構造群の縮小

同義語:reduction of the structure groupreduction of structure group

概要

構造群の縮小(reduction of the structure group)とは、位相群 $G$ を構造群とする主束 $P$ に、閉部分群 $H$ についての主 $H$ 束を $H$ の作用ごと入れることであり、構造群の拡大が $P$ と同型になる主 $H$ 束を与えることと同じである。$G\to G/H$ が局所切断をもつとき、縮小は $P/H\cong P\times_G(G/H)$ の切断と一対一に対応する。$P$ が可算被覆的なら、拡大が $P$ と同型になる可算被覆的な主 $H$ 束の同型類は、分類写像の $BH\to BG$ に沿った持ち上げのホモトピー類と対応する。計量・向き・複素構造は、枠束の構造群の $\mathrm O(n)$・$\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$・$\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$ への縮小にあたる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 主束, 位相群, 主束の分類定理, 商写像

構造群の縮小(reduction of the structure group)とは、主 $G$ 束 $P$ の中に、閉部分群 $H\subset G$ を構造群とする主 $H$ 束 $Q$ を、$H$ の作用と両立するように入れることである。変換関数の言葉では、$G$ に値をとる変換関数を、$H$ に値をとるものに取り替えることにあたる。
ベクトル束の上の幾何学的な構造の多くは、この形で表される。実ベクトル束 $E$ の枠束 $\mathrm{Fr}(E)$ は主 $\mathrm{GL}_n(\mathbb R)$ 束であり、$E$ の計量を与えることは正規直交枠だけを集めた主 $\mathrm O(n)$ 束を選ぶことであり、向きを与えることは向きの付いた枠を集めた主 $\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$ 束を選ぶことであり、階数 $2m$ の $E$ に複素構造を与えることは $\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$ への縮小を選ぶことである。どの構造も「各ファイバーで $G/H$ の点を 1 つずつ連続に選ぶこと」として統一的に扱える。
この記事では、位相群を構造群とする局所自明な主束について、次の 3 つを証明する。(1) 縮小を与えることと、構造群の拡大 $Q\times_HG$ が $P$ と同型な主 $H$ 束 $Q$ を与えることは同じである。(2) $G\to G/H$ が局所切断をもつとき、縮小は $P/H\cong P\times_G(G/H)$ の切断と一対一に対応する。(3) $P$ が可算被覆的なら、拡大が $P$ と同型になる可算被覆的な主 $H$ 束の同型類は、分類写像 $X\to BG$ の $BH\to BG$ に沿った持ち上げのホモトピー類と一対一に対応する。縮小の同値類と主 $H$ 束の同型類の違いはゲージ変換で埋まる。可微分な主束での定義と計量による $\mathrm O(r)$ への縮小は 主束 の節「構造群の縮小」にある。

設定と定義

この記事を通して、$G$ は位相群(位相群)、$H\subset G$ は閉部分群(相対位相で位相群)とし、$\pi_H\colon G\to G/H$ を剰余類への射影とする。$\pi_H$ は開写像である(位相群 の命題「剰余空間の位相」)。$G$ は $G/H$ に左から $g\cdot uH:=guH$ で作用する。
主束は 主束の分類定理 の定義「可算被覆的な主束」の 1・2 の意味のもの(右作用がファイバーを保ち、各点の近くで $G$ 同変に積 $U\times G$ と同相になるもの)とし、射・同型・可算被覆性もそこでの意味とする。同じ底の上の主束の射は同型であり、連続な切断をもつ主束は自明である(同記事の命題「同じ底の上の射と切断」)。主束の射影は開な全射なので商写像(商写像)である。
$p\colon P\to X$ を主 $G$ 束、$F$ を $G$ が左から連続に作用する空間とする。$P\times F$ に $G$ を $(y,u)g:=(yg,g^{-1}u)$ で右から作用させた商を $P\times_GF$ と書き、$(y,u)$ の類を $[y,u]$ と書く。$[y,u]\mapsto p(y)$ が $X$ への連続写像を与える。群の作用による商写像 $P\times F\to P\times_GF$ は開写像である(開集合 $W$ の飽和 $\bigcup_gWg$ は開集合だから)。
$q\colon Q\to X$ を主 $H$ 束とする。$H$ を $G$ に左からの積で作用させた $Q\times_HG$ に、$G$ を $[y,g]g':=[y,gg']$ で右から作用させたものを、$Q$ の構造群の拡大という。Milnorの構成 の命題「構造群の拡大の分類写像」の証明の段「主束であること」(準同型として包含 $H\to G$ をとる。この段は同命題の写像 $F$・$f$ を使わない)により、これは $X$ 上の主 $G$ 束であり、$Q$ の自明化開集合はそのまま自明化開集合で、$Q$ が可算被覆的なら $Q\times_HG$ も可算被覆的である。同じ段のとおり、$Q$ の開集合 $U$ 上の局所切断 $\sigma$ について、$(x,g)\mapsto[\sigma(x),g]$ は $U\times G$ から $Q\times_HG$ の $U$ 上の部分への同相写像で、局所自明化の逆を与える。$\iota\colon Q\to Q\times_HG$、$\iota(y):=[y,e]$ とおく。

