定規とコンパスによる作図(ruler-and-compass construction)とは、与えられた 2 点から出発し、2 点を通る直線を引くことと、中心と半径を決めて円を描くことだけを有限回くり返し、それらの交点として新しい点を得る操作である。長さ 1 を基準にすると、作図できる長さ $a,b$ から和・差・積・商($b\ne0$)と平方根 $\sqrt a$($a>0$)が作図できる。逆に、直線は 1 次方程式、円は 2 次方程式で表されるので、1 回の交点で座標に加わるのは平方根 1 つだけである。こうして、作図できる数はちょうど、有理数から四則と正の数の平方根を有限回使って書ける数であることが分かる。この特徴づけが、立方体の倍積や角の 3 等分が作図できないことの証明の出発点になる。
前提知識: 三角形の相似条件, 直線の方程式と点と直線の距離, 円と直線の位置関係, 方べきの定理(高校数学)
中学校では、目盛りのない定規とコンパスだけを使って、線分の垂直二等分線や角の二等分線を引いた。定規は「2 点を通る直線を引く」ためだけに使い、長さを測ることはしない。コンパスは「中心と半径を決めて円を描く」ためだけに使う。まず、この 2 つの作図がなぜ正しいのかを座標で確かめる。
2 点 $A(-1,0)$、$B(1,0)$ をとる。$AB=2$ である。
$A$ を中心とする半径 $AB=2$ の円は $(x+1)^2+y^2=4$、$B$ を中心とする半径 $2$ の円は $(x-1)^2+y^2=4$ である。2 つの式を引くと
$$
(x+1)^2-(x-1)^2=0,\qquad 4x=0,\qquad x=0
$$
となる。これを 1 つ目の式に入れると $1+y^2=4$、$y=\pm\sqrt3$ である。したがって 2 円は $C(0,\sqrt3)$ と $D(0,-\sqrt3)$ で交わる。
直線 $CD$ は $y$ 軸 $x=0$ であり、線分 $AB$ の中点 $M(0,0)$ を通って $AB$($x$ 軸)に垂直である。つまり直線 $CD$ は $AB$ の垂直二等分線である。
$O(0,0)$ を頂点とし、$x$ 軸の正の部分と、$x$ 軸から $60^\circ$ 回った半直線とがつくる角を 2 等分する。
$O$ を中心とする半径 $1$ の円を描くと、2 本の半直線と $P(1,0)$、$Q\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ で交わる。$OP=OQ=1$ なので、$O$ は線分 $PQ$ の両端から等距離にある。$PQ$ の垂直二等分線を ex-rcc-bisector と同じ方法で引く。$PQ$ の中点は
$$
N=\left(\frac{1+\frac12}{2},\ \frac{0+\frac{\sqrt3}2}{2}\right)=\left(\frac34,\ \frac{\sqrt3}4\right)
$$
であり、垂直二等分線は $O$ と $N$ を通る($O$ が $P,Q$ から等距離だから。一般の証明は後の lem-rcc-basic)。直線 $ON$ の傾きは $\dfrac{\sqrt3/4}{3/4}=\dfrac{1}{\sqrt3}$ で、これは $\tan30^\circ$ に等しい。よって直線 $ON$ は $60^\circ$ の角を $30^\circ$ ずつに分ける。
左は垂直二等分線の作図。A, B を中心とする半径 AB の 2 円の交点 C, D を結ぶと、AB の中点 M を通って AB に垂直な直線になる。右は角の二等分線の作図。頂点 O を中心とする円で 2 辺に P, Q をとり、PQ の垂直二等分線を引く
この 2 つの例では、答えの座標に $\sqrt3$ が現れた。2 つの円の交点を求めるには 2 次方程式を解くので、平方根が出てくるのは自然である。では、定規とコンパスで作れる長さはどのような数なのか。$\sqrt2$ は 1 辺 $1$ の正方形の対角線として作れる。では $\sqrt[3]2$ は作れるのか。この記事では次の問いに答える。
「作図できる」をはっきり定めるために、平面に座標を入れ、原点 $O(0,0)$ と点 $E(1,0)$ だけが最初に与えられているとする。線分 $OE$ の長さ $1$ が長さの単位になる。
最初に $O(0,0)$ と $E(1,0)$ を「作図済みの点」とする。次の操作を有限回くり返して得られる点を 作図できる点 という。
