中心単純環(central simple algebra)とは、体 $k$ 上の有限次元の結合代数 $A \ne 0$ で、両側イデアルが $0$ と $A$ だけであり、中心が $k$ に等しいもののことである。行列代数 $M_r(k)$ や四元数代数が典型である。次元はつねに平方数 $r^2$ で、$k$ の分離閉包へ係数を広げると $M_r$ に同型になる。中心斜体 $D$ を用いて $M_n(D)$ と一意に書け、自己同型はすべて内部自己同型である(Skolem–Noether の定理)。テンソル積で閉じており、$D$ が同型なものを同一視すると体の Brauer 群をなす。
前提知識: 体, 結合代数, 単純環, テンソル積, 体の拡大
レベル: 学部上級〜大学院
以下、$k$ を体とする。$k$ 代数とは、単位元をもつ環 $A$ と、$A$ の中心への環準同型 $k \to A$ の組のことをいう。$A$ は $k$ 上のベクトル空間になり、その次元を $\dim_k A$ と書く。$A$ の反対代数(積の順序を逆にした代数)を $A^{\mathrm{op}}$ と書く。
$k$ 代数 $A$ が次の 3 条件をみたすとき、$A$ を $k$ 上の中心単純環(central simple algebra)という。
下の定理 次元は平方数 により $\dim_k A$ はつねに平方数 $r^2$ になる。この $r$ を $A$ の次数といい、$\deg A$ と書く。
中心単純環 $A$ が行列代数 $M_r(k)$ に同型であるとき、$A$ は分裂するという。体の拡大 $K/k$ について $A \otimes_k K$ が $K$ 上分裂するとき、$K$ を $A$ の分裂体という。
行列代数 $M_r(k)$ は、両側イデアルが自明で中心がスカラーだけという、中心単純環の典型である。中心単純環は、係数を大きな体へ広げると必ず行列代数になる(下の定理
分離閉包上の分裂
)。その意味で、中心単純環は「$k$ の上で見ると行列代数の形をしていないが、拡大体の上では行列代数になるもの」、すなわち行列代数の捻れた形である。
Hamilton の四元数 $\mathbb{H}$ は $\mathbb{R}$ 上の行列代数ではない(斜体である)が、$\mathbb{C}$ へ係数を広げると $M_2(\mathbb{C})$ になる。この「捻れ」の種類を群としてまとめたものが Brauer群 である。
$r \ge 1$ について、$M_r(k)$ は $k$ 上の中心単純環である。
$e_{ij}$ で $(i,j)$ 成分だけが $1$ で他が $0$ の行列を表すと、$e_{ij}e_{kl} = \delta_{jk} e_{il}$ である。
単純性。$I \ne 0$ を両側イデアルとし、$x = \sum x_{ij} e_{ij} \in I$ を $x_{pq} \ne 0$ となる $0$ でない元とする。$e_{ip}\, x\, e_{qj} = x_{pq} e_{ij}$ だから、$x_{pq}^{-1}$ を掛けてすべての $e_{ij}$ が $I$ に属する。よって $I = M_r(k)$ である。
中心。$z = \sum z_{ij} e_{ij}$ が中心にあるとする。$e_{pp} z = z e_{pp}$ の $(p,q)$ 成分を比べると、$q \ne p$ で $z_{pq} = 0$ となるので $z$ は対角行列である。さらに $e_{pq} z = z e_{pq}$ の $(p,q)$ 成分を比べて $z_{qq} = z_{pp}$ を得る。よって $z$ はスカラー行列である。$\square$
$A$ を $k$ 上の中心単純環、$B$ を $k$ 代数とする($B$ は無限次元でもよい)。
$B$ の $k$ 基底 $(b_j)_{j \in J}$ を取ると、$A \otimes_k B$ の元は有限和 $\sum_j a_j \otimes b_j$($a_j \in A$)とただ一通りに書ける。
1. $I \ne 0$ を $A \otimes_k B$ の両側イデアルとする。$I$ の $0$ でない元のうち、$a_j \ne 0$ となる添字 $j$ の個数が最小のもの $z = \sum_j a_j \otimes b_j$ を取り、$a_{j_0} \ne 0$ とする。$A$ は単純なので、$a_{j_0}$ の生成する両側イデアルは $A$ であり、$\sum_s u_s a_{j_0} v_s = 1$ となる $u_s, v_s \in A$ がある。$z$ を $\sum_s (u_s \otimes 1) z (v_s \otimes 1) \in I$ に取り替えると、$0$ でない係数の個数は増えず、$j_0$ の係数が $1$ になる(とくにこの元は $0$ でない)。そこで初めから $a_{j_0} = 1$ としてよい。
