最大値・最小値の定理

同義語:extreme value theorem最大値最小値の定理最大値の定理minimum-maximum theorem

概要

最大値・最小値の定理(extreme value theorem)とは、閉区間 $[a,b]$ で連続な実数値関数は、その区間で最大値と最小値をとるという定理である。証明は上限の存在(実数の連続性)にもとづき、区間が端点を含まない、有界でない、関数が連続でない、数の範囲が有理数だけ、のどれか 1 つでも欠けると最大値が存在しないことがある。順序体の上ではこの性質は実数の連続性と同値であり、有界閉集合やコンパクト空間上の連続関数、遠くで値が大きくなる関数の最小値へと一般化される。微分で最大・最小を求める議論や Rolle の定理、微分積分学の基本定理の証明の出発点になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 連続関数, 上限と下限, 実数の連続性

閉区間で連続な関数は、その区間で最大値と最小値をとる。これが 最大値・最小値の定理 である。高校数学では証明せずに認めて使い(最大値・最小値の定理(高校数学) の記事を参照)、微分で関数の最大・最小を求めるときに「候補を比べてよい」理由、平均値の定理や Rolle の定理の証明、積分で表された関数の微分、積分の値の見積もりなど、多くの議論の出発点になる。
定理が主張するのは最大値をとる点が「ある」ことであり、それがどこにあるかは教えない。それでも存在が分かっていれば、微分係数が $0$ になる点と端点だけを調べればよい、といった絞り込みができる。逆に、区間が閉じていない、関数が連続でない、数の範囲が有理数だけ、といった仮定のどれか 1 つが欠けると、最大値は存在しないことがある。
この記事では、上限の存在(実数の連続性)だけから定理を証明し(thm-evt-main)、仮定の役割を反例の表で確かめる。さらに、定義域が有界でなくても「遠くで値が大きくなる」関数なら最小値をとること(thm-evt-coercive)を示し、多変数やコンパクト空間への一般化、無限次元で成り立たない例を述べる。

定義

最大値・最小値

集合 $X$ 上の実数値関数 $f\colon X\to\mathbb{R}$ について、ある $p\in X$ があってすべての $x\in X$ で $f(x)\le f(p)$ となるとき、$f$ は $p$ で 最大値 $f(p)$ をとるといい、$p$ を 最大点 という。すべての $x\in X$ で $f(q)\le f(x)$ となる $q$ で $f$ がとる値を 最小値、$q$ を 最小点 という。

最大値は値の集合 $f(X)$ の最大元であり、あれば $f(X)$ の上限 $\sup f(X)$ に等しい(上限と下限 の記事の命題「最大元と上限の関係」)。逆に上限があっても、それが $f$ の値として実際にとられるとは限らない。たとえば $(0,1)$ 上の $f(x)=x$ では $\sup f=1$ だが、$f(x)=1$ となる $x$ はない。最大値・最小値の定理の内容は、「閉区間上の連続関数では、上限が有限で、しかも値としてとられる」ということである。

定理と証明

証明は 2 段に分かれる。まず関数が有界であることを示し、次に上限が値としてとられることを示す。どちらの段でも、実数の連続性(上に有界な空でない集合は上限をもつ)を 1 回ずつ使う。

閉区間で連続な関数は有界

$a\le b$ とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。このとき $f$ は有界である。すなわち、すべての $x\in[a,b]$ で $\lvert f(x)\rvert\le B$ となる実数 $B$ がある。

上に有界であることを示す(下に有界であることは $-f$ に当てはめればよい)。
$$ S:=\{x\in[a,b]\mid f\text{ は }[a,x]\text{ で上に有界}\} $$
とおく。$f$ は $[a,a]=\{a\}$ で上に有界なので $a\in S$ であり、$S$ は $b$ を上界にもつ。よって上限 $c:=\sup S$ があり、$a\le c\le b$ である。
$f$ の $c$ での連続性を $\varepsilon=1$ に当てて $\delta>0$ をとると、$x\in[a,b]$、$\lvert x-c\rvert<\delta$ なら $f(x)< f(c)+1$ である。$c-\delta< c=\sup S$ なので、$c-\delta< s$ となる $s\in S$ がある($s\le c$ である)。$t:=\min\{c+\frac\delta2,b\}$ とおくと $s\le c\le t$ であり、$[s,t]$ の点はすべて $\lvert x-c\rvert<\delta$ を満たす。$f$ は $[a,s]$ で上に有界で($s\in S$)、$[s,t]$ で $f(c)+1$ 以下なので、$[a,t]$ で上に有界である。よって $t\in S$ であり、$t\le c$ となる。$c+\frac\delta2>c$ だから $t=b$、したがって $b\in S$ である。これは $f$ が $[a,b]$ で上に有界であることを意味する。$\square$

