Plückerの公式(Plücker formulas)とは、標数 $0$ の代数閉体上の射影平面曲線 $C$ の次数 $d$、双対曲線 $C^*$ の次数 $d^*$(類)、$C$ と $C^*$ の特異点の個数を結ぶ等式の総称である。$C$ の特異点が $\delta$ 個の結節点と $\kappa$ 個の通常尖点だけなら $d^*=d(d-1)-2\delta-3\kappa$ が成り立ち(一般の点に関する極曲線と $C$ の交点を数えて得られる)、非特異な $C$ の変曲点は重複を込めて $3d(d-2)$ 個ある。$C$ と $C^*$ がともに結節点と通常尖点しかもたないとき、双対の公式と種数の式から、$C^*$ の尖点の個数 $f=3d(d-2)-6\delta-8\kappa$ なども従い、この条件をみたす非特異 4 次曲線では 28 本の複接線の数になる。
Plückerの公式(Plücker formulas)は、射影平面の曲線 $C$ の次数 $d$、双対曲線 $C^*$ の次数 $d^*$($C$ の類という)、$C$ と $C^*$ の特異点の個数のあいだに成り立つ一群の等式である。代表は類の公式
$$
d^*=d(d-1)-2\delta-3\kappa
$$
で、$C$ の特異点が結節点と通常尖点だけのときに成り立つ。$\delta$ は結節点、$\kappa$ は通常尖点の個数である。$d^*$ は一般の点 $Q$ から $C$ に引ける接線の本数でもあるので、この公式は「接線の本数を、$Q$ に関する極曲線と $C$ の交点を数えて求める」ことで得られる。
双対曲線の結節点と尖点は、典型的には $C$ の 2 点で接する直線(複接線)と変曲点での接線である。$C$ と $C^*$ がともに結節点と通常尖点しか特異点をもたないとき、$C$ の側と $C^*$ の側の量は 4 つの公式で結ばれる。たとえば非特異な 4 次曲線がこの条件をみたせば、双対曲線は 28 個の結節点(28 本の複接線)をもつ(ex-plf-quartic)。この記事では、類の公式と非特異曲線の変曲点の個数の公式を証明し、そこから 4 つの公式を導く。
この記事を通して、$k$ を標数 $0$ の代数閉体とし、平面曲線とは既約な斉次多項式 $F\in k[x,y,z]$ の定める $C=V(F)\subset\mathbb{P}^2$ をいう。$d:=\deg F\ge2$ とし(直線は除く)、$C_{\mathrm{ns}}$ を非特異点の集合、$T_P$ を $P\in C_{\mathrm{ns}}$ での接線とする。双対曲線 $C^*\subset(\mathbb{P}^2)^*$ と Gauss 写像 $\gamma\colon C_{\mathrm{ns}}\to C^*$、$P\mapsto T_P$ は 双対曲線 の定義「Gauss 写像と双対曲線」のとおりとし、$d^*:=\deg C^*$ を $C$ の類という。標数 $0$ なので $(C^*)^*=C$ であり、$C_{\mathrm{ns}}$ の空でない開集合 $U$ があって、$P\in U$ で $\gamma(P)$ は $C^*$ の非特異点、$\gamma_{C^*}(\gamma(P))=P$ である(双対曲線 の定理「双対性」)。
交点数 $I(P,C\cap G)$ は 交点数(平面曲線) の定義と性質 (i)〜(vii) に従う。点 $P$ をアフィン座標の原点にとり、$C$ の局所的な方程式を $f=f_1+f_2+\cdots$($f_i$ は $i$ 次の斉次成分)と書く。
$C$ が直線でないので $T_P$ は $C$ の成分でなく、$m_P$ は有限である。接線を $y=0$ にとると、$P$ が尖点であることは $f_2=cy^2$($c\ne0$)かつ $f_3(1,0)\ne0$ と同値である($f(x,0)$ の位数が $3$)。
非特異点の近くでは、曲線を形式的冪級数で表して交点数を計算する。
