定幅図形(figure of constant width)とは、平面の有界な閉じた凸図形で、どの向きの平行な 2 本の支持線の間隔(幅)も同じ値 $w$ になるものである。円のほかに、1 辺 $w$ の正三角形の各頂点を中心とする半径 $w$ の 3 つの円板の共通部分である Reuleaux の三角形も定幅図形であり、定幅図形は円とは限らない。辺の数が奇数の正多角形から作る Reuleaux 多角形の周の長さは、弧の中心角の和が $\pi$ になることから、幅だけで決まって $\pi w$ となり、直径 $w$ の円と等しい。面積は形によって変わり、Reuleaux の三角形は $\frac{\pi-\sqrt{3}}{2}w^2$ で、円の $\frac{\pi}{4}w^2$ より小さい。
前提知識: 一般角と弧度法, ベクトルの内積, 円周角の定理(高校数学), 凸集合
円は、どの向きに回しても、2 本の平行な直線の間にぴったり挟める。平行線の間隔は、いつも直径である。マンホールのふたが丸いのは、このためだとよく説明される。ふたの幅がどの向きでも同じなら、ふたを傾けても穴に落ちないからである。
正方形はそうならない。辺に平行な 2 本の直線で挟むと間隔は 1 辺の長さだが、対角線の向きで挟むと、間隔は対角線の長さになる。
1 辺 $1$ の正方形 $O(0,0)$、$(1,0)$、$(1,1)$、$(0,1)$ を、直線 $x\cos\theta+y\sin\theta=k$ の形の 2 本の平行線で挟む($0\le\theta\le\dfrac\pi2$)。4 つの頂点で $x\cos\theta+y\sin\theta$ の値は
$$
0,\qquad\cos\theta,\qquad\cos\theta+\sin\theta,\qquad\sin\theta
$$
で、最大は $\cos\theta+\sin\theta$、最小は $0$ である。正方形は 4 頂点を結んだ図形なので、挟む 2 本は $k=0$ と $k=\cos\theta+\sin\theta$ で、間隔は
$$
\cos\theta+\sin\theta=\sqrt2\sin\left(\theta+\frac\pi4\right)
$$
である。$\theta=0$ で $1$、$\theta=\dfrac\pi4$ で $\sqrt2\approx1.414$ で、向きによって $1$ から $\sqrt2$ まで変わる。
中心 $(0,0)$、半径 $\dfrac12$ の円で、同じく $x\cos\theta+y\sin\theta$ の値を考える。円の上の点 $\left(\dfrac12\cos t,\dfrac12\sin t\right)$ では値は $\dfrac12\cos(t-\theta)$ で、最大 $\dfrac12$、最小 $-\dfrac12$ である。間隔は $\theta$ によらず $1$(直径)である。
では、どの向きでも幅が同じ図形は円だけだろうか。答えは「いいえ」である。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $x\cos\theta+y\sin\theta$ の最大・最小 | 支持線と幅(def-cw-width) | 支持関数 $h(u)$ |
| 扇形の弧の長さ $r\theta$ | Reuleaux 多角形の周 $\pi w$(thm-cw-perimeter) | Barbier の定理 |
| 扇形と三角形の面積 | Reuleaux の三角形の面積(ex-cw-area) | Blaschke–Lebesgue の定理 |
| 平行線の間隔を向きごとに測る | 幅の関数 $w(\theta)$ | Cauchy の周長公式(積分幾何) |
Reuleaux の三角形は、どの向きに回しても 2 本の平行線の間にぴったり挟まる
以下、図形は 有界な閉じた凸図形 とする。有界とは十分大きな円の中に入ること、閉じたとは周を含むこと、凸とは図形の中のどの 2 点を結ぶ線分も図形に含まれること(凸集合)である。長さ $1$ のベクトル $u=(\cos\theta,\sin\theta)$ を「向き」とよぶ。点 $P$ の位置ベクトルも $P$ で表し、内積 $u\cdot P$ は $P$ を向き $u$ の直線に正射影した座標である(ベクトルの内積)。
有界な閉じた凸図形 $K$ と向き $u$ について
$$
h_K(u)=\max_{P\in K}\,u\cdot P
$$
