Tverbergの定理(Tverberg's theorem)とは、整数 $d\ge1$、$r\ge2$ について、$\mathbb{R}^d$ の $(r-1)(d+1)+1$ 個以上の点は、互いに交わらない $r$ 組に分けて、すべての組の凸包が共通の点をもつようにできる、という凸幾何の定理である。$r=2$ の場合が Radon の定理であり、個数 $(r-1)(d+1)+1$ は減らせない。Sarkaria の証明は、各点を和が $0$ の $r$ 本のベクトルとのテンソル積で $\mathbb{R}^{(r-1)(d+1)}$ に持ち上げ、Bárány の色つき Carathéodory の定理に帰着させる。単体からの連続写像に替えた位相的 Tverberg 予想は、$r$ が素数の冪なら成り立ち、そうでなければ一般には成り立たない。
前提知識: 凸集合, 凸包, Radonの定理(凸幾何), Carathéodoryの定理(凸幾何)
正六角形の 6 頂点 $P_1,\dots,P_6$(反時計回り)と中心 $O$ の 7 点をとる。これを $\{P_1,P_4\}$、$\{P_2,P_5\}$、$\{P_3,P_6,O\}$ の 3 組に分けると、3 本の対角線(の凸包)が $O$ で交わる。$\{O\}$、$\{P_1,P_3,P_5\}$、$\{P_2,P_4,P_6\}$ と分けても、1 点と 2 つの三角形が $O$ を共有する。平面のどの 7 点も、このように 凸包が 1 点を共有する 3 組 に分けられる。一般に、$\mathbb{R}^d$ の $(r-1)(d+1)+1$ 個の点は、凸包が共通の点をもつ $r$ 組に分けられる。これが Tverberg の定理 である。$r=2$ の場合が Radonの定理(凸幾何)($d+2$ 個の点は凸包が交わる 2 組に分けられる)である。
Radon の定理はアフィン従属の係数を符号で分けるだけで示せたが、$r\ge3$ では「符号」の代わりになるものが要る。この記事では、K. S. Sarkaria による証明を述べる。各点を $r$ 通りの向きのベクトルとの「テンソル積」で $\mathbb{R}^{(r-1)(d+1)}$ に持ち上げると、Tverberg の分け方を探す問題が、Carathéodoryの定理(凸幾何) の色つきの形(Bárány の定理)にそのまま帰着する。あわせて、点の個数が減らせないこと、中心点への応用、連続写像に置き換えた位相的 Tverberg 予想の現状を述べる。
以下 $d\ge1$、$r\ge2$ は整数とし、
$$
N:=(r-1)(d+1)
$$
とおく。$\mathbb{R}^d$ は $d$ 次元 Euclid空間 で、$e_1,\dots,e_d$ は標準基底、$a\cdot x$ は内積である。点 $x_1,\dots,x_m$ の凸結合 $\sum_i\lambda_ix_i$($\lambda_i\ge0$、$\sum_i\lambda_i=1$)の全体が凸包 $\operatorname{conv}\{x_1,\dots,x_m\}$ である(凸集合 の定理「凸包と凸結合」)。Radonの定理(凸幾何) と同じく、点の列には同じ点が重複して現れてもよいとし、添字の集合 $I$ について $x_I:=\{x_i\mid i\in I\}$ と書く。
点の列 $x_1,\dots,x_m\in\mathbb{R}^d$ について、添字の集合 $\{1,\dots,m\}$ を互いに交わらない空でない $r$ 個の部分 $I_1,\dots,I_r$(合わせて全体)に分けたもので
$$
\operatorname{conv}x_{I_1}\cap\operatorname{conv}x_{I_2}\cap\cdots\cap\operatorname{conv}x_{I_r}\ne\emptyset
$$
となるものを、$r$ 組の Tverberg 分割(Tverberg partition)という。この共通部分の点を Tverberg 点 という。