最大値・最小値の定理

$a\le b$ とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。このとき $f$ は $[a,b]$ で最大値と最小値をとる。すなわち、すべての $x\in[a,b]$ について
$$ f(q)\le f(x)\le f(p) $$
となる $p,q\in[a,b]$ がある。

lem-evt-bounded により値の集合 $f([a,b])$ は空でなく上に有界なので、上限 $M:=\sup f([a,b])$ がある。$f(p)=M$ となる $p$ があることを示せばよい。
そのような $p$ がないと仮定すると、すべての $x$ で $f(x)< M$ なので、$g(x):=\dfrac1{M-f(x)}$ は $[a,b]$ 上の正の連続関数である。lem-evt-bounded を $g$ に当てると、すべての $x$ で $g(x)\le B$ となる $B$ があり、$g>0$ なので $B>0$ である。$g(x)\le B$ を書き直すと $M-f(x)\ge\frac1B$、すなわち
$$ f(x)\le M-\frac1B\qquad(x\in[a,b]) $$
となる。これは $M-\frac1B$ が $f([a,b])$ の上界であることを意味し、$M$ が最小の上界であることに反する。よって $f(p)=M$ となる $p$ があり、$f$ は $p$ で最大値をとる。最小値は $-f$ の最大値として得られる。$\square$

詳細($g$ が連続であること)

$p\in[a,b]$ とし、$u(x):=M-f(x)>0$ とおく。$u$ は連続なので、$\lvert x-p\rvert$ が小さいとき $\lvert u(x)-u(p)\rvert<\frac{u(p)}2$、したがって $u(x)>\frac{u(p)}2$ である。このとき

$$\Bigl\lvert\frac1{u(x)}-\frac1{u(p)}\Bigr\rvert=\frac{\lvert u(x)-u(p)\rvert}{u(x)u(p)}\le\frac2{u(p)^2}\lvert u(x)-u(p)\rvert$$

であり、右辺は $x\to p$ で $0$ に近づく。

lem-evt-bounded と thm-evt-main の証明は、順序体の公理(四則演算と大小関係の規則)と上限の存在しか使っていない。このことは、実数の連続性 の記事の定理「連続性と中間値の定理・最大値の定理」で、最大値の性質が上限性質から従う向きの根拠になっている。
ほかの証明もある。有界な数列が収束する部分列をもつこと(Bolzano–Weierstrassの定理)を使う証明は Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の系「最大値と最小値の存在」にあり、$[a,b]$ がコンパクト空間であることを使う証明は コンパクト空間 の記事の定理「最大値・最小値の存在」にある。Leb26 Lemma 3.3.1・Theorem 3.3.2(p. 130)は Bolzano–Weierstrass の定理による証明である。

直感

$[a,b]$ 上の連続関数のグラフは、左端から右端まで途切れずにつながった曲線で、両端の点も含む。どこまでも上に伸びるには、どこかで「跳ぶ」か、端点のない方向へ逃げる必要があるが、連続性と閉区間であることがその両方を封じる。上限 $M$ に向かって値がいくらでも近づくなら、その近づく場所は閉区間の中に集まってきて、連続性によりそこでの値が $M$ になる。thm-evt-main の証明は、この「近づく場所」を直接探す代わりに、$\frac1{M-f}$ が有界になることを使って一挙に矛盾を導いている。

例

候補を比べて最大値・最小値を求める

$[-2,2]$ 上の $f(x)=x^3-3x$ を考える。thm-evt-main により最大点 $p$ がある。$p$ が区間の内部にあれば、そこで $f'(p)=0$ である(Rolleの定理 の記事の補題「内部の最大点・最小点での微分係数」)。$f'(x)=3x^2-3=0$ となるのは $x=\pm1$ なので、最大点は $-2,-1,1,2$ のどれかである。値は
$$ f(-2)=-2,\quad f(-1)=2,\quad f(1)=-2,\quad f(2)=2 $$
なので、最大値は $2$(最大点は $-1$ と $2$)、最小値は $-2$(最小点は $-2$ と $1$)である。最大点・最小点は 1 つとは限らない。ここで「候補を比べれば最大値が分かる」と言えるのは、最大値が存在することを定理が先に保証しているからである。

