Lemoineの円

同義語:第1 Lemoine円ルモワーヌの円first Lemoine circle

概要

Lemoineの円(first Lemoine circle)とは、三角形 $ABC$ の類似重心 $K$ を通り 3 辺に平行な 3 本の直線が、残りの 2 辺と交わる 6 点を通る円である。6 点が 1 つの円の上にあることは、角 $A$ の二等分線で折り返すと $BC$ に平行になる直線(反平行線)を使って示せる。$K$ を通る平行線でできる平行四辺形の対角線は $BC$ の反平行線で、平行線が辺を $c:b$、反平行線が $b:c$ に切ることから、各頂点で方べきの定理の逆の条件がそろう。円の中心は外心 $O$ と $K$ を結ぶ線分の中点で、半径は $\frac12R\sec\omega$($R$ は外接円の半径、$\omega$ は Brocard 角)である。$K$ を通る 3 本の反平行線が辺と交わる 6 点も、$K$ を中心とする円(cosine 円)の上にある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 類似重心, 方べきの定理(高校数学), 円に内接する四角形, ベクトルの内積(高校数学), 平行線と線分の比

高校での出発点:類似重心を通る 3 本の平行線

三角形の重心 $G$ を通って 1 辺に平行な直線を引くと、残りの 2 辺を $2:1$ に分ける点を通る。類似重心 で学んだ類似重心 $K$ でも、同じように 3 辺に平行な直線を 1 本ずつ引いてみる。3 本の直線は、それぞれ残りの 2 辺と 2 点で交わるので、辺の上に 6 つの点ができる。この 6 点を座標で調べる。

直角三角形で 6 点を求める

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$ の直角三角形をとる。辺の長さは $a=BC=5$、$b=CA=3$、$c=AB=4$ で、類似重心は $K\left(\dfrac{18}{25},\dfrac{24}{25}\right)$ である(類似重心 の最初の例と同じ三角形と点)。
(1) $K$ を通り $AB$($x$ 軸)に平行な直線は $y=\dfrac{24}{25}$ である。辺 $CA$($x=0$)と $E'\left(0,\dfrac{24}{25}\right)$ で、辺 $BC$($3x+4y=12$)と $D\left(\dfrac{68}{25},\dfrac{24}{25}\right)$ で交わる($3x=12-\dfrac{96}{25}=\dfrac{204}{25}$ から $x=\dfrac{68}{25}$)。
(2) $K$ を通り $CA$($y$ 軸)に平行な直線は $x=\dfrac{18}{25}$ である。辺 $AB$ と $F\left(\dfrac{18}{25},0\right)$ で、辺 $BC$ と $D'\left(\dfrac{18}{25},\dfrac{123}{50}\right)$ で交わる($4y=12-\dfrac{54}{25}=\dfrac{246}{25}$ から $y=\dfrac{123}{50}$)。
(3) $K$ を通り $BC$ に平行な直線は、傾きが $-\dfrac34$ で $K$ を通るので $3x+4y=\dfrac{54}{25}+\dfrac{96}{25}=6$ である。辺 $AB$($y=0$)と $F'(2,0)$ で、辺 $CA$($x=0$)と $E\left(0,\dfrac32\right)$ で交わる。
(4) $F$、$F'$、$E'$、$E$ を通る円を探す。$x$ 軸の上の 2 点 $F$、$F'$ を通る円の中心は、線分 $FF'$ の垂直二等分線 $x=\dfrac12\left(\dfrac{18}{25}+2\right)=\dfrac{34}{25}$ の上にある。$y$ 軸の上の 2 点 $E'$、$E$ を通る円の中心は、$y=\dfrac12\left(\dfrac{24}{25}+\dfrac32\right)=\dfrac{123}{100}$ の上にある。そこで $N\left(\dfrac{34}{25},\dfrac{123}{100}\right)$ をとると
$$ NF^2=\left(\frac{34}{25}-\frac{18}{25}\right)^2+\left(\frac{123}{100}\right)^2=\frac{64^2+123^2}{100^2}=\frac{19225}{10000}=\frac{769}{400} $$
であり、$NF'^2$、$NE^2$、$NE'^2$ も同じ値になる($NE'^2=\left(\dfrac{34}{25}\right)^2+\left(\dfrac{123}{100}-\dfrac{96}{100}\right)^2=\dfrac{136^2+27^2}{100^2}=\dfrac{19225}{10000}$ など)。
(5) 残りの 2 点 $D$、$D'$ でも、同じ計算で $ND^2=ND'^2=\dfrac{769}{400}$ となる。

(5) の計算を開く

$$ND^2=\left(\frac{68}{25}-\frac{34}{25}\right)^2+\left(\frac{96}{100}-\frac{123}{100}\right)^2=\frac{136^2+27^2}{100^2}=\frac{769}{400},\qquad ND'^2=\left(-\frac{64}{100}\right)^2+\left(\frac{246}{100}-\frac{123}{100}\right)^2=\frac{64^2+123^2}{100^2}=\frac{769}{400}$$


よって 6 点がすべて $N$ を中心とする半径 $\dfrac{\sqrt{769}}{20}\approx1.387$ の円の上にある。
(6) 外心は斜辺の中点 $O\left(2,\dfrac32\right)$ である(直径に対する円周角)。線分 $OK$ の中点は $\left(\dfrac12\left(2+\dfrac{18}{25}\right),\dfrac12\left(\dfrac32+\dfrac{24}{25}\right)\right)=\left(\dfrac{34}{25},\dfrac{123}{100}\right)$ で、$N$ と一致する。

類似重心 K を通って 3 辺に平行な赤い 3 本の直線が辺と交わる 6 点は、OK の中点 N を中心とする青い円の上にある。3 辺が 3, 4, 5 の直角三角形 類似重心 K を通って 3 辺に平行な赤い 3 本の直線が辺と交わる 6 点は、OK の中点 N を中心とする青い円の上にある。3 辺が 3, 4, 5 の直角三角形
ex-lmc-start では 6 点が 1 つの円の上に並び、その中心は外心 $O$ と類似重心 $K$ を結ぶ線分の中点だった。この円を Lemoine の円(ルモワーヌの円)という。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 6 点はいつも 1 つの円の上にあるか。中心はどこか。→ thm-lmc-main
  2. なぜ類似重心でなければならないのか。重心ではだめか。→ lem-lmc-mid、ex-lmc-cx-g
  3. $K$ を通る別の 3 本の直線でも円ができるか。→ cor-lmc-cosine
    鍵になるのは、平行線の「相棒」にあたる 反平行線 という直線である。
    高校の道具この記事の言葉大学の言葉
    平行線と線分の比平行線は辺を $c:b$ に切る頂点を中心とする相似拡大
    角の二等分線に関する折り返し反平行線は辺を $b:c$ に切る等角共役(直線の対合)
    方べきの定理とその逆3 辺の上の 6 点が円に乗る条件円と直線の交点の 2 次方程式
    中点と平行四辺形の対角線中心は $OK$ の中点円の族の中心が直線 $OK$ の上を動く