$P\in C_{\mathrm{ns}}$ を原点、$T_P$ を $y=0$ とする。このとき $f(x,\varphi(x))=0$ となる $\varphi\in xk[\![x]\!]$ がただ 1 つあり、$P$ を通る任意の曲線 $G$ について $I(P,C\cap G)=\operatorname{ord}_xG(x,\varphi(x))$ である。とくに $m_P=\operatorname{ord}_x\varphi$ である。
要点:局所環 $\mathcal{O}_P(C)$ は $x$ を素元とする離散付値環で、その完備化が $k[\![x]\!]$ である。
$f_y(0,0)\ne0$ なので、形式的な陰関数定理(係数を次数の低い順に決める)により $f(x,\varphi(x))=0$ となる $\varphi\in xk[\![x]\!]$ がただ 1 つある。$\mathcal{O}:=\mathcal{O}_P(C)$ は離散付値環で、接線でない直線 $x=0$ の 1 次式 $x$ はその素元である(Ful08 §3.2 定理 1)。$y\mapsto\varphi(x)$ による準同型 $k[x,y]_{(x,y)}/(f)\to k[\![x]\!]$ は $x$ を $x$ に送る局所準同型で、$\mathcal{O}$ の元 $g=ux^r$($u$ は単元)を位数 $r$ の冪級数に送るので、付値を保つ。$P$ は $C$ の単純点なので $I(P,C\cap G)$ は $\mathcal{O}$ での $G$ の位数に等しい(Ful08 §3.3 の性質 (8))。最後の主張は $G=y$ の場合である。$\square$
$F$ の 2 階偏微分の行列式 $H:=\det(\partial^2F/\partial x_i\partial x_j)_{i,j}$($x_1,x_2,x_3=x,y,z$)を $F$ の Hesse 行列式(Hesse行列 の行列式)、$V(H)$ を Hesse 曲線という。$H$ は $0$ か $3(d-2)$ 次の斉次式である。射影変換 $T$ について $F\circ T$ の Hesse 行列式は $(\det T)^2\,H\circ T$ なので、$V(H)$ は座標のとり方によらない。
$C\cap\{z\ne0\}$ の上で、$f(x,y):=F(x,y,1)$ について
$$
H(x,y,1)=(d-1)^2\det\begin{pmatrix}f_{xx}&f_{xy}&f_x\\f_{xy}&f_{yy}&f_y\\f_x&f_y&0\end{pmatrix}
$$
が成り立つ(両辺は $f$ を法として等しい)。
要点:Euler の等式 $xF_x+yF_y+zF_z=dF$ を $F$ と $F_x,F_y,F_z$($d-1$ 次)に使って、行列の第 3 行と第 3 列を消す。
Hesse 行列の第 3 列を「$x$ 倍の第 1 列 $+$ $y$ 倍の第 2 列 $+$ $z$ 倍の第 3 列」に取り替えると、$F_i$ に Euler の等式を使って第 3 列は $(d-1)(F_x,F_y,F_z)^{\mathsf T}$ になり、行列式は $z$ 倍になる。続いて第 3 行を同様に取り替えると、第 1・2 成分は $(d-1)F_x,(d-1)F_y$、第 3 成分は $(d-1)(xF_x+yF_y+zF_z)=d(d-1)F$ になり、行列式はさらに $z$ 倍になる。$F=0$ の上では第 3 行・第 3 列の $(d-1)$ を括り出して $z^2H=(d-1)^2\det\begin{pmatrix}F_{xx}&F_{xy}&F_x\\F_{xy}&F_{yy}&F_y\\F_x&F_y&0\end{pmatrix}$ となる。$z=1$ とおくと $F_{xx}(x,y,1)=f_{xx}$ などである。$\square$
$P\in C_{\mathrm{ns}}$ について $I(P,C\cap V(H))=m_P-2$ である。とくに $P$ が変曲点であることと $P\in V(H)$ は同値であり、$C\not\subset V(H)$ である。
