Cantor集合

同義語:Cantor setカントール集合Cantorの三進集合三進Cantor集合

概要

Cantor集合(Cantor set)とは、閉区間 $[0,1]$ から中央の 3 分の 1 の開区間を取り除き、残った各閉区間から同じ操作を無限に繰り返したとき最後まで残る点の集合である。3 進小数の桁を $0$ と $2$ だけで書ける $[0,1]$ の数の全体に一致し、$\{0,1\}$ の無限列全体と一対一に対応するので、濃度は実数全体と同じ $2^{\aleph_0}$ である。一方、Lebesgue 測度は $0$ で、長さが正の区間を含まない疎な閉集合であり、孤立点をもたず、連結成分はすべて 1 点である。このように濃度・測度・位相による大きさの尺度が食い違う代表例であり、Cantor 関数(悪魔の階段)の構成や、自己相似集合・Hausdorff 次元の最初の例としても用いられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 閉区間, 閉集合, 非可算集合, Lebesgue測度

定義

閉区間 $[0,1]$ から中央の $3$ 分の $1$ の開区間 $(1/3,2/3)$ を取り除くと、2 つの閉区間
$$C_1=\Bigl[0,\frac13\Bigr]\cup\Bigl[\frac23,1\Bigr]$$
が残る。残った各閉区間からさらに中央の $3$ 分の $1$ の開区間 $(1/9,2/9)$、$(7/9,8/9)$ を取り除くと、長さ $1/9$ の 4 つの閉区間
$$C_2=\Bigl[0,\frac19\Bigr]\cup\Bigl[\frac29,\frac13\Bigr]\cup\Bigl[\frac23,\frac79\Bigr]\cup\Bigl[\frac89,1\Bigr]$$
が残る。これを無限に繰り返したとき、最後まで取り除かれずに残る点の全体が Cantor 集合である。たとえば $0$、$1$、$1/3$、$2/3$ のような区間の端点は一度も取り除かれない。$1/2$ は最初の段階で取り除かれる。$1/4$ は端点ではないが、$C_1$ では $[0,1/3]$ に、$C_2$ では $[2/9,1/3]$ に属し、以後もずっと残る(ex-cantor-set-quarter)。$C_n$ の区間の長さの合計は $(2/3)^n$ であり、$n$ を大きくするといくらでも小さくなるのに、残る点は非可算個ある。
この構成を式で書くために、$\{0,2\}$ の元の有限列を使う。$n\in\mathbb{N}$ と $a=(a_0,\dots,a_{n-1})\in\{0,2\}^n$ に対し
$$t_a:=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{a_k}{3^{k+1}},\qquad I_a:=\bigl[t_a,\ t_a+3^{-n}\bigr]$$
とおく($n=0$ のときは空列 $a$ について $t_a=0$、$I_a=[0,1]$)。

Cantor集合の構成

$n\in\mathbb{N}$ に対し
$$C_n:=\bigcup_{a\in\{0,2\}^n}I_a$$
とおき、
$$C:=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}C_n$$
を Cantor 集合(Cantor set)という。中央の $3$ 分の $1$ を取り除く構成によることを強調して 三進 Cantor 集合、Cantor の三進集合 ともいう。

$I_a$ の中央の $3$ 分の $1$ の開区間を取り除くと、$a$ の後ろに $0$ または $2$ を付け加えた列 $a0$、$a2$ に対する
$$I_{a0}=\bigl[t_a,\ t_a+3^{-(n+1)}\bigr],\qquad I_{a2}=\bigl[t_a+2\cdot3^{-(n+1)},\ t_a+3^{-n}\bigr]$$
が残る(lem-cantor-set-intervals)。したがって $C_{n+1}$ は $C_n$ の各閉区間から中央の $3$ 分の $1$ の開区間を取り除いたものであり、上の説明の $C_1,C_2$ と一致する。本記事の記号は 非可算集合 の記事で Cantor 集合を扱う箇所の記号と同じである。
「Cantor 集合」という語は、$C$ と同相な位相空間(たとえば $\{0,1\}$ の無限列全体に直積位相を入れた空間)を指して使われることもある(rem-cantor-set-characterization)。本記事の主題は上で構成した $\mathbb{R}$ の部分集合 $C$ である。