実数 $a$ について、点 $(a,0)$ が作図できる点であるとき、$a$ を 作図できる数 という。
$O$ を中心とする半径 $|a|$ の円(半径は $O$ と $(a,0)$ の距離)は $x$ 軸と $(a,0)$、$(-a,0)$ で交わる。だから $a$ が作図できれば $-a$ も作図できる。$a>0$ が作図できることは、「長さ $a$ の線分が作れる」ことと同じである。
中学の作図では、コンパスを開いたまま別の場所へ移して「同じ長さを写す」ことをした。def-rcc-point の 2 は、中心と半径を別々の場所で決めてよいとしているので、この使い方を認めている。Euclid は、コンパスを紙から離すと閉じてしまう場合でも長さを写せることを示した(『原論』第 I 巻 命題 2。Hea08a。この記事では証明しない)。したがって、どちらのルールで考えても作図できる点は同じである。
座標で考えるときは、作図の手順そのものは座標の入れ方によらないので、説明しやすい位置に図形を置いてよい。
方針:1 は ex-rcc-bisector の計算を一般の長さで行う。2 は 1 に帰着させ、3 は 2 を 2 回使う。
段 1(1 の証明)。$AB=2s$($s>0$)とし、$A(-s,0)$、$B(s,0)$ となるように座標を置く。$A$ を中心とする半径 $AB$ の円と、$B$ を中心とする半径 $AB$ の円は
$$
(x+s)^2+y^2=4s^2,\qquad (x-s)^2+y^2=4s^2
$$
である。2 式を引くと $(x+s)^2-(x-s)^2=4sx=0$ なので $x=0$ である。1 つ目の式に入れて $s^2+y^2=4s^2$、$y=\pm\sqrt3\,s$ となる。交点 $C(0,\sqrt3 s)$、$D(0,-\sqrt3 s)$ は作図できる点であり、直線 $CD$ は $y$ 軸である。$y$ 軸は $AB$ の中点 $(0,0)$ を通り $AB$ に垂直なので、$AB$ の垂直二等分線である。中点は直線 $AB$ と直線 $CD$ の交点として作図できる。
段 2(2 の証明、$P$ が $\ell$ の上にないとき)。$\ell$ を定める作図済みの点のうち 1 つを $Q$ とする。$P$ を中心とする半径 $PQ$ の円を描く。この円と $\ell$ の交点は $Q$ のほかにもう 1 つ $Q'$ があるか、$Q$ だけかのどちらかである。
$y$ 軸は $O$ を通り $x$ 軸に垂直な直線として引ける。$O$ を中心とする半径 $1$ の円と $y$ 軸の交点として $(0,1)$ も作図できる。これで座標軸がそろった。
点 $(x,y)$ が作図できることと、$x$ と $y$ がともに作図できる数であることは同値である。
段 1(点から座標へ)。$(x,y)$ が作図できるとする。lem-rcc-basic の 2 により、$(x,y)$ を通り $x$ 軸に垂直な直線が引け、$x$ 軸との交点 $(x,0)$ が作図できる。同じように $y$ 軸に垂直な直線と $y$ 軸の交点 $(0,y)$ が作図できる。$O$ を中心とし $O$ と $(0,y)$ の距離 $|y|$ を半径とする円は、$x$ 軸と $(y,0)$、$(-y,0)$ で交わる。よって $x$、$y$ は作図できる数である。
段 2(座標から点へ)。$x$、$y$ が作図できるとする。$O$ を中心とする半径 $|y|$ の円と $y$ 軸の交点として $(0,y)$ が作図できる。$(x,0)$ を通り $x$ 軸に垂直な直線と、$(0,y)$ を通り $y$ 軸に垂直な直線を引くと、その交点が $(x,y)$ である。$\square$
$a$、$b$ が作図できる数ならば、次もすべて作図できる数である。
$$
a+b,\qquad a-b,\qquad ab,\qquad \frac ab\ (b\ne0),\qquad \sqrt a\ (a>0)
$$
証明の前に、積の作図を数で確かめておく。
$a=\dfrac32$、$b=2$ とする。$A\left(0,\dfrac32\right)$、$E(1,0)$、$B(2,0)$ をとる。
(1) 積:直線 $EA$ の傾きは $\dfrac{3/2-0}{0-1}=-\dfrac32$ である。$B$ を通って $EA$ に平行な直線は $y=-\dfrac32(x-2)$ で、$x=0$ とおくと $y=3$ になる。これは $ab=\dfrac32\cdot2=3$ である。
