Mamikonの定理

同義語:接線が掃く面積Mamikon's theorem

概要

Mamikonの定理(Mamikon's theorem)とは、曲線の接線の線分が掃く部分の面積は、接線の回る角が 1 回転以内なら、線分をすべて平行移動して 1 点に集めた図形(接線の束)の面積に等しいという定理である。接線の角 $\theta$ が単調に増える弧の各点から長さ $L$ の接線の線分を引くとき、弧・両端の線分・線分の端が描く曲線でできる閉曲線が自分と交わらなければ、囲む部分の面積は $\frac12\int L^2\,d\theta$ である。特に、滑らかな凸の閉曲線 $C$ の各点から進む向きに長さ $L$(一定)の接線の線分を引くと、線分の端が描く閉曲線 $C_L$ の符号つき面積は $C$ の面積より $\pi L^2$ 大きく、$C_L$ が自分と交わらず $C$ を内側に含むなら、間の部分の面積は $C$ の形によらず $\pi L^2$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 媒介変数表示の曲線が囲む面積, 極座標で表された図形の面積, 三平方の定理(高校数学), ベクトルの内積

高校での出発点:円に接線の線分を引く

円の各点から、円を反時計回りにたどる向き(進む向き)に、長さ $L$ の接線の線分を引く。線分の端はどんな曲線を描き、線分が通った部分の面積はいくらだろうか。

円に長さ 1 の接線の線分を引く
  1. 原点を中心とする半径 $2$ の円の点 $P(2\cos\varphi,2\sin\varphi)$ で、進む向きの長さ $1$ の接線のベクトルは $\vec T=(-\sin\varphi,\cos\varphi)$ である($\overrightarrow{OP}$ と垂直で、$\varphi$ が増える向き)。線分の端を $Q$ とすると $\overrightarrow{OQ}=\overrightarrow{OP}+\vec T$ で、$\overrightarrow{OP}\perp\vec T$ なので三平方の定理(三平方の定理(高校数学))により
    $$ OQ^2=OP^2+1^2=4+1=5 $$
    である。$Q$ は半径 $\sqrt5$ の円を描き、2 つの円の間の円環の面積は
    $$ \pi\bigl(\sqrt5\bigr)^2-\pi\cdot2^2=5\pi-4\pi=\pi $$
    である。
  2. 半径を $3$ にすると、$OQ^2=9+1=10$ で、円環の面積は $10\pi-9\pi=\pi$ である。一般に半径 $R$、線分の長さ $L$ なら $\pi(R^2+L^2)-\pi R^2=\pi L^2$ で、円の大きさによらない。

円環の面積が円の大きさによらないのは、三平方の定理で $R^2$ が打ち消し合うからである。では、円でない曲線ではどうなるか。

楕円に長さ 1 の接線の線分を引く

楕円 $P(t)=(3\cos t,\ 2\sin t)$($0\le t\le2\pi$)の各点から、進む向きに長さ $1$ の接線の線分を引く。速度ベクトル $P'(t)=(-3\sin t,\ 2\cos t)$ を長さ $1$ にした $\vec T(t)=\dfrac{P'(t)}{\lvert P'(t)\rvert}$ が進む向きの接線のベクトルで、線分の端は $Q(t)=P(t)+\vec T(t)$ である。たとえば
$$ t=0:\ Q=(3,1),\qquad t=\frac\pi2:\ Q=(-1,2),\qquad t=\pi:\ Q=(-3,-1) $$
である。楕円の面積は $\pi\cdot3\cdot2=6\pi=18.8495\ldots$ で、$Q$ が描く曲線の囲む面積を数値積分で求めると $21.9911\ldots$ になる。差は $3.14159\ldots$ で、円のときと同じ $\pi\cdot1^2$ である。

半径 2 の円の各点から長さ 1 の接線の線分を間引いて描いたもので、線分の端は半径√5 の円の上にあり、間の円環を色で塗ってある 半径 2 の円の各点から長さ 1 の接線の線分を間引いて描いたもので、線分の端は半径√5 の円の上にあり、間の円環を色で塗ってある
楕円の各点から長さ 1 の接線の線分を間引いて描いたもので、線分の端が描く曲線と楕円の間を色で塗ってある 楕円の各点から長さ 1 の接線の線分を間引いて描いたもので、線分の端が描く曲線と楕円の間を色で塗ってある

円でも楕円でも、間の部分の面積は $\pi L^2$ だった。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 滑らかな凸の閉曲線なら、形によらず間の部分の面積は $\pi L^2$ か。→ thm-mam-closed
  2. 線分の長さが点ごとに変わるとき、線分が通る部分の面積は何で決まるか。→ thm-mam-sweep
  3. どんな曲線で成り立たないか。→ ex-mam-cx-nonconvex、ex-mam-cx-square
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $\frac12\int(xy'-yx')\,dt$ で面積を求める符号つき面積 $S[X]$線積分と Green の定理
    接線の傾きの角接線の角 $\theta(t)$単位接ベクトルの偏角
    円環の面積が $\pi L^2$間の部分の面積が $\pi L^2$接線の束の面積
    扇形の面積 $\frac12\int r^2d\theta$線分が掃く面積 $\frac12\int L^2d\theta$極座標の面積の公式
    この記事では、thm-mam-closed と thm-mam-sweep の 2 つを Mamikon の定理 と呼ぶ。

