直線のまわりの回転体(solid of revolution about a slanted line)とは、ここでは斜めの直線 $\ell\colon y=mx+k$ を軸として、曲線 $y=f(x)$($a\le x\le b$)の各点から $\ell$ に下ろした垂線の線分を合わせた図形を回した立体をいう。曲線が $\ell$ の片側にあり $1+mf'(x)>0$ なら、体積は $g=f-mx-k$ として $\frac{\pi}{(1+m^2)^{3/2}}\int_a^bg^2(1+mf')\,dx$ である。軸に沿った座標への置換で示せる。曲線の両端が軸の上にあれば体積は $\frac{\pi}{\sqrt{1+m^2}}\int_a^bg^2\,dx$ で、面積と重心から軸までの距離 $d$ による $2\pi d\cdot A$ に等しい。
放物線 $y=x^2$ と直線 $y=x$ で囲まれた図形($0\le x\le1$)を、$x$ 軸のまわりに回した立体の体積は、円板法で
$$
\pi\int_0^1\bigl(x^2-x^4\bigr)\,dx=\pi\Bigl(\frac13-\frac15\Bigr)=\frac{2\pi}{15}
$$
と求まる(体積と回転体 の定理「円板法」)。では、同じ図形を直線 $y=x$ のまわりに回すとどうなるだろうか。回転軸が座標軸でないので、$x$ 軸に垂直な平面で切っても、断面は円板にならない。
回転軸 $y=x$ に垂直な直線で図形を切る。放物線の上の点 $(x,x^2)$ から直線 $y=x$ に下ろした垂線の長さは、点と直線の距離 により
$$
\rho=\frac{\lvert x-x^2\rvert}{\sqrt{1^2+(-1)^2}}=\frac{x-x^2}{\sqrt2}\qquad(0\le x\le1)
$$
である。垂線の足は $\Bigl(\dfrac{x+x^2}2,\ \dfrac{x+x^2}2\Bigr)$ で、原点からこの足までの、軸に沿った距離は
$$
u=\sqrt2\cdot\frac{x+x^2}2=\frac{x+x^2}{\sqrt2}
$$
である。$x=\frac12$ では $\rho=\dfrac{1/4}{\sqrt2}=0.1768$、$u=\dfrac{3/4}{\sqrt2}=0.5303$ である。図形を $y=x$ のまわりに回すと、この垂線の線分は、軸に垂直な平面の上で半径 $\rho$ の円板を描く。
断面が円板になるのは、軸に垂直な平面で切るときである。そこで、軸に沿った座標 $u$ で断面積 $\pi\rho^2$ を積分し、それを $x$ の積分に直す。この記事で答える問いは次の 2 つである。
| 座標軸のまわり | 斜めの直線 $y=mx+k$ のまわり |
|---|---|
| 断面の位置 $x$ | 軸に沿った座標 $u$ |
| 断面の半径 $f(x)$ | 軸までの距離 $\rho=\frac{\lvert f(x)-mx-k\rvert}{\sqrt{1+m^2}}$ |
| $\pi\int f^2\,dx$ | $\pi\int\rho^2\,du$ を $x$ の積分に置換する |
直線 $\ell\colon y=mx+k$ を回転軸とする。区間 $[a,b]$ で微分可能で導関数が連続な関数 $f$ をとり、
$$
g(x)=f(x)-(mx+k)
$$
とおく。次を仮定する。
(R1) 曲線 $y=f(x)$($a\le x\le b$)は $\ell$ の片側にある。つまり $[a,b]$ のすべての $x$ で $g(x)\ge0$、またはすべての $x$ で $g(x)\le0$ である。
(R2) $[a,b]$ のすべての $x$ で $1+mf'(x)>0$ である。
曲線の各点から $\ell$ に下ろした垂線の線分をすべて合わせた図形を $D$ とし、$D$ を $\ell$ のまわりに 1 回転してできる立体を $K$ とする。
条件 (ii) の意味は、prf-srs-volume の段 2 で見るように、「曲線の上を $x$ が増える向きに進むと、垂線の足が $\ell$ の上を一方向に進む」ことである。$m=0$(軸が $x$ 軸に平行)なら (ii) はいつも成り立ち、$D$ は縦線図形になる。条件 (i) は主定理 2 で重心を考えるときに使う。
この記事では、合同な立体(回転と平行移動で重なる立体)の体積は等しい、という体積の性質を認めて使う。体積と回転体 の体積の定義(小さな直方体で内側と外側から挟む)からこれを示すことは、この記事ではしない。
