円充填定理

同義語:circle packing theoremKoebe–Andreev–Thurstonの定理

概要

円充填定理(circle packing theorem)とは、有限な単純平面グラフはどれも、内部が交わらない平面の円板の族で、2 つの円板が接することと対応する頂点が隣接することが一致するもので表せる、という Koebe の定理である。逆に、そのような円板の族の接し方のグラフは、中心を線分で結べば辺が交わらずに描けるので平面グラフであり、この定理から平面グラフは辺を線分で描けることも従う。三角形分割では、内部の頂点のまわりの角の和が $2\pi$ になる半径は外側の 3 つの半径で決まり、この剛性が離散的な等角写像の理論の出発点になっている。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 平面グラフ, ペニーグラフ, 外平面グラフ

机の上に大きさのまちまちな硬貨を、重ならないように並べる。硬貨を頂点とし、接している 2 枚を辺で結ぶと、グラフが 1 つできる。硬貨の中心を線分で結べば辺どうしは交わらないので、このグラフはいつも平面グラフである。逆に、どの有限な単純平面グラフも、硬貨の並べ方でこのように表せる。これが Koebe(1936 年)による 円充填定理(circle packing theorem)で、のちに Andreev の多面体の研究から Thurston が導き直し、離散的な複素解析の出発点になった(Nac20 第 1 章、pp. 1–2)。
この記事では、接触のグラフが平面グラフで、辺を線分で描けること(thm-cpk-planar)、頂点を 1 つずつ「1 つの頂点か 1 本の辺の両端に接する」ように加えてできるグラフ(森や多角形の三角形分割を含む)は硬貨の並べ方で表せること(thm-cpk-ear、cor-cpk-polygon)、平面の三角形分割では外側の 3 枚の半径を決めると残りの半径がただ 1 通りに決まること(thm-cpk-unique)を証明する。一般の平面グラフについての存在定理(thm-cpk-koebe)は、証明の所在を示して引用する。

定義

この記事の円板は、正の半径をもつ平面の閉円板 $D(c,r):=\{x\in\mathbb{R}^2:\lvert x-c\rvert\le r\}$ とする。グラフは有限な単純グラフとする。

円充填と接触グラフ

平面の有限個の円板の族 $\mathcal{P}=\{D_v\}_{v\in V}$ で、相異なる 2 つの円板の内部が交わらないものを 円充填(circle packing)という。$V$ を頂点集合とし、$D_u\cap D_w\ne\emptyset$ となる相異なる $u,w$ を辺で結んだグラフを $\mathcal{P}$ の 接触グラフ という。グラフ $G$ がある円充填の接触グラフと同型であるとき、$G$ は 円充填で表せる といい、そのような $G$ を コイングラフ という。

半径をすべて等しくしたものが ペニーグラフ である。円充填から円板をいくつか取り除くと、接触グラフは残った頂点の誘導部分グラフになる。したがって、コイングラフの誘導部分グラフはコイングラフである。

内部の交わらない 2 つの円板

円板 $D(c,r)$ と $D(c',r')$ の内部が交わらないことは $\lvert c-c'\rvert\ge r+r'$ と同値である。このとき 2 つの円板が交わるのは $\lvert c-c'\rvert=r+r'$ のときだけで、共通部分は線分 $cc'$ の上の 1 点 $c+\frac{r}{r+r'}(c'-c)$(接点)である。

