準開基

同義語:部分基準基底subbasesubbasis

概要

準開基(subbase)とは、位相空間の開集合の族であって、その有限個の元の共通部分(0 個の共通部分は全体)の和集合としてすべての開集合が得られるもののことである。どんな部分集合の族も、それを含む最小の位相の準開基になり、直積位相・始位相・順序位相はこの方法で定義される。写像の連続性やネットの収束は準開基の元だけで判定でき、可算な準開基をもつ空間は第2可算である。Alexander の準開基定理によりコンパクト性も準開基の元による被覆で判定でき、その応用として、すべての部分集合が下限をもつ全順序集合は順序位相でコンパクトになる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 開基, 連続写像

位相を具体的に与えるとき、開集合をすべて書き並べるのは難しい。開基は「和集合をとればすべての開集合が得られる族」であるが、ある族が開基になるかどうかには交わりについての条件を確かめる手間がある。準開基 はこの条件も外したもので、「有限個の共通部分をとってから和集合をとる」とすべての開集合が得られる族である。どんな部分集合の族も準開基として位相を一つ定めるので、「これらの集合を開集合にしたい」という要求から位相を作る最も自由な方法になる。直積位相・始位相・順序位相・コンパクト開位相は、どれも準開基を指定して定義される。
本記事では、準開基の定義と生成する位相を述べたあと、連続性と収束が準開基の元だけで判定できること、可算な準開基をもつ空間が第2可算であることを証明する。さらに、コンパクト性を準開基の元による被覆で判定する Alexander の準開基定理を使い、すべての部分集合が下限をもつ全順序集合が順序位相でコンパクトであることを証明する。

定義

$X$ を集合、$\mathcal{S}$ を $X$ の部分集合の族とする。$\mathcal{S}$ の有限個の元の共通部分 $S_1\cap\cdots\cap S_k$($k\ge0$、$S_i\in\mathcal{S}$)の全体を $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ と書く。ここで $k=0$ のときの共通部分(空な共通部分)は $X$ と約束する。したがってつねに $X\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$ であり、$\mathcal{S}\subset\mathcal{B}(\mathcal{S})$ である。

準開基

$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。$X$ の部分集合の族 $\mathcal{S}$ が位相 $\mathcal{O}$ の 準開基(subbase, subbasis)であるとは、$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ であり、かつ $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ が $\mathcal{O}$ の開基であることをいう。すなわち、$\mathcal{S}$ の元はすべて開集合であり、すべての開集合が $\mathcal{S}$ の元の有限個の共通部分の和集合として書けることをいう。

$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ なら、位相は有限個の共通部分で閉じているので $\mathcal{B}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}$ である。よって準開基であるための条件は、開集合がすべて $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元の和集合になることだけである。これを各点で言い換えておく。

各点での言い換え

$(X,\mathcal{O})$ を位相空間、$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ とする。$\mathcal{S}$ が $\mathcal{O}$ の準開基であるための必要十分条件は、任意の開集合 $U$ と任意の点 $x\in U$ に対して、$\mathcal{S}$ の有限個の元 $S_1,\dots,S_k$($k\ge0$)で
$$ x\in S_1\cap\cdots\cap S_k\subset U $$
となるものがあることである。

開集合を点ごとに覆う

$\mathcal{S}$ が準開基なら、$U=\bigcup_jB_j$($B_j\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$)と書けるので、$x\in U$ はある $B_j$ に属し、$B_j=S_1\cap\cdots\cap S_k$ が求めるものである。逆に条件が成り立つとする。開集合 $U$ の各点 $x$ に対して条件の共通部分 $B_x\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$ をとると、$x\in B_x\subset U$ なので $U=\bigcup_{x\in U}B_x$ である。よって $U$ は $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元の和集合であり、$\mathcal{S}$ は準開基である。$\square$

次の命題により、どんな族も準開基として位相をただ一つ定める。

準開基が生成する位相

$X$ を集合、$\mathcal{S}$ を $X$ の部分集合の任意の族とし、$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の部分族の和集合の全体を $\mathcal{O}(\mathcal{S})$ とする。

