円順列とじゅず順列(circular permutations)とは、ものを円周上に並べ、回して重なる並べ方を同じとみなしたもの(円順列)と、さらに裏返して重なるものも同じとみなしたもの(じゅず順列)である。異なる $n$ 個のものの円順列は $(n-1)!$ 通りで、これは $n!$ 通りの並べ方が、回転で移り合う $n$ 個ずつの類に分かれることによる。じゅず順列は $n\ge3$ のとき $\frac{(n-1)!}{2}$ 通りで、裏返しがどの円順列も別の円順列に移すことによる。同じ色の玉を含むと類の大きさがそろわず、一般には $n$ で割れない(色ごとの個数の最大公約数が $1$ なら割ってよい)。じゅず順列でも、裏返しで変わらない円順列は組にならず、単純には 2 で割れない。大学では巡回群・二面体群の作用の軌道として見直され、Burnside の補題につながる。
4 人 A, B, C, D が一列に並ぶ並び方は $4!=24$ 通りある。では、丸いテーブル(円卓)のまわりの 4 つの席に座る座り方は何通りか。円卓では、全員が同じ向きに 1 席ずつずれても、だれの右隣がだれかという関係は変わらない。そこで、全員を回して重なる座り方は同じとみなす。このように数えた並べ方を 円順列 という。高校では「$n$ 人の円順列は $(n-1)!$ 通り」と習う。
A の席を上に決めてしまう。残りの 3 つの席に、上から時計回りに B, C, D をどう並べるかで座り方が決まる。並べ方は $3!=6$ 通りで、上から時計回りに読むと
$$
ABCD,\quad ABDC,\quad ACBD,\quad ACDB,\quad ADBC,\quad ADCB
$$
である。一列に並ぶ $24$ 通りと比べると、$24\mathbin{÷}4=6$ で、ちょうど $\frac14$ になっている。
首飾りのように、輪を裏返してもよいときは、さらに数が減る。異なる $n$ 個の玉を糸に通して輪にしたものを じゅず順列 という。高校では「$n\ge3$ のとき $\dfrac{(n-1)!}{2}$ 通り」と習う。
異なる 4 個の玉 A, B, C, D で輪を作る。ex-cp-table4 の 6 通りのうち、裏返すと重なるものが 2 つずつ組になる。A を上に置いたまま左右を入れ替えると、時計回りの順が逆になるので
$$
ABCD \leftrightarrow ADCB,\qquad ABDC \leftrightarrow ACDB,\qquad ACBD \leftrightarrow ADBC
$$
の 3 組になる。じゅず順列は $\dfrac{6}{2}=3$ 通りで、$\dfrac{(4-1)!}{2}=3$ と一致する。
この記事で答える問いは次の 5 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 回して重なるものは同じとみなす | 回転で移り合う並べ方の類 | 巡回群の作用の軌道(群作用) |
| 1 人を固定して $(n-1)!$ | どの類にも「A が上の席」の並べ方がちょうど 1 つ | 軌道の代表元 |
| $n!$ を $n$ で割る | どの類もちょうど $n$ 個の並べ方からなる | 自由な作用では軌道の大きさは群の位数 |
| じゅず順列は 2 で割る | 裏返しで円順列が 2 つずつ組になる | 二面体群 の作用 |
| 同じ色を含むと割り算が崩れる | 類の大きさがそろわない | 軌道の大きさが違う。Burnsideの補題 |
| 同じ色を含むじゅず順列は単純に 2 で割れない | 裏返しで変わらない円順列は組にならない | 二面体群の軌道の大きさが違う |
円周上に等しい間隔で $n$ 個の席があり、上の席から時計回りに $0,1,2,\dots,n-1$ と番号をつける。席 $i$ に置くものを $a_i$ と書き、並べ方を $(a_0,a_1,\dots,a_{n-1})$ と表す。ex-cp-table4 の「$ABCD$」は、$(a_0,a_1,a_2,a_3)=(A,B,C,D)$ のことである。
席の番号は $n$ で割った余りで考える。たとえば $n=4$ なら、席 $4$ は席 $0$、席 $-1$ は席 $3$ のことである。
$n$ を正の整数とし、$n$ 個のものを円周上の $n$ 個の席に 1 つずつ置く。並べ方 $a=(a_0,a_1,\dots,a_{n-1})$ に対し、全員を 1 席ずつずらした並べ方