構造群の縮小

$p\colon P\to X$ を主 $G$ 束とする。$X$ 上の主 $H$ 束 $q\colon Q\to X$ と連続写像 $f\colon Q\to P$ の組 $(Q,f)$ で、
$$ p\circ f=q,\qquad f(yh)=f(y)h\quad(y\in Q,\ h\in H) $$
を満たすものを、$P$ の構造群の $H$ への縮小($H$ 縮小)という。2 つの縮小 $(Q,f)$、$(Q',f')$ は、主 $H$ 束の同型 $\varphi\colon Q\to Q'$ で $f'\circ\varphi=f$ となるものがあるとき同値であるという。$H$ 縮小が存在するとき、$P$ の構造群は $H$ に縮小できるという。
$P$ の部分集合 $Q$ で、$H$ の作用で閉じ、$p$ の制限と作用の制限によって $X$ 上の主 $H$ 束になるものを、$P$ の主 $H$ 部分束という。このとき包含写像との組 $(Q,\text{包含})$ は $H$ 縮小である。

縮小と構造群の拡大

縮小と構造群の拡大

$p\colon P\to X$ を主 $G$ 束とする。

  1. $(Q,f)$ を $H$ 縮小とすると、$\Phi_f\colon Q\times_HG\to P$、$\Phi_f[y,g]:=f(y)g$ は主 $G$ 束の同型である。
  2. $(Q,f)$ を $H$ 縮小とすると、$f$ は閉集合 $f(Q)\subset P$ の上への同相写像であり、$f(Q)$ は主 $H$ 部分束で、$(Q,f)$ と $(f(Q),\text{包含})$ は同値である。2 つの主 $H$ 部分束は、縮小として同値なら一致する。したがって、$H$ 縮小の同値類と主 $H$ 部分束とは一対一に対応する。
  3. 逆に、主 $H$ 束 $Q$ と主 $G$ 束の同型 $\Psi\colon Q\times_HG\to P$ があれば、$(Q,\Psi\circ\iota)$ は $H$ 縮小である。
    とくに、$P$ の構造群が $H$ に縮小できることと、$Q\times_HG\cong P$ となる主 $H$ 束 $Q$ が存在することは同値である。

1.$(yh,h^{-1}g)$ の像は $f(yh)h^{-1}g=f(y)hh^{-1}g=f(y)g$ なので、$\Phi_f$ は矛盾なく定まる。$(y,g)\mapsto f(y)g$ は $Q\times G$ から $P$ への連続写像で、商写像を通じて $\Phi_f$ を誘導するので、$\Phi_f$ は連続である。$\Phi_f([y,g]g')=f(y)gg'=\Phi_f([y,g])g'$ で $G$ 同変であり、$p(f(y)g)=q(y)$ なので底の恒等写像を覆う。よって $\Phi_f$ は同じ底の上の主 $G$ 束の射であり、主束の分類定理 の命題「同じ底の上の射と切断」の 1 により同型である。
2.$f=\Phi_f\circ\iota$ で $\Phi_f$ は同相写像なので、$\iota$ が閉集合の上への同相写像であることを示せばよい。$U$ を $Q$ の自明化開集合、$\sigma$ をその上の局所切断とすると、$y\in q^{-1}(U)$ は $y=\sigma(q(y))\kappa(y)$($\kappa(y)\in H$)とただ一通りに書け、
$$ \iota(\sigma(x)h)=[\sigma(x)h,e]=[\sigma(x),h] $$
である。$Q$ の局所自明化 $(x,h)\mapsto\sigma(x)h$ と $Q\times_HG$ の局所自明化 $(x,g)\mapsto[\sigma(x),g]$ で書くと、$\iota$ は包含 $U\times H\to U\times G$ になる。$H$ は $G$ の閉集合なので、これは閉集合 $U\times H$ の上への同相写像である。$\iota$ はファイバーを保ち、各ファイバーの上で単射なので単射である。像の補集合と各開集合($U$ の上の部分)の共通部分は開なので、像は閉集合である。逆写像の連続性は、像を覆う開集合ごとに確かめればよいので成り立つ。
$f(Q)$ は $f(y)h=f(yh)$ により $H$ の作用で閉じ、$f\colon Q\to f(Q)$ は $H$ 同変で底を保つ同相写像なので、$Q$ の局所自明化を $f$ で運べば $f(Q)$ は主 $H$ 部分束になり、$\varphi:=f$ が $(Q,f)$ と $(f(Q),\text{包含})$ の同値を与える。主 $H$ 部分束 $Q_1,Q_2$ が同値なら、同値を与える $\varphi$ は $\text{包含}\circ\varphi=\text{包含}$ を満たすので $\varphi(y)=y$ であり、$\varphi$ は全射なので $Q_1=Q_2$ である。
3.$\Psi\circ\iota$ は連続で、$\Psi(\iota(yh))=\Psi[yh,e]=\Psi[y,h]=\Psi([y,e]h)=\Psi(\iota(y))h$ であり、$p\circ\Psi\circ\iota=q$ である。最後の主張は 1 と 3 による。$\square$

