Lebesgue数の補題

同義語:ルベーグ数の補題Lebesgue number lemma

概要

Lebesgue数の補題(Lebesgue number lemma)とは、コンパクトな距離空間 $X$ の任意の開被覆 $\mathcal{U}$ に対して正の数 $\delta$ があり、直径が $\delta$ 未満の $X$ の空でない部分集合は必ず $\mathcal{U}$ のある成員に含まれるという定理である。このような $\delta$ を被覆の Lebesgue 数といい、各点から開集合の外までの距離の最大値という連続関数の最小値として得られる。道やホモトピーの定義域を小さな区間・正方形に分けて各部分の像を 1 つの開集合に収める操作の根拠であり、被覆空間の道の持ち上げや Van Kampen の定理、コンパクト距離空間上の連続写像の一様連続性に使われる。距離空間がコンパクトであることは、全有界でありかつどの開被覆にも Lebesgue 数があることと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 距離空間, コンパクト空間, 開被覆

閉区間 $[0,1]$ の上の連続な道 $\gamma$ と、行き先の空間の開被覆が与えられたとき、区間を十分細かく分ければ、各小区間の像はどれか 1 つの開集合に収まる。被覆空間で道を持ち上げるときも、Van Kampenの定理でループを分解するときも、この「十分細かく分ければ各部分が 1 つの開集合に入る」という操作が出発点になる。「十分細かく」の目安を 1 つの正の数 $\delta$ で与えるのが Lebesgue 数(Lebesgue number)であり、コンパクトな距離空間ではどの開被覆にも Lebesgue 数があるという主張が Lebesgue 数の補題(Lebesgue number lemma)である。
各点 $x$ には、$x$ を中心とする小さな開球がある開集合に収まるような半径がある。しかしその半径は点ごとに違い、点を動かすといくらでも小さくなりうる。Lebesgue 数の補題は、コンパクト性によってこの半径を点によらない 1 つの正の数で下から抑えられることを述べる。これは連続性の $\delta$ を点によらずにそろえる一様連続性と同じ型の現象であり、実際、コンパクト距離空間上の連続写像の一様連続性は Lebesgue 数の補題からすぐに従う。
この記事では、Lebesgue 数を定義し、補題を連続関数の最小値を使って証明する。続いて、立方体を小さな立方体に分ける形の応用と一様連続性を導き、最後に「どの開被覆にも Lebesgue 数がある」という性質がコンパクト性とどう違うかを調べる。

定義

$(X,d)$ を距離空間とする。$x\in X$ と $r>0$ について $B(x,r):=\{y\in X\mid d(x,y)< r\}$ を開球とし、空でない部分集合 $A\subset X$ の直径を
$$ \operatorname{diam}A:=\sup\{d(a,b)\mid a,b\in A\}\in[0,\infty] $$
で定める。$X$ の部分集合の族 $\mathcal{U}$ で和集合が $X$ になるものを $X$ の被覆といい、各成員が開集合である被覆を開被覆という。

Lebesgue数

$(X,d)$ を距離空間、$\mathcal{U}$ を $X$ の被覆とする。正の実数 $\delta$ が $\mathcal{U}$ の Lebesgue 数であるとは、$X$ の空でない部分集合 $A$ で $\operatorname{diam}A<\delta$ を満たすものが、必ず $\mathcal{U}$ のある成員に含まれることをいう。

$\delta$ が Lebesgue 数なら、$0<\delta'<\delta$ を満たす $\delta'$ も Lebesgue 数である。直径が $\delta'$ 未満の集合は直径が $\delta$ 未満だからである。Lebesgue 数は被覆だけでなく距離にもよる。同じ位相を定める別の距離に取り替えると、Lebesgue 数の有無も変わりうる(ex-lnl-noncompact)。
開球を使った言い換えもよく使われる。点列コンパクト の記事の補題「点列コンパクト距離空間のLebesgue数」は、こちらの形で Lebesgue 数を定めている。

開球による言い換え

$(X,d)$ を距離空間、$\mathcal{U}$ を $X$ の被覆、$\delta>0$ とする。

  1. $\delta$ が $\mathcal{U}$ の Lebesgue 数なら、$0< r<\delta/2$ を満たす各 $r$ と各 $x\in X$ について、$B(x,r)$ は $\mathcal{U}$ のある成員に含まれる。
  2. 各 $x\in X$ について $B(x,\delta)$ が $\mathcal{U}$ のある成員に含まれるなら、$\delta$ は $\mathcal{U}$ の Lebesgue 数である。

