(1+1/n)^nの極限

同義語:limit of (1+1/n)^n

概要

$(1+1/n)^n$の極限(limit of $(1+1/n)^n$)とは、年利 100% を 1 年 $n$ 回の複利で付けたときの倍率 $a_n=(1+\frac1n)^n$ が $n\to\infty$ で近づく数であり、これをネイピア数 $e$ と定める。二項定理で $a_n=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}(1-\frac1n)\cdots(1-\frac{k-1}n)$ と展開し係数を比べると、$a_n$ は狭義単調増加で $a_n\le\sum_{k=0}^n\frac1{k!}<3$ なので、単調有界数列の収束により極限が存在する。Bernoulli の不等式から $(1+\frac1n)^{n+1}$ は狭義単調減少で、各 $n\ge1$ で $(1+\frac1n)^n<e<(1+\frac1n)^{n+1}$、$2<e<3$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数列の極限, 二項定理, 数学的帰納法

高校での出発点:複利の計算

銀行に 1 万円を預け、1 年で 100% の利息が付くとする。1 年後の残高は 2 万円である。では、利息を半年ごとに 50% ずつ付けたらどうなるか。半年後に付いた利息にも、次の半年で利息が付く(複利)。1 年を $n$ 回に分けて、そのたびに $\frac1n$ の割合の利息を付けると、残高は 1 回ごとに $\bigl(1+\frac1n\bigr)$ 倍になるので、1 年後には元金の
$$ a_n:=\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n $$
倍になる。$n$ を大きくすると、どこまで増えるのだろうか。

複利の倍率を手で計算する
  • $n=1$:$a_1=(1+1)^1=2$。
  • $n=2$:$a_2=\bigl(\frac32\bigr)^2=\frac94=2.25$。
  • $n=4$:$a_4=\bigl(\frac54\bigr)^4=\frac{625}{256}=2.44140625$。
    回数を 2 倍にするたびに倍率は増えるが、増える量は $0.25$、$0.19\ldots$ と小さくなっている。
$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$ の値の表

次の値は数値計算による($\ldots$ は以下を切り捨てたことを表す)。

$n$$1$$2$$3$$5$$10$$100$$1000$
$a_n$$2$$2.25$$2.370\ldots$$2.48832$$2.593\ldots$$2.7048\ldots$$2.71692\ldots$

値は増え続けるが、$2.7$ を少し超えたあたりで止まりそうに見える。

高校の教科書は、この値が近づく先を $e=2.71828\ldots$ と書く。しかし表が見せるのは有限個の値だけである。次の 2 つは、表からはわからない。

  • $a_n$ は本当にある数に近づく(収束する)のか。$n=10^{100}$ のあたりで急に増えだすことはないのか。→ thm-eln-converge
  • 近づく先の数は、どの範囲にあると保証できるのか。→ prop-eln-squeeze
    本記事では、この 2 つに証明をつける。道具と結果の対応は次のとおりである。
    高校で見ること本記事の言葉ボックス
    表で値が増えながら止まりそうに見える単調で有界な数列は収束するaxm-eln-monotone
    二項定理で $a_n$ を展開する展開の係数を $n$ と $n+1$ で比べるlem-eln-expand, thm-eln-converge
    $e=2.718\ldots$ という値増える数列と減る数列で挟むprop-eln-squeeze
    a_n と b_n が e を挟む様子 a_n と b_n が e を挟む様子
    図 1 の青い点が $a_n$ である。赤い点の $b_n:=\bigl(1+\frac1n\bigr)^{n+1}$ は後の prop-eln-squeeze で使う数列で、こちらは減りながら同じ数に近づく。

