Mindingの定理

同義語:ミンディングの定理Minding's theorem

概要

Mindingの定理(Minding's theorem)とは、滑らかな 2 次元 Riemann 多様体 2 つの Gauss 曲率がどちらも同じ定数 $c$ に恒等的に等しいなら、それらは局所的に等長であり、各点の近くの等長写像を、指定した点の対応と接空間の内積を保つ同型に合わせてとれるという定理である。Gauss の驚異の定理の逆は一般には成り立たないが、曲率が一定なら成り立つ。測地極座標で計量を $dr^2+f^2d\theta^2$ と書くと、$f$ が $f_{rr}+cf=0$ と原点での条件からただ 1 通りに決まることが証明の要である。帰結として、Gauss 曲率が一定の曲面は平面・球面・双曲平面のいずれかと局所的に等長である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Gaussの驚異の定理, 正規座標, 断面曲率

Gaussの驚異の定理 によれば、曲面の点の対応が長さを保つなら、対応する点の Gauss 曲率は等しい。逆に Gauss 曲率が等しいだけでは、長さを保つ対応があるとは限らない。ところが Gauss 曲率が 一定 で、しかも 2 つの曲面で同じ値なら、逆が成り立つ。これが Minding の定理 である。たとえば Gauss 曲率がいつも $0$ の曲面(円柱、円錐など)はどの点の近くでも平面と長さを保って対応し、Gauss 曲率がいつも $1$ の曲面は単位球面と対応する。Gauss 曲率が一定で同じ値の 2 つの曲面が互いに展開できる(長さを保って曲げ移せる)ことは、F. Minding が 1839 年の論文で、測地極座標での計量の形から示した(Min39 pp. 374–375)。
この記事では、$\mathbb R^3$ の中にあるとは限らない 2 次元 Riemann 多様体について定理を述べ、測地極座標を使って証明する(thm-mind-main)。証明の要は、Gauss 曲率が一定なら、測地極座標での計量が 2 階の線形常微分方程式の解としてただ 1 通りに決まることである。

設定

以下 $(M,g)$、$(N,h)$ を滑らかな 2 次元 リーマン多様体 とする。2 次元では接平面はただ 1 つなので、断面曲率 は $M$ 上の関数 $K$ になる。これを $(M,g)$ の Gauss 曲率 という。$M$ が $\mathbb R^3$ の曲面で $g$ が第 1 基本形式のとき、この $K$ は主曲率の積としての Gauss 曲率に等しい(Gauss–Codazzi方程式 の定理「断面曲率と Gauss 曲率の一致」)。

等長写像と局所等長

開集合 $U\subset M$、$V\subset N$ の間の微分同相写像 $\varphi\colon U\to V$ が $\varphi^*h=g$(各点 $x$ と $X,Y\in T_xM$ について $h(d\varphi_x X,d\varphi_x Y)=g(X,Y)$)を満たすとき、$\varphi$ を 等長写像 という。各点 $p\in M$ と $q\in N$ について、$p$ の近傍から $q$ の近傍への等長写像で $p$ を $q$ に写すものがあるとき、$(M,g)$ と $(N,h)$ は 局所的に等長 であるという。

等長写像は曲線の長さを保ち、その逆写像も等長写像である。また等長写像は Gauss 曲率を保つ:$K_h\circ\varphi=K_g$。実際、$U$ の座標 $(x^i)$ に対し $V$ の座標 $x^i\circ\varphi^{-1}$ をとると 2 つの計量の成分が一致し、断面曲率は成分から Christoffel 記号を通して計算されるので一致する。$\mathbb R^3$ の曲面については、これが Gaussの驚異の定理 の内容である。
定数 $c$ について、関数 $\mathrm{sn}_c$ を
$$ \mathrm{sn}_c(r)=\begin{cases}\dfrac{\sin(\sqrt c\,r)}{\sqrt c}&(c>0)\\[1ex] r&(c=0)\\[1ex] \dfrac{\sinh(\sqrt{-c}\,r)}{\sqrt{-c}}&(c< 0)\end{cases} $$
で定める。$\mathrm{sn}_c$ は $y''+cy=0$、$y(0)=0$、$y'(0)=1$ を満たすただ 1 つの解である。もう 1 つの解 $\mathrm{cs}_c$($\cos(\sqrt c\,r)$、$1$、$\cosh(\sqrt{-c}\,r)$)は $y(0)=1$、$y'(0)=0$ を満たし、$y''+cy=0$ の解はすべて $a\,\mathrm{cs}_c+b\,\mathrm{sn}_c$($a,b$ は定数)の形である(線形常微分方程式)。

