錐(圏論)(cone)とは、図式 $D\colon\mathcal{J}\to\mathcal{C}$ と対象 $X$ に対し、射の族 $\lambda_j\colon X\to D(j)$ で $\mathcal{J}$ のすべての射 $u\colon j\to k$ について $D(u)\circ\lambda_j=\lambda_k$ を満たすもののことで、$X$ を頂点、$\lambda_j$ を脚という。錐は定値図式 $\Delta X$ から $D$ への自然変換と同じものである。極限錐であることは、錐の圏の終対象であることとも、反変関手 $\operatorname{Cone}(-,D)$ を表現することとも同値である。錐は添字圏に始対象を付け加えた圏からの関手とも同じもので、添字圏が始対象をもてばそこでの値が極限になる。
圏論の極限(圏論)は、図式の対象すべてに射を出し、図式の射と両立するような対象のうち「最もよいもの」として定義される。このとき、一つの対象から図式の各対象へ伸びる射の族を 錐 という。一つの頂点から底面の図形の各点へ線を引いた立体の形になぞらえた名前である。錐は極限の定義の材料であると同時に、それ自体が「図式に整合するデータ」を表す。たとえば集合の圏で一点集合を頂点とする錐は、図式の各集合から一つずつ元を選び、図式の写像で互いに移り合うようにした族にほかならない。極限は、このようなデータをすべて一度に受け取る対象である。
位相空間の錐(空間 $X$ の $X\times[0,1]$ の一方の端を一点につぶした空間)は別の概念で、錐(位相) で扱う。
以下、$\mathcal{J}$、$\mathcal{C}$ を圏、$D\colon\mathcal{J}\to\mathcal{C}$ を図式(図式(圏論))とし、$D(j)$ を $D_j$ と書く。
$X$ を $\mathcal{C}$ の対象とする。$X$ を 頂点(vertex, apex)とする $D$ 上の 錐(cone)とは、射の族 $\lambda=(\lambda_j\colon X\to D_j)_{j\in\mathcal{J}}$ で、$\mathcal{J}$ のすべての射 $u\colon j\to k$ について
$$
D(u)\circ\lambda_j=\lambda_k
$$
を満たすものである。各 $\lambda_j$ を錐の 脚(leg)という。錐を $(X,\lambda)$ または $\lambda\colon X\to D$ と書く。
条件は、$\mathcal{J}$ の射 $u\colon j\to k$ ごとに、頂点 $X$ と $D_j$、$D_k$ のつくる三角形が可換であることを言っている。
$$
\xymatrix{
& X \ar[dl]_{\lambda_j} \ar[dr]^{\lambda_k} & \\
D_j \ar[rr]_{D(u)} & & D_k
}
$$
$D$ 上の錐 $(X,\lambda)$ から $(Y,\mu)$ への 射 とは、$\mathcal{C}$ の射 $f\colon X\to Y$ で、すべての $j\in\mathcal{J}$ について $\mu_j\circ f=\lambda_j$ を満たすものである。$D$ 上の錐とその射は、$\mathcal{C}$ の合成と恒等射によって圏をなす。これを $D$ 上の 錐の圏 といい、$\mathbf{Cone}(D)$ と書く。
錐の射の合成がまた錐の射であることは、$f\colon(X,\lambda)\to(Y,\mu)$、$g\colon(Y,\mu)\to(Z,\nu)$ について $\nu_j\circ g\circ f=\mu_j\circ f=\lambda_j$ となることから分かる。結合律と単位律は $\mathcal{C}$ から受け継ぐ。
$\mathcal{J}$ が小さく $\mathcal{C}$ の $\operatorname{Hom}$ がすべて集合のとき、対象 $X$ を頂点とする $D$ 上の錐の全体は集合をなす。これを $\operatorname{Cone}(X,D)$ と書く。射 $f\colon X'\to X$ に対し、錐 $\lambda$ の脚に $f$ を右から合成する写像 $\operatorname{Cone}(f,D)\colon\operatorname{Cone}(X,D)\to\operatorname{Cone}(X',D)$、$\lambda\mapsto(\lambda_j\circ f)_j$ を対応させると、反変関手 $\operatorname{Cone}(-,D)\colon\mathcal{C}^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Set}$ が得られる。
