捕捉面(trapped surface)とは、時空の余次元 2 の空間的な部分多様体であって、各点で 2 つの未来向き光的な法方向の膨張率 $\theta_\pm=-g(H,\ell_\pm)$($H$ は平均曲率ベクトル)がどちらも負になるもの、すなわち $H$ が過去向き時間的なもののことである。境界のないコンパクトな捕捉面を閉捕捉面といい、Penrose の特異点定理では、コンパクトでない Cauchy 超曲面と光的収束条件のもとで閉捕捉面があれば光的測地線が不完備になる。球対称な時空の球面は半径関数の勾配が未来向き時間的なとき捕捉面であり、Schwarzschild 時空の $r<2m$ の球面がその例である。一方、静的な積 $-dt^2+h$ の時空には閉捕捉面がない。
前提知識: 時空, 部分多様体, 法束, Warped積多様体
4 次元の時空の中の 2 次元の閉曲面から、光を外向きと内向きに同時に放ったとする。Minkowski 時空の球面なら、外向きの光の波面は面積を増やし、内向きの波面は面積を減らす。重力が十分強いところでは、どちらの向きの波面も面積を減らしながら進むことがある。このような面が捕捉面であり、光でさえ「外へ広がれない」ことを曲面の外的な曲がりだけで表す。Penrose はこの概念を導入し、閉じた捕捉面があれば(エネルギー条件などのもとで)時空が光的測地線について不完備になることを示した。捕捉面であることは平均曲率ベクトルが過去向き時間的であることと同値であり、静的な積の形の時空には閉じた捕捉面はない。
以下、時空 $(M,g)$(符号 $(-,+,\dots,+)$)・因果的類別・未来向き・$\le$ は 時空 の記事の定義を使い、$\nabla$ を $M$ の Levi-Civita 接続(リーマン接続)とする。$\dim M=n\ge3$ とし、$\Sigma\subset M$ を $n-2$ 次元の埋め込まれた部分多様体とする。
$\Sigma$ が空間的であるとは、各点 $p\in\Sigma$ で $g$ の $T_p\Sigma$ への制限が正定値であることをいう。このとき $N_p\Sigma:=(T_p\Sigma)^\perp$ を $p$ における法空間とする(法束)。
$\Sigma$ を余次元 2 の空間的な部分多様体とし、$p\in\Sigma$ とする。
1.$g$ は $T_p\Sigma$ の上で正定値なので非退化であり、線形代数により $T_pM=T_p\Sigma\oplus(T_p\Sigma)^\perp$ で $\dim N_p\Sigma=2$ である。$T_p\Sigma$ と $N_p\Sigma$ の正規直交基底を並べると $T_pM$ の正規直交基底になり、$g$ の負の対角成分はちょうど 1 個(Sylvester の慣性法則)で、それは $T_p\Sigma$ の側にはないので、$N_p\Sigma$ の符号は $(-,+)$ である。
2.$N_p\Sigma$ の正規直交基底 $e_0,e_1$($g(e_0,e_0)=-1$)を、$e_0$ が未来向きになるようにとる。$ae_0+be_1$ が光的であることは $a^2=b^2$ と同値なので、零でない光的ベクトルは $a(e_0\pm e_1)$($a\ne0$)であり、$g(a(e_0\pm e_1),e_0)=-a$ なので、時空 の命題「時間錐の性質」の 3 により、未来向きであることは $a>0$ と同値である。$\ell_\pm:=(e_0\pm e_1)/\sqrt2$ とおけば $g(\ell_+,\ell_-)=\frac12\bigl(g(e_0,e_0)-g(e_1,e_1)\bigr)=-1$ である。
3.$g(X,X)=2\alpha\beta\,g(\ell_+,\ell_-)=-2\alpha\beta$ なので、$X$ が時間的であることは $\alpha\beta>0$ と同値である。$\alpha,\beta>0$ なら $g(X,\ell_+)=-\beta< 0$ であり、同じ命題の 3 により未来向きの $\ell_+$ は $X$ を含む時間錐の閉包に属するので、$X$ は未来向きである。$\alpha,\beta< 0$ なら $-X$ が未来向きなので $X$ は過去向きである。$\square$
$\ell_\pm$ の選び方には、$(\ell_+,\ell_-)$ を $(\lambda\ell_+,\lambda^{-1}\ell_-)$($\lambda>0$)に替える自由と、名前の入れ替えの自由がある。
$X,Y$ を $\Sigma$ に接するベクトル場とし、
$$
\mathrm{II}(X,Y):=(\nabla_XY)^\perp
$$
($N\Sigma$ への直交射影)を $\Sigma$ の第2基本形式という。$p\in\Sigma$ で $T_p\Sigma$ の正規直交基底 $e_1,\dots,e_{n-2}$ をとり、
$$
H_p:=\sum_{i=1}^{n-2}\mathrm{II}(e_i,e_i)\in N_p\Sigma
$$