言葉の準備:反平行線

以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とし、頂点の角の大きさを $A$、$B$、$C$ で表す。外接円の中心(外心)を $O$、半径を $R$、類似重心を $K$ とする。
直線の上の点の位置を数 1 つで表すために、符号つきの長さを使う。直線 $AB$ の上の点 $P$ について、$\overline{AP}$ は、$P$ が半直線 $AB$ の上にあれば長さ $AP$、反対側にあれば $-AP$ とする。一般に、直線の上の 2 点 $X$、$Y$ について、直線に向きを 1 つ決めて、$Y$ が $X$ から正の向きにあれば $\overline{XY}=XY$、負の向きにあれば $\overline{XY}=-XY$ とする。積 $\overline{XY}\cdot\overline{XZ}$ は向きの決め方によらず、$Y$ と $Z$ が $X$ の同じ側にあれば正、反対側にあれば負である。

反平行線

直線 $AB$ の上の点 $P$ と直線 $AC$ の上の点 $Q$(どちらも $A$ と異なる)を結ぶ直線 $PQ$ を、角 $A$ の二等分線(を含む直線)に関して折り返した直線が $BC$ に平行になるとき、直線 $PQ$ を(頂点 $A$ に関する)$BC$ の反平行線 という。頂点 $B$、$C$ に関する $CA$、$AB$ の反平行線も同じように定める。

角 $A$ の二等分線に関する折り返しは、半直線 $AB$ と半直線 $AC$ を入れかえ、$A$ からの距離を変えない。したがって、$\overline{AP}=p$ の点 $P$ は、直線 $AC$ の上の $\overline{AP^*}=p$ の点 $P^*$ に移る($\overline{AP^*}$ は半直線 $AC$ の向きを正とする)。反平行線は、平行線を二等分線で「裏返した」直線である。

平行線と反平行線の判定

直線 $AB$ の上の点 $P$ と直線 $AC$ の上の点 $Q$(どちらも $A$ と異なる)について、$p=\overline{AP}$(半直線 $AB$ の向きを正)、$q=\overline{AQ}$(半直線 $AC$ の向きを正)とする。
(1) $PQ\parallel BC$ であることと、$\dfrac pc=\dfrac qb$ であることは同値である。
(2) $PQ$ が $BC$ の反平行線であることと、$pc=qb$、つまり $\overline{AP}\cdot\overline{AB}=\overline{AQ}\cdot\overline{AC}$ であることは同値である。
(3) $P$ が半直線 $AB$、$Q$ が半直線 $AC$ の上にあるとき、$PQ$ が $BC$ の反平行線であることと、三角形 $APQ$ と三角形 $ACB$ が相似($P$ と $C$、$Q$ と $B$ が対応)であることは同値である。このとき $\angle APQ=C$、$\angle AQP=B$ である。さらに $P\ne B$ かつ $Q\ne C$ なら、これは 4 点 $P$、$B$、$C$、$Q$ が 1 つの円の上にあることとも同値である。

ベクトルで平行を判定し、折り返しで (2) に移す

要点:$A$ を始点として $\overrightarrow{AP}=\dfrac pc\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{AQ}=\dfrac qb\overrightarrow{AC}$ と書くと、$\overrightarrow{PQ}$ が $\overrightarrow{BC}$ の実数倍になる条件は $\dfrac pc=\dfrac qb$ で、これが (1) である。二等分線で折り返すと $P$、$Q$ は直線 $AC$、$AB$ の上の同じ符号つきの長さの点に移るので、(1) を折り返した 2 点に使うと (2) の $\dfrac qc=\dfrac pb$ を得る。(3) は、$pc=qb$ が $\dfrac{AP}{AC}=\dfrac{AQ}{AB}$ と同じであることから、2 辺の比とその間の角による相似条件と、方べきの定理の逆で分かる。

詳しい証明を開く

段 1((1) の証明)。$A$ を始点とするベクトルで考え、$\vec b=\overrightarrow{AB}$、$\vec c=\overrightarrow{AC}$ とおく。$\overrightarrow{AP}=\dfrac pc\vec b$、$\overrightarrow{AQ}=\dfrac qb\vec c$ なので

$$\overrightarrow{PQ}=\frac qb\vec c-\frac pc\vec b$$

である。$\overrightarrow{PQ}$ が $\overrightarrow{BC}=\vec c-\vec b$ の実数倍になるのは、$\vec b$ と $\vec c$ が平行でない(1 次独立な)ので、$\vec b$ と $\vec c$ の係数の比が同じとき、つまり $\dfrac qb=\dfrac pc$ のときに限る。これは 平行線と線分の比 の定理を、符号つきの長さで言い直したものである。

段 2((2) の証明)。上で見たように、角 $A$ の二等分線に関する折り返しで、$P$ は直線 $AC$ の上の $\overline{AP^*}=p$ の点 $P^*$ に、$Q$ は直線 $AB$ の上の $\overline{AQ^*}=q$ の点 $Q^*$ に移る。直線 $PQ$ の像は直線 $Q^*P^*$ である。(1) を $Q^*$(直線 $AB$ の上、$\overline{AQ^*}=q$)と $P^*$(直線 $AC$ の上、$\overline{AP^*}=p$)に使うと、$Q^*P^*\parallel BC$ は $\dfrac qc=\dfrac pb$、つまり $pc=qb$ と同値である。$\overline{AB}=c$、$\overline{AC}=b$ なので、これは $\overline{AP}\cdot\overline{AB}=\overline{AQ}\cdot\overline{AC}$ と書ける。

段 3((3) の証明)。$p,q>0$ のとき、$pc=qb$ は $\dfrac{AP}{AC}=\dfrac{AQ}{AB}$ と同じである。三角形 $APQ$ と $ACB$ は角 $A$ を共有するので、2 辺の比とその間の角が等しく、相似である(三角形の相似条件)。逆に相似なら対応する辺の比から $\dfrac{AP}{AC}=\dfrac{AQ}{AB}$ である。対応する角から $\angle APQ=\angle ACB=C$、$\angle AQP=\angle ABC=B$ となる。最後に、$AP\cdot AB=AQ\cdot AC$ は、点 $A$ を通る 2 本の直線の上の 4 点 $P$、$B$ と $Q$、$C$ について、方べきの定理(高校数学) の逆により 4 点が 1 つの円の上にあることと同値である。$\square$