この対応は Hus94 Chapter 6 の Definition 2.1・Theorem 2.2(p. 74)と Corollary 3.2(p. 76)にある(そこでは局所自明性を課さない主束で述べている)。2 により、以下では縮小を主 $H$ 部分束 $Q\subset P$ と同一視してよい。
変換関数との関係.主 $H$ 部分束 $Q\subset P$ の局所切断 $s_\alpha\colon U_\alpha\to Q$ をとると、これは $P$ の局所切断でもあり、$s_\beta=s_\alpha h_{\alpha\beta}$ の $h_{\alpha\beta}$ は $H$ に値をとる。したがって、$Q$ を自明にする開被覆の上では、$P$ の変換関数を $H$ に値をとるようにとれる。逆に、$P$ の変換関数が $G$ 値の連続写像 $r_\alpha$ による取り替え $r_\alpha^{-1}g_{\alpha\beta}r_\beta$ で $H$ に値をとるようにできれば、$H$ 縮小が存在する(Hus94 Chapter 6, Theorem 4.1, p. 76。この記事では証明しない。可微分な場合は 主束 の定理「変換関数による主束の分類」から従う)。

縮小と $P/H$ の切断

主 $G$ 束 $p\colon P\to X$ に $H$ を作用の制限で作用させた軌道空間を $P/H$、商写像を $\pi\colon P\to P/H$ とし、$\bar p\colon P/H\to X$ を $\bar p\circ\pi=p$ で定める。

軌道空間 $P/H$
  1. $\pi$ は開写像であり、$\bar p$ は連続な開写像である。
  2. $\pi(y)\mapsto[y,eH]$ は $X$ 上の同相写像 $P/H\to P\times_G(G/H)$ であり、逆写像は $[y,uH]\mapsto\pi(yu)$ である。
  3. $U$ を $P$ の自明化開集合、$\psi=(p,\psi_2)\colon p^{-1}(U)\to U\times G$ を自明化とすると、$\pi(y)\mapsto(p(y),\psi_2(y)H)$ は同相写像 $\bar p^{-1}(U)\to U\times(G/H)$ である。とくに $\bar p$ はファイバー $G/H$ のファイバー束である。

要点:どの写像も、開な全射(したがって商写像)を通して降りてくる連続写像として作る。

証明を開く

1.開集合 $W\subset P$ について $\pi^{-1}(\pi(W))=\bigcup_{h\in H}Wh$ は開なので $\pi$ は開写像である。$\bar p\circ\pi=p$ は連続で $\pi$ は商写像なので $\bar p$ は連続であり、開集合 $V\subset P/H$ について $\bar p(V)=p(\pi^{-1}(V))$ は開である。

2.$h(\pi(y)):=[y,eH]$ は、$k\in H$ について $[yk,eH]=[y,kH]=[y,eH]$ なので矛盾なく定まり、$y\mapsto[y,eH]$ が連続なので連続である。逆向きには、$(y,u)\mapsto\pi(yu)$ は $P\times G$ 上の連続写像で、$u$ を $uk$($k\in H$)に替えても値が変わらない。$\mathrm{id}_P\times\pi_H$ は開な全射なので商写像であり、この写像は $P\times(G/H)$ 上の連続写像 $(y,uH)\mapsto\pi(yu)$ を誘導する。これは $(yg,g^{-1}uH)$ に対しても同じ値 $\pi(yu)$ をとるので、$P\times_G(G/H)$ 上の連続写像 $k$ を誘導する。$k(h(\pi(y)))=\pi(y)$、$h(k[y,uH])=[yu,eH]=[y,uH]$ なので、$h$ と $k$ は互いに逆であり、どちらも $X$ への射影を保つ。