任意の $a \in A$ について
$$
(a \otimes 1) z - z (a \otimes 1) = \sum_j (a a_j - a_j a) \otimes b_j \in I
$$
であり、$j_0$ の係数は $0$ である。最小性から、この元は $0$ である。したがってすべての $a_j$ は $A$ の中心 $k$ に属し、$z = 1 \otimes b$($b = \sum_j a_j b_j \ne 0$)と書ける。$B$ は単純なので $b$ の生成する両側イデアルは $B$ であり、$I$ は $1 \otimes B$ を含む。よって $I \ni 1$ で、$I = A \otimes_k B$ である。
2. $z = \sum_j a_j \otimes b_j$ が中心にあるとする。任意の $a \in A$ について $(a \otimes 1) z = z (a \otimes 1)$ だから、表示の一意性から $a a_j = a_j a$ がすべての $j$ で成り立つ。よって $a_j \in k$ で、$z = 1 \otimes b$ と書ける。さらに任意の $b' \in B$ について $(1 \otimes b') z = z (1 \otimes b')$ だから $b' b = b b'$、すなわち $b \in Z(B)$ である。逆の包含は明らかである。$\square$
1 と 2 は補題
テンソル積の単純性と中心
からすぐに出る(体 $K$ は単純で、中心は $K$ 自身である)。
3 を示す。$Z(A) \otimes_k K$ は $A \otimes_k K$ の中心に含まれ、仮定によりその中心は $K$ である。次元を比べて $\dim_k Z(A) = 1$、すなわち $Z(A) = k$ となる。また $I$ が $A$ の両側イデアルなら $I \otimes_k K$ は $A \otimes_k K$ の両側イデアルであり、$0$ か全体である。$K$ は $k$ 上平坦なので $\dim_K (I \otimes_k K) = \dim_k I$ であり、$I = 0$ か $I = A$ である。$\square$
$A$ を $k$ 上の中心単純環とすると、
$$
A \otimes_k A^{\mathrm{op}} \longrightarrow \operatorname{End}_k(A), \qquad a \otimes b \longmapsto (x \mapsto a x b)
$$
は $k$ 代数の同型である。
与えられた写像は $k$ 代数の準同型であり($A^{\mathrm{op}}$ の積の順序がちょうど合う)、$1 \otimes 1$ を恒等写像に送るので $0$ ではない。系 テンソル積と係数拡大で閉じること の 1 により $A \otimes_k A^{\mathrm{op}}$ は単純であり、核は $A \otimes_k A^{\mathrm{op}}$ 全体ではない両側イデアルだから $0$ である。両辺の次元はともに $(\dim_k A)^2$ なので、単射は同型である。$\square$
次の構造定理は標準的であり、本記事では証明しない(GS06 第 2 章)。
有限次元の単純 $k$ 代数 $A$ は、ある $n \ge 1$ と有限次元の斜体 $D \supset k$ によって $A \cong M_n(D)$ と書ける。$n$ は一意に定まり、$D$ は同型を除いて一意に定まる。$Z(D) \cong Z(A)$ であり、とくに $A$ が中心単純なら $D$ は $k$ 上の中心斜体(中心が $k$ の斜体)である。また、$A$ 上の有限次元の左加群はすべて、ただ一つの単純加群 $D^n$ の直和に同型であり、したがって $k$ 上の次元で同型類が決まる。
これは Wedderburnの構造定理 の中心単純環の場合である。
$A$ を $k$ 上の中心単純環、$\bar k$ を $k$ の代数閉包とすると、ある $r \ge 1$ について $A \otimes_k \bar k \cong M_r(\bar k)$ である。とくに $\dim_k A = r^2$ である。