正の連続関数は正の数より下がらない

$f$ が $[a,b]$ で連続で、すべての点で $f(x)>0$ ならば、$f$ の最小値 $m=f(q)$ は正であり、すべての $x$ で $f(x)\ge m>0$ となる。閉区間でないと成り立たない。$(0,1]$ 上の $f(x)=x$ はすべての点で正だが、どんな正の数 $m$ についても $f(x)< m$ となる $x$ がある。積分の評価や $\frac1f$ の有界性を示すときに、この形でよく使われる。

値の範囲

$[a,b]$ 上の連続関数 $f$ の最小値を $m$、最大値を $M$ とすると、中間値の定理 と合わせて $f([a,b])=[m,M]$ となる(中間値の定理 の記事の系「閉区間の連続像」)。閉区間の連続像はまた閉区間である。たとえば $[0,\pi]$ 上の $\sin x$ の値の範囲は $[0,1]$、ex-evt-cubic の $f$ の値の範囲は $[-2,2]$ である。

一般化

多変数とコンパクト空間

定理の本質は、定義域が「有界で、端を含む」ことにある。$\mathbb{R}^m$ では、空でない有界な閉集合の上の連続関数は最大値と最小値をとる(Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の系「最大値と最小値の存在」)。さらに一般に、空でないコンパクト空間上の実数値連続関数は最大値と最小値をとる(コンパクト空間 の記事の定理「最大値・最小値の存在」)。最大値だけが欲しいなら連続性は弱めてよく、上半連続な関数はコンパクト空間上で最大値をとる(半連続性 の記事の定理「コンパクト空間上の極値」)。

遠くで大きくなる関数の最小値

定義域が有界でなくても、遠くへ行くほど値が大きくなる関数は最小値をとる。$\|x\|$ は $\mathbb{R}^m$ の Euclid ノルムとする。

遠くで大きくなる関数の最小値

$F\subset\mathbb{R}^m$ を空でない閉集合、$f\colon F\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。どの実数 $L$ に対しても、ある $R$ があって、$x\in F$、$\|x\|>R$ ならば $f(x)>L$ となるとする。このとき $f$ は $F$ 上で最小値をとる。

$x_0\in F$ を 1 つとり、仮定を $L:=f(x_0)$ に当てて $R$ をとる。$K:=\{x\in F\mid\|x\|\le R\}$ とおく。$x_0$ は $f(x_0)>f(x_0)$ を満たさないので $\|x_0\|\le R$、したがって $x_0\in K$ であり、$K$ は空でない。$K$ は閉集合 $F$ と閉球の共通部分なので閉集合で、有界である。よって $f$ を $K$ に制限すると、ある $q\in K$ で最小値をとる(Bolzano–Weierstrassの定理 の記事の系「最大値と最小値の存在」)。$x\in K$ なら $f(q)\le f(x)$ である。$x\in F\setminus K$ なら $\|x\|>R$ なので $f(x)>f(x_0)\ge f(q)$ である($x_0\in K$ だから)。よって $f(q)$ は $F$ 全体での最小値である。$\square$

仮定は「最小値の候補は原点の近くの有界な部分にしかない」ことを保証し、問題を有界な閉集合の場合に帰着させている。最大値については同じことは言えない。$F$ が有界でないとき、遠くで大きくなる関数は上に有界でないからである。

閉集合への最短距離

$F\subset\mathbb{R}^m$ を空でない閉集合、$p\in\mathbb{R}^m$ とする。$f(x):=\|x-p\|$ は $\lvert f(x)-f(y)\rvert\le\|x-y\|$ を満たすので連続であり、$f(x)\ge\|x\|-\|p\|$ なので thm-evt-coercive の仮定を満たす。よって $\|q-p\|=\inf_{x\in F}\|x-p\|$ となる $q\in F$、すなわち $p$ に最も近い $F$ の点がある。$F$ が閉集合でないと成り立たない。$F=(0,1)\subset\mathbb{R}$、$p=2$ では、距離の下限 $1$ はどの点でもとられない。
同じ論法は、複素数の多項式 $P(z)$ について $\lvert P(z)\rvert$ が最小値をとることの証明にも使われる(代数学の基本定理 の記事の補題「絶対値の最小値の存在」)。$\lvert z\rvert\to\infty$ で $\lvert P(z)\rvert\to\infty$ となることが、thm-evt-coercive の仮定にあたる。

実数の連続性との関係

最大値・最小値の定理は、実数の連続性なしには成り立たない。しかも順序体の上では、閉区間で連続な関数がつねに最大値をとることと、上限性質(実数の連続性)が同値になる(実数の連続性 の記事の定理「連続性と中間値の定理・最大値の定理」)。有理数の範囲での反例は下の表の 5 行目である。この意味で、最大値・最小値の定理は実数の連続性の言い換えの 1 つである。