中心を結ぶ線分の上で比べる

$\lvert c-c'\rvert< r+r'$ とする。$c=c'$ なら内部は明らかに交わる。$c\ne c'$ なら、$\max(0,\lvert c-c'\rvert-r')< s'<\min(r,\lvert c-c'\rvert)$ となる $s'$ がとれ(左辺は右辺より小さい)、点 $c+s'\frac{c'-c}{\lvert c'-c\rvert}$ は $c$ から $s'< r$、$c'$ から $\lvert c-c'\rvert-s'< r'$ の距離にあるので、両方の内部にある。逆に $\lvert c-c'\rvert\ge r+r'$ なら、両方の内部の点 $x$ があれば $\lvert c-c'\rvert\le\lvert x-c\rvert+\lvert x-c'\rvert< r+r'$ となり矛盾する。$x\in D(c,r)\cap D(c',r')$ なら $\lvert c-c'\rvert\le\lvert x-c\rvert+\lvert x-c'\rvert\le r+r'$ なので、共通部分があれば $\lvert c-c'\rvert=r+r'$ で、三角不等式の等号から $x$ は線分 $cc'$ の上の $\lvert x-c\rvert=r$ の点である。$\square$

接触グラフは平面グラフ

接触グラフの平面性

円充填 $\{D_v\}$ の接触グラフ $G$ で、頂点 $v$ を中心 $c_v$ に、辺 $uw$ を線分 $c_uc_w$ に対応させると、$G$ の平面への描画になる。とくにコイングラフは平面グラフで、辺を線分で描ける。

線分を 2 本の半径に分ける

辺 $uw$ の接点を $t_{uw}$ とすると、lem-cpk-two により線分 $c_uc_w$ は $D_u$ の半径 $R_{uw}:=[c_u,t_{uw}]$ と $D_w$ の半径 $R_{wu}:=[t_{uw},c_w]$ をつないだものである。
段 1(接点は相異なる)。$u$ の相異なる隣接頂点 $w,w'$ で $t_{uw}=t_{uw'}=:t$ とすると、$\nu:=(t-c_u)/\lvert t-c_u\rvert$ について $c_w=t+r_w\nu$、$c_{w'}=t+r_{w'}\nu$ であり、小さい $\varepsilon>0$ で $t+\varepsilon\nu$ は $D_w$ と $D_{w'}$ の両方の内部に入って矛盾する。よって $D_u$ の半径 $R_{uw}$($w$ は隣接頂点)は相異なり、$c_u$ でしか交わらない。
段 2(辺どうしは端点でしか交わらない)。相異なる辺 $e=uw$ と $e'$ の共通の点 $z$ をとる。$z$ は $e$ のある半径 $R_{aa'}$($\{a,a'\}=\{u,w\}$)と $e'$ のある半径 $R_{bb'}$ にのる。$a=b$ なら、$a'\ne b'$($a'=b'$ なら $e=e'$)なので段 1 により $z=c_a$ で、$z$ は $e,e'$ の共通の端点である。$a\ne b$ なら $z\in D_a\cap D_b$ なので $z=t_{ab}$ である。$z$ は $D_a$ の境界の点で半径 $R_{aa'}$ にのるので $z=t_{aa'}$ であり、段 1 により $a'=b$ となる。同じく $b'=a$ で、$e=e'$ となって矛盾する。
段 3(辺はほかの中心を通らない)。$c_k$ が $e\subset D_u\cup D_w$($k\ne u,w$)の点なら、たとえば $c_k\in D_u$ で、$D_k$ の内部の小さい円板は $D_u$ の内部と交わり矛盾する。$\square$

円板の内部が重なってもよいとすると、この結論は成り立たない。原点を内部に含む 5 つの円板では、どの 2 つも交わり、交わりのグラフは平面グラフでない $K_5$ になる。

円充填定理

円充填定理(Koebe–Andreev–Thurston)

有限な単純平面グラフはすべて円充填で表せる。すなわち、平面グラフであることとコイングラフであることは同値である。

証明の所在

「コイングラフなら平面グラフ」は thm-cpk-planar である。逆向きはこの記事では証明しない。Nac20 Theorem 3.5(p. 34)は、平面グラフの描画を 1 つ固定し、各頂点のまわりの隣接頂点の並び方まで保つ円充填があることを述べ、§3.2(pp. 36–46)で証明している。その証明は、各面に頂点を加えて三角形分割に帰着し(p. 35)、三角形分割について、内部の頂点のまわりの角の和が $2\pi$ になる半径を反復によって求め(Theorem 3.6 の証明の Step 1、pp. 37–43)、その半径で三角形を貼り合わせて円板を描く(Theorem 3.14、p. 44)という筋である。