3.$k\in H$ について $\psi_2(yk)=\psi_2(y)k$ なので、$y\mapsto(p(y),\psi_2(y)H)$ は $p^{-1}(U)$ 上の連続写像で $H$ の軌道の上で一定である。$\pi$ は開写像なので、開で飽和な $p^{-1}(U)$ への制限は開集合 $\bar p^{-1}(U)$ の上への商写像であり、写像 $\bar\psi\colon\bar p^{-1}(U)\to U\times(G/H)$ が連続に定まる。逆写像 $(x,uH)\mapsto\pi(\psi^{-1}(x,u))$ は、$\mathrm{id}_U\times\pi_H$ が開な全射で商写像なので連続である。$\square$

2 は Hus94 Chapter 6, Theorem 1.1(p. 73)にある。

縮小と $P/H$ の切断

$p\colon P\to X$ を主 $G$ 束とする。

  1. 主 $H$ 部分束 $Q\subset P$ について、$\sigma_Q(p(y)):=\pi(y)$($y\in Q$)は $\bar p\colon P/H\to X$ の連続な切断を矛盾なく定め、$Q=\pi^{-1}(\sigma_Q(X))$ である。
  2. $\pi_H\colon G\to G/H$ が局所切断をもつ、すなわち $G/H$ の各点が開近傍 $V$ と連続写像 $\tau\colon V\to G$ で $\pi_H\circ\tau=\mathrm{id}_V$ となるものをもつとする。このとき、$\bar p$ の任意の連続な切断 $\sigma$ について、$Q_\sigma:=\pi^{-1}(\sigma(X))$ は $P$ の主 $H$ 部分束である。
  3. 2 の仮定のもとで、$Q\mapsto\sigma_Q$ と $\sigma\mapsto Q_\sigma$ は、$P$ の主 $H$ 部分束(すなわち $H$ 縮小の同値類)の全体と、$P/H\cong P\times_G(G/H)$ の連続な切断の全体との、互いに逆な全単射である。

1.$y,y'\in Q$ が同じファイバーにあれば、$H$ は $Q$ のファイバーに推移的に作用するので $y'=yh$($h\in H$)であり、$\pi(y')=\pi(y)$ である。$p|_Q\colon Q\to X$ は全射なので $\sigma_Q$ は矛盾なく定まり、$\bar p\circ\sigma_Q=\mathrm{id}_X$ である。$\sigma_Q\circ p|_Q=\pi|_Q$ は連続で、$p|_Q$ は主束の射影なので商写像だから、$\sigma_Q$ は連続である。$Q\subset\pi^{-1}(\sigma_Q(X))$ は定義から明らかである。逆に $\pi(z)=\sigma_Q(x)$ なら $x=\bar p\pi(z)=p(z)$ で、$x$ の上の $y\in Q$ について $\pi(z)=\pi(y)$ なので $z=yh\in Q$ である。
2.$Q:=Q_\sigma$ とおく。$\pi(zh)=\pi(z)$ なので $Q$ は $H$ の作用で閉じ、$\sigma(x)=\pi(z)$ となる $z$ は $p(z)=\bar p\sigma(x)=x$ を満たすので $p(Q)=X$ である。局所自明性を示す。$x_0\in X$ をとり、$x_0$ を含む $P$ の自明化開集合 $U$ と自明化 $\psi=(p,\psi_2)$ をとる。prop-rsg-quotient の 3 により、$U$ の上で $\sigma(x)$ は $(x,s(x))$($s\colon U\to G/H$ は連続)と書ける。$s(x_0)$ のまわりの $\pi_H$ の局所切断 $\tau\colon V\to G$ をとり、$U':=U\cap s^{-1}(V)$ とおく。$x\in U'$ と $z\in p^{-1}(x)$ について
$$ z\in Q\iff\psi_2(z)H=s(x)=\tau(s(x))H\iff\tau(s(x))^{-1}\psi_2(z)\in H $$
である。そこで
$$ \chi\colon Q\cap p^{-1}(U')\to U'\times H,\qquad\chi(z):=\bigl(p(z),\ \tau(s(p(z)))^{-1}\psi_2(z)\bigr) $$
とおくと、$\chi$ は連続で、$\psi_2(zh)=\psi_2(z)h$ から $H$ 同変であり、第 1 成分は $p$ である。逆写像 $(x,h)\mapsto\psi^{-1}(x,\tau(s(x))h)$ は連続で、値は $Q$ に入る($\psi_2$ の値の剰余類が $s(x)$ だから)。よって $\chi$ は $H$ 同変な同相写像で、$Q$ は $U'$ の上で自明である。$x_0$ は任意なので、$Q$ は主 $H$ 部分束である。
3.$y\in Q_\sigma$ なら $\pi(y)\in\sigma(X)$ で $\bar p\pi(y)=p(y)$ なので $\pi(y)=\sigma(p(y))$、すなわち $\sigma_{Q_\sigma}=\sigma$ である。$Q_{\sigma_Q}=Q$ は 1 である。主 $H$ 部分束と縮小の同値類の対応は thm-rsg-extension の 2 による。$\square$

