Vandiver予想

同義語:Vandiver's conjectureKummer–Vandiver予想Kummer–Vandiver conjecture

概要

Vandiver予想(Vandiver's conjecture)とは、すべての奇素数 $p$ について、円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の最大実部分体 $\mathbb Q(\zeta_p+\zeta_p^{-1})$ の類数 $h_p^+$ が $p$ で割り切れないという予想で、Kummer にさかのぼる。実部分体の類群は $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類群に単射で埋め込まれるので正則素数では成り立ち、予想は類群の $p$ 部分の偶数の成分がすべて $0$ であることと同値である。予想が成り立てば、奇数の成分 $A_i$ は $\mathbb Z_p/B_{1,\omega^{-i}}\mathbb Z_p$ に同型になる。$2^{31}$ 未満のすべての素数で計算により確かめられているが、一般には未解決である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 円分体, イデアル類群, 正則素数, Herbrand–Ribetの定理

Vandiver予想(Vandiver's conjecture)とは、すべての奇素数 $p$ について、円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の最大実部分体 $\mathbb Q(\zeta_p)^+=\mathbb Q(\zeta_p+\zeta_p^{-1})$ の類数 $h_p^+$ が $p$ で割り切れない、という予想である。Kummer が Kronecker への手紙の中で「まだ証明されていない定理」として述べたのが始まりで(Was82 p. 159、Lan90 序文 pp. xvi–xvii)、Kummer–Vandiver 予想とも呼ばれる。
$\mathbb Q(\zeta_p)$ の類数 $h_p$ は、実部分体の類数 $h_p^+$ と相対類数 $h_p^-=h_p/h_p^+$ の積である。$p$ が $h_p^-$ を割るかどうかは Bernoulli 数で判定でき、類群の $p$ 部分の「奇数の成分」は Herbrand–Ribetの定理 によって成分ごとに Bernoulli 数と結びついている。Vandiver 予想は、残りの「偶数の成分」がすべて $0$ だと主張する。予想が成り立てば、奇数の成分は $\mathbb Z_p$ を $B_{1,\omega^{-i}}$ で割った巡回群になり、$\mathbb Q(\zeta_p)$ の類群の $p$ 部分が Bernoulli 数だけで完全に決まる。
予想は $2^{31}$ 未満のすべての素数について計算で確かめられているが、一般には証明も反証もされていない。この記事では、(1) 実部分体の類群が $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類群に単射で埋め込まれること(特に正則素数では予想が成り立つこと)、(2) 予想が「類群の $p$ 部分の偶数の成分がすべて $0$」と同値であること、を完全に証明し、予想から出る帰結と計算の範囲を所在付きで述べる。

主張

以下 $p$ を奇素数、$\zeta:=\zeta_p$、$K:=\mathbb Q(\zeta)$、$K^+:=\mathbb Q(\zeta+\zeta^{-1})$ とする。$K^+=K\cap\mathbb R$ は $K$ の複素共役 $J=\sigma_{-1}$ の固定体で、$[K:K^+]=2$ である。$h_p:=h(K)$、$h_p^+:=h(K^+)$ とおく(イデアル類群)。

Vandiver予想

すべての奇素数 $p$ について $p\nmid h_p^+$ である。

$A$ を $K$ の類群の $p$ シロー部分群とし、Herbrand–Ribetの定理 の定義「Teichmüller指標と成分」の成分 $A_i$ に分けて $A=\bigoplus_{i=0}^{p-2}A_i$ と書く。$J$ は $A_i$ に $(-1)^i$ 倍で働くので、$J$ で動かない部分は
$$ A^+:=\{c\in A:Jc=c\}=\bigoplus_{i\text{ 偶数}}A_i $$
である。下の prop-vdv-even により、予想は「$A_i=0$($i$ は偶数)」と同値である。

実部分体の類群の埋め込み

$K^+$ の分数イデアル $\mathfrak a$ に $K$ の分数イデアル $\mathfrak a\mathcal O_K$ を対応させると、単項イデアルは単項イデアルに移るので、類群の準同型 $\iota:\operatorname{Cl}(K^+)\to\operatorname{Cl}(K)$ が得られる。

