Chevalleyの構造定理

同義語:Chevalley's structure theoremBarsotti–Chevalleyの定理Barsotti–Chevalley theoremシュヴァレーの構造定理

概要

Chevalleyの構造定理(Chevalley's structure theorem)とは、完全体 $k$ 上の連結な群多様体 $G$ が、連結なアフィン正規部分群多様体 $N$ とアーベル多様体 $A=G/N$ による拡大にただ一通りに書けるという定理で、Barsotti と Chevalley による。$N$ は $G$ の連結なアフィン部分群多様体のうち最大のものであり、商 $G\to A$ はアーベル多様体への準同型の中で普遍的である。証明は、アフィンかつ完備な連結群が自明であることと、連結なアフィン正規部分群多様体が自明な群が完全体上では完備であることに基づく。不完全体の上では Weil 制限による反例があり、Néron モデルの特殊ファイバーの分類などに使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 代数群, アーベル多様体, 群スキーム, 完全体

Chevalleyの構造定理は、完全体の上の連結な群多様体 $G$ が、連結なアフィン正規部分群 $N$ とアーベル多様体 $A$ による拡大
$$ 1\to N\to G\to A\to1 $$
にただ一通りに書けることを主張する。Barsotti(1955)と Chevalley(1960)によるので、Barsotti–Chevalley の定理とも呼ばれる(MilAG Aside 10.30、p. 158)。この定理により、代数群の研究は、行列の群として実現できるアフィン代数群(代数群 の定理「アフィン代数群は線型」)、射影的で可換なアーベル多様体、そして両者の拡大の三つに分かれる。構成可能集合の像についての Chevalleyの定理 とは別の定理である。
部分群 $N$ は「$G$ に含まれる連結なアフィン部分群多様体のうち最大のもの」として特徴づけられ、商 $G\to A$ はアーベル多様体への準同型の中で普遍的である。この記事では、これらの特徴づけと一意性、準同型との両立、アフィン性・完備性の判定を証明し、存在を「連結なアフィン正規部分群多様体が自明なものだけである連結な群多様体は、完全体上では完備である」という一つの定理に帰着させる。この最後の定理だけは証明せず、所在と証明の筋を示す。

記法と主張

$k$ を体とする。代数群 の定義どおり、$k$ 上の代数群とは $k$ 上有限型の群スキームのことであり、$k$ 上滑らかな代数群を群多様体という。代数群 $G$ の代数的部分群で滑らかなものを部分群多様体という。連結な代数群は既約で、幾何的に連結である(MilAG Proposition 1.14、p. 21、Corollary 1.16、p. 22)。滑らかな代数群は幾何的に被約なので、連結な群多様体は幾何的に整である。したがって、アーベル多様体を「完備な連結群多様体」と言っても、アーベル多様体 の定義(完備で幾何的に整な群多様体)と同じものになる。

Chevalleyの構造定理

$k$ を完全体、$G$ を $k$ 上の連結な群多様体とする。このとき、$G$ の連結なアフィン正規部分群多様体 $N$ で、商 $A:=G/N$ がアーベル多様体になるものが、ただ一つ存在する。さらに、任意の拡大体 $K/k$ について、$N_K$ は $G_K$ に対する同じ性質の部分群である。

証明の構成

この形の主張は MilAG Theorem 10.25(p. 157)にある。一意性と体の拡大との両立は、完全体を仮定せずに thm-chst-properties の 1 から出る。存在は、最大の連結アフィン正規部分群による商を作る段階(prop-chst-greatest、証明する)と、その商が完全体上では完備になる段階(thm-chst-pseudo-abelian、所在と筋だけを示す)に分かれ、両者を合わせた証明は prf-chst-main にある。

構造定理の部分群と商の性質

$k$ を任意の体、$G$ を $k$ 上の連結な群多様体とし、$N$ を $G$ の連結なアフィン正規部分群多様体で $A:=G/N$ がアーベル多様体になるものとする($k$ が完全体なら thm-chst-main により存在する)。