を $\Sigma$ の平均曲率ベクトル(mean curvature vector)という。$p$ における未来向き光的な法ベクトル $\ell$ に対し、
$$
\theta_\ell:=-g(H_p,\ell)
$$
を $\ell$ 方向の光的膨張率(null expansion)という。
$\mathrm{II}$ は対称で、値は各点の $X_p,Y_p$ だけで決まる(lem-trapped-surface-second-fundamental-form)ので、$H_p$ は基底の選び方によらない。$\theta_{\lambda\ell}=\lambda\theta_\ell$($\lambda>0$)なので、$\theta_\ell$ の符号は光的な法方向だけで決まる。$L$ を $\ell$ を延長する法ベクトル場とすると、$\Sigma$ に接する $Y$ について $g(L,Y)=0$ を微分して $g(\nabla_{e_i}L,e_i)=-g(\ell,\mathrm{II}(e_i,e_i))$ なので
$$
\theta_\ell=\sum_{i=1}^{n-2}g(\nabla_{e_i}L,e_i)
$$
であり、$\theta_\ell$ は $\Sigma$ に沿う $L$ の発散、すなわち $\Sigma$ を $L$ 方向へ動かしたときの面積要素の変化率を表す(SG15 p. 12)。
$\Sigma$ を余次元 2 の空間的な部分多様体とする。各点 $p\in\Sigma$ で、2 つの未来向き光的な法方向の両方について $\theta_{\ell_+}< 0$ かつ $\theta_{\ell_-}< 0$ が成り立つとき、$\Sigma$ を未来捕捉面(future-trapped surface)という。両方で $\theta_{\ell_\pm}>0$ のとき過去捕捉面という。単に捕捉面(trapped surface)といえば未来捕捉面を指す。$\Sigma$ が境界のないコンパクトな多様体である未来捕捉面を閉捕捉面(closed trapped surface)という。
定義は SG15 pp. 12–13 の式 (8) と Sen11 p. 4 による。一方が $0$ で他方が $0$ 以下のときを周縁捕捉面(marginally trapped surface)といい(Sen11 Table 1、p. 5)、$\theta_{\ell_+}=0$ となる面の族はブラックホールの準局所的な境界の研究に使われる。
余次元 2 の空間的な部分多様体 $\Sigma$ の点 $p$ で $\theta_{\ell_+}< 0$ かつ $\theta_{\ell_-}< 0$ であることは、$H_p$ が過去向き時間的であることと同値である。同様に $\theta_{\ell_\pm}>0$ は、$H_p$ が未来向き時間的であることと同値である。
$H_p\in N_p\Sigma$ なので、lem-trapped-surface-null-normals の $\ell_\pm$ で $H_p=\alpha\ell_++\beta\ell_-$ と書ける。$g(\ell_\pm,\ell_\pm)=0$、$g(\ell_+,\ell_-)=-1$ より $\theta_{\ell_+}=-g(H_p,\ell_+)=\beta$、$\theta_{\ell_-}=\alpha$ である。よって $\theta_{\ell_\pm}< 0$ は $\alpha,\beta< 0$、すなわち(同補題の 3)$H_p$ が過去向き時間的であることと同値である。後半も同様である。$\square$
$(B,g_B)$ を時間的に向き付けられた連結な 2 次元 Lorentz 多様体、$(F,g_F)$ を連結な $n-2$ 次元 Riemann 多様体、$r\colon B\to(0,\infty)$ を滑らかな関数とし、Warped積多様体 $M=B\times_rF$ を $B$ の時間的向き付けを持ち上げた時空とする。$p\in B$ について $\Sigma_p:=\{p\}\times F$ とおくと、$\Sigma_p$ は空間的な余次元 2 の部分多様体で、
$$
H=-\frac{n-2}{r}\,\mathrm{grad}\,r,\qquad\theta_\ell=\frac{n-2}{r}\,g_B(\mathrm{grad}\,r,\ell)=\frac{n-2}{r}\,dr(\ell)
$$
である($\mathrm{grad}\,r$ は $B$ での勾配の水平持ち上げ、$\ell\in T_pB$ は未来向き光的)。したがって $\Sigma_p$ が未来捕捉面であることは $\mathrm{grad}\,r(p)$ が未来向き時間的であることと同値であり、過去捕捉面であることは過去向き時間的であることと同値である。$F$ がコンパクトなら、前者のとき $\Sigma_p$ は閉捕捉面である。