とおく。直線 $u\cdot P=h_K(u)$ は $K$ に触れ、$K$ 全体がその片側にある。この直線を向き $u$ の 支持線 という。向き $u$ と $-u$ の 2 本の支持線は平行で、その間隔
$$
w_K(u)=h_K(u)+h_K(-u)=\max_{P\in K}u\cdot P-\min_{P\in K}u\cdot P
$$
を、向き $u$ の 幅 という。どの向き $u$ でも幅が同じ値 $w$ になる $K$ を、幅 $w$ の 定幅図形 といい、その周を 定幅曲線 という。
$w_K(-u)=w_K(u)$ なので、幅は $0\le\theta<\pi$ の向きだけ調べればよい。多角形では、$u\cdot P$ の最大・最小は頂点でとる(辺の上では $u\cdot P$ は 1 次式なので端で最大・最小になる)ので、幅は頂点だけから計算できる。
1 辺 $1$ の正三角形 $A(0,0)$、$B(1,0)$、$C\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ で幅を求める。
(1) $u=(0,1)$($\theta=\dfrac\pi2$):$u\cdot P$ は頂点で $0,0,\dfrac{\sqrt3}2$ なので、幅は $\dfrac{\sqrt3}2\approx0.866$(高さ)である。
(2) $u=(1,0)$($\theta=0$):$u\cdot P$ は $0,1,\dfrac12$ なので、幅は $1$(辺の長さ)である。
向きによって幅が変わるので、正三角形は定幅図形でない。円は ex-cw-circle により定幅図形で、幅は直径である。
幅を向きの角の関数として描くと、正方形と正三角形は波打ち、円と Reuleaux の三角形は一定の値 1 になる
正三角形の辺を、向かいの頂点を中心とする円弧に取りかえる。
1 辺 $w$ の正三角形 $ABC$ について、$A$ を中心とする半径 $w$ の円の弧 $BC$(中心角 $60^\circ$ の方)、$B$ を中心とする弧 $CA$、$C$ を中心とする弧 $AB$ の 3 つで囲まれた図形を、幅 $w$ の Reuleaux の三角形 という。これは、$A$、$B$、$C$ を中心とする半径 $w$ の 3 つの円板 $D_A$、$D_B$、$D_C$ の共通部分 $K=D_A\cap D_B\cap D_C$ である。
3 つの円板はどれも凸なので、共通部分 $K$ も凸である。頂点 $A$ で 2 つの弧のなす角は $120^\circ$ で、角の和は $360^\circ$ になる。辺が線分でないので、三角形の内角の和 の $180^\circ$ にはならない。
正三角形の各頂点を中心とする半径 w の 3 つの円板の共通部分が Reuleaux の三角形になる
幅 $w$ の Reuleaux の三角形 $K$ は、どの向きでも幅が $w$ の定幅図形である。
証明の鍵は、次の不等式である。
$\lvert A-C\rvert=w$ のとき、$C$ を中心とする半径 $w$ の円板 $D_C$ の点 $P$ はすべて
$$
(P-A)\cdot(C-A)\ge0
$$
を満たす。つまり $D_C$ は、$A$ での接線($CA$ に垂直な直線)について $C$ の側にある。
$P\in D_C$ なら $\lvert P-C\rvert^2\le w^2=\lvert A-C\rvert^2$ である。$P-C=(P-A)+(A-C)$ と分けて展開すると
$$
\lvert P-A\rvert^2+2(P-A)\cdot(A-C)+\lvert A-C\rvert^2\le\lvert A-C\rvert^2
$$
である。$\lvert A-C\rvert^2$ を消して移項すると $2(P-A)\cdot(C-A)\ge\lvert P-A\rvert^2\ge0$ となる。$\square$
方針:頂点 $A$ から見て辺 $AB$ と辺 $AC$ の間の向き $u$ では、向き $u$ の支持線は弧 $BC$ に接し、向き $-u$ の支持線は頂点 $A$ を通ることを示す。すると幅は「$A$ から弧 $BC$ までの距離」$w$ になる。
段 1(向きの範囲)。$A(0,0)$、$B(w,0)$、$C\left(\dfrac w2,\dfrac{\sqrt3}2w\right)$ とする。向き $u=(\cos\theta,\sin\theta)$ で $0\le\theta\le\dfrac\pi3$ のものを考える。このとき $u$ は $\dfrac{B-A}w=(1,0)$ と $\dfrac{C-A}w=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ の間にあり、$s,t\ge0$ を使って