部分の並べ方を替えたものは同じ分割とみなす。$r=2$ の Tverberg 分割は、Radonの定理(凸幾何) の Radon 分割そのものである。また、ある点が $r$ 回以上重複して現れれば、その $r$ 個を 1 つずつ別の部分に入れ、残りをどこかの部分に足すと、その点を Tverberg 点とする Tverberg 分割になる。
$m\ge N+1=(r-1)(d+1)+1$ とし、$x_1,\dots,x_m\in\mathbb{R}^d$ とする(重複があってもよい)。このとき $x_1,\dots,x_m$ は $r$ 組の Tverberg 分割をもつ。
$m>N+1$ の場合は $m=N+1$ の場合に帰着する。最初の $N+1$ 点の Tverberg 分割 $I_1,\dots,I_r$ をとり、残りの添字を $I_1$ に足せばよい。$\operatorname{conv}x_{I_1}$ は大きくなるだけなので、共通部分の点は Tverberg 点のままである。証明は次の節の prf-tv-main で与える。
数直線($d=1$)では $N+1=2r-1$ であり、定理は中央値の言い換えになる。
実数 $y_1\le y_2\le\cdots\le y_{2r-1}$ について、$r-1$ 個の組 $\{y_k,y_{2r-k}\}$($k=1,\dots,r-1$)と 1 点の組 $\{y_r\}$ は、中央値 $y_r$ を Tverberg 点とする $r$ 組の Tverberg 分割である。
$k=1,\dots,r-1$ では $k< r< 2r-k$ なので $y_k\le y_r\le y_{2r-k}$ であり、$y_r\in[y_k,y_{2r-k}]=\operatorname{conv}\{y_k,y_{2r-k}\}$ である。$y_r\in\operatorname{conv}\{y_r\}$ は明らかである。添字 $1,\dots,2r-1$ はちょうど 1 回ずつ現れる。$\square$
$r$ 個のベクトル $v_1,\dots,v_r\in\mathbb{R}^{r-1}$ を
$$
v_j:=e_j\quad(j=1,\dots,r-1),\qquad v_r:=-(e_1+\cdots+e_{r-1})
$$
で定める(ここでの $e_j$ は $\mathbb{R}^{r-1}$ の標準基底)。$r=2$ なら $v_1=1$、$v_2=-1$ で、Radon の定理の「正と負」にあたる。$r=3$ なら平面の 3 つのベクトル $(1,0)$、$(0,1)$、$(-1,-1)$ で、和が $0$ になる 3 つの向きである。
実数 $c_1,\dots,c_r$ について、$c_1v_1+\cdots+c_rv_r=0$ であることと、$c_1=c_2=\cdots=c_r$ であることは同値である。
$\sum_{j=1}^rc_jv_j=\sum_{j=1}^{r-1}c_je_j-c_r\sum_{j=1}^{r-1}e_j=\sum_{j=1}^{r-1}(c_j-c_r)e_j$ であり、$e_1,\dots,e_{r-1}$ は線形独立なので、これが $0$ であることは $c_j=c_r$($j=1,\dots,r-1$)と同値である。$\square$
$v\in\mathbb{R}^{r-1}$ と $w\in\mathbb{R}^{d+1}$ に対し、$(r-1)\times(d+1)$ 実行列
$$
v\otimes w:=v\,w^{\mathsf T}\qquad\bigl((v\otimes w)_{ak}=v_aw_k\bigr)
$$
を考える(テンソル積 $\mathbb{R}^{r-1}\otimes\mathbb{R}^{d+1}$ の元を行列で表したもの)。$(r-1)\times(d+1)$ 実行列の全体 $M$ は、成分を並べることで $\mathbb{R}^{(r-1)(d+1)}=\mathbb{R}^N$ と同一視できる $N$ 次元の実ベクトル空間であり、凸結合・凸包は $\mathbb{R}^N$ のものと一致する。$v\otimes w$ は $v$ についても $w$ についても線形である。
$y_1,\dots,y_r\in\mathbb{R}^{d+1}$ について、$\sum_{j=1}^rv_j\otimes y_j=0$ ならば $y_1=y_2=\cdots=y_r$ である。
