実数の連続性

同義語:completeness of the real numbers実数の連続性公理切断の公理Dedekind完備性Dedekind completeness実数の完備性

概要

実数の連続性(completeness of the real numbers)とは、実数全体 $\mathbb{R}$ の上に有界な空でない部分集合が必ず上限(最小の上界)をもつという性質のことで、数直線に「すき間」がないことを表す。数の全体を大小で二つの組に分けると切れ目に必ず数があるという切断の公理、単調で有界な数列の収束、有界な数列が収束する部分列をもつことなどと同値である。さらに順序体の上では、閉区間で連続な関数について中間値の定理が成り立つことや、最大値をとることとも同値になる。有理数体 $\mathbb{Q}$ ではこれらがすべて崩れ、極限・零点・最大値の存在を示す解析学の定理の土台になっている。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 上限と下限, 順序体, 数列の極限

数直線には「すき間」がない。有理数だけを並べた直線では、$x^2=2$ となる点のところに穴が空いているが、実数ではそのような穴がどこにもない。この性質を 実数の連続性 という。ここでの「連続」は関数の連続性のことではなく、数の並びが途切れずにつながっていることを指す。
高校数学では、実数の連続性は「単調に増加して上に有界な数列は収束する」「閉区間で連続な関数は最大値・最小値をとる」「閉区間で連続な関数は端の値の間の値をすべてとる」といった定理の背後にあるものとして、証明せずに認めて使われる。2 次不等式や解の配置の問題で放物線が $x$ 軸を横切る点が実際にあると言えるのも、無限級数の和が定まるのも、この性質のおかげである(高校数学の中間値の定理や無限級数の記事を参照)。
大学の解析学では、実数の連続性を 上限性質(上に有界な空でない集合には最小の上界がある)という一つの公理にまとめ、ほかの形はすべてそこから定理として導く。この記事では、まず連続性のいくつかの言い表し方とその同値性を述べ、次に「中間値の定理」と「最大値の定理」がそれぞれ単独で実数の連続性と同値であること(thm-rcont-ivt-evt)を証明する。これは、これらの定理が成り立つためには実数の連続性が欠かせず、しかもそれで十分であることを言っている。

定義

以下、$K$ は順序体(大小関係が四則演算と両立する体)とする。$\mathbb{Q}$ や $\mathbb{R}$ がその例である。$K$ の元 $x$ の絶対値を $\lvert x\rvert:=\max\{x,-x\}$ とし、$a\le b$ に対して閉区間を $[a,b]:=\{x\in K\mid a\le x\le b\}$ と書く。

上限性質

順序体 $K$ が 上限性質 をもつとは、$K$ の空でない部分集合 $S$ が上に有界ならば、$S$ の上界全体に最小元があることをいう。この最小元を $S$ の 上限 といい $\sup S$ と書く。

上限の定義と基本性質は 上限と下限 の記事にある。実数 の記事は、上限性質をもつ順序体を実数体と定義し、それが同型を除いてただ一つであることを証明している。

切断と切断の公理

順序体 $K$ の部分集合の組 $(A,B)$ が 切断 であるとは、次の 3 条件を満たすことをいう。
(i) $A$ と $B$ はどちらも空でない。
(ii) $A\cup B=K$ である。
(iii) $a\in A$、$b\in B$ ならば $a< b$ である。
$K$ が 切断の公理 を満たすとは、どの切断 $(A,B)$ についても、$A$ に最大元があるか $B$ に最小元があることをいう。

(iii) から $A\cap B=\emptyset$ である。体では $A$ の最大元 $a$ と $B$ の最小元 $b$ が同時にあることはない。もしあれば $a<\frac{a+b}2< b$ なので、$\frac{a+b}2$ は $A$ にも $B$ にも属さず (ii) に反する。したがって切断の公理は、「どの切断でも、切れ目にちょうど 1 つの元がある」と言っている。切れ目に元がない切断を すき間 と呼べば、切断の公理は「すき間がない」ことである。