(2) 商:直線 $BA$ の傾きは $\dfrac{3/2-0}{0-2}=-\dfrac34$ である。$E$ を通って $BA$ に平行な直線は $y=-\dfrac34(x-1)$ で、$x=0$ とおくと $y=\dfrac34$ になる。これは $\dfrac ab=\dfrac{3/2}{2}=\dfrac34$ である。
積と商の作図(a = 3/2, b = 2 の場合)。左は E(1, 0) と A(0, a) を結ぶ直線に平行な直線を B(b, 0) から引くと y 軸と (0, ab) で交わる様子、右は B と A を結ぶ直線に平行な直線を E から引くと (0, a/b) で交わる様子
方針:和と差はコンパスで長さを継ぎ足す。積と商は平行線でできる相似な三角形を使う。平方根は、直径の上に立てた垂線の長さを使う。
段 1(和と差)。$b=0$ なら $a\pm b=a$ なので、$b\ne0$ とする。$(a,0)$ を中心とし、$O$ と $(b,0)$ の距離 $|b|$ を半径とする円を描く。この円は $x$ 軸と $(a+|b|,0)$、$(a-|b|,0)$ で交わる。$b\ge0$ でも $b<0$ でも、この 2 点は $(a+b,0)$ と $(a-b,0)$ である。
段 2(積)。$a=0$ または $b=0$ なら $ab=0$ は作図できる。$-a$、$-b$ も作図できるので(def-rcc-number の後の注意)、$a>0$、$b>0$ の場合に示せば、符号を付けかえて一般の場合が得られる。lem-rcc-coordinates により $A(0,a)$ と $B(b,0)$ は作図できる。直線 $EA$ を引き、lem-rcc-basic の 3 により $B$ を通って $EA$ に平行な直線を引く。この直線と $y$ 軸の交点を $P$ とする。三角形 $OEA$ と三角形 $OBP$ は、$O$ の角が共通の直角で、$EA\parallel BP$ より同位角 $\angle OEA=\angle OBP$ が等しいので相似である(三角形の相似条件)。対応する辺の比から
$$
\frac{OP}{OA}=\frac{OB}{OE},\qquad OP=OA\cdot\frac{OB}{OE}=a\cdot\frac b1=ab
$$
となる。$P=(0,ab)$ なので、lem-rcc-coordinates により $ab$ は作図できる。
段 3(商)。$a=0$ なら $\dfrac ab=0$ は作図できる。$a\ne0$ のときは、段 2 と同じく $a>0$、$b>0$ としてよい。直線 $BA$ を引き、$E$ を通って $BA$ に平行な直線と $y$ 軸の交点を $Q$ とする。三角形 $OBA$ と三角形 $OEQ$ は相似なので
$$
\frac{OQ}{OA}=\frac{OE}{OB},\qquad OQ=a\cdot\frac1b=\frac ab
$$
である。よって $\dfrac ab$ は作図できる。
段 4(平方根)。$a>0$ とする。$P(-1,0)$ と $A(a,0)$ は作図できるので、線分 $PA$ の中点 $C\left(\dfrac{a-1}2,0\right)$ が作図できる(lem-rcc-basic の 1)。$C$ を中心とし、半径 $CA=\dfrac{a+1}2$ の円($PA$ を直径とする円)を描き、$y$ 軸との交点を $H(0,h)$($h>0$)とする。$H$ は円の上にあるので
$$
\left(0-\frac{a-1}2\right)^2+h^2=\left(\frac{a+1}2\right)^2
$$
である。整理すると
$$
h^2=\frac{(a+1)^2-(a-1)^2}{4}=\frac{4a}4=a
$$
なので $h=\sqrt a$ である。$H$ から $\sqrt a$ が作図できる(lem-rcc-coordinates)。$\square$
平方根の作図(a = 3 の場合)。P(−1, 0) と A(a, 0) を直径の両端とする円と、O で x 軸に立てた垂線の交点 H の高さが √a になる