射影変換で $P=(0:0:1)$、$T_P$ を $y=0$ とし、lem-plf-branch の $\varphi$ をとる。$f_x(0,0)=0$、$f_y(0,0)\ne0$ である。$f(x,\varphi(x))=0$ を $x$ で 2 回微分すると
$$
f_x+f_y\varphi'=0,\qquad f_{xx}+2f_{xy}\varphi'+f_{yy}\varphi'^2+f_y\varphi''=0
$$
(偏微分は $(x,\varphi(x))$ で評価する)である。第 2 式に $f_y^2$ を掛けて $f_y\varphi'=-f_x$ を代入すると $f_{xx}f_y^2-2f_{xy}f_xf_y+f_{yy}f_x^2=-f_y^3\varphi''$ となり、lem-plf-euler の行列式を展開すると
$$
H(x,\varphi(x),1)=-(d-1)^2\bigl(f_{xx}f_y^2-2f_{xy}f_xf_y+f_{yy}f_x^2\bigr)=(d-1)^2f_y^3\varphi''
$$
である。$f_y(x,\varphi(x))$ は $k[\![x]\!]$ の単元、$d-1\ne0$ であり、標数 $0$ なので $\operatorname{ord}\varphi''=\operatorname{ord}\varphi-2=m_P-2$ である。lem-plf-branch により $I(P,C\cap V(H))=m_P-2$ である。$m_P$ は有限なので $H$ は $C$ の上で恒等的に $0$ ではなく、$C\not\subset V(H)$ である。$\square$
$C$ を次数 $d\ge2$ の非特異な平面曲線とする。このとき
$$
\sum_{P\in C}(m_P-2)=3d(d-2)
$$
である。すなわち、変曲点を $m_P-2$ 回ずつ数えると、ちょうど $3d(d-2)$ 個ある。
$d=2$ では、直線と $C$ の交点数の和は 2 なので(Bézoutの定理)すべての $P$ で $m_P=2$ であり、両辺は $0$ である。$d\ge3$ なら、prop-plf-hessian により $C$ と $V(H)$ は共通成分をもたない。Bézoutの定理 により $\sum_PI(P,C\cap V(H))=d\cdot3(d-2)$ であり、prop-plf-hessian で各項が $m_P-2$ になる。$\square$
$C$ が特異点をもっても、変曲点は $C\cap V(H)$ の非特異点なので有限個である(prop-plf-hessian と Bézoutの定理)。非特異な 3 次曲線では、接線と $C$ の交点数の和が $3$ なので $m_P\le3$ であり、thm-plf-flexes から変曲点はちょうど 9 個で、すべて通常の変曲点である(平面3次曲線)。
点 $Q=(q_1:q_2:q_3)\in\mathbb{P}^2$ について、$D_QF:=q_1F_x+q_2F_y+q_3F_z$ とおく。$D_QF\ne0$ のとき、$d-1$ 次の曲線 $V(D_QF)$ を $Q$ に関する $C$ の極曲線(polar curve)という。$D_QF=0$ となる $Q$ は $\mathbb{P}^2$ の真の線形部分空間をなす($F_x,F_y,F_z$ のどれかは $0$ でない)。$P\in C$ について、$D_QF(P)=0$ であることは、$P$ が特異点であるか、$P\in C_{\mathrm{ns}}$ で $Q\in T_P$ であることと同値である($T_P$ の方程式は $F_x(P)x+F_y(P)y+F_z(P)z=0$)。
$Q\notin C$ とし、$D_QF\ne0$ とする。
$P=(0:0:1)$ とし、$f=F(x,y,1)$ とおく。Euler の等式から $F_z(x,y,1)=df-xf_x-yf_y$ なので、極曲線の局所的な方程式は
$$
g:=af_x+bf_y+c\,(df-xf_x-yf_y)\qquad(Q=(a:b:c))
$$