def-srs-setting の立体 $K$ の体積は
$$
V=\frac{\pi}{(1+m^2)^{\frac32}}\int_a^bg(x)^2\bigl(1+mf'(x)\bigr)\,dx
$$
である。
方針:軸 $\ell$ に沿った座標 $u$ をとり、$\ell$ に垂直な平面で $K$ を切ると断面が円板になることを示す。断面積を $u$ で積分し、$u$ を $x$ に置換する。$c=\sqrt{1+m^2}$ とおく。
段 1(軸に沿った座標と軸までの距離)。$\ell$ の上の点 $O'=(0,k)$ を原点とし、$\ell$ の向きの単位ベクトル $\boldsymbol e=\dfrac1c(1,m)$ をとる。点 $Q=(x,y)$ について、ベクトル $\overrightarrow{O'Q}=(x,\,y-k)$ と $\boldsymbol e$ の内積
$$
u(Q)=\frac{x+m(y-k)}{c}
$$
を $Q$ の 軸に沿った座標 という。$Q$ から $\ell$ に下ろした垂線の足は、$O'$ から $\boldsymbol e$ の向きに $u(Q)$ だけ進んだ点である($\overrightarrow{O'Q}$ を $\boldsymbol e$ の向きの成分と、それに垂直な成分に分けると、前者が $u(Q)\boldsymbol e$ である)。$Q$ から $\ell$ までの距離は、点と直線の距離 により $\dfrac{\lvert y-mx-k\rvert}{c}$ である。
段 2(曲線の点)。曲線の点 $X(x)=\bigl(x,f(x)\bigr)$ について、軸に沿った座標と軸までの距離は
$$
u(x)=\frac{x+m\bigl(f(x)-k\bigr)}{c},\qquad\rho(x)=\frac{\lvert g(x)\rvert}{c}
$$
である。$u'(x)=\dfrac{1+mf'(x)}{c}$ なので、(ii) により $u'(x)>0$ で、$u(x)$ は $[a,b]$ で増加する。よって $u$ が $u(a)$ から $u(b)$ まで動くとき、$u(x)=u$ となる $x$ はちょうど 1 つずつある。
段 3(断面は円板)。$u(a)\le u\le u(b)$ とし、$\ell$ の上の座標 $u$ の点を通り $\ell$ に垂直な平面を $\Pi_u$ とする。$D$ をつくる垂線の線分のうち、平面図形として $\Pi_u$ と交わるのは、足の座標が $u$ のものだけで、段 2 によりそれは 1 本($u(x)=u$ となる $x$ の点からの垂線)である。$\ell$ のまわりの回転は、軸に沿った座標と軸までの距離を変えない。よって $K$ と $\Pi_u$ の共通部分は、この垂線の線分を回してできる、中心が $\ell$ の上にある半径 $\rho(x)$ の円板である。
段 4(体積を断面積の積分で書く)。$K$ を回転と平行移動で動かして、$\ell$ が $x$ 軸に重なり、座標 $u$ の点が $(u,0,0)$ に来るようにする。体積は変わらず、断面 $\Pi_u$ は $x$ 軸に垂直な平面 $x=u$ に移る。体積と回転体 の定理「断面積の積分による体積」により
$$
V=\int_{u(a)}^{u(b)}\pi\rho\bigl(x(u)\bigr)^2\,du
$$
である。ここで $x(u)$ は $u(x)=u$ となる $x$ である。
段 5($x$ に置換する)。置換積分の使い方 の置換積分 $\displaystyle\int_{u(a)}^{u(b)}h(u)\,du=\int_a^bh\bigl(u(x)\bigr)u'(x)\,dx$ を、$h\bigl(u(x)\bigr)=\pi\rho(x)^2$ で使うと
$$
V=\int_a^b\pi\rho(x)^2u'(x)\,dx=\int_a^b\pi\frac{g(x)^2}{c^2}\cdot\frac{1+mf'(x)}{c}\,dx=\frac{\pi}{c^3}\int_a^bg(x)^2\bigl(1+mf'(x)\bigr)\,dx
$$
である。$c^3=(1+m^2)^{\frac32}$ なので主張を得る。$\square$
y=x^2 と y=x で囲まれた図形と、放物線の点から軸 y=x へ下ろした垂線(回すと半径 ρ の円板になる)を描いた図で、u は原点から垂線の足までの軸に沿った距離