$g=g_B+r^2g_F$ は Lorentz 計量で(Warped積多様体 の補題「持ち上げの基本性質」)、$B$ の時間的なベクトル場の水平持ち上げは時間的なので、$M$ は時空である。$\Sigma_p$ の誘導計量は $r(p)^2g_F$ で正定値であり、法空間は水平部分空間 $T_pB$ である。Warped積多様体 の命題「葉とファイバーの幾何」の 2 により、ファイバーの第2基本形式は $\mathrm{II}(\tilde V,\tilde W)=-\frac{g(\tilde V,\tilde W)}{r}\mathrm{grad}\,r$ である。正規直交基底についてトレースをとると $H=-\frac{n-2}{r}\mathrm{grad}\,r$ であり、$\theta_\ell=-g(H,\ell)=\frac{n-2}{r}g(\mathrm{grad}\,r,\ell)$ である。$H$ は $\mathrm{grad}\,r$ の負の倍数なので、prop-trapped-surface-mean-curvature により主張が従う。$\square$
$\theta_\ell$ は「$\ell$ 方向に進むと球面の半径 $r$ が増えるか減るか」の符号そのものである。
Minkowski 時空 $\mathbb R^{1+(n-1)}$ から軸 $\{x=0\}$ を除いた部分は、Warped積多様体 の例「極座標によるEuclid空間」により $B\times_\rho S^{n-2}$、$B=\{(t,\rho)\mid\rho>0\}$、$g_B=-dt^2+d\rho^2$ と書ける。$\mathrm{grad}\,\rho=\partial_\rho$ は空間的なので、球面 $\{t=t_0,\ \lvert x\rvert=\rho_0\}$ は捕捉面でない。実際 $\ell_\pm=(\partial_t\pm\partial_\rho)/\sqrt2$ について $\theta_{\ell_\pm}=\pm(n-2)/(\sqrt2\rho_0)$ であり、外向きの膨張率は正、内向きは負である。
$m>0$ とし、$B:=\mathbb R\times(0,2m)$(座標 $(t,r)$)に $g_B=-h\,dt^2+h^{-1}dr^2$、$h(r):=1-\frac{2m}{r}$ を与える。$0< r< 2m$ では $h< 0$ なので、$\partial_t$ は空間的、$\partial_r$ は時間的で、$g_B$ は Lorentz 計量である。$-\partial_r$ を未来向きとし(未来へ進むと $r$ が減る)、$M:=B\times_rS^2$ とおく。これは Schwarzschild 計量の $r< 2m$ の部分で、Warped積多様体 の例「Schwarzschild時空」と同じ計算($h$ の式だけを使う)により $\mathrm{Ric}=0$ である。
$\mathrm{grad}\,r=h\,\partial_r$ であり($g_B(h\partial_r,X)=dr(X)$)、$g_B(\mathrm{grad}\,r,\mathrm{grad}\,r)=h< 0$、$g_B(\mathrm{grad}\,r,-\partial_r)=-1< 0$ なので、$\mathrm{grad}\,r$ は未来向き時間的である。よって prop-trapped-surface-warped により、$r< 2m$ の各球面 $\{(t,r)\}\times S^2$ は閉捕捉面であり、$\theta_\ell=\frac2r\,\ell(r)< 0$ である。一方、外部 $r>2m$(時空 の例「Schwarzschild時空」)では $h>0$ で $\mathrm{grad}\,r$ は空間的なので、球面は捕捉面でない。
$I$ を開区間、$a\colon I\to(0,\infty)$ を滑らかな関数とし、$M=I\times S^3$、$g=-dt^2+a(t)^2\bigl(d\chi^2+\sin^2\chi\,g_{S^2}\bigr)$($S^3$ の極座標、$0< \chi< \pi$)とする。極を除いた部分は $B\times_rS^2$、$B=I\times(0,\pi)$、$g_B=-dt^2+a^2d\chi^2$、$r=a(t)\sin\chi$ と書ける。$dr=\dot a\sin\chi\,dt+a\cos\chi\,d\chi$ より
$$
\mathrm{grad}\,r=-\dot a\sin\chi\,\partial_t+\frac{\cos\chi}{a}\,\partial_\chi,\qquad g(\mathrm{grad}\,r,\mathrm{grad}\,r)=\cos^2\chi-\dot a^2\sin^2\chi,\qquad g(\mathrm{grad}\,r,\partial_t)=\dot a\sin\chi
$$
である。よって球面 $\{t\}\times\{\chi\}\times S^2$ は、$\dot a(t)< 0$ かつ $\cos^2\chi< \dot a(t)^2\sin^2\chi$ のとき閉捕捉面であり、$\dot a(t)>0$ で同じ不等式が成り立つとき過去捕捉面である。収縮する宇宙($\dot a< 0$)では、$\chi=\pi/2$ に近い、半径 $r=a\sin\chi$ の大きい球面が閉捕捉面になる(Sen11 p. 11 の Fig. 2 の記述と合う)。