行列 $\sum_jv_j\otimes y_j=\sum_jv_jy_j^{\mathsf T}$ の第 $k$ 列は $\sum_j(y_j)_k\,v_j$ である($(y_j)_k$ は $y_j$ の第 $k$ 成分)。これが $0$ なので、lem-tv-vectors により $(y_1)_k=\cdots=(y_r)_k$ である。これがすべての $k=1,\dots,d+1$ で成り立つ。$\square$
各点 $x\in\mathbb{R}^d$ に、座標の後に $1$ を付け加えた $\hat x:=(x,1)\in\mathbb{R}^{d+1}$ を対応させる(Radonの定理(凸幾何) と同じ記号)。$x$ を $j$ 番目の組に入れることを、行列 $v_j\otimes\hat x\in M$ で表す。
$x_1,\dots,x_m\in\mathbb{R}^d$ と、添字の写像 $c\colon\{1,\dots,m\}\to\{1,\dots,r\}$ が与えられたとし、$I_j:=c^{-1}(j)$ とおく。次は同値である。
2 ならば 1:$0=\sum_i\lambda_i\,v_{c(i)}\otimes\hat x_i$($\lambda_i\ge0$、$\sum_i\lambda_i=1$)とする。添字を組ごとにまとめ、$v\otimes w$ の $w$ についての線形性を使うと
$$
0=\sum_{j=1}^r\ \sum_{i\in I_j}\lambda_i\,v_j\otimes\hat x_i=\sum_{j=1}^rv_j\otimes y_j,\qquad y_j:=\sum_{i\in I_j}\lambda_i\hat x_i\in\mathbb{R}^{d+1}
$$
となる($I_j$ が空なら $y_j=0$)。lem-tv-tensor により $y_1=\cdots=y_r$ である。$y_j$ の最後の成分は $\sigma_j:=\sum_{i\in I_j}\lambda_i$ なので $\sigma_1=\cdots=\sigma_r$ であり、その和は $\sum_i\lambda_i=1$ だから、すべて $\dfrac1r$ に等しい。とくに各 $I_j$ は空でない。$y_j$ の最初の $d$ 成分 $\sum_{i\in I_j}\lambda_ix_i$ も $j$ によらないので、$p=r\sum_{i\in I_j}\lambda_ix_i$ は $j$ によらない。係数 $r\lambda_i$($i\in I_j$)は $0$ 以上で和が $1$ なので、$p\in\operatorname{conv}x_{I_j}$ がすべての $j$ で成り立つ。
1 ならば 2:$p$ を共通部分の点とし、各 $j$ について $p=\sum_{i\in I_j}\alpha_ix_i$($\alpha_i\ge0$、$\sum_{i\in I_j}\alpha_i=1$)と書く。各 $i$ はちょうど 1 つの $I_j$ に属するので、係数 $\alpha_i$ は $i$ ごとに 1 つ決まる。このとき $\sum_{i\in I_j}\alpha_i\hat x_i=\hat p$ なので
$$
\sum_{i=1}^m\frac{\alpha_i}r\,v_{c(i)}\otimes\hat x_i=\frac1r\sum_{j=1}^rv_j\otimes\hat p=\frac1r\Bigl(\sum_{j=1}^rv_j\Bigr)\otimes\hat p=0
$$
である($v_1+\cdots+v_r=0$ は lem-tv-vectors で $c_j=1$ とした場合)。係数 $\alpha_i/r$ は $0$ 以上で、和は $r\cdot\frac1r=1$ である。$\square$
rem-tv-reduction により $m=N+1$ としてよい。点を $x_0,x_1,\dots,x_N$ と番号づけ直す。各 $i=0,\dots,N$ について、$M$ の $r$ 個の行列の集合
$$
A_i:=\{\,v_1\otimes\hat x_i,\ v_2\otimes\hat x_i,\ \dots,\ v_r\otimes\hat x_i\,\}