言葉の準備:外積と符号つき面積

平面のベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec v=(v_1,v_2)$ について
$$ \vec u\times\vec v=u_1v_2-u_2v_1 $$
と書き、$\vec u$ と $\vec v$ の 外積 と呼ぶ。$\vec u$、$\vec v$ でできる平行四辺形の面積に、$\vec u$ から $\vec v$ へ反時計回りに回るなら正、時計回りなら負の符号をつけたものである(靴ひも公式 の三角形の面積の式と同じ形)。

外積の性質

平面のベクトル $\vec u$、$\vec v$、$\vec w$ と実数 $k$ について、次が成り立つ。
(1) $\vec v\times\vec u=-\vec u\times\vec v$。特に $\vec u\times\vec u=0$ であり、$\vec v=k\vec u$ なら $\vec u\times\vec v=0$ である。
(2) $\vec u\times(\vec v+\vec w)=\vec u\times\vec v+\vec u\times\vec w$、$\vec u\times(k\vec v)=k(\vec u\times\vec v)$(左側についても同じ)。
(3) $\vec u(t)$、$\vec v(t)$ の成分が $t$ の微分可能な関数なら、$\bigl(\vec u\times\vec v\bigr)'=\vec u\,'\times\vec v+\vec u\times\vec v\,'$。
(4) $\vec u=(\cos\alpha,\sin\alpha)$、$\vec v=(\cos\beta,\sin\beta)$ なら $\vec u\times\vec v=\sin(\beta-\alpha)$。

成分で計算する

要点:どれも成分 $u_1v_2-u_2v_1$ に代入して計算すればよい。(3) は積の微分、(4) は正弦の加法定理である。

詳しい証明を開く

(1) $\vec v\times\vec u=v_1u_2-v_2u_1=-(u_1v_2-u_2v_1)$ である。$\vec v=k\vec u$ なら $\vec u\times\vec v=u_1(ku_2)-u_2(ku_1)=0$ である。

(2) $\vec u\times(\vec v+\vec w)=u_1(v_2+w_2)-u_2(v_1+w_1)=(u_1v_2-u_2v_1)+(u_1w_2-u_2w_1)$ である。$k$ 倍も同じように成分で確かめられる。

(3) 積の微分により $(u_1v_2-u_2v_1)'=u_1'v_2+u_1v_2'-u_2'v_1-u_2v_1'=(u_1'v_2-u_2'v_1)+(u_1v_2'-u_2v_1')$ である。

(4) $\cos\alpha\sin\beta-\sin\alpha\cos\beta=\sin(\beta-\alpha)$(加法定理)である。$\square$

閉曲線 $X(t)=\bigl(x(t),y(t)\bigr)$($\alpha\le t\le\beta$、$X(\beta)=X(\alpha)$)について
$$ S[X]=\frac12\int_\alpha^\beta X(t)\times X'(t)\,dt=\frac12\int_\alpha^\beta\bigl(x\,y'-y\,x'\bigr)\,dt $$
を $X$ の 符号つき面積 という。$X$ が途中の有限個の点で折れ曲がる(そこで微分できない)ときは、区間を分けて積分したものの和とする。媒介変数表示の曲線が囲む面積 の定理「閉曲線が囲む面積」は、2 つのグラフではさまれた図形の周を反時計回りに 1 周する閉曲線では、$S[X]$ がその図形の面積に等しいことを示している。凸な図形の周は、縦の線分を含まなければ、左端の点からたどり始めるとこの形になる(閉曲線では、たどり始めの点を変えても $S[X]$ は変わらない)。角を丸めた長方形のように縦の線分を含む図形では、座標軸を少し回して縦の線分がないようにしてから当てはめる(外積は 2 つのベクトルの長さとなす角だけで決まるので、座標軸を回しても $S[X]$ は変わらない)。

一般の閉曲線の面積(この記事では証明しない)

自分と交わらない閉曲線 $X$(区分的に滑らかなもの)が図形 $D$ を囲むとき、$X$ が $D$ を反時計回りに 1 周するなら $S[X]$ は $D$ の面積に等しく、時計回りなら $-S[X]$ が $D$ の面積に等しい。どちらの場合も、$D$ の面積は $\lvert S[X]\rvert$ である。これは Green の定理(靴ひも公式 の節「大学数学で見る:Green の定理」)の特別な場合で、この記事では証明しない。凸でない図形の周や、thm-mam-sweep で使う閉曲線にはこの事実を使う。