$(\lambda_j\circ f)_j$ が錐であることは $D(u)\circ\lambda_j\circ f=\lambda_k\circ f$ による。$\operatorname{Cone}(\operatorname{id}_X,D)$ は恒等写像で、$\operatorname{Cone}(f\circ g,D)=\operatorname{Cone}(g,D)\circ\operatorname{Cone}(f,D)$ は合成の結合律から従う(Rie16 Definition 3.1.5, p. 83)。
$D$ 上の錐 $(L,\pi)$ が 極限錐(limit cone, universal cone)であるとは、$D$ 上の任意の錐 $(X,\lambda)$ に対し、すべての $j$ について $\pi_j\circ u=\lambda_j$ を満たす射 $u\colon X\to L$ がただ一つ存在することをいう。このとき $L$ を $D$ の極限という(極限(圏論) の定義「極限」)。
向きを逆にして、射の族 $(\lambda_j\colon D_j\to X)_j$ で $\lambda_k\circ D(u)=\lambda_j$ を満たすものを $D$ 下の錐、または 余錐 という(余極限(圏論) の定義「余錐」)。$D$ 下の錐は、図式 $D^{\mathrm{op}}\colon\mathcal{J}^{\mathrm{op}}\to\mathcal{C}^{\mathrm{op}}$ 上の錐と同じものなので、以下の事実はすべて向きを逆にして余錐に移る。
錐は「図式を一つの対象から見た姿」である。頂点 $X$ からの射 $\lambda_j\colon X\to D_j$ は、$X$ の各「一般化された元」に $D_j$ の元を割り当てると考えられ、錐の条件はその割り当てが図式の射で互いに移り合うことを言う。錐の射は頂点の取り替えであり、錐 $(Y,\mu)$ と射 $f\colon X\to Y$ があれば、脚に $f$ を合成して $X$ を頂点とする錐が得られる。極限錐は、どの錐もそこから脚の合成でただ一通りに得られる「最も情報の多い錐」であり、錐の圏の終対象として捉えられる。
平行な射 $f,g\colon A\rightrightarrows B$ の図式の上の錐 $(X;\lambda_A,\lambda_B)$ は、条件 $f\circ\lambda_A=\lambda_B=g\circ\lambda_A$ を満たす。よって $\lambda_B$ は $\lambda_A$ から決まり、錐は $f\circ\lambda_A=g\circ\lambda_A$ を満たす射 $\lambda_A\colon X\to A$ と同じものである。その極限錐が等化子である。
余スパン $A\xrightarrow{f}C\xleftarrow{g}B$ の上の錐は、脚 $\lambda_A,\lambda_B,\lambda_C$ で $f\circ\lambda_A=\lambda_C=g\circ\lambda_B$ を満たすもの、すなわち可換な四角形 $f\circ\lambda_A=g\circ\lambda_B$ である。その極限錐が引き戻しである。
$D\colon\mathcal{J}\to\mathbf{Set}$ とし、一点集合 $1=\{\ast\}$ を頂点とする錐 $\lambda$ を考える。$x_j:=\lambda_j(\ast)\in D_j$ とおけば、錐の条件は「すべての $u\colon j\to k$ で $D(u)(x_j)=x_k$」となる。よって $\operatorname{Cone}(1,D)$ は、図式の写像で互いに移り合う元の族 $(x_j)_j$ の集合と一対一に対応する。$\mathcal{J}$ が小さいとき、この集合と射影の制限が $D$ の極限錐を与える(極限(圏論) の例「集合の圏の極限:整合する族」)。
半順序集合 $P$ を圏とみると、射は高々一本なので、図式 $D$ 上の錐の条件は自動的に満たされる。$x$ を頂点とする錐があることは、すべての $j$ で $x\le D_j$ であること、すなわち $x$ が値の集合 $\{D_j\}$ の下界であることにほかならない。極限が存在することと値の集合の下限(最大下界)が存在することは同値で、存在すれば両者は一致する(極限(圏論) の命題「順序集合の完備性」)。
$X\in\mathcal{C}$ とし、$\Delta X\colon\mathcal{J}\to\mathcal{C}$ を $X$ における定値図式(図式(圏論) の定義「定値図式」)とする。射の族 $(\lambda_j\colon X\to D_j)_j$ が $D$ 上の錐であることと、それを成分とする族が自然変換 $\Delta X\Rightarrow D$ であることは同値である。さらに、射 $f\colon X'\to X$ について、錐 $\lambda$ に $\operatorname{Cone}(f,D)$ を当てたものは、自然変換の合成 $\lambda\circ\Delta f\colon\Delta X'\Rightarrow D$ に等しい。