段 4 の計算は、図形の言葉では次のように読める。$PA$ は直径なので、円周角の定理(高校数学)により $\angle PHA=90^\circ$ である。直角三角形 $PHA$ の直角の頂点から斜辺に下ろした垂線が $HO$ なので、三角形 $POH$ と三角形 $HOA$ は相似になり、$\dfrac{OH}{PO}=\dfrac{OA}{OH}$、すなわち $OH^2=PO\cdot OA=1\cdot a$ である。これは 方べきの定理(高校数学) で、弦 $HH'$($H'$ は $H$ の $x$ 軸についての対称点)と直径 $PA$ が $O$ で交わるときの $OH\cdot OH'=OP\cdot OA$ と同じ式である。Euclid『原論』第 VI 巻 命題 13 は、この作図で 2 つの長さの「比例中項」$\sqrt{1\cdot a}$ を作っている(Hea08b)。
thm-rcc-arithmetic により、$0$ と $1$ から出発して四則と平方根をくり返し使って得られる数は、すべて作図できる。この節では逆に、作図できる数はそれだけであることを示す。そのために、「四則で閉じた数の集まり」という言葉を用意する。
実数の集合 $F$ が $0$ と $1$ を含み、$F$ の数どうしの和・差・積と、$0$ でない数による商がまた $F$ に入るとき、$F$ を 四則で閉じた集まり という(大学の言葉では、実数の部分体である)。
$F$ を四則で閉じた集まりとし、$d$ を $F$ の正の数で、$\sqrt d$ が $F$ に入らないものとする。
$$
F(\sqrt d):=\{p+q\sqrt d\mid p,q\in F\}
$$
を、$F$ に $\sqrt d$ を付け加えた集まりという。
def-rcc-adjoin の $F(\sqrt d)$ について、次が成り立つ。
方針:「$\sqrt d$ は $F$ に入らない」という仮定を、分母が $0$ にならないことと、書き方がただ 1 通りであることに使う。
段 1(1 の証明)。$q\ne q'$ とすると、$p+q\sqrt d=p'+q'\sqrt d$ を $\sqrt d$ について解いて
$$
\sqrt d=\frac{p-p'}{q'-q}
$$
となる。右辺は $F$ の数どうしの差と商なので $F$ に入る。これは $\sqrt d$ が $F$ に入らないことに反する。よって $q=q'$ であり、そのとき $p=p'$ である。
段 2(和・差・積)。$p,q,p',q'\in F$ について
$$
(p+q\sqrt d)\pm(p'+q'\sqrt d)=(p\pm p')+(q\pm q')\sqrt d,
$$
$$
(p+q\sqrt d)(p'+q'\sqrt d)=(pp'+qq'd)+(pq'+qp')\sqrt d
$$
である。$F$ は四則で閉じていて $d\in F$ なので、右辺の $\sqrt d$ の前後にある数はすべて $F$ に入る。
段 3(商)。$p+q\sqrt d\ne0$ とする。まず $p^2-q^2d\ne0$ を示す。$q=0$ なら $p\ne0$ なので $p^2-q^2d=p^2\ne0$ である。$q\ne0$ で $p^2-q^2d=0$ なら $d=\left(\dfrac pq\right)^2$ となり、$\sqrt d=\left|\dfrac pq\right|$ が $F$ に入ってしまう。よって $p^2-q^2d\ne0$ である。そこで分母を有理化すると
$$
\frac{1}{p+q\sqrt d}=\frac{p-q\sqrt d}{(p+q\sqrt d)(p-q\sqrt d)}=\frac{p}{p^2-q^2d}+\frac{-q}{p^2-q^2d}\sqrt d
$$
となり、これは $F(\sqrt d)$ に入る。一般の商は、この逆数と段 2 の積で書ける。
段 4($F$ を含む)。$F$ の数 $p$ は $p+0\cdot\sqrt d$ と書けるので $F(\sqrt d)$ に入る。とくに $0,1$ を含む。$\square$
作図の各段階で、それまでの点の座標がすべて四則で閉じた集まり $F$ に入っているとする。次の補題は、新しい交点の座標が「$F$ か、$F$ に平方根を 1 つ付け加えた集まり」に入ることを示す。これが「平方根しか現れない」ことの理由である。
$F$ を四則で閉じた集まりとし、座標がすべて $F$ に入る点をいくつか考える。それらの点から def-rcc-point の 1、2 で引いた直線と円のうち、相異なる 2 つの交点 $(x,y)$ について、次のどちらかが成り立つ。
方針:直線は 1 次方程式、円は 2 次方程式で表される。交点を求めることは、係数が $F$ に入る連立方程式を解くことで、途中で解くのは高々 2 次方程式である。