曲線の仮定と接線の角

滑らかな凸の閉曲線と接線の角

曲線 $C\colon P(t)$($\alpha\le t\le\beta$)が次の 3 つを満たすとき、$C$ を 滑らかな凸の閉曲線 と呼ぶ。
(R1) $P(\beta)=P(\alpha)$ で、$P'(t)$ は連続で $\vec 0$ にならず、$P'(\beta)=P'(\alpha)$ である。
(R2) $P'(t)$ を長さ $1$ にしたベクトル $\vec T(t)=\dfrac{P'(t)}{\lvert P'(t)\rvert}$ を $\vec T(t)=(\cos\theta(t),\sin\theta(t))$ と書くとき、角 $\theta(t)$ を $t$ の連続な関数にとれて、$\theta(t)$ は(広い意味で)単調に増加し、$\theta(\beta)=\theta(\alpha)+2\pi$ である。さらに、区間 $[\alpha,\beta]$ を有限個に分けた各部分で $\theta(t)$ は微分可能で、$\theta'(t)$ は連続である。
(R3) $C$ は自分と交わらず、凸な図形の周を反時計回りに 1 周する。
$\vec T(t)$ を 進む向きの単位接ベクトル、$\theta(t)$ を 接線の角 という。$L>0$ に対し、$P(t)$ から $Q(t)=P(t)+L\,\vec T(t)$ までの線分を 進む向きの長さ $L$ の接線の線分 といい、$Q(t)$ が描く閉曲線を $C_L$ と書く。

条件 (ii) は、曲線を進むと接線がいつも左に回り(または回らずに進み)、1 周でちょうど 1 回転することを表す。条件 (i) で $P'(\beta)=P'(\alpha)$ としたので、$\vec T$ も $Q$ も 1 周すると元にもどり、$C_L$ は閉曲線になる。

円・楕円・角を丸めた長方形
  1. 半径 $R$ の円 $P(\varphi)=(R\cos\varphi,R\sin\varphi)$($0\le\varphi\le2\pi$)では、$\vec T=(-\sin\varphi,\cos\varphi)=\bigl(\cos(\varphi+\tfrac\pi2),\sin(\varphi+\tfrac\pi2)\bigr)$ なので $\theta=\varphi+\dfrac\pi2$、$\theta'=1$ である。
  2. 楕円 $P(t)=(3\cos t,2\sin t)$ では、$\theta(t)$ は $P'(t)=(-3\sin t,2\cos t)$ の向きの角で、$t=0$ で $\dfrac\pi2$、$t=\dfrac\pi2$ で $\pi$ と単調に増え、1 周で $2\pi$ 増える。
  3. 横 $3$、縦 $2$ の長方形の 4 つの角を、半径 $\dfrac12$ の四分円に取りかえた曲線(角を丸めた長方形)では、辺の直線の部分で $\theta$ は一定で、四分円の部分で $\dfrac\pi2$ ずつ増える。弧の長さを媒介変数にとると、直線と四分円のつなぎ目で $\theta'$ は $0$ から $2$(半径の逆数)に跳ぶが、$\theta$ は連続なので条件 (ii) を満たす。

主定理 1:閉曲線の接線の線分

長さ一定の接線の線分

$C\colon P(t)$($\alpha\le t\le\beta$)を滑らかな凸の閉曲線、$L>0$ とし、$C_L\colon Q(t)=P(t)+L\,\vec T(t)$ とする。
(1) $S[C_L]=S[C]+\pi L^2$ である。
(2) $C_L$ が自分と交わらない閉曲線で、$C$ がその内側にあるなら、$C$ と $C_L$ の間の部分の面積は $\pi L^2$ である。これは $C$ の形にも大きさにもよらない。

外積を展開して積分する

方針:$Q\times Q'$ を $P$ と $\vec T$ で展開し、項ごとに積分する。$\theta$ が微分できない点では区間を分けて積分し、足し合わせる。
段 1(2 つの外積)。$P'=\lvert P'\rvert\,\vec T$ なので、prop-mam-cross (1) により $\vec T\times P'=0$ である。$\vec T=(\cos\theta,\sin\theta)$ を微分すると $\vec T\,'=\theta'(-\sin\theta,\cos\theta)$ なので
$$ \vec T\times\vec T\,'=\cos\theta\cdot\theta'\cos\theta-\sin\theta\cdot\bigl(-\theta'\sin\theta\bigr)=\theta' $$
である。
段 2(展開)。$Q'=P'+L\,\vec T\,'$ なので、prop-mam-cross (2) により
$$ Q\times Q'=\bigl(P+L\vec T\bigr)\times\bigl(P'+L\vec T\,'\bigr)=P\times P'+L\bigl(P\times\vec T\,'+\vec T\times P'\bigr)+L^2\,\vec T\times\vec T\,' $$
である。段 1 より $\vec T\times P'=0$、$\vec T\times\vec T\,'=\theta'$ なので
$$ Q\times Q'=P\times P'+L\,P\times\vec T\,'+L^2\theta' $$
となる。
段 3(真ん中の項)。prop-mam-cross (3) により $\bigl(P\times\vec T\bigr)'=P'\times\vec T+P\times\vec T\,'$ で、$P'\times\vec T=-\vec T\times P'=0$ なので $P\times\vec T\,'=\bigl(P\times\vec T\bigr)'$ である。$P\times\vec T$ は $t$ の連続な関数で、$P(\beta)=P(\alpha)$、$\vec T(\beta)=\vec T(\alpha)$ なので
$$ \int_\alpha^\beta P\times\vec T\,'\,dt=\Bigl[P\times\vec T\Bigr]_\alpha^\beta=0 $$
である(区間を分けたときも、つなぎ目の値が打ち消し合う)。
段 4(積分する)。段 2 の式を積分して $\dfrac12$ を掛けると、段 3 と条件 (ii) により
$$ S[C_L]=S[C]+\frac L2\cdot0+\frac{L^2}2\int_\alpha^\beta\theta'\,dt=S[C]+\frac{L^2}2\bigl(\theta(\beta)-\theta(\alpha)\bigr)=S[C]+\frac{L^2}2\cdot2\pi=S[C]+\pi L^2 $$
である。これが (1) である。
段 5(面積)。$C$ は凸な図形の周を反時計回りに 1 周するので、$S[C]$ は $C$ が囲む図形の面積である(媒介変数表示の曲線が囲む面積 の定理「閉曲線が囲む面積」)。(2) の仮定のもとで、$C_L$ が囲む図形の面積は $\lvert S[C_L]\rvert$ である(rem-mam-green)。(1) より $S[C_L]=S[C]+\pi L^2>0$ なので、これは $S[C_L]$ に等しい。$C$ が $C_L$ の内側にあるので、間の部分の面積は
$$ S[C_L]-S[C]=\pi L^2 $$
である。$\square$