1:$y,z\in B(x,r)$ なら $d(y,z)\le d(y,x)+d(x,z)<2r$ なので、$\operatorname{diam}B(x,r)\le2r<\delta$ である。$B(x,r)$ は $x$ を含むので空でなく、Lebesgue 数の定義により $\mathcal{U}$ のある成員に含まれる。
2:$A$ を直径が $\delta$ 未満の空でない部分集合とし、$a\in A$ をとる。$y\in A$ なら $d(a,y)\le\operatorname{diam}A<\delta$ なので $A\subset B(a,\delta)$ であり、仮定により $B(a,\delta)$ は $\mathcal{U}$ のある成員に含まれる。$\square$

1 で半径を $\delta/2$ 未満にしているのは、開球 $B(x,r)$ の直径がちょうど $2r$ になりうるからである。2 つの形の Lebesgue 数のあいだには、ex-lnl-interval のようにちょうど 2 倍の差が出ることがある。

主定理

Lebesgue数の補題

$(X,d)$ をコンパクトな距離空間、$\mathcal{U}$ を $X$ の開被覆とする。このとき $\mathcal{U}$ には Lebesgue 数がある。すなわち、ある $\delta>0$ が存在して、直径が $\delta$ 未満の $X$ の空でない部分集合は、必ず $\mathcal{U}$ のある成員に含まれる。

証明の考え方は次のとおりである。点 $x$ が開集合 $U$ の「どれだけ内側にあるか」は、$x$ から $U$ の外までの距離で測れる。これを有限個の開集合について比べて最大のものをとると、$X$ 上の正の値をとる連続関数ができる。コンパクト性によりこの関数は正の最小値をとり、それが Lebesgue 数になる。

$X=\emptyset$ なら空でない部分集合がないので、どの $\delta>0$ も Lebesgue 数である。以下 $X\ne\emptyset$ とする。
$X$ はコンパクトなので、$\mathcal{U}$ の有限個の成員 $U_1,\dots,U_n$($n\ge1$)で $X=U_1\cup\cdots\cup U_n$ となるものがある。ある $U_i$ が $X$ に等しければ、どの $\delta>0$ も Lebesgue 数である。そこで、どの $U_i$ も $X$ に等しくないとし、$C_i:=X\setminus U_i$ とおく。$C_i$ は空でない。
点 $x\in X$ から $C_i$ までの距離を $\varphi_i(x):=\inf\{d(x,c)\mid c\in C_i\}$ で定める。$x,y\in X$、$c\in C_i$ について $d(x,c)\le d(x,y)+d(y,c)$ であり、$c$ について下限をとると $\varphi_i(x)\le d(x,y)+\varphi_i(y)$ を得る。$x$ と $y$ を入れ替えれば
$$ \lvert\varphi_i(x)-\varphi_i(y)\rvert\le d(x,y) $$
である。よって $\varphi_i$ は連続であり、$\varphi(x):=\max\{\varphi_1(x),\dots,\varphi_n(x)\}$ も連続である(連続関数の最大値は連続)。
$\varphi$ はどの点でも正である。実際、$x\in X$ に対して $x\in U_i$ となる $i$ をとると、$U_i$ は開集合なので $B(x,\varepsilon)\subset U_i$ となる $\varepsilon>0$ がある。$c\in C_i$ は $B(x,\varepsilon)$ に入らないので $d(x,c)\ge\varepsilon$ であり、$\varphi(x)\ge\varphi_i(x)\ge\varepsilon>0$ となる。
$X$ は空でないコンパクト空間なので、連続関数 $\varphi$ は最小値をとる(コンパクト空間 の定理「最大値・最小値の存在」)。その最小値を $\delta$ とおくと $\delta>0$ である。
この $\delta$ が Lebesgue 数であることを示す。prop-lnl-balls の 2 により、各 $x\in X$ について $B(x,\delta)$ がある $U_i$ に含まれることを示せばよい。$\varphi(x)\ge\delta$ なので、ある $i$ について $\varphi_i(x)\ge\delta$ である。$y\in B(x,\delta)$ が $C_i$ に属するとすると $\varphi_i(x)\le d(x,y)<\delta$ となって矛盾するので、$B(x,\delta)\subset X\setminus C_i=U_i$ である。$\square$

証明が使ったコンパクト性は 2 か所である。1 つは有限部分被覆をとるところで、これにより $\varphi$ を有限個の関数の最大値として定義でき、$\varphi$ が連続になる。もう 1 つは $\varphi$ が最小値をとるところで、これにより $\varphi$ の値が $0$ にいくらでも近づくことが防がれる。Mun00 Lemma 27.5(pp. 175–176)の証明も同じ筋で、そこでは最大値の代わりに $\varphi_1,\dots,\varphi_n$ の平均をとっている。