  1. $\mathcal{O}(\mathcal{S})$ は $X$ 上の位相であり、$\mathcal{S}$ を含む位相のうちで最小のものである。
  2. $\mathcal{S}$ は $\mathcal{O}(\mathcal{S})$ の準開基である。
  3. $X$ 上の位相 $\mathcal{O}$ について、$\mathcal{S}$ が $\mathcal{O}$ の準開基であることと、$\mathcal{O}=\mathcal{O}(\mathcal{S})$ であることは同値である。
    $\mathcal{O}(\mathcal{S})$ を $\mathcal{S}$ が 生成する位相 という。
有限個の共通部分と和集合

要点:$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ は有限個の共通部分で閉じているので、その元の和集合の全体は分配律 $W\cap W'=\bigcup(B\cap B')$ により共通部分でも閉じ、位相になる。$\mathcal{S}$ を含む位相は $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ を含み、したがってその和集合もすべて含む。

詳しい証明を開く

1:$\emptyset$ は空な部分族の和集合であり、$X\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$ である。$\mathcal{O}(\mathcal{S})$ の元の族の和集合は、それぞれを表す $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の部分族を合わせた部分族の和集合なので、$\mathcal{O}(\mathcal{S})$ に属する。$W=\bigcup_{B\in\mathcal{C}}B$、$W'=\bigcup_{B'\in\mathcal{C}'}B'$($\mathcal{C},\mathcal{C}'\subset\mathcal{B}(\mathcal{S})$)について

$$W\cap W'=\bigcup_{B\in\mathcal{C},\,B'\in\mathcal{C}'}(B\cap B')$$

であり、$B=S_1\cap\cdots\cap S_k$ と $B'=S'_1\cap\cdots\cap S'_l$ の共通部分は $k+l$ 個の元の共通部分なので $B\cap B'\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$ である。よって $W\cap W'\in\mathcal{O}(\mathcal{S})$ であり、$\mathcal{O}(\mathcal{S})$ は位相である。$\mathcal{S}\subset\mathcal{B}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}(\mathcal{S})$ である。$\mathcal{O}'$ を $\mathcal{S}$ を含む位相とすると、$\mathcal{O}'$ は $X$ を含み有限個の共通部分で閉じているので $\mathcal{B}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}'$ であり、和集合で閉じているので $\mathcal{O}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}'$ である。

2:$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}(\mathcal{S})$ であり、$\mathcal{O}(\mathcal{S})$ の元は定義により $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元の和集合である。

3:$\mathcal{S}$ が $\mathcal{O}$ の準開基なら、$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ と 1 の最小性から $\mathcal{O}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}$ であり、$\mathcal{O}$ の元は $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元の和集合なので $\mathcal{O}\subset\mathcal{O}(\mathcal{S})$ である。逆は 2 である。$\square$

$\mathcal{S}$ の元の和集合をとるだけでは一般に位相にならない。有限個の共通部分を先にとることが必要である(rem-subbase-union-only)。同じ主張は 開基 の記事の命題「任意の族は準開基として位相を生成する」でも述べられている。

空な共通部分と被覆の条件

本記事では空な共通部分を $X$ と約束し、$X$ をつねに $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ に入れた。この約束をせず、「$\mathcal{S}$ が $X$ を覆い、空でない有限個の共通部分の全体が開基になる」ことを準開基の定義とする流儀もある。$\mathcal{S}$ が $X$ を覆うとき、$X$ は $\mathcal{S}$ の元の和集合なので、二つの流儀で生成される位相は同じである。違いが出るのは $\mathcal{S}$ が $X$ を覆わないときで、たとえば $\mathcal{S}=\emptyset$ は本記事の意味では密着位相 $\{\emptyset,X\}$ の準開基であるが、もう一方の流儀では準開基と呼ばない。Stacks は本記事と同じく空な共通部分を $X$ とする(Lemma 5.5.5)。

直感

準開基の元は「$x_i\in U$」「$f(x)< a$」のような一つずつの条件を表す。開集合は、有限個の条件を同時に課した集合($\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元)を好きなだけ合わせたものである。「一度に課す条件は有限個」という制約が位相の粗さを決める。直積位相で有限個の座標しか制限されないのはこのためであり、連続性・収束・コンパクト性を準開基の元だけで確かめられるのも、有限個の条件を同時に扱う操作が各条件ごとの扱いに分解できるからである。