測地極座標

測地極座標での計量

$p\in M$ とし、$\psi\colon U\to\mathbb R^2$ を $p$ を中心とする正規座標で、像が円板 $\{|w|< \varepsilon\}$ を含むものとする(正規座標 の定義「正規近傍と正規座標」)。$\Phi(r,\theta)=\psi^{-1}(r\cos\theta,\ r\sin\theta)$($0< r< \varepsilon$、$\theta\in\mathbb R$)とおくと、次が成り立つ。

  1. $\Phi^*g=dr^2+f(r,\theta)^2\,d\theta^2$。ここで $f=r\,h$ で、$h$ は $(-\varepsilon,\varepsilon)\times\mathbb R$ の上の正の滑らかな関数、$h(0,\theta)=1$ である。
  2. $0< r< \varepsilon$ で、点 $\Phi(r,\theta)$ での Gauss 曲率は $-\dfrac{f_{rr}(r,\theta)}{f(r,\theta)}$ に等しい。

1.$\Phi^*g$ の係数は $g$ を正規座標の極座標で書いたもので、Gaussの驚異の定理 の補題「測地極座標」の証明は計量の成分 $g_{ij}$ と 正規座標 の定理「Gauss の補題」だけを使うので、そのまま当てはまる。
2.要点:計量 $dr^2+f^2d\theta^2$ の Christoffel 記号を計算し、曲率テンソルの成分を求める。

計算を開く

座標 $(r,\theta)$ で $g_{rr}=1$、$g_{r\theta}=0$、$g_{\theta\theta}=f^2$ である。Christoffel 記号の公式 $\Gamma^k_{ij}=\frac12g^{kl}(\partial_ig_{jl}+\partial_jg_{il}-\partial_lg_{ij})$(リーマン接続)から、$0$ でないものは $\Gamma^r_{\theta\theta}=-ff_r$、$\Gamma^\theta_{r\theta}=\Gamma^\theta_{\theta r}=f_r/f$、$\Gamma^\theta_{\theta\theta}=f_\theta/f$ である。よって $\nabla_{\partial_r}\partial_r=0$、$\nabla_{\partial_\theta}\partial_r=\nabla_{\partial_r}\partial_\theta=(f_r/f)\,\partial_\theta$ で、

$$\nabla_{\partial_r}\nabla_{\partial_\theta}\partial_r=\Bigl(\frac{f_r}{f}\Bigr)_r\partial_\theta+\Bigl(\frac{f_r}{f}\Bigr)^2\partial_\theta=\frac{f_{rr}}{f}\,\partial_\theta$$

である。曲率テンソル $R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z$(断面曲率 と同じ流儀)について、$[\partial_\theta,\partial_r]=0$ なので $R(\partial_\theta,\partial_r)\partial_r=\nabla_{\partial_\theta}0-\nabla_{\partial_r}\nabla_{\partial_\theta}\partial_r=-\frac{f_{rr}}{f}\partial_\theta$ である。断面曲率は

$$K=\frac{g\bigl(R(\partial_\theta,\partial_r)\partial_r,\partial_\theta\bigr)}{g_{\theta\theta}g_{rr}-g_{r\theta}^2}=\frac{-f_{rr}f}{f^2}=-\frac{f_{rr}}{f}$$

である。$\square$

$\mathbb R^3$ の曲面では、2 は Gaussの驚異の定理 の系「測地座標と等角座標」の 1 と同じ式である。

主定理

Minding の定理

$(M,g)$ と $(N,h)$ を滑らかな 2 次元 Riemann 多様体とし、Gauss 曲率がどちらも同じ定数 $c$ に恒等的に等しいとする。$p\in M$、$q\in N$ と、内積を保つ線形同型 $I\colon T_pM\to T_qN$ を任意にとる。このとき $p$ の近傍 $U$、$q$ の近傍 $V$ と等長写像 $\varphi\colon U\to V$ で、$\varphi(p)=q$、$d\varphi_p=I$ を満たすものがある。とくに $(M,g)$ と $(N,h)$ は局所的に等長である。