$$
r(a):=(a_1,a_2,\dots,a_{n-1},a_0)
$$
を $a$ の 回転 という。$r(a)$ の席 $i$ には、$a$ の席 $i+1$ にあったものが来る。$r$ を $m$ 回くり返したものを $r^m$ と書く($r^0(a)=a$)。$r^m(a)$ の席 $i$ には $a_{i+m}$ がある(添字は $n$ で割った余り)。
2 つの並べ方 $a,b$ について、ある整数 $m$($0\le m\le n-1$)で $b=r^m(a)$ となるとき、$a$ と $b$ は 円順列として同じ という。円順列として同じ並べ方をひとまとめにしたものを、$a$ の 類 と呼び $C(a)$ と書く。類の 1 つ 1 つを 円順列 という。
$r^n(a)$ の席 $i$ には $a_{i+n}=a_i$ があるので、$r^n(a)=a$ である。$n$ 回ずらすと 1 周して元に戻る。
A, B, C の一列の並べ方は $3!=6$ 通りある。$a=(A,B,C)$ を回すと
$$
r(a)=(B,C,A),\qquad r^2(a)=(C,A,B),\qquad r^3(a)=(A,B,C)=a
$$
である。$(A,C,B)$ を回すと $(C,B,A)$、$(B,A,C)$ になる。6 通りは
$$
C(ABC)=\{ABC,\ BCA,\ CAB\},\qquad C(ACB)=\{ACB,\ CBA,\ BAC\}
$$
の 2 つの類に分かれ、どちらも 3 個ずつからなる。3 人の円順列は 2 通りで、$(3-1)!=2$ と一致する。
並べ方 (A, B, C, D) を 1 席ずつ回すと 4 つの並べ方ができ、これが 1 つの円順列(類)になる
図 1 は、$(A,B,C,D)$ を回してできる 4 つの並べ方である。どれも「A の時計回りの次が B、その次が C、その次が D」という関係を保っている。
「円順列として同じ」は、ものを類に分ける正しい分け方になっている。つまり、どの並べ方もちょうど 1 つの類に入る。
次の 3 つが成り立つ。
$n$ を正の整数とする。異なる $n$ 個のものの円順列は $(n-1)!$ 通りある。
方針:どの類にも「特定のもの X が席 $0$ にある並べ方」がちょうど 1 つ入ることを示す。すると、類の個数は「X が席 $0$ にある並べ方」の個数に等しい。
段 1(X が席 $0$ に来る並べ方が類の中にある)。並べ方 $a$ で X が席 $j$ にあるとする。$r^j(a)$ の席 $0$ には $a_{0+j}=a_j=\mathrm{X}$ がある。よって、類 $C(a)$ には X が席 $0$ にある並べ方 $r^j(a)$ が入っている。
段 2(そのような並べ方は類に 1 つだけ)。同じ類に、X が席 $0$ にある並べ方 $b$ と $c$ があるとする。同じ類なので $c=r^m(b)$($0\le m\le n-1$)と書ける。$c$ の席 $0$ には $b_m$ があり、それが X である。一方 $b$ の席 $0$ も X である。$n$ 個のものはすべて異なるので、X は $b$ の中に 1 回しか現れず、$b_m=b_0$ から $m=0$ である。よって $c=r^0(b)=b$ である。
段 3(数える)。段 1・段 2 から、類と「X が席 $0$ にある並べ方」は 1 対 1 に対応する。X を席 $0$ に置いたあと、残りの $n-1$ 個を席 $1,\dots,n-1$ に並べる方法は $(n-1)!$ 通りある。よって円順列は $(n-1)!$ 通りである。$\square$
ex-cp-table4 で「A の席を上に決めた」のは、この証明の段 1〜段 3 を実際に行ったことになる。
もう 1 つの見方は、$n!$ 通りの並べ方を類に分け、どの類も同じ大きさであることを使うものである。
$n$ 個のものがすべて異なるとき、どの並べ方 $a$ についても、$n$ 個の並べ方 $r^0(a),r^1(a),\dots,r^{n-1}(a)$ はすべて異なる。したがって類 $C(a)$ はちょうど $n$ 個の並べ方からなる。
方針:2 つが同じだと仮定して、同じものが 2 回現れることを導く。