例と反例

実数直線の半直線

$\mathbb{R}$ の半直線の族
$$ \mathcal{S}:=\{(-\infty,a)\mid a\in\mathbb{R}\}\cup\{(b,\infty)\mid b\in\mathbb{R}\} $$
は通常の位相の準開基である。各元は開集合である。開集合 $U$ と $x\in U$ に対し $(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subset U$ となる $\varepsilon>0$ をとると
$$ x\in(x-\varepsilon,x+\varepsilon)=(x-\varepsilon,\infty)\cap(-\infty,x+\varepsilon)\subset U $$
なので、prop-subbase-pointwise により準開基である。$a,b$ を有理数に限った可算な族も準開基である。$x-\varepsilon< p< x< q< x+\varepsilon$ となる有理数 $p,q$ をとれば $x\in(p,\infty)\cap(-\infty,q)\subset U$ となるからである。一方、$\mathcal{S}$ は開基ではない。開区間 $(0,1)$ は半直線を一つも含まない(半直線は有界でない)ので、$\mathcal{S}$ の元の和集合として書けない。

全順序集合の順序位相

$(L,<)$ を全順序集合とし、$c\in L$ に対して
$$ L_{< c}:=\{x\in L\mid x< c\},\qquad L_{>c}:=\{x\in L\mid x>c\} $$
とおく。これらの全体が生成する位相を $L$ の 順序位相(order topology)という(順序位相 の記事の定義「順序位相」と同じである)。ex-subbase-real-rays により $\mathbb{R}$ の順序位相は通常の位相である。別の例として、$L=\{0,1,2,\dots\}\cup\{\omega\}$ に $0<1<2<\cdots<\omega$ の順序を入れる(順序数 $\omega+1$ である)。各自然数 $n\ge1$ について $\{n\}=L_{< n+1}\cap L_{>n-1}$、また $\{0\}=L_{<1}$ なので、自然数はすべて孤立した点である。$\omega$ を含む半直線は $L_{>m}$($m$ は自然数)の形のものだけであり、その有限個の共通部分は $L_{>m}$ の形か $L$ である。よって $\omega$ を含む開集合は、ある $L_{>m}$ を含み、有限個を除くすべての自然数を含む。

補有限位相の準開基

$X$ を集合とし、$\mathcal{S}:=\{X\setminus\{x\}\mid x\in X\}$ とする。$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ は有限集合 $F\subset X$ の補集合 $X\setminus F$ の全体であり、空でない族の和集合 $\bigcup_j(X\setminus F_j)=X\setminus\bigcap_jF_j$ もまた有限集合の補集合である。よって $\mathcal{S}$ が生成する位相は $\emptyset$ と有限集合の補集合からなる補有限位相である。位相 $\mathcal{O}$ で一点集合がすべて閉集合であることは $\mathcal{S}\subset\mathcal{O}$ と同じなので、prop-subbase-generated-topology の 1 により、補有限位相は一点集合がすべて閉集合になる位相(T1空間の位相)のうちで最小のものである。

準開基で定義される位相

次の位相は、どれも準開基を指定して定義される。

  1. 直積位相:位相空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の直積 $\prod_iX_i$ 上で、射影による開集合の逆像 $\pi_i^{-1}(U)$ の全体が生成する位相。
  2. 始位相:集合 $X$ から位相空間への写像の族 $(f_i\colon X\to Y_i)$ について、$f_i^{-1}(U)$ の全体が生成する位相。直積位相は射影の族の始位相である。
  3. コンパクト開位相:連続写像の空間 $C(X,Y)$ 上で、コンパクト集合 $K\subset X$ と開集合 $U\subset Y$ に対する $\{f\mid f(K)\subset U\}$ の全体が生成する位相。
    どの場合も、これらの族は一般に開基ではない。たとえば $\mathbb{R}^2$ で $(0,1)\times(0,1)$ は二つの帯 $\pi_1^{-1}((0,1))$、$\pi_2^{-1}((0,1))$ の共通部分であるが、空でない帯を一つも含まない。

一つの位相の準開基はただ一つではない。開基はそれ自身が準開基であり($\mathcal{B}\subset\mathcal{B}(\mathcal{B})$ で、$\mathcal{B}(\mathcal{B})$ の元はすべて開集合)、準開基に開集合を付け加えても準開基のままである。$\mathbb{R}$ では、半直線の族も開区間の族も通常の位相の準開基である。二つの族 $\mathcal{S},\mathcal{S}'$ が同じ位相を生成することは、prop-subbase-generated-topology の 1 により、$\mathcal{S}\subset\mathcal{O}(\mathcal{S}')$ かつ $\mathcal{S}'\subset\mathcal{O}(\mathcal{S})$ であることと同値である。