証明の考え方:$p$ と $q$ のまわりに、$I$ で対応する基底から正規座標をとり、座標が同じ点どうしを対応させる。lem-mind-polar により、どちらの計量も極座標で $dr^2+f^2d\theta^2$ の形で、Gauss 曲率が $c$ なので $f$ は $f_{rr}+cf=0$ を満たす。$r\to0$ での $f$ の振る舞いから、$f$ はどちらも $\mathrm{sn}_c(r)$ になる。

段 1(座標をとる). $T_pM$ の正規直交基底 $b_1,b_2$ をとると、$Ib_1,Ib_2$ は $T_qN$ の正規直交基底である。正規座標 の定義「正規近傍と正規座標」により、$\varepsilon>0$ を小さくとって、基底 $(b_i)$ による $p$ を中心とする正規座標 $\psi_M\colon U\to\{|w|< \varepsilon\}$ と、基底 $(Ib_i)$ による $q$ を中心とする正規座標 $\psi_N\colon V\to\{|w|< \varepsilon\}$ を、どちらも円板への微分同相としてとれる。$\varphi=\psi_N^{-1}\circ\psi_M\colon U\to V$ とおくと、$\varphi$ は微分同相で $\varphi(p)=q$ である。
段 2($f$ を決める). lem-mind-polar を $(M,g)$ と $(N,h)$ に当て、それぞれの $f$ を $f_M$、$f_N$ とする。$\theta$ を固定すると、Gauss 曲率が $c$ なので、lem-mind-polar の 2 から $0< r< \varepsilon$ で $\partial_r^2f_M+c\,f_M=0$ であり、$f_M(r,\theta)=a\,\mathrm{cs}_c(r)+b\,\mathrm{sn}_c(r)$($a,b$ は $\theta$ による定数)と書ける。一方 $f_M=rh$ と $h(0,\theta)=1$ から、$r\to+0$ のとき $f_M\to0$、$\partial_rf_M=h+r\,\partial_rh\to1$ である。$\mathrm{cs}_c(0)=1$、$\mathrm{sn}_c(0)=0$ から $a=0$、$\mathrm{cs}_c'(0)=0$、$\mathrm{sn}_c'(0)=1$ から $b=1$ となり、$f_M(r,\theta)=\mathrm{sn}_c(r)$ である。$f_N$ も同じである。
段 3(計量の比較). 正規座標 $w=(w^1,w^2)$ で $g$ と $h$ をそれぞれ $g_{ij}(w)\,dw^idw^j$、$\tilde h_{ij}(w)\,dw^idw^j$ と書く($\tilde h$ は $\psi_N$ による $h$ の成分)。段 2 と lem-mind-polar の 1 から、$0< |w|< \varepsilon$ では、極座標 $(r,\theta)\mapsto(r\cos\theta,r\sin\theta)$ で引き戻した 2 つの計量はどちらも $dr^2+\mathrm{sn}_c(r)^2d\theta^2$ である。この写像は $0< r< \varepsilon$ で局所微分同相なので、$0< |w|< \varepsilon$ で $g_{ij}(w)=\tilde h_{ij}(w)$ である。$w=0$ ではどちらも $\delta_{ij}$ である(正規座標 の命題「正規座標の性質」)。したがって $\varphi^*h=g$ で、$\varphi$ は等長写像である。
段 4(微分). 正規座標 の命題「正規座標の性質」により、$p$ での座標ベクトルは $b_i$、$q$ での座標ベクトルは $Ib_i$ である。$\varphi$ は座標が同じ点を対応させるので $d\varphi_p(b_i)=Ib_i$、すなわち $d\varphi_p=I$ である。$\square$

段 2 で Gauss 曲率が定数であることを使った。曲率が一定でないと、$f$ の満たす方程式 $f_{rr}=-k\,f$ の係数 $k$ が点ごとに変わり、2 つの曲面の $f$ が一致するとは限らない(ex-mind-counterexamples)。