  1. $G$ の連結なアフィン部分群多様体 $H$ は、正規でなくても $N$ に含まれる。とくに $N$ は $G$ の連結なアフィン部分群多様体のうち最大のものであり、$N$ の性質をもつ部分群はただ一つである。
  2. アーベル多様体 $B$ への準同型 $f\colon G\to B$ は、商 $G\to A$ を通ってただ一通りに分解する。
  3. $G'$ を連結な群多様体、$N'$ を $G'$ について同じ性質をもつ部分群、$A':=G'/N'$ とする。準同型 $\varphi\colon G\to G'$ は $N$ を $N'$ の中へ写し、準同型 $A\to A'$ を誘導する。
  4. $G$ がアフィンであることと $A$ が自明であることは同値であり、$G$ が完備であることと $N$ が自明であることは同値である。
  5. $G$ の交換子群 $\mathcal{D}G$ は $N$ に含まれる。とくに $\mathcal{D}G$ はアフィンである。

2 は、$G\to A$ がアーベル多様体への準同型として普遍であること、すなわち $A$ が $G$ の Albanese 多様体であることを述べている(MilAG Aside 10.30、p. 158 は単位元を保つ射についての普遍性を述べている)。

用いる一般論

証明では次の一般論を引用する。いずれも体上の代数群について成り立つ。

  1. 商と準同型定理。正規な代数的部分群 $N\subset G$ について、忠実平坦な準同型 $G\to G/N$ で核が $N$ のものがあり、$N$ を核に含む準同型はこれを通ってただ一通りに分解する。準同型 $\varphi\colon G\to G'$ は、商 $G\to G/\operatorname{Ker}\varphi$ と閉埋め込み $G/\operatorname{Ker}\varphi\to G'$ の合成になる(MilAG 6.16–6.18、p. 101)。$G/N$ の代数的部分群と、$N$ を含む $G$ の代数的部分群は、逆像をとる対応で一対一に対応し、正規性も対応する(MilAG Theorem 6.20、p. 102)。商は体の拡大で保たれる(MilAG Definition 5.7 の直後、p. 82)。
  2. 拡大と商。$1\to N\to G\to Q\to1$ を代数群の完全列とする。$N$ と $Q$ がアフィン(滑らか、連結)なら $G$ もそうであり、$G$ がアフィン(滑らか、連結)なら $Q$ もそうである(MilAG Lemma 10.1、p. 152)。$H,N$ が代数的部分群で $N$ が正規なら、$H$ と $N$ がアフィン(連結、滑らか)のとき、$HN$ もそうである(MilAG Lemma 10.2、p. 152)。
  3. 完備性。完備なスキームの閉部分スキームは完備である(MilAG A.114 (a)、p. 511)。
  4. 交換子群。$G/\mathcal{D}G$ は可換であり、$\mathcal{D}G$ は商が可換になる正規な代数的部分群のうち最小のものである(MilAG Proposition 8.19、p. 131)。$G$ が連結で滑らかなら $\mathcal{D}G$ も連結で滑らかである(MilAG Corollary 8.21、p. 131)。

二つの補題

構造定理の性質はすべて、次の二つの補題から出る。

アフィンかつ完備な群

$k$ 上の連結な群多様体 $H$ がアフィンかつ完備なら、$H$ は自明な群 $\operatorname{Spec}k$ である。

$H=\operatorname{Spec}R$ とし、$\bar k$ を $k$ の代数閉包とする。$H_{\bar k}=\operatorname{Spec}(R\otimes_k\bar k)$ は連結(連結な代数群は幾何的に連結)で被約($H$ は滑らか)であり、固有射の底変換は固有なので完備である。アーベル多様体 の補題「完備連結スキーム上の大域関数」により、$R\otimes_k\bar k=H^0(H_{\bar k},\mathcal{O})=\bar k$ である。したがって $\dim_kR=\dim_{\bar k}(R\otimes_k\bar k)=1$ であり、$R=k$、すなわち $H=\operatorname{Spec}k$ である。$\square$