直感

$C$ は「長さ」の尺度ではほとんど何もない集合である。取り除いた開区間の長さの合計は
$$\frac13+2\cdot\frac19+4\cdot\frac1{27}+\cdots=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{2^n}{3^{n+1}}=1$$
であり、$[0,1]$ の長さ $1$ をすべて取り除いたことになる。それでも $C$ には $[0,1]$ と同じだけの点が残る。これは $3$ 進法で見ると分かる。$C$ の点は、$3$ 進小数の各桁を $0$ と $2$ だけで書ける数であり(thm-cantor-set-ternary)、各桁で 2 通りの選択を無限回行うことは、硬貨を無限回投げたときの表裏の列を選ぶことと同じである。表裏の列は $2$ 進小数と同じだけあるので、$C$ の点も $[0,1]$ の点と同じだけある(prop-cantor-set-function)。
$C$ は、大きさを測るいくつかの尺度が互いに独立であることを 1 つの集合で示す。濃度は $\mathbb{R}$ と同じで最大であり、Lebesgue 測度は $0$ で最小であり、位相的には区間を 1 つも含まない疎集合でありながら、孤立点を 1 つももたない。

例と反例

端点でない点:$1/4$ と $3/4$

$s=(0,1,0,1,\dots)$(偶数番目が $0$、奇数番目が $1$)とすると、$3$ 進の桁が $0,2,0,2,\dots$ と並ぶ数
$$\sum_{k=0}^{\infty}\frac{2s_k}{3^{k+1}}=\sum_{j=1}^{\infty}\frac{2}{9^{j}}=\frac{2/9}{1-1/9}=\frac14$$
は $C$ に属する(thm-cantor-set-ternary)。同様に桁が $2,0,2,0,\dots$ の数は $1-\frac14=\frac34$ であり、$C$ に属する。
一方、各 $I_a$($a\in\{0,2\}^n$)の端点 $t_a$、$t_a+3^{-n}$ は $m/3^n$($m$ は整数)の形をしている。$3^n/4$ は整数でないので $1/4$ はこの形でなく、どの段階の区間の端点でもない。端点の全体は各 $n$ について有限個の集合の可算個の和集合なので可算集合であるが、$C$ は非可算である(thm-cantor-set-ternary)。したがって $C$ は端点だけからなる集合ではなく、端点でない点のほうが圧倒的に多い。

反例:桁に $1$ を含む表示をもつ点

$1/3$ の $3$ 進表示は $0.1_{(3)}$ であり桁 $1$ を含むが、$1/3=\sum_{k\ge1}2\cdot3^{-(k+1)}=0.0222\cdots_{(3)}$ とも書けるので $C$ に属する($1/3$ は $I_{(0)}=[0,1/3]$ の右端点でもある)。一方 $1/2=\sum_{k\ge1}3^{-k}=0.111\cdots_{(3)}$ は最初に取り除く開区間 $(1/3,2/3)$ に属するので、$1/2\notin C$ である。満たす性質:$1/3\in C$。満たさない性質:$1/3$ のすべての $3$ 進表示が $0$ と $2$ だけからなること。破る含意:「$x\in C$ ならば $x$ のどの $3$ 進表示も桁 $1$ を含まない」は成り立たない。thm-cantor-set-ternary の特徴づけは「桁を $0$ と $2$ だけで書ける表示が少なくとも 1 つある」という形でなければならない。