である。$Q\ne P$ なので $(a,b)\ne(0,0)$ である。
1:$T_P$ を $y=0$、$Q=(1:0:0)$ にとる($Q\in T_P$、$Q\ne P$)。$g=f_x$ であり、lem-plf-branch の $\varphi$ について $f_x(x,\varphi)=-f_y(x,\varphi)\varphi'$ の位数は $\operatorname{ord}\varphi'=m_P-1$(標数 $0$)である。
4:$f$ の位数が $m$ なので、$g$ の $m-1$ 次以下の部分は $D_{(a,b)}f_m$ だけである($df-xf_x-yf_y$ の位数は $m$ 以上)。仮定から極曲線は $P$ で重複度 $m-1$、接錐 $D_{(a,b)}f_m$ をもち、$C$ と共通の接線をもたないので、交点数の性質 (v) により $I=m(m-1)$ である。
2:$f_2=\ell_1\ell_2$ とすると $D_{(a,b)}f_2=\ell_1(a,b)\ell_2+\ell_2(a,b)\ell_1$ である。$Q$ が接線 $\ell_i=0$ にのらないことは $\ell_i(a,b)\ne0$ と同値で、このとき $D_{(a,b)}f_2$ は $\ell_1$ でも $\ell_2$ でも割り切れない。4 の $m=2$ の場合として $I=2$ である。
3:接線を $y=0$ にとると $f_2=c_0y^2$($c_0\ne0$)、$f_3(1,0)\ne0$ で、$D_{(a,b)}f_2=2c_0by$ は $C$ の接線と一致するので、4 は使えない。$Q$ が接線にのらないことは $b\ne0$ と同値で、このとき $g=2c_0by+(2\text{ 次以上の項})$ は $P$ で非特異、接線は $y=0$ である。$g(x,\psi(x))=0$ となる $\psi$ をとると、$g$ の 1 次の部分が $y$ だけなので $\psi\in x^2k[\![x]\!]$ である。極曲線は $P$ で非特異なので、交点数の性質 (iv) と lem-plf-branch と同じ議論(Ful08 §3.3 の性質 (8) は既約でない曲線の単純点でも成り立つ)により
$$
I(P,C\cap V(g))=\operatorname{ord}_xf(x,\psi(x))=\operatorname{ord}_x\bigl(c_0\psi^2+f_3(x,\psi)+(4\text{ 次以上})\bigr)=\operatorname{ord}_x\bigl(f_3(1,0)x^3+\cdots\bigr)=3
$$
である($\psi^2$ と 4 次以上の項は位数 $4$ 以上)。$\square$
次の補題で「一般の点 $Q$」を選ぶ。
空でない開集合の点 $Q\in\mathbb{P}^2$ について次が成り立つ:$Q\notin C$、$D_QF\ne0$ であり、$Q\in T_P$ となる $P\in C_{\mathrm{ns}}$ はちょうど $d^*$ 個で、それらはどれも変曲点でない。さらに $Q$ は特異点での接錐の直線にのらず、接錐が相異なる 1 次式の積になる特異点では lem-plf-polar-local の 4 の条件をみたす。
要点:$Q$ の双対の直線 $Q^*\subset(\mathbb{P}^2)^*$($Q$ を通る直線の全体)が $C^*$ と横断的に $d^*$ 点で交わり、その各点が $C$ のただ 1 つの非特異点の接線であるように $Q$ を選ぶ。
$C$ の正規化 $\nu\colon\tilde C\to C$ をとる(正規化)。$\gamma\circ\nu$ は非特異な射影曲線 $\tilde C$ の有限集合の外で定義された射なので $\tilde C$ 全体の射に延び(Har77 I, 命題 6.8, p. 43)、その像は閉集合で $\gamma(C_{\mathrm{ns}})$ を含むから $C^*$ に等しい。よって $C^*\setminus\gamma(C_{\mathrm{ns}})$ は有限集合で、$C_{\mathrm{ns}}\setminus U$ も有限なので、$S:=\operatorname{Sing}(C^*)\cup(C^*\setminus\gamma(U))$ は有限集合である。