反平行線の例
  1. ex-lmc-start の直角三角形($b=3$、$c=4$)で、$P(2,0)$($p=2$)をとる。$pc=qb$ から $q=\dfrac{8}3$ で、$Q\left(0,\dfrac83\right)$ である。直線 $PQ$ の傾きは $-\dfrac43$ で、二等分線 $y=x$ で折り返す($x$ と $y$ を入れかえる)と傾き $-\dfrac34$ の直線になり、$BC$(傾き $-\dfrac34$)に平行である。4 点 $P(2,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$、$Q\left(0,\dfrac83\right)$ については $\overline{AP}\cdot\overline{AB}=8=\overline{AQ}\cdot\overline{AC}$ で、同じ円の上にある。
  2. $BC$ の反平行線は、$BC$ に平行な直線を同じ折り返しで移したものなので、どれも互いに平行である。外接円の $A$ での接線も、この向きをもつ(lem-lmc-perp の後で確かめる)。
  3. 鋭角三角形で、$B$、$C$ から対辺に下ろした垂線の足を $E_0$、$F_0$ とすると、直線 $F_0E_0$ は $BC$ の反平行線である(Fagnanoの問題 の垂足三角形の補題で、三角形 $AE_0F_0$ と $ABC$ が相似)。

赤い直線 PQ を角 A の二等分線(灰色の破線)で折り返すと、BC に平行なオレンジの直線 Q'P' になる。PQ は BC の反平行線で、4 点 P、B、C、Q は同じ円の上にある 赤い直線 PQ を角 A の二等分線(灰色の破線)で折り返すと、BC に平行なオレンジの直線 Q'P' になる。PQ は BC の反平行線で、4 点 P、B、C、Q は同じ円の上にある
平行線と反平行線の違いは、比 $p:q$ が $c:b$ か $b:c$ かだけである。この入れかわりが、この記事のすべての計算の源になる。反平行線について、あと 2 つの性質を用意する。1 つ目は、類似重心がなぜ出てくるかを説明する。

反平行線の中点は類似中線の上にある

直線 $AB$ の上の点 $P$ と直線 $AC$ の上の点 $Q$(どちらも $A$ と異なる)について、次の 2 つは同値である。
(1) 直線 $PQ$ は $BC$ の反平行線である。
(2) 線分 $PQ$ の中点 $M$ は、$A$ からの類似中線(直線 $AK$)の上にある。

折り返すと中線の話になる

要点:二等分線で折り返すと、反平行線は平行線に、類似中線は中線に移る。折り返した線分の中点は $\overrightarrow{AM^*}=\dfrac12\left(\dfrac qc\overrightarrow{AB}+\dfrac pb\overrightarrow{AC}\right)$ で、これが中線の上にあるのは 2 つの係数が等しいとき、つまり $pc=qb$ のときに限る。

詳しい証明を開く

方針:角 $A$ の二等分線に関する折り返しを $\sigma$ とする。類似中線は中線を $\sigma$ で折り返した直線である(類似重心 の定義)。$\sigma$ で移すと、反平行線は平行線に、類似中線は中線に移るので、「平行線の中点は中線の上にある」ことに帰着する。

段 1(折り返した点)。$p=\overline{AP}$、$q=\overline{AQ}$ とし、$\vec b=\overrightarrow{AB}$、$\vec c=\overrightarrow{AC}$ とする。$\sigma$ は $P$ を直線 $AC$ の上の $\overline{AP^*}=p$ の点 $P^*$ に、$Q$ を直線 $AB$ の上の $\overline{AQ^*}=q$ の点 $Q^*$ に移すので

$$\overrightarrow{AP^*}=\frac pb\,\vec c,\qquad \overrightarrow{AQ^*}=\frac qc\,\vec b$$

である。折り返しは距離を変えないので、線分 $PQ$ の中点 $M$ を線分 $P^*Q^*$ の中点 $M^*$ に移す。よって

$$\overrightarrow{AM^*}=\frac12\left(\frac qc\,\vec b+\frac pb\,\vec c\right)$$

である。

段 2(中線の上にある条件)。$BC$ の中点を $L$ とすると $\overrightarrow{AL}=\dfrac12(\vec b+\vec c)$ で、中線 $AL$ の上の点は $\overrightarrow{AX}=t(\vec b+\vec c)$($t$ は実数)と書ける点である。$\vec b$ と $\vec c$ は 1 次独立なので、$M^*$ が中線の上にあるのは、段 1 の式の $\vec b$ と $\vec c$ の係数が等しいとき、つまり $\dfrac qc=\dfrac pb$ のときに限る。

段 3(まとめ)。$M$ が類似中線の上にあることは、$\sigma(M)=M^*$ が中線の上にあることと同値である($\sigma$ で類似中線と中線が入れかわる)。段 2 より、これは $qb=pc$ と同値で、prop-lmc-anti (2) により $PQ$ が $BC$ の反平行線であることと同値である。$\square$

$BC$ に平行な線分の中点は中線の上にある($A$ を中心とする相似拡大で $BC$ の中点が移る)。lem-lmc-mid は、それを二等分線で裏返した命題である。

中点が類似中線の上にあることを確かめる

ex-lmc-anti (1) の反平行線 $P(2,0)$、$Q\left(0,\dfrac83\right)$ の中点は $M\left(1,\dfrac43\right)$ である。類似重心は $K\left(\dfrac{18}{25},\dfrac{24}{25}\right)$ で、直線 $AK$ は $y=\dfrac43x$ である。$M$ はこの直線の上にある。一方、中線は $A$ と $BC$ の中点 $\left(2,\dfrac32\right)$ を結ぶ直線 $y=\dfrac34x$ で、$M$ はその上にない。

2 つ目の性質は、円の中心を求めるときに使う。

反平行線は $AO$ に垂直

$BC$ の反平行線は、直線 $AO$ に垂直である。

外心の内積を計算する

要点:$OA=OB=OC$ から $\overrightarrow{AO}\cdot\overrightarrow{AB}=\dfrac{c^2}2$、$\overrightarrow{AO}\cdot\overrightarrow{AC}=\dfrac{b^2}2$ である。反平行線の向きは $\dfrac cb\overrightarrow{AC}-\dfrac bc\overrightarrow{AB}$ の実数倍で、$\overrightarrow{AO}$ との内積は $\dfrac cb\cdot\dfrac{b^2}2-\dfrac bc\cdot\dfrac{c^2}2=0$ である。

詳しい証明を開く

$A$ を始点とし、$\vec b=\overrightarrow{AB}$、$\vec c=\overrightarrow{AC}$、$\vec o=\overrightarrow{AO}$ とおく。

段 1(外心の内積)。$OB=OA$ なので $\lvert\vec b-\vec o\rvert^2=\lvert\vec o\rvert^2$ である。左辺を展開すると $\lvert\vec b\rvert^2-2\vec b\cdot\vec o+\lvert\vec o\rvert^2$ なので、$\vec b\cdot\vec o=\dfrac{c^2}2$ である。同じく $OC=OA$ から $\vec c\cdot\vec o=\dfrac{b^2}2$ である(ベクトルの内積(高校数学))。