族 $(\lambda_j)_j$ が自然変換 $\Delta X\Rightarrow D$ であるとは、$\mathcal{J}$ のすべての射 $u\colon j\to k$ について $D(u)\circ\lambda_j=\lambda_k\circ(\Delta X)(u)$ が成り立つことである。$(\Delta X)(u)=\operatorname{id}_X$ なので、これは錐の条件 $D(u)\circ\lambda_j=\lambda_k$ と同じである。後半は、自然変換 $\Delta f$ の成分がすべて $f$ なので、合成 $\lambda\circ\Delta f$ の $j$ 成分が $\lambda_j\circ f$ になることによる。$\square$
この命題により $\operatorname{Cone}(X,D)$ は関手圏の $\operatorname{Hom}$ 集合 $\operatorname{Hom}(\Delta X,D)$ と一致し、$\operatorname{Cone}(-,D)$ は対角関手 $\Delta$ と $\operatorname{Hom}(-,D)$ の合成である(Rie16 Definition 3.1.2, p. 82、Mac98 Chapter III §4, pp. 68–69)。随伴関手 の記事が「自然変換 $\Delta X\Rightarrow D$ は錐」と述べているのはこの意味である。
極限は、錐の言葉で三通りに述べられる。
$\mathcal{J}$ は小さく、$\mathcal{C}$ の $\operatorname{Hom}$ はすべて集合であるとする。$D$ 上の錐 $(L,\pi)$ について、次の 3 つは同値である。
1 ⇔ 2:錐の射 $(X,\lambda)\to(L,\pi)$ とは、すべての $j$ で $\pi_j\circ u=\lambda_j$ を満たす射 $u\colon X\to L$ のことである。したがって「任意の錐 $(X,\lambda)$ からそのような $u$ がただ一つある」という 1 の条件は、「任意の対象から $(L,\pi)$ への錐の射がただ一つある」という終対象の条件と同じである。
1 ⇔ 3:$\theta_X(u)=\lambda$ は「すべての $j$ で $\pi_j\circ u=\lambda_j$」のことなので、$\theta_X$ が全単射であることは、各錐 $\lambda\in\operatorname{Cone}(X,D)$ にそのような $u$ がただ一つあることと同じである。これがすべての $X$ について成り立つことが 1 である。
自然性:射 $f\colon X'\to X$ と $u\colon X\to L$ について
$$
\theta_{X'}(u\circ f)=(\pi_j\circ u\circ f)_j=\operatorname{Cone}(f,D)\bigl(\theta_X(u)\bigr)
$$
であり、これは $\theta_{X'}\circ\operatorname{Hom}(f,L)=\operatorname{Cone}(f,D)\circ\theta_X$ を意味する。
後半:$\varphi$ を自然同型とし、$\pi:=\varphi_L(\operatorname{id}_L)\in\operatorname{Cone}(L,D)$ とおく。射 $u\colon X\to L$ について、$\varphi$ の自然性を $u$ に当てると
$$
\varphi_X(u)=\varphi_X(\operatorname{id}_L\circ u)=\operatorname{Cone}(u,D)\bigl(\varphi_L(\operatorname{id}_L)\bigr)=(\pi_j\circ u)_j=\theta_X(u)
$$
である。よって $\varphi=\theta$ であり、各 $\varphi_X$ は全単射なので 3 が成り立ち、$(L,\pi)$ は極限錐である。逆に極限錐 $(L,\pi)$ があれば、3 と自然性により $\theta$ が自然同型を与えるので、$\operatorname{Cone}(-,D)$ は $L$ で表現される。$\square$