反例:仮定を 1 つ外すと崩れる例

外す条件反例成り立たなくなること
区間が端点を含む$(0,1)$ 上の $f(x)=x$最大値・最小値をとること
区間が有界$[0,\infty)$ 上の $f(x)=\frac x{1+x}$最大値をとること
連続(値が有界にならない)$[0,1]$ 上の $f(0)=0$、$f(x)=\frac1x$($x>0$)上に有界であること
連続(有界だが最大値がない)$[0,1]$ 上の $f(x)=x$($x<1$)、$f(1)=0$最大値をとること
実数の連続性$[1,2]$ の有理数の上の $f(x)=-(x^2-2)^2$最大値をとること
有限次元数列空間 $\ell^2$ の閉単位球の上の $f(x)=\sum_n\bigl(1-\frac1n\bigr)x_n^2$最大値をとること
反例の確認
  1. $(0,1)$ 上の $x$ の値の上限は $1$、下限は $0$ だが、どちらも値としてとられない。
  2. $\frac x{1+x}=1-\frac1{1+x}$ は $[0,\infty)$ で $1$ より小さく、$x\to\infty$ で $1$ に近づくので、上限 $1$ はとられない。最小値 $0$($x=0$)はとる。
  3. $f(\frac1n)=n$ なので上に有界でない。$f$ は $0$ で連続でない。
  4. 値の上限は $1$ だが、$f(x)=1$ となる点はない。$f$ は $1$ で連続でない(左から近づくと値は $1$ に近づくが $f(1)=0$)。
  5. $f\le0$ で、$x^2$ が $2$ に近い有理数 $x$ をとれば値はいくらでも $0$ に近くなるので、上限は $0$ である。$f(x)=0$ となるのは $x=\sqrt2$ だけで、これは有理数でないから、最大値はない。実数の連続性 の記事の例「$\sqrt2$ のところの切断」の切れ目が原因である。
  6. $\ell^2$ は $\sum_nx_n^2<\infty$ を満たす実数列 $x=(x_1,x_2,\dots)$ の全体で、ノルム $\|x\|=\bigl(\sum_nx_n^2\bigr)^{1/2}$ をもつ(Hilbert空間 の代表例)。閉単位球 $\{\|x\|\le1\}$ は有界な閉集合である。$f(x)\le\|x\|^2$ なので級数は収束し、Cauchy–Schwarz の不等式から $\lvert f(x)-f(y)\rvert\le\sum_n\lvert x_n-y_n\rvert\lvert x_n+y_n\rvert\le\|x-y\|\,\|x+y\|\le2\|x-y\|$ となって $f$ は連続である。第 $n$ 成分だけが $1$ の点 $e_n$ で $f(e_n)=1-\frac1n$ なので上限は $1$ である。しかし $x\ne0$ なら $f(x)=\|x\|^2-\sum_n\frac{x_n^2}n<\|x\|^2\le1$、$f(0)=0$ なので、値 $1$ はとられない。無限次元では有界な閉集合がコンパクトとは限らないことによる(コンパクト空間 の記事の注意「無限次元では有界閉球がコンパクトでない」)。

補足

存在定理としての使われ方

最大値・最小値の定理は、値の大小を比べる議論の中で「いちばん大きい(小さい)値をとる点」を名指しするために使われることが多い。Rolleの定理 の証明では、両端で値が等しい関数の最大点または最小点が区間の内部にとれることから、そこで微分係数が $0$ になることを導く。微分積分学の基本定理 では、小区間 $[x,x+h]$ での最小値と最大値で積分を挟み、はさみうちの原理 で微分係数を求める(はさみうちの原理 の記事の例「積分で表された関数の微分」)。閉区間上の連続関数が一様連続であること(一様連続性 の記事の定理「Heine–Cantorの定理」)も、同じくコンパクト性の帰結である。

名前

英語では extreme value theorem、minimum-maximum theorem と呼ばれる(Leb26 Theorem 3.3.2、p. 130)。日本語では「最大値・最小値の定理」のほか、略して「最大値の定理」とも言う。中間値の定理 と並べて、閉区間上の連続関数の 2 大定理として扱われることが多い。二つとも区間の性質(端点を含む・つながっている)と実数の連続性に支えられているが、中間値の定理は区間が有界でなくても成り立ち、最大値・最小値の定理は区間が端点を含み有界であることを本質的に使う、という違いがある。

関連項目

参考文献

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