$$
を考える。$\frac1r\sum_jv_j\otimes\hat x_i=\frac1r\bigl(\sum_jv_j\bigr)\otimes\hat x_i=0$ なので、原点は $\operatorname{conv}A_i$ に属する。
$M$ は $N$ 次元であり、集合はちょうど $N+1$ 個ある。Carathéodoryの定理(凸幾何) の定理「色つきのCarathéodoryの定理」($\mathbb{R}^n$ の $n+1$ 個の集合 $S_0,\dots,S_n$ の凸包がすべて点 $x$ を含めば、各 $S_i$ から 1 点ずつ選んでその凸包が $x$ を含むようにできる)を、$n=N$、$S_i=A_i$、$x=0$ として使うと、各 $i$ について $c(i)\in\{1,\dots,r\}$ を選んで、
$$
0\in\operatorname{conv}\bigl\{\,v_{c(0)}\otimes\hat x_0,\ v_{c(1)}\otimes\hat x_1,\ \dots,\ v_{c(N)}\otimes\hat x_N\,\bigr\}
$$
とできる。これは prop-tv-criterion の 2 なので、$I_j:=c^{-1}(j)$ は $r$ 組の Tverberg 分割である。$\square$
証明の要は、色つきの Carathéodory の定理で「各点に 1 つずつ向き $v_{c(i)}$ を選ぶ」ことが、点を $r$ 組に配ることにちょうど対応する点にある。$r=2$ では $A_i=\{\pm\hat x_i\}$ であり、選ばれた符号で点を分けることになる。これは Radonの定理(凸幾何) の証明でアフィン関係の係数を符号で分けたことにあたる。
$u_0:=0$、$u_k:=e_k$($k=1,\dots,d$)を $\mathbb{R}^d$ の標準単体の頂点とする。
$\beta_0(x):=1-(x_1+\cdots+x_d)$、$\beta_k(x):=x_k$($k=1,\dots,d$)とおく。各 $\beta_k$ は 1 次式に定数を足した関数で、$\beta_k(u_l)$ は $l=k$ なら $1$、$l\ne k$ なら $0$ であり、すべての $x$ で $\sum_{k=0}^d\beta_k(x)=1$ である。凸結合 $\sum_i\mu_iy_i$ について $\beta_k\bigl(\sum_i\mu_iy_i\bigr)=\sum_i\mu_i\beta_k(y_i)$ が成り立つ。
$\beta_k$ の 1 次の部分の係数は $0$ か $\pm1$ なので、Cauchy–Schwarz の不等式により $\lvert\beta_k(y)-\beta_k(u)\rvert\le\sqrt d\,\| y-u\|$ である。異なる頂点の距離は $1$ 以上で、$\varepsilon< \frac1{(d+1)\sqrt d}\le\frac12$ なので、各 $u_k$ のまわりにとった点は全部で $N$ 個の相異なる点になる。Tverberg 分割と Tverberg 点 $p$ があるとし、1 と同じく、$u_k$ のまわりの点を 1 つも含まない組 $I_j$ をとる。その組の点 $y$ はある $l\ne k$ について $\| y-u_l\|< \varepsilon$ を満たすので $\beta_k(y)< \beta_k(u_l)+\sqrt d\,\varepsilon=\sqrt d\,\varepsilon$ であり、$p$ はそれらの凸結合なので $\beta_k(p)< \sqrt d\,\varepsilon$ となる。$k$ について足すと $1=\sum_k\beta_k(p)< (d+1)\sqrt d\,\varepsilon< 1$ となり、矛盾する。$\square$