$Q$ を次の外にとる:$C$、$D_QF=0$ となる線形部分空間、$S$ の各点が表す直線、$P\in C_{\mathrm{ns}}\setminus U$ の接線 $T_P$、変曲点での接線(有限個)、特異点での接錐の直線。これは有限個の曲線の外なので空でない開集合である。接錐 $f_m=\prod_i\ell_i$ が相異なる 1 次式の積になる特異点では $D_{(a,b)}f_m\equiv\ell_i(a,b)\prod_{j\ne i}\ell_j\pmod{\ell_i}$ であり、$Q$ が直線 $\ell_i=0$ にのらないことは $\ell_i(a,b)\ne0$ と同値なので、$D_{(a,b)}f_m$ は $0$ でなく、どの $\ell_i$ でも割り切れない。
このとき $Q^*$ は $S$ を通らないので、$Q^*\cap C^*$ の各点 $\xi$ は $\gamma(P)$($P\in U$)の形で、$C^*$ の非特異点である。$\xi$ での $C^*$ の接線は点 $\gamma_{C^*}(\xi)=P\in C$ が表す直線で、$Q\notin C$ だから $Q^*$ と異なり、$Q^*$ と $C^*$ は $\xi$ で横断的に交わる。Bézoutの定理 により $Q^*\cap C^*$ はちょうど $d^*$ 点である。$Q\in T_P$ となる $P\in C_{\mathrm{ns}}$ は $\gamma(P)\in Q^*\cap C^*$ をみたし、$Q$ の選び方から $P\in U$ である。$U$ の上で $\gamma$ は単射($\gamma_{C^*}\circ\gamma=\mathrm{id}$)なので、$P\mapsto\gamma(P)$ はこれらの $P$ と $Q^*\cap C^*$ の全単射であり、個数は $d^*$ である。変曲点の接線を避けたので、これらの $P$ は変曲点でない。$\square$
$C$ を次数 $d\ge2$ の平面曲線とする。$Q$ を lem-plf-general-point のようにとると
$$
d(d-1)=d^*+\sum_{P\in\operatorname{Sing}C}I(P,C\cap V(D_QF))
$$
である。とくに、$C$ の特異点が $\delta$ 個の結節点と $\kappa$ 個の通常尖点だけなら
$$
d^*=d(d-1)-2\delta-3\kappa
$$
であり、$C$ が非特異なら $d^*=d(d-1)$ である。
$C$ は既約で $D_QF$ は $d-1< d$ 次の $0$ でない式なので、$C$ と極曲線は共通成分をもたない。Bézoutの定理 により $\sum_{P}I(P,C\cap V(D_QF))=d(d-1)$ である。和に現れる点は、特異点と、$Q\in T_P$ となる非特異点である。後者は lem-plf-general-point によりちょうど $d^*$ 個の変曲点でない点で、lem-plf-polar-local の 1 により各点の交点数は $m_P-1=1$ である。これで第 1 式を得る。結節点と通常尖点では lem-plf-polar-local の 2・3 により交点数が $2$ と $3$ なので、第 2 式が従う。$\square$
平面曲線 $C$ が Plücker 曲線であるとは、$C$ と $C^*$ の特異点がどちらも結節点と通常尖点だけであることをいう。このとき $C$ の結節点・通常尖点の個数を $\delta,\kappa$、$C^*$ の結節点・通常尖点の個数を $b,f$ と書く。
$C^*$ の 1 点は $C$ の接線である。$C^*$ の結節点は典型的には 2 点で接する直線(複接線、bitangent)、$C^*$ の通常尖点は通常の変曲点での接線である(rem-plf-meaning)。