取り出すべき構造:単調で有界な数列

単調と有界

単調な数列と有界な数列

実数の数列 $(x_n)$ について、次のように定める。

  • すべての $n$ で $x_n\le x_{n+1}$ のとき、単調増加という。すべての $n$ で $x_n< x_{n+1}$ のとき、狭義単調増加という。
  • すべての $n$ で $x_n\ge x_{n+1}$ のとき、単調減少という。すべての $n$ で $x_n>x_{n+1}$ のとき、狭義単調減少という。
  • ある定数 $M$ があって、すべての $n$ で $x_n\le M$ となるとき、上に有界という。ある定数 $m$ があって、すべての $n$ で $x_n\ge m$ となるとき、下に有界という。
単調性と有界性を確かめる
  1. $x_n=1-\frac1n$($0,\ \frac12,\ \frac23,\ \frac34,\ \dots$)。差は $x_{n+1}-x_n=\frac1n-\frac1{n+1}=\frac1{n(n+1)}>0$ なので狭義単調増加である。また $x_n<1$ なので上に有界である。この数列は $1$ に収束する。
  2. $x_n=n$($1,2,3,\dots$)。狭義単調増加だが、どんな $M$ に対しても $n>M$ となる $n$ があるので、上に有界でない。
  3. $x_n=(-1)^n$($-1,1,-1,1,\dots$)。すべての $n$ で $-1\le x_n\le1$ なので上にも下にも有界だが、増えたり減ったりするので単調でない。

実数の連続性

実数の連続性

上に有界な単調増加数列は収束する。下に有界な単調減少数列も収束する。

これは実数の基本性質の 1 つの言い表し方で、単調収束定理とも呼ばれる。本記事では証明せずに認める(実数を公理で定める流儀では、上限の存在と同値な公理として採用される。Leb26 Theorem 2.1.10、p. 55 は上限の存在から導いている)。
この性質のよいところは、極限の値を知らなくても収束が言えることである。$a_n$ の極限は、極限をとる前には名前のない数である。その数の存在を示すには、まさにこの性質が必要になる。なお、この性質は有理数だけの世界では成り立たない。そのことは $a_n$ 自身が示す(eの級数表示と無理数性の記事で扱う)。
後で使うので、「狭義単調な数列は極限を超えない」ことを確かめておく。

狭義単調な数列と極限の大小

狭義単調増加な数列 $(x_n)$ が $L$ に収束するならば、すべての $n$ で $x_n< L$ である。狭義単調減少な数列 $(y_n)$ が $L$ に収束するならば、すべての $n$ で $y_n>L$ である。

1 つ先の項と比べる

増加の場合を示す。$n$ を 1 つ固定する。

  • 単調増加なので、$m\ge n+1$ となるすべての $m$ で $x_{n+1}\le x_m$ である。
  • 不等式 $\le$ は極限をとっても保たれる(数列の極限の基本性質)。$m\to\infty$ として $x_{n+1}\le L$ である。
  • 狭義単調増加なので $x_n< x_{n+1}$ である。前の行と合わせて $x_n< x_{n+1}\le L$、すなわち $x_n< L$ である。
    減少の場合は、不等号の向きをすべて逆にすれば同じ議論になる。$\square$

準備:二項展開と 2 つの不等式

二項定理とその証明は 二項定理と組合せの恒等式 で扱う。

二項展開の形

$a_n$ を二項定理で展開すると、証明の骨組みになる形が現れる。

$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$ の展開

正の整数 $n$ について
$$ a_n=\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}\,c_{n,k},\qquad c_{n,k}:=\Bigl(1-\frac1n\Bigr)\Bigl(1-\frac2n\Bigr)\cdots\Bigl(1-\frac{k-1}n\Bigr) $$
である。ただし $k=0,1$ では $c_{n,k}$ の積に因子がないので $c_{n,0}=c_{n,1}=1$ とする。