点列を使う証明

点列コンパクト の記事の補題「点列コンパクト距離空間のLebesgue数」は、同じ主張を点列コンパクト性から背理法で示している。各 $n$ について $B(x_n,1/n)$ がどの成員にも含まれない点 $x_n$ をとり、収束部分列の極限のまわりの開集合で矛盾を導く。距離空間ではコンパクト性と点列コンパクト性は同値であり(同じ記事の定理「距離空間における同値性」)、そこでは Lebesgue 数の補題がコンパクト性を導く側の道具として使われている。Mun00 Theorem 28.2 の証明(p. 180)も同じ論法をとる。

閉区間の 2 つの開集合による被覆

$X=[0,1]$(通常の距離)と、2 つの開集合からなる被覆 $\mathcal{U}=\{[0,\tfrac23),(\tfrac13,1]\}$ を考える。
直径が $\frac13$ 未満の空でない集合 $A$ は、どちらかの成員に含まれる。どちらにも含まれないとすると、$A$ は $\frac23$ 以上の点と $\frac13$ 以下の点を含み、直径が $\frac13$ 以上になるからである。よって $\frac13$ は Lebesgue 数である。一方 $\delta>\frac13$ なら、$A=[\frac13,\frac23]$ は直径 $\frac13<\delta$ だがどちらの成員にも含まれないので、$\delta$ は Lebesgue 数でない。Lebesgue 数の上限は $\frac13$ で、それ自身も Lebesgue 数である。
prf-lnl-main の関数は、$\frac13\le x\le\frac23$ で $\varphi(x)=\max\{\frac23-x,\,x-\frac13\}$ であり、最小値は $x=\frac12$ での $\frac16$ である。開球の形(prop-lnl-balls の 2)で条件を満たす $\delta$ の上限も $\frac16$ である。$B(\frac12,\delta)=(\frac12-\delta,\frac12+\delta)$ がどちらかの成員に含まれるには $\delta\le\frac16$ が要るからである。直径による Lebesgue 数と開球による Lebesgue 数のあいだに 2 倍の差がある。

応用

立方体の細分

Lebesgue 数の補題がもっともよく使われるのは、距離の入っていない空間への連続写像を、定義域の側の距離で細かく分ける場面である。

立方体の細分

$k\ge1$ とし、$X$ を位相空間、$F\colon[0,1]^k\to X$ を連続写像、$\mathcal{U}$ を $X$ の開被覆とする。このとき正の整数 $N$ が存在して、$1\le j_1,\dots,j_k\le N$ を満たす各整数の組について、小さな立方体
$$ Q_{j_1\cdots j_k}:=\prod_{l=1}^k\Bigl[\frac{j_l-1}N,\frac{j_l}N\Bigr] $$
の像 $F(Q_{j_1\cdots j_k})$ は $\mathcal{U}$ のある成員に含まれる。

$[0,1]^k$ に $\mathbb{R}^k$ の Euclid 距離を入れる。$[0,1]^k$ は $\mathbb{R}^k$ の有界閉集合なのでコンパクトである(コンパクト空間 の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」)。$F$ は連続なので、$\{F^{-1}(U)\mid U\in\mathcal{U}\}$ は $[0,1]^k$ の開被覆である。thm-lnl-main によりその Lebesgue 数 $\delta$ をとり、$N>\sqrt k/\delta$ となる整数 $N$ をとる。各小さな立方体の 2 点の距離は対角線の長さ $\sqrt k/N$ 以下なので、$\operatorname{diam}Q_{j_1\cdots j_k}\le\sqrt k/N<\delta$ である。よって $Q_{j_1\cdots j_k}\subset F^{-1}(U)$ となる $U\in\mathcal{U}$ があり、$F(Q_{j_1\cdots j_k})\subset U$ である。$\square$

$k=1$ は道の分割であり、分点 $0<\frac1N<\frac2N<\cdots<1$ で各小区間の像が $\mathcal{U}$ の 1 つの成員に入る。被覆空間 の記事の道の持ち上げや、Van Kampenの定理 の記事の全射性の証明はこの形を使っている。$k=1$ の場合は、距離を使わずに区間の上限をとる議論でも示せる(道(位相) の記事の定理「道の分割」)。$k=2$ は道のホモトピー $H\colon[0,1]\times[0,1]\to X$ を格子に分ける場面で使われ、ホモトピーを小さな正方形ごとに扱うことを可能にする。単体近似で単体を細分するときにも同じ考え方が使われる。