段 1。$0\le j< k\le n-1$ で $r^j(a)=r^k(a)$ だったとする。両辺をさらに $n-k$ 回ずらすと、$r^{j+n-k}(a)=r^n(a)=a$ となる。$m:=j+n-k$ とおくと、$j< k$ から $m\le n-1$、$j\ge0$ と $k\le n-1$ から $m\ge1$ である。
段 2。$r^m(a)=a$ の席 $0$ を比べると、左辺の席 $0$ には $a_m$、右辺の席 $0$ には $a_0$ があるので $a_m=a_0$ である。$1\le m\le n-1$ なので席 $m$ と席 $0$ は別の席であり、同じものが 2 つの席にあることになる。これは $n$ 個のものがすべて異なることに反する。
段 3。よって $r^0(a),\dots,r^{n-1}(a)$ はすべて異なる。def-cp-circular により $C(a)$ はこの $n$ 個からなるので、ちょうど $n$ 個である。$\square$
lem-cp-class-size から thm-cp-count がもう一度出る。$n!$ 通りの並べ方は、rem-cp-equivalence により互いに重ならない類に分かれ、どの類もちょうど $n$ 個からなる。類が $q$ 個なら $n!=q\times n$ なので
$$
q=\frac{n!}{n}=(n-1)!
$$
である。「全体を同じ大きさのかたまりに分けると、かたまりの個数は全体÷かたまりの大きさ」という考え方は、組合せの数 $\dbinom nk=\dfrac{n!}{k!\,(n-k)!}$ を導くときにも使う(場合の数の数え方の体系)。
$n=3,4,5,6$ のとき、一列の並べ方 $n!$、類の大きさ $n$、円順列の数 $(n-1)!$ は次のとおりである。
| $n$ | $n!$ | 類の大きさ | 円順列 $(n-1)!$ |
|---|---|---|---|
| $3$ | $6$ | $3$ | $2$ |
| $4$ | $24$ | $4$ | $6$ |
| $5$ | $120$ | $5$ | $24$ |
| $6$ | $720$ | $6$ | $120$ |
どの行でも $n!=(\text{類の大きさ})\times(\text{円順列の数})$ となっている。
大学の言葉では、次のようにいう。回転 $r^0,r^1,\dots,r^{n-1}$ の全体は、「$r^j$ のあとに $r^k$ を行うと $r^{j+k}$」という積で 巡回群 になり、並べ方の集合に働く(群作用)。類はこの作用の 軌道 である。lem-cp-class-size は、「すべて異なるものを並べるときは、回転 $r^m$($1\le m\le n-1$)で動かない並べ方がない」ことを示しており、このような作用では、どの軌道の大きさも群の要素の個数 $n$ に等しい。回転や鏡映を行列で表す見方は 回転・鏡映と行列の群 で扱う。
輪を裏返すと、時計回りの順が反時計回りになる。席 $0$ を上に置いたまま裏返すと、席 $i$ にあったものは席 $-i$ に移る(図 2)。
$n$ 個のものの並べ方 $a=(a_0,a_1,\dots,a_{n-1})$ に対し、
$$
s(a):=(a_0,a_{n-1},a_{n-2},\dots,a_1)
$$
を $a$ の 裏返し という。$s(a)$ の席 $i$ には $a_{-i}$ がある(添字は $n$ で割った余り)。
2 つの並べ方 $a,b$ について、$b$ が $a$ に回転 $r$ と裏返し $s$ を何回か(どんな順でも)行って得られるとき、$a$ と $b$ は じゅず順列として同じ という。じゅず順列として同じ並べ方をひとまとめにしたものの 1 つ 1 つを じゅず順列 という。
並べ方 (A, B, C, D) と、それを裏返した (A, D, C, B)。時計回りの順が逆になる
回転と裏返しをまぜて何回行っても、結果は「回転だけ」か「裏返してから回転」のどちらかにまとまる。そのための計算規則が次である。
どの並べ方 $a$ についても $s(r(a))=r^{n-1}(s(a))$ である。つまり、回してから裏返すことは、裏返してから逆向きに 1 席回す($n-1$ 回回す)ことと同じである。
方針:両辺の席 $i$ にあるものを、定義にしたがって計算する。