2 は Rie16 Definition 3.1.6(p. 84)、3 と表現可能性は Definition 3.1.5(p. 83)の定義の仕方であり、この定理はそれらが 極限(圏論) の定義と一致することを示している。後半の議論は、表現する同型が恒等射の行き先で決まるという米田の補題の考え方を、この場合に書き下したものである。2 から、極限錐は錐の圏の終対象として同型を除いてただ一つに決まり、2 つの極限錐の間には脚と両立するただ一つの同型がある(極限(圏論) の命題「錐を保つ同型までの一意性」、終対象 の命題「終対象の一意性」)。終対象 の記事が「空図式上の錐の圏はもとの圏」と述べているのは、ex-ccn-discrete と 2 から、空図式の極限が終対象そのものになることである。
$F\colon\mathcal{C}\to\mathcal{C}'$ を関手とする。$(X,\lambda)$ が $D$ 上の錐なら、$(F(X),(F(\lambda_j))_j)$ は図式 $F\circ D$ 上の錐である。錐の射 $f\colon(X,\lambda)\to(Y,\mu)$ を $F(f)$ に送ると、関手 $\mathbf{Cone}(D)\to\mathbf{Cone}(F\circ D)$ が得られる。
$u\colon j\to k$ について $F(D(u))\circ F(\lambda_j)=F(D(u)\circ\lambda_j)=F(\lambda_k)$ なので錐である。錐の射 $f$ について $F(\mu_j)\circ F(f)=F(\mu_j\circ f)=F(\lambda_j)$ なので $F(f)$ は錐の射であり、$F$ が合成と恒等射を保つことから、この対応は関手である。$\square$
$D$ の極限錐の $F$ による像が $F\circ D$ の極限錐になるとき、$F$ は $D$ の極限を 保つ という。右随伴関手は極限を保ち(極限(圏論) の命題「右随伴は極限を保存する」)、極限錐の像がまた錐であることがその主張の前提になっている。
$u\colon\mathcal{I}\to\mathcal{J}$ を関手とする。$(X,\lambda)$ が $D$ 上の錐なら、$(X,(\lambda_{u(i)})_{i\in\mathcal{I}})$ は $D\circ u$ 上の錐である。とくに $D$ と $D\circ u$ がともに極限錐 $(L,\pi)$、$(L',\pi')$ をもつなら、すべての $i$ で $\pi'_i\circ c=\pi_{u(i)}$ を満たす射 $c\colon L\to L'$ がただ一つある。
$\mathcal{I}$ の射 $v\colon i\to i'$ について、$u(v)\colon u(i)\to u(i')$ は $\mathcal{J}$ の射なので、$D$ 上の錐の条件から $(D\circ u)(v)\circ\lambda_{u(i)}=D(u(v))\circ\lambda_{u(i)}=\lambda_{u(i')}$ である。後半は、$(L,(\pi_{u(i)})_i)$ が $D\circ u$ 上の錐であることと、$(L',\pi')$ の極限錐としての性質による。$\square$
たとえば余スパン $A\to C\leftarrow B$ を対象 $a,b$ だけの離散部分圏に制限すれば、引き戻しから積への射 $A\times_CB\to A\times B$ が得られる。集合の圏では、これは $\{(x,y)\mid f(x)=g(y)\}\subset A\times B$ の包含写像である。
錐は、図式に頂点を一つ付け加えた大きな図式とみることができる。
圏 $\mathcal{J}$ に対し、圏 $\mathcal{J}^{\triangleleft}$ を次で定める。対象は $\mathcal{J}$ の対象と新しい対象 $\bot$ である。$\mathcal{J}$ の対象どうしの射は $\mathcal{J}$ のものとし、各 $j\in\mathcal{J}$ について $\bot$ から $j$ への射をただ一つ($\ast_j$ と書く)、$\bot$ から $\bot$ への射を恒等射だけとし、$j$ から $\bot$ への射はないとする。合成は $\mathcal{J}$ の合成と、$u\colon j\to k$ について $u\circ\ast_j:=\ast_k$ で定める。
$\mathcal{J}^{\triangleleft}$ が圏であることは、$\bot$ から出る射の合成がいつも行き先だけで決まることから分かる。たとえば $v\circ(u\circ\ast_j)=v\circ\ast_k=\ast_l=(v\circ u)\circ\ast_j$ である($u\colon j\to k$、$v\colon k\to l$)。$\bot$ は $\mathcal{J}^{\triangleleft}$ の始対象であり、$\mathcal{J}$ は $\mathcal{J}^{\triangleleft}$ の充満部分圏である。