反例:測度 $0$ の集合の和が区間になる

$C+C:=\{x+y\mid x,y\in C\}$ は閉区間 $[0,2]$ に等しい。
$C\subset[0,1]$ なので $C+C\subset[0,2]$ である。逆に $u\in[0,2]$ とし、$w:=u/2\in[0,1]$ の $3$ 進表示 $w=\sum_{k\ge0}d_k3^{-(k+1)}$($d_k\in\{0,1,2\}$)をとる($w<1$ なら $d_k:=\lfloor3^{k+1}w\rfloor-3\lfloor3^kw\rfloor$ とおけば部分和が $\lfloor3^{n}w\rfloor/3^{n}$ に等しく $w$ に収束する。$w=1$ なら $d_k=2$ とする)。$d_k\ge1$ なら $x_k:=2$、そうでなければ $x_k:=0$ とし、$d_k=2$ なら $y_k:=2$、そうでなければ $y_k:=0$ とする。どの場合も $x_k,y_k\in\{0,2\}$、$x_k+y_k=2d_k$ である。$x:=\sum x_k3^{-(k+1)}$、$y:=\sum y_k3^{-(k+1)}$ は thm-cantor-set-ternary により $C$ に属し、$x+y=2w=u$ である。
$C$ の Lebesgue 測度は $0$ である(prop-cantor-set-measure-zero)。満たす性質:$C$ は測度 $0$ の有界閉集合である。満たさない性質:$C+C$ は測度 $0$ でない(測度 $2$)。破る含意:「Lebesgue 測度 $0$ の集合どうしの和 $A+B$ は測度 $0$ である」は成り立たない。

反例:測度が正の疎な閉集合

取り除く開区間の長さを変えると、Cantor 集合と同じく区間を含まない閉集合でありながら、Lebesgue 測度が正のものが得られる。$[0,1]$ から始め、第 $n$ 段階($n\ge1$)では残っている $2^{n-1}$ 個の閉区間それぞれから、中央の長さ $4^{-n}$ の開区間を取り除く。第 $n$ 段階の後に残る各閉区間の長さを $\ell_n$ とすると、$\ell_0=1$、$\ell_n=(\ell_{n-1}-4^{-n})/2$ であり、帰納法で
$$\ell_n=\frac{2^n+1}{2^{2n+1}}\qquad(n\ge1)$$
が確かめられる($\ell_1=3/8$ であり、$\ell_n-4^{-(n+1)}=(2^{n+1}+1)/2^{2n+2}>0$ を $2$ で割ると $\ell_{n+1}$ の式になる)。とくに $\ell_{n-1}>4^{-n}$ なので各段階の除去は実行でき、$\ell_n\to0$ である。残る集合 $K$ は閉区間の有限和の減少列の共通部分なので閉集合であり、長さ $\ell_n$ の互いに交わらない閉区間の和集合に含まれることから、$K$ に含まれる区間があればそのうちの 1 つに含まれ、$\ell_n$ より長い区間を含まない。したがって $K$ は内部が空の閉集合、すなわち疎集合である。取り除いた長さの合計は
$$\sum_{n=1}^{\infty}2^{n-1}4^{-n}=\frac14\sum_{n=1}^{\infty}\Bigl(\frac12\Bigr)^{n-1}=\frac12$$
なので $K$ の Lebesgue 測度は $1/2$ である。満たす性質:$K$ は疎な閉集合である。満たさない性質:Lebesgue 測度 $0$。破る含意:「疎な閉集合は測度 $0$ である」は成り立たない。このような集合は Smith–Volterra–Cantor 集合(太った Cantor 集合)と呼ばれる。

性質

区間の入れ子と 3 進表示

構成に現れる区間の入れ子

$n\in\mathbb{N}$ とする。

  1. 任意の $a\in\{0,2\}^n$ について $I_{a0},I_{a2}\subset I_a$ であり、$I_a\setminus(I_{a0}\cup I_{a2})$ は開区間 $\bigl(t_a+3^{-(n+1)},\ t_a+2\cdot3^{-(n+1)}\bigr)$ である。とくに $C_{n+1}\subset C_n$ である。
  2. $a\neq a'$ となる $a,a'\in\{0,2\}^n$ について $I_a\cap I_{a'}=\emptyset$ である。
  1. $t_{a0}=t_a$、$t_{a2}=t_a+2\cdot3^{-(n+1)}$ なので、$I_{a0}$、$I_{a2}$ は def-cantor-set の直後に書いた閉区間であり、主張は $t_a< t_a+3^{-(n+1)}< t_a+2\cdot3^{-(n+1)}< t_a+3^{-n}$ から従う。$C_{n+1}$ の各区間は $C_n$ のある区間に含まれるので $C_{n+1}\subset C_n$ である。
  2. 1 を繰り返し使うと、$a\in\{0,2\}^n$ と $m\le n$ について、$a$ の最初の $m$ 項からなる列 $a|_m$ に対し $I_a\subset I_{a|_m}$ である。$a\neq a'$ とし、$a_k\neq a'_k$ となる最小の $k$ をとる。$a_k=0$、$a'_k=2$ としてよい。$b:=a|_k=a'|_k$ とおくと、$I_a\subset I_{b0}$、$I_{a'}\subset I_{b2}$ であり、1 により $I_{b0}$ の右端 $t_b+3^{-(k+1)}$ は $I_{b2}$ の左端 $t_b+2\cdot3^{-(k+1)}$ より小さいので、$I_{b0}\cap I_{b2}=\emptyset$ である。よって $I_a\cap I_{a'}=\emptyset$ である。$\square$