準備

$\lambda:=1-\zeta$、$Q:=\lambda\mathcal O_K$、$\mathfrak q:=Q\cap\mathcal O_{K^+}$ とする。

  1. $\bar\lambda=-\zeta^{-1}\lambda$、すなわち $\lambda/\bar\lambda=-\zeta$ である。
  2. $Q$ は $\mathfrak q$ の上で分岐指数 $2$ をもつ。したがって $x\in(K^+)^\times$ について $v_Q(x)=2v_{\mathfrak q}(x)$ は偶数で、$K^+$ の分数イデアル $\mathfrak a$ について $v_Q(\mathfrak a\mathcal O_K)$ も偶数である。
  3. $K^+$ の分数イデアル $\mathfrak a$ について $\mathfrak a\mathcal O_K\cap K^+=\mathfrak a$ である。特に $\mathfrak a\mapsto\mathfrak a\mathcal O_K$ は単射である。

1.$\bar\lambda=1-\zeta^{-1}=-\zeta^{-1}(1-\zeta)$。
2.円分体 の命題「素数冪の円分体」の 2 により $p\mathcal O_K=Q^{p-1}$ で、$e(Q\mid p)=p-1$ である。代数体における素イデアルの分解 の命題「分岐指数と剰余次数の乗法性」により $p-1=e(Q\mid\mathfrak q)\,e(\mathfrak q\mid p)$ で、同じ記事の定理「基本等式」により $e(Q\mid\mathfrak q)\le[K:K^+]=2$、$e(\mathfrak q\mid p)\le[K^+:\mathbb Q]=\frac{p-1}2$ である。よって $e(Q\mid\mathfrak q)=2$ である。
3.$\mathfrak a\subset\mathfrak a\mathcal O_K\cap K^+$ は明らかである。$x\in\mathfrak a\mathcal O_K\cap K^+$ とすると、$x\mathfrak a^{-1}\subset(\mathfrak a\mathcal O_K)(\mathfrak a^{-1}\mathcal O_K)=\mathcal O_K$ かつ $x\mathfrak a^{-1}\subset K^+$ なので、$x\mathfrak a^{-1}\subset\mathcal O_K\cap K^+=\mathcal O_{K^+}$ である。よって $x\in x\mathfrak a^{-1}\mathfrak a\subset\mathfrak a$ である。$\square$

実部分体の類群の単射

$\iota:\operatorname{Cl}(K^+)\to\operatorname{Cl}(K)$ は単射である。特に $h_p^+$ は $h_p$ を割る。

生成元を実数に取り替える

$\mathfrak a$ を $K^+$ の分数イデアルとし、$\mathfrak a\mathcal O_K=\alpha\mathcal O_K$($\alpha\in K^\times$)とする。$\mathfrak a$ が $K^+$ で単項であることを示せばよい。
段 1($\alpha/\bar\alpha$ は $1$ の冪根).$\mathfrak a\mathcal O_K$ は $J$ で動かないので $\bar\alpha\mathcal O_K=\alpha\mathcal O_K$ で、$u:=\alpha/\bar\alpha$ は $\mathcal O_K$ の単元である。$\operatorname{Gal}(K/\mathbb Q)$ は可換なので、すべての $\sigma$ について $\sigma(\bar\alpha)=\overline{\sigma(\alpha)}$ で、$\lvert\sigma(u)\rvert=1$ である。正則素数 の補題「Kroneckerの補題」により $u$ は $1$ の冪根で、同じ記事の命題「単数の分解」の 1 により $u=\pm\zeta^a$ である。$-\zeta$ は位数 $2p$ で $\{\pm\zeta^a\}$ を生成するので、$u=(-\zeta)^d$ となる整数 $d$ がある。
段 2(実数の生成元).$\beta:=\alpha\lambda^{-d}$ とおくと、lem-vdv-basic の 1 から $\beta/\bar\beta=u\,(\lambda/\bar\lambda)^{-d}=(-\zeta)^d(-\zeta)^{-d}=1$ で、$\beta\in K^+$ である。
段 3($d$ は偶数).lem-vdv-basic の 2 により $v_Q(\alpha)=v_Q(\mathfrak a\mathcal O_K)$ と $v_Q(\beta)$ はともに偶数で、$v_Q(\lambda)=1$ だから $d=v_Q(\alpha)-v_Q(\beta)$ は偶数である。
段 4(結論).$d=2e$ と書くと $\lambda^d=(\lambda\bar\lambda)^e(\lambda/\bar\lambda)^e=(\lambda\bar\lambda)^e(-\zeta)^e$ なので、$\gamma:=\beta(\lambda\bar\lambda)^e\in K^+$ について $\alpha=\gamma\,(-\zeta)^e$、すなわち $\mathfrak a\mathcal O_K=\gamma\mathcal O_K$ である。lem-vdv-basic の 3 を $\mathfrak a$ と $\gamma\mathcal O_{K^+}$ に使うと $\mathfrak a=\mathfrak a\mathcal O_K\cap K^+=\gamma\mathcal O_K\cap K^+=\gamma\mathcal O_{K^+}$ で、$\mathfrak a$ は単項である。
最後の主張は、$\operatorname{Cl}(K^+)$ が $\iota$ で $\operatorname{Cl}(K)$ の部分群と同型になることと Lagrange の定理から従う。$\square$