二項係数を $n$ の冪で割る

段 1(二項定理)。二項定理より
$$ \Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n=\sum_{k=0}^n\binom nk\Bigl(\frac1n\Bigr)^k=\sum_{k=0}^n\binom nk\frac1{n^k} $$
である。
段 2(二項係数を書き下す)。$1\le k\le n$ について
$$ \binom nk=\frac{n(n-1)(n-2)\cdots(n-k+1)}{k!} $$
であり、分子は $n$ から $1$ ずつ減らした $k$ 個の数の積である。$k=0$ では $\binom n0=1=\frac1{0!}$ である($0!=1$)。
段 3($k$ 個の因子を 1 つずつ $n$ で割る)。分子の $k$ 個の因子それぞれを $n$ で割ると
$$ \frac{n(n-1)\cdots(n-k+1)}{n^k}=\frac nn\cdot\frac{n-1}n\cdots\frac{n-k+1}n=1\cdot\Bigl(1-\frac1n\Bigr)\cdots\Bigl(1-\frac{k-1}n\Bigr)=c_{n,k} $$
である。
段 4(まとめる)。段 2 と段 3 から $\binom nk\frac1{n^k}=\frac1{k!}c_{n,k}$ であり($k=0$ でも両辺は $1$)、段 1 に代入して主張を得る。$\square$

$n=3$ と $n=4$ で展開を確かめる

$n=3$ では $c_{3,2}=1-\frac13=\frac23$、$c_{3,3}=\bigl(1-\frac13\bigr)\bigl(1-\frac23\bigr)=\frac23\cdot\frac13=\frac29$ なので
$$ a_3=1+1+\frac1{2!}\cdot\frac23+\frac1{3!}\cdot\frac29=1+1+\frac13+\frac1{27}=\frac{64}{27} $$
である。直接計算した $\bigl(\frac43\bigr)^3=\frac{64}{27}$ と一致する。
$n=4$ では $c_{4,2}=\frac34$、$c_{4,3}=\frac34\cdot\frac24=\frac38$、$c_{4,4}=\frac34\cdot\frac24\cdot\frac14=\frac3{32}$ なので
$$ a_4=1+1+\frac12\cdot\frac34+\frac16\cdot\frac38+\frac1{24}\cdot\frac3{32}=2+\frac38+\frac1{16}+\frac1{256}=\frac{625}{256} $$
である。これも $\bigl(\frac54\bigr)^4=\frac{625}{256}$ と一致する。

$c_{n,k}$ の因子 $1-\frac jn$($1\le j\le k-1$)は、どれも $0$ 以上 $1$ 以下で、$n$ を大きくすると $1$ に近づく。したがって $a_n$ は「$\frac1{k!}$ に $1$ 以下の係数 $c_{n,k}$ を掛けて足したもの」であり、$n$ を大きくすると係数が $1$ に近づいていく。これが以下のすべての証明の骨組みである。
係数 c_{n,k} が n とともに 1 に近づく様子 係数 c_{n,k} が n とともに 1 に近づく様子
図 2 は $n=5,10,50$ での係数 $c_{n,k}$ を $k$ ごとに並べたものである。同じ $k$ で比べると、$n$ が大きいほど係数は大きく、$1$ に近い。

階乗と 2 の冪

階乗の下からの評価

$k\ge1$ なら $k!\ge2^{k-1}$ である。したがって、すべての $n\ge0$ について
$$ s_n:=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}<3 $$
である。

$k$ についての帰納法と等比数列の和

段 1($k!\ge2^{k-1}$)。$k$ についての数学的帰納法で示す。$k=1$ では $1!=1=2^0$ である。$k$ で $k!\ge2^{k-1}$ が成り立つとする。$k+1\ge2$ なので
$$ (k+1)!=(k+1)\cdot k!\ge2\cdot k!\ge2\cdot2^{k-1}=2^k $$
であり、$k+1$ でも成り立つ。
段 2($s_n<3$)。$n=0$ では $s_0=1<3$ である。$n\ge1$ なら、段 1 より $\frac1{k!}\le\frac1{2^{k-1}}$ なので、等比数列の和の公式を使って
$$ s_n=1+\sum_{k=1}^n\frac1{k!}\le1+\sum_{k=1}^n\frac1{2^{k-1}}=1+\frac{1-(\frac12)^n}{1-\frac12}=3-\frac1{2^{n-1}}<3 $$
である。$\square$