$\{0,1\}$ の元の無限列全体を $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ と書き、写像 $\varphi\colon\{0,1\}^{\mathbb{N}}\to\mathbb{R}$ を
$$\varphi(s):=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{2s_k}{3^{k+1}}$$
で定める。$\varphi(s)$ は、$3$ 進小数の第 $k+1$ 桁が $2s_k\in\{0,2\}$ である数である。$s$ の最初の $n$ 項を $2$ 倍した列を $a=(2s_0,\dots,2s_{n-1})\in\{0,2\}^n$ とすると、残りの項の和は $0$ 以上 $\sum_{k\ge n}2\cdot3^{-(k+1)}=3^{-n}$ 以下なので
$$\varphi(s)\in I_a$$
である。以下この事実を ($\ast$) と呼ぶ。非可算集合 の記事の命題「Cantor集合の非可算性」は、($\ast$) から $\varphi(s)\in C$ となること、および $\varphi$ が単射であることを示している。その証明の評価をまとめると、$s,s'\in\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ が最初の $n$ 項で一致すれば
$$|\varphi(s)-\varphi(s')|\le3^{-n}$$
であり、$s_k\neq s'_k$ となる最小の $k$ について $s_k=1$、$s'_k=0$ ならば
$$\varphi(s)-\varphi(s')\ge2\cdot3^{-(k+1)}-\sum_{j>k}2\cdot3^{-(j+1)}=3^{-(k+1)}>0$$
である。以下ではこの 2 つの評価を繰り返し使う。

3進表示による特徴づけ

$\varphi$ は $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ から $C$ への全単射である。すなわち
$$C=\Bigl\{\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x_k}{3^{k+1}}\ \Bigm|\ x_k\in\{0,2\}\ (k\in\mathbb{N})\Bigr\}$$
であり、$C$ の各点について、桁を $0$ と $2$ だけで書く $3$ 進表示はただ 1 つである。とくに $C$ の濃度は $2^{\aleph_0}$ であり、$C$ は非可算である。

$\varphi$ の像が $C$ に含まれることと $\varphi$ が単射であることは、上で述べたとおり 非可算集合 の記事の命題「Cantor集合の非可算性」の証明による。$C\subset\varphi(\{0,1\}^{\mathbb{N}})$ を示す。
$x\in C$ とする。各 $n$ について $x\in C_n$ なので、$x\in I_a$ となる $a\in\{0,2\}^n$ があり、lem-cantor-set-intervals の 2 によりそれはただ 1 つである。これを $a^{(n)}$ と書く。$x\in I_{a^{(n+1)}}\subset I_{a^{(n+1)}|_n}$ なので、一意性から $a^{(n+1)}|_n=a^{(n)}$ である。したがって $a^{(n)}$ たちはある無限列 $(a_0,a_1,\dots)\in\{0,2\}^{\mathbb{N}}$ の最初の $n$ 項になっている。$s_k:=a_k/2$ とおくと、($\ast$) により $\varphi(s)\in I_{a^{(n)}}$ であり、$x\in I_{a^{(n)}}$ でもあるので、$|x-\varphi(s)|\le3^{-n}$ である。これがすべての $n$ で成り立つので $x=\varphi(s)$ である。各段の $a^{(n)}$ は一意に定まるので、この議論に選択公理は要らない。
以上で $\varphi$ は全単射である。表示の一意性は $\varphi$ の単射性の言い換えである。基数 の記事の定義「基数の算術」により $|\{0,1\}^{\mathbb{N}}|=2^{\aleph_0}$ なので $|C|=2^{\aleph_0}$ であり、Cantor の定理(Cantorの定理)により $2^{\aleph_0}>\aleph_0$ なので $C$ は非可算である。$\square$