Fáry の定理

有限な単純平面グラフは、辺を線分で描ける。

円充填の中心を結ぶ

thm-cpk-koebe により円充填で表し、thm-cpk-planar の描画をとる。$\square$

この系は Nac20 p. 2 でも円充填定理の帰結として述べられている。証明は thm-cpk-koebe に依存するので、この記事の中では完結していない。

1 枚ずつ硬貨を加える

thm-cpk-koebe の特別な場合として、次は円板を 1 枚ずつ加えていくだけで証明できる。

頂点を 1 つずつ加えてできるグラフ

1 頂点のグラフから始めて、次の 3 つの操作をくり返して得られるグラフは、円充填で表せる。

  1. 孤立した頂点を 1 つ加える。
  2. 既にある頂点 $u$ とだけ隣接する頂点を 1 つ加える。
  3. 既にある辺 $uw$ の両端 $u,w$ とだけ隣接する頂点を 1 つ加える。
    さらに、こうして得られるグラフの誘導部分グラフも円充填で表せる。
接点の近くに小さな円板を置く

操作の回数についての帰納法で、各段階のグラフを接触グラフにもつ円充填 $\mathcal{P}$ を作る。1 頂点なら円板 1 つでよい。以下、新しい円板は既にある円板のうち指定した円板とだけ接し、ほかとは交わらないように置く。
操作 1。$\bigcup\mathcal{P}$ は有界なので、それから離れた円板を置けばよい。
操作 2。$D_u=D(c_u,r_u)$ の境界の点で、ほかの円板に属さない点 $t$ をとる(lem-cpk-two により、ほかの円板と $D_u$ の共通部分は高々 1 点ずつなので、そのような点は有限個を除いてすべてである)。$t$ からほかの円板の和集合までの距離を $\delta>0$ とし、$0<\rho<\delta/2$ について、中心 $t+\rho\frac{t-c_u}{r_u}$、半径 $\rho$ の円板を加える。中心と $c_u$ の距離は $r_u+\rho$ なので $D_u$ と $t$ で接し、円板は $t$ を中心とする半径 $2\rho<\delta$ の円板に含まれるので、ほかの円板とは交わらない。
操作 3。$D_u$ と $D_w$ の接点を $t$ とする。まず $t$ はほかの円板 $D_k$ に属さない。実際、$t\in D_k$ なら lem-cpk-two により $D_k$ は $D_u$ とも $D_w$ とも $t$ で接するので、$c_k$ は $t$ から $t-c_u$ の向きにも $t-c_w$ の向きにも $r_k$ だけ進んだ点になるが、この 2 つの向きは逆向きなので矛盾する。$t$ からほかの円板の和集合までの距離を $\delta>0$ とする。座標を、$t$ が原点、$c_u=(-a,0)$、$c_w=(b,0)$($a=r_u$、$b=r_w$)となるようにとる。$\rho>0$ について
$$ c(\rho):=\Bigl(\frac{(a-b)\rho}{a+b},\ \frac{2\sqrt{ab\rho(a+b+\rho)}}{a+b}\Bigr) $$
とおくと、$\lvert c(\rho)-c_u\rvert=a+\rho$、$\lvert c(\rho)-c_w\rvert=b+\rho$ である。実際、$c(\rho)=(x,y)$ と書くと $(a+b)(x+a)=a(a+b)+(a-b)\rho$ なので
$$ (a+b)^2\bigl((x+a)^2+y^2\bigr)=\bigl(a(a+b)+(a-b)\rho\bigr)^2+4ab\rho(a+b+\rho)=(a+b)^2(a+\rho)^2 $$
であり(右の等号は展開して $\rho$ の各次の係数を比べる)、$c_w$ については $(a+b)(b-x)=b(a+b)+(b-a)\rho$ と $y$ が $a,b$ について対称であることから、$a$ と $b$ を入れかえた同じ計算になる。$\rho\to0$ で $\lvert c(\rho)\rvert+\rho\to0$ なので、$\lvert c(\rho)\rvert+\rho<\delta$ となる $\rho$ をとり、円板 $D(c(\rho),\rho)$ を加える。これは $D_u$・$D_w$ と接し、原点を中心とする半径 $\delta$ 未満の円板に含まれるので、ほかの円板とは交わらない。
いずれの操作でも、新しい円板はほかの円板と内部が交わらず、指定した円板とだけ交わるので、新しい族は円充填で、接触グラフは操作後のグラフである。誘導部分グラフについては、定義の後に述べたとおり円板を取り除けばよい。$\square$