階乗と 2 の冪を比べる
$k$$1$$2$$3$$4$$5$
$k!$$1$$2$$6$$24$$120$
$2^{k-1}$$1$$2$$4$$8$$16$

$n=4$ では $s_4=1+1+\frac12+\frac16+\frac1{24}=\frac{65}{24}=2.7083\ldots$ であり、lem-eln-factorial の上からの評価 $3-\frac1{2^3}=2.875$ より小さい。

Bernoulli の不等式

整数乗の Bernoulli 不等式

$x>-1$、$x\ne0$ とし、$m$ を $2$ 以上の整数とする。このとき
$$ (1+x)^m>1+mx $$
である。

$m$ についての帰納法

段 1($m=2$)。$(1+x)^2=1+2x+x^2$ であり、$x\ne0$ なので $x^2>0$ である。よって $(1+x)^2>1+2x$ である。
段 2($m$ から $m+1$ へ)。$(1+x)^m>1+mx$ が成り立つとする。仮定 $x>-1$ より $1+x>0$ なので、両辺に $1+x$ を掛けても不等号の向きは変わらない。
$$ (1+x)^{m+1}=(1+x)^m(1+x)>(1+mx)(1+x)=1+(m+1)x+mx^2 $$
である。$m\ge2$、$x\ne0$ より $mx^2>0$ なので、右辺は $1+(m+1)x$ より大きい。よって $(1+x)^{m+1}>1+(m+1)x$ である。$\square$

Bernoulli の不等式の数値
  • $x=0.1$、$m=5$:$1.1^5=1.61051>1+5\times0.1=1.5$。
  • $x=-0.1$、$m=5$:$0.9^5=0.59049>1-5\times0.1=0.5$。
  • $x=\frac13$、$m=3$:$\bigl(\frac43\bigr)^3=\frac{64}{27}=2.37\ldots>1+3\cdot\frac13=2$。
    左辺と右辺の差は順に $0.11051$、$0.09049$、$0.370\ldots$ で、どれもおおよそ $\binom m2x^2$(順に $0.1$、$0.1$、$0.333\ldots$)である。二項定理で展開したときの $x^2$ の項を捨てた分だけ、右辺が小さくなっている。

主定理:$\left(1+\frac1n\right)^n$ は収束する

証明の前に、$a_3$ と $a_4$ を展開の項ごとに比べてみる。

$a_3$ と $a_4$ を項ごとに比べる

ex-eln-expand-3-4 の計算を並べると次のようになる。

項$k=0$$k=1$$k=2$$k=3$$k=4$
$a_3$ の項 $\frac1{k!}c_{3,k}$$1$$1$$\frac13=0.333\ldots$$\frac1{27}=0.037\ldots$(なし)
$a_4$ の項 $\frac1{k!}c_{4,k}$$1$$1$$\frac38=0.375$$\frac1{16}=0.0625$$\frac1{256}=0.0039\ldots$

$k=2,3$ の項は $a_4$ のほうが大きく、さらに $a_4$ には $k=4$ の正の項が加わる。よって $a_3< a_4$ である。一般の $n$ でも同じことが起こる、というのが次の定理の証明である。

$\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$ の単調性と有界性

数列 $a_n=\bigl(1+\frac1n\bigr)^n$ は狭義単調増加であり、すべての $n\ge1$ について
$$ a_n\le s_n<3\qquad\Bigl(s_n=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}\Bigr) $$
である。したがって $(a_n)$ は収束する。