これは Was82 Theorem 4.14(p. 40)の $n=p$ の場合で、同じ筋道である(Washington は一般の $\mathbb Q(\zeta_n)$ で証明している)。一般の CM 体では単射にならないことがある(下の反例の表)。

正則素数では予想が成り立つ

$p$ が正則素数($p\nmid h_p$)なら $p\nmid h_p^+$ である。

thm-vdv-injective により $h_p^+\mid h_p$ なので、$p\mid h_p^+$ なら $p\mid h_p$ である。$\square$

したがって予想が問題になるのは非正則素数だけである。Was82 Theorem 5.34(p. 78)は逆向きの関係「$p\mid h_p^+$ なら $p\mid h_p^-$」を $p$ 進の単数の議論で示している(この記事では証明しない)。

偶数の成分による言い換え

共役との積

$K$ のすべての分数イデアル $\mathfrak A$ について、$\mathfrak A\bar{\mathfrak A}=\mathfrak b\mathcal O_K$ となる $K^+$ の分数イデアル $\mathfrak b$ がある。

両辺とも乗法的なので、$\mathfrak A$ が素イデアル $P$ のときに示せばよい。$\mathfrak p:=P\cap\mathcal O_{K^+}$ とする。$K/K^+$ は Galois 群 $\{1,J\}$ の 2 次拡大なので、分解群と惰性群 の定理「Galois 群は素イデアルに推移的に作用する」により $\mathfrak p$ の上の素イデアルは $P$ と $\bar P$ だけで、同じ記事の系「Galois 拡大での $efg=n$」により $\mathfrak p\mathcal O_K=(P_1\cdots P_g)^e$、$efg=2$ である。$g=2$ なら $\mathfrak p\mathcal O_K=P\bar P$ である。$g=1$ なら $P=\bar P$ で、$e=2$ のとき $\mathfrak p\mathcal O_K=P^2=P\bar P$、$e=1$ のとき $\mathfrak p\mathcal O_K=P$ で $P\bar P=\mathfrak p^2\mathcal O_K$ である。いずれの場合も $P\bar P$ は $K^+$ の分数イデアルから来ている。$\square$

実部分体の類群と偶数の成分

$\iota$ は、$\operatorname{Cl}(K^+)$ の $p$ シロー部分群から $A^+=\bigoplus_{i\text{ 偶数}}A_i$ への同型を与える。したがって次は同値である。

  1. $p\nmid h_p^+$($p$ について Vandiver 予想が成り立つ)。
  2. すべての偶数 $i$($0\le i\le p-3$)について $A_i=0$。
    また $A^-:=\bigoplus_{i\text{ 奇数}}A_i$ の位数は、相対類数 $h_p^-=h_p/h_p^+$ の $p$ 部分に等しい。
共役との積で実部分体に下ろす