$G$ が Lie 群で $H$ が閉部分群なら、$\pi_H$ は局所切断をもつ(等質空間 の定理「剰余類多様体」)。この仮定は外せない(節「反例」の表の 1 行目)。同じ対応は Hus94 Chapter 6, Theorem 2.3(pp. 74–75)にある。$\bar p$ はファイバー $G/H$ のファイバー束なので、縮小の存在は切断の存在の問題になる。たとえば 2 の仮定のもとで、$X$ が CW 複体で、$i<\dim X$ のすべての $i$ について $\pi_i(G/H)=0$ なら、胞体ごとに切断を延ばすことで縮小が存在する(同書 Corollary 2.4, p. 75 の筋。この記事では証明しない)。

分類写像の持ち上げ

$i\colon H\to G$ を包含とし、$\omega_G\colon EG\to BG$、$\omega_H\colon EH\to BH$ を Milnor の構成(Milnorの構成)、$Bi\colon BH\to BG$ を同記事の命題「準同型が誘導する写像」の写像とする。$X$ 上の可算被覆的な主 $H$ 束の同型類の集合を $k_H(X)$ と書く(主束の分類定理)。主 $H$ 束の同型 $\varphi\colon Q\to Q'$ は同型 $[y,g]\mapsto[\varphi(y),g]$ を誘導するので、$Q\times_HG$ の同型類は $Q$ の同型類だけで決まる。

縮小の分類

$p\colon P\to X$ を可算被覆的な主 $G$ 束、$c\colon X\to BG$ をその分類写像($c^*EG\cong P$)とする。このとき $[g]\mapsto[g^*EH]$ は全単射
$$ \{[g]\in[X,BH]\mid Bi\circ g\simeq c\}\ \longrightarrow\ \{[Q]\in k_H(X)\mid Q\times_HG\cong P\} $$
を与える。とくに、$P$ が可算被覆的な主 $H$ 束 $Q$ による $H$ 縮小をもつことと、$Bi\circ g\simeq c$ となる連続写像 $g\colon X\to BH$ が存在することは同値である。$X$ がパラコンパクト Hausdorff 空間なら、$P$ の構造群が $H$ に縮小できることと、そのような $g$ が存在することは同値である。

連続写像 $g\colon X\to BH$ について $Q:=g^*EH$ とし、射影 $Q\to EH$ を $F$ とすると、$F$ は $H$ 同変で $\omega_H\circ F=g\circ q$ を満たす。Milnorの構成 の命題「構造群の拡大の分類写像」(準同型 $i$)により
$$ (g^*EH)\times_HG\ \cong\ (Bi\circ g)^*EG $$
である。$Bi\circ g\simeq c$ なら、$EG$ は可算被覆的なので 主束の分類定理 の定理「引き戻しのホモトピー不変性」により $(Bi\circ g)^*EG\cong c^*EG\cong P$ となり、写像は右辺に値をとる。写像 $[X,BH]\to k_H(X)$、$[g]\mapsto[g^*EH]$ は 主束の分類定理 の定理「Milnor の普遍束による分類」により全単射なので、その制限は単射である。全射を示す。$[Q]$ が右辺にあれば、同じ定理により $Q\cong g^*EH$ となる $g$ があり、$(Bi\circ g)^*EG\cong Q\times_HG\cong P\cong c^*EG$ である。$G$ についての同じ定理の単射性により $Bi\circ g\simeq c$ である。
「とくに」の部分:$H$ 縮小 $(Q,f)$ があれば thm-rsg-extension の 1 により $Q\times_HG\cong P$ である。逆に $g$ があれば $Q:=g^*EH$ は可算被覆的で $Q\times_HG\cong P$ なので、thm-rsg-extension の 3 により $H$ 縮小が得られる。パラコンパクト Hausdorff 空間の上の主 $H$ 束はすべて可算被覆的である(主束の分類定理 の系「パラコンパクト Hausdorff 空間の上の主束」)。$\square$

分類写像による記述は Hus94 Chapter 6 §5(p. 77)にある。右辺が数えるのは主 $H$ 束 $Q$ の同型類であって、縮小の同値類ではない。2 つの違いは $P$ のゲージ変換(ゲージ群(主束)、底を保つ $G$ 同変な自己同型)で埋まる。