アフィンな群からアーベル多様体への準同型

$H$ を $k$ 上の連結なアフィン群多様体、$B$ をアーベル多様体とする。準同型 $f\colon H\to B$ は自明である。

$K:=\operatorname{Ker}f$ とする。rem-chst-facts の 1 により、$f$ は商 $H\to H/K$ と閉埋め込み $H/K\to B$ の合成である。rem-chst-facts の 2 により $H/K$ はアフィンで連結で滑らか、すなわち連結なアフィン群多様体である。$H/K$ は完備な $B$ の閉部分スキームと同型なので完備である(rem-chst-facts の 3)。lem-chst-affine-complete により $H/K$ は自明であり、$K=H$、すなわち $f$ は自明である。$\square$

補題の要点は、アフィンであることと完備であることが両立しないことにある。たとえば $\mathbb{G}_m$ や $\mathbb{G}_a$ から楕円曲線への準同型は自明であり、楕円曲線はどんな線型代数群の部分群にもならない。

部分群と商の性質の証明

$\pi\colon G\to A$ を商写像とする。

  1. 合成 $H\hookrightarrow G\xrightarrow{\pi}A$ は連結なアフィン群多様体からアーベル多様体への準同型なので、lem-chst-affine-to-abelian により自明である。したがって包含 $H\hookrightarrow G$ は $\pi$ の核 $N$ を通り、$H\subset N$ である。$N_1$ も $N$ と同じ性質をもつなら、いま示したことから $N_1\subset N$、役割を入れ替えて $N\subset N_1$ なので $N_1=N$ である。
  2. 制限 $f|_N\colon N\to B$ は lem-chst-affine-to-abelian により自明なので、$N\subset\operatorname{Ker}f$ である。商の普遍性(rem-chst-facts の 1)により、$f$ は $\pi$ を通ってただ一通りに分解する。
  3. $\pi'\colon G'\to A'$ を商写像とする。合成 $N\hookrightarrow G\xrightarrow{\varphi}G'\xrightarrow{\pi'}A'$ は lem-chst-affine-to-abelian により自明なので、$\varphi|_N$ は $\pi'$ の核 $N'$ を通る。すると $\pi'\circ\varphi$ は $N$ を核に含むので、商の普遍性により準同型 $A\to A'$ を誘導する。
  4. $G$ がアフィンなら、$A=G/N$ はアフィンである(rem-chst-facts の 2)。$A$ は完備な連結群多様体でもあるので、lem-chst-affine-complete により自明である。逆に $A$ が自明なら $G=N$ はアフィンである。$G$ が完備なら、閉部分群 $N$ は完備であり(rem-chst-facts の 3)、アフィンな連結群多様体なので lem-chst-affine-complete により自明である。逆に $N$ が自明なら $G\cong A$ は完備である。
  5. $A$ は可換である(アーベル多様体 の系「可換性」)。$N$ は商 $G/N=A$ が可換になる正規な代数的部分群なので、rem-chst-facts の 4 により $\mathcal{D}G\subset N$ である。$\mathcal{D}G$ はアフィンな $N$ の閉部分スキームなのでアフィンである。$\square$

thm-chst-main の後半(体の拡大との両立)もここから出る。$K/k$ を拡大体とすると、$N_K$ は $G_K$ の連結なアフィン正規部分群多様体であり(連結性は幾何的連結性から、アフィン性・滑らかさ・正規性は底変換で保たれる)、商は底変換と両立するので $G_K/N_K\cong(G/N)_K$ はアーベル多様体である。1 は $K$ が完全体でなくても成り立つので、$N_K$ は $G_K$ についての唯一の部分群である。
5 から、完全体上の連結な群多様体 $G$ の交換子群は必ずアフィンであり、とくに $G$ が交換子群に等しいなら $G$ はアフィンである。