展開の係数を $n$ と $n+1$ で比べる

方針:lem-eln-expand の展開で、$a_n$ と $a_{n+1}$ の係数を 1 項ずつ比べる。
段 1(係数の比較)。$2\le k\le n$ とし、$1\le j\le k-1$ とする。$\frac jn>\frac j{n+1}$ なので
$$ 1-\frac jn<1-\frac j{n+1} $$
である。また $j\le k-1\le n-1$ なので $1-\frac jn\ge1-\frac{n-1}n=\frac1n>0$ であり、左辺は正である。正の数どうしの不等式を $j=1,\dots,k-1$ について掛け合わせると
$$ c_{n,k}=\prod_{j=1}^{k-1}\Bigl(1-\frac jn\Bigr)<\prod_{j=1}^{k-1}\Bigl(1-\frac j{n+1}\Bigr)=c_{n+1,k} $$
である。$k=0,1$ では $c_{n,k}=c_{n+1,k}=1$ である。
段 2(項が 1 つ増える)。lem-eln-expand を $n+1$ に使うと
$$ a_{n+1}=\sum_{k=0}^{n}\frac1{k!}c_{n+1,k}+\frac1{(n+1)!}c_{n+1,n+1} $$
である。最後の項の係数 $c_{n+1,n+1}$ の因子 $1-\frac j{n+1}$($1\le j\le n$)はどれも $\frac1{n+1}$ 以上で正なので、最後の項は正である。
段 3($a_n< a_{n+1}$)。段 1 より、$\sum_{k=0}^n\frac1{k!}c_{n+1,k}$ の各項は $a_n$ の対応する項 $\frac1{k!}c_{n,k}$ 以上である。したがって $\sum_{k=0}^n\frac1{k!}c_{n+1,k}\ge a_n$ であり、段 2 の正の項が加わるので $a_{n+1}>a_n$ である。
段 4(上からの評価)。段 1 と同じく、$c_{n,k}$ の因子はどれも $0$ より大きく $1$ 以下なので $c_{n,k}\le1$ である。よって
$$ a_n=\sum_{k=0}^n\frac1{k!}c_{n,k}\le\sum_{k=0}^n\frac1{k!}=s_n $$
であり、lem-eln-factorial より $s_n<3$ である。
段 5(収束)。$(a_n)$ は単調増加で、$3$ で上から押さえられるので、axm-eln-monotone により収束する。$\square$

こうして、$a_n$ の極限が存在することがわかった。この極限に名前を付ける。

$e$ の定義

$$ e:=\lim_{n\to\infty}\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n $$
と定め、この数をネイピア数または自然対数の底という。

単調有界数列が収束することの根拠(実数の連続性)は 極限とε-δ で扱う。
thm-eln-converge の段 4 から $a_n<3$ なので、極限をとって $e\le3$ である。また $(a_n)$ は狭義単調増加なので、lem-eln-below-limit により $2=a_1< e$ である。次の節では、上からの評価を $e<3$ に、さらにいくらでも精密にする。

$e$ を上下から挟む

$a_n$ は $e$ の下からの近似である。上からの近似には、指数を 1 つ増やした $b_n=\bigl(1+\frac1n\bigr)^{n+1}$ を使う。

$b_n$ の値を手で計算する
  • $b_1=2^2=4$。
  • $b_2=\bigl(\frac32\bigr)^3=\frac{27}8=3.375$。
  • $b_3=\bigl(\frac43\bigr)^4=\frac{256}{81}=3.160\ldots$。
  • $b_4=\bigl(\frac54\bigr)^5=\frac{3125}{1024}=3.051\ldots$。
  • $b_5=\bigl(\frac65\bigr)^6=\frac{46656}{15625}=2.985984$。
    $b_n$ は減っている。たとえば $\frac{b_1}{b_2}=4\cdot\frac8{27}=\frac{32}{27}>1$ である。
$e$ を挟む 2 つの数列

数列 $b_n=\bigl(1+\frac1n\bigr)^{n+1}$ は狭義単調減少で $e$ に収束し、すべての $n\ge1$ について
$$ \Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n< e<\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^{n+1} $$
が成り立つ。特に $2< e<3$ である。