段 2(反平行線の向き)。反平行線の上の 2 点 $P$、$Q$(直線 $AB$、$AC$ の上)について、$p=\overline{AP}$、$q=\overline{AQ}$ は $pc=qb$ を満たす(prop-lmc-anti (2))。$k=\dfrac pb=\dfrac qc$ とおくと $p=kb$、$q=kc$ で、prf-lmc-anti の段 1 の式から

$$\overrightarrow{PQ}=\frac qb\vec c-\frac pc\vec b=k\left(\frac cb\vec c-\frac bc\vec b\right)$$

である。

段 3(内積が $0$)。段 1 を使うと

$$\vec o\cdot\overrightarrow{PQ}=k\left(\frac cb\cdot\frac{b^2}2-\frac bc\cdot\frac{c^2}2\right)=k\left(\frac{bc}2-\frac{bc}2\right)=0$$

である。よって $PQ\perp AO$ である。$\square$

外接円の $A$ での接線は半径 $OA$ に垂直なので、lem-lmc-perp からも、$BC$ の反平行線が接線に平行であることが分かる(ex-lmc-anti (2))。鈍角三角形で $O$ が三角形の外にあっても、証明は内積の計算だけなので同じように成り立つ。

3 辺の上の 6 点が円に乗る条件

6 点が円に乗ることを示すには、次の補題を使う。方べきの定理(高校数学) の逆を、3 つの頂点で同時に使う形である。

3 辺の上の 6 点が円に乗る条件

直線 $BC$、$CA$、$AB$ の上に、どれも三角形の頂点と異なる点 $D_1,D_2$、$E_1,E_2$、$F_1,F_2$ をとり、$F_1\ne F_2$ とする。次の 3 つの等式が成り立つとする。
(R1) $\overline{AF_1}\cdot\overline{AF_2}=\overline{AE_1}\cdot\overline{AE_2}$
(R1) $\overline{BD_1}\cdot\overline{BD_2}=\overline{BF_1}\cdot\overline{BF_2}$
(R1) $\overline{CE_1}\cdot\overline{CE_2}=\overline{CD_1}\cdot\overline{CD_2}$
このとき、6 点 $D_1,D_2,E_1,E_2,F_1,F_2$ は 1 つの円の上にある。

条件 (i) は、頂点 $A$ を通る 2 本の直線 $AB$、$AC$ の上の 4 点 $F_1,F_2,E_1,E_2$ が 1 つの円に乗るための、方べきの定理の逆の条件そのものである。条件 (ii)・(iii) も同じである。つまり、4 点ずつなら 3 つの円が得られる。補題は、その 3 つの円が同じ円であることを保証する。

円の方程式を辺の上に制限する

要点:$F_1,F_2,D_1$ を通る円 $\Gamma$ の方程式 $f(x,y)=0$ を 1 本の直線の上に制限すると、その直線の上の符号つきの長さ $s$ の 2 次式 $s^2+\beta s+(\text{定数})$ になり、定数項はその点の方べきである(方べきの定理(高校数学))。直線 $BC$ の上では、1 つの解 $\overline{BD_1}$ と解の積 $\overline{BF_1}\cdot\overline{BF_2}=\overline{BD_1}\cdot\overline{BD_2}$ から、もう 1 つの解が $\overline{BD_2}$ と決まる。直線 $CA$ の上では、$A$ と $C$ での値が条件 (i)・(iii) で決まり、2 次式が $(s-\overline{AE_1})(s-\overline{AE_2})$ に一致する。

詳しい証明を開く

方針:$F_1,F_2,D_1$ を通る円をとり、その方程式を 3 本の辺の上に制限すると 2 次式になる。2 次式の解と係数の関係(n次方程式の解と係数の関係)から、残りの 3 点も円の上にあることを示す。

段 1(円をとる)。$D_1$ は直線 $BC$ の上にあって $B$ と異なるので、直線 $AB$ の上にない(2 直線 $AB$、$BC$ の共有点は $B$ だけ)。よって 3 点 $F_1,F_2,D_1$ は一直線の上になく、この 3 点を通る円 $\Gamma$ がただ 1 つある。その方程式を $f(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n=0$ とする。

段 2(直線の上に制限する)。点 $X$ と長さ $1$ のベクトル $\vec u$ をとり、直線 $X+s\vec u$ の上で $g(s)=f(X+s\vec u)$ を考える。$\lvert X+s\vec u\rvert^2=\lvert X\rvert^2+2s\,X\cdot\vec u+s^2$(点と位置ベクトルを同じ文字で書く)で、残りの項は $s$ の 1 次式なので

$$g(s)=s^2+\beta s+f(X)\qquad(\beta\text{ は定数})$$

の形になる。$s$ は $X$ からの符号つきの長さである。この直線が $\Gamma$ と 2 点 $Y_1$、$Y_2$ で交われば、$g$ は $\overline{XY_1}$、$\overline{XY_2}$ を解にもつ 2 次式で、$s^2$ の係数が $1$ なので $g(s)=(s-\overline{XY_1})(s-\overline{XY_2})$ である。特に $f(X)=g(0)=\overline{XY_1}\cdot\overline{XY_2}$ となる(これが方べきの定理である)。

段 3($D_2$ も円の上)。直線 $AB$ は $\Gamma$ と $F_1$、$F_2$ で交わるので、段 2 により $f(B)=\overline{BF_1}\cdot\overline{BF_2}$、$f(A)=\overline{AF_1}\cdot\overline{AF_2}$ である。直線 $BC$ の上で $X=B$ として段 2 の $g(s)=s^2+\beta s+f(B)$ を考えると、$s_1=\overline{BD_1}$ が解の 1 つである。2 つの解の積は $f(B)$ なので、もう 1 つの解は

$$\frac{f(B)}{s_1}=\frac{\overline{BF_1}\cdot\overline{BF_2}}{\overline{BD_1}}=\frac{\overline{BD_1}\cdot\overline{BD_2}}{\overline{BD_1}}=\overline{BD_2}$$

である(条件 (ii) を使った。$s_1\ne0$ は $D_1\ne B$ による)。よって $D_2$ も $\Gamma$ の上にあり、直線 $BC$ の上で $g(s)=(s-\overline{BD_1})(s-\overline{BD_2})$ だから、$C$ を代入して $f(C)=\overline{D_1C}\cdot\overline{D_2C}=\overline{CD_1}\cdot\overline{CD_2}$ である。