$C^+$ を $\operatorname{Cl}(K^+)$ の $p$ シロー部分群とし、$p^N$ が $A$ と $C^+$ をともに消すような $N$ をとる。類群は加法的に書く。
像は $A^+$ に入る.$\iota$ は準同型なので $\iota(C^+)\subset A$ である。$K^+$ のイデアルを延ばしたイデアルは $J$ で動かないので、$\iota(C^+)\subset A^+$ である。
単射.thm-vdv-injective による。
全射.$c\in A^+$ とし、$c$ を代表する分数イデアル $\mathfrak A$ をとる。lem-vdv-conjugate-product により $\mathfrak A\bar{\mathfrak A}=\mathfrak b\mathcal O_K$ で、類としては $c+Jc=2c=\iota(x)$、$x:=[\mathfrak b]\in\operatorname{Cl}(K^+)$ である。有限アーベル群 $\operatorname{Cl}(K^+)$ で $x=x_p+x'$($x_p\in C^+$、$x'$ の位数は $p$ と互いに素)と分けると、$\iota(x')=2c-\iota(x_p)$ は位数が $p$ の冪でもあり $p$ と互いに素でもあるので $0$ で、$2c=\iota(x_p)$ である。$p$ は奇数なので $2n\equiv1\pmod{p^N}$ となる整数 $n$ があり、$c=n\cdot2c=\iota(nx_p)$ である。
同値と位数.同型から $\lvert A^+\rvert=\lvert C^+\rvert$ は $h_p^+$ の $p$ 部分で、1 と「$A^+=0$」すなわち 2 は同値である。$\lvert A\rvert$ は $h_p$ の $p$ 部分で、$A=A^+\oplus A^-$ なので $\lvert A^-\rvert$ は $h_p/h_p^+$ の $p$ 部分である。$\square$

$A_0=0$ はつねに成り立つ(Herbrand–Ribetの定理 の命題「$A_0=A_1=0$」)ので、2 で実際に問題になるのは $i=2,4,\dots,p-3$ である。奇数の成分 $A_i$ は Bernoulli 数で制御されるが(Herbrand–Ribetの定理)、偶数の成分では Stickelberger 元の固有値 $B_{1,\omega^{-i}}$ が $0$ になり、Stickelbergerの定理 は何も言わない。偶数の成分が Bernoulli 数の類の量で測れないことが、予想が難しい理由の 1 つである。

予想から出る帰結

以下はこの記事では証明しない。

  • 奇数の成分の構造.$p\nmid h_p^+$ なら、$i=3,5,\dots,p-2$ について $A_i\cong\mathbb Z_p/B_{1,\omega^{-i}}\mathbb Z_p$ である(Was82 Corollary 10.15、p. 197、証明 p. 198)。特に各 $A_i$ は巡回群で、$A$ の $p$ ランクは非正則指数($p$ が分子を割る $B_2,\dots,B_{p-3}$ の個数)に等しい(同 p. 102)。証明は、Vandiver 予想から円単数が単数群を法 $p$ 乗で生成することを導き、Kummer 理論で $A^-$ が $\mathbb Z_p[G]$ 上巡回的であることを示し、Stickelberger イデアルの指数の計算(同 Theorem 6.21)と比べるものである(同 Theorem 10.14、p. 195)。
  • 円分 $\mathbb Z_p$ 拡大の塔.$p$ について予想が成り立てば、すべての $n\ge1$ について $p\nmid h(\mathbb Q(\zeta_{p^n})^+)$ である(Was82 Corollary 10.6、p. 186)。さらに、$\mathbb Q(\zeta_{p^{n+1}})$ の類群の成分の射影極限が $p$ 進 $L$ 関数に対応する冪級数で表される(同 Theorem 10.16、p. 199)。これは 岩澤理論 の主予想の、予想のもとでの初等的な形である。
  • Fermat の最終定理.予想と Bernoulli 数についての条件($p^3\nmid B_{pi}$、$i=2,4,\dots,p-3$)のもとで、第二の場合($p\mid xyz$)の解がない(Was82 Theorem 9.4、p. 174。予想は同 Chapter 9 の Assumption I、p. 169)。Vandiver は予想から第一の場合が従うと主張したが、その議論には穴があった(Lan90 序文、p. xvii)。
    予想が偽の $p$ があれば $A^-$ が $\mathbb Z_p[G]$ 上巡回的とは限らず、$A_i$ の構造が $B_{1,\omega^{-i}}$ だけで決まるとは言えなくなる。ただし位数の等式 $\lvert A_i\rvert=\lvert B_{1,\omega^{-i}}\rvert_p^{-1}$ は予想なしに Mazur–Wiles が証明している(Was82 p. 198 の注意)。