実は、$N$ 個の点が十分に一般の位置にあれば、$r$ 組の Tverberg 分割はつねに存在しない(BS18 p. 2 の次元を数える議論、BZ17 p. 5)。この記事ではこの一般の形は証明しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 点の個数が $(r-1)(d+1)+1$ 以上(thm-tv-main) | prop-tv-sharp の $N$ 個の点 | $r$ 組の Tverberg 分割をもつこと |
| 空間が有限次元であること(thm-tv-main の $\mathbb{R}^d$) | 有限個の項を除いて $0$ である実数列の空間の点 $0,e_1,\dots,e_m$ | ある個数以上の点がつねに $r$ 組の Tverberg 分割をもつこと |
| 単体からの写像がアフィンであること(下の節のアフィン写像による言い換えで、$r$ が素数の冪でない場合) | BZ17 Theorem 5.5 の連続写像 $\Delta_N\to\mathbb{R}^d$($d=rk+1$、$k\ge3$、$r\ge6$) | 互いに交わらない $r$ 個の面の像が共通の点をもつこと |
1 行目:prop-tv-sharp による。
2 行目:この空間 $V$ でも凸結合・凸包・アフィン関係は $\mathbb{R}^d$ と同じ式で定義でき、Radonの定理(凸幾何) の表の反例の確かめ(その 2)と同じ計算で、どの $m$ についても $0,e_1,\dots,e_m$ はアフィン独立である。$r$ 組の Tverberg 分割 $I_1,\dots,I_r$ があれば、$I:=I_1$ と $J:=I_2\cup\cdots\cup I_r$ について $\operatorname{conv}x_{I_2}\subset\operatorname{conv}x_J$ なので $\operatorname{conv}x_I\cap\operatorname{conv}x_J\ne\emptyset$ となり、Radon 分割が得られる。同じ記事の命題「Radon分割の存在とアフィン従属」の証明(後半)は $V$ でもそのまま通り、アフィン従属が導かれて矛盾する。よって点の個数をいくら増やしても Tverberg 分割をもたない点の組がある。
3 行目:位相的 Tverberg 予想の節を見よ。この反例はこの記事では証明しない。
$x_1,\dots,x_m\in\mathbb{R}^d$ の $r$ 組の Tverberg 分割 $I_1,\dots,I_r$ と Tverberg 点 $p$ があるとする。$p$ を含むどの閉半空間 $H$ も、各 $j$ について $x_{I_j}$ の点を少なくとも 1 つ含む。とくに $x_i\in H$ となる添字 $i$ は $r$ 個以上ある。
$H=\{x\mid a\cdot x\le b\}$($a\ne0$)が $x_{I_j}$ の点を 1 つも含まなければ、$x_{I_j}$ は開半空間 $G:=\{x\mid a\cdot x>b\}$ に含まれる。$G$ は凸なので $p\in\operatorname{conv}x_{I_j}\subset G$ となり、$p\in H$ に反する。組は互いに交わらないので、各組から 1 つずつとった添字は $r$ 個の相異なる添字である。$\square$
$S\subset\mathbb{R}^d$ を $m$ 個の点からなる有限集合とする。ある点 $c\in\mathbb{R}^d$ があって、$c$ を含むどの閉半空間も $S$ の点を $\dfrac m{d+1}$ 個以上含む。
$r:=\bigl\lceil\frac m{d+1}\bigr\rceil$ とおく。$m=0$ なら任意の点 $c$ でよい。$r=1$ なら $1\le m\le d+1$ であり、$c\in S$ を 1 つとれば、$c$ を含む閉半空間は $S$ の点を $1\ge\frac m{d+1}$ 個以上含む。$r\ge2$ なら $r-1< \frac m{d+1}$ から $(r-1)(d+1)< m$、すなわち $m\ge(r-1)(d+1)+1$ なので、$S$ の点に thm-tv-main を使って Tverberg 点 $c$ をとる。prop-tv-depth により、$c$ を含む閉半空間は $S$ の相異なる点を $r\ge\frac m{d+1}$ 個以上含む。$\square$