反例:共通部分をとらずに和集合だけをとる

ex-subbase-real-rays の半直線の族 $\mathcal{S}$ について、$\mathcal{S}$ の元の和集合の全体は位相にならない。$(-\infty,1)$ と $(0,\infty)$ は $\mathcal{S}$ の元であるが、共通部分 $(0,1)$ は半直線を含まないので $\mathcal{S}$ の元の和集合ではない。満たす性質は「$\mathcal{S}$ は $\mathbb{R}$ を覆う開集合の族である」こと、満たさない性質は「$\mathcal{S}$ の元の和集合の全体が有限個の共通部分で閉じている」ことであり、破る含意は「族の元の和集合の全体が位相になる」ことである。準開基の定義で有限個の共通部分を先にとるのはこのためである。

性質

以下、$(X,\mathcal{O})$ を位相空間、$\mathcal{S}$ をその準開基とする。

連続性と収束の判定

連続性の準開基による判定

$Y$ を位相空間、$f\colon Y\to X$ を写像とする。$f$ が連続であるための必要十分条件は、すべての $S\in\mathcal{S}$ について逆像 $f^{-1}(S)$ が $Y$ の開集合であることである。

逆像で開になる集合の全体

$f$ が連続なら、$S\in\mathcal{S}$ は開集合なので $f^{-1}(S)$ は開集合である。逆を示す。
$$ \mathcal{O}':=\{W\subset X\mid f^{-1}(W)\text{ は }Y\text{ の開集合}\} $$
とおく。$f^{-1}(\emptyset)=\emptyset$、$f^{-1}(X)=Y$ であり、逆像は和集合と共通部分を保つ($f^{-1}(\bigcup_jW_j)=\bigcup_jf^{-1}(W_j)$、$f^{-1}(W\cap W')=f^{-1}(W)\cap f^{-1}(W')$)ので、$\mathcal{O}'$ は $X$ 上の位相である。仮定により $\mathcal{S}\subset\mathcal{O}'$ である。prop-subbase-generated-topology の 1 と 3 により $\mathcal{O}=\mathcal{O}(\mathcal{S})\subset\mathcal{O}'$ であり、これは $X$ のすべての開集合の逆像が開集合であること、すなわち $f$ が連続であることを意味する。$\square$

直積位相の場合が 直積位相 の記事の補題「準開基による連続性の判定」、始位相の場合が 始位相 の記事の定理「始位相への写像の連続性」である。ほかにも次のように使われる。

連続性の判定の使い方
  1. 関数 $f\colon Y\to\mathbb{R}$ が連続であるための必要十分条件は、すべての $a,b\in\mathbb{R}$ について $\{y\mid f(y)< a\}$ と $\{y\mid f(y)>b\}$ が開集合であることである(ex-subbase-real-rays の準開基に適用)。前者がすべての $a$ について開であることが上半連続性、後者がすべての $b$ について開であることが下半連続性なので、連続性は上半連続かつ下半連続であることと同値である(半連続 の記事の命題「連続性との関係」)。
  2. 全順序集合 $L$、$M$ の間の順序を保つ全単射 $\varphi\colon L\to M$($x< y\iff\varphi(x)<\varphi(y)$)は、順序位相について同相写像である。実際 $\varphi^{-1}(M_{< c})=L_{<\varphi^{-1}(c)}$、$\varphi^{-1}(M_{>c})=L_{>\varphi^{-1}(c)}$ なので $\varphi$ は連続であり、$\varphi^{-1}$ も順序を保つ全単射なので同じ理由で連続である(順序位相 の記事の命題「順序同型は同相写像」と同じ主張で、ここでは準開基による判定の使い方の例として同じ議論を再掲した)。たとえば $\tan\colon(-\pi/2,\pi/2)\to\mathbb{R}$ は単調増加な全単射なので、開区間 $(-\pi/2,\pi/2)$ の順序位相から $\mathbb{R}$ への同相写像である。