段 4($E_1$、$E_2$ も円の上)。直線 $CA$ の上で、$X=A$、$\vec u$ を $\overrightarrow{AC}$ の向きの長さ $1$ のベクトルとして $h(s)=f(A+s\vec u)=s^2+\beta' s+f(A)$ を考える。$e_1=\overline{AE_1}$、$e_2=\overline{AE_2}$ とおくと、条件 (i) と段 3 から定数項は $f(A)=e_1e_2$ である。$C$ は $s=b$ の点で、段 3 と条件 (iii) から

$$h(b)=f(C)=\overline{CD_1}\cdot\overline{CD_2}=\overline{CE_1}\cdot\overline{CE_2}=(e_1-b)(e_2-b)=b^2-(e_1+e_2)b+e_1e_2$$

である。一方 $h(b)=b^2+\beta'b+e_1e_2$ なので、$\beta'b=-(e_1+e_2)b$、$b\ne0$ で割って $\beta'=-(e_1+e_2)$ である。よって

$$h(s)=s^2-(e_1+e_2)s+e_1e_2=(s-e_1)(s-e_2)$$

で、$h(e_1)=h(e_2)=0$、つまり $E_1$、$E_2$ も $\Gamma$ の上にある。$\square$

補題の 3 つの条件は、どの頂点でも「その頂点を通る 2 辺の上の 4 点が方べきの定理の逆の条件を満たす」という形をしている。頂点の条件が成り立たないと、6 点は同じ円に乗らないことがある(ex-lmc-cx-g。この例では 3 つの頂点のどれでも条件が崩れている)。

主定理:6 点は $OK$ の中点を中心とする円の上にある

6 点に名前を付ける。類似重心 $K$ を通り

  • $BC$ に平行な直線が $AB$、$CA$ と交わる点を $F'$、$E$、
  • $CA$ に平行な直線が $AB$、$BC$ と交わる点を $F$、$D'$、
  • $AB$ に平行な直線が $BC$、$CA$ と交わる点を $D$、$E'$
    とする(ex-lmc-start と同じ名前の付け方)。$K$ は三角形の内部の点なので(重心座標 $(a^2:b^2:c^2)$ の成分がすべて正、類似重心)、6 点はどれも辺の端点以外の点である。
Lemoine の円

三角形 $ABC$ の類似重心 $K$ を通り 3 辺に平行な 3 本の直線が、残りの 2 辺と交わる 6 点 $D,D',E,E',F,F'$ は、1 つの円の上にある。この円の中心は、外心 $O$ と $K$ を結ぶ線分 $OK$ の中点 $N$ である。

平行四辺形の対角線で反平行線を見つけ、6 点の条件を確かめる

方針:頂点 $A$ のところにできる平行四辺形の対角線が反平行線になることを lem-lmc-mid で示す。平行線と反平行線の比から lem-lmc-six の条件を確かめ、最後に lem-lmc-perp で中心を求める。
段 1(頂点 $A$ の反平行線)。$F$ は $K$ を通り $CA$ に平行な直線の上に、$E'$ は $K$ を通り $AB$ に平行な直線の上にある。四角形 $AFKE'$ は、辺 $AF$(直線 $AB$ の一部)と $E'K$ が平行、辺 $AE'$(直線 $AC$ の一部)と $FK$ が平行なので、平行四辺形である。平行四辺形の対角線は互いの中点で交わるので、線分 $FE'$ の中点は線分 $AK$ の中点に一致し、特に直線 $AK$($A$ からの類似中線)の上にある。lem-lmc-mid により、直線 $FE'$ は $BC$ の反平行線である。prop-lmc-anti (2) より
$$ \overline{AF}\cdot c=\overline{AE'}\cdot b $$
である。
段 2(頂点 $A$ の条件)。直線 $F'E$ は $BC$ に平行なので、prop-lmc-anti (1) より $\dfrac{\overline{AF'}}c=\dfrac{\overline{AE}}b$、つまり
$$ \overline{AF'}\cdot b=\overline{AE}\cdot c $$
である。段 1 の等式と辺どうしを掛けて、両辺を正の数 $bc$ で割ると
$$ \overline{AF}\cdot\overline{AF'}=\overline{AE'}\cdot\overline{AE} $$
を得る。これは lem-lmc-six の条件 (i) である。
段 3(頂点 $B$、$C$ の条件)。頂点 $B$ では、平行四辺形 $BDKF'$($D$ は $AB$ に平行な直線の上、$F'$ は $BC$ に平行な直線の上)の対角線 $DF'$ が $CA$ の反平行線で、直線 $FD'$ が $CA$ に平行である。段 1・段 2 の $A$、$B$、$C$ を $B$、$C$、$A$ に読みかえた計算で $\overline{BD}\cdot\overline{BD'}=\overline{BF'}\cdot\overline{BF}$ を得る。頂点 $C$ では、平行四辺形 $CEKD'$ の対角線 $ED'$ が $AB$ の反平行線で、直線 $DE'$ が $AB$ に平行なので、同じく $\overline{CE}\cdot\overline{CE'}=\overline{CD}\cdot\overline{CD'}$ を得る。これらは条件 (ii)・(iii) である。
段 4(6 点は同じ円の上)。$F$ と $F'$ は、$K$ を通る異なる 2 本の直線の上にある。$F=F'$ なら、その点は 2 本の直線の交点 $K$ に等しくなるが、$K$ は辺 $AB$ の上にないので $F\ne F'$ である。6 点はどれも頂点と異なる。段 2・段 3 と lem-lmc-six により、6 点は 1 つの円 $\Gamma$ の上にある。
段 5(中心)。$\Gamma$ の中心を $Z$ とする。$Z$ は弦 $FE'$ の垂直二等分線 $\ell_A$ の上にある。段 1 より $\ell_A$ は $AK$ の中点 $M_A$ を通り、lem-lmc-perp より $FE'\perp AO$ なので、$\ell_A$ は $AO$ に平行である。$M_A$ から $\dfrac12\overrightarrow{AO}$ だけ進んだ点は
$$ \frac{A+K}2+\frac12(O-A)=\frac{O+K}2=N $$
(点と位置ベクトルを同じ文字で書く)なので、$\ell_A$ は $N$ を通る。同じく、頂点 $B$ の弦 $DF'$ の垂直二等分線 $\ell_B$ は $N$ を通って $BO$ に平行、頂点 $C$ の弦 $ED'$ の垂直二等分線 $\ell_C$ は $N$ を通って $CO$ に平行である。3 本の直線 $AO$、$BO$、$CO$ がすべて平行になることはない(そうなら $A$、$B$、$C$、$O$ が一直線に並ぶ)ので、$\ell_A$、$\ell_B$、$\ell_C$ のうち 2 本は異なる直線で、どちらも $N$ と $Z$ を通る。異なる 2 直線の共有点は 1 つなので、$Z=N$ である。$\square$

証明の段 2 で、平行線 $F'E$ と反平行線 $FE'$ の組から方べきの条件が出てきた。平行線は辺を $c:b$ に、反平行線は $b:c$ に切るので、掛けると比が打ち消し合う。この「打ち消し合い」が、6 点が円に乗る理由である。