段 4 で効いたのは、接線が 1 周でちょうど 1 回転すること($\theta$ が $2\pi$ 増えること)だけである。曲線の形や大きさは、段 3 で打ち消し合って消える。ex-mam-start で円の半径が打ち消し合ったのと同じことが、どんな凸な曲線でも起こる。

楕円と角を丸めた長方形
  1. ex-mam-ellipse-start の楕円で $L=1$ とすると、thm-mam-closed (1) により $S[C_L]=6\pi+\pi=7\pi=21.9911\ldots$ で、数値積分の値と一致する。$C_L$ は自分と交わらず、楕円を内側に含む(図 2。$C_L$ の上の点を 2 万個とって確かめた)。
  2. ex-mam-curves (3) の角を丸めた長方形では、囲む面積は長方形から 4 つの角の「1 辺 $\dfrac12$ の正方形 − 四分円」を除いて $S[C]=6-4\Bigl(\dfrac14-\dfrac\pi{16}\Bigr)=5+\dfrac\pi4$ である。$L=1$ とすると、辺の直線の部分では接線の線分は辺の延長の上をすべるだけで、何も掃かず、4 つの角の部分で合わせて $\pi$ を掃く(図 3)。$S[C_L]=5+\dfrac{5\pi}4$ である。
    角の部分の面積を三平方の定理で確かめる

    四分円の部分では、四分円の中心を $O'$ とすると $O'P\perp\vec T$ なので三平方の定理より $O'Q=\sqrt{\tfrac14+1}=\dfrac{\sqrt5}2$ で、線分は半径 $\dfrac12$ と $\dfrac{\sqrt5}2$ の円の間の部分を掃く。その境界は最初と最後の線分で半径ではないが、$O'$ からの距離が $r$ の点が掃かれる範囲はどの $r$ でも中心角 $90^\circ$ の弧なので、面積は 4 分の 1 の円環と同じで、 $\dfrac14\pi\Bigl(\dfrac54-\dfrac14\Bigr)=\dfrac\pi4$ で、4 つの角で合わせて $\pi$ になる。

曲線($L=1$)$S[C]$$S[C_L]$差
半径 $2$ の円$4\pi$$5\pi$$\pi$
半径 $3$ の円$9\pi$$10\pi$$\pi$
楕円 $(3\cos t,2\sin t)$$6\pi$$7\pi$$\pi$
角を丸めた長方形$5+\frac\pi4$$5+\frac{5\pi}4$$\pi$

角を丸めた長方形の右下の角で、辺の部分の接線の線分は辺の延長に重なって何も掃かず、四分円の部分の線分だけが、中心 O' の 4 分の 1 の円環と面積の等しい部分を掃く。ほかの 3 つの角も同じ 角を丸めた長方形の右下の角で、辺の部分の接線の線分は辺の延長に重なって何も掃かず、四分円の部分の線分だけが、中心 O' の 4 分の 1 の円環と面積の等しい部分を掃く。ほかの 3 つの角も同じ

主定理 2:長さが変わる線分が掃く面積

ex-mam-ellipse (2) では、面積はすべて接線が回る角の部分から生まれ、接線が回らない直線の部分は何も掃かなかった。そこで、曲線の一部分(弧)の各点から、長さが点ごとに変わる接線の線分を引く場合を考える。