実数の連続性

上限性質をもつ順序体を 連続 な順序体(Dedekind 完備な順序体)という。実数体 $\mathbb{R}$ が連続であること、すなわち上限性質をもつことを 実数の連続性(completeness of the real numbers)という。

実数 の記事の定義では、実数の連続性は実数体の定義の一部である。教科書によっては、切断の公理(thm-rcont-cut)や単調有界数列の収束(単調収束定理)を公理として採用する。下の同値性により、どれを出発点にしても同じ $\mathbb{R}$ が得られる。上限性質は完備性(completeness property)や Dedekind 完備性とも呼ばれる(Leb26 Definition 1.1.3 とその後の注、p. 24)。

切断の公理と上限性質

順序体 $K$ について、$K$ が上限性質をもつことと、$K$ が切断の公理を満たすことは同値である。

上限性質から切断の公理を導く。$(A,B)$ を切断とする。$B$ の元 $b$ を 1 つとると、(iii) により $A$ の元はすべて $b$ より小さいので、$A$ は空でなく上に有界である。上限 $s:=\sup A$ をとる。$s\in A$ なら、$s$ は $A$ の上界でもあるので $A$ の最大元である。$s\notin A$ なら (ii) により $s\in B$ である。どの $b\in B$ も $A$ の上界なので $s\le b$ であり、$s$ は $B$ の最小元である。
切断の公理から上限性質を導く。$S$ を空でなく上に有界な部分集合とし、$B$ を $S$ の上界全体、$A:=K\setminus B$ とおく。$B$ は空でない。$x\in S$ を 1 つとると、$x-1< x$ なので $x-1$ は上界でなく、$x-1\in A$ である。$a\in A$、$b\in B$ とすると、$a$ は上界でないので $a< x$ となる $x\in S$ があり、$b\ge x>a$ である。よって $(A,B)$ は切断である。
$A$ に最大元 $a$ があったとする。$a$ は上界でないので $a< x$ となる $x\in S$ がある。$m:=\frac{a+x}2$ は $a< m< x$ を満たし、$m< x$ だから $m$ は上界でなく $m\in A$ である。これは $a$ が $A$ の最大元であることに反する。したがって切断の公理により $B$ に最小元があり、それは $S$ の上界のうち最小のもの、すなわち $\sup S$ である。$\square$

直感

$\mathbb{Q}$ を、$x^2<2$ または $x\le0$ となる有理数の組 $A$ と、残りの組 $B$ に分けると、$A$ には最大の数がなく、$B$ には最小の数がない(ex-rcont-sqrt2-cut)。二つの組の間に、どちらにも属さない「切れ目」が空いている。実数ではこの切れ目に $\sqrt2$ が入る。実数の連続性は、どんな分け方をしても切れ目に数が必ずある、ということである。
上限性質は同じことを「集合の上から押さえる数のうち、いちばん小さいもの」の言葉で言う。$A$ の上界の全体が $B$ にあたり、$B$ の最小元が上限である。解析学の多くの存在定理(極限の存在、零点の存在、最大値の存在)は、求める数をこの「いちばん小さい上界」として捕まえる形で証明される。

例

$\sqrt2$ のところの切断

$\mathbb{Q}$ で $A:=\{x\in\mathbb{Q}\mid x\le0\ \text{または}\ x^2<2\}$、$B:=\{x\in\mathbb{Q}\mid x>0\ \text{かつ}\ x^2>2\}$ とおく。$x^2=2$ となる有理数はないので $A\cup B=\mathbb{Q}$ であり、$(A,B)$ は切断である。この切断では、$A$ に最大元がなく、$B$ に最小元もない。
$A$ に最大元がないこと:$a\in A$ とする。$a\le0$ なら $1\in A$ が $a$ より大きい。$a>0$、$a^2<2$ なら、$h$ を $0< h\le1$ かつ $h<\frac{2-a^2}{2a+1}$ を満たす有理数とすると、$(a+h)^2=a^2+2ah+h^2\le a^2+h(2a+1)<2$ なので $a+h\in A$ である。
$B$ に最小元がないこと:$b\in B$ とし、$k:=\frac{b^2-2}{2b}$ とおく。$k>0$ であり、$b-k=\frac{b^2+2}{2b}>0$、$(b-k)^2=b^2-2bk+k^2>b^2-2bk=2$ なので $b-k\in B$ である。
よって $\mathbb{Q}$ は切断の公理を満たさず、thm-rcont-cut により上限性質ももたない。$A$ の上限が $\mathbb{Q}$ にないことは 上限と下限 の記事の命題「有理数体における上限の不存在」と同じ内容である。