13, 14, 15 の三角形の Lemoine の円

$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ とする(類似重心 と同じ三角形)。$a=14$、$b=15$、$c=13$ で、類似重心は $K\left(\dfrac{1673}{295},\dfrac{1176}{295}\right)$、外心は $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$、外接円の半径は $R=\dfrac{65}8$ である。
(1) $BC$ は $x$ 軸なので、$K$ を通り $BC$ に平行な直線は $y=\dfrac{1176}{295}$ で、$F'\left(\dfrac{98}{59},\dfrac{1176}{295}\right)$、$E\left(\dfrac{3248}{295},\dfrac{1176}{295}\right)$ を通る。

(1) 残りの 4 点の座標を開く

$$D\left(\frac{1183}{295},0\right),\quad D'\left(\frac{511}{59},0\right),\quad E'\left(\frac{4471}{590},\frac{2526}{295}\right),\quad F\left(\frac{365}{118},\frac{438}{59}\right)$$


(2) 中心は $N=\dfrac{O+K}2=\left(\dfrac{1869}{295},\dfrac{19143}{4720}\right)$ で、6 点までの距離の 2 乗はどれも
$$ \frac{19477081}{891136}\approx21.856 $$
である。半径は約 $4.675$ である。
(3) 頂点 $A$ での条件 (i) の検算を開く

頂点 $A$ での条件 (i) を長さで確かめると、$AF\cdot AF'=AE'\cdot AE=\dfrac{299637}{6962}$ である。$AF=\dfrac{585}{118}$、$AF'=\dfrac{2561}{295}$、$AE'=\dfrac{507}{118}$、$AE=\dfrac{591}{59}$ で、$AF\cdot AF'=\dfrac{585\cdot2561}{118\cdot295}=\dfrac{299637}{6962}$、$AE'\cdot AE=\dfrac{507\cdot591}{118\cdot59}=\dfrac{299637}{6962}$ と一致する。反平行線 $FE'$ については $AF\cdot c=\dfrac{7605}{118}=AE'\cdot b$ で、prop-lmc-anti (2) の等式になっている。


(2) の距離の計算を 1 つ開く

$F'\left(\dfrac{98}{59},\dfrac{1176}{295}\right)=\left(\dfrac{7840}{4720},\dfrac{18816}{4720}\right)$、$N=\left(\dfrac{29904}{4720},\dfrac{19143}{4720}\right)$ なので、

$$NF'^2=\frac{22064^2+327^2}{4720^2}=\frac{486820096+106929}{22278400}=\frac{486927025}{22278400}=\frac{19477081}{891136}$$

である(分子と分母を $25$ で割った)。残りの 5 点も同じ値になることを sympy で確かめた。

鈍角三角形の Lemoine の円

$A(-2,3)$、$B(0,0)$、$C(8,0)$ とする。$\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}=-16<0$ なので $\angle B$ は鈍角である。類似重心は $K\left(-\dfrac4{31},\dfrac{32}{31}\right)$ である。

類似重心の計算を開く

$a^2=64$、$b^2=109$、$c^2=13$、$a^2+b^2+c^2=186$ で、$$K=\frac{64A+109B+13C}{186}=\left(\frac{-128+104}{186},\frac{192}{186}\right)=\left(-\frac4{31},\frac{32}{31}\right)$$


外心は $O\left(4,\dfrac{29}6\right)$ で、三角形の外にある。中心は $N=\left(\dfrac{60}{31},\dfrac{1091}{372}\right)$ で、これも三角形の外(辺 $CA$ の向こう側)にあるが、6 点はやはり $N$ から等しい距離 $\sqrt{\dfrac{1452425}{138384}}\approx3.240$ にある。
6 点の座標を開く

$D\left(\dfrac{52}{93},0\right)$、$D'\left(\dfrac{308}{93},0\right)$、$E\left(\dfrac{424}{93},\dfrac{32}{31}\right)$、$E'\left(-\dfrac{121}{93},\dfrac{173}{62}\right)$、$F\left(-\dfrac{77}{93},\dfrac{77}{62}\right)$、$F'\left(-\dfrac{64}{93},\dfrac{32}{31}\right)$ である。頂点 $A$ での積は $AF\cdot AF'=AE'\cdot AE=\dfrac{86437}{17298}$ である(sympy で確かめた)。

13, 14, 15 の三角形の Lemoine の円。中心 N は外心 O と類似重心 K を結ぶ線分の中点 13, 14, 15 の三角形の Lemoine の円。中心 N は外心 O と類似重心 K を結ぶ線分の中点
角 B が鈍角の三角形の Lemoine の円。外心 O も中心 N も三角形の外にある 角 B が鈍角の三角形の Lemoine の円。外心 O も中心 N も三角形の外にある

図 3 と図 4 では、赤い 3 本の直線が $K$ で交わり、青い円が 6 点を通る。緑の破線が線分 $OK$ で、その中点が円の中心 $N$ である。

系:$K$ を通る反平行線でできる円

平行線の代わりに、$K$ を通る 3 本の反平行線を引いても、6 点は円に乗る。

反平行線の 6 点の円

類似重心 $K$ を通る $BC$、$CA$、$AB$ の反平行線(それぞれ頂点 $A$、$B$、$C$ に関するもの)が、残りの 2 辺と交わる 6 点は、$K$ を中心とする 1 つの円の上にある。$K$ は 3 本の反平行線のそれぞれで、辺の間に切り取られた線分の中点である。

中点の補題と、辺に垂直な直線に関する折り返し

要点:lem-lmc-mid により、$K$ を通る反平行線の中点は類似中線の上にあり、$K$ 自身が中点になる。また、$K$ を通り $AB$ に垂直な直線に関する折り返しは、$AO$ に垂直な向きを $BO$ に垂直な向きに移すので(lem-lmc-perp)、$K$ を通る $BC$ の反平行線と $CA$ の反平行線を入れかえ、両者が直線 $AB$ と交わる点は $K$ から等しい距離にある。これを 3 辺で使うと 6 点が $K$ から等しい距離にある。

詳しい証明を開く

段 1($K$ は中点)。$K$ を通る $BC$ の反平行線が直線 $AB$、$AC$ と交わる点を $P_1$、$Q_1$ とする。この直線は $A$ を通らない($A$ を通る反平行線の向きの直線は $A$ での外接円の接線で(ex-lmc-anti (2))、円の内部の点 $K$ を通らない)ので、$P_1$、$Q_1$ は $A$ と異なる。lem-lmc-mid により、線分 $P_1Q_1$ の中点 $M$ は直線 $AK$ の上にある。$M$ も $K$ も、直線 $P_1Q_1$ と直線 $AK$ の両方の上にある。この 2 直線は異なる($A$ を通るのは一方だけ)ので共有点はただ 1 つで、$M=K$ である。よって $KP_1=KQ_1$ である。