$$
u=s\,\frac{B-A}w+t\,\frac{C-A}w
$$
と書ける($t=\dfrac{2\sin\theta}{\sqrt3}\ge0$、$s=\cos\theta-\dfrac{\sin\theta}{\sqrt3}\ge0$。$\theta\le\dfrac\pi3$ から $\tan\theta\le\sqrt3$ を使う)。
段 2($h_K(u)=u\cdot A+w$)。$K\subset D_A$ なので、$K$ の点 $P$ は $\lvert P-A\rvert\le w$ を満たし、$u\cdot P=u\cdot A+u\cdot(P-A)\le u\cdot A+w$ である。等号は $P=A+wu$ でなりたつ。点 $X=A+wu$ は $A$ から距離 $w$ で、向きが $AB$ と $AC$ の間にあるので弧 $BC$ の上にある。実際、$X$ と $B$ は $A$ を中心とする半径 $w$ の円の上にあり、$\angle XAB=\theta\le60^\circ$ なので $\lvert X-B\rvert=2w\sin\dfrac\theta2\le2w\sin30^\circ=w$ で、同じく $\lvert X-C\rvert\le w$ である。よって $X\in K$ で、$h_K(u)=u\cdot A+w$ である。
段 3($h_K(-u)=-u\cdot A$)。$K\subset D_B$、$K\subset D_C$ で $\lvert B-A\rvert=\lvert C-A\rvert=w$ なので、lem-cw-half により $K$ の点 $P$ は $(P-A)\cdot(B-A)\ge0$、$(P-A)\cdot(C-A)\ge0$ を満たす。段 1 の $s,t\ge0$ を使うと
$$
(P-A)\cdot u=\frac sw(P-A)\cdot(B-A)+\frac tw(P-A)\cdot(C-A)\ge0
$$
である。つまり $u\cdot P\ge u\cdot A$ で、$K$ の上での $u\cdot P$ の最小値は $P=A$ でとる $u\cdot A$ である。よって $h_K(-u)=\max(-u\cdot P)=-u\cdot A$ である。
段 4(幅)。段 2 と段 3 から、$0\le\theta\le\dfrac\pi3$ で
$$
w_K(u)=h_K(u)+h_K(-u)=(u\cdot A+w)-u\cdot A=w
$$
である。
段 5(すべての向き)。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回して同じ議論をすると、頂点 $B$ では $BC$ と $BA$ の間の向き $\dfrac{2\pi}3\le\theta\le\pi$ で、頂点 $C$ では $CA$ と $CB$ の間の向き $\dfrac{4\pi}3\le\theta\le\dfrac{5\pi}3$ で、幅は $w$ である。$w_K(-u)=w_K(u)$ なので、これらを $\pi$ だけずらした $\pi\le\theta\le\dfrac{4\pi}3$、$\dfrac{5\pi}3\le\theta\le2\pi$、$\dfrac\pi3\le\theta\le\dfrac{2\pi}3$ でも幅は $w$ である。6 つの範囲で $0\le\theta\le2\pi$ がすべて覆われるので、どの向きでも幅は $w$ である。$\square$
向き u が辺 AB と AC の間にあるとき、u の側の支持線は弧 BC に点 A+wu で接し、反対側の支持線は頂点 A を通る
$w=1$ とする。
(1) $\theta=\dfrac\pi6$、$u=\left(\dfrac{\sqrt3}2,\dfrac12\right)$ は段 1 の範囲にある。支持線は $X=A+u=\left(\dfrac{\sqrt3}2,\dfrac12\right)$ で弧 $BC$ に接し、$u\cdot X=\dfrac34+\dfrac14=1$ である。反対側は $A$ で $u\cdot A=0$ なので、幅は $1-0=1$ である。
