分布関数(測度論)(distribution function (measure theory))とは、測度空間上の可測関数 $f$ に対し、$t\ge0$ ごとに $\lvert f\rvert$ が $t$ を超える集合の測度 $\lambda_f(t)=\mu(\{\lvert f\rvert>t\})$ を対応させる関数である。単調非増加で右連続であり、$L^p$ ノルムは分布関数だけで計算できる。弱 $L^p$ 空間は $\sup_{t>0}t\,\lambda_f(t)^{1/p}$ が有限な関数の空間で、σ-有限な測度空間で $1<p<\infty$ なら集合の上の平均で測るノルムと同値になる。確率論の累積分布関数とは別の概念で、確率空間では $\lambda_X(t)=1-P(\lvert X\rvert\le t)$ となる。
前提知識: 測度, Lebesgue積分, Lp空間
可測関数 $f$ の大きさを調べるとき、「どの点でどんな値をとるか」は忘れて、「$\lvert f\rvert$ が $t$ を超える点の集合がどれだけの測度をもつか」だけを $t$ の関数として記録することがある。これが測度論でいう 分布関数(distribution function)$\lambda_f(t)=\mu(\{\lvert f\rvert>t\})$ である。積分 $\int\lvert f\rvert^p\,d\mu$ や、$\varphi(s)=\int_0^sg(t)\,dt$($g\ge0$)の形の $\varphi$ についての $\int\varphi(\lvert f\rvert)\,d\mu$ は分布関数だけで決まり(層ケーキ表示)、関数の値を並べ替えても分布関数は変わらない。分布関数は、関数を「高さごとの集合の大きさ」で見る Lebesgue 積分の考え方を、そのまま関数にしたものといえる。
分布関数は弱 $L^p$ 空間の定義に使われ、Marcinkiewiczの補間定理 や Hardy–Littlewoodの極大関数 の評価の言葉になる。
確率論で「分布関数」というと、確率変数 $X$ の累積分布関数 $F_X(t)=P(X\le t)$(確率変数 の記事の定義「分布と分布関数」)を指すことが多い。この記事の $\lambda_f$ は $\lvert f\rvert$ の上側の裾を測るもので、確率空間では $\lambda_X(t)=1-F_{\lvert X\rvert}(t)$ の関係にある(ex-df-probability)。超関数(distribution、超関数)とも別の概念である。
以下、$(X,\mathcal F,\mu)$ を測度空間とする。関数 $f$ は、値 $\pm\infty$ を許す実数値か複素数値の可測関数とし、$\lvert f\rvert\colon X\to[0,\infty]$ は可測である。
可測関数 $f$ に対し
$$
\lambda_f(t):=\mu\bigl(\{x\in X\mid \lvert f(x)\rvert>t\}\bigr)\in[0,\infty]\qquad(t\ge0)
$$
を $f$ の 分布関数 という。
ほとんどいたるところ等しい 2 つの関数は、集合 $\{\lvert f\rvert>t\}$ が零集合の差しかないので同じ分布関数をもつ。分布関数の記号は文献によって $d_f$、$\mu_f$、$\alpha$ などとも書かれる(Marcinkiewiczの補間定理 の記事の定義「分布関数と弱Lp準ノルム」は $d_g$ と書く)。$c\ne0$ について $\lambda_{cf}(t)=\lambda_f(t/\lvert c\rvert)$ である。
$f$ を可測関数とする。
要点:1 と 5 は定義から、2 は集合 $\{\lvert f\rvert>s\}$ が $s\downarrow t$ で増加して $\{\lvert f\rvert>t\}$ になることと測度の下からの連続性から、3 と 4 は集合が減少することと、最初の測度が有限なときの上からの連続性から従う。
1. $s\le t$ なら $\{\lvert f\rvert>t\}\subset\{\lvert f\rvert>s\}$ である。
2. $s_n\downarrow t$($s_n>t$)とすると、集合 $\{\lvert f\rvert>s_n\}$ は増加し、その和集合は $\{\lvert f\rvert>t\}$ である。実際、$\lvert f(x)\rvert>t$ なら十分大きい $n$ で $\lvert f(x)\rvert>s_n$ となる。測度の下からの連続性(Lebesgue測度 の記事の命題「測度の単調性と連続性」)により $\lambda_f(s_n)\uparrow\lambda_f(t)$ である。1 の単調性から、任意の $s\downarrow t$ についても同じ極限になる。この部分には有限性の仮定が要らない。