系 テンソル積と係数拡大で閉じること の 2 により $A \otimes_k \bar k$ は $\bar k$ 上の中心単純環であり、構造定理 斜体上の行列代数としての表示 により $M_r(D)$($D$ は $\bar k$ 上有限次元の中心斜体)と書ける。$d \in D$ を取ると、$\bar k[d]$ は $D$ の可換な部分環で、有限次元の整域だから体であり、$\bar k$ の有限次拡大である。$\bar k$ は代数閉なので $\bar k[d] = \bar k$、すなわち $d \in \bar k$ である。よって $D = \bar k$ で、$\dim_k A = \dim_{\bar k} M_r(\bar k) = r^2$ となる。$\square$
次の定理は、分裂に分離的な拡大で足りることを述べる。これは中心単純環の理論をエタール位相へ移す出発点である(Azumaya代数)。証明は、$A$ が $k$ 上分離的な極大部分体をもつことに帰着する標準的な議論による(GS06 第 2 章)。本記事では証明しない。
$A$ を次数 $r$ の中心単純環とする。
$A$ を $k$ 上の中心単純環、$B$ を有限次元の単純 $k$ 代数とし、$f, g \colon B \to A$ を $k$ 代数の準同型とする。このとき $A$ の単元 $u$ があって、すべての $b \in B$ について $g(b) = u f(b) u^{-1}$ となる。
この定理を Skolem–Noether の定理という。
$C := B \otimes_k A^{\mathrm{op}}$ とおく。$A^{\mathrm{op}}$ は中心単純環なので、補題
テンソル積の単純性と中心
により $C$ は有限次元の単純 $k$ 代数である。$A$ に $C$ の左加群の構造を 2 通りに入れる。
$$
(b \otimes a) \cdot_f x := f(b)\, x\, a, \qquad (b \otimes a) \cdot_g x := g(b)\, x\, a.
$$
2 つの加群はどちらも $k$ 上 $\dim_k A$ 次元なので、構造定理
斜体上の行列代数としての表示
の最後の主張により、$C$ 加群の同型 $\varphi \colon (A, \cdot_f) \to (A, \cdot_g)$ がある。
$1 \otimes a$ の作用と両立することから $\varphi(xa) = \varphi(x) a$ であり、$u := \varphi(1)$ とおくと $\varphi(x) = u x$ となる。$\varphi$ は全射なので $uv = 1$ となる $v$ があり、$A$ は有限次元だから $u$ は単元である(左からの $u$ 倍が全射なら単射でもあり、$u(vu - 1) = 0$ から $vu = 1$)。$b \otimes 1$ の作用と両立することから $\varphi(f(b) x) = g(b) \varphi(x)$ であり、$x = 1$ とおいて $u f(b) = g(b) u$ を得る。$\square$
中心単純環 $A$ の $k$ 代数の自己同型は、すべて単元による共役 $x \mapsto u x u^{-1}$ である。とくに $\operatorname{Aut}_k(M_r(k)) \cong \mathrm{GL}_r(k)/k^\times = \mathrm{PGL}_r(k)$ である。
定理 単純部分代数の埋め込みの共役性 を $B = A$、$f = \mathrm{id}$、$g$ を与えられた自己同型として適用すればよい。$M_r(k)$ の場合、共役 $x \mapsto u x u^{-1}$ が恒等写像になるのは $u$ が中心の元、すなわちスカラーのときに限る(命題 行列代数は中心単純 )。$\square$
次の事実も標準的であり、本記事では証明しない(GS06 第 2 章)。
$A$ を中心単純環、$B \subset A$ を単純部分代数、$C_A(B)$ をその中心化環とする。このとき $C_A(B)$ は単純で、$\dim_k B \cdot \dim_k C_A(B) = \dim_k A$ であり、$C_A(C_A(B)) = B$ である。とくに、$A$ に含まれる部分体の $k$ 上の次数は $\deg A$ 以下であり、次数が $\deg A$ に等しい部分体 $L$ は $A \otimes_k L \cong M_{\deg A}(L)$ をみたす。
2 つの中心単純環 $A, B$ は、構造定理