比を Bernoulli の不等式で評価する

方針:隣り合う 2 項の比 $\frac{b_{n-1}}{b_n}$ が $1$ より大きいことを、lem-eln-bernoulli で示す。
段 1(比を 1 つの式にまとめる)。$n\ge2$ とする。$1+\frac1{n-1}=\frac n{n-1}$、$1+\frac1n=\frac{n+1}n$ なので
$$ \frac{b_{n-1}}{b_n}=\frac{\bigl(\frac n{n-1}\bigr)^n}{\bigl(\frac{n+1}n\bigr)^{n+1}}=\Bigl(\frac n{n-1}\Bigr)^n\Bigl(\frac n{n+1}\Bigr)^n\cdot\frac n{n+1}=\Bigl(\frac{n^2}{n^2-1}\Bigr)^n\cdot\frac n{n+1} $$
である。2 つ目の等号では $\bigl(\frac n{n+1}\bigr)^{n+1}$ を $\bigl(\frac n{n+1}\bigr)^n\cdot\frac n{n+1}$ に分けた。3 つ目の等号では $(n-1)(n+1)=n^2-1$ を使った。さらに $\frac{n^2}{n^2-1}=1+\frac1{n^2-1}$ である。
段 2(Bernoulli の不等式)。$x=\frac1{n^2-1}$ は正($n\ge2$)で、$m=n\ge2$ なので、lem-eln-bernoulli により
$$ \Bigl(1+\frac1{n^2-1}\Bigr)^n>1+\frac n{n^2-1} $$
である。分母を大きくすると分数は小さくなるので $\frac n{n^2-1}>\frac n{n^2}=\frac1n$ であり、右辺は $1+\frac1n=\frac{n+1}n$ より大きい。
段 3(比は 1 より大きい)。段 1 と段 2 から
$$ \frac{b_{n-1}}{b_n}>\frac{n+1}n\cdot\frac n{n+1}=1 $$
であり、$b_n>0$ なので $b_{n-1}>b_n$ である。これが $n\ge2$ のすべてで成り立つので、$(b_n)$ は狭義単調減少である。
段 4(極限は $e$)。$b_n=a_n\bigl(1+\frac1n\bigr)$ であり、$a_n\to e$、$1+\frac1n\to1$ なので、積の極限の性質から $b_n\to e\cdot1=e$ である。
段 5(挟み込み)。$(a_n)$ は狭義単調増加で $e$ に収束し、$(b_n)$ は狭義単調減少で $e$ に収束する。lem-eln-below-limit により、すべての $n$ で $a_n< e$ かつ $b_n>e$ である。
段 6($2< e<3$)。$n=1$ として $e>a_1=2$、$n=5$ として $e< b_5=2.985984<3$ である($b_5$ は ex-eln-b-values で計算した)。$\square$

挟み込みで $e$ の値を決める

prop-eln-squeeze の上下の幅は $b_n-a_n=a_n\cdot\frac1n<\frac3n$ である($a_n<3$ を使った)。次の値は数値計算による。

$n$$a_n$$b_n$幅 $b_n-a_n$
$10$$2.5937\ldots$$2.8531\ldots$$0.259\ldots$
$100$$2.7048\ldots$$2.7318\ldots$$0.0270\ldots$
$1000$$2.71692\ldots$$2.71964\ldots$$0.00271\ldots$

$n=1000$ で $2.7169< e<2.7197$ となり、ようやく $e=2.71\ldots$ と小数第 2 位までが決まる。近づき方はとても遅い。数値では $e-a_n$ はおよそ $\frac e{2n}$($n=1000$ で $e-a_{1000}=0.001357\ldots$、$\frac e{2000}=0.001359\ldots$)であるが、本記事ではこの近似式は証明しない。もっと速く $e$ を計算する方法は、eの級数表示と無理数性の記事で扱う。

例と反例

本記事で使った仮定を 1 つずつ外すと、何が崩れるかをまとめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
数列が単調であること有界な数列は収束するex-eln-not-monotone
数列が有界であること単調な数列は収束するex-eln-not-bounded
$x>-1$Bernoulli の不等式ex-eln-bernoulli-fails
指数が一定であること底が $1$ に近づけば冪も $1$ に近づくex-eln-exponent-moves
反例:有界でも単調でなければ収束するとは限らない