3. $s_n\uparrow t$($s_0\le s_n< t$)とすると、集合 $\{\lvert f\rvert>s_n\}$ は減少し、その共通部分は $\{\lvert f\rvert\ge t\}$ である。最初の集合の測度 $\lambda_f(s_0)$ 以下で有限なので、測度の上からの連続性が使え、$\lambda_f(s_n)\to\mu(\{\lvert f\rvert\ge t\})$ となる。
4. 3 と同じく、$t_n\uparrow\infty$($t_n\ge t_0$)について $\{\lvert f\rvert>t_n\}$ は減少して $\{\lvert f\rvert=\infty\}$ に縮み、最初の測度が有限なので上からの連続性が使える。
5. $\|f\|_\infty$ の定義は $\inf\{t\ge0\mid\mu(\{\lvert f\rvert>t\})=0\}$ であり、これは右辺そのものである。$\square$
3 と 4 の有限性の仮定は外せない。$\mathbb R$ 上の Lebesgue 測度で $f(x)=\lvert x\rvert$ とすると、すべての $t$ で $\lambda_f(t)=\infty$ だが $\mu(\{\lvert f\rvert=\infty\})=0$ である。また $f(x)=1-\frac1{1+\lvert x\rvert}$ とすると、$s< 1$ で $\lambda_f(s)=\infty$ だが、$f< 1$ なので $\mu(\{\lvert f\rvert\ge1\})=0$ である。
右連続性は 2 の議論のとおり測度の下からの連続性だけで決まるが、左連続性は成り立たないことがある。$f=1_{[0,1]}$($\mathbb R$ 上の Lebesgue 測度)では $0\le t< 1$ で $\lambda_f(t)=1$、$t\ge1$ で $\lambda_f(t)=0$ であり、$t=1$ で左極限 $1=\mu(\{f\ge1\})$ と値 $0$ が食い違う。左極限が有限なら、値 $\lambda_f(t)$ が $t$ で下がる幅 $\mu(\{\lvert f\rvert=t\})$ は、$\lvert f\rvert$ がちょうど値 $t$ をとる集合の測度である。
関数列がほとんどいたるところ収束するとき、分布関数がどこまで追随するかは次のとおりである。
$f_n,f$ を可測関数とし、ほとんどいたるところ $f_n\to f$ とする。$t>0$ とする。
$f_n(x)\to f(x)$ となる点 $x$ を考える(それ以外は零集合である)。
2 の仮定 $\mu(X)<\infty$ は外せない。$\mathbb R$ 上の Lebesgue 測度で $f_n=1_{[n,n+1]}$ とすると、各点で $f_n\to0$ だが、$\lambda_{f_n}(\frac12)=1$ がすべての $n$ で成り立ち、極限の関数 $0$ については $\mu(\{0\ge\frac12\})=0$ である。
分布関数が同じ関数どうしは、層ケーキ表示 により、上の形の $\varphi$ についての $\int\varphi(\lvert f\rvert)\,d\mu$ がすべて一致する。とくに、$f$ と同じ分布関数をもつ $[0,\infty)$ 上の非増加関数を作ると、$f$ の「大きさの情報」を 1 変数の単調関数に集約できる。
可測関数 $f$ に対し
$$
f^*(s):=\inf\{t\ge0\mid\lambda_f(t)\le s\}\qquad(s\ge0)
$$
とおく(条件を満たす $t$ がなければ $f^*(s)=\infty$)。$f^*\colon[0,\infty)\to[0,\infty]$ を $f$ の 非増加再配列(減少再配列)という。
$f^*$ は単調非増加であり、各 $t\ge0$ について
$$
\{s\ge0\mid f^*(s)>t\}=[0,\lambda_f(t))
$$
が成り立つ($\lambda_f(t)=\infty$ なら右辺は $[0,\infty)$)。とくに $[0,\infty)$ 上の Lebesgue 測度 $m$ について $m(\{f^*>t\})=\lambda_f(t)$、すなわち $f^*$ の分布関数は $\lambda_f$ に等しい。
$s\le s'$ なら $\{t\mid\lambda_f(t)\le s\}\subset\{t\mid\lambda_f(t)\le s'\}$ なので $f^*(s)\ge f^*(s')$ である。