段 1(左辺)。$b:=r(a)$ とおくと、def-cp-circular により $b_j=a_{j+1}$ である。$s(b)$ の席 $i$ には、def-cp-necklace により $b_{-i}$ がある。$b_{-i}=a_{-i+1}$ なので、左辺の席 $i$ には $a_{1-i}$ がある。
段 2(右辺)。$c:=s(a)$ とおくと $c_j=a_{-j}$ である。$r^{n-1}(c)$ の席 $i$ には $c_{i+n-1}$ があり、添字を $n$ で割った余りで考えると $c_{i+n-1}=c_{i-1}=a_{-(i-1)}=a_{1-i}$ である。
段 3。両辺の席 $i$ にはどちらも $a_{1-i}$ があるので、両辺は等しい。$\square$
lem-cp-sr を何回も使うと、$s$ を右へ送ることができる。また $s(s(a))$ の席 $i$ には $a_{-(-i)}=a_i$ があるので、$s$ を 2 回行うと元に戻る。したがって、回転と裏返しを何回まぜても、結果は $r^k(a)$ か $r^k(s(a))$($0\le k\le n-1$)のどちらかの形になる。つまり、$a$ とじゅず順列として同じ並べ方の全体は、2 つの類の和
$$
C(a)\cup C(s(a))
$$
である。じゅず順列の数を求めるには、$C(a)$ と $C(s(a))$ が同じ類になることがあるかを調べればよい。
$n\ge3$ とし、$n$ 個のものはすべて異なるとする。このとき、どの並べ方 $a$ についても $C(s(a))\ne C(a)$ である。つまり、裏返した並べ方は、元の並べ方をどう回しても得られない。
方針:同じ類だと仮定して、$n\le2$ を導く(背理法)。
段 1(式にする)。$C(s(a))=C(a)$ とすると、$s(a)$ は $C(a)$ に入るので、ある $k$($0\le k\le n-1$)で $s(a)=r^k(a)$ である。両辺の席 $i$ を比べると、左辺は $a_{-i}$、右辺は $a_{i+k}$ なので、すべての $i$ について
$$
a_{-i}=a_{i+k}
$$
である。
段 2(席の番号の式にする)。$n$ 個のものはすべて異なるので、同じものがある席は 1 つしかない。よって、段 1 の等式から、すべての $i$ について席 $-i$ と席 $i+k$ は同じ席である。つまり、$-i$ と $i+k$ は $n$ で割った余りが等しい。
段 3($i=0$ と $i=1$ を代入する)。$i=0$ とすると、$0$ と $k$ は $n$ で割った余りが等しく、$0\le k\le n-1$ なので $k=0$ である。$i=1$ とすると、$-1$ と $1+k=1$ は $n$ で割った余りが等しい。つまり $1-(-1)=2$ が $n$ の倍数である。
段 4(矛盾)。$2$ が $n$ の倍数になる正の整数 $n$ は $1$ と $2$ だけである。これは $n\ge3$ に反する。よって $C(s(a))\ne C(a)$ である。$\square$
$n\ge3$ とする。異なる $n$ 個のもののじゅず順列は $\dfrac{(n-1)!}{2}$ 通りある。
方針:$(n-1)!$ 通りの円順列が、裏返しで 2 つずつの組に分かれることを示す。
段 1(組の作り方)。円順列 $C(a)$ に円順列 $C(s(a))$ を対応させる。$b$ が $C(a)$ に入るなら $b=r^m(a)$ で、lem-cp-sr をくり返し使うと $s(b)$ は $r^k(s(a))$ の形になり、$C(s(a))$ に入る。よって $C(s(b))=C(s(a))$ で、対応の行き先は $C(a)$ の中からどの並べ方を選んでも同じである。
段 2(組は 2 つずつ)。$s(s(a))=a$ なので、$C(s(a))$ に対応するのは $C(a)$ である。つまり $C(a)$ と $C(s(a))$ は互いに相手に対応する。lem-cp-mirror により $C(s(a))\ne C(a)$ なので、この 2 つは異なる。よって、円順列全体は、互いに重ならない 2 個ずつの組に分かれる。
段 3(数える)。lem-cp-sr の後に見たとおり、1 つのじゅず順列は $C(a)\cup C(s(a))$、つまり 1 つの組にあたる。組の個数は、thm-cp-count の $(n-1)!$ を 2 で割った $\dfrac{(n-1)!}{2}$ である。$\square$