$x_n=(-1)^n$ は $-1\le x_n\le1$ を満たすので有界だが、収束しない。
理由:ある数 $L$ に収束したとすると、十分大きいすべての $n$ で $|x_n-L|<\frac12$ となる。そのような $n$ を 1 つとると、$x_n$ と $x_{n+1}$ はどちらも $L$ からの距離が $\frac12$ 未満なので、2 つの差は $|x_n-x_{n+1}|\le|x_n-L|+|L-x_{n+1}|<1$ である。ところが実際には $|x_n-x_{n+1}|=|(-1)^n-(-1)^{n+1}|=2$ であり、矛盾する。
axm-eln-monotone の「単調」を外すと、結論は成り立たない。

反例:単調でも有界でなければ収束しない

$x_n=1+\frac12+\frac13+\cdots+\frac1n$(調和級数の部分和)は、正の数を足していくので狭義単調増加である。しかし上に有界でない。
手で確かめる:$x_4=1+\frac12+\bigl(\frac13+\frac14\bigr)\ge1+\frac12+\bigl(\frac14+\frac14\bigr)=2$ である。同じように
$$ x_8=x_4+\Bigl(\frac15+\frac16+\frac17+\frac18\Bigr)\ge2+4\cdot\frac18=2.5 $$
である。一般に、$\frac1{2^{i-1}+1}$ から $\frac1{2^i}$ までの $2^{i-1}$ 個の項はどれも $\frac1{2^i}$ 以上なので、その和は $2^{i-1}\cdot\frac1{2^i}=\frac12$ 以上である。これを $i=1,\dots,m$ について足すと $x_{2^m}\ge1+\frac m2$ となり、$m$ を大きくすればいくらでも大きくなる(数値では $x_4=2.083\ldots$、$x_8=2.717\ldots$)。
$(a_n)$ の場合に「$3$ で上から押さえられる」ことを示した lem-eln-factorial は、この違いを生む部分である。

反例:$x>-1$ を外すと Bernoulli の不等式は崩れる

$x=-4$、$m=3$ とすると
$$ (1+x)^3=(-3)^3=-27,\qquad1+3x=1-12=-11 $$
であり、$-27<-11$ なので $(1+x)^m>1+mx$ は成り立たない。lem-eln-bernoulli の証明の段 2 で「$1+x>0$ なので、両辺に $1+x$ を掛けても不等号の向きは変わらない」と述べた所が、$1+x=-3<0$ では使えない。
なお $m=2$ では $(1+x)^2-(1+2x)=x^2>0$ なので、$x<-1$ でも不等式は成り立つ。仮定 $x>-1$ が効くのは、帰納法で $1+x$ を掛ける段である。

反例:底が 1 に近づいても、指数も動くと冪は 1 に近づかない

$1+\frac1n\to1$ なので、「$a_n=\bigl(1+\frac1n\bigr)^n$ は $1^n=1$ に近づく」と考えたくなるが、これは誤りである。実際、$n=1000$ では
$$ 1.001^{1000}=2.7169\ldots $$
である(数値計算)。
指数を一定の $3$ にした $\bigl(1+\frac1n\bigr)^3$ なら、積の極限の性質から $1\cdot1\cdot1=1$ に近づく($n=1000$ で $1.001^3=1.003003001$)。$a_n$ では、底が $1$ に近づく速さと、指数が大きくなる速さがつり合っていて、極限が $1$ にならない。このような「$1$ の $\infty$ 乗」の形の極限は 1の∞乗型の極限の記事で扱う。

さらに先へ

  • 級数と無理数性。 lem-eln-expand の展開で、項の数を固定してから $n\to\infty$ とすると、$e=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}$ も示せる。この級数は $a_n$ よりずっと速く $e$ に近づき、その近づき方の速さから $e$ が無理数であることが従う。→ eの級数表示と無理数性
  • 微分。 $e$ を底とする指数関数 $e^x$ は、微分しても変わらない。そうなる底は $e$ だけである。→ 指数関数の微分
  • 実数の完備性。 axm-eln-monotone は、実数の完備性と呼ばれる性質の 1 つの形である。用語解説の ネイピア数 は、級数 $\sum\frac1{k!}$ を $e$ の定義に採っている。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する