斜体上の行列代数としての表示
で現れる中心斜体が同型であるとき Brauer 同値であるという。これは、ある $m, n$ で $M_m(A) \cong M_n(B)$ となることと同値である。同値類の集合はテンソル積を演算として群をなし、単位元は $M_1(k) = k$ の類、$A$ の類の逆元は命題
反対代数とのテンソル積
により $A^{\mathrm{op}}$ の類である。この群が体 $k$ の Brauer群 $\mathrm{Br}(k)$ である。
中心斜体 $D$ の次数を、$A \cong M_n(D)$ の指数という。$A$ の類の $\mathrm{Br}(k)$ における位数(周期)は指数を割り切り、両者は同じ素因数をもつ(GS06 第 2 章・第 4 章。本記事では証明しない)。
$k$ の標数を $2$ でないとし、$a, b \in k^\times$ とする。$1, i, j, ij$ を基底とし、
$$
i^2 = a, \qquad j^2 = b, \qquad ij = -ji
$$
で積を定めた $4$ 次元の $k$ 代数を四元数代数 $(a, b)_k$ という。
$\bar k$ の中で $\alpha^2 = a$ となる $\alpha$ を取り、
$$
i \longmapsto \begin{pmatrix} \alpha & 0 \\ 0 & -\alpha \end{pmatrix}, \qquad
j \longmapsto \begin{pmatrix} 0 & b \\ 1 & 0 \end{pmatrix}
$$
と定めると、右辺の行列は $i^2 = a$、$j^2 = b$、$ij = -ji$ をみたす。$1, i, j, ij$ の像は
$$
\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}, \quad
\begin{pmatrix} \alpha & 0 \\ 0 & -\alpha \end{pmatrix}, \quad
\begin{pmatrix} 0 & b \\ 1 & 0 \end{pmatrix}, \quad
\begin{pmatrix} 0 & \alpha b \\ -\alpha & 0 \end{pmatrix}
$$
であり、$\alpha \ne 0$ と標数が $2$ でないことから $\bar k$ 上一次独立である。基底どうしの積は関係式によって基底の $k$ 係数の一次結合になるので、像の $k$ 線形包は $M_2(\bar k)$ の $k$ 部分代数であり、$(a, b)_k$ はこれと同型な結合代数である。さらに $(a, b)_k \otimes_k \bar k \to M_2(\bar k)$ は同型である。系
テンソル積と係数拡大で閉じること
の 3 により、$(a, b)_k$ は次数 $2$ の中心単純環である。
例
四元数代数の構成
の記号で、$q = x + y i + z j + w\, ij$ の共役を $\bar q = x - y i - z j - w\, ij$ と定める。$i, j, ij$ は互いに反可換で $(ij)^2 = -ab$ だから、
$$
q \bar q = \bar q q = x^2 - a y^2 - b z^2 + ab\, w^2 \in k
$$
である。この 2 次形式(ノルム形式)が $k$ 上で自明でない零点をもたなければ、$q \ne 0$ に対して $\bar q / (q \bar q)$ が $q$ の逆元になり、$(a, b)_k$ は斜体である。
とくに $k = \mathbb{R}$、$a = b = -1$ のとき、ノルム形式は $x^2 + y^2 + z^2 + w^2$ であり、Hamilton の四元数 $\mathbb{H} = (-1, -1)_{\mathbb{R}}$ は $\mathbb{R}$ 上の中心斜体である。$\mathbb{H} \otimes_{\mathbb{R}} \mathbb{C} \cong M_2(\mathbb{C})$ なので、$\mathbb{C}$ は $\mathbb{H}$ の分裂体である。同じ理由で $(-1,-1)_{\mathbb{Q}}$ も $\mathbb{Q}$ 上の中心斜体である。
逆に、$(a, b)_k$ が分裂することは、ノルム形式が自明でない零点をもつこと、また $b$ が $k(\sqrt a)/k$ のノルムであることと同値である(GS06 第 1 章。本記事では証明しない)。