接線の線分が掃く部分と接線の束

曲線の弧 $P(t)$($t_1\le t\le t_2$)は、def-mam-curve の条件 (i) の「$P'(t)$ は連続で $\vec 0$ にならない」と、条件 (ii) の「$\theta(t)$ は連続で単調に増加し、有限個に分けた各部分で微分可能で $\theta'$ は連続」を満たすとする(閉じている必要はない)。長さ $L(t)\ge0$ は $t$ の連続な関数で、有限個に分けた各部分で微分可能で $L'$ は連続とする。$\varepsilon$ を $1$ か $-1$ に決め、
$$ Q(t)=P(t)+\varepsilon L(t)\,\vec T(t) $$
とする($\varepsilon=1$ なら進む向き、$\varepsilon=-1$ なら逆向きの接線の線分)。

  • 弧 $P$ を $t_1$ から $t_2$ までたどり、線分で $P(t_2)$ から $Q(t_2)$ へ進み、$Q$ を $t_2$ から $t_1$ まで逆にたどり、線分で $Q(t_1)$ から $P(t_1)$ へもどる閉曲線を $\Gamma$ とする。$\Gamma$ が自分と交わらないとき、$\Gamma$ が囲む部分を、接線の線分が 掃く部分 という。
  • 各線分を、始点が原点にくるように平行移動したもの(原点から向き $\varepsilon\vec T(t)$ に長さ $L(t)$ の線分)を全部集めた図形を、接線の束 という。
接線の線分が掃く面積

def-mam-sweep の記号で、次が成り立つ。
(1) $S[\Gamma]=-\dfrac12\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}L(t)^2\,\theta'(t)\,dt$ である。
(2) $\Gamma$ が自分と交わらないとき、接線の線分が掃く部分の面積は
$$ \frac12\int_{t_1}^{t_2}L(t)^2\,\theta'(t)\,dt $$
である。特に $\theta$ が狭義単調増加で、$L$ を $\theta$ の関数 $L(\theta)$ と見るとき、これは $\dfrac12\displaystyle\int_{\theta_1}^{\theta_2}L(\theta)^2\,d\theta$($\theta_1=\theta(t_1)$、$\theta_2=\theta(t_2)$)である。さらに $\theta_2-\theta_1\le2\pi$ なら、これは接線の束の面積に等しい。

4 つの部分の符号つき面積を足す

方針:$\Gamma$ を 4 つの部分に分け、$\dfrac12\int X\times X'$ をそれぞれ計算して足す。prf-mam-closed と同じ展開を、$L$ が変わる場合に行う。
段 1($Q\times Q'$ の展開)。$Q'=P'+\varepsilon\bigl(L'\vec T+L\vec T\,'\bigr)$ である。prop-mam-cross (1)(2) と、$\vec T\times P'=0$、$\vec T\times\vec T=0$、$\vec T\times\vec T\,'=\theta'$(prf-mam-closed の段 1)、$\varepsilon^2=1$ を使うと
$$ Q\times Q'=P\times P'+\varepsilon\bigl(L'\,P\times\vec T+L\,P\times\vec T\,'\bigr)+L^2\theta' $$
である。一方、prop-mam-cross (3) と $P'\times\vec T=0$ から
$$ \bigl(L\,P\times\vec T\bigr)'=L'\,P\times\vec T+L\,P'\times\vec T+L\,P\times\vec T\,'=L'\,P\times\vec T+L\,P\times\vec T\,' $$
なので、$Q\times Q'=P\times P'+\varepsilon\bigl(L\,P\times\vec T\bigr)'+L^2\theta'$ である。
段 2(2 本の線分)。点 $A$ から向き $\vec u$(長さ $1$)に長さ $\ell$ だけ進む線分を $X(s)=A+s\vec u$($0\le s\le\ell$)と表すと、$X\times X'=(A+s\vec u)\times\vec u=A\times\vec u$ なので、$\dfrac12\displaystyle\int_0^\ell X\times X'\,ds=\dfrac\ell2\,A\times\vec u$ である。$P(t_2)$ から $Q(t_2)$ への線分は $A=P(t_2)$、$\vec u=\varepsilon\vec T(t_2)$、$\ell=L(t_2)$ なので $\dfrac\varepsilon2L(t_2)\,P(t_2)\times\vec T(t_2)$ を与える。$Q(t_1)$ から $P(t_1)$ への線分は $A=Q(t_1)$、$\vec u=-\varepsilon\vec T(t_1)$、$\ell=L(t_1)$ で、$Q(t_1)\times\vec T(t_1)=P(t_1)\times\vec T(t_1)$($\vec T\times\vec T=0$)なので $-\dfrac\varepsilon2L(t_1)\,P(t_1)\times\vec T(t_1)$ を与える。
段 3(2 本の曲線)。弧 $P$ の部分は $\dfrac12\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}P\times P'\,dt$ である。$Q$ を逆にたどる部分は、積分の向きが逆なので符号が変わり、段 1 により
$$ -\frac12\int_{t_1}^{t_2}Q\times Q'\,dt=-\frac12\int_{t_1}^{t_2}P\times P'\,dt-\frac\varepsilon2\Bigl[L\,P\times\vec T\Bigr]_{t_1}^{t_2}-\frac12\int_{t_1}^{t_2}L^2\theta'\,dt $$
である。
段 4(足す)。4 つを足すと、$\int P\times P'$ の項は打ち消し合い、$\dfrac\varepsilon2\Bigl[L\,P\times\vec T\Bigr]_{t_1}^{t_2}$ は段 2 の 2 つの線分の値の和とちょうど打ち消し合う。残るのは $-\dfrac12\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}L^2\theta'\,dt$ で、(1) が成り立つ。
段 5(面積)。$\Gamma$ が自分と交わらなければ、囲む部分の面積は $\lvert S[\Gamma]\rvert$ である(rem-mam-green)。$\theta'\ge0$ なので $\displaystyle\int L^2\theta'\,dt\ge0$ で、$\lvert S[\Gamma]\rvert=\dfrac12\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}L^2\theta'\,dt$ である。$\theta$ が狭義単調増加なら、置換積分 $\theta=\theta(t)$ により $\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}L(t)^2\theta'(t)\,dt=\int_{\theta_1}^{\theta_2}L(\theta)^2\,d\theta$ である。$\theta_2-\theta_1\le2\pi$ のとき、接線の束は、極座標で $0\le r\le L(\theta)$、$\theta_1\le\theta\le\theta_2$ と表される図形($\varepsilon=-1$ なら全体を原点の周りに $\pi$ だけ回した図形)なので、その面積は 極座標で表された図形の面積 の公式により $\dfrac12\displaystyle\int_{\theta_1}^{\theta_2}L(\theta)^2\,d\theta$ である。$\square$