段 5 で $du=u'(x)\,dx$ の因子 $\dfrac{1+mf'}{\sqrt{1+m^2}}$ が入るのは、$x$ が少し動いたときに足が軸の上を動く距離が $x$ の動きと違うからである。$dx$ のまま $\pi\int\rho^2\,dx$ とすると誤る(ex-srs-counter (1))。
$f(x)=x^2$、$\ell\colon y=x$($m=1$、$k=0$)、$0\le x\le1$ とする。$g(x)=x^2-x\le0$ で (i) を満たし、$1+mf'(x)=1+2x>0$ で (ii) を満たす。曲線の両端 $(0,0)$、$(1,1)$ は $\ell$ の上にあるので、$D$ は放物線と $y=x$ で囲まれた図形である。主定理 1 により
$$
V=\frac{\pi}{2\sqrt2}\int_0^1(x^2-x)^2(1+2x)\,dx
$$
で、$(x^2-x)^2(1+2x)=(x^4-2x^3+x^2)(1+2x)=2x^5-3x^4+x^2$ なので
$$
\int_0^1\bigl(2x^5-3x^4+x^2\bigr)dx=\frac13-\frac35+\frac13=\frac1{15},\qquad V=\frac{\pi}{30\sqrt2}=\frac{\sqrt2\,\pi}{60}=0.07405\cdots
$$
である。$x$ 軸のまわりに回したときの $\dfrac{2\pi}{15}=0.4189$ よりずっと小さい。図形は軸 $y=x$ のすぐそばにあり、回すときの半径が小さいからである。
$f(x)=1$($0\le x\le1$)、$\ell\colon y=x$ とする。$g(x)=1-x\ge0$、$1+mf'=1>0$ である。主定理 1 により $V=\dfrac{\pi}{2\sqrt2}\displaystyle\int_0^1(1-x)^2\,dx=\dfrac{\pi}{6\sqrt2}=0.3702\cdots$ である。
図形として確かめる。線分の点 $(x,1)$ から $y=x$ に下ろした垂線を合わせた $D$ は、3 点 $(0,1)$、$(1,1)$、$\bigl(\frac12,\frac12\bigr)$ を頂点とする直角二等辺三角形である($(0,1)$ の足が $\bigl(\frac12,\frac12\bigr)$、$(1,1)$ は $\ell$ の上)。これを $y=x$ のまわりに回すと、底面の半径が $(0,1)$ から $\ell$ までの距離 $\dfrac1{\sqrt2}$、高さが $\bigl(\frac12,\frac12\bigr)$ から $(1,1)$ までの距離 $\dfrac1{\sqrt2}$ の円錐になる。体積は $\dfrac13\pi\Bigl(\dfrac1{\sqrt2}\Bigr)^2\cdot\dfrac1{\sqrt2}=\dfrac{\pi}{6\sqrt2}$ で一致する。
曲線の両端が軸の上にあるとき、主定理 1 の式はさらに簡単になり、体積と回転体 の Pappus–Guldinus の定理と同じ形になる。
def-srs-setting の設定で、さらに曲線の両端が $\ell$ の上にある($g(a)=g(b)=0$)とする。このとき $D$ は、$y=f(x)$ と $y=mx+k$ の間の縦線図形 $\{(x,y)\mid a\le x\le b,\ y\text{ は }f(x)\text{ と }mx+k\text{ の間}\}$ に等しく、
(1) $K$ の体積は $V=\dfrac{\pi}{\sqrt{1+m^2}}\displaystyle\int_a^bg(x)^2\,dx$ である。
(2) $D$ の面積を $A$、$D$ の重心から $\ell$ までの距離を $d$ とすると、$V=2\pi d\cdot A$ である。
方針:(1) は主定理 1 の積分を部分的に計算する。(2) は、重心から $\ell$ までの距離を 体積と回転体 の定義「縦線図形の面積と重心」の式で計算し、(1) と比べる。座標の回転は使わない。$c=\sqrt{1+m^2}$ とおく。
段 1($D$ は縦線図形)。縦線図形を $R$ とする。$R$ の境界は、曲線 $y=f(x)$ と、$\ell$ の上の 2 点 $(a,ma+k)$、$(b,mb+k)$ を結ぶ線分である。$u(a)\le u\le u(b)$ のとき、$\ell$ の上の座標 $u$ の点で $\ell$ に垂直な直線は、prf-srs-volume の段 2 により曲線とちょうど 1 点で交わるので、この直線と $R$ の共通部分は、$\ell$ の上の点からその交点までの垂線の線分である。$u$ がこの範囲の外なら、直線は $R$ の境界と交わらず、$R$ は有界なので直線は $R$ の外にある。よって $R$ は、曲線の各点からの垂線の線分を合わせたもの、つまり $D$ に等しい。