段 1(直線と円の式)。座標が $F$ に入る 2 点 $(x_1,y_1)\ne(x_2,y_2)$ を通る直線は
$$
(y_2-y_1)(x-x_1)-(x_2-x_1)(y-y_1)=0
$$
である(直線の方程式と点と直線の距離)。展開すると $ax+by+c=0$ の形になり、$a,b,c$ は $F$ に入り、$a$、$b$ の少なくとも一方は $0$ でない。座標が $F$ に入る点 $(p,q)$ を中心とし、座標が $F$ に入る 2 点の距離 $r$ を半径とする円は $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ である。$r^2$ は 2 点の座標の差の 2 乗の和なので $F$ に入る。展開すると
$$
x^2+y^2+ux+vy+w=0,\qquad u=-2p,\ v=-2q,\ w=p^2+q^2-r^2
$$
で、$u,v,w$ は $F$ に入る。
段 2(2 直線の交点)。$ax+by+c=0$ と $a'x+b'y+c'=0$ が 1 点で交わるとき、$ab'-a'b\ne0$ で、連立 1 次方程式を解くと
$$
x=\frac{bc'-b'c}{ab'-a'b},\qquad y=\frac{a'c-ac'}{ab'-a'b}
$$
である。どちらも $F$ の数の四則で書けるので $F$ に入る。1 が成り立つ。
段 3(直線と円の交点)。直線 $ax+by+c=0$ で $b\ne0$ とする($b=0$ なら $a\ne0$ なので、以下の $x$ と $y$ の役割を入れかえる)。$y=-\dfrac{ax+c}{b}$ を円の式に代入して分母を払うと、$x$ についての 2 次方程式
$$
Ax^2+Bx+C=0,\qquad A=a^2+b^2>0
$$
が得られ、$A,B,C$ は $F$ に入る。交点の $x$ 座標はこの方程式の実数解なので、判別式 $D=B^2-4AC$ は $0$ 以上であり(判別式(高校数学))、$D$ は $F$ に入る。解の公式から
$$
x=\frac{-B\pm\sqrt D}{2A}
$$
である。$\sqrt D$ が $F$ に入れば $x$ は $F$ に入り、1 が成り立つ($D=0$ のときも $\sqrt D=0$ なのでこの場合)。$\sqrt D$ が $F$ に入らなければ、$D>0$ であり、$x=\dfrac{-B}{2A}\pm\dfrac{1}{2A}\sqrt D$ は $F(\sqrt D)$ に入る。どちらの場合も $y=-\dfrac{ax+c}{b}$ は $x$ と同じ集まりに入る(lem-rcc-extension の 2)。
段 4(2 円の交点)。2 円 $x^2+y^2+ux+vy+w=0$、$x^2+y^2+u'x+v'y+w'=0$ の交点は、2 つの式の両方を満たす。2 つの式を引くと
$$
(u-u')x+(v-v')y+(w-w')=0
$$
となる。中心が同じなら $u=u'$、$v=v'$ で、相異なる 2 円なので $w\ne w'$ となり、この式を満たす点はない(同心の相異なる円は交わらない)。中心が違えば $(u-u',v-v')\ne(0,0)$ なので、これは係数が $F$ に入る直線の式である。2 円の交点は、この直線と 1 つ目の円の交点と一致する(2 円の式を満たすことと、引いた式と 1 つ目の式を満たすことは同じ)。よって段 3 に帰着する。この直線は 2 円の根軸であり、根軸と根心 で詳しく扱う。$\square$
左は円 x² + y² = 4 と直線 x + y = 1 の交点で、座標に √7 が現れる。右は 2 つの円の交点で、2 つの式を引いてできる直線(根軸)と一方の円の交点として求まる
実数 $a$ について、次の 2 つは同値である。
方針:2 ⇒ 1 は thm-rcc-arithmetic を列にそって使う。1 ⇒ 2 は、作図の 1 手ごとに lem-rcc-intersection を使い、集まりの列を 1 段ずつ伸ばす。
段 1(2 ⇒ 1)。$F_i$ の数がすべて作図できることを、$i$ についての帰納法で示す。$i=0$:ex-rcc-first により正の整数は作図でき、$0$ と負の整数も作図できる(def-rcc-number の後の注意)。整数どうしの商も thm-rcc-arithmetic により作図できるので、有理数はすべて作図できる。$i-1$ で正しいとする。$d_i$ は $F_{i-1}$ の正の数なので作図でき、thm-rcc-arithmetic により $\sqrt{d_i}$ も作図できる。$F_i$ の数 $p+q\sqrt{d_i}$($p,q\in F_{i-1}$)は、作図できる数の積と和なので作図できる。よって $F_r$ に入る $a$ は作図できる。