大きさ:測度と位相

測度0のコンパクトな疎集合

$C$ は空でないコンパクト(コンパクト空間)な $\mathbb{R}$ の部分集合であり、Lebesgue 測度は $0$ である。$C$ は長さが正のどの区間も含まず、したがって内部が空の閉集合、すなわち疎集合である。

各 $C_n$ は有限個の閉区間の和集合なので閉集合であり、$C$ は閉集合の共通部分なので閉集合である。$C\subset[0,1]$ は有界なので、Heine-Borelの定理(コンパクト空間 の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」)により $C$ はコンパクトである。$0\in C$($0=\varphi(0,0,\dots)$)なので $C$ は空でない。
$C\subset C_n$ であり、$C_n$ は長さ $3^{-n}$ の閉区間 $2^n$ 個の和集合なので、Lebesgue 測度 $\lambda$ について $\lambda(C)\le\lambda(C_n)\le2^n3^{-n}=(2/3)^n$ である。$n\to\infty$ として $\lambda(C)=0$ を得る。長さ $\ell>0$ の区間 $J$ が $C$ に含まれれば $\ell=\lambda(J)\le\lambda(C)=0$ となり矛盾する。$\mathbb{R}$ の空でない開集合は長さが正の開区間を含むので、$C$ の内部は空である。$C$ は閉集合なので閉包も $C$ であり、閉包の内部が空であるから $C$ は疎集合である。$\square$

測度の評価は、$C$ が長さの和 $(2/3)^n$ の有限個の区間で覆えるという事実だけを使っている。区間を含まないことは 非可算集合 の記事の例「反例:区間を含まない非可算集合」でも、区間の長さの比較で示されている。

完全性と完全不連結性
  1. $C$ の各点は $C$ の集積点である。すなわち $C$ は孤立点をもたない閉集合(完全集合)である。
  2. $x< y$ となる $x,y\in C$ に対し、$x< z< y$ かつ $z\notin C$ となる実数 $z$ が存在する。したがって、$\mathbb{R}$ の部分空間としての $C$ の連結成分はすべて 1 点であり、$C$ は完全不連結空間である。
  1. $x\in C$、$\varepsilon>0$ とし、$3^{-n}<\varepsilon$ となる $n$ をとる。thm-cantor-set-ternary により $x=\varphi(s)$ と書ける。$s$ の最初の $n$ 項は変えずに、第 $n$ 項以降をすべて $0$ にした列を $s'$、すべて $1$ にした列を $s''$ とすると、$\varphi(s')\neq\varphi(s'')$ であり($\varphi$ は単射)、どちらも $C$ の点で、最初の $n$ 項が $s$ と一致するので $|\varphi(s')-x|\le3^{-n}<\varepsilon$、$|\varphi(s'')-x|<\varepsilon$ である。$\varphi(s')$ と $\varphi(s'')$ の少なくとも一方は $x$ と異なるので、$x$ の $\varepsilon$ 近傍は $x$ 以外の $C$ の点を含む。$C$ は閉集合なので(prop-cantor-set-measure-zero)、$C$ は完全集合である。
  2. $x=\varphi(s)$、$y=\varphi(s')$ と書き、$s_k\neq s'_k$ となる最小の $k$ をとる。上の評価から、$s_k=1$、$s'_k=0$ なら $x>y$ となるので、$x< y$ より $s_k=0$、$s'_k=1$ である。$b:=(2s_0,\dots,2s_{k-1})\in\{0,2\}^k$ とおくと、($\ast$) により $x\in I_{b0}$、$y\in I_{b2}$ である。
    $$z:=t_b+\frac32\cdot3^{-(k+1)}$$
    とおくと、lem-cantor-set-intervals の 1 により $z$ は $I_{b0}$ と $I_{b2}$ の間の開区間に属するので $x< z< y$ である。$z\in I_b$ であり、$C_{k+1}$ を作る区間のうち $I_{b0},I_{b2}$ 以外のものは $I_b$ と異なる $I_{b'}$($b'\in\{0,2\}^k$)に含まれ、lem-cantor-set-intervals の 2 により $I_b$ と交わらない。よって $z\notin C_{k+1}$、したがって $z\notin C$ である。
    $A\subset C$ が相異なる 2 点 $x< y$ を含めば、上の $z$ について $A\cap(-\infty,z)$ と $A\cap(z,\infty)$ は $A$ の空でない開集合で、交わらず、合わせて $A$ になるので、$A$ は連結でない。よって $C$ の連結(連結空間)な部分集合は 1 点以下であり、連結成分はすべて 1 点である。$\square$