操作 2 だけで作れるのは木であり、操作 1・2 で森が作れる。操作 3 からは多角形の三角形分割が作れる。

多角形の三角形分割

凸多角形を、端点以外で交わらない対角線で三角形に分けたとき、多角形の頂点と辺・対角線のなすグラフは円充填で表せる。森も円充填で表せる。

耳を 1 つずつ外す

森は、各連結成分を 1 頂点から操作 2 で作り、成分を操作 1 で加えれば得られる。
三角形分割のグラフ $G$ が thm-cpk-ear の操作で作れることを、頂点の数 $n\ge3$ についての帰納法で示す。$n=3$ なら $G=K_3$ で、1 頂点から操作 2・操作 3 で作れる。$n\ge4$ とする。凸多角形に描いた $G$ は外平面グラフで、多角形の周がすべての頂点を通る閉路なので 2-連結である。外平面グラフ の補題「次数 2 の頂点が 2 つある」により、次数 $2$ の頂点 $x$ がある。$x$ の辺は多角形の 2 辺 $xa,xb$ だけである。$x$ を含む三角形は $x$ を頂点とし($x$ は凸多角形の角の点なので、ほかの頂点の凸結合にならない)、$x$ での 2 辺は $G$ の辺なので、この三角形は $xab$ で、$ab$ は $G$ の辺(多角形の辺か対角線)である。$xab$ を除いた残りの三角形は、$x$ を除いた頂点の凸包(凸多角形)を交わらない対角線で分けたものになっている。帰納法の仮定により $G-x$ は操作で作れ、$G$ は $G-x$ に操作 3(辺 $ab$)を施して得られる。$\square$

閉路 $C_4$ のように、どの操作でも作れず誘導部分グラフとしても現れないコイングラフもある(ex-cpk-c4)。

三角形分割での半径の一意性

互いに外から接する 3 つの円板の中心は、辺の長さが半径の和の三角形をなす。そこで、半径 $x,y,z>0$ について、辺の長さが $x+y$、$x+z$、$y+z$ の三角形の、長さ $y+z$ の辺に向かい合う角を $\alpha(x;y,z)$ と書く(3 つの長さは三角不等式を真に満たすので、三角形はある)。これは半径 $x$ の円板の中心での角である。

角の単調性

$x,y,z>0$ について
$$ \cos\alpha(x;y,z)=1-\frac{2yz}{(x+y)(x+z)} $$
である。したがって $\alpha(x;y,z)$ は連続で、$x$ について狭義に減少し、$y$ と $z$ のそれぞれについて狭義に増加し、$\lambda>0$ について $\alpha(\lambda x;\lambda y,\lambda z)=\alpha(x;y,z)$ である。

余弦定理

余弦定理により
$$ \cos\alpha=\frac{(x+y)^2+(x+z)^2-(y+z)^2}{2(x+y)(x+z)}=\frac{(x+y)(x+z)-2yz}{(x+y)(x+z)} $$
である(分子は $2x^2+2xy+2xz-2yz$)。$\frac{2yz}{(x+y)(x+z)}=\frac{2}{(1+x/y)(1+x/z)}$ は $x$ について狭義に減少し、$y,z$ のそれぞれについて狭義に増加する。$\arccos$ は狭義に減少するので主張を得る。同次性は式から明らかである。$\square$