要点:$\nabla$ の捩れがないことと、接ベクトル場の括弧積が接ベクトル場であることによる。
1.$X,Y$ を $\Sigma$ に接するベクトル場($M$ のベクトル場に延長しておく)とすると、$\nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y]$ であり、$[X,Y]$ は $\Sigma$ の上で $\Sigma$ に接するので、法成分をとって $\mathrm{II}(X,Y)-\mathrm{II}(Y,X)=0$ である。$\nabla_XY$ の $p$ での値は $X_p$ だけで決まるので $\mathrm{II}(X,Y)_p$ も $X_p$ だけで決まり、対称性により $Y_p$ だけでも決まる。延長の取り方によらないことも同じ理由による。
2.$c'(s_0)\ne0$ なので、逆関数定理により $c(s_0)$ の近くに $\Sigma$ の局所座標 $(y^1,\dots,y^{n-2})$ で $c(s)=(s-s_0,0,\dots,0)$ となるものがとれる。$Y:=\partial/\partial y^1$ とおくと $c'=Y\circ c$ なので、$s_0$ の近くで $\nabla_{c'}c'=(\nabla_YY)\circ c$ であり、法成分をとって $(\nabla_{c'}c')^\perp=\mathrm{II}(Y,Y)\circ c$ である。$\square$
$(S,h)$ を連結な $n-1$ 次元 Riemann 多様体($n\ge3$)とし、$M=\mathbb R\times S$、$g=-dt^2+h$ を $\partial_t$ を未来向きとする時空とする。このとき、$M$ の境界のないコンパクトな余次元 2 の空間的な部分多様体は、未来捕捉面でも過去捕捉面でもない。特に Minkowski 時空には閉捕捉面がない。
$(M,g)$ は底 $(\mathbb R,-dt^2)$、warping 関数 $f\equiv1$ の Warped積多様体 である。その命題「リーマン接続の公式」の 1・2 で $f\equiv1$ とおくと、$\nabla_{\partial_t}\partial_t=0$ かつ $S$ に接する $V$ について $\nabla_V\partial_t=0$ なので、$\partial_t$ は平行なベクトル場である。$g(-\partial_t,X)=dt(X)$ なので $\mathrm{grad}\,t=-\partial_t$ であり、これも平行である。
$\Sigma$ をコンパクトな未来捕捉面と仮定する。関数 $t|_\Sigma$ は最小値をある点 $p\in\Sigma$ でとる。零でない $X\in T_p\Sigma$ と、$c(0)=p$、$c'(0)=X$ となる $\Sigma$ の中の曲線 $c$ をとると、$t\circ c$ は $s=0$ で最小なので $(t\circ c)'(0)=dt(X)=0$ かつ $(t\circ c)''(0)\ge0$ である。前者が任意の $X$ で成り立つので $\mathrm{grad}\,t(p)\in N_p\Sigma$ である。後者は、$\mathrm{grad}\,t$ が平行であることと lem-trapped-surface-second-fundamental-form の 2 により
$$
(t\circ c)''(0)=\frac{d}{ds}\Big|_{s=0}g(\mathrm{grad}\,t,c')=g(\mathrm{grad}\,t,\nabla_{c'}c')\big|_{s=0}=g\bigl(\mathrm{grad}\,t(p),\mathrm{II}(X,X)\bigr)
$$
と書ける(最後の等号は $\mathrm{grad}\,t(p)$ が法ベクトルであることによる)。$X$ を $T_p\Sigma$ の正規直交基底 $e_1,\dots,e_{n-2}$ にわたらせて足すと
$$
0\le g(\mathrm{grad}\,t(p),H_p)=-g(\partial_t,H_p)
$$
を得る。一方、prop-trapped-surface-mean-curvature により $H_p$ は過去向き時間的で、$\partial_t$ は未来向き時間的なので、時空 の命題「時間錐の性質」の 2 により $g(\partial_t,H_p)>0$ であり、矛盾する。過去捕捉面の場合は、$t|_\Sigma$ の最大点で同じ議論をすると不等号が逆向きになり、$H_p$ が未来向き時間的であることに矛盾する。Minkowski 時空は $S=\mathbb R^{n-1}$ の場合である。$\square$