収束も準開基の元だけで判定できる。ネットの収束の定義は ネット の記事の定義「ネットとその収束」による。点列は添字集合が自然数全体のネットである。

収束の準開基による判定

$(x_d)_{d\in D}$ を $X$ のネット、$x\in X$ とする。$(x_d)$ が $x$ に収束するための必要十分条件は、$x$ を含むすべての $S\in\mathcal{S}$ について、ある $d_S\in D$ があって、$d\ge d_S$ を満たすすべての $d$ で $x_d\in S$ となることである。

有限個の添字の上界をとる

$x$ を含む $S\in\mathcal{S}$ は $x$ の近傍なので、収束すれば条件が成り立つ。逆に条件を仮定し、$V$ を $x$ の近傍とする。$x\in U\subset V$ となる開集合 $U$ をとり、prop-subbase-pointwise により $x\in S_1\cap\cdots\cap S_k\subset U$ となる $S_1,\dots,S_k\in\mathcal{S}$ をとる。$k=0$ なら $U=X$ なので $x_d\in V$ はすべての $d$ で成り立つ。$k\ge1$ なら、各 $S_i$ は $x$ を含むので仮定の $d_{S_i}$ がある。$D$ は有向集合なので、有限個の元 $d_{S_1},\dots,d_{S_k}$ の上界 $d_0$($d_0\ge d_{S_i}$)がある(二つの元の上界をとることを $k-1$ 回くり返す)。$d\ge d_0$ なら $d\ge d_{S_i}$ なのですべての $i$ で $x_d\in S_i$ となり、$x_d\in S_1\cap\cdots\cap S_k\subset V$ である。$\square$

直積空間 $\prod_iX_i$ に適用すると、ネットが $x$ に収束することと、各座標 $\pi_i(x_d)$ が $\pi_i(x)$ に収束することが同値になる。$x$ を含む準開基の元 $\pi_i^{-1}(U)$ に最終的に入ることは、$\pi_i(x_d)$ が $\pi_i(x)$ の開近傍 $U$ に最終的に入ることだからである。$\mathbb{R}$ の半直線の準開基に適用すると、$x_d\to x$ は「$a>x$ なら最終的に $x_d< a$、$b< x$ なら最終的に $x_d>b$」と同値になる。

可算性

可算な準開基と第2可算性
  1. $\mathcal{S}$ が $m$ 個の元からなる有限集合なら、$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元は $2^m$ 個以下であり、$X$ の開集合は $2^{2^m}$ 個以下である。
  2. $\mathcal{S}$ が高々可算なら、$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ は高々可算な開基であり、$X$ は第2可算公理を満たす。
有限部分集合で数える

$\mathcal{S}$ の有限部分集合 $\mathcal{T}$ に共通部分 $\bigcap\mathcal{T}$($\mathcal{T}=\emptyset$ なら $X$)を対応させる写像は、$\mathcal{S}$ の有限部分集合の全体から $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ への全射である。
1:$\mathcal{S}$ の部分集合は $2^m$ 個なので、$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の元は $2^m$ 個以下である。開集合は $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の部分族の和集合なので、その個数は $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ の部分族の個数 $2^{2^m}$ 以下である。
2:$\mathcal{S}$ が有限なら 1 による。無限なら、全単射 $n\mapsto S_n$ で $\mathcal{S}=\{S_0,S_1,S_2,\dots\}$ と番号を付ける。自然数全体の有限部分集合 $F$ に $\sum_{n\in F}2^n$ を対応させる写像は、2 進法の表示の一意性により、有限部分集合の全体から自然数全体への全単射である。よって $\mathcal{S}$ の有限部分集合の全体は可算であり、その全射像である $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ は高々可算である。$\mathcal{B}(\mathcal{S})$ は準開基の定義により開基なので、$X$ は高々可算な開基をもつ。$\square$

ex-subbase-real-rays の有理数の半直線から、$\mathbb{R}$ が第2可算であることがあらためてわかる。$\mathbb{R}$ 自身の開区間の族は非可算であるが、準開基を使えば可算性の確認が数え上げだけで済む。同様に、第2可算空間 $X_n$(可算な開基 $\mathcal{B}_n$ をもつ)の可算個の直積では、$\pi_n^{-1}(B)$($n\ge1$、$B\in\mathcal{B}_n$)の全体が可算な準開基になる($U$ が $\mathcal{B}_n$ の元の和集合なら $\pi_n^{-1}(U)$ はそれらの逆像の和集合なので、この族が生成する位相は直積位相に一致する)。よって可算個の直積は第2可算である。この事実は 第2可算公理 の記事の命題「可算個の直積」にもある。逆向きに、非可算集合上の離散空間は第2可算でない(第2可算公理 の記事の注意「反例:非可算集合上の離散空間」)ので、thm-subbase-second-countable により可算な準開基をもたない。