平面曲線 $C$ の特異点が $\delta$ 個の結節点と $\kappa$ 個の通常尖点だけなら、正規化 $\tilde C$ の種数 $g$ は
$$
g=\frac{(d-1)(d-2)}{2}-\delta-\kappa
$$
である。
$\mathbb{P}^2$ の上の曲線 $C$ について、$g(\tilde C)=p_a(C)-\sum_P\frac12r_P(r_P-1)$ が成り立つ。ここで和は無限に近い点を含むすべての特異点にわたり、$r_P$ はその重複度である(Har77 V, 例 3.9.2, p. 393)。$p_a(C)=\frac{(d-1)(d-2)}{2}$ である(算術種数:$C$ の Hilbert 多項式は $\binom{m+2}{2}-\binom{m-d+2}{2}=dm-\frac{(d-1)(d-2)}{2}+1$)。結節点 $f=\ell_1\ell_2+f_3+\cdots$ は重複度 $2$ で、$\ell_1,\ell_2$ が $x$ に比例しない座標をとると、ブローアップの座標 $y=xv$ で $f=x^2\bigl(\ell_1(1,v)\ell_2(1,v)+x(\cdots)\bigr)$ となり、強変換は例外曲線 $x=0$ と $\ell_1(1,v)\ell_2(1,v)=0$ の相異なる 2 つの単根で交わり、そこで $v$ の 1 次の項をもつので非特異である(もう 1 つの座標には強変換の点が新しく現れない)。通常尖点 $f=cy^2+f_3+\cdots$($f_3(1,0)\ne0$)も重複度 $2$ で、ブローアップの座標 $y=xv$ で $f=x^2\bigl(cv^2+f_3(1,v)x+(x^2\text{ で割り切れる項})\bigr)$ となり、強変換は例外曲線 $x=0$ と 1 点 $v=0$ で交わり、そこで 1 次の項 $f_3(1,0)x$ をもつので非特異である(もう 1 つの座標 $x=yw$ では例外曲線上に強変換の点はない)。したがって各特異点の寄与は $\frac12\cdot2\cdot1=1$ である。$\square$
$C$ を次数 $d\ge2$ の Plücker 曲線、$d^*$ をその類、$g$ を正規化の種数とする。このとき
$$
\begin{aligned}
d^*&=d(d-1)-2\delta-3\kappa, & d&=d^*(d^*-1)-2b-3f,\\
f&=3d(d-2)-6\delta-8\kappa, & \kappa&=3d^*(d^*-2)-6b-8f,
\end{aligned}
$$
$$
g=\frac{(d-1)(d-2)}{2}-\delta-\kappa=\frac{(d^*-1)(d^*-2)}{2}-b-f
$$
が成り立つ。
第 1 式は thm-plf-class である。$C^*$ は直線でない平面曲線で $(C^*)^*=C$(双対曲線 の定理「双対性」)なので、$C^*$ に thm-plf-class を当てると第 2 式を得る。
種数の式:lem-plf-genus を $C$ と $C^*$ に当てる。$\gamma(U)$ は $C^*$ の有限集合の補集合(prf-plf-general-point の第 1 段)なので開集合で、$\gamma\colon U\to\gamma(U)$ と $\gamma_{C^*}\colon\gamma(U)\to U$ は互いに逆の射である。よって $C$ と $C^*$ は双有理同値で、正規化は同型であり、種数は等しい。
第 3 式:$C^*$ の種数の式から $b+f=\frac{(d^*-1)(d^*-2)}{2}-g$、第 2 式から $2b+3f=d^*(d^*-1)-d$ なので、
$$
f=d^*(d^*-1)-d-(d^*-1)(d^*-2)+2g=2d^*-2-d+2g
$$