$X\in\mathcal{C}$ とする。$D$ 上の $X$ を頂点とする錐 $\lambda$ に対し、関手 $\widehat{\lambda}\colon\mathcal{J}^{\triangleleft}\to\mathcal{C}$ を、$\mathcal{J}$ 上では $D$、$\widehat{\lambda}(\bot):=X$、$\widehat{\lambda}(\ast_j):=\lambda_j$ で定める。この対応は、$X$ を頂点とする $D$ 上の錐の全体から、$\mathcal{J}$ への制限が $D$ に等しく $\bot$ を $X$ に送る関手 $\mathcal{J}^{\triangleleft}\to\mathcal{C}$ の全体への全単射である。
$\widehat{\lambda}$ が関手であること:$\mathcal{J}$ の射どうしの合成と恒等射は $D$ が保つ。$\bot$ の恒等射は $\operatorname{id}_X$ に送られる。残る合成は $u\circ\ast_j=\ast_k$($u\colon j\to k$)の形だけで、$\widehat{\lambda}(u)\circ\widehat{\lambda}(\ast_j)=D(u)\circ\lambda_j=\lambda_k=\widehat{\lambda}(\ast_k)$ は錐の条件そのものである。
逆向き:$E\colon\mathcal{J}^{\triangleleft}\to\mathcal{C}$ が $\mathcal{J}$ 上で $D$ に等しく $E(\bot)=X$ を満たすとき、$\lambda_j:=E(\ast_j)\colon X\to D_j$ とおく。$E$ が合成を保つことから $D(u)\circ\lambda_j=E(u\circ\ast_j)=E(\ast_k)=\lambda_k$ なので、$\lambda$ は錐である。
2 つの対応が互いに逆であること:$\lambda$ から $\widehat{\lambda}$ を作って $\ast_j$ の行き先をとれば $\lambda_j$ に戻る。$E$ から $\lambda$ を作って $\widehat{\lambda}$ を作ると、$\mathcal{J}$ 上・$\bot$・各 $\ast_j$ で $E$ と値が一致し、$\mathcal{J}^{\triangleleft}$ の射はこれらで尽きるので $\widehat{\lambda}=E$ である。$\square$
図式とその上の極限錐を合わせた関手 $\mathcal{J}^{\triangleleft}\to\mathcal{C}$ を 極限図式 ということがある(Rie16 Remark 3.1.8, p. 85)。∞圏では、錐をこの形の延長として定義し、錐のなす∞圏の終対象として極限を定める(極限(∞圏))。通常の圏ではこの定義は thm-ccn-limit-equivalent の 2 に一致する(極限(∞圏) の命題「通常の錐圏との一致」)。
$\mathcal{J}$ が始対象 $j_0$ をもつとし、各 $j$ について $j_0$ から $j$ へのただ一つの射を $!_j$ と書く。任意の $X\in\mathcal{C}$ について、錐 $\lambda$ を脚 $\lambda_{j_0}$ に送る写像
$$
\operatorname{Cone}(X,D)\to\operatorname{Hom}(X,D_{j_0}),\qquad\lambda\mapsto\lambda_{j_0}
$$
は全単射で、逆写像は $a\mapsto(D(!_j)\circ a)_j$ である。とくに $(D_{j_0},(D(!_j))_j)$ は $D$ の極限錐であり、$\lim D\cong D_{j_0}$ である。
$a\colon X\to D_{j_0}$ について $\lambda_j:=D(!_j)\circ a$ とおく。$u\colon j\to k$ について、$u\circ!_j$ と $!_k$ はともに $j_0$ から $k$ への射なので等しく、$D(u)\circ\lambda_j=D(u\circ!_j)\circ a=D(!_k)\circ a=\lambda_k$ である。よって $\lambda$ は錐であり、$!_{j_0}=\operatorname{id}_{j_0}$ なので $\lambda_{j_0}=a$ である。逆に $\lambda$ を任意の錐とすると、錐の条件を $!_j\colon j_0\to j$ に当てて $\lambda_j=D(!_j)\circ\lambda_{j_0}$ を得る。よって錐は脚 $\lambda_{j_0}$ で決まり、2 つの写像は互いに逆である。