段 2(体積)。$f'(x)=m+g'(x)$ なので $1+mf'(x)=c^2+mg'(x)$ である。主定理 1 により
$$
V=\frac{\pi}{c^3}\int_a^bg^2\bigl(c^2+mg'\bigr)\,dx=\frac{\pi}{c}\int_a^bg^2\,dx+\frac{\pi m}{c^3}\int_a^bg^2g'\,dx
$$
である。$\dfrac{d}{dx}\dfrac{g^3}3=g^2g'$ なので、第 2 項の積分は $\Bigl[\dfrac{g^3}3\Bigr]_a^b=0$($g(a)=g(b)=0$)である。よって $V=\dfrac\pi c\displaystyle\int_a^bg^2\,dx$ で、(1) が示せた。
段 3(重心から軸までの距離)。$g\ge0$ の場合を考える($g\le0$ の場合は、下で $f$ と $mx+k$ の役割を入れかえ、$g$ を $-g$ に替えれば同じ計算になる)。$D$ は $mx+k\le y\le f(x)$ の縦線図形なので、体積と回転体 の定義「縦線図形の面積と重心」により
$$
A=\int_a^bg\,dx,\qquad A\bar x=\int_a^bxg\,dx,\qquad A\bar y=\int_a^b\frac{f^2-(mx+k)^2}2\,dx
$$
である。$f^2-(mx+k)^2=g\bigl(f+mx+k\bigr)=g\bigl(g+2(mx+k)\bigr)$ なので
$$
A\bigl(\bar y-m\bar x-k\bigr)=\int_a^b\Bigl\{\frac{g^2}2+g(mx+k)-mxg-kg\Bigr\}dx=\int_a^b\frac{g^2}2\,dx
$$
である($\int k\,g\,dx=kA$ を使った)。右辺は $0$ 以上なので、重心 $(\bar x,\bar y)$ は $\ell$ の上側にあり、点と直線の距離 により
$$
d=\frac{\bar y-m\bar x-k}{c}=\frac1{cA}\int_a^b\frac{g^2}2\,dx
$$
である。
段 4(比べる)。$2\pi dA=\dfrac{\pi}{c}\displaystyle\int_a^bg^2\,dx$ で、段 2 の $V$ と一致する。$\square$
主定理 2 の証明は座標を回転していない。重心の座標 $(\bar x,\bar y)$ は、もとの $xy$ 座標の縦線図形として計算したもので、重心から $\ell$ までの距離を点と直線の距離の公式で求めただけである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $du$ に置換する($dx$ のまま積分する) | ex-srs-parabola で $\pi\int_0^1\rho^2\,dx$ | 体積の値($\frac\pi{60}$ になり、$\frac{\sqrt2\pi}{60}$ と合わない) |
| (ii) $1+mf'>0$ | $f(x)=x+4x(1-x)$($0\le x\le1$)、軸 $y=x$ | 主定理 1 の式($1.1848$ になり、体積 $1.2183$ と合わない) |
| (i) 曲線が $\ell$ の片側にある(主定理 2 (2)) | $f(x)=x+x(x-1)(x-2)$($0\le x\le2$)、軸 $y=x$ | $V=2\pi dA$(右辺は $0$) |
曲線 y=x+4x(1-x) と軸 y=x で、x=0.25, 0.5, 0.75, 0.9, 1 の点から下ろした垂線を描いた図で、垂線の足は x=0.75 まで右へ進み、その後は戻る
主定理 1 の証明でしたことは、座標 $(x,y)$ から、軸に沿った座標 $u$ と軸に垂直な座標への取りかえである。これは平面の回転(合同変換)で、面積を変えない。大学では、重積分の変数変換の公式として、変換で面積がどれだけ伸び縮みするか(ヤコビアン)を一般に扱う。回転では伸び縮みの割合は $1$ である。回転で重心が回転先に移ることも、この公式から出る。この記事の主定理 2 は、その一般論を使わず、もとの座標のまま計算した。
回転体の体積を断面で求める考え方の一般化は、Fubiniの定理 である。
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