(2) $\theta=\dfrac\pi2$、$u=(0,1)$ は段 5 の $\dfrac\pi3\le\theta\le\dfrac{2\pi}3$ の範囲で、$-u=(0,-1)$ は頂点 $C$ の範囲 $\dfrac{4\pi}3\le\theta\le\dfrac{5\pi}3$ にある。上の支持線は頂点 $C$ を通り $u\cdot C=\dfrac{\sqrt3}2$、下の支持線は $C-(0,1)\cdot1=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2-1\right)$ で弧 $AB$ に接し、$u\cdot P=\dfrac{\sqrt3}2-1$ である。幅は $\dfrac{\sqrt3}2-\left(\dfrac{\sqrt3}2-1\right)=1$ である。正三角形の高さ $\dfrac{\sqrt3}2$ に、弧のふくらみ $1-\dfrac{\sqrt3}2\approx0.134$ が加わって $1$ になる。
正三角形の代わりに、辺の数が奇数の正多角形でも同じ作り方ができる。
$n$ を $3$ 以上の奇数とし、正 $n$ 角形の最も長い対角線の長さを $w$ とする($n=3$ では辺の長さ)。各頂点 $V$ から最も遠い頂点は 2 つあり、それらは隣り合っている。この 2 つを結ぶ、$V$ を中心とする半径 $w$ の円の弧を $n$ 個とった図形を、幅 $w$ の Reuleaux の正 $n$ 角形 という。
たとえば正五角形では、頂点 $V_0$ から最も遠いのは向かいの辺の両端 $V_2$、$V_3$ で、弧 $V_2V_3$ は $V_0$ を中心とする半径 $w$(対角線の長さ)の弧である。Reuleaux の正 $n$ 角形も定幅図形であることが知られている(Wei26c。この記事では証明しない)。証明の筋は prf-cw-reuleaux と同じで、各頂点 $V$ で「$V$ から最も遠い 2 頂点の間の向き」を考える。$n=5,7,9$ では、多くの向きで幅を計算して、どれも $w$ になることを数値でも確かめた(これは検算で、証明ではない)。
正五角形の各頂点を中心に、最も遠い 2 頂点を結ぶ半径 w の弧を描くと Reuleaux の五角形になる
幅 $w$ の Reuleaux の正 $n$ 角形($n$ は $3$ 以上の奇数)の周の長さは $\pi w$ である。これは直径 $w$ の円の周の長さと同じで、$n$ によらない。
段 1(1 本の弧の中心角)。正 $n$ 角形の外接円の中心を $O$ とする。頂点 $V$ から最も遠い 2 頂点を $V'$、$V''$ とすると、$V'V''$ は正 $n$ 角形の 1 辺で、$O$ から見た中心角は $\dfrac{2\pi}n$ である。$V$ は外接円の上で弧 $V'V''$(短い方)の外にあるので、円周角の定理(円周角の定理(高校数学))により
$$
\angle V'VV''=\frac12\cdot\frac{2\pi}n=\frac\pi n
$$
である。$V$ を中心とする弧 $V'V''$ の中心角はこの角なので $\dfrac\pi n$ である。
段 2(弧の長さ)。半径 $w$、中心角 $\dfrac\pi n$ の弧の長さは $w\cdot\dfrac\pi n$ である(一般角と弧度法)。
段 3(足す)。弧は $n$ 本あるので、周の長さは
$$
n\cdot\frac{\pi w}n=\pi w
$$
である。$\square$
面積は周の長さと違い、形によって変わる。
幅 $w$ の Reuleaux の三角形の面積を求める。3 つの扇形(中心 $A$、$B$、$C$、半径 $w$、中心角 $\dfrac\pi3$)を重ねると、真ん中の正三角形が 3 回、残りの 3 つの弓形が 1 回ずつ覆われる。扇形 1 つの面積は $\dfrac12w^2\cdot\dfrac\pi3=\dfrac{\pi w^2}6$、正三角形の面積は $\dfrac{\sqrt3}4w^2$ なので、
$$
\text{面積}=3\cdot\frac{\pi w^2}6-2\cdot\frac{\sqrt3}4w^2=\boxed{\frac{\pi-\sqrt3}2w^2}\approx0.7048\,w^2
$$
である(正三角形の重なりの 3 回を 1 回にするため、2 回分を引く)。直径 $w$ の円の面積は $\dfrac\pi4w^2\approx0.7854\,w^2$ なので、Reuleaux の三角形の面積は円より約 $10\%$ 小さい。
| $w=1$ の図形 | 幅 | 周の長さ | 面積 |
|---|---|---|---|