より一般に、大域的に定常な時空には閉捕捉面がないことが知られている(Sen11 p. 12、SG15 p. 14。この記事では証明しない)。Schwarzschild 時空の外部(ex-trapped-surface-schwarzschild-interior の最後)はその例である。
コンパクト性は外せない。Minkowski 時空にも、コンパクトでない未来捕捉面がある。
4 次元 Minkowski 時空(座標 $(t,x,y,z)$)で、定数 $t_0,x_0$ について
$$
\Sigma:=\{(t,x,y,z)\mid x=x_0,\ t=t_0-\log\cosh z\}
$$
とおく(Sen11 p. 11)。$\Sigma$ は空間的な余次元 2 の部分多様体で、その平均曲率ベクトルは
$$
H=-\cosh^2z\,\partial_t+\cosh z\sinh z\,\partial_z
$$
である。$g(H,H)=-\cosh^2z< 0$ で $t$ 成分が負なので $H$ は過去向き時間的であり、$\Sigma$ は未来捕捉面である。$\Sigma$ はコンパクトでなく、$z\to\pm\infty$ で $t\to-\infty$ と「下へ曲がる」。
要点:$\Sigma$ は $(t,z)$ 平面の曲線と $y$ 方向の直線の積で、平均曲率ベクトルは曲線の曲率ベクトルである。
$\Sigma$ を $(y,z)\mapsto(t_0-\log\cosh z,\ x_0,\ y,\ z)$ で径数付けると、接ベクトルは $\partial_y$ と $-\tanh z\,\partial_t+\partial_z$ で、後者の長さの 2 乗は $1-\tanh^2z=\cosh^{-2}z>0$ であり、両者は直交するので $\Sigma$ は空間的である。正規直交基底は $e_y:=\partial_y$ と $e_z:=-\sinh z\,\partial_t+\cosh z\,\partial_z$ である。平坦な時空では共変微分は成分ごとの微分であり、$e_z$ 方向の弧長 $\sigma$ は $d\sigma=\cosh^{-1}z\,dz$ を満たすので
$$ \nabla_{e_z}e_z=\cosh z\,\frac{d}{dz}\bigl(-\sinh z\,\partial_t+\cosh z\,\partial_z\bigr)=-\cosh^2z\,\partial_t+\cosh z\sinh z\,\partial_z $$
である。これは $e_z$($g$ との内積 $-\cosh^2z\sinh z+\cosh^2z\sinh z=0$)、$e_y$、$\partial_x$ のどれとも直交するので法ベクトルであり、$\mathrm{II}(e_z,e_z)$ に等しい。$\nabla_{e_y}e_y=0$ なので $\mathrm{II}(e_y,e_y)=0$ であり、和をとって $H$ の式を得る。$g(H,H)=-\cosh^4z+\cosh^2z\sinh^2z=-\cosh^2z$ である。$\square$
4 次元の時空 $(M,g)$ が次を満たすとする。
SG15 Theorem 2(p. 10)。この記事では証明しない。証明の筋は次のとおりである(SG15 pp. 10–11)。光的測地線がすべて完備だと仮定すると、閉捕捉面 $\Sigma$ から直交して出る光的測地線は、膨張率が負で始まり 2 の条件のもとで Raychaudhuri 方程式により有限のアフィン径数で焦点を結ぶ。そのため $J^+(\Sigma)$ の境界はコンパクトな境界のない位相的超曲面になるが、それをコンパクトでない Cauchy 超曲面へ射影すると矛盾が生じる。閉捕捉面は Hawking–Penrose の特異点定理(Generic条件(Lorentz幾何) の定理「Hawking–Penroseの特異点定理」)の 4 の仮定の 1 つとしても現れる。高い次元や高い余次元の捕捉部分多様体への一般化もある(Sen11 p. 4 の脚注 a)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\Sigma$ がコンパクト | ex-trapped-surface-noncompact | 未来捕捉面がない(thm-trapped-surface-static) |
| 計量が静的な積 $-dt^2+h$ | ex-trapped-surface-schwarzschild-interior | 閉捕捉面がない(thm-trapped-surface-static) |
| 2 つの光的法方向の両方で $\theta< 0$ | Minkowski 時空の球面(ex-trapped-surface-minkowski-sphere) | コンパクトな面で、ある光的法方向の膨張率が至る所負になるものはない |
3 行目:Minkowski 時空の球面は内向きの膨張率だけが負である。thm-trapped-surface-static の証明は、最小点で平均曲率ベクトル全体の向きを使っており、片方の光的方向の符号だけでは矛盾が出ない。
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