$s,t\ge0$ を固定し、$f^*(s)>t\iff\lambda_f(t)>s$ を示す。$\lambda_f(t)\le s$ なら $t$ は下限をとる集合に属するので $f^*(s)\le t$ である。逆に $\lambda_f(t)>s$ とする。prop-df-basic の 2(右連続性)から、ある $\delta>0$ があって $t\le\tau< t+\delta$ で $\lambda_f(\tau)>s$ であり、$\tau< t$ でも単調性から $\lambda_f(\tau)\ge\lambda_f(t)>s$ である。よって $\lambda_f(\tau)\le s$ となる $\tau$ は $t+\delta$ 以上であり、$f^*(s)\ge t+\delta>t$ である。
したがって $\{s\ge0\mid f^*(s)>t\}=\{s\ge0\mid s< \lambda_f(t)\}=[0,\lambda_f(t))$ であり、その Lebesgue 測度は $\lambda_f(t)$ である。$\square$
ex-df-examples の 3($f(x)=e^{-\lvert x\rvert}$)では、$s>0$ について $\lambda_f(t)\le s\iff 2\log\frac1t\le s$($0< t< 1$)なので $f^*(s)=e^{-s/2}$ である。$\mathbb R$ の上で左右に広がった山を、高い所から順に $[0,\infty)$ へ並べ直したものになっている。
$0< p<\infty$ について、分布関数を使って
$$
\|f\|_{L^{p,\infty}}:=\sup_{t>0}t\,\lambda_f(t)^{1/p}
$$
とおき、これが有限な可測関数(をほとんどいたるところ等しいものの同一視で割ったもの)の全体を 弱 $L^p$ 空間 $L^{p,\infty}$ という(Marcinkiewiczの補間定理 の記事の定義「分布関数と弱Lp準ノルム」)。$\|f\|_{L^{p,\infty}}\le\|f\|_p$ は Markov の不等式 $t^p\lambda_f(t)\le\int\lvert f\rvert^p\,d\mu$(Chebyshevの不等式 の記事の定理「Markov の不等式」)そのものであり、$1\le p<\infty$ なら $\|\cdot\|_{L^{p,\infty}}$ は定数 $2$ の準三角不等式を満たす(Marcinkiewiczの補間定理 の記事の命題「弱Lp準ノルムの準三角不等式」)。ex-df-examples の 2 の $x^{-1/p}$ は $t\,\lambda_f(t)^{1/p}=1$($t\ge1$)なので $L^{p,\infty}$ に入るが、$\int_0^1x^{-1}\,dx=\infty$ なので $L^p$ には入らない。
$L^p$ と $L^{p,\infty}$ の差は、$t^p\lambda_f(t)$ が端で $0$ に近づくかどうかに現れる。
$0< p<\infty$、$f\in L^p$ とする。このとき
$$
\lim_{t\to\infty}t^p\lambda_f(t)=0,\qquad\lim_{t\to+0}t^p\lambda_f(t)=0.
$$
$\lvert f\rvert>t$ の上で $t^p<\lvert f\rvert^p$ なので
$$
t^p\lambda_f(t)\le\int_{\{\lvert f\rvert>t\}}\lvert f\rvert^p\,d\mu .
$$
$\lvert f\rvert^p$ は可積分で、ほとんどいたるところ有限なので $t\to\infty$ で $1_{\{\lvert f\rvert>t\}}\lvert f\rvert^p\to0$(ほとんどいたるところ)であり、Lebesgue積分 の記事の定理「優収束定理」により右辺は $0$ に収束する。
$t\to+0$ のほうは、$\varepsilon>0$ を固定し $0< t< \varepsilon$ とすると
$$
t^p\lambda_f(t)=t^p\lambda_f(\varepsilon)+t^p\mu(\{t< \lvert f\rvert\le\varepsilon\})
\le t^p\lambda_f(\varepsilon)+\int_{\{0< \lvert f\rvert\le\varepsilon\}}\lvert f\rvert^p\,d\mu
$$