$S[\Gamma]\le0$、つまり $\Gamma$ が時計回りになるのは、$\varepsilon=\pm1$ のどちらでも、弧を進む人から見て掃く部分が右側にあるからである。thm-mam-sweep は、接線が回る角が 1 回転($2\pi$)以内なら「接線の線分が掃く面積は、線分をすべて 1 点に集めた接線の束の面積に等しい」と言い換えられる(1 回転を超えると、束の中で同じ向きの線分が重なるので、束の面積は掃く面積より小さくなる)。線分は曲線に沿って平行移動しても、掃く面積の計算には向きと長さしか効かない。thm-mam-closed で $C_L$ と $C$ の間の部分が $\pi L^2$ だったのは、長さ $L$ の線分が 1 回転すると、接線の束が半径 $L$ の円板になるからである。

半径 1 の円に巻いた糸をほどくとき、糸が掃く部分(色)と、糸の端が描く円の伸開線 半径 1 の円に巻いた糸をほどくとき、糸が掃く部分(色)と、糸の端が描く円の伸開線
同じ糸をすべて始点が原点にくるように平行移動した接線の束で、Archimedes の螺旋が囲む部分になる 同じ糸をすべて始点が原点にくるように平行移動した接線の束で、Archimedes の螺旋が囲む部分になる

円の伸開線の糸が掃く面積

半径 $a$ の円 $P(t)=(a\cos t,a\sin t)$ に巻いた糸を、点 $(a,0)$ の端からほどいていく。接点が $P(t)$ まで進んだとき、ほどけた糸の長さは弧の長さ $at$ で、糸は接点から逆向きの接線に沿って張られる。糸の端は
$$ Q(t)=P(t)-at\,\vec T(t)=\bigl(a(\cos t+t\sin t),\ a(\sin t-t\cos t)\bigr) $$
で、これが円の伸開線である(円の伸開線)。def-mam-sweep で $\varepsilon=-1$、$L(t)=at$、$\theta(t)=t+\dfrac\pi2$、$\theta'=1$ とした場合なので、接点が $0$ から $T$ まで進む間に糸が掃く面積は、thm-mam-sweep により
$$ \frac12\int_0^Ta^2t^2\,dt=\frac{a^2T^3}6 $$
である($0< T<2\pi$ で $\Gamma$ が自分と交わらないことは、図 4 と数値で確かめた。$T=2\pi$ では弧が出発点 $(a,0)$ にもどり $\Gamma$ はその 1 点で自分と接するが、$T\to2\pi$ の極限として同じ式が成り立つ)。$a=1$、$T=\pi$ なら $\dfrac{\pi^3}6=5.1677\ldots$ で、$\Gamma$ を多角形で近似して靴ひも公式で求めた面積 $5.1677\ldots$ と一致する。$T=2\pi$ なら $\dfrac{4\pi^3a^2}3$ である。
接線の束は Archimedes の螺旋が囲む図形になる(図 5)。

接線の束と Archimedes の螺旋を開く

接線の束は、原点から向き $t+\dfrac{3\pi}2$ に長さ $at$ の線分の集まりで、Archimedes の螺旋 $r=a\varphi$ の $0\le\varphi\le T$ の部分と、原点とその終わりの点を結ぶ線分で囲まれた図形を、原点の周りに $\dfrac{3\pi}2$ だけ回したものである。$T=2\pi$ のとき、その面積 $\dfrac{4\pi^3a^2}3$ は半径 $2\pi a$ の円の面積の $\dfrac13$ で、Archimedesの螺旋 の主定理と同じ値である。