部分空間

部分空間への制限

$A\subset X$ とし、$A$ に相対位相を入れる。このとき $\mathcal{S}_A:=\{S\cap A\mid S\in\mathcal{S}\}$ は $A$ の位相の準開基である。

共通部分と $A$ との交わりは交換する

$S\cap A$ は $A$ の開集合である。$(S_1\cap A)\cap\cdots\cap(S_k\cap A)=(S_1\cap\cdots\cap S_k)\cap A$($k=0$ のときは両辺とも $A$)なので、$\mathcal{B}(\mathcal{S}_A)=\{B\cap A\mid B\in\mathcal{B}(\mathcal{S})\}$ である。$A$ の開集合は $X$ の開集合 $U$ により $U\cap A$ と書け、$U=\bigcup_jB_j$($B_j\in\mathcal{B}(\mathcal{S})$)なら $U\cap A=\bigcup_j(B_j\cap A)$ である。よって $A$ の開集合はすべて $\mathcal{B}(\mathcal{S}_A)$ の元の和集合である。$\square$

コンパクト性の判定

コンパクト空間の定義(任意の開被覆が有限部分被覆をもつ。Hausdorff 性は含めない)を確かめるには、本来すべての開被覆を調べる必要がある。準開基の元だけからなる被覆を調べれば十分であることを主張するのが次の定理である。

Alexander の準開基定理

$\mathcal{S}$ の元だけからなる $X$ の被覆がどれも有限部分被覆をもつならば、$X$ はコンパクトである。

Alexander の準開基定理の使いどころ

コンパクト性の定義は任意の開被覆を調べるが、この定理により準開基の元だけからなる被覆を調べれば十分になる。逆向きはコンパクト性の定義から明らかである。この定理は、直積空間のコンパクト性(Tychonoff の定理)や、順序位相でのコンパクト性の判定に使われる。証明では Zorn の補題を用いる。

証明は Tychonoffの定理 の記事の定理「Alexander の準開基定理」にある。有限部分被覆をもたない開被覆のうち極大なものを Zornの補題 でとり、それに含まれる準開基の元がすでに $X$ を覆うことを示して矛盾を導く(Stacks Lemma 5.12.15 も同じ方針である)。逆向きは明らかで、$X$ がコンパクトなら準開基の元による被覆も開被覆なので有限部分被覆をもつ。この定理は Tychonoff の定理(コンパクト空間の直積はコンパクト)の証明に使われる。直積位相の準開基の元 $\pi_i^{-1}(U)$ だけによる被覆では、ある座標 $i$ について、そこに現れる $U$ たちがすでに因子 $X_i$ を覆うことが示せ、$X_i$ のコンパクト性から有限個を選べるからである(証明は同記事の定理「Tychonoff の定理」の第 2 の証明)。ここでは別の応用として、順序位相でのコンパクト性を示す。

下限をもつ全順序集合のコンパクト性

$(L,<)$ を全順序集合とし、$L$ のすべての部分集合(空集合を含む)が $L$ の中に下限をもつとする。このとき $L$ は順序位相についてコンパクトである。さらに、準開基の元 $L_{< c}$、$L_{>d}$ だけからなる $L$ の被覆は、2 個以下の元からなる部分被覆をもつ。

空集合の下限は $L$ の最大元である($L$ のすべての元が空集合の下界なので、最大の下界は $L$ の最大元)。仮定には $L$ が空でないことと、最大元・最小元をもつことが含まれる。