次の体の上では、中心単純環はすべて行列代数である。
$L/k$ を次数 $r$ の巡回拡大、$\sigma$ をその Galois 群の生成元、$c \in k^\times$ とする。$L$ 上の左ベクトル空間 $\bigoplus_{i=0}^{r-1} L u^i$ に
$$
u^r = c, \qquad u \lambda u^{-1} = \sigma(\lambda) \quad (\lambda \in L)
$$
で積を入れたものを巡回代数 $(L/k, \sigma, c)$ という。これは次数 $r$ の中心単純環で、$L$ を極大部分体として含み、$c$ が $L/k$ のノルムであるときに限り分裂する(GS06 第 2 章・第 4 章。本記事では証明しない)。$r = 2$、$L = k(\sqrt a)$ のときは四元数代数 $(a, c)_k$ である。
$\mathbb{C}$ は $\mathbb{R}$ 代数として単純(体)で有限次元だが、中心が $\mathbb{C} \ne \mathbb{R}$ なので、条件 3(中心的)を満たさない。このとき補題
テンソル積の単純性と中心
の結論 1 が崩れる。実際、中国式剰余定理により
$$
\mathbb{C} \otimes_{\mathbb{R}} \mathbb{C} \cong \mathbb{C}[x]/(x^2 + 1) \cong \mathbb{C}[x]/(x - \sqrt{-1}) \times \mathbb{C}[x]/(x + \sqrt{-1}) \cong \mathbb{C} \times \mathbb{C}
$$
であり、これは単純でない。命題
反対代数とのテンソル積
も成り立たない(左辺は可換で、$\operatorname{End}_{\mathbb{R}}(\mathbb{C}) \cong M_2(\mathbb{R})$ は可換でない)。
$T \subset M_2(k)$ を上三角行列のなす $3$ 次元の部分代数とする。行列単位の計算(命題
行列代数は中心単純
の証明と同じもの)により $T$ の中心はスカラー行列だけなので、$T$ は中心的である。しかし狭義上三角行列の全体 $N = k e_{12}$ は $0$ でも全体でもない両側イデアルなので、条件 2(単純)を満たさない。
このとき命題
反対代数とのテンソル積
の結論が崩れる。写像 $x \mapsto a x b$($a, b \in T$)はどれも $N$ を $N$ に写すので、$T \otimes_k T^{\mathrm{op}} \to \operatorname{End}_k(T)$ の像は $N$ を保つ自己準同型の真部分空間に含まれ、全射でない。次元はどちらも $9$ で一致しているので、次元の一致だけでは同型は出ない。
$k$ の標数を $0$ とし、$A_1(k) := k\langle x, y \rangle / (yx - xy - 1)$ を Weyl 代数とする。$x^i y^j$($i, j \ge 0$)は $A_1(k)$ の $k$ 基底である(標準的な事実。本記事では証明しない)。
$[y, x^i] = i x^{i-1}$、$[x, y^j] = -j y^{j-1}$ である。$0$ でない両側イデアル $I$ の元 $z$ を取り、$[y, -]$ を繰り返し施すと $x$ についての次数が $1$ ずつ下がり、係数には $0$ でない整数(標数 $0$ で可逆)が掛かる。こうして $x$ を含まない $0$ でない元に達し、次に $[x, -]$ を繰り返して $0$ でないスカラーに達する。これは $I$ の元なので $I = A_1(k)$ であり、$A_1(k)$ は単純である。同じ計算で、中心の元は $[y, -]$ と $[x, -]$ で $0$ になるのでスカラーである。
したがって $A_1(k)$ は単純で中心が $k$ だが、条件 1(有限次元)を満たさない。実際、定理
次元は平方数
の類似は意味をもたず、$A_1(k)$ は $0$ でない有限次元の表現をもたない($d$ 次元の表現があれば、$yx - xy = 1$ の跡を取って $0 = d$ となり、標数 $0$ で矛盾する)。したがって $A_1(k) \otimes_k K \cong M_r(K)$ となる拡大 $K$ もない。
標数 $p > 0$ では $x^p$ が中心に入るので、$A_1(k)$ は中心的でない。
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