ゲージ変換と縮小

$(Q,f)$、$(Q',f')$ を主 $G$ 束 $P$ の $H$ 縮小とする。$Q$ と $Q'$ が主 $H$ 束として同型であることと、$P$ のゲージ変換 $u$ で $(Q,u\circ f)$ と $(Q',f')$ が同値になるものが存在することは同値である。

要点:同型 $\varphi\colon Q\to Q'$ を拡大して $\Phi_{f'}$ と $\Phi_f^{-1}$ で挟む。

証明を開く

ゲージ変換 $u$ について $(Q,u\circ f)$ は $H$ 縮小である($u$ は $G$ 同変で底を保つ)。同値を与える同型 $\varphi\colon Q\to Q'$ があれば $Q\cong Q'$ である。逆に同型 $\varphi\colon Q\to Q'$ があるとき、$\varphi_G[y,g]:=[\varphi(y),g]$ は主 $G$ 束の同型 $Q\times_HG\to Q'\times_HG$ であり、thm-rsg-extension の 1 の $\Phi_f,\Phi_{f'}$ を使って $u:=\Phi_{f'}\circ\varphi_G\circ\Phi_f^{-1}$ とおくと、$u$ は底を保つ $G$ 同変な同相写像、すなわちゲージ変換である。$y\in Q$ について $u(f(y))=\Phi_{f'}[\varphi(y),e]=f'(\varphi(y))$ なので、$\varphi$ は $(Q,u\circ f)$ と $(Q',f')$ の同値を与える。$\square$

例

以下、$E\to X$ を階数 $n$ の実ベクトル束、$\mathrm{Fr}(E)$ をその枠束(線形同型 $u\colon\mathbb R^n\to E_x$ の全体に合成で $\mathrm{GL}_n(\mathbb R)$ を右から作用させたもの。主束 の定義「枠束」と同じで、局所自明化から局所枠が得られるので主 $\mathrm{GL}_n(\mathbb R)$ 束になる)とする。$\mathrm{GL}_n(\mathbb R)$ は Lie 群なので、閉部分群 $H$ について thm-rsg-section の 2 の仮定が成り立つ。

計量・向き・複素構造
  1. $H=\mathrm O(n)$:$u\in\mathrm{Fr}(E)_x$ の $\mathrm O(n)$ 軌道に、$u$ が正規直交になる $E_x$ の内積 $\langle a,b\rangle_u:=(u^{-1}a)\cdot(u^{-1}b)$ を対応させると、$\mathrm{Fr}(E)/\mathrm O(n)$ の $x$ 上のファイバーは $E_x$ の内積の全体と一対一に対応する。$\mathrm{Fr}(E)/\mathrm O(n)$ の連続な切断は $E$ の計量(ベクトル束の計量)であり、対応する主 $\mathrm O(n)$ 部分束は正規直交枠の全体である。$X$ がパラコンパクト Hausdorff なら計量が存在する(同記事の命題「計量の存在と凸性」)ので、構造群はいつも $\mathrm O(n)$ に縮小できる。
  2. $H=\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$($n\ge1$):$\mathrm{GL}_n(\mathbb R)/\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$ は行列式の符号で $\{\pm1\}$ と同一視され、$\mathrm{Fr}(E)/\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$ は各ファイバーが $E_x$ の 2 つの向きからなる 2 重被覆である。その連続な切断は $E$ の向きであり、縮小は向きの付いた枠の全体である。
  3. $n=2m$、$H=\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$($\mathbb C^m=\mathbb R^{2m}$ の $i$ 倍 $J_0$ と可換な実線形同型):$u$ の軌道に $J:=uJ_0u^{-1}$ を対応させると、ファイバーは $J^2=-\mathrm{id}$ となる $E_x$ の線形変換の全体と一対一に対応する。連続な切断は $E$ の複素構造であり、$E=TM$ なら概複素構造(概複素構造)である。$S^4$ は概複素構造をもたないので、$\mathrm{Fr}(TS^4)$ の構造群は $\mathrm{GL}_2(\mathbb C)$ に縮小できない(同記事の節「反例と注意」)。

要点:どれも、ファイバー $G/H$ を $G$ が推移的に作用する空間と同一視する。

確かめを開く

1:$k\in\mathrm O(n)$ は内積 $\cdot$ を保つので $\langle\ ,\ \rangle_{uk}=\langle\ ,\ \rangle_u$ である。$\langle\ ,\ \rangle_u=\langle\ ,\ \rangle_{u'}$ なら $u^{-1}u'$ は $\cdot$ を保つので $\mathrm O(n)$ に入る。任意の内積は Gram–Schmidt の直交化で正規直交基底をもつので全射である。行列で書くと $g\,\mathrm O(n)\mapsto(gg^{\mathsf T})^{-1}$ は $\mathrm{GL}_n(\mathbb R)/\mathrm O(n)$ から正定値対称行列の空間への連続な全単射で、逆写像 $S\mapsto S^{-1/2}\mathrm O(n)$(正定値対称行列の正の平方根は連続)も連続である。prop-rsg-quotient の 3 の局所自明化で書くと、切断の連続性は計量の行列成分の連続性と同じ条件になる。