自然数全体に上限がない順序体

実係数の有理関数体 $\mathbb{R}(t)$ に、$t$ がすべての実数より大きくなる順序を入れる(順序体 の記事の例「無限大の元をもつ順序体」)。自然数 $n$($=1+\dots+1$)の全体 $\mathbb{N}$ は $t$ を上界にもつ。しかし上限はない。$s$ が $\mathbb{N}$ の上界なら、どの $n$ についても $n+1\le s$、すなわち $n\le s-1$ なので、$s-1$ も上界であり、$s$ は最小の上界ではないからである。
同じ論法で、上限性質をもつ順序体では $\mathbb{N}$ は上に有界でない。これが Archimedes の性質であり(実数 の記事の定理「Archimedes性」)、上限性質は Archimedes の性質を含んでいる。

$\mathbb{R}$ と異なる部分体は連続でない

$K$ を $\mathbb{R}$ の部分体で $K\ne\mathbb{R}$ となるものとし、$\mathbb{R}$ の大小関係で順序体とみる。このとき $K$ は上限性質をもたない。

$K$ は $1$ を含む体なので $\mathbb{Q}\subset K$ である。$x\in\mathbb{R}\setminus K$ をとり、$S:=\{k\in K\mid k< x\}$ とおく。Archimedes の性質により $n< x< N$ となる整数 $n,N$ があり、$n\in S$、$N$ は $S$ の $K$ における上界である。
$S$ が $K$ の中に上限 $s$ をもつと仮定する。$s\in K$、$x\notin K$ なので $s\ne x$ である。$s< x$ なら、有理数の稠密性(実数 の記事の定理「有理数の稠密性」)により $s< q< x$ となる $q\in\mathbb{Q}\subset K$ があり、$q\in S$ かつ $q>s$ となって $s$ が上界であることに反する。$s>x$ なら $x< q< s$ となる $q\in\mathbb{Q}$ があり、$S$ の元はすべて $x$ より小さいので $q$ は $S$ の上界で、$q< s$ となって $s$ が最小の上界であることに反する。$\square$

たとえば $\mathbb{Q}$、$\mathbb{Q}(\sqrt2)=\{p+q\sqrt2\mid p,q\in\mathbb{Q}\}$、実数である代数的数の全体はどれも連続でない。$\mathbb{Q}(\sqrt2)$ では $x=\sqrt3$ をとればよい。$(p+q\sqrt2)^2=3$ とすると $p^2+2q^2-3+2pq\sqrt2=0$ で、$\sqrt2$ は無理数だから $pq=0$ となり、$p^2=3$ か $2q^2=3$ となるが、どちらも有理数解をもたない。

同値な言い換え

実数の連続性には、数列の言葉による言い換えがいくつもある。順序体 $K$ の上で比べると次のとおりである(数列の収束・有界性・Cauchy 列は、$\varepsilon$ が $K$ の正の元を動くとして実数の場合と同じ式で定める)。