被覆に加わる左の半直線の下限を見る

ex-subbase-order-topology の半直線の族 $\mathcal{S}$ は順序位相の準開基なので、thm-subbase-alexander により後半を示せばよい。$\mathcal{C}\subset\mathcal{S}$ を $L$ の被覆とし、
$$ D:=\{d\in L\mid L_{>d}\in\mathcal{C}\},\qquad s:=\inf D $$
とおく。$s$ は $D$ の下界なので、すべての $d\in D$ について $s\le d$ であり、$s\notin L_{>d}$ である。$\mathcal{C}$ は $L$ を覆うので、$s$ を含む $\mathcal{C}$ の元は $L_{< c}$ の形のものであり、$s< c$ となる $c$ で $L_{< c}\in\mathcal{C}$ となるものがある。
この $c$ は $D$ の下界ではない。下界なら、下限が最大の下界であることから $c\le s$ となり、$s< c$ に反する。よって $c\le d$ とならない $d\in D$ があり、全順序なので $d< c$ である。このとき $L=L_{< c}\cup L_{>d}$ である。実際 $x\in L$ が $x< c$ を満たさなければ $x\ge c>d$ なので $x\in L_{>d}$ である。$L_{< c},L_{>d}\in\mathcal{C}$ なので、これが 2 個の元からなる部分被覆である。$\square$

閉区間と順序数
  1. 実数 $a\le b$ について、閉区間 $[a,b]$ は $\mathbb{R}$ の部分空間としてコンパクトである。
  2. $\alpha$ を順序数とすると、$\alpha+1=\{\beta\mid\beta\le\alpha\}$ は順序位相についてコンパクトである。
下限の存在と位相の一致を確かめる

1:$[a,b]$ の空でない部分集合 $A$ は $a$ を下界にもつので、実数の連続性により $\mathbb{R}$ の中に下限 $\inf A$ をもち、$a\le\inf A\le b$ である(右の不等号は $A$ の元が $b$ 以下であることによる)。これは $[a,b]$ の中での下限でもある。空集合の $[a,b]$ の中での下限は最大元 $b$ である。よって thm-subbase-complete-order-compact により、$[a,b]$ は自身の順序位相でコンパクトである。
あとは $[a,b]$ の順序位相が相対位相と一致することを示せばよい。prop-subbase-subspace により、半直線と $[a,b]$ の共通部分の全体は相対位相の準開基であり、この族と $[a,b]$ の順序位相の準開基とは $\emptyset$ と $[a,b]$ だけが違う。$\emptyset$ と $[a,b]$ はどの位相にも属するので、prop-subbase-generated-topology の 1 により二つの族が生成する位相は同じである。

族の違いの確認を開く

prop-subbase-subspace を ex-subbase-real-rays の準開基に適用すると、$(-\infty,c)\cap[a,b]$ と $(c,\infty)\cap[a,b]$($c\in\mathbb{R}$)の全体が相対位相の準開基である。$(-\infty,c)\cap[a,b]$ は、$c\le a$ なら $\emptyset$、$a< c\le b$ なら $[a,c)=[a,b]_{< c}$、$c>b$ なら $[a,b]$ であり、$(c,\infty)\cap[a,b]$ も同様である。一方、$[a,b]$ の順序位相の準開基は $[a,b]_{< c}$、$[a,b]_{>c}$($c\in[a,b]$)で、$[a,b]_{< a}=\emptyset$ である。


2:順序数の集合の空でない部分集合は最小元をもち、それが下限である。空集合の下限は最大元 $\alpha$ である。よって thm-subbase-complete-order-compact が適用できる。$\square$