帰結と例

Gauss 曲率が一定の 2 次元 Riemann 多様体の代表は、平面 $\mathbb R^2$($K=0$)、半径 $a$ の球面 $S^2(a)$($K=1/a^2$)、双曲平面 $H^2(a)$($K=-1/a^2$)である(断面曲率 の例「回転面型の計量」、双曲空間)。

定曲率の曲面の局所的な形

滑らかな 2 次元 Riemann 多様体 $(M,g)$ の Gauss 曲率が定数 $c$ に恒等的に等しいなら、$(M,g)$ は、$c=0$ なら平面 $\mathbb R^2$ と、$c>0$ なら球面 $S^2(1/\sqrt c)$ と、$c< 0$ なら双曲平面 $H^2(1/\sqrt{-c})$ と局所的に等長である。

上の 3 つはそれぞれ Gauss 曲率が $0$、$c$、$c$ の定数なので、thm-mind-main を当てればよい。$\square$

定曲率の曲面の例
  1. $K=0$:半径 $1$ の円柱 $(\cos v,\sin v,u)$ は第 1 基本形式が $du^2+dv^2$ なので、$(u,v)\mapsto(\cos v,\sin v,u)$ を $v$ の幅が $2\pi$ より短い範囲に制限すれば、平面の開集合から円柱の開集合への等長写像である(紙を丸めることにあたる)。
  2. $K=1$:Gaussの驚異の定理 の例「回転面」の (2) の紡錘の形の回転面は、単位球面の一部ではないが、thm-mind-main により単位球面と局所的に等長である。
  3. $K=-1$:擬球 $\bigl(e^u\cos v,\ e^u\sin v,\ g(u)\bigr)$($u< 0$、$g'=\sqrt{1-e^{2u}}$)の第 1 基本形式は $du^2+e^{2u}dv^2$ である。$w=e^{-u}$($w>1$)とおくと $du=-dw/w$ なので
    $$ du^2+e^{2u}dv^2=\frac{dv^2+dw^2}{w^2} $$
    となり、$(u,v)\mapsto(v,e^{-u})$ は、$v$ の幅が $2\pi$ より短い範囲で、擬球の開集合から上半平面 $\{(v,w)\mid w>0\}$ に計量 $(dv^2+dw^2)/w^2$ を入れた双曲平面の開集合 $\{w>1\}$ への等長写像を与える(双曲幾何学 の例「擬球は双曲平面の一部と同じ長さをもつ」と同じ計算)。
  4. $K=0$:$0< \alpha< \pi/2$ として、頂点を除いた円錐 $\bigl(s\sin\alpha\cos v,\ s\sin\alpha\sin v,\ s\cos\alpha\bigr)$($s>0$)の第 1 基本形式は $ds^2+s^2\sin^2\alpha\,dv^2$ である。平面の極座標 $(s,\phi)$ の計量 $ds^2+s^2d\phi^2$ と $\phi=v\sin\alpha$ で一致するので、$(s,v)\mapsto\bigl(s\cos(v\sin\alpha),\ s\sin(v\sin\alpha)\bigr)$ は $v$ の幅が $2\pi$ より短い範囲で円錐の開集合から平面への等長写像である。円錐を母線に沿って切り開くと、中心角 $2\pi\sin\alpha$ の扇形になることにあたる。

等長写像の一意性と測地円

thm-mind-main の等長写像は、点の対応と微分を決めれば測地球の上でただ 1 つである。

等長写像は点と微分で決まる

thm-mind-main の記号で、$U=\psi_M^{-1}(\{|w|< \varepsilon\})$ を $p$ を中心とする半径 $\varepsilon$ の測地球とする。等長写像 $\varphi'\colon U\to N$(像の上への等長写像)が $\varphi'(p)=q$、$d\varphi'_p=I$ を満たすなら、$U$ の上で $\varphi'(\exp_p v)=\exp_q(Iv)$($|v|< \varepsilon$)であり、$\varphi'$ は thm-mind-main の証明の $\varphi$ に等しい。