形主張(順序体 $K$ の上で)上限性質との同値の証明
上限性質上に有界な空でない部分集合は上限をもつ定義(def-rcont-sup)
切断の公理どの切断にも切れ目に元があるthm-rcont-cut
単調収束定理単調増加で上に有界な数列は収束する単調収束定理 の記事の定理「単調収束定理と同値な性質」
Bolzano–Weierstrass の定理有界な数列は収束する部分列をもつ同上
区間縮小法+Archimedes の性質閉区間の減少列には共通の点がある同上
Cauchy 列の収束+Archimedes の性質Cauchy 列は収束する同上
中間値の性質閉区間で連続で端で符号が変わる関数は零点をもつthm-rcont-ivt-evt
最大値の性質閉区間で連続な関数は最大値をとるthm-rcont-ivt-evt
連結性$K$ を空でない 2 つの開集合に分けられないcor-rcont-connected

区間縮小法と Cauchy 列の形では、Archimedes の性質を別に仮定しなければ上限性質と同値にならない。区間の長さや数列の増え方を自然数と比べる場面で Archimedes の性質を使うからである。Cauchy 列がすべて収束する性質だけを指して完備性(Cauchy 完備性)と呼ぶ流儀もあり(Leb26 Remark 2.4.6、p. 85)、この言い方は完備距離空間の完備性につながる。Archimedes の性質をもつ順序体では、「連続」と「Cauchy 完備」は一致する(表の 6 行目)。
表の下の 3 行は、それぞれ解析学の定理(中間値の定理、最大値・最小値の定理、実数直線の連結性)の主張そのものである。次の節で、これらの定理が成り立つことが、実数の連続性と同値であることを示す。

中間値の定理・最大値の定理との同値

順序体 $K$ の閉区間 $[a,b]$ 上の関数 $f\colon[a,b]\to K$ が点 $p\in[a,b]$ で 連続 であるとは、$K$ のどの正の元 $\varepsilon$ に対しても $K$ の正の元 $\delta$ があって、$x\in[a,b]$、$\lvert x-p\rvert<\delta$ ならば $\lvert f(x)-f(p)\rvert<\varepsilon$ となることをいう。$[a,b]$ のすべての点で連続なとき、$f$ は $[a,b]$ で連続であるという。$K=\mathbb{R}$ のときは通常の連続性(連続関数)である。
まず、上限のない集合が $K$ を 2 つに切り分けることを確かめる。これが下の定理で (ii)・(iii) から (i) を導く鍵になる。

上限のない集合による切り分け

$S$ を順序体 $K$ の空でなく上に有界な部分集合で、$K$ の中に上限をもたないものとする。$S$ の上界全体を $U$、$L:=K\setminus U$ とおく。このとき次が成り立つ。

  1. $S\subset L$ であり、$L$ と $U$ はどちらも空でない。$p\in L$、$u\in U$ ならば $p< u$ である。
  2. $p\in L$ ならば、ある正の元 $\delta$ について $\lvert x-p\rvert<\delta$ となる $x$ はすべて $L$ に属する。$U$ についても同じことが成り立つ。
  3. $L$ に最大元はなく、$U$ に最小元もない。

1:$U$ は仮定により空でない。$s\in S$ が上界なら $s$ は $S$ の最大元であり、したがって上限になってしまうので、$s\notin U$ である。よって $S\subset L$ で、$L$ も空でない。$p\in L$ は上界でないので $p< s$ となる $s\in S$ があり、$u\in U$ について $u\ge s>p$ である。
2:$p\in L$ とし、$p< s$ となる $s\in S$ をとって $\delta:=s-p$ とおく。$\lvert x-p\rvert<\delta$ なら $x< s$ なので $x$ は上界でなく、$x\in L$ である。$u\in U$ とすると、$u$ は最小の上界ではないので $u'< u$ となる $u'\in U$ がある。$\delta:=u-u'$ とおくと、$\lvert x-u\rvert<\delta$ なら $x>u'$ なので $x$ は上界であり、$x\in U$ である。
3:$p\in L$ に対し、1 の $s\in S\subset L$ は $s>p$ を満たす。$u\in U$ に対し、2 の $u'\in U$ は $u'< u$ を満たす。$\square$