一様連続性

一様連続 の記事の定理「Heine–Cantorの定理」(コンパクト距離空間上の連続写像は一様連続)は、Lebesgue 数の補題から短く導ける。ここでは、コンパクト性の代わりに Lebesgue 数の存在だけを仮定した形で述べる。

Lebesgue数による一様連続性

$(X,d_X)$ を、どの開被覆にも Lebesgue 数がある距離空間とし、$(Y,d_Y)$ を距離空間、$f\colon X\to Y$ を連続写像とする。このとき $f$ は一様連続である。特に、コンパクト距離空間上の連続写像は一様連続である。

$\varepsilon>0$ をとる。$\{f^{-1}(B(y,\varepsilon/2))\mid y\in Y\}$ は $X$ の開被覆なので、Lebesgue 数 $\delta$ がある。$x,x'\in X$ が $d_X(x,x')<\delta$ を満たせば、$\{x,x'\}$ は直径が $\delta$ 未満なので、ある $y\in Y$ について $f(x),f(x')\in B(y,\varepsilon/2)$ である。よって $d_Y(f(x),f(x'))<\varepsilon$ である。後半は thm-lnl-main による(コンパクトの場合のこの証明は Mun00 Theorem 27.6(p. 176)と同じである)。$\square$

Lebesgue数の存在とコンパクト性

距離空間 $X$ のどの開被覆にも Lebesgue 数があるとき、この記事では $X$ が Lebesgue の性質をもつということにする。thm-lnl-main は、コンパクト距離空間が Lebesgue の性質をもつことを述べる。逆は成り立たない。

コンパクトでない空間
  1. 自然数全体 $\mathbb{N}$ に、異なる 2 点の距離をすべて $1$ とする距離(離散距離)を入れる。直径が $1$ 未満の空でない集合は 1 点だけからなるので、どの被覆についても $1$ は Lebesgue 数である。よってこの空間は Lebesgue の性質をもつ。一方、開被覆 $\{\{n\}\mid n\in\mathbb{N}\}$ には有限部分被覆がないので、コンパクトでない。
  2. 開区間 $(0,1)$(通常の距離)では、開被覆 $\{(\frac1n,1)\mid n\ge2\}$ に Lebesgue 数がない。Lebesgue 数より小さい正の数も Lebesgue 数なので、$0<\delta\le1$ の場合を見ればよい。$(0,\frac\delta2)$ は直径 $\frac\delta2<\delta$ の空でない部分集合だが、$\frac1n$ より小さい点を含むので、どの $(\frac1n,1)$ にも含まれないからである。
  3. 実数全体 $\mathbb{R}$(通常の距離)は Lebesgue の性質をもたない。$x\mapsto x^2$ は連続だが一様連続でない(一様連続 の記事の例「反例:実数全体上の2乗」)ので、cor-lnl-uniform の対偶による。
  4. 正の整数全体 $\mathbb{N}_{\ge1}$ に距離 $d'(m,n):=\lvert\frac1m-\frac1n\rvert$ を入れる。各点 $n$ は $B(n,\frac1n-\frac1{n+1})=\{n\}$ を満たすので、この距離の定める位相は 1 の離散距離と同じ(どの部分集合も開集合)である。しかし開被覆 $\{\{n\}\mid n\ge1\}$ には $d'$ について Lebesgue 数がない。$\{n,n+1\}$ の直径 $\frac1n-\frac1{n+1}$ は $n\to\infty$ で $0$ に近づくが、この 2 点集合はどの $\{m\}$ にも含まれないからである。同じ位相でも、距離によって Lebesgue の性質をもったりもたなかったりする。

1 の空間は完備であり、2 の空間は全有界である。Lebesgue の性質は完備性を導き、全有界性と合わせるとコンパクト性になる。

Lebesgueの性質と完備性

Lebesgue の性質をもつ距離空間は完備である。

$(X,d)$ を Lebesgue の性質をもつ距離空間とし、$(x_n)$ を収束しない Cauchy列とする。点 $p\in X$ について $\lvert d(p,x_n)-d(p,x_m)\rvert\le d(x_n,x_m)$ なので $(d(p,x_n))_n$ は実数の Cauchy 列であり、極限 $\ell(p)\ge0$ をもつ。$\ell(p)=0$ なら $x_n\to p$ となって仮定に反するので、$\ell(p)>0$ である。
$U_p:=B(p,\ell(p)/2)$ とおくと $\{U_p\mid p\in X\}$ は $X$ の開被覆なので、Lebesgue 数 $\delta$ がある。$n,m\ge N$ なら $d(x_n,x_m)<\delta/2$ となる $N$ をとると、$A:=\{x_n\mid n\ge N\}$ は直径 $\delta/2$ 以下の空でない集合なので、ある $p$ について $A\subset U_p$ である。すると $n\ge N$ で $d(p,x_n)<\ell(p)/2$ であり、$n\to\infty$ として $\ell(p)\le\ell(p)/2$、すなわち $\ell(p)\le0$ を得る。これは $\ell(p)>0$ に反する。$\square$