自己相似性と直積空間との同相

自己相似性と対称性
  1. $C=\bigl(\tfrac13C\bigr)\cup\bigl(\tfrac23+\tfrac13C\bigr)$ であり、右辺の 2 つの集合は交わらない。ここで $\tfrac13C:=\{x/3\mid x\in C\}$、$\tfrac23+\tfrac13C:=\{2/3+x/3\mid x\in C\}$ である。
  2. $x\in C$ ならば $1-x\in C$ である。

$s\in\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ に対し、先頭に $i\in\{0,1\}$ を付け加えた列を $is:=(i,s_0,s_1,\dots)$ と書く。定義から
$$\varphi(0s)=\frac13\varphi(s),\qquad\varphi(1s)=\frac23+\frac13\varphi(s)$$
である。$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ の元は $0s$ か $1s$ のどちらかの形にただ 1 通りに書けるので、thm-cantor-set-ternary により 1 の等式が成り立つ。$\tfrac13C\subset[0,\tfrac13]$、$\tfrac23+\tfrac13C\subset[\tfrac23,1]$ なので両者は交わらない。
2. $\bar s_k:=1-s_k$ とおくと、$\sum_{k\ge0}2\cdot3^{-(k+1)}=1$ より $\varphi(\bar s)=1-\varphi(s)$ である。$\square$

1 は、$C$ が自分自身を $1/3$ に縮小した 2 つの複製の和になっていることを表す。$C$ は、$x\mapsto x/3$ と $x\mapsto2/3+x/3$ という 2 つの縮小写像について 1 の等式を満たす空でないコンパクト集合として特徴づけられる(Fal14 Chapter 9)。
$\{0,1\}$ に離散位相を入れ、$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ に直積位相を入れる。$s\in\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ と $n\in\mathbb{N}$ に対し、最初の $n$ 項が $s$ と一致する列全体を $U_{s,n}$ とすると、$\{U_{s,n}\mid n\in\mathbb{N}\}$ は $s$ の基本近傍系をなす(直積位相の開基は有限個の座標を指定する集合だからである)。

直積空間との同相

$\varphi\colon\{0,1\}^{\mathbb{N}}\to C$ は同相写像である。とくに $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ はコンパクトである。

thm-cantor-set-ternary により $\varphi$ は全単射である。
$\varphi$ の連続性:$s\in\{0,1\}^{\mathbb{N}}$、$\varepsilon>0$ とし、$3^{-n}<\varepsilon$ となる $n$ をとる。$s'\in U_{s,n}$ なら $s$ と $s'$ は最初の $n$ 項で一致するので $|\varphi(s')-\varphi(s)|\le3^{-n}<\varepsilon$ である。
逆写像の連続性:$x=\varphi(s)\in C$ と $n$ をとる。$y=\varphi(s')\in C$ が $|y-x|<3^{-n}$ を満たすとする。$s'\neq s$ なら、$s_k\neq s'_k$ となる最小の $k$ について $|\varphi(s)-\varphi(s')|\ge3^{-(k+1)}$ なので、$3^{-(k+1)}<3^{-n}$、すなわち $k\ge n$ である。よって $s'\in U_{s,n}$ であり、$\varphi^{-1}$ は $x$ で連続である。
$C$ はコンパクトなので(prop-cantor-set-measure-zero)、それと同相な $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ もコンパクトである。$\square$

$\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ のコンパクト性は Tychonoffの定理 からも従うが、上の証明はそれを使わない。

Cantor 関数

$3$ 進表示の桁 $2$ を $1$ に読み替えて $2$ 進小数として読むと、$C$ から $[0,1]$ への写像が得られる。

Cantor関数の構成

$F\colon C\to[0,1]$ を
$$F(\varphi(s)):=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{s_k}{2^{k+1}}\qquad(s\in\{0,1\}^{\mathbb{N}})$$
で定める。