連続性と中間値の定理・最大値の定理

順序体 $K$ について、次の 3 条件は同値である。
(i) $K$ は上限性質をもつ。
(ii)(中間値の性質)$a< b$ とする。$[a,b]$ で連続な関数 $f\colon[a,b]\to K$ が $f(a)<0< f(b)$ を満たすならば、$f(c)=0$ となる $c\in(a,b)$ がある。
(iii)(最大値の性質)$a< b$ とする。$[a,b]$ で連続な関数 $f\colon[a,b]\to K$ は最大値をとる。すなわち、すべての $x\in[a,b]$ について $f(x)\le f(p)$ となる $p\in[a,b]$ がある。

(i)⇒(ii):$S:=\{x\in[a,b]\mid f(x)<0\}$ とおく。$a\in S$ で、$S$ は $b$ を上界にもつので、上限 $c:=\sup S$ があり $a\le c\le b$ である。
$f(c)<0$ と仮定する。$f(b)>0$ だから $c< b$ である。$c$ での連続性を $\varepsilon:=-f(c)$ に当てて $\delta$ をとると、$x\in[a,b]$、$\lvert x-c\rvert<\delta$ なら $f(x)< f(c)+\varepsilon=0$ である。$x:=\min\{c+\frac\delta2,b\}$ はこの条件を満たし $x>c$ なので、$x\in S$ となって $c$ が上界であることに反する。
$f(c)>0$ と仮定する。$f(a)<0$ だから $c>a$ である。$\varepsilon:=f(c)$ に対する $\delta$ をとると、$x\in[a,b]$、$\lvert x-c\rvert<\delta$ なら $f(x)>0$ である。$S$ の元 $s$ は $s\le c$ かつ $f(s)<0$ なので $\lvert s-c\rvert\ge\delta$、すなわち $s\le c-\delta$ である。よって $c-\delta$ は $c$ より小さい上界となり、$c$ が上限であることに反する。
以上より $f(c)=0$ であり、$f(a),f(b)\ne0$ だから $c\ne a,b$ である。
(i)⇒(iii):最大値・最小値の定理 の記事の定理「最大値・最小値の定理」の証明は、順序体の公理と上限性質だけを使っているので、$K$ でもそのまま成り立つ。
(ii)⇒(i):(i) が成り立たないと仮定し、上限をもたない空でない上に有界な部分集合 $S$ をとる。lem-rcont-split の $L,U$ を使い、$a\in S$、$b\in U$ をとると、1 により $a< b$ である。$[a,b]$ 上の関数 $f$ を、$x\in L$ なら $f(x):=-1$、$x\in U$ なら $f(x):=1$ と定める。$p\in[a,b]$ に対し、2 の $\delta$ をとると、$\lvert x-p\rvert<\delta$ となる $x\in[a,b]$ では $f(x)=f(p)$ なので、$f$ は $p$ で連続である。$f(a)=-1<0<1=f(b)$ だが $f$ は値 $0$ をとらないので、(ii) が成り立たない。
(iii)⇒(i):同じく $S,L,U,a,b$ をとり、$[a,b]$ 上の関数 $g$ を、$x\in L$ なら $g(x):=x$、$x\in U$ なら $g(x):=a$ と定める。$p\in L$ では、2 の $\delta$ と $\varepsilon$ の小さいほうを新たな $\delta$ とすれば、$\lvert x-p\rvert<\delta$ で $\lvert g(x)-g(p)\rvert=\lvert x-p\rvert<\varepsilon$ となる。$p\in U$ では $p$ の近くで $g$ は定数である。よって $g$ は連続である。
$g$ が最大値をとらないことを示す。$p\in[a,b]$ とする。$p\in L$ なら $p< s$ となる $s\in S$ があり、$a\le p< s\le b$、$s\in L$ なので $g(s)=s>p=g(p)$ である。$p\in U$ なら $g(p)=a$ であり、$a\in L$ なので $a< s$ となる $s\in S$ があって、$g(s)=s>a=g(p)$ である。どちらの場合も $g(p)$ より大きい値があるので、(iii) が成り立たない。$\square$