計算で確かめられた範囲と確率的な見積もり

  • Was82(p. 159、p. 195)の時点で $p< 125000$ で確かめられていた。
  • HHO16 は $2^{31}=2147483648$ 未満のすべての奇素数($105097564$ 個)について予想を確かめ、さらに $\mathbb Q(\zeta_{p^n})$ の類群の $p$ 部分が $(\mathbb Z/p^n\mathbb Z)^{i_p}$($i_p$ は非正則指数)に同型であることも確かめた(要旨と §1、p. 1。方法は §7、p. 13)。探索範囲の歴史は同 Table 1(pp. 2–3)にある。
  • 確率的な見積もり:非正則指数ごとに「単数が $p$ 乗になる確率は $1/p$」とみなすと、$x$ 以下の反例の個数は $\frac12\log\log x$ 程度と見積もられる(Was82 p. 159)。$x=125000$ で $1.23$ 程度、$x=2^{31}$ でも $1.5$ 程度にしかならないので、反例が見つかっていないことは予想の証拠としては弱い。一方、$(p-3)/2$ 個の基本的な単数がそれぞれ確率 $1/p$ で $p$ 乗になるとみなす素朴な見積もりでは、$p\nmid h_p^+$ となる割合は $e^{-1/2}\approx0.61$ になり、これは数値と全く合わない(同 p. 159)。

例

$p=37$

$h_{37}^+=1$ なので(Was82 表 §3、p. 352)、$p=37$ で予想は成り立つ。$37$ は $B_{32}$ だけの分子を割る非正則素数で(正則素数)、Herbrand–Ribetの定理 の命題「$\mathbb Q(\zeta_{37})$ の類群の $37$ 部分」により $A=A_5\cong\mathbb Z/37\mathbb Z$ である。これは予想のもとでの帰結 $A_i\cong\mathbb Z_p/B_{1,\omega^{-i}}\mathbb Z_p$ と一致する:$B_{1,\omega^{-5}}$ はちょうど $37^1$ で割り切れ、ほかの奇数 $i$($3\le i\le35$)では $B_{1,\omega^{-i}}$ は $37$ の単元である(有限計算)。

$p=157$

$157$ は $B_{62}$ と $B_{110}$ の分子を割る(非正則指数 $2$)。$157< 2^{31}$ なので HHO16 により予想が成り立ち、帰結により $A_{47}\cong A_{95}\cong\mathbb Z/157\mathbb Z$、ほかの成分は $0$ である。$h_{157}^-$ は $157$ をちょうど $2$ 回含み(Was82 表 §3、p. 355)、prop-vdv-even の $\lvert A^-\rvert$ の式と合っている。この例は予想を使わずにも得られる(Herbrand–Ribetの定理 の節「$p=157$ の成分」)。

正則素数

$3\le p\le31$ の素数はすべて正則なので(正則素数 の例「$31$ 以下の素数は正則」。$3$ から $31$ までの素数を確かめている)、cor-vdv-regular により予想が成り立つ。例えば $p=23$ では $h_{23}=3$、$h_{23}^+=1$ で(Was82 表 §3、pp. 352–353)、$h_{23}^+$ は $23$ で割り切れない。