  1. $F$ は $C$ から $[0,1]$ への全射であり、$x\le y$ となる $x,y\in C$ について $F(x)\le F(y)$ である。
  2. $\overline F(x):=\sup\{F(c)\mid c\in C,\ c\le x\}$($x\in[0,1]$)とおくと、$\overline F$ は $C$ 上で $F$ に一致する単調非減少な連続関数(連続写像) $[0,1]\to[0,1]$ で、$\overline F(0)=0$、$\overline F(1)=1$ を満たす。
  3. $[0,1]\setminus C$ の各点 $x$ は、$\overline F$ が定数となる開区間に含まれる。とくに $\overline F$ は $[0,1]\setminus C$ の各点で微分可能で、微分係数は $0$ である。

thm-cantor-set-ternary により $\varphi$ は全単射なので、$F$ は矛盾なく定まる。級数は $\sum_k2^{-(k+1)}=1$ で抑えられ、値は $[0,1]$ に属する。

  1. 全射であること:$u\in[0,1)$ に対し $s_k:=\lfloor2^{k+1}u\rfloor-2\lfloor2^ku\rfloor\in\{0,1\}$ とおくと、$\sum_{k< n}s_k2^{-(k+1)}=\lfloor2^nu\rfloor/2^n$(和が打ち消し合う)であり、これは $u$ に収束するので $F(\varphi(s))=u$ である。$u=1$ にはすべての項が $1$ の列が対応する。単調であること:$x=\varphi(s)< y=\varphi(s')$ とし、$s_k\neq s'_k$ となる最小の $k$ をとる。thm-cantor-set-ternary の前の評価から $s_k=0$、$s'_k=1$ であり、
    $$F(y)-F(x)=\frac1{2^{k+1}}+\sum_{j>k}\frac{s'_j-s_j}{2^{j+1}}\ge\frac1{2^{k+1}}-\sum_{j>k}\frac1{2^{j+1}}=0$$
    である。
  2. $0\in C$ なので上限をとる集合は空でなく、$\overline F$ は定まり値は $[0,1]$ に属する。$x\le x'$ なら上限をとる集合が大きくなるので $\overline F(x)\le\overline F(x')$ である。$x\in C$ なら 1 の単調性から $\overline F(x)=F(x)$ である。とくに $\overline F(0)=F(\varphi(0,0,\dots))=0$、$\overline F(1)=F(\varphi(1,1,\dots))=1$ である。1 により $\overline F([0,1])\supset F(C)=[0,1]$ なので $\overline F([0,1])=[0,1]$ である。$\overline F$ がある点 $x_0$ で連続でないとすると、単調性から左極限 $L^-:=\lim_{x\uparrow x_0}\overline F(x)$ と右極限 $L^+:=\lim_{x\downarrow x_0}\overline F(x)$(端点では片側だけ)が存在し、$L^-<\overline F(x_0)$ または $\overline F(x_0)< L^+$ である。前者なら、$x< x_0$ では $\overline F(x)\le L^-$、$x\ge x_0$ では $\overline F(x)\ge\overline F(x_0)$ なので、開区間 $(L^-,\overline F(x_0))\subset[0,1]$ の値は $\overline F$ の値にならない。これは $\overline F([0,1])=[0,1]$ に反する。後者も同様である。よって $\overline F$ は連続である。
  3. $x\in[0,1]\setminus C$ とする。$x\in C_0$ かつ $x\notin C$ なので、$x\notin C_{m}$ となる最小の $m\ge1$ がある。$n:=m-1$ とすると $x\in I_b$ となる $b\in\{0,2\}^n$ があり、$x\notin I_{b0}\cup I_{b2}$ なので、lem-cantor-set-intervals の 1 により $x$ は開区間
    $$G:=(u,v),\qquad u:=t_b+3^{-(n+1)},\quad v:=t_b+2\cdot3^{-(n+1)}$$
    に属する。prop-cantor-set-perfect の 2 の証明と同じく $G\cap C_{n+1}=\emptyset$ なので $G\cap C=\emptyset$ であり、$x'\in G$ について $\{c\in C\mid c\le x'\}=\{c\in C\mid c\le u\}$、したがって $\overline F(x')=\overline F(u)$ である。$\overline F$ は $G$ 上で定数なので、$G$ の各点で微分係数は $0$ である。なお $b=(2r_0,\dots,2r_{n-1})$ とすると $u=\varphi(r_0,\dots,r_{n-1},0,1,1,\dots)$、$v=\varphi(r_0,\dots,r_{n-1},1,0,0,\dots)$ であり、$2$ 進小数 $0.\cdots0111\cdots$ と $0.\cdots1000\cdots$ は等しいので $F(u)=F(v)$ である。$\overline F$ は閉区間 $[u,v]$ 上で定数である。$\square$