この定理は、中間値の定理 と 最大値・最小値の定理 が実数の連続性の「言い換え」になっていることを示している。とくに、上の (ii)⇒(i) と (iii)⇒(i) の証明は、上限性質が成り立たない順序体ではかならず、零点をもたない符号の変わる連続関数と、最大値をとらない連続関数が作れることを具体的に与えている。$\mathbb{Q}$ の場合は、ex-rcont-sqrt2-cut の $A$ を $L$、$B$ を $U$ とする関数になる。
Archimedes の性質を仮定に入れていないことにも注意する。(ii) や (iii) を満たす順序体は (i) を満たすので、自動的に Archimedes 的である(ex-rcont-rational-functions)。

連結性

順序体 $K$ の部分集合 $V$ が 開集合 であるとは、各 $p\in V$ に対し、ある正の元 $\delta$ があって $\lvert x-p\rvert<\delta$ となる $x$ がすべて $V$ に属することをいう。これは $K$ の大小関係から定まる順序位相の開集合と同じである。$K$ が空でない 2 つの開集合の交わらない和に分けられないとき、$K$ は 連結 であるという(連結空間)。

連続性と連結性

順序体 $K$ が上限性質をもつことと、$K$ が連結であることは同値である。

$K$ が上限性質をもたなければ、lem-rcont-split の $L,U$ は空でなく交わらない開集合で、$K=L\cup U$ となるから、$K$ は連結でない。
逆に $K$ が上限性質をもつとし、$K=V\cup W$($V,W$ は空でなく交わらない開集合)と分けられたと仮定する。$a\in V$、$b\in W$ をとる。$a< b$ なら、$[a,b]$ 上で $V$ の点では $-1$、$W$ の点では $1$ をとる関数は、(ii)⇒(i) の証明と同じ理由で連続であり、thm-rcont-ivt-evt の (ii) に反する。$b< a$ なら、$[b,a]$ 上で $V$ の点では $1$、$W$ の点では $-1$ をとる関数で同じ矛盾が出る。$\square$

$K=\mathbb{R}$ の場合のこの結論は、実数直線の区間が連結であるという定理(連結空間 の記事の定理「実数直線の連結部分集合」)の、区間が $\mathbb{R}$ 全体の場合にあたる。連結性の定義は Leb26 Definition 7.2.13(p. 268)にもある。

連続性はどこで使われるか

解析学の基本定理のうち、ある数の「存在」を主張するものの多くは、その数を上限として捕まえる。有理数の範囲で同じ主張を考えると、どれも成り立たなくなる。

定理連続性の使いどころ有理数の範囲で崩れる例
中間値の定理値が負になる点の集合の上限が零点になる$[1,2]$ 上の $x^2-2$ は符号が変わるが零点がない
最大値・最小値の定理値の集合の上限が実際にとられる値になる$[1,2]$ 上の $-(x^2-2)^2$ は上限 $0$ をとらない
単調収束定理極限を項の集合の上限としてとる$\sqrt2$ の小数近似 $1,\ 1.4,\ 1.41,\dots$ は有理数の中に極限がない
正の数の平方根の存在$x^2<2$ となる $x$ の集合の上限が $\sqrt2$ になる$2$ に平方根がない
Rolleの定理最大値・最小値の定理を経由するRolleの定理 の記事の例「反例:有理数だけで考えた場合」

最初の 2 行は thm-rcont-ivt-evt の (ii)・(iii) の具体例で、どちらも ex-rcont-sqrt2-cut の切れ目 $\sqrt2$ が原因である。平方根の存在は 実数 の記事の命題「正の実数の平方根」で上限を使って証明されている。
一方、はさみうちの原理 や極限の四則演算は連続性を使わない。これらは極限の値の候補が先に分かっている場面の定理であり、有理数の範囲でもそのまま成り立つ。連続性が必要になるのは、極限や零点や最大値の候補を手元にもたずに、その存在だけを主張するときである。

