とすると、$X$ は局所 Noether スキームである。$Y$ が Noether スキームで $f$ が有限型なら、$X$ は Noether スキームである。とくに体上有限型のスキーム、Noether 環上有限型のスキームは Noether スキームである。

アフィン開集合の環の Noether 性

$X$ の各点 $x$ に対し、$f(x)$ のアフィン開近傍 $V=\operatorname{Spec}B$($B$ は Noether 環)と $x$ のアフィン開近傍 $U=\operatorname{Spec}A\subset f^{-1}(V)$ をとると、prop-finite-type-affine-local により $A$ は $B$ 上有限型であり、Noether 環 $B$ 上有限型の代数は Noether 環である。よって $X$ は Noether 環のスペクトルで覆われ、局所 Noether である。$Y$ が Noether スキーム(局所 Noether かつ準コンパクト)で $f$ が有限型なら、$Y$ は有限個のアフィン開集合 $V_j$ で覆われ、各 $f^{-1}(V_j)$ は有限個のアフィン開集合で覆われる(cor-finite-type-quasi-compact)ので、$X$ は準コンパクトである。

体上有限型のスキームの閉点

体上有限型のスキームでは、点が閉点であるかどうかが剰余体だけで判定でき、閉点が十分に多い。基礎になるのは Hilbert の零点定理(Hilbertの零点定理)の次の形である。

Zariski の補題

$k$ を体、$A$ を $k$ 上有限型の代数、$\mathfrak{m}$ を $A$ の極大イデアルとする。このとき剰余体 $A/\mathfrak{m}$ は $k$ の有限次拡大である。とくに、体 $K$ が $k$ 代数として有限生成なら、$K$ は $k$ 上有限次である。

Zariski の補題の出典と証明の筋

証明は AM69 系 5.24・命題 7.9、Har77 I 定理 1.3A に譲る。筋は次のとおりである。$K:=A/\mathfrak{m}$ は $k$ 上有限型の代数であって体である。Noether正規化定理により、$k$ 上代数的に独立(代数的独立)な元 $y_1,\dots,y_d\in K$ があって $K$ は多項式環 $k[y_1,\dots,y_d]$ 上整(整拡大)になる。体 $K$ の部分環 $R$ で $K$ が $R$ 上整なものは体である($r\in R\setminus\{0\}$ に対し $r^{-1}\in K$ の整方程式 $r^{-n}+c_1r^{-n+1}+\dots+c_n=0$ に $r^{n-1}$ を掛けると $r^{-1}\in R$)。よって $k[y_1,\dots,y_d]$ は体であり、これは $d=0$ のときに限る。したがって $K$ は $k$ 上整、すなわち有限次拡大である。

体上局所有限型のスキームの閉点

$k$ を体、$X$ を $k$ 上局所有限型のスキーム、$x\in X$ とする。

  1. 次は同値である。(a) $x$ は $X$ の閉点である。(b) $x$ を含むあるアフィン開集合 $U$ において $x$ は閉点である。(c) 剰余体 $\kappa(x)$ は $k$ 上有限次拡大である。(d) $x$ を含む任意のアフィン開集合 $U$ において $x$ は閉点である。
  2. $X$ の空でない任意の閉集合 $Z$ は $X$ の閉点を含み、$Z$ に含まれる $X$ の閉点の全体は $Z$ において稠密である。とくに $X\ne\emptyset$ なら $X$ の閉点の全体は $X$ で稠密である。
剰余体の有限性による証明

1.(a) ⟹ (b) は明らかである($X$ で閉なら任意の開集合との共通部分でも閉)。
(b) ⟹ (c).$U=\operatorname{Spec}A$ とすると、$\operatorname{Spec}k$ の空でないアフィン開集合は $\operatorname{Spec}k$ 自身だけなので、prop-finite-type-affine-local により $A$ は $k$ 上有限型である。$x$ が $U$ の閉点であることは、対応する素イデアル $\mathfrak{p}_x$ が極大イデアルであることと同値であり、そのとき $\kappa(x)=A/\mathfrak{p}_x$ は thm-finite-type-zariski により $k$ 上有限次である。
(c) ⟹ (d).$U=\operatorname{Spec}A$ を $x$ を含む任意のアフィン開集合とすると、上と同じく $A$ は $k$ 上有限型である。$\mathfrak{p}:=\mathfrak{p}_x$ とおくと、$A/\mathfrak{p}$ は整域であり、その商体 $\kappa(x)$ に含まれる。仮定により $\kappa(x)$ は $k$ 上有限次元なので、$A/\mathfrak{p}$ も $k$ 上有限次元のベクトル空間である。有限次元整域は体である($0\ne a\in A/\mathfrak{p}$ について、$a$ 倍写像は $k$ 線形(線形写像)かつ単射なので全射であり、$ab=1$ となる $b$ がある)。よって $\mathfrak{p}$ は極大イデアルであり、$x$ は $U$ の閉点である。
(d) ⟹ (a).$X$ をアフィン開集合 $U_\lambda$ で覆う。$x\in U_\lambda$ なら仮定により $\{x\}\cap U_\lambda=\{x\}$ は $U_\lambda$ で閉であり、$x\notin U_\lambda$ なら $\{x\}\cap U_\lambda=\emptyset$ は閉である。開被覆の各元との共通部分が閉な集合は閉なので、$\{x\}$ は $X$ で閉である。
2.$Z$ を空でない閉集合とし、$Z$ と交わるアフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}A$ をとる。$Z\cap U$ は $U$ の空でない閉集合なので、$A$ の真のイデアル $I$ によって $Z\cap U=V(I)$ と書ける。$I$ を含む極大イデアル $\mathfrak{m}$ をとると、対応する点 $z\in V(I)\subset Z$ は $U$ の閉点であり、1 の (b) ⟹ (a) により $X$ の閉点である。
稠密性を示す。$C$ を $Z$ に含まれる $X$ の閉点の全体の $X$ における閉包とし、$C\ne Z$ と仮定する。$C\subset Z$ なので点 $x\in Z\setminus C$ がとれる。$X\setminus C$ は $x$ を含む開集合なので、$x$ のアフィン開近傍 $U$ で $U\subset X\setminus C$ となるものがある。$Z\cap U$ は $U$ の空でない閉集合なので、前段により $Z\cap U$ は $X$ の閉点 $z$ を含む。$z$ は $Z$ に含まれる $X$ の閉点なので $z\in C$ であるが、$z\in U\subset X\setminus C$ であり矛盾する。よって $C=Z$ である。