2:$\det(uk)$ と $\det u$ の符号は $k\in\mathrm{GL}_n^+$ について等しく、同じ符号の 2 つの枠は $\mathrm{GL}_n^+$ の元で移り合う。

3:$k\in\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$ は $J_0$ と可換なので $(uk)J_0(uk)^{-1}=uJ_0u^{-1}$ である。$uJ_0u^{-1}=u'J_0u'^{-1}$ なら $u^{-1}u'$ は $J_0$ と可換で $\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$ に入る。$J^2=-\mathrm{id}$ なら $E_x$ は $J$ を $i$ 倍とする複素ベクトル空間で、複素基底 $(e_1,\dots,e_m)$ から実基底 $(e_1,Je_1,\dots,e_m,Je_m)$ が得られ(概複素構造 の命題「次元の偶数性と標準的な向き」)、この基底を与える枠 $u$ について $uJ_0u^{-1}=J$ となる($\mathbb R^{2m}$ の座標を $(x_1,y_1,\dots,x_m,y_m)$ の順にとる)。連続性:$u\mapsto uJ_0u^{-1}$ は連続なので、連続な切断から連続な $J$ が得られる。逆に $J$ が連続なら、$U$ の上の $E$ の局所自明化 $U\times\mathbb R^{2m}$ の上で、1 点 $x_0$ での $J(x_0)$ の複素基底 $e_1,\dots,e_m$ を固定すると、$(e_1,J(x)e_1,\dots,e_m,J(x)e_m)$ は $x_0$ の近くでも実基底であり(行列式の連続性)、$e_1,\dots,e_m$ は $J(x)$ の複素基底になる。この基底を与える枠 $u_x$ は $x$ について連続で $u_xJ_0u_x^{-1}=J(x)$ を満たすので、切断は連続である。$\square$

自明な群への縮小と 1 点の上の例

$H=\{e\}$ とする。主 $\{e\}$ 束 $Q\to X$ は同相写像であり、主 $\{e\}$ 部分束は連続な切断 $X\to P$ の像である。したがって $P$ の構造群が $\{e\}$ に縮小できることと $P$ が自明であることは同値である(主束の分類定理 の命題「同じ底の上の射と切断」の 2 と、自明化 $X\times G$ の切断 $x\mapsto(x,e)$)。$B\{e\}=E\{e\}$ は可縮なので(Milnorの構成 の定理「無限ジョインの可縮性」)、thm-rsg-classification は「可算被覆的な $P$ が自明であることと、分類写像が定値写像とホモトピックであることは同値」を与える。
縮小の同値類と主 $H$ 束の同型類は一般に一致しない。$X$ を 1 点、$G=\{\pm1\}$、$P=G$ とすると、$\{1\}$ と $\{-1\}$ は異なる主 $\{e\}$ 部分束($P/\{e\}=P$ の 2 つの切断)だが、主 $\{e\}$ 束としては同型であり、ゲージ変換 $u(g)=-g$ で移り合う(prop-rsg-gauge)。

Möbius 束の向き

$S^1$ 上の Möbius 束 $L$(主束 の例「被覆空間と Möbius 束」)の構造群は $\mathrm{GL}_1^+(\mathbb R)$ に縮小できない。$\mathrm{Fr}(L)/\mathrm{GL}_1^+(\mathbb R)$ は、変換関数 $\pm1$ をもつファイバー $\{\pm1\}$ の束、すなわち連結な 2 重被覆 $S^1\to S^1$、$z\mapsto z^2$ と同型である。被覆写像の切断の像は開かつ閉なので、全空間が連結な 2 重被覆は切断をもたない。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
$\pi_H$ が局所切断をもつこと(thm-rsg-section の 2)$G=\prod_{j\ge1}S^1$、$H=\prod_{j\ge1}\{\pm1\}$(直積位相)、$X=\prod_{j\ge1}S^1$、$P=X\times G$$P/H$ の連続な切断 $\sigma$ があるのに、$Q_\sigma$ は局所自明でなく主 $H$ 部分束にならない
$H$ が閉部分群であること(thm-rsg-extension の 2)$G=\mathbb R$、$H=\mathbb Q$(相対位相)、$X$ は 1 点、$P=\mathbb R$、$Q=\mathbb Q$$(Q,\text{包含})$ は縮小の条件を満たすが、像 $\mathbb Q$ は閉でない。$P/H=\mathbb R/\mathbb Q$ は密着空間になる
部分群の包含であること(単射でない準同型 $h\colon H\to G$ に替える)$h\colon\mathbb Z/2\to\{e\}$、$X$ は 1 点、$Q=\mathbb Z/2$拡大 $Q\times_h\{e\}$ は 1 点で、$y\mapsto[y,e]$ は単射でなく、縮小を部分集合として扱えない
反例の確かめ