以下、$G$ を $4$ 頂点以上の平面の 三角形分割(外側の面を含むすべての面の境界が三角形である、連結で単純な平面グラフ図)とし、外側の面の頂点を $v_1,v_2,v_3$、それ以外の頂点を 内部の頂点 とする。内側の面の全体を $F^\circ$ と書く。正の数の組 $r=(r_v)_{v\in V}$ と内部の頂点 $v$ について、$v$ を頂点にもつ内側の面 $vuw$ すべてにわたる和
$$ \sigma_r(v):=\sum_{vuw\in F^\circ}\alpha(r_v;r_u,r_w) $$
を $v$ のまわりの 角の和 という。$G$ の円充填で、各頂点のまわりの円板の並び方が $G$ の描画と同じものがあれば、その半径の組は、内部のすべての頂点で $\sigma_r(v)=2\pi$ を満たす(Nac20 p. 37 の (3.2)。この記事では証明しない)。

半径の一意性

$G$ を上のような三角形分割とする。正の数の組 $r,r'$ がどちらも内部のすべての頂点 $v$ で $\sigma_r(v)=\sigma_{r'}(v)=2\pi$ を満たし、$r_{v_i}=r'_{v_i}$($i=1,2,3$)であれば、$r=r'$ である。

比の最大値は内部でとれない

$t_v:=r_v/r'_v$ とおき、$M:=\max_vt_v$ とする。$M>1$ と仮定して矛盾を導く(これが示されれば、$r$ と $r'$ を入れかえて $r'_v/r_v\le1$ も分かり、$r=r'$ となる)。外側の 3 頂点では $t=1$ なので、$t_v=M$ となる頂点はどれも内部の頂点である。
段 1(最大の頂点の隣も最大)。$t_v=M$ となる内部の頂点 $v$ をとる。$v$ を含む内側の面 $vuw$ について、lem-cpk-angle の同次性と単調性から
$$ \alpha(r'_v;r'_u,r'_w)=\alpha(Mr'_v;Mr'_u,Mr'_w)=\alpha(r_v;Mr'_u,Mr'_w)\ge\alpha(r_v;r_u,r_w) $$
である($r_u\le Mr'_u$、$r_w\le Mr'_w$)。$y,z$ について別々に狭義に増加するので、等号は $r_u=Mr'_u$ かつ $r_w=Mr'_w$ のときだけである。$v$ を含む内側の面すべてで和をとると左辺の和は $2\pi$、右辺の和も $2\pi$ なので、すべての面で等号が成り立つ。$v$ から出る各辺 $vu$ はある面の境界にのり(Die25 Lemma 4.2.2、p. 97)、$v$ は外側の面の境界にないのでその面は内側の面 $vuw$ である。よって $v$ の隣接頂点はすべて $t=M$ を満たす。
段 2(外側へ伝わる)。$G$ は連結なので、$t_v=M$ の内部の頂点 $v$ から $v_1$ への道 $v=w_0,w_1,\dots,w_k=v_1$ がある。$w_j$ を道で最初に現れる外側の頂点とすると、$w_0,\dots,w_{j-1}$ は内部の頂点で、段 1 をくり返して $t_{w_0}=\cdots=t_{w_j}=M$ を得る。しかし $t_{w_j}=1< M$ なので矛盾する。 $\square$

Nac20 Theorem 3.15(p. 46)は、この一意性と半径を決めたときの描画の一意性から、外側の 3 つの円の半径を決めた円充填が平行移動と回転を除いてただ 1 つであることを導いている。Nac20 第 1 章の Claim 1.3(p. 3)は、三角形分割の円充填が Möbius 変換と直線に関する鏡映を除いてただ 1 つであることを述べ、Rodin と Sullivan の定理(Theorem 1.9、p. 6)は、単連結領域にのせた細かい六角形の円充填を単位円板の中の円充填に移す写像が、その領域から単位円板への等角写像に近づくことを述べている(どちらもこの記事では証明しない)。三角形分割でないグラフでは、円充填は一意とは限らない。たとえば閉路 $C_4$ の円充填は、4 つの円板を正方形にも菱形にも並べられる(ex-cpk-c4)。