$k$ が代数閉体のとき、1 の (c) は $\kappa(x)=k$ と同値であり、閉点は $k$ 有理点(有理点)にほかならない。これが、$k$ 上有限型のスキームの閉点の集合が古典的な代数多様体(点集合としての多様体)を再現するという対応(Har77 II 命題 2.6)の根拠である。一方、ex-finite-type-power-series の $\operatorname{Spec}k[\![t]\!]$ では 2 が破れており、有限型の仮定を外せないことがわかる。2 の性質をもつスキーム(すべての閉集合で閉点が稠密なスキーム)は Jacobson スキーム(Jacobson環)とよばれ、体上局所有限型のスキームはその代表例である(Stacks Tag 01T9)。

像の構成可能性

Chevalley の構成可能性定理

$f\colon X\to Y$ を有限表示の射(とくに、$Y$ が Noether スキームで $f$ が有限型の射)とする。このとき $X$ の任意の構成可能集合 $E$(構成可能集合(位相)。Noether 位相空間では局所閉集合の有限和。一般の場合は準コンパクト開集合を用いて定義する(Stacks Tag 054K))の像 $f(E)$ は $Y$ の構成可能集合である。とくに $f(X)$ は構成可能である。さらに $X$、$Y$ が整スキームで $f$ が支配的(像が稠密)なら、$f(X)$ は $Y$ の空でない開集合を含む。

Chevalley の定理の出典

証明は EGA4 1.8.4、Har77 II 演習 3.19(Noether の場合)、Stacks Tag 054K に譲る。筋は、Noether 帰納法(Noether帰納法)により $Y$ を既約(既約空間)かつ $f$ を支配的な場合に帰着し、$f(X)$ が空でない開集合を含むことを「一般的自由性」(generic freeness、Har77 II 演習 3.19・Eis95 定理 14.4)または Noether 正規化によって示すというものである。有限型の仮定を外すと結論は成り立たない(ex-finite-type-spec-q)。Chevalley の定理は、有限型射の像が「有限個の等式と不等式で書ける」ことを保証し、射の像・ファイバーの次元の半連続性・平坦性の開性など、有限型射の幾何のほとんどの議論の出発点になる。

補足

有限表示の射は、底が Noether でないときに有限型の代わりを務める。その理由は、局所有限表示が「関手の点」で特徴づけられることにある。すなわち、射 $f\colon X\to Y$ が局所有限表示であることは、$Y$ 上のアフィンスキームの任意の有向帰納系(有向集合で添字づけられた帰納系。帰納極限)$T_\lambda=\operatorname{Spec}C_\lambda$、$T=\operatorname{Spec}\varinjlim C_\lambda$ について、自然な写像 $\varinjlim_\lambda\operatorname{Hom}_Y(T_\lambda,X)\to\operatorname{Hom}_Y(T,X)$ が全単射になることと同値である(EGA4 8.14.2、Stacks Tag 01TO)。この性質により、Hensel 局所環(Hensel局所環)や完備化のような「極限として作られる底」の上の問題を、有限型の底の上の問題に還元できる。fppf位相の被覆が「平坦かつ局所有限表示」な射で定義されるのもこのためである。
有限型の射は、準有限射(有限型かつファイバーが有限)、固有射(有限型・分離的・普遍閉)、滑らかな射、エタール射、射影射 といった代数幾何の基本的な射のクラスすべてに共通する前提である。体 $k$ 上有限型の整スキーム $X$ については、Krull次元 $\dim X$ が関数体 $K(X)$ の $k$ 上の超越次数に等しく、有限である(Har77 II 演習 3.20、Noether正規化定理)。この有限性も、ex-finite-type-infinite-variables が示すとおり有限型の仮定に依存する。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, I 定理 1.3A(零点定理)、II §3(有限型射の定義、命題 3.2、定理 3.3、演習 3.1・3.3・3.11・3.13・3.19・3.20)、II 命題 2.6
[2]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique I : Le langage des schémas, Publications Mathématiques de l'IHÉS 4, pp. 5–228, 1960, §6.3(有限型射の定義と基本性質)
[3]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique IV : Étude locale des schémas et des morphismes de schémas, Publications Mathématiques de l'IHÉS 20 (Première partie, 1964), 28 (Troisième partie, 1966), 1964, §1.4(局所有限表示)、§1.6(有限表示)、1.8.4(Chevalley の定理)、8.14.2(局所有限表示の極限による特徴づけ)
[4]
Michael F. Atiyah, Ian G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley (Westview Press), 1969, 系 5.24・命題 7.9(Zariski の補題)、第 7 章(Hilbert の基底定理)

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