1 行目の要点:$q(z):=(z_j^2)_j$ は $G/H$ から $X$ への同相写像を誘導するが、$q$ は局所切断をもたない。

要点:無限個の座標のうち、近傍が制限しない 1 つの座標を回すと、円周上の連続な平方根が必要になる。

確かめを開く

1 行目.$q\colon G\to X$、$q((z_j)_j):=(z_j^2)_j$ は連続な全射準同型で核は $H$ である。有限個の座標だけを開弧に制限した基本開集合の像は、$S^1\to S^1$、$z\mapsto z^2$ が開写像なので基本開集合であり、$q$ は開写像である。よって $q$ は連続な開全単射 $G/H\to X$ を誘導し、これは同相写像である。その逆を $s\colon X\to G/H$ とし、$P/H=X\times(G/H)$(prop-rsg-quotient の 3 で $U=X$)の切断 $\sigma(x):=(x,s(x))$ をとると、$Q_\sigma=\{(x,g)\mid gH=s(x)\}=\{(x,g)\mid q(g)=x\}$ である。$Q_\sigma$ がある $x_0$ の近傍 $U$ の上で自明なら、局所切断 $x\mapsto(x,t(x))$ から連続写像 $t\colon U\to G$ で $q\circ t=\mathrm{id}_U$ となるものが得られる。$U$ は、有限個の座標の集合 $F$ の外では制限のない基本開集合 $W\ni x_0$ を含む。$k\notin F$ をとり、$\ell\colon S^1\to W$ を $x_0$ の第 $k$ 座標を $z$ に替える写像とすると、$r:=\mathrm{pr}_k\circ t\circ\ell\colon S^1\to S^1$ は連続で $r(z)^2=z$ を満たす。$c(\theta):=r(e^{i\theta})e^{-i\theta/2}$($\theta\in[0,2\pi]$)は連続で $c^2=1$ なので定数であるが、$c(2\pi)=r(1)e^{-i\pi}=-c(0)$ となり矛盾する。同じ議論で、$\pi_H$ も $q$ も局所切断をもたない。

2 行目.$\mathbb Q$ は自身に自由かつ推移的に作用し、1 点の上の自明な主 $\mathbb Q$ 束であり、包含は $\mathbb Q$ 同変である。$\mathbb Q$ は $\mathbb R$ で稠密なので閉でない。空でない開集合 $W$ について $W+\mathbb Q=\mathbb R$(各 $x$ について $x-W$ は有理数を含む)なので、$\mathbb R/\mathbb Q$ の開集合は空集合と全体だけである。

3 行目.準同型 $h\colon H\to G$ による拡大は $Q\times_hG:=(Q\times G)/H$、$(y,g)k:=(yk,h(k)^{-1}g)$ で定める。ここでは $Q\times_h\{e\}=(Q\times\{e\})/(\mathbb Z/2)$ は 1 点なので、$\mathbb Z/2$ の 2 点が同じ点に移る。$\square$

補足

  • 可微分な場合:$G$ が Lie 群、$H$ が閉部分群、$P$ が可微分な主束なら、thm-rsg-section の切断を $C^\infty$ にとると $C^\infty$ な主 $H$ 部分束が得られる。$\mathrm{Fr}(TM)$ の $H$ 縮小は多様体の $H$ 構造とよばれ、Riemann 計量は $\mathrm O(n)$ 構造、向きは $\mathrm{GL}_n^+(\mathbb R)$ 構造、概複素構造は $\mathrm{GL}_m(\mathbb C)$ 構造である。

関連項目

参考文献

[1]
Dale Husemoller, Fibre Bundles, Graduate Texts in Mathematics 20, 3rd ed., Springer, 1994, 第 6 章 Theorem 1.1(p. 73、$P/H$ と $P\times_G(G/H)$)、Definition 2.1・Theorem 2.2(p. 74、縮小と拡大)、Theorem 2.3・Corollary 2.4(pp. 74–75、$P/H$ の切断)、Corollary 3.2・Theorem 4.1(p. 76、拡大との同型と変換関数)、§5(p. 77、分類写像の持ち上げ)

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