例と反例

4 枚の硬貨と $K_4$

半径 $1$ の 3 つの円板を、中心が 1 辺 $2$ の正三角形をなすように置くと、3 つは互いに接する。中心の三角形の外心から各中心までの距離は $\frac{2}{\sqrt3}$ なので、外心を中心とする半径 $\rho:=\frac{2}{\sqrt3}-1\approx0.1547$ の円板は 3 つすべてに接する。接触グラフは $K_4$ である。thm-cpk-ear の操作では最後に加えた頂点の次数が $2$ 以下になるので、どの頂点も次数 $3$ の $K_4$ は操作では作れないが、円充填で表せる。$K_4$ を外側の面 $v_1v_2v_3$ をもつ三角形分割と見ると、内部の頂点の角は 3 つとも $\alpha(\rho;1,1)$ で、$\cos\alpha(\rho;1,1)=1-\frac{2}{(1+\rho)^2}=1-\frac{3}{2}=-\frac12$ から $\alpha=\frac{2\pi}3$、角の和は $2\pi$ である。

閉路 $C_4$

半径 $1$ の 4 つの円板を中心 $(\pm1,\pm1)$ に置くと、隣り合う 2 つは中心の距離 $2$ で接し、対角の 2 つは距離 $2\sqrt2>2$ で交わらないので、接触グラフは $C_4$ である。中心を辺 $2$ の菱形 $(0,0),(2,0),(2+2\cos\theta,2\sin\theta),(2\cos\theta,2\sin\theta)$ に置いても、対角線の長さ $4\cos\frac\theta2$ と $4\sin\frac\theta2$ が $2$ より大きい $\frac\pi3<\theta<\frac{2\pi}3$ では接触グラフは $C_4$ のままである。$C_4$ は thm-cpk-ear の操作で作れるグラフの誘導部分グラフにならない。作れるグラフに長さ $4$ 以上の閉路 $Z$ があれば、$Z$ の頂点のうち最後に加えたもの $z$ の $Z$ での 2 つの隣は、操作 1–3 の形から $z$ を加えた時点で隣接していたので、$Z$ には弦があり、$Z$ は誘導部分グラフでないからである。

外す条件反例成り立たなくなること
$G$ は平面グラフである(thm-cpk-koebe)$K_5$円充填で表せること(thm-cpk-planar によりコイングラフは平面グラフ)
$G$ は単純グラフである(thm-cpk-koebe)2 頂点を 2 本の辺で結んだ多重グラフ円充填で表せること(2 つの円板の共通部分は高々 1 点で、辺は高々 1 本)
円板の内部が交わらない(thm-cpk-planar)原点を内部に含む 5 つの円板交わりのグラフが平面グラフであること($K_5$ になる)
外側の 3 頂点で $r_{v_i}=r'_{v_i}$(thm-cpk-unique)ex-cpk-k4 の $r=(1,1,1,\rho)$ と $r'=2r$$r=r'$(角の和は同次性から等しいが、組は異なる)

関連項目

参考文献

[1]
Asaf Nachmias, Planar Maps, Random Walks and Circle Packing — École d'Été de Probabilités de Saint-Flour XLVIII - 2018, Lecture Notes in Mathematics 2243, Springer, 2020, §1.1 Theorem 1.1・Fáry の定理・歴史 (pp. 1–2)、Claim 1.3 (p. 3)、Theorem 1.9 (p. 6)、Theorem 3.5 (p. 34)、三角形分割への帰着 (p. 35)、Theorem 3.6 と §3.2 の証明 (pp. 36–46)、(3.2) (p. 37)、Theorem 3.14 (p. 44)、Theorem 3.15 (p. 46)

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