段 2(隣の反平行線と長さが等しい)。$K$ を通る $CA$ の反平行線(頂点 $B$ に関するもの)が直線 $AB$ と交わる点を $P_2$ とする。$K$ を通り $AB$ に垂直な直線 $m$ に関する折り返しを $\tau$ とする。$AB$ の垂直二等分線は $A$ と $B$ を入れかえ $O$ を動かさないので、直線 $AO$ と直線 $BO$ はこの垂直二等分線に関して対称である。$m$ はこの垂直二等分線に平行なので、$\tau$ は $AO$ に垂直な向きを $BO$ に垂直な向きに移す。lem-lmc-perp により $P_1Q_1\perp AO$、$K$ を通る $CA$ の反平行線は $BO$ に垂直なので、$\tau$ は($K$ を動かさないので)直線 $P_1Q_1$ を $K$ を通る $CA$ の反平行線に移す。また $\tau$ は直線 $AB$ を自分自身に移す($m\perp AB$)。よって $\tau(P_1)=P_2$ で、$KP_1=KP_2$ である。

段 3(まとめ)。段 1 を 3 本の反平行線に、段 2 を 3 本の辺に使うと、6 点から $K$ までの距離はすべて等しい。$\square$

この円を cosine 円(第 2 Lemoine 円)ともいう(Wei26b)。名前の由来は、円が 3 辺から切り取る弦の長さが $\cos A$、$\cos B$、$\cos C$ に比例することにある。

13, 14, 15 の三角形の cosine 円

ex-lmc-1315 の三角形で、$K$ を通る 3 本の反平行線と辺の交点 6 つから $K$ までの距離は、どれも $\dfrac{273}{59}\approx4.627$ である。

6 つの交点の座標を開く

$BC$ の反平行線:$\left(\dfrac{70}{59},\dfrac{168}{59}\right)$、$\left(\dfrac{2996}{295},\dfrac{1512}{295}\right)$。$CA$ の反平行線:$\left(\dfrac{2366}{295},0\right)$、$\left(\dfrac{196}{59},\dfrac{2352}{295}\right)$。$AB$ の反平行線:$\left(\dfrac{196}{59},0\right)$、$\left(\dfrac{2366}{295},\dfrac{2352}{295}\right)$。


辺 $BC$ の上の 2 点の間の弦の長さは $\dfrac{2366}{295}-\dfrac{980}{295}=\dfrac{1386}{295}$ で、これは $2\cdot\dfrac{273}{59}\cdot\cos A=2\cdot\dfrac{273}{59}\cdot\dfrac{33}{65}=\dfrac{1386}{295}$ に等しい。

類似重心 K を通る 3 本の反平行線が辺と交わる 6 点は、K を中心とする円の上にある 類似重心 K を通る 3 本の反平行線が辺と交わる 6 点は、K を中心とする円の上にある
2 つの円を比べる。

Lemoine の円cosine 円(第 2 Lemoine 円)
$K$ を通る 3 本の直線3 辺に平行3 辺の反平行線
中心$OK$ の中点 $N$$K$
半径$\dfrac12R\sec\omega$$R\tan\omega$
13, 14, 15 の三角形の半径約 $4.675$$\dfrac{273}{59}\approx4.627$
証明の道具lem-lmc-sixlem-lmc-mid と lem-lmc-perp

表の $\omega$ は Brocard 角(Brocard点)で、$\cot\omega=\dfrac{a^2+b^2+c^2}{4S}$($S$ は三角形の面積)である。半径の式は rem-lmc-radius で扱う。

例と反例

thm-lmc-main と cor-lmc-cosine で、点 $K$ を別の点に替えると何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
3 本の平行線が通る点が $K$13, 14, 15 の三角形で重心 $G$ を通る平行線6 点が 1 つの円の上にある
3 本の反平行線が通る点が $K$同じ三角形で $G$ を通る反平行線6 点が通る点から等しい距離にある
反例:重心を通る平行線

ex-lmc-1315 の三角形で、重心 $G\left(\dfrac{19}3,4\right)$ を通って 3 辺に平行な直線を引く。辺と交わる 6 点は、$BC$ に平行な直線 $y=4$ から $F'\left(\dfrac53,4\right)$、$E(11,4)$、$CA$ に平行な直線から $F\left(\dfrac{10}3,8\right)$、$D'\left(\dfrac{28}3,0\right)$、$AB$ に平行な直線から $D\left(\dfrac{14}3,0\right)$、$E'(8,8)$ である。
3 点 $F$、$F'$、$D$ を通る円 $x^2+y^2-\dfrac{89}7x-\dfrac{123}{14}y+\dfrac{338}9=0$ の左辺に $D'$ を代入すると $6\ne0$ になるので、$D'$ はこの円の上にない。6 点は同じ円の上にない。

円の方程式と代入の計算を開く

円の方程式は、3 点 $F\left(\dfrac{10}3,8\right)$、$F'\left(\dfrac53,4\right)$、$D\left(\dfrac{14}3,0\right)$ を $x^2+y^2+lx+my+n=0$ に代入した連立方程式を解いて得た。$D'\left(\dfrac{28}3,0\right)$ を左辺に代入すると

$$\frac{784}9-\frac{89}7\cdot\frac{28}3+\frac{338}9=\frac{784-1068+338}9=6$$

である。$E$、$E'$ を代入すると $-\dfrac49$、$-\dfrac{58}9$ で、これらも円の上にない。


理由は頂点 $A$ での条件 (i) にある。重心を通る平行線は辺を 3 等分する点を通るので、$AF=\dfrac c3$、$AF'=\dfrac{2c}3$、$AE'=\dfrac b3$、$AE=\dfrac{2b}3$ で
$$ AF\cdot AF'=\frac{2c^2}9=\frac{338}9,\qquad AE'\cdot AE=\frac{2b^2}9=50 $$
となり、$b\ne c$ なので等しくない。$AF=\dfrac c3$、$AE'=\dfrac b3$ なので $\dfrac{AF}c=\dfrac{AE'}b$ で、prop-lmc-anti (1) により $FE'$ は $BC$ に平行であり、反平行線ではない。平行線どうしの組では比が打ち消し合わない。

重心 G を通る平行線の 6 点。破線の円は F、F'、D を通るが、赤い点 D'、E、E' はこの円の上にない 重心 G を通る平行線の 6 点。破線の円は F、F'、D を通るが、赤い点 D'、E、E' はこの円の上にない

反例:重心を通る反平行線

同じ三角形で、$G$ を通る 3 本の反平行線と辺の交点から $G$ までの距離は、$\dfrac{70}{13}\approx5.385$、$\dfrac{182}{45}\approx4.044$、$\dfrac{65}{14}\approx4.643$ の 3 通りの値をとり、そろわない。