$\overline F$ を Cantor 関数、またはグラフの形から 悪魔の階段(devil's staircase)という。

反例:微積分の基本定理が成り立たない単調連続関数

$\overline F$ は $[0,1]$ 上で連続かつ単調非減少であり、prop-cantor-set-function の 3 により $[0,1]\setminus C$ の各点で微分係数 $0$ をもつ。$C$ の Lebesgue 測度は $0$ なので(prop-cantor-set-measure-zero)、$\overline F'=0$ はほとんどいたるところで成り立ち、$\int_0^1\overline F'(x)\,dx=0$ である。一方 $\overline F(1)-\overline F(0)=1$ である。満たす性質:連続、単調、ほとんどいたるところ微分可能。満たさない性質:絶対連続性。破る含意:「連続でほとんどいたるところ微分可能な関数 $f$ は $\int_a^bf'=f(b)-f(a)$ を満たす」は成り立たない。$f$ がほとんどいたるところ微分可能で $f'$ が可積分であり、すべての $x\in[a,b]$ について $f(x)-f(a)=\int_a^xf'$ が成り立つことは、$f$ が絶対連続であることと同値である(Fol99 §3.5)。

また 1 の全射性は、$C$ が非可算であることの別証明を与える。$[0,1]$ は非可算であり(非可算集合 の記事の定理「区間の非可算性」)、可算集合の像は可算なので、$[0,1]$ への全射をもつ $C$ は可算でない。

一般化と位置づけ

Cantor集合の位相的特徴づけ

空でない距離化可能(距離化可能空間)なコンパクト空間で、孤立点をもたず、開かつ閉な集合全体が開基をなすもの(0 次元のもの)は、すべて $C$ と同相である(Brouwer の定理、Kec95 §7)。$C$ 自身がこれらの性質をもつことは、prop-cantor-set-measure-zero、prop-cantor-set-perfect、prop-cantor-set-homeomorphism による($\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ の $U_{s,n}$ は開かつ閉である)。この定理により、p進整数環 $\mathbb{Z}_p$ や $\{0,1,\dots,m-1\}^{\mathbb{N}}$($m\ge2$)も $C$ と同相である。このため、これらの性質をもつ空間、とくに $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ を Cantor 空間 と呼ぶことがある。

次元と完全集合定理

$C$ の Hausdorff次元 は $\log2/\log3\approx0.6309$ である(Fal14 Chapter 3)。これは prop-cantor-set-self-similar の 1 で、縮小率 $1/3$ の複製 $2$ 個で全体が得られることに対応する。また、$\mathbb{R}$ の非可算な閉集合は $C$ と同相な部分集合を含み、したがって濃度 $2^{\aleph_0}$ をもつ(Cantor–Bendixson の定理、Kec95 §6)。閉集合については、可算と連続体濃度の中間の濃度が現れないという意味で、連続体仮説の主張が成り立つ。

補足

関連項目

参考文献

[2]
Gerald B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications, 2nd ed., Wiley, 1999, §1.5(Cantor 集合と Cantor 関数)、§3.5(絶対連続関数)
[3]
Kenneth Falconer, Fractal Geometry: Mathematical Foundations and Applications, 3rd ed., Wiley, 2014, Chapter 3(Hausdorff 次元と中央 3 分の 1 の Cantor 集合)、Chapter 9(反復関数系と自己相似集合)
[4]
Alexander S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Graduate Texts in Mathematics 156, Springer, 1995, §6(完全ポーランド空間、Cantor–Bendixson の定理)、§7(Cantor 空間と Brouwer の定理)

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