$X:=D_{j_0}$、$a:=\operatorname{id}$ に対応する錐を $\pi=(D(!_j))_j$ とすると、上の全単射は $u\mapsto(\pi_j\circ u)_j$ と一致する($(D(!_j)\circ u)_j$ は $u$ に対応する錐だから)。よって thm-ccn-limit-equivalent の 3 により $(D_{j_0},\pi)$ は極限錐である。$\square$
これは Rie16 Exercise 3.1.vii(p. 92)であり、双対は 余極限(圏論) の命題「終対象をもつ添字圏上の余極限」である。たとえばスパン $A\xleftarrow{f}C\xrightarrow{g}B$ の形 $a\leftarrow c\to b$ では $c$ が始対象なので、スパンの極限は $C$ である(スパンで意味があるのは余極限、すなわち押し出しのほうである)。射 $f\colon A\to B$ 一本の図式 $0\to1$ の極限は $A$ である。一方、余スパンの形 $a\to c\leftarrow b$ や離散圏には始対象がなく、極限は図式の値の一つとは限らない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 脚が図式の射と両立する | 図式 $\{0,1\}\xrightarrow{\operatorname{id}}\{0,1\}$ と脚 $\operatorname{id}$、互換 $\sigma$ | 射の族が錐である |
| 因子化がただ一つ | 二元集合から一点集合 2 つへの錐 | 錐が極限錐である |
| 因子化が存在する | 空集合を頂点とする $\{\ast\},\{\ast\}$ 上の錐 | 錐が極限錐である |
| 因子化が存在する(脚がすべて単射でも) | $(\mathbb{Z},\mathbb{Z})$ 上の錐 $(\mathbb{Z};\operatorname{id},\operatorname{id})$ | 錐が極限錐である |
| 添字圏が始対象をもつ | 集合の余スパン $\{0\}\to\{0,1\}\leftarrow\{1\}$ | 極限が図式の値の一つに同型 |
1 行目:$u=\operatorname{id}$ を形の射 $0\to1$ とすると条件は $\operatorname{id}\circ\operatorname{id}=\sigma$ となり成り立たない。2 行目は 極限(圏論) の注意「反例:脚があるだけでは極限にならない」。3 行目:一点集合から空集合への写像はないので、一点集合を頂点とする錐(脚は 2 つとも $\ast\mapsto\ast$)から因子化する射がない。4 行目:$\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}$ を頂点とする射影の錐 $(\operatorname{pr}_1,\operatorname{pr}_2)$ について、$u\colon\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ が $\operatorname{id}\circ u=\operatorname{pr}_1$ と $\operatorname{id}\circ u=\operatorname{pr}_2$ を同時に満たすことはない($(0,1)$ で値が違う)。脚はどちらも単射だが極限錐でない。5 行目:包含写像の余スパンの極限は $\{(x,y)\in\{0\}\times\{1\}\mid x=y\}=\emptyset$ であり、図式の値 $\{0\},\{1\},\{0,1\}$ のどれとも同型でない。
錐は、図式の各対象へ「一本ずつ」射を出すデータである。この「一本ずつ」を、各対象へ集合や対象で指定した本数の射の族に取り替えたものが重み付き極限の重みである。重みが一点集合への定値関手のとき、重み付き極限は錐による通常の極限に戻る(重み付き極限)。豊穣圏では錐の集合の代わりに $\operatorname{Hom}$ 対象の間の同型を要求し、台となる通常の圏で錐を使って作った極限が、豊穣圏での極限になるとは限らない(極限(豊穣圏))。
位相空間 $X$ の錐 $CX=X\times[0,1]/X\times\{1\}$(錐(位相))と圏論の錐は別の概念である。ただし名前の由来は共通で、どちらも「底面の各点を一つの頂点と線で結んだ形」を表す。圏論の錐の絵では、底面が図式、頂点が $X$、母線が脚にあたる。
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