逆に完備でも Lebesgue の性質をもつとは限らない。ex-lnl-noncompact の 3 の $\mathbb{R}$ がその例である。

コンパクト性の特徴づけ

距離空間 $(X,d)$ について、次は同値である。

  1. $X$ はコンパクトである。
  2. $X$ は全有界であり、Lebesgue の性質をもつ。

1 ⇒ 2:Lebesgue の性質は thm-lnl-main である。コンパクト距離空間が全有界であることは、全有界 の記事の定理「コンパクト性との関係」による(各 $\varepsilon>0$ について開球全体 $\{B(x,\varepsilon)\}$ の有限部分被覆をとればよい)。
2 ⇒ 1:$\mathcal{U}$ を $X$ の開被覆とし、その Lebesgue 数 $\delta$ をとる。$X$ は全有界なので、有限個の点 $a_1,\dots,a_m$ で $X=B(a_1,\delta/3)\cup\cdots\cup B(a_m,\delta/3)$ となるものがある($X=\emptyset$ なら $m=0$)。各開球 $B(a_i,\delta/3)$ は空でなく、直径は $2\delta/3$ 以下で $\delta$ 未満なので、ある $U_i\in\mathcal{U}$ に含まれる。$U_1,\dots,U_m$ は $\mathcal{U}$ の有限部分被覆である。$\square$

prop-lnl-complete と合わせると、2 ⇒ 1 は「完備かつ全有界な距離空間はコンパクトである」こと(全有界 の記事の定理「コンパクト性との関係」)からも従う。上の証明はこの事実を使わず、Lebesgue 数から有限部分被覆を直接作っている。これは Mun00 Theorem 28.2 の証明の最後の段(pp. 180–181)と同じ論法であり、完備かつ全有界ならコンパクトという定理は同書 Theorem 45.1(p. 276)にある。

仮定の役割:反例

外す条件反例成り立たなくなること
thm-lnl-main の $X$ がコンパクト$(0,1)$ と開被覆 $\{(\frac1n,1)\mid n\ge2\}$Lebesgue 数がある
thm-lnl-main の被覆が開集合からなる$[0,1]$ と閉集合による被覆 $\{[0,\frac12],[\frac12,1]\}$Lebesgue 数がある
thm-lnl-characterization の 2 の全有界性離散距離を入れた $\mathbb{N}$Lebesgue の性質をもつ空間はコンパクトである
thm-lnl-characterization の 2 の Lebesgue の性質$(0,1)$(通常の距離)全有界な距離空間はコンパクトである
反例の確かめ

1 行目と 4 行目:ex-lnl-noncompact の 2。$(0,1)$ は長さ $\varepsilon$ 未満の等間隔の点で有限個の開球に覆えるので全有界であり、Lebesgue の性質をもたないので、thm-lnl-main によりコンパクトでない。
2 行目:$\delta>0$ に対し、$A:=[0,1]\cap(\frac12-\frac\delta3,\frac12+\frac\delta3)$ は直径が $\frac{2\delta}3<\delta$ 以下で空でない。$A$ は $\frac12$ より大きい点と小さい点を含むので、$[0,\frac12]$ にも $[\frac12,1]$ にも含まれない。$[0,1]$ はコンパクトだが、閉集合による被覆では境目の点の近くで「どちらかに収まる」余裕がなくなる。
3 行目:ex-lnl-noncompact の 1。この空間は完備でもあるので、thm-lnl-characterization の 2 の全有界性を完備性に置き換えることはできない(完備性と Lebesgue の性質だけからはコンパクト性は従わない)。

関連項目

参考文献

[1]
James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000, §27 Lemma 27.5(Lebesgue 数の補題、pp. 175–176)・Theorem 27.6(一様連続性定理、p. 176)、§28 Theorem 28.2 の証明(点列コンパクト性から Lebesgue 数の補題と有限部分被覆を導く部分、pp. 180–181)、§45 Theorem 45.1(p. 276)

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