段 2(1 ⇒ 2 の準備)。$a$ が作図できるとし、def-rcc-point の手順で作図済みの点が $P_1=O$、$P_2=E$、$P_3$、…、$P_n=(a,0)$ の順に得られたとする。次の主張を $k$ についての帰納法で示す。
主張:列 $\mathbb{Q}=F_0\subset\cdots\subset F_{r_k}$(各段は def-rcc-adjoin の形)で、$P_1,\dots,P_k$ の座標がすべて $F_{r_k}$ に入るものがある。
段 3(帰納法)。$k=2$:$O$、$E$ の座標は $0$、$1$ なので $\mathbb{Q}=F_0$ に入る($r_2=0$)。$k-1$ で主張が正しいとし、$F:=F_{r_{k-1}}$ とおく。$P_k$ は、座標が $F$ に入る点 $P_1,\dots,P_{k-1}$ から引いた直線と円のうち相異なる 2 つの交点である。lem-rcc-intersection により、$P_k$ の座標は $F$ に入るか、ある $F(\sqrt D)$ に入る。前者なら同じ列のままで($r_k=r_{k-1}$)、後者なら列の最後に $F(\sqrt D)$ を付け加える($r_k=r_{k-1}+1$)。どちらでも $P_1,\dots,P_k$ の座標は列の最後の集まりに入る($F\subset F(\sqrt D)$ なので、前の点の座標も入る)。
段 4(結論)。$k=n$ とすると、$P_n=(a,0)$ の $x$ 座標 $a$ は列の最後の集まりに入る。これが 2 である。$\square$
この定理の 1 ⇒ 2 の対偶をとると、作図できないことを示す道具になる。
実数 $a$ が、有理数から出発して四則と正の数の平方根を有限回使うどんな式でも書けないならば、$a$ は作図できない。
thm-rcc-characterization の 1 ⇒ 2 の対偶である。$\square$
$\sqrt[3]2$(立方体の体積を 2 倍にする問題)、$\cos20^\circ$($60^\circ$ の角を 3 等分する問題)、$\sqrt\pi$(円と同じ面積の正方形を作る問題)がこの判定にかかり、作図できないことの証明は 3大作図問題の不可能性 で扱う。そこでは「3 次方程式の根が平方根の列の中に初めて現れる段を考える」という議論で、cor-rcc-not-constructible の条件を確かめる。
同じ問題を、高校の道具で解く方法と、大学の言葉で見る方法を並べる。
$\sqrt2+\sqrt3=3.1462\ldots$ は作図できるか。できるなら、thm-rcc-characterization の列を 1 つ示せ。
段 1(作図できること)。thm-rcc-arithmetic により $\sqrt2$ と $\sqrt3$ はどちらも作図でき、その和も作図できる。
段 2(列を作る)。$F_1=\mathbb{Q}(\sqrt2)$ とする。$\sqrt2$ は無理数なので(実数とは何か:無理数の証明)、$\sqrt2$ は $\mathbb{Q}$ に入らず、これは def-rcc-adjoin の形である。次に $\sqrt3$ が $F_1$ に入らないことを示す。$\sqrt3=p+q\sqrt2$($p,q$ は有理数)と書けたとすると、両辺を 2 乗して
$$
3=p^2+2q^2+2pq\sqrt2
$$
となる。lem-rcc-extension の 1(書き方はただ 1 通り)により、$2pq=0$ かつ $p^2+2q^2=3$ である。
大学の言葉では、四則で閉じた集まりは体であり、$F(\sqrt d)$ は $F$ の 2 次拡大 と呼ばれる。$F(\sqrt d)$ の数は $1$ と $\sqrt d$ の組み合わせでただ 1 通りに書けるので(lem-rcc-extension の 1)、$F(\sqrt d)$ は $F$ の上の 2 次元のベクトル空間とみなせ、この次元 $2$ を拡大次数という。次数は列にそって掛け算で積み重なるので、thm-rcc-characterization の列では $F_r$ の $\mathbb{Q}$ 上の次数は $2^r$ になる。