1 は コンパクト空間 の記事の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」の 1 次元の場合であり、そちらでは区間の二等分による別の証明が与えられている。2 は 順序位相 の記事の命題「閉順序数区間のコンパクト性」と同じ主張であり、そちらでは超限帰納法による別の証明が与えられている。2 で $\alpha=\omega$ とすると、ex-subbase-order-topology の空間 $\omega+1$ がコンパクトであることがわかる。一方、最大元をもたない $\omega=\{0,1,2,\dots\}$ の順序位相は離散位相であり、被覆 $\{L_{< n}\mid n\ge1\}$ は有限部分被覆をもたないのでコンパクトでない。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
有限個の共通部分をとる$\mathbb{R}$ の半直線の族(rem-subbase-union-only)族の元の和集合の全体が位相になる
族が位相を生成する(連続性の判定)恒等写像 $(\mathbb{R},\text{補有限位相})\to(\mathbb{R},\text{通常の位相})$ と族 $\{\mathbb{R}\setminus\{0\}\}$族の元の逆像が開なら連続
族が位相を生成する(Alexander の定理)通常の位相の $\mathbb{R}$ と族 $\{\mathbb{R}\}$族の元による被覆が有限部分被覆をもてばコンパクト
すべての部分集合が下限をもつ$[0,1)$、$\mathbb{Q}\cap[0,1]$全順序集合が順序位相でコンパクト
反例:位相を生成しない族での判定
  1. 恒等写像 $f\colon(\mathbb{R},\mathcal{O}_{\mathrm{cof}})\to(\mathbb{R},\mathcal{O}_{\mathrm{usual}})$(左は補有限位相)と族 $\mathcal{F}=\{\mathbb{R}\setminus\{0\}\}$ を考える。$f^{-1}(\mathbb{R}\setminus\{0\})=\mathbb{R}\setminus\{0\}$ は補有限位相で開であるが、$f$ は連続でない。$(0,1)$ は通常の位相で開であり、補集合が無限集合なので補有限位相で開でないからである。$\mathcal{F}$ は通常の位相の開集合からなるが、生成する位相は $\{\emptyset,\mathbb{R}\setminus\{0\},\mathbb{R}\}$ で通常の位相より真に粗い。満たす性質は「族の元の逆像がすべて開」、満たさない性質は「族が値域の位相の準開基である」ことであり、破る含意は「族の元の逆像が開なら連続」である。
  2. 通常の位相の $\mathbb{R}$ と族 $\mathcal{F}=\{\mathbb{R}\}$ について、$\mathcal{F}$ の元だけからなる被覆は $\{\mathbb{R}\}$ だけで、それ自身が有限である。しかし $\mathbb{R}$ はコンパクトでない。開被覆 $\{(-n,n)\mid n\ge1\}$ の有限個の和集合は、その中で最大の $n$ についての $(-n,n)$ だからである。$\mathcal{F}$ が生成する位相は密着位相であり、通常の位相ではない。破る含意は「族の元による被覆が有限部分被覆をもてばコンパクト」である。
反例:下限をもたない部分集合がある全順序集合
  1. $L=[0,1)$ では空集合が下限をもたない(最大元がない)。cor-subbase-order-compact-examples の 1 と同じ議論で、$L$ の順序位相は $\mathbb{R}$ からの相対位相に一致する。被覆 $\{L_{< c}\mid c\in L\}$ の有限個の和集合はその中で最大の $c$ についての $L_{< c}$ であり、$c$ を含まないので、有限部分被覆はない。
  2. $L=\mathbb{Q}\cap[0,1]$ では、$D:=\{q\in L\mid q>1/\sqrt2\}$ が $L$ の中に下限をもたない(下限の候補 $1/\sqrt2$ は有理数でない)。被覆
    $$ \mathcal{C}:=\{L_{< c}\mid c\in L,\ c<1/\sqrt2\}\cup\{L_{>d}\mid d\in L,\ d>1/\sqrt2\} $$
    は $L$ を覆う($1/\sqrt2\notin L$ だから)。有限部分集合 $\mathcal{C}_0\subset\mathcal{C}$ に $L_{< c}$ の形の元がなければ $0$ が、$L_{>d}$ の形の元がなければ $1$ が覆われない。両方あるとき、そこに現れる $c$ の最大値 $c_0$ は、$c_0<1/\sqrt2< d$ なのでどの $L_{>d}$ にも属さず、どの $L_{< c}$($c\le c_0$)にも属さない。よって $\mathcal{C}$ は有限部分被覆をもたない。
    どちらも、満たす性質は「全順序集合に順序位相を入れた空間である」こと、満たさない性質は「すべての部分集合が下限をもつ」ことであり、破る含意は「順序位相でコンパクト」である。

補足

開基との違い

開基であるためには、開集合の族が「二つの元の共通部分の各点に、その中に入る元がある」という条件を満たす必要がある(開基 の記事の定義「開基の公理」)。準開基にはこの条件がなく、どんな族も生成する位相の準開基になる。その代わり、開集合を得るには有限個の共通部分をとる手順が一段増える。位相を定義するときは準開基で与え、証明の中では $\mathcal{B}(\mathcal{S})$ という開基に切り替えて使う、というのが典型的な使い分けである。連続性・収束・コンパクト性の判定(prop-subbase-continuity-criterion、prop-subbase-net-convergence、thm-subbase-alexander)は、開基に切り替えずに準開基の元だけで済む点で便利である。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する