である。Markov の不等式から $\lambda_f(\varepsilon)\le\varepsilon^{-p}\|f\|_p^p<\infty$ なので、第 1 項は $t\to+0$ で $0$ に収束する。第 2 項は $\varepsilon\to+0$ で、優収束定理により $0$ に収束する。よって $\limsup_{t\to+0}t^p\lambda_f(t)\le\int_{\{0< \lvert f\rvert\le\varepsilon\}}\lvert f\rvert^p\,d\mu$ がすべての $\varepsilon>0$ で成り立ち、左辺は $0$ である。$\square$
$x^{-1/p}$($(0,1)$ 上)では $t\ge1$ で $t^p\lambda_f(t)=1$ なので、$L^{p,\infty}$ の関数について $t\to\infty$ の減衰は一般に成り立たない。
$\|\cdot\|_{L^{p,\infty}}$ は三角不等式を満たさない準ノルムだが、$p>1$ なら、集合の上の平均で定義される本物のノルムと比べられる。以下 $1< p<\infty$ とし、$p'=\frac p{p-1}$ を共役指数とする。可測関数 $f$ に対し
$$
[f]_p:=\sup\Bigl\{\mu(A)^{-1/p'}\int_A\lvert f\rvert\,d\mu\ \Big|\ A\in\mathcal F,\ 0< \mu(A)<\infty\Bigr\}\in[0,\infty]
$$
とおく(そのような $A$ がなければ $[f]_p=0$)。$\mu(A)^{-1}\int_A\lvert f\rvert$ は $A$ の上の $\lvert f\rvert$ の平均なので、$[f]_p$ は「平均が $\mu(A)^{-1/p}$ の何倍まで大きくなれるか」を測っている。$[f]_p<\infty$ となる関数の空間は Marcinkiewicz 空間と呼ばれる。
$(X,\mathcal F,\mu)$ を σ-有限な測度空間、$1< p<\infty$ とする。可測関数 $f$ について
$$
\|f\|_{L^{p,\infty}}\le[f]_p\le p'\,\|f\|_{L^{p,\infty}}
$$
が $[0,\infty]$ の値の不等式として成り立つ。
左の不等式:$t>0$ を固定し、$E=\{\lvert f\rvert>t\}$ とおく。$\lambda_f(t)=\mu(E)=0$ なら示すことはない。$0< \mu(E)<\infty$ なら、$E$ の上で $\lvert f\rvert>t$ なので
$$
[f]_p\ge\mu(E)^{-1/p'}\int_E\lvert f\rvert\,d\mu\ge\mu(E)^{-1/p'}\,t\,\mu(E)=t\,\mu(E)^{1/p}=t\,\lambda_f(t)^{1/p}
$$
である($1-\frac1{p'}=\frac1p$)。$\mu(E)=\infty$ なら、σ-有限性から $\mu(X_n)<\infty$、$X_n\uparrow X$ となる可測集合の列をとると $\mu(E\cap X_n)\uparrow\infty$ であり、十分大きい $n$ で $0< \mu(E\cap X_n)<\infty$ となる。同じ計算で $[f]_p\ge t\,\mu(E\cap X_n)^{1/p}\to\infty$ なので $[f]_p=\infty$ である。$t>0$ について上限をとればよい。
右の不等式:$K:=\|f\|_{L^{p,\infty}}<\infty$ としてよい。$K=0$ なら、すべての $t>0$ で $\lambda_f(t)=0$ なので $\{\lvert f\rvert>0\}=\bigcup_n\{\lvert f\rvert>\frac1n\}$ は零集合であり、$[f]_p=0$ である。$K>0$ とし、$A$ を $0< \mu(A)<\infty$ の可測集合とする。関数 $f1_A$ の分布関数は
$$
\lambda_{f1_A}(t)=\mu(A\cap\{\lvert f\rvert>t\})\le\min\bigl\{\mu(A),\ K^pt^{-p}\bigr\}
$$
を満たす。層ケーキ表示 の定理「層ケーキ表示」を $\lvert f\rvert1_A$ に使い、$s:=K\mu(A)^{-1/p}$ で積分を分けると
$$
\int_A\lvert f\rvert\,d\mu=\int_0^\infty\lambda_{f1_A}(t)\,dt
\le\int_0^s\mu(A)\,dt+\int_s^\infty K^pt^{-p}\,dt
=s\,\mu(A)+\frac{K^ps^{1-p}}{p-1}.