ex-rcc-sqrt2-sqrt3 では次数は $2^2=4$ であり、実際 $\sqrt2+\sqrt3$ は 4 次方程式 $x^4-10x^2+1=0$ の根で、これより次数の低い有理数係数の方程式の根にはならない。一般に、作図できる数 $a$ が根となる有理数係数の多項式のうち次数が最小のもの(最小多項式(体論))の次数は $2$ の冪になる(Mil22 Chapter 1、Corollary 1.38)。平面を複素数平面とみた場合への拡張は、作図可能数 の記事で扱う。次数が $3$ の数が作図できないのはこのためで、高校の範囲で同じ結論を出す方法を 3大作図問題の不可能性 で扱う。
thm-rcc-characterization は、ルールの細部に支えられている。どの仮定を外すと何が崩れるかを表にする。
| 外した仮定・誤った読み方 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 操作は有限回 | 作図できる数は有理数から四則と平方根で書ける数だけ | ex-rcc-infinite |
| 引ける線は直線と円だけ | 交点の座標は平方根 1 つを付け加えた集まりに入る(lem-rcc-intersection) | ex-rcc-parabola |
| 「作図できない」と「無理数」を取り違える | 無理数なら作図できない(という誤った主張) | ex-rcc-irrational |
角の 2 等分は何回でもできる(ex-rcc-angle)。$60^\circ$ の角から出発して、$60^\circ$ を 2 回 2 等分した $15^\circ$、それをさらに 2 回 2 等分した $3.75^\circ$、… を次々に作り、足していく。
$$
60^\circ\times\left(\frac14+\frac1{16}+\frac1{64}+\cdots+\frac1{4^n}\right)
$$
は $n=1,2,3,4,5$ で $15^\circ$、$18.75^\circ$、$19.6875^\circ$、$19.921875^\circ$、$19.98046875^\circ$ となり、無限等比級数の和 $\dfrac{1/4}{1-1/4}=\dfrac13$ により $20^\circ$ に近づく。$n$ 回目までの角はどれも有限回の操作で作図できるが、$20^\circ$ そのものは作図できない($60^\circ$ の 3 等分の不可能性。3大作図問題の不可能性)。
満たす性質:各段階は定規とコンパスの操作である。満たさない性質:操作の回数が有限。破る含意:「操作をくり返して近づけられる角は作図できる」は成り立たない。作図の定義で「有限回」を外すと、作図できる数はずっと多くなり、thm-rcc-characterization は成り立たない。
定規とコンパスのほかに、放物線 $y=x^2$ と $y^2=2x$ を描いてよいとする。2 つの交点を求めると、$y=x^2$ を 2 つ目の式に入れて
$$
x^4=2x,\qquad x(x^3-2)=0
$$
となり、原点のほかに $x=\sqrt[3]2$、$y=x^2=\sqrt[3]4$ で交わる。
満たす性質:交点は 2 本の曲線の交点として決まる。満たさない性質:曲線が直線か円である。破る含意:lem-rcc-intersection の「交点の座標は $F$ か $F(\sqrt D)$ に入る」。放物線どうしを連立すると 4 次方程式が出てくるので、平方根 1 つでは足りなくなる。$\sqrt[3]2$ がどんな $F_r$ にも入らないことは 3大作図問題の不可能性 で示す。
$\sqrt2$ は無理数だが、ex-rcc-roots の (1) のとおり作図できる。$\dfrac{1+\sqrt5}2$ や $\sqrt{1+\sqrt2}$ も無理数で、作図できる。
満たす性質:無理数である。満たさない性質:作図できない。破る含意:「無理数は作図できない」。作図できない数は、無理数であるだけでなく「有理数から四則と平方根では書けない」数である(cor-rcc-not-constructible)。逆に「無理数はすべて作図できる」も成り立たず、$\sqrt[3]2$ が反例になる(3大作図問題の不可能性)。
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