$|v|< \varepsilon$ とし、測地線 $\gamma(t)=\exp_p(tv)$($0\le t\le1$)を考える。等長写像は測地線を測地線に写す(Riemann幾何学 の命題「等長写像は測地線を測地線に写す」)ので、$\varphi'\circ\gamma$ は $q$ から初速度 $d\varphi'_p(v)=Iv$ で出る測地線であり、測地線の一意性から $\varphi'(\gamma(t))=\exp_q(tIv)$ である。$t=1$ とおけばよい。正規座標 $\psi_M(\exp_p(x^ib_i))=x$、$\psi_N(\exp_q(x^iIb_i))=x$ から、$\exp_q(Iv)=\psi_N^{-1}(\psi_M(\exp_pv))=\varphi(\exp_pv)$ である。$\square$

$q$ を $N$ の中で動かし、$I$ を $T_pM$ から $T_qN$ への内積を保つ同型(2 次の直交行列の分の自由度)の中で動かすと、局所的な等長写像が「点の 2 次元分と向きの 1 次元分」だけある。定曲率の曲面は、どの点のまわりも同じに見え、どの向きも同じに見える。

定曲率の曲面の測地円

$(M,g)$ の Gauss 曲率が定数 $c$ に恒等的に等しいとし、$p\in M$ を中心とする半径 $\varepsilon$ の測地球をとる。$0< \rho< \varepsilon$ について、半径 $\rho$ の測地円の長さ $\ell(\rho)$ と測地円板の面積 $A(\rho)$ は
$$ \ell(\rho)=2\pi\,\mathrm{sn}_c(\rho),\qquad A(\rho)=2\pi\int_0^\rho\mathrm{sn}_c(r)\,dr $$
である。たとえば $c=1$ なら $\ell(\rho)=2\pi\sin\rho$、$A(\rho)=2\pi(1-\cos\rho)$、$c=-1$ なら $\ell(\rho)=2\pi\sinh\rho$、$A(\rho)=2\pi(\cosh\rho-1)$ である。

thm-mind-main の証明の段 2 により、測地極座標で $f(r,\theta)=\mathrm{sn}_c(r)$ である。測地円 $\theta\mapsto\Phi(\rho,\theta)$($0\le\theta\le2\pi$)の速さは $f(\rho,\theta)$ なので $\ell(\rho)=\int_0^{2\pi}\mathrm{sn}_c(\rho)\,d\theta$ である。面積は極座標で $\int_0^\rho\int_0^{2\pi}f\,d\theta\,dr$ である(Gaussの驚異の定理 の命題「測地円の周の長さと Gauss 曲率」の証明と同じ)。$\square$

$\mathrm{sn}_c(\rho)=\rho-\frac c6\rho^3+O(\rho^5)$ なので $\ell(\rho)=2\pi\rho-\frac\pi3c\rho^3+O(\rho^5)$ であり、Gaussの驚異の定理 の命題「測地円の周の長さと Gauss 曲率」の展開と一致する。曲率が正なら円周は $2\pi\rho$ より短く、負なら長い。

例と反例

thm-mind-main は「2 次元で、Gauss 曲率が同じ定数 $\Rightarrow$ 局所的に等長」という主張である。仮定を 1 つずつ外すと成り立たない。

外す条件反例成り立たなくなること
Gauss 曲率が定数(対応する点で値が等しいだけにする)螺旋面 $(u\cos v,\ u\sin v,\ v)$ と回転面 $(u\cos v,\ u\sin v,\ \log u)$($u>0$)局所的に等長
2 つの定数が等しい単位球面 $S^2$($K=1$)と平面($K=0$)局所的に等長
等長写像を近傍の間でとってよい(全体の間にする)平面 $\mathbb R^2$ と円柱 $S^1\times\mathbb R$(どちらも $K=0$)全体の間の等長写像がある
次元が 2(4 次元にし、スカラー曲率が同じ定数とする)$\mathbb R^4$ と $S^2\times H^2$(どちらもスカラー曲率 $0$)局所的に等長
反例の確かめ