$$
$s\,\mu(A)=K\mu(A)^{1-1/p}=K\mu(A)^{1/p'}$、$K^ps^{1-p}=K\mu(A)^{(p-1)/p}=K\mu(A)^{1/p'}$ なので、右辺は $\bigl(1+\frac1{p-1}\bigr)K\mu(A)^{1/p'}=p'K\mu(A)^{1/p'}$ である。$A$ について上限をとれば $[f]_p\le p'K$ を得る。$\square$
$s$ は、分布関数の 2 つの上界 $\mu(A)$ と $K^pt^{-p}$ が入れ替わる点である。この比較から次がわかる。
$(X,\mathcal F,\mu)$ を σ-有限、$1< p<\infty$ とする。$[\cdot]_p$ は $L^{p,\infty}$ 上のノルムであり、準ノルム $\|\cdot\|_{L^{p,\infty}}$ と同値である。
thm-df-marcinkiewicz-norm から、$[f]_p<\infty$ と $f\in L^{p,\infty}$ は同値で、2 つの量は互いに定数倍で抑え合う。$\int_A\lvert f+g\rvert\le\int_A\lvert f\rvert+\int_A\lvert g\rvert$ から $[f+g]_p\le[f]_p+[g]_p$、定義から $[cf]_p=\lvert c\rvert[f]_p$ である。$[f]_p=0$ なら左の不等式から $\|f\|_{L^{p,\infty}}=0$、すなわち $f=0$(ほとんどいたるところ)である。$\square$
$p=1$ では比較が成り立たない。$p=1$ では $\mu(A)^{-1/p'}=1$ と読むのが自然で、そのとき $[f]_1=\sup_A\int_A\lvert f\rvert\,d\mu$ は(σ-有限なら単調収束定理により)$\|f\|_1$ に等しい。$(0,1)$ 上の Lebesgue 測度で $f(x)=\frac1x$ とすると、$t\ge1$ で $\lambda_f(t)=\frac1t$、$t< 1$ で $\lambda_f(t)=1$ なので $\|f\|_{L^{1,\infty}}=1$ だが、$\|f\|_1=\infty$ である。よって $[f]_1\le C\|f\|_{L^{1,\infty}}$ となる有限の定数 $C$ はない。$L^{1,\infty}$ の準ノルムは三角不等式も満たさない(Marcinkiewiczの補間定理 の記事に、準三角不等式の定数 $2$ が最良になる例がある)。
$(\Omega,\mathcal F,P)$ を確率空間、$X$ を実数値の確率変数とし、累積分布関数を $F_Y(t):=P(Y\le t)$ と書く。分布関数は
$$
\lambda_X(t)=P(\lvert X\rvert>t)=1-F_{\lvert X\rvert}(t)
$$
であり、$X\ge0$ なら $\lambda_X=1-F_X$ である。prop-df-basic の 2 の右連続性は、累積分布関数の右連続性と同じことを言っている。たとえば $X$ が平均 $1$ の指数分布に従うなら $\lambda_X(t)=e^{-t}$ である。層ケーキ表示 を当てると、$X\ge0$ について $E[X]=\int_0^\infty\bigl(1-F_X(t)\bigr)\,dt$ となる。
確率論の分布関数は $X$ の符号まで含めて分布を決めるのに対し、この記事の $\lambda_f$ は $\lvert f\rvert$ の分布しか見ない。$\lvert f\rvert$ の分布だけで決まる量($L^p$ ノルム、弱 $L^p$ 準ノルム、上の形の $\varphi$ についての $\int\varphi(\lvert f\rvert)$)を扱うにはこれで足りる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| prop-df-basic の 4 の「ある $t_0$ で $\lambda_f(t_0)<\infty$」 | $\mathbb R$ 上で $f(x)=\lvert x\rvert$ | $\lambda_f(t)\to\mu(\{\lvert f\rvert=\infty\})$(左辺は $\infty$、右辺は $0$) |
| prop-df-convergence の $\mu(X)<\infty$ | $\mathbb R$ 上で $f_n=1_{[n,n+1]}\to0$ | $\limsup_n\lambda_{f_n}(t)\le\mu(\{\lvert f\rvert\ge t\})$($t=\frac12$) |
| prop-df-tail の $f\in L^p$($L^{p,\infty}$ に弱める) | $(0,1)$ 上で $x^{-1/p}$ | $t\to\infty$ で $t^p\lambda_f(t)\to0$ |
| thm-df-marcinkiewicz-norm の $p>1$ | $(0,1)$ 上で $\frac1x$($p=1$) | $[f]_1\le C\|f\|_{L^{1,\infty}}$ となる有限の定数 $C$ の存在 |
| thm-df-marcinkiewicz-norm の σ-有限性 | 1 点 $\{a\}$ で $\mu(\{a\})=\infty$、$f=1$ | $\|f\|_{L^{p,\infty}}\le[f]_p$(左辺は $\infty$、右辺は $0$) |
最後の行では、測度が $0$ でも $\infty$ でもない集合が存在しないので $[f]_p=0$ だが、$\lambda_f(\frac12)=\infty$ なので $\|f\|_{L^{p,\infty}}=\infty$ である。他の行はそれぞれ本文で確かめた。
Bre11 Problem 21(pp. 462–465)は有限測度空間で分布関数を定義し、その A で単調性と右連続性(A1)、概収束する列についての不等式(A2)を、B で層ケーキ表示とその帰結(B1–B3。$L^p$ の関数について $t^p\lambda_f(t)\to0$($t\to\infty$)を含む)を、C で Marcinkiewicz 空間とその弱 $L^p$ としての特徴づけ(C3・C4)を扱う。いずれも同書では問題として述べられている。同書の Problem 22(pp. 465–466)は、有限測度空間で、分布関数を使って $L^1$ と $L^\infty$ の上で有界な線形作用素を $L^p$ に補間する(これも問題として述べられている)。
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