である。これに第 1 式と $2g=(d-1)(d-2)-2\delta-2\kappa$ を代入すると $f=3d^2-6d-6\delta-8\kappa$ となる。第 4 式は、$C^*$ が Plücker 曲線でその双対が $C$ であることから、第 3 式を $C^*$ に当てたものである。$\square$
$C$ が非特異のとき、lem-plf-branch の座標で $P$ の近くの接線 $Y=\varphi'(x)(X-x)+\varphi(x)$ の係数の組 $(\varphi'(x),\ \varphi(x)-x\varphi'(x))$ は $\gamma$ の局所的な表示である。$P$ が変曲点でなければ $\varphi=c_2x^2+\cdots$($c_2\ne0$)で第 1 成分の位数は $1$、$C^*$ の枝は $\gamma(P)$ で滑らかである。$P$ が通常の変曲点なら $\varphi=c_3x^3+\cdots$ で、組は $(3c_3x^2+\cdots,\ -2c_3x^3+\cdots)$ となり、$C^*$ の枝は $\gamma(P)$ で尖点の形をもつ。2 点 $P\ne P'$ で接する直線では $C^*$ の 2 本の枝が同じ点を通る。このため古典的には、$f$ を変曲点の個数、$b$ を複接線の本数として公式を述べる。$C$ が非特異な Plücker 曲線ならこの読み替えは正確である。実際、このとき $\gamma$ は $C$ 全体で定義された定数でない双有理な射(prf-thm-plf-main)なので $C\to C^*$ は $C^*$ の正規化であり、$C^*$ の点 $\xi$ を通る枝は $T_P=\xi$ となる点 $P$ と一対一に対応し、その枝が特異であることは $P$ が変曲点であることと同値である(上の表示で第 1 成分の位数は $m_P-1$)。結節点は滑らかな枝がちょうど 2 本通る点、通常尖点は枝がただ 1 本の点(尖点(特異点))なので、$b$ は接点がちょうど 2 つの直線の本数、$f$ は変曲点の個数に等しい。この記事では $b,f$ を $C^*$ の特異点の個数として定義したので、公式の証明にはこの読み替えを使わない。
非特異な Plücker 曲線では $\delta=\kappa=0$ なので、$d^*=d(d-1)$、$f=3d(d-2)$(thm-plf-flexes と一致する)、$g=\frac{(d-1)(d-2)}2$ であり、種数の式から
$$
b=\frac{(d^*-1)(d^*-2)}{2}-g-f=\frac12d(d-2)(d-3)(d+3)
$$
である。
$x=t^2-1$、$y=t(t^2-1)$ は $y^2=x^2(x+1)$ をみたし、$t\ne\pm1$ で $C$ の原点以外のアフィンな点への全単射を与え、非特異点の近くで局所座標になる。直線 $ax+by+c=0$ との交わりは $bt^3+at^2-bt+(c-a)=0$ の根で、交点数は根の重複度である。3 重根 $t_0$ をもつのは $b\ne0$ で、$b(t-t_0)^3$ の $t$ の係数を比べて $3t_0^2=-1$ のときであり、$t_0=\pm1/\sqrt{-3}$ の 2 点が変曲点である。無限遠点は $(0:1:0)$ だけで、そこで $y=1$ とおくと $z(1-x^2)=x^3$、接線 $z=0$ との交点数は $3$ なので変曲点である。$\square$
非特異な 4 次曲線では $d^*=12$ で、変曲点を $m_P-2$ 回ずつ数えると $24$ 個ある(thm-plf-flexes)。$C$ が Plücker 曲線なら $f=24$ で、上の式から $b=\frac12\cdot4\cdot2\cdot1\cdot7=28$ である。双対曲線は次数 $12$ で 28 個の結節点と 24 個の尖点をもち、種数の式 $\frac{11\cdot10}{2}-28-24=3$ は $C$ の種数 $3$ と一致する。この 28 が、古典的な「非特異 4 次曲線の 28 本の複接線」の数である。