| 円(直径 $1$) | どの向きも $1$ | $\pi\approx3.1416$ | $\dfrac\pi4\approx0.7854$ |
| Reuleaux の三角形 | どの向きも $1$ | $\pi\approx3.1416$ | $\dfrac{\pi-\sqrt3}2\approx0.7048$ |
| Reuleaux の五角形 | どの向きも $1$ | $\pi\approx3.1416$ | 約 $0.7585$ |
| 正三角形(1 辺 $1$) | $0.866$〜$1$ | $3$ | $\dfrac{\sqrt3}4\approx0.4330$ |
| 正方形(1 辺 $1$) | $1$〜$1.414$ | $4$ | $1$ |
正五角形に、5 つの弓形(半径 $1$、中心角 $\dfrac\pi5$)を付け加えた図形である。対角線 $1$ の正五角形の外接円の半径は $R=\dfrac1{2\sin72^\circ}\approx0.5257$ で、面積は $\dfrac52R^2\sin72^\circ\approx0.6572$ である。弓形 1 つの面積は Hippocratesの月形 の弓形の公式 $\dfrac{r^2}2(\theta-\sin\theta)$ で $\dfrac12\left(\dfrac\pi5-\sin\dfrac\pi5\right)\approx0.02027$ で、5 つで約 $0.1013$ である。合わせて約 $0.7585$ となる。同じ方法で Reuleaux の三角形も、正三角形 $\dfrac{\sqrt3}4$ と 3 つの弓形 $\dfrac12\left(\dfrac\pi3-\dfrac{\sqrt3}2\right)$ の和として $\dfrac{\pi-\sqrt3}2$ になる。
表で、幅が同じ 3 つの定幅図形は周の長さがそろい、面積は Reuleaux の三角形 < Reuleaux の五角形 < 円 の順である。同じ周の長さで面積が最も大きいのは円である(等周不等式(高校数学))。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| (逆)定幅なら円か | Reuleaux の三角形 | 円である |
| 正多角形の辺の数が奇数 | 正方形の各辺を、向かいの辺の中点を中心とする弧に替えた図形 | 定幅である |
| 定幅である | 1 辺 $1$ の正方形 | 周の長さが $\pi\times$(幅) |
thm-cw-reuleaux の Reuleaux の三角形は定幅だが、円ではない。円なら周の上のどの点でも曲がり方が同じだが、Reuleaux の三角形は 3 つの頂点でとがっていて(弧どうしが $120^\circ$ で交わる)、円の一部ではない。「どの向きの幅も同じ」は、円を特徴づける性質ではない。
偶数角の正多角形では、各頂点から最も遠い頂点は 1 つだけで、def-cw-polygon の作り方ができない。たとえば 1 辺 $1$ の正方形 $(0,0)$、$(1,0)$、$(1,1)$、$(0,1)$ の各辺を、向かいの辺の中点を中心とし、その辺の両端を通る円の弧(外にふくらむ方)に替えてみる。弧の半径は $\sqrt{1^2+\left(\dfrac12\right)^2}=\dfrac{\sqrt5}2\approx1.118$ である。
(1) 向き $(0,1)$:上の弧は中心 $\left(\dfrac12,0\right)$ で、いちばん高い点の $y$ 座標は $\dfrac{\sqrt5}2$ である。下の弧のいちばん低い点は $y=1-\dfrac{\sqrt5}2$ である。幅は $\sqrt5-1\approx1.236$ である。
(2) 向き $\dfrac1{\sqrt2}(1,1)$:最大・最小は頂点 $(1,1)$、$(0,0)$ でとり、幅は $\sqrt2\approx1.414$ である(上の弧の点は、中心 $\left(\dfrac12,0\right)$ からの向きの角 $\varphi$ が $\arctan2\le\varphi\le\pi-\arctan2$(約 $63.4^\circ$ から $116.6^\circ$)の範囲にあり、$x+y=\dfrac12+\dfrac{\sqrt5}2(\cos\varphi+\sin\varphi)=\dfrac12+\dfrac{\sqrt{10}}2\sin\left(\varphi+\dfrac\pi4\right)$ である。$\varphi+\dfrac\pi4$ は $108.4^\circ$ から $161.6^\circ$ の間で、そこで $\sin$ は減少するので、最大は端の $\varphi=\arctan2$、つまり頂点 $(1,1)$ でとる。ほかの 3 本の弧も同じで、$x+y$ の最大は $(1,1)$、最小は $(0,0)$ でとる)。