トラクトリクスの下の面積

トラクトリクス は、点 $(0,a)$ から出発し、各点から進む向きに引いた接線の線分が、長さ $a$ でちょうど $x$ 軸に届く曲線である。接線の角 $\theta$ は、出発点での $-\dfrac\pi2$(真下向き)から $0$(水平)に向かって増えていき、$\theta=0$ には届かない。$\theta$ が $-\dfrac\pi2$ から $\theta_1$($<0$)まで変わる部分では、$L=a$ で一定なので、thm-mam-sweep により線分が掃く面積は
$$ \frac12\int_{-\pi/2}^{\theta_1}a^2\,d\theta=\frac{a^2}2\Bigl(\theta_1+\frac\pi2\Bigr) $$
である。$\theta_1$ を $0$ に近づけると $\dfrac{\pi a^2}4$ に近づく。
この極限は、曲線と $x$ 軸の間の右へ限りなく続く部分の面積 $\dfrac{\pi a^2}4$ で、トラクトリクス の定理「トラクトリクスの下の面積」と一致する。接線の束は半径 $a$ の四分円である。

極限が曲線の下の面積になることを開く

掃く部分は、$y$ 軸、曲線、最後の線分、$x$ 軸で囲まれる。これは曲線の下の部分($x$ 座標が $0$ から接点の $x$ 座標まで)に、最後の線分の下の細い三角形を足したものである。接点の高さを $y_1$ とすると、三角形の面積は $\dfrac12y_1\sqrt{a^2-y_1^2}$ で、$\theta_1\to0$ のとき $y_1=-a\sin\theta_1\to0$ なので $0$ に近づく。したがって、曲線の下の部分の面積も $\dfrac{\pi a^2}4$ に近づく。$a=1$、$\theta_1=-0.001$ では、$\dfrac12(\theta_1+\tfrac\pi2)=0.78490\ldots$ で、$\Gamma$ を多角形で近似して求めた面積と一致する。

トラクトリクスの接線の線分(長さ a)が掃く部分は、接線の束が半径 a の四分円になるので面積がπa²/4 になる トラクトリクスの接線の線分(長さ a)が掃く部分は、接線の束が半径 a の四分円になるので面積がπa²/4 になる

例と反例

thm-mam-closed の仮定を 1 つずつ外すと、次のように崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
曲線が凸(条件 (ii) の $\theta$ が単調、条件 (iii))凹みのある曲線 $r=1+0.3\cos2\varphi+0.1\sin3\varphi$、$L=1$線分が掃く部分と、$C$ と $C_L$ の間の部分が一致し、面積が $\pi L^2$
線分の長さ $L$ が一定半径 $2$ の円で $L=1+\frac12\cos\theta$間の部分の面積が $\pi\cdot1^2$(平均の長さ $1$ でも)
曲線が滑らか(条件 (i) の $P'$ が連続)横 $3$、縦 $2$ の長方形、$L=1$線分が掃く面積が $\pi L^2$、$C_L$ が閉曲線
反例:凹みのある曲線

極方程式 $r=1+0.3\cos2\varphi+0.1\sin3\varphi$($0\le\varphi\le2\pi$)の曲線 $C$ は自分と交わらない閉曲線だが、上側に凹みがある(図 7)。凹みの部分では接線が右に回るので、$\theta$ は単調に増加しない。それでも 1 周での $\theta$ の増加はちょうど $2\pi$ なので、prf-mam-closed の段 1〜段 4 の計算はそのまま通り(単調性は使っていない)、$L=1$ のとき $S[C_L]-S[C]=\pi$ である(数値でも $3.14159$)。
しかし、この $\pi$ はもう「線分が掃く面積」ではない。曲線の上の点を 4000 個とって数値で求めると、次のようになる。

  • 凹みの部分の線分は $C$ の内側に入り込み、線分が掃く部分のうち $0.307$ ほどは $C$ の内側にある。
  • $C$ の一部が $C_L$ の外にはみ出し、「$C_L$ の内側で $C$ の外側の部分」の面積は $3.338$ で、$\pi$ と一致しない。
  • 線分が掃く部分の面積は $3.732$ で、となりどうしの線分がつくる細い四角形の面積をそのまま足すと $3.930$ になる。差の $0.198$ は、線分が 2 回以上通った部分である。
    thm-mam-closed (2) の仮定($C$ が $C_L$ の内側にある)が崩れ、面積 $\pi$ の意味が失われる。

凹みのある曲線では、凹みの部分の接線の線分が曲線の内側に入り込み、線分どうしが重なって色が濃くなる 凹みのある曲線では、凹みの部分の接線の線分が曲線の内側に入り込み、線分どうしが重なって色が濃くなる