具体例として、Kleinの4次曲線 $x^3y+y^3z+z^3x=0$ では 24 個の変曲点がどれも通常の変曲点で、28 本の複接線は自己同型群の 56 点の軌道の点での接線として現れ、それぞれ軌道のちょうど 2 点で接する(同記事の命題「変曲点と複接線」)。
各行は 1 つの仮定だけを外したものである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 標数 $0$(thm-plf-class) | 標数 $2$ の非特異な円錐曲線 $xz=y^2$ | $d^*=1$ で、$d(d-1)=2$ と異なる |
| 特異点は結節点と通常尖点だけ(thm-plf-class の第 2 式) | 通常 3 重点をもつ 4 次曲線 $z(x^3+y^3)+x^4+y^4=0$ | $\delta=\kappa=0$ だが $d^*=6$ で、$d(d-1)=12$ と異なる |
| 非特異(thm-plf-flexes) | 尖点 3 次曲線 $y^2z=x^3$ | $\sum(m_P-2)=1$ で、$3d(d-2)=9$ と異なる |
| 変曲点がすべて通常(変曲点の個数を数える場合) | Fermat 4 次曲線 $x^4+y^4+z^4=0$ | 変曲点は 12 個で、$3d(d-2)=24$ と異なる |
要点:1 行目は双対曲線の計算、2 行目は thm-plf-class の第 1 式と lem-plf-polar-local の 4、3・4 行目は直接の計算と prop-plf-hessian による。
1 行目:双対曲線 の反例の表の 2 行目により、$C^*$ は直線である。
2 行目:直線 $y=tx$ との交わりから $x=-(1+t^3)/(1+t^4)$ を得るので、$C$ は $\mathbb{P}^1$ からの射 $t\mapsto\bigl(-(1+t^3):-t(1+t^3):1+t^4\bigr)$($t=\infty$ で $(0:1:-1)$)の像で、既約な集合である。原点での重複度が $3$ と奇数なので、定義式は 2 次式の平方や 1 次式の 4 乗でなく、既約である。原点以外に特異点 $P'$ があれば、原点と $P'$ を結ぶ直線との交点数の和が $3+2>4$ となり、直線が $C$ の成分になって矛盾する(Bézoutの定理 の系「共有点の個数と重複度」)。原点の接錐 $x^3+y^3$ は相異なる 3 つの 1 次式の積なので、lem-plf-polar-local の 4 により一般の $Q$ で交点数は $3\cdot2=6$ であり、thm-plf-class の第 1 式から $d^*=12-6=6$ である。
3 行目:$t\mapsto(t^2:t^3:1)$ は $t\ne0$ で非特異なアフィンの点の局所座標を与え、直線 $ax+by+c=0$ との交わりは $bt^3+at^2+c=0$ の根である。$t_0\ne0$ が 3 重根なら $t$ の係数 $3bt_0^2$ が $0$ で $b=0$ となるが、このとき次数は $2$ 以下で 3 重根はない。無限遠点 $(0:1:0)$ では $y=1$ として $z=x^3$、接線 $z=0$ との交点数は $3$ である。よって変曲点は 1 個で $m_P=3$ である。
4 行目:$C$ は非特異で、$H=12^3x^2y^2z^2$ である。$C$ の点で $xyz=0$ となるのは、$x=0$、$y^4+z^4=0$ の 4 点と、$y=0$、$z=0$ の同様の 4 点ずつ、計 12 点である(2 つの座標が同時に $0$ の点は $C$ にない)。$x=0$ の点 $P$ では $y,z\ne0$ なので、交点数の性質 (vi)・(ii) により $I(P,C\cap V(H))=2I(P,C\cap V(x))=2$ である(直線 $x=0$ は $C$ と相異なる 4 点で交わるので各点で交点数 $1$)。prop-plf-hessian により $m_P=4$ で、変曲点は 12 個、$m_P-2$ 回ずつ数えると $24$ である。
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