大学の言葉では、回転 $r^k$ と「裏返してから回す」$r^k s$ の $2n$ 個の操作は 二面体群 と呼ばれる群になる。lem-cp-sr の $sr=r^{n-1}s$ は、この群の積の規則である。lem-cp-class-size と lem-cp-mirror を合わせると、$n\ge3$ ですべて異なるものを並べるときは、どの軌道もちょうど $2n$ 個の並べ方からなり、じゅず順列の数は $\dfrac{n!}{2n}=\dfrac{(n-1)!}{2}$ になる。
thm-cp-count の証明の「1 つを固定する」考え方は、条件つきの円順列でもそのまま使える。
男性 3 人 a, b, c と女性 3 人 X, Y, Z が、6 席の円卓に男女交互に座る座り方を数える。
段 1。男性 a を席 $0$ に固定する(prf-cp-count の段 1・段 2 により、どの座り方の類にも a が席 $0$ のものがちょうど 1 つある)。
段 2。交互に座るので、男性は席 $0,2,4$、女性は席 $1,3,5$ に座る。残りの男性 b, c を席 $2,4$ に並べる方法は $2!=2$ 通りである。
段 3。女性 3 人を席 $1,3,5$ に並べる方法は $3!=6$ 通りである。
よって $2\times6=12$ 通りである。全部の類を書き出して数えても $12$ 通りになる。
6 人 A, B, C, D, X, Y が円卓に座るとき、X と Y が隣り合う座り方を数える。
段 1。X と Y をひとかたまりにして 1 人とみなすと、5 人の円順列になり、$(5-1)!=24$ 通りである。
段 2。かたまりの中で X と Y の順(時計回りに X, Y か Y, X か)が $2$ 通りある。
よって $24\times2=48$ 通りである。6 人の円順列は全部で $5!=120$ 通りなので、X と Y が隣り合わない座り方は $120-48=72$ 通りである。どちらの数も、全部の類を書き出して確かめた。
5 人から 3 人を選び、3 席の円卓に座らせる方法を数える。選び方が $\dbinom53=10$ 通り、選んだ 3 人の円順列が $(3-1)!=2$ 通りなので、$10\times2=20$ 通りである。
別の数え方:5 人から 3 人を選んで一列に並べる順列は ${}_5\mathrm{P}_3=5\cdot4\cdot3=60$ 通りで、lem-cp-class-size と同じ理由で、回して重なるものが $3$ 個ずつ類になる。$60\mathbin{÷}3=20$ で一致する。
ここで使った $\dbinom53$ や、あとの ex-cp-burnside の $\dbinom63$ は 二項係数 であり、その値の求め方や性質は 二項定理と組合せの恒等式 で扱う。
同じ色の玉を含むときは、$n$ で割る方法がそのままでは使えない。lem-cp-class-size の証明の段 2 で「同じものが 2 つの席にあることはない」を使っており、同じ色の玉があるとこの段が成り立たないからである。
赤玉 2 個と白玉 2 個を円周上の 4 つの席に置く。同じ色の玉は区別しない。一列に並べる方法は、4 つの席から赤玉の席 2 つを選ぶので $\dbinom42=6$ 通りある。これを $4$ で割ると $1.5$ になり、整数にならない。
実際に類に分けると(図 3)、
$$
C(RRWW)=\{RRWW,\ RWWR,\ WWRR,\ WRRW\},\qquad C(RWRW)=\{RWRW,\ WRWR\}
$$
の 2 通りである(R は赤、W は白)。$RWRW$ は 2 席回すと自分自身に戻るので、その類は 2 個の並べ方しか含まない。類の大きさが $4$ と $2$ でそろわないので、全体を $4$ で割っても類の個数は出ない。
赤 2 個・白 2 個の並べ方 6 通りは、4 個からなる類と 2 個からなる類に分かれる
では、どんなときなら $n$ で割ってよいか。色ごとの個数の最大公約数(整数の割り算と互除法)が $1$ なら割ってよい。
$m$ 種類の色の玉が、それぞれ $k_1,k_2,\dots,k_m$ 個($k_1+\cdots+k_m=n$、各 $k_j\ge1$)ある。同じ色の玉は区別しない。$k_1,\dots,k_m$ の最大公約数が $1$ なら、どの並べ方 $a$ についても類 $C(a)$ はちょうど $n$ 個の並べ方からなり、円順列の数は