反例と注意

外す条件・替える条件反例成り立たなくなること
実部分体 $K^+$$K=\mathbb Q(\zeta_{37})$$p\nmid h(K)$
類数を割る素数が $p$$p=257$、素数 $3$$\ell\nmid h_p^+$($\ell$ は任意の素数)
体が $\mathbb Q(\zeta_p)$CM 体 $\mathbb Q(\sqrt{10},\sqrt{-2})$$\operatorname{Cl}(K^+)\to\operatorname{Cl}(K)$ は単射
成分の番号 $i$ が偶数$p=37$、$i=5$$A_i=0$
反例の確認

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1 行目:$h(\mathbb Q(\zeta_{37}))=37$ である(Was82 表 §3、pp. 352–353)。Vandiver 予想は実部分体についての主張で、$p$ が $h_p$ を割ることは非正則素数でふつうに起こる。

2 行目:$257\equiv1\pmod4$ なので $\mathbb Q(\sqrt{257})\subset\mathbb Q(\zeta_{257})^+$ で(円分体 の系「円分体の2次部分体」)、$\mathbb Q(\sqrt{257})$ の類数は $3$ である。$\mathbb Q(\zeta_{257})^+/\mathbb Q(\sqrt{257})$ は $257$ の上で完全分岐するので不分岐な部分拡大をもたず、類数 $3$ は $h_{257}^+$ を割る(Was82 p. 160、Theorem 10.1、p. 184。この記事では証明しない)。予想は $p$ 自身についての主張で、ほかの素数は $h_p^+$ を割りうる。

3 行目:$K^+=\mathbb Q(\sqrt{10})$ で $(2,\sqrt{10})^2=(2)$ となり、$(2,\sqrt{10})$ は単項でないが、$K=\mathbb Q(\sqrt{10},\sqrt{-2})$ では単項になる(Was82 p. 40)。実際、$K$ の中で $(2,\sqrt{10})\mathcal O_K$ の平方は $(2)=(\sqrt{-2})^2$ なので、素イデアル分解の一意性から $(2,\sqrt{10})\mathcal O_K=(\sqrt{-2})$ である。prf-vdv-injective の段 3 は、$Q=(1-\zeta)$ という「実部分体の上で分岐する単項素イデアル」と $\lambda/\bar\lambda=-\zeta$ を使ったが、一般の CM 体ではこれが使えない。

4 行目:ex-vdv-37 により $A_5\ne0$ である。予想が $0$ だと主張するのは偶数の成分だけで、奇数の成分は非正則素数で $0$ でない。$\square$

注意を 2 つ挙げる。

  • Kummer の見通し.Kummer は当初この主張を自分の主要な結果の 1 つの土台にしていたが、後に証明できていないと認めた(Lan90 序文、pp. xvi–xvii)。Furtwängler も同じ予想を立てていた(同 p. xvii)。
  • $h_p^+$ そのもの.$h_p^+$ は小さな $p$ では $1$ で、$h_p^+>1$ となる $p$ もあるが(2 行目の $p=257$)、$h_p^+$ の正確な値を計算するのは難しい。相対類数が大きな Bernoulli 数の積で表されるのと違い、$h_p^+$ は小さいことが多いと考えられるので、「$h_p^+$ を法 $p$ でランダムとみる」見積もりは危うい(Was82 p. 160)。

関連項目

参考文献

[1]
Lawrence C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, Springer-Verlag, Graduate Texts in Mathematics 83, 1982, Theorem 4.14 と CM 体の例(p. 40)、Theorem 5.34(p. 78)、p. 102(p ランクの注意)、§8.3 の Vandiver 予想の注意と確率的な見積もり(pp. 159–160)、Assumption I(p. 169)、Theorem 9.4(p. 174)、Theorem 10.1(p. 184)、Corollary 10.6(p. 186)、§10.3(p. 195:p < 125000 での確認と Theorem 10.14。Corollary 10.15、p. 197、証明と Mazur–Wiles の注意、p. 198。Theorem 10.16、p. 199)、表 §3(pp. 352–353、p. 355)
[2]
[3]
William Hart, David Harvey, Wilson Ong, Irregular primes to two billion, arXiv:1605.02398, 2016, 要旨と §1(p. 1)、Table 1(pp. 2–3)、§7(p. 13)

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