存在の証明

存在の証明は二段に分かれる。第一段では、完全体を仮定せずに、最大の連結アフィン正規部分群をとって商を作る。

最大の連結アフィン正規部分群

$k$ を任意の体、$G$ を $k$ 上の連結な群多様体とする。

  1. $G$ の連結なアフィン正規部分群多様体のうち最大のもの $N_{\max}$ が存在する。
  2. 商 $Q:=G/N_{\max}$ は連結な群多様体であり、$Q$ の連結なアフィン正規部分群多様体は自明な群だけである。
  1. 連結なアフィン正規部分群多様体の全体を $\mathcal{S}$ とする。自明な群は $\mathcal{S}$ に属するので $\mathcal{S}$ は空でない。$N\in\mathcal{S}$ を次元が最大のものとする。任意の $H\in\mathcal{S}$ について、$HN$ は連結でアフィンで滑らかであり(rem-chst-facts の 2)、$H$ と $N$ が正規なので $HN$ も正規である。よって $HN\in\mathcal{S}$ であり、$N\subset HN$、$\dim HN\le\dim N$ である。$HN$ は既約で、その既約な閉部分集合 $N$ と次元が等しいので、位相空間として $N=HN$ であり、どちらも被約なので部分スキームとしても等しい。したがって $H\subset N$ であり、$N$ が最大である。
  2. $Q$ が連結な群多様体であることは rem-chst-facts の 2 による。$\bar H\subset Q$ を連結なアフィン正規部分群多様体とし、その $G$ での逆像を $H'$ とする。$H'$ は正規で(rem-chst-facts の 1)、完全列 $1\to N_{\max}\to H'\to\bar H\to1$ があるので、$H'$ は連結でアフィンで滑らかである(rem-chst-facts の 2)。$N_{\max}$ の最大性から $H'\subset N_{\max}$、したがって $\bar H=H'/N_{\max}$ は自明である。$\square$

この証明は MilAG Proposition 10.3(pp. 152–153)と Proposition 10.5(p. 153)による。連結なアフィン正規部分群多様体が自明な群だけである連結な群多様体を擬アーベル多様体(pseudo-abelian variety)という(MilAG Definition 10.4、p. 153)。第二段は次の定理である。

完全体上の擬アーベル多様体

完全体の上の擬アーベル多様体は完備であり、したがってアーベル多様体である。

この定理は MilAG Theorem 10.24(pp. 156–157)にあり、この記事では証明しない。証明の筋は次のとおりである。$G$ を擬アーベル多様体とすると、$G_{\bar k}$ の最大の連結アフィン正規部分群は一意性から Galois 群で安定であり、$k$ が完全体なので $k$ 上に降りる。それは自明なので $G_{\bar k}$ も擬アーベル多様体であり、$k$ は代数閉体としてよい。次元についての帰納法を使い、$G$ の中心 $Z$ を考える。$\dim Z=0$ なら $G$ はアフィンになり、自明である。$Z_{\mathrm{red}}$ が完備なら、それを補う正規部分群 $N$ で $Z_{\mathrm{red}}\times N\to G$ が有限な核をもつ全射になるものがあり(Rosenlicht の分解定理、MilAG Theorem 10.22、p. 156)、$N$ は帰納法の仮定により完備、したがって $G$ も完備である。$Z_{\mathrm{red}}$ が完備でなければ、正の次元のアフィン部分群を含み(Rosenlicht の二分法、MilAG Proposition 10.23、p. 156。証明は Mil13 Proposition 4.1(p. 7)とその証明(pp. 8–9)にある)、それは中心に含まれるので正規であり、擬アーベル性に反する。
thm-chst-main の証明を完成させる。

prop-chst-greatest により、$G$ の最大の連結アフィン正規部分群多様体 $N_{\max}$ をとると、$G/N_{\max}$ は擬アーベル多様体である。$k$ は完全体なので、thm-chst-pseudo-abelian により $G/N_{\max}$ はアーベル多様体である。よって $N:=N_{\max}$ が求める部分群である。一意性と体の拡大との両立は thm-chst-properties の 1 とその後の注意で示した。$\square$

例

両極端と直積
  1. $G$ がアフィン($\mathrm{GL}_n$、乗法群 $\mathbb{G}_m$、加法群 $\mathbb{G}_a$ など)なら $N=G$、$A$ は自明である。$G$ がアーベル多様体なら $N$ は自明で $A=G$ である(thm-chst-properties の 4)。
  2. $B$ をアーベル多様体、$H$ を連結なアフィン群多様体とし、$G:=B\times H$ とする。$\{0\}\times H$ は連結なアフィン正規部分群多様体で、商は $B$ と同型なので、thm-chst-properties の 1 によりこれが $N$ である。たとえば楕円曲線 $E$ について $E\times\mathbb{G}_m$ の $N$ は $\{0\}\times\mathbb{G}_m$ である。