反例:連続性をもたない数の体系

外す条件反例成り立たなくなること
上限性質(Archimedes の性質はある)有理数体 $\mathbb{Q}$切断の公理、中間値の性質、最大値の性質
上限性質(無理数を含む部分体)$\mathbb{Q}(\sqrt2)$$[1,2]$ 上の $x^2-3$ が零点をもつこと
上限性質と Archimedes の性質$t$ を無限大とする有理関数体 $\mathbb{R}(t)$$\mathbb{N}$ が上限をもつこと
体であること(間に元があること)整数 $\mathbb{Z}$上限性質はあるが、中間値の性質が成り立たない
反例の確認
  1. $\mathbb{Q}$:切断の公理が成り立たないことは ex-rcont-sqrt2-cut で示した。$[1,2]$ 上の $f(x)=x^2-2$ は多項式なので連続で、$f(1)=-1<0<2=f(2)$ だが、$f(c)=0$ となる有理数 $c$ はない。$g(x)=-(x^2-2)^2$ は $g\le0$ で、$x^2$ が $2$ に近い有理数をとれば値はいくらでも $0$ に近くなるが、$g(x)=0$ となる有理数はないので最大値をとらない。
  2. $\mathbb{Q}(\sqrt2)$:prop-rcont-subfield の後で見たとおり $\sqrt3\notin\mathbb{Q}(\sqrt2)$ である。$f(x)=x^2-3$ は $f(1)=-2<0<1=f(2)$ を満たす連続関数だが、$[1,2]$ の中で零点をもつなら、それは $\sqrt3$ でなければならない。$\mathbb{Q}(\sqrt2)$ は $\sqrt2$ を含むので「無理数を付け加えれば十分」というわけではない。
  3. $\mathbb{R}(t)$:ex-rcont-rational-functions で示した。$\mathbb{N}$ が上に有界になることは、Archimedes の性質が成り立たないことそのものである。
  4. $\mathbb{Z}$:空でない上に有界な部分集合 $S$ は最大元をもつ(上界 $N$ をとると $\{N-s\mid s\in S\}$ は空でない自然数の集合なので最小元をもち、それが $S$ の最大元を与える)。したがって上限性質はある。しかし $[0,1]$ の中の整数は $0,1$ だけで、$f(x)=2x-1$ は $f(0)=-1<0<1=f(1)$ を満たすのに零点をもたない($\delta=1$ ととれば $f$ は連続である)。thm-rcont-ivt-evt の (i)⇒(ii) の証明では $c+\frac\delta2$ という $c$ と $c+\delta$ の間の元を使ったが、$\mathbb{Z}$ では $2$ で割れないので、その元が作れない。この定理で $K$ を体としたのはこのためである。

補足

実数の構成

上限性質をもつ順序体が実際に存在することは、有理数から実数を構成して示す。有理数の切断そのものを実数とする方法(Dedekind の方法)と、有理数の Cauchy 列の同値類を実数とする方法がある(実数 の記事の節「構成と完備性」)。どちらで作っても、得られる順序体は 実数 の記事の定理「実数体の一意性」により同型である。Leb26 Exercise 1.2.15(p. 35)は、実数と有理数の上の切断($A$ の側)が一対一に対応することを示させている。

名前について

日本語の「連続性」は、数直線が切れ目なくつながっていることを表す。英語では completeness(完備性)と呼ぶのが普通で、上限性質を least-upper-bound property、Dedekind completeness property とも言う(Leb26 p. 24)。関数の連続性や、距離空間の完備性と混同しないように、どの性質を指しているかを文脈で確かめる必要がある。とくに「$\mathbb{R}$ は完備である」と書いたとき、Cauchy 列の収束(完備距離空間)を指すことも、上限性質を指すこともある。実数ではこの 2 つは同値だが(上の表)、一般の順序体では Archimedes の性質の分だけ違う。

関連項目

参考文献

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