6 つの距離の内訳を開く

$BC$ の反平行線の両端までは $\dfrac{70}{13}$ と $\dfrac{182}{45}$、$CA$ の反平行線の両端までは $\dfrac{65}{14}$ と $\dfrac{70}{13}$、$AB$ の反平行線の両端までは $\dfrac{182}{45}$ と $\dfrac{65}{14}$ である(sympy で計算した)。


中点にならない理由を開く

$BC$ の反平行線の両端までの距離が違うので、$G$ はその線分の中点ではない。lem-lmc-mid により、反平行線の中点は類似中線の上にあるが、$G$ は中線の上にあって、類似中線の上にはない($b\ne c$ のとき中線と類似中線は $A$ でしか交わらない)。cor-lmc-cosine の「通る点が反平行線の中点になる」ことが崩れる。

大学数学で見る:重心座標と半径の式

類似重心の重心座標 $(a^2:b^2:c^2)$(類似重心)を使うと、6 点の位置が辺の長さだけで書ける。

辺を $b^2:c^2:a^2$ に分ける

thm-lmc-main の 6 点について
$$ AF:FF':F'B=b^2:c^2:a^2 $$
であり、辺 $BC$、$CA$ でも同じく $BD:DD':D'C=c^2:a^2:b^2$、$CE:EE':E'A=a^2:b^2:c^2$ である。特に、Lemoine の円が辺 $AB$ から切り取る弦の長さは $FF'=\dfrac{c^3}{a^2+b^2+c^2}$ で、3 つの弦の長さは $a^3:b^3:c^3$ に比例する。

重心座標の 1 つの成分が一定の直線

要点:重心座標の 1 つの成分 $\alpha$ が一定の点の集まりは $BC$ に平行な直線である。$K$ を通る平行線は $\alpha=\dfrac{a^2}\sigma$、$\beta=\dfrac{b^2}\sigma$ などの直線($\sigma=a^2+b^2+c^2$)なので、$AF=\dfrac{b^2c}\sigma$、$AF'=\dfrac{(b^2+c^2)c}\sigma$ となる。

詳しい証明を開く

$\sigma=a^2+b^2+c^2$ とおく。点 $X=\alpha A+\beta B+\gamma C$($\alpha+\beta+\gamma=1$)のうち $\alpha$ が同じ 2 点 $X$、$X'$ では、$X-X'=(\beta-\beta')B+(\gamma-\gamma')C$ で $\beta-\beta'=-(\gamma-\gamma')$ なので、$X-X'$ は $C-B$ の実数倍である。よって $\alpha$ が一定の点の集まりは $BC$ に平行な直線である。$K=\dfrac{a^2A+b^2B+c^2C}\sigma$ を通り $BC$ に平行な直線は $\alpha=\dfrac{a^2}\sigma$ の直線で、辺 $AB$($\gamma=0$)とは $F'=\dfrac{a^2}\sigma A+\dfrac{b^2+c^2}\sigma B$ で交わる。したがって $AF'=\dfrac{b^2+c^2}\sigma c$ である。同じく $CA$ に平行な直線は $\beta=\dfrac{b^2}\sigma$ の直線で、$F=\dfrac{a^2+c^2}\sigma A+\dfrac{b^2}\sigma B$、$AF=\dfrac{b^2}\sigma c$ である。よって

$$AF=\frac{b^2c}\sigma,\qquad FF'=AF'-AF=\frac{c^2\cdot c}\sigma,\qquad F'B=c-AF'=\frac{a^2c}\sigma$$

で、比は $b^2:c^2:a^2$ である。ほかの辺も同じである。$\square$

ex-lmc-start の直角三角形では $AF=\dfrac{18}{25}$、$FF'=\dfrac{32}{25}$、$F'B=2=\dfrac{50}{25}$ で、比は $18:32:50=9:16:25=b^2:c^2:a^2$ である。

半径の式

Lemoine の円の半径は $\dfrac12R\sec\omega$、cosine 円の半径は $R\tan\omega=\dfrac{abc}{a^2+b^2+c^2}$ であることが知られている(Wei26a、Wei26b。この記事では証明しない)。ここで $\sec\omega=\dfrac1{\cos\omega}$ で、$\omega$ は $\cot\omega=\dfrac{a^2+b^2+c^2}{4S}$ で決まる Brocard 角である。

3 つの三角形での確認を開く

ex-lmc-start の直角三角形では $R=\dfrac52$、$\cot\omega=\dfrac{50}{24}=\dfrac{25}{12}$ なので $\sec^2\omega=1+\tan^2\omega=\dfrac{769}{625}$ で、$\left(\dfrac12R\sec\omega\right)^2=\dfrac14\cdot\dfrac{25}4\cdot\dfrac{769}{625}=\dfrac{769}{400}$ となり、ex-lmc-start の $NF^2$ と一致する。

ex-lmc-1315 の三角形では $\cot\omega=\dfrac{590}{336}=\dfrac{295}{168}$ で、$\left(\dfrac12R\sec\omega\right)^2=\dfrac{19477081}{891136}$、$R\tan\omega=\dfrac{65}8\cdot\dfrac{168}{295}=\dfrac{273}{59}$ となり、ex-lmc-1315 と ex-lmc-cosine の値と一致する。ex-lmc-obtuse の鈍角三角形でも一致することを sympy で確かめた。


2 つの半径の関係を開く

2 つの式から、Lemoine の円の半径の 2 乗は $\dfrac14\left(R^2+R^2\tan^2\omega\right)$ で、外接円の半径と cosine 円の半径の 2 乗の平均の半分である。中心も、外接円の中心 $O$ と cosine 円の中心 $K$ の中点だった。


3 つの円は、Taylorの円 の次に読む Tuckerの円 で 1 つの族にまとまる。

さらに先へ

  • thm-lmc-main の証明は、$K$ を通る 3 本の平行線を、$K$ を中心に三角形を相似拡大した三角形の 3 辺に替えても同じように進む。こうしてできる円の族が Tuckerの円 で、Lemoine の円と cosine 円はその特別な場合で、外接円は比を $1$ に近づけた極限である。
  • 三角形の各頂点から下ろした垂線の足から、さらに 2 辺に垂線を下ろしてできる 6 点も、平行線と反平行線の組で円に乗る(Taylorの円)。
  • 外心 $O$ と類似重心 $K$ を直径の両端とする円は Brocard 円とよばれ、2 つの Brocard 点を通る(Brocard点)。Lemoine の円の中心はこの円の中心でもある。
  • lem-lmc-six は、3 辺の上の 6 点が 1 つの円に乗るための条件である。同じ補題は Taylorの円 と Tuckerの円 でも使う。

関連項目

参考文献

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