1 行目:どちらの曲面でも Gauss 曲率は $k(u)=-(1+u^2)^{-2}$ である(Gaussの驚異の定理 の「例と反例」の 3 行目)。螺旋面の第 1 基本形式は $du^2+(1+u^2)dv^2$、回転面は $(1+u^{-2})du^2+u^2dv^2$ で、どちらも $F=0$ なので、$u$ だけの関数 $K=k(u)$ の勾配の長さの 2 乗は $|\operatorname{grad}K|^2=k'(u)^2/E$ である。等長写像 $\varphi$ は Gauss 曲率を保ち($K\circ\varphi=K$)、微分すると $dK\circ d\varphi=dK$ で $d\varphi$ は内積を保つので、$K$ の勾配の長さも保つ。螺旋面の点 $u=u_1$ の近くから回転面の点 $u=u_2$ の近くへの等長写像 $\varphi$ があるとする。$k'(u)=4u(1+u^2)^{-3}>0$ なので $k$ は $u>0$ で単射であり、$k(u_1)=k(u_2)$ から $u_2=u_1$ である。勾配の長さを比べると $k'(u_1)^2=k'(u_1)^2/(1+u_1^{-2})$ となるが、$k'(u_1)\neq0$ なので矛盾する。よってどの点の近くの間にも等長写像はない。
2 行目:等長写像は Gauss 曲率を保つので、$K=1$ の点の近くを $K=0$ の点の近くに等長に写すことはできない(Gaussの驚異の定理 の系「球面の地図は長さを保てない」)。
3 行目:thm-mind-main により平面と円柱は局所的に等長である(ex-mind-examples の (1))。しかし平面全体から円柱全体への等長写像はない。等長写像は同相写像だが、平面は単連結で円柱は単連結でない(単連結空間)。
4 行目:$\mathbb R^4$ は平坦でスカラー曲率 $0$、$S^2\times H^2$($S^2$ は半径 $1$、$H^2$ は曲率 $-1$)もスカラー曲率 $2-2=0$ である(スカラー曲率 の例「積多様体の例」)。しかし $S^2\times H^2$ では、$S^2$ の因子に接する平面の断面曲率は $1$ である(断面曲率 の例「積多様体の断面曲率」)。等長写像は断面曲率を保ち、$\mathbb R^4$ の断面曲率はすべて $0$ なので、局所的にも等長でない。2 次元ではスカラー曲率は Gauss 曲率の $2$ 倍なので、この行は次元の仮定だけを外している。

補足

一般の次元。 $n$ 次元 Riemann 多様体で、断面曲率がすべての点とすべての 2 次元方向で同じ定数 $c$ に等しい 2 つのものは、局所的に等長である(Lee18 Corollary 10.15(p. 294)。この記事では証明しない)。証明は Jacobi場 を使って、正規座標の極座標での計量が $dr^2+\mathrm{sn}_c(r)^2\,\mathring g$($\mathring g$ は単位球面 $S^{n-1}$ の計量)の形になることを示すもので(同 Theorem 10.14 と Corollary 10.16、pp. 293–295)、上の証明の段 2・3 の一般化である。4 行目の反例のように、高次元ではスカラー曲率が一定なだけでは足りず、断面曲率が一定であることが要る。
局所と大域。 Minding の定理は局所的な主張である。完備で単連結な 2 次元 Riemann 多様体で Gauss 曲率が定数 $c$ のものは、$c=0$ なら $\mathbb R^2$、$c>0$ なら $S^2(1/\sqrt c)$、$c< 0$ なら $H^2(1/\sqrt{-c})$ と等長である(断面曲率 の例「定曲率空間の代表例」の後半。この記事では証明しない)。

関連項目

参考文献

[1]
Ferdinand Minding, Wie sich entscheiden läßt, ob zwei gegebene krumme Flächen auf einander abwickelbar sind oder nicht; nebst Bemerkungen über die Flächen von unveränderlichem Krümmungsmaaße, Journal für die reine und angewandte Mathematik 19 (1839), 370–387, 1839, pp. 374–375(Gauss 曲率が一定で等しい 2 つの曲面は互いに展開できるという主張と、測地極座標での線素の形による証明)
[2]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, 2nd ed., Springer, 2018, Theorem 10.14(定曲率の計量の正規座標での形、p. 293)、Corollary 10.15(定曲率の計量の局所一意性、p. 294)、Corollary 10.16(warped product としての表示、pp. 294–295)

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