これは Hellyの定理 の定理「中心点定理」と同じ主張であり、Helly の定理を使わない別証明になっている。Tverberg の定理からは、さらに「$S$ を $\lceil\frac m{d+1}\rceil$ 個の組に分け、どの組の凸包も $c$ を含むようにできる」という強い形が得られる。B. J. Birch がこの問題を考えた動機は平面の中心点の定理であり、Tverberg の動機も中心点の定理であったとされる(BS18 pp. 2–3)。
点の列 $x_0,\dots,x_N$ は、$N$ 次元単体 $\Delta_N$(頂点 $w_0,\dots,w_N$)からのアフィン写像 $f$ で $f(w_i)=x_i$ となるものと同じことである。互いに交わらない添字の集合 $I_j$ が張る面を $\sigma_j$ とすると $f(\sigma_j)=\operatorname{conv}x_{I_j}$ なので、thm-tv-main は「アフィン写像 $f\colon\Delta_N\to\mathbb{R}^d$ について、互いに交わらない $r$ 個の面 $\sigma_1,\dots,\sigma_r$ で $f(\sigma_1)\cap\cdots\cap f(\sigma_r)\ne\emptyset$ となるものがある」と言い換えられる(BZ17 Theorem 3.1、p. 5)。アフィン写像を連続写像に替えたものが次の予想である。
連続写像 $f\colon\Delta_N\to\mathbb{R}^d$($N=(r-1)(d+1)$)について、互いに交わらない $r$ 個の面 $\sigma_1,\dots,\sigma_r$ で $f(\sigma_1)\cap\cdots\cap f(\sigma_r)\ne\emptyset$ となるものがある。
この予想は $r$ によって成否が分かれる。
$f\colon\Delta_{2r-2}\to\mathbb{R}$ を連続写像とし、$\Delta_{2r-2}$ の頂点を $f$ の値の順に $w_{(1)},\dots,w_{(2r-1)}$ と並べる($f(w_{(1)})\le\cdots\le f(w_{(2r-1)})$)。$r-1$ 本の辺 $\sigma_k:=[w_{(k)},w_{(2r-k)}]$($k=1,\dots,r-1$)と頂点 $\sigma_r:=\{w_{(r)}\}$ は互いに交わらない面で、その像はすべて $f(w_{(r)})$ を含む。
面 $\sigma_1,\dots,\sigma_r$ は相異なる頂点の集合が張るので、互いに交わらない。辺 $\sigma_k$ 上の連続関数 $g(t):=f\bigl((1-t)w_{(k)}+tw_{(2r-k)}\bigr)$($0\le t\le1$)は $g(0)=f(w_{(k)})\le f(w_{(r)})\le f(w_{(2r-k)})=g(1)$ を満たすので、中間値の定理 により $g(t)=f(w_{(r)})$ となる $t$ がある。よって $f(w_{(r)})\in f(\sigma_k)$ である。$\sigma_r$ の像は $\{f(w_{(r)})\}$ である。$\square$
B. J. Birch が 1959 年の論文で $d=2$ の場合を示して一般の場合を予想し、H. Tverberg が 1966 年の論文で一般の場合を証明した(BS18 Theorem 1.1・pp. 2–3)。この記事の証明は K. S. Sarkaria(1992 年)によるもので、I. Bárány と S. Onn が整えた形(BS18 pp. 4–6)を、行列の列ごとの計算(lem-tv-tensor)で書き直した。prop-tv-criterion の同値性は BS18 Theorem 1.4(p. 6)にあたる。色つきの Carathéodory の定理は Bárány(1982 年)による。位相的な問題は Bárány が 1976 年に Tverberg への手紙で問うたものである(BZ17 p. 5)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する