向きによって幅が違うので、定幅図形でない。
1 辺 $1$ の正方形の周は $4$ である。幅は $1$ から $\sqrt2$ まで変わる(ex-cw-start)ので、「$\pi\times$ 幅」は $\pi\approx3.14$ から $\sqrt2\pi\approx4.44$ までの値をとり、どれか 1 つに決まらない。thm-cw-perimeter は、幅が 1 つの数に決まる定幅図形だから意味をもつ。
正方形の各辺を向かいの辺の中点を中心とする弧に替えた図形は、辺に垂直な向きと対角線の向きで幅が違う
thm-cw-perimeter は Reuleaux 多角形の場合だったが、実は どんな定幅図形も、周の長さは $\pi\times$(幅)である。これを Barbier の定理という(Wei26a。この記事では証明しない)。
これは、次の公式から見通せる。凸図形の周の長さ $L$ は、向き $\theta$ の幅 $w(\theta)$ を $0\le\theta\le\pi$ で積分したものに等しい(Cauchy の周長公式。Wei26a。凸多角形の場合の証明は下の「開く」の中に置く。一般の凸図形では証明しない)。
$$
L=\int_0^\pi w(\theta)\,d\theta
$$
定幅図形なら $w(\theta)=w$ なので $L=\pi w$ となる。
1 辺 $1$ の正方形では、ex-cw-start から $0\le\theta\le\dfrac\pi2$ で $w(\theta)=\cos\theta+\sin\theta$ である。$\dfrac\pi2\le\theta\le\pi$ でも、正方形を $90^\circ$ 回すと同じ図形なので $w(\theta)=w\left(\theta-\dfrac\pi2\right)$ である。よって
$$
\int_0^\pi w(\theta)\,d\theta=2\int_0^{\pi/2}(\cos\theta+\sin\theta)\,d\theta=2\Bigl[\sin\theta-\cos\theta\Bigr]_0^{\pi/2}=2\cdot2=4
$$
で、周の長さ $4$ に一致する。
凸多角形の辺を $e_1,\dots,e_m$、長さを $\ell_1,\dots,\ell_m$、辺 $e_i$ の向きの角を $\varphi_i$ とする。多角形を向き $u=(\cos\theta,\sin\theta)$ の直線に正射影すると、影は長さ $w(\theta)$ の線分になる。凸なので、影の各点の上には周の点がちょうど 2 つある(影の両端を除く)。よって、全部の辺の影の長さの和は $2w(\theta)$ である。辺 $e_i$ の影の長さは $\ell_i\lvert\cos(\varphi_i-\theta)\rvert$ なので
$$2w(\theta)=\sum_{i=1}^m\ell_i\lvert\cos(\varphi_i-\theta)\rvert$$
である。$\lvert\cos\rvert$ は周期 $\pi$ の関数なので、$\displaystyle\int_0^\pi\lvert\cos(\varphi-\theta)\rvert\,d\theta=\int_0^\pi\lvert\cos t\rvert\,dt=2$ である。両辺を $0$ から $\pi$ まで積分すると $\displaystyle2\int_0^\pi w(\theta)\,d\theta=\sum_{i=1}^m2\ell_i$、つまり $\displaystyle\int_0^\pi w(\theta)\,d\theta=L$ となる。一般の凸図形では、多角形で近づけてこの式を導く(この記事では証明しない)。
幅 $w$ の定幅図形のうち、面積が最大なのは円、最小なのは Reuleaux の三角形である。最小の方は Blaschke–Lebesgue の定理とよばれる(Wei26b。この記事では証明しない)。ex-cw-area の後の表の順序は、この定理と合っている。
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