構造定理の拡大はいつも直積に分かれるわけではない。

分裂しない拡大

$k$ を標数 $0$ の体、$A$ を次元 $g\ge1$ のアーベル多様体とする。$A$ の普遍ベクトル拡大とよばれる拡大
$$ 1\to V\to E(A)\to A\to1 $$
があり、$V$ は $\mathbb{G}_a^g$ と同型なベクトル群、$E(A)$ は大域的な正則関数が定数だけ($\mathcal{O}(E(A))=k$)の群多様体である(MilAG §2b、p. 43。この記事では証明しない)。$V$ は連結なアフィン正規部分群多様体で商が $A$ なので、これが $E(A)$ に対する構造定理の拡大である。
この拡大は分裂しない。実際、代数群として $E(A)\cong A\times V$ なら、射影 $A\times V\to V\cong\mathbb{G}_a^g$ は全射なので、$V$ の座標関数 $x_1$ を引き戻すと $E(A)$ の上の定数でない正則関数が得られ、$\mathcal{O}(E(A))=k$ に反する。同じ理由で、$E(A)$ からアフィン代数群 $H=\operatorname{Spec}S$ への準同型 $f$ は自明である。$f$ は $k$ 代数の準同型 $S\to\mathcal{O}(E(A))=k$ に対応するので、$f$ は 1 点への定数写像であり、単位元を保つので自明である。とくに、恒等写像を考えると $E(A)$ はアフィンでない。また $N=V$ が自明でないので、thm-chst-properties の 4 により完備でもない。

Néronモデルの特殊ファイバー

構造定理が数論で最もよく使われるのは、アーベル多様体の還元を調べるときである。$R$ を完全な剰余体 $k$ をもつ完備離散付値環、$K$ をその商体、$A_K$ を $K$ 上のアーベル多様体とし、$\mathcal{A}$ をその Néronモデル とする。特殊ファイバー $\mathcal{A}_k$ の単位元成分 $\mathcal{A}_k^0$ は $k$ 上の連結な群多様体なので、構造定理により
$$ 0\to L\to\mathcal{A}_k^0\to B\to0 $$
($L$ は可換な連結アフィン群多様体、$B$ はアーベル多様体)に書ける(MilAG Example 10.28、p. 158)。完全体上の可換な連結アフィン群多様体は、乗法型の部分群と冪単な部分群の直積に分かれる(MilAG Theorem 17.17 (b)、p. 295)。$L$ の乗法型の部分と冪単な部分の大きさによって還元の型(良い還元、半安定還元など)が分けられる。この分類と、有限次拡大のあとでは半安定還元になるという定理は、Néronモデル の注意「特殊ファイバーの構造と半安定還元」にある。

アフィンな商による分解との比較

構造定理と対になるのが、アフィンな代数群を商にとる分解である。任意の体の上の代数群 $G$ について、正規な代数的部分群 $G_{\mathrm{ant}}$ で、$\mathcal{O}(G_{\mathrm{ant}})=k$(反アフィン)かつ商 $G_{\mathrm{aff}}:=G/G_{\mathrm{ant}}$ がアフィンになるものがただ一つあり、$G\to G_{\mathrm{aff}}$ はアフィン代数群への準同型の中で普遍的である(MilAG Proposition 10.33、p. 159)。反アフィンな代数群は連結で滑らかな可換群であり(MilAG Corollary 10.12、p. 154、Proposition 10.34、pp. 159–160)、連結な $G$ では中心に含まれる(MilAG Corollary 10.11、p. 154)。

構造定理の分解アフィンな商による分解
部分群連結なアフィン正規部分群多様体 $N$反アフィンな部分群 $G_{\mathrm{ant}}$(中心に含まれる)
商アーベル多様体 $G/N$アフィン代数群 $G_{\mathrm{aff}}$
体の条件完全体(一意性は任意の体)任意の体
普遍性アーベル多様体への準同型アフィン代数群への準同型
$G=B\times H$ のとき$N=H$、商は $B$$G_{\mathrm{ant}}=B$、$G_{\mathrm{aff}}=H$
$G=E(A)$ のとき$N=V$、商は $A$$G_{\mathrm{ant}}=E(A)$、$G_{\mathrm{aff}}$ は自明