$$
\frac1n\cdot\frac{n!}{k_1!\,k_2!\cdots k_m!}
$$
である。
方針:ある回転 $r^t$($1\le t\le n-1$)で $r^t(a)=a$ となる並べ方があると仮定し、すべての $k_j$ が $2$ 以上の同じ数 $L$ の倍数になることを示す。これは最大公約数が $1$ であることに反する。
段 1(席を列に分ける)。$r^t(a)=a$ とする。席 $i$ を比べると $a_{i+t}=a_i$ なので、席 $i$、$i+t$、$i+2t$、…(番号は $n$ で割った余り)には同じ色の玉がある。席 $i$ から $t$ ずつ進んで初めて席 $i$ に戻るまでの席の列を「席 $i$ の列」と呼ぶ。
段 2(列の長さはすべて $L$)。席 $i$ から $h$ 歩進むと席 $i+ht$ に着く。これが席 $i$ に戻るのは、$ht$ が $n$ の倍数のときであり、この条件は $i$ によらない。そこで、$ht$ が $n$ の倍数になる最小の正の整数 $h$ を $L$ とすると、どの列もちょうど $L$ 個の席からなる。$t$ は $n$ の倍数でないので $h=1$ では戻らず、$L\ge2$ である。
段 3(列は重ならない)。席 $j$ が席 $i$ の列に入っているとし、$j=i+ht$ とする。席 $j$ から $g$ 歩進んだ席は $i+(h+g)t$ で、席 $i$ の列の席である。したがって席 $j$ の列は席 $i$ の列に含まれ、どちらも $L$ 個の席からなるので同じ列である。よって、2 つの列は同じか、共通の席をもたないかのどちらかであり、$n$ 個の席は長さ $L$ の列に分かれる。
段 4(個数を数える)。段 1 により、1 つの列の席にはすべて同じ色の玉がある。よって、色 $j$ の玉がある席は、いくつかの列をまるごと合わせたものであり、その個数 $k_j$ は $L$ の倍数である。これがすべての $j$ で成り立つので、$L$ は $k_1,\dots,k_m$ の公約数である。最大公約数が $1$ なので $L=1$ となり、段 2 の $L\ge2$ に反する。
段 5(結論)。よって $1\le t\le n-1$ で $r^t(a)=a$ となることはない。prf-cp-class-size の段 1 と同じく、$r^j(a)=r^k(a)$($0\le j< k\le n-1$)なら $r^{j+n-k}(a)=a$ となって今示したことに反するので、$r^0(a),\dots,r^{n-1}(a)$ はすべて異なり、類はちょうど $n$ 個からなる。一列の並べ方は $\dfrac{n!}{k_1!\cdots k_m!}$ 通り(同じものを含む順列と多項定理)で、それが $n$ 個ずつの類に分かれるので、類の個数は $n$ で割った数である。$\square$
最大公約数が $1$ でないときは、割り算の代わりに、各回転で動かない並べ方の個数を平均する Burnsideの補題 を使う。その証明と、正方形の頂点の塗り分けの例は 期待値の線形性と数え上げ にある。
赤 3 個・白 3 個を 6 席の円周に置く($\gcd(3,3)=3$)。6 つの回転 $r^0,\dots,r^5$ のそれぞれで動かない並べ方を数える。
同じ色の玉を含むときは、じゅず順列の「2 で割る」もそのままでは使えない。lem-cp-mirror の証明の段 2 で「同じものがある席は 1 つしかない」を使っており、同じ色の玉があると、裏返しても同じ円順列に戻る並べ方、つまり $C(s(a))=C(a)$ となる $a$ が現れうるからである。このような円順列を 裏返しで変わらない円順列 と呼ぶ。裏返しで変わらない円順列は相手と組にならないので、2 で割ってはいけない。
$n$ 個のもの(同じものを含んでもよい)を円周上に並べる。円順列が $N$ 通りあり、そのうち裏返しで変わらない円順列が $F$ 通りあるとする。このとき、じゅず順列は
$$
\frac{N+F}{2}
$$
通りある。
方針:prf-cp-bead の対応 $C(a)\mapsto C(s(a))$ を、lem-cp-mirror を使わずに調べる。