反例:長さが変わる線分

半径 $2$ の円で、接線の角が $\theta$ の点での線分の長さを $L(\theta)=1+\dfrac12\cos\theta$ とする(長さは $\dfrac12$ から $\dfrac32$ まで変わり、平均は $1$)。円は閉じているので、prf-mam-sweep の段 3 の $\Bigl[L\,P\times\vec T\Bigr]$ の項は 1 周で打ち消し合い、prf-mam-closed と同じ計算で
$$ S[C_L]-S[C]=\frac12\int_0^{2\pi}\Bigl(1+\frac12\cos\theta\Bigr)^2d\theta=\frac12\Bigl(2\pi+0+\frac14\cdot\pi\Bigr)=\frac{9\pi}8 $$
となる($\int_0^{2\pi}\cos\theta\,d\theta=0$、$\int_0^{2\pi}\cos^2\theta\,d\theta=\pi$)。$Q$ の原点からの距離の 2 乗は三平方の定理により $4+L^2>4$ なので $Q$ はいつも円の外にあり、$C_L$ は自分と交わらずに円を内側に含む(自分と交わらないことは数値で確かめた)。よって間の部分の面積は $\dfrac{9\pi}8=3.534\ldots$ で、$\pi\cdot1^2$ ではない。長さが変わるときは、平均の長さではなく、長さの 2 乗を角について平均したものが効く。

反例:角のある曲線

横 $3$、縦 $2$ の長方形の周を反時計回りにたどり、$L=1$ の進む向きの接線の線分を引く。辺の上では接線の向きが変わらないので、線分は辺の延長の上をすべるだけで、何も掃かない(図 8)。線分が掃く部分の面積は $0$ である。角では $P'$ が連続でなく、線分の向きが $90^\circ$ だけ跳ぶので、線分の端 $Q$ も跳び、$C_L$ は閉曲線にならない。
角で線分を $90^\circ$ だけ回すと、半径 $L$ の円の 4 分の 1(扇形)を掃く。4 つの角で扇形を足すと、ちょうど $4\cdot\dfrac{\pi L^2}4=\pi L^2$ になる。ex-mam-ellipse (2) の角を丸めた長方形で、角の半径を $0$ に近づけたときの姿がこれである。thm-mam-sweep の言葉では、面積はすべて接線が回る角の部分から生まれ、角のある曲線では回る部分が「点」に集まっている。

長方形の角では、辺の部分の線分は辺の延長に重なって何も掃かず、角で線分を 90 度回したときに掃く扇形(破線)を足すと面積が合う 長方形の角では、辺の部分の線分は辺の延長に重なって何も掃かず、角で線分を 90 度回したときに掃く扇形(破線)を足すと面積が合う

大学数学で見る:面積の要素

線分の座標で面積を測る(紹介)

thm-mam-sweep は、平面の点を「曲線の上の位置 $t$」と「線分の上の位置 $\lambda$」の 2 つの数で表す座標 $(t,\lambda)\mapsto P(t)+\lambda\,\vec T(t)$($0\le\lambda\le L(t)$)で見ると分かりやすい。この座標での面積の要素は $\lambda\theta'\,dt\,d\lambda$ で、曲線の位置 $P$ によらない。これが、接線が回る角が 1 回転以内なら「線分を 1 点に集めても面積が変わらない」理由である。

面積の要素の計算を開く

$t$ を $dt$、$\lambda$ を $d\lambda$ だけ動かすと、点は $P'+\lambda\vec T\,'$ の向きに $dt$ 倍、$\vec T$ の向きに $d\lambda$ 倍動くので、できる小さな平行四辺形の面積は外積の大きさ $\bigl\lvert(P'+\lambda\vec T\,')\times\vec T\bigr\rvert\,dt\,d\lambda=\lambda\theta'\,dt\,d\lambda$ である($P'\times\vec T=0$、$\vec T\,'\times\vec T=-\theta'$)。これを足し合わせると

$$\int_{t_1}^{t_2}\int_0^{L(t)}\lambda\theta'\,d\lambda\,dt=\frac12\int_{t_1}^{t_2}L(t)^2\theta'(t)\,dt$$

となり、thm-mam-sweep の値と一致する。この計算は大学で学ぶ重積分の変数変換(Jacobian)で正当化される。この記事では証明しない。

thm-mam-closed と thm-mam-sweep の証明で使った $\dfrac12\int X\times X'\,dt$ が囲む面積になることは、一般には Green の定理(Greenの定理)による。この記事では、凸な図形の場合を 媒介変数表示の曲線が囲む面積 の定理で証明済みのものとして使い、一般の場合は rem-mam-green として証明せずに使った。

さらに先へ

  • 接線の線分の代わりに、閉曲線の上を両端がすべる一定の長さの弦を考えると、弦の上の点が描く曲線と元の曲線の間の面積も形によらない。これが Holditchの定理 で、証明は prf-mam-closed と同じ外積の展開を使う。
  • 接線が回る角が 1 回転以内のとき、接線の束の面積 $\dfrac12\int L^2\,d\theta$ は、極座標で表された図形の面積 の公式そのものである。ex-mam-involute では Archimedesの螺旋 の面積とつながった。
  • 断面積から体積を求める 擬柱体の公式 は、「形が変わっても面積・体積が簡単な式で決まる」もう 1 つの例である。

関連項目

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