表の最後の 2 行は ex-chst-basic と ex-chst-nonsplit による。$B\times H$ の行では、$\mathcal{O}(B\times H)=\mathcal{O}(H)$($\mathcal{O}(B)=k$ による)なので $G\to G_{\mathrm{aff}}$ は第 2 射影である。二つの分解では、アフィンな部分が下に来るか上に来るかが逆になっている。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
$G$ の連結性$E\times(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})_k$($E$ は楕円曲線)連結なアフィン正規部分群による商がアーベル多様体になること
$G$ の滑らかさ標数 $p$ で $E\times\mu_p$滑らかな $N$ による商がアーベル多様体になること
$k$ が完全体であること純非分離な有限次拡大 $l/k$($l\ne k$)とアーベル多様体 $B\ne0$ の Weil制限 $R_{l/k}B$連結なアフィン正規部分群多様体による商がアーベル多様体になること
反例の確認

各行を確かめる。

確認を開く

1 行目:$G:=E\times(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})_k$ は 2 つの連結成分をもつ。$N$ を $G$ の連結な正規部分群とする。第 2 射影 $q\colon G\to(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})_k$ による $N$ の像は単位元を含む連結な部分群なので自明であり、$q$ は $N$ を核に含むので全射 $G/N\to(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})_k$ を誘導する。よって $G/N$ は連結でなく、アーベル多様体でない。単位元成分 $G^\circ=E\times\{0\}$ には構造定理が当てはまる。

2 行目:$G:=E\times\mu_p$ は連結だが、$\mu_p$ が被約でないので滑らかでない。$N$ を連結なアフィン正規部分群多様体で $G/N$ がアーベル多様体になるものとする。合成 $N\to G\to E$ は lem-chst-affine-to-abelian により自明なので $N\subset\{0\}\times\mu_p$ である。$\mu_p$ の位相空間は 1 点なので $N$ は 0 次元の連結な群多様体であり、有限で滑らかな連結スキームで有理点 $e$ をもつから $\operatorname{Spec}k$ である。すると $G/N=G$ は滑らかでなく、アーベル多様体でない。一方、滑らかでない $N=\{0\}\times\mu_p$ をとれば $G/N\cong E$ はアーベル多様体である。なお、任意の体の上の連結な群多様体 $G$ には、滑らかとは限らない連結なアフィン正規部分群 $N$ で $G/N$ がアーベル多様体になるもののうち、最小のものがある(MilAG Theorem 10.26、p. 157)。

3 行目:$R_{l/k}B$ は連結な群多様体で、連結なアフィン正規部分群多様体は自明なものだけだが(擬アーベル多様体)、アーベル多様体ではない(Tot13 序文、arXiv 版 p. 2。Raynaud の例)。$N$ を連結なアフィン正規部分群多様体で商がアーベル多様体になるものとすると、$N$ は自明なので $R_{l/k}B$ 自身がアーベル多様体となり、矛盾する。完全体でない体の上では、擬アーベル多様体 $G$ は可換であり、アーベル多様体 $A$ と連結で可換な冪単群多様体 $U$ による完全列 $1\to A\to G\to U\to1$ にただ一通りに書ける(Tot13 Theorem 2.1、arXiv 版 p. 4、MilAG Aside 10.29、p. 158)。

関連項目

参考文献

[2]
Burt Totaro, Pseudo-abelian varieties, Annales scientifiques de l'École normale supérieure, 2013, 序文(arXiv 版 v3 の p. 2、Raynaud による Weil 制限の例)、Theorem 2.1(arXiv 版 p. 4)
[3]
James S. Milne, A proof of the Barsotti–Chevalley theorem on algebraic groups, arXiv preprint, 2013, Proposition 4.1(p. 7、Rosenlicht の二分法)とその証明(pp. 8–9)

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