段 1(対応はきちんと決まる)。prf-cp-bead の段 1 は lem-cp-sr だけを使っており、$n$ 個のものがすべて異なることは使っていない。lem-cp-sr とその証明も、席の中身を比べるだけで、すべて異なることを使っていない。よって同じものを含むときも、円順列 $C(a)$ に円順列 $C(s(a))$ を対応させることができる。$s(s(a))=a$ なので、$C(s(a))$ に対応するのは $C(a)$ である。
段 2(2 種類に分かれる)。どの円順列 $C(a)$ も、次のどちらか一方にあたる。
$n\ge3$ で $n$ 個のものがすべて異なるときは、lem-cp-mirror により $F=0$ で、prop-cp-bead-general は thm-cp-bead の $\dfrac{(n-1)!}{2}$ に戻る。$n=1,2$ では円順列が $1$ 通りで、それが裏返しで変わらないので $\dfrac{1+1}{2}=1$ 通りとなり、ex-cp-small-n と一致する。
ex-cp-coprime (2) の 3 通りの円順列を、青(B)を上の席に置いたまま、上から時計回りに $BRRW$、$BRWR$、$BWRR$ と書く。裏返し $s$ は上の席を動かさず、残りの 3 席の順を逆にするので
$$
BRRW\leftrightarrow BWRR,\qquad BRWR\leftrightarrow BRWR
$$
となる。$BRRW$ と $BWRR$ は組になり、$BRWR$(白が青の真向かいにある)は裏返しても自分自身に戻る。$N=3$、$F=1$ なので、じゅず順列は
$$
\frac{3+1}{2}=2
$$
通りである。「白が青の隣にある輪」と「白が青の向かいにある輪」の 2 通りで、$\dfrac{N}{2}=\dfrac32$ ではない。全部の並べ方を書き出して、回転と裏返しで移り合うものをまとめても 2 通りになる。
ex-cp-burnside の 4 通りの円順列 $RRRWWW$、$RRWRWW$、$RRWWRW$、$RWRWRW$ を裏返す。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $n\ge3$ | じゅず順列は $\dfrac{(n-1)!}{2}$ 通り | ex-cp-small-n |
| $n$ 個のものがすべて異なる | どの類も $n$ 個からなり、$n!$ を $n$ で割ればよい | ex-cp-rrww、ex-cp-burnside |
| $n$ 個のものがすべて異なる(じゅず順列) | 裏返しで円順列が 2 つずつ組になり、円順列の数を 2 で割ればよい | ex-cp-bead-rrwb、ex-cp-bead-rrrwww |
| 裏返せる(首飾り・輪) | 裏返しで重なるものを同じとみなしてよい | ex-cp-no-flip |
| 席に区別がない | 回転で重なるものを同じとみなしてよい | ex-cp-marked-seat |
$n=2$ のとき、玉 A, B の輪は 1 通りしかないが、$\dfrac{(2-1)!}{2}=\dfrac12$ は整数ですらない。$n=2$ では $a=(A,B)$ の裏返しは $s(a)=(a_0,a_1)=(A,B)=a$ で、裏返しても変わらない。lem-cp-mirror の証明の段 4 で $n\ge3$ を使っており、$n=2$ では「$2$ が $n$ の倍数」が実際に起こる。円順列 $1$ 通りが組にならず、2 で割れない。$n=1$ でも同じく $1$ 通りで、公式は $\dfrac12$ を与える。
4 人が円卓に座るとき、上から時計回りに $ABCD$ と $ADCB$ は別の座り方である。$ABCD$ では A の時計回りの隣が B、$ADCB$ では D である。人は円卓の中心を向いて座り、テーブルを裏返すことはできないので、座り方は円順列の $3!=6$ 通りで、じゅず順列の $3$ 通りではない。実際、$ADCB$ を回した 4 つ $ADCB$、$DCBA$、$CBAD$、$BADC$ はどれも $ABCD$ の類(図 1)に入っていない。
円卓の 4 席のうち 1 席が議長席と決まっているとき、4 人の座り方は $4!=24$ 通りである。回すと議長席に座る人が変わるので、回して重なる座り方も別と数える。円順列は「席に区別がない」ときの数え方であり、何を同じとみなすかは問題の状況で決まる。
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