exodromy

同義語:エクソドロミーexodromy同値exodromyの定理exodromy equivalenceexodromic特殊化写像(構成可能層)

概要

exodromy(exodromy equivalence)とは、層別空間の上の構成可能層(各層の上で局所定数な層)と、出口道の∞圏からの関手とのあいだの同値である。層 $F$ には、各点の茎と、低い層から高い層へ向かう出口道に沿った特殊化写像が対応する。局所定数層と基本亜群の表現の対応(モノドロミー)の一般化で、Lurie はパラコンパクトで局所的に singular shape な空間の円錐的な層別について空間に値をとる層で証明し、Barwick–Glasman–Haine はスキームのエタール層へ広げた。原点で分けた実直線では図式 $V_-\leftarrow V_0\to V_+$ による分類になり、複素平面ではモノドロミーの固定点への写像が加わる。収束点列の上の局所定数層は余積をもたず、どの関手の圏とも同値でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 出口道の∞圏, 構成可能層, 局所系, 空間の∞圏

exodromy(exodromy equivalence)は、層別空間の上の構成可能層と、出口道の∞圏からの関手とのあいだの同値である。局所定数層が基本群(基本亜群)の表現と同じものであるというモノドロミーの対応(局所系の定理「局所系と基本群の表現の対応」)を、各層の上でだけ局所定数な層へ広げたものにあたる。名前は、モノドロミー(monodromy)と出口道(exit path)を合わせた造語である(HPT24 §0.1 の脚注 2、p. 1)。
構成可能層 $F$ に対応する関手は、各点 $x$ に茎 $F_x$ を、各出口道 $x\to y$ に特殊化写像 $F_x\to F_y$ を対応させ、出口道のホモトピーにその整合性を対応させる(HPT24 §0.1、p. 2)。局所定数層では道に沿った平行移動が可逆だったが、構成可能層では低い層の茎から高い層の茎への写像しかなく、逆向きの写像はない。これが、基本∞亜群の代わりに可逆でない射をもつ出口道の∞圏が現れる理由である。
円錐的な層別について、空間に値をとる層の形で Lurie がこの同値を証明した。Haine–Porta–Teyssier は円錐的でない層別へ、Barwick–Glasman–Haine はスキームのエタール層へと広げた。この記事では、これらの定理を所在付きで述べ、原点で分けた実直線の上で exodromy を直接確かめる。円錐的でない層別で exodromy が成り立つ例、原点で分けた複素平面の上の構成可能層の記述を与え、最後に、局所定数層がどんな圏の上の関手としても書けない例を証明する。

構成可能層

$P$ を半順序集合、$(X,s)$ を $P$-層別空間とする。$X$ の上の(集合・加群・空間に値をとる)層 $F$ が $P$-構成可能であるとは、すべての $p\in P$ について、層 $X_p$ への制限 $F|_{X_p}$ が局所定数であることをいう(HA17 Definition A.5.2、p. 1421)。構成可能層の記事の言葉では「弱構成可能」にあたり、茎の有限性は課さない。空間に値をとる $P$-構成可能層の∞圏を $\operatorname{Shv}_P(X)$ と書く。
層別が自明なとき、構成可能層は局所定数層である。集合に値をとる局所定数層については、$X$ が十分よい空間なら、茎を並べる操作が、局所定数層の圏から基本亜群 $\pi_{\le1}X$ からの関手の圏 $\operatorname{Fun}(\pi_{\le1}X,\mathbf{Set})$ への圏同値を与える(HA17 p. 1401。被覆空間の定理「被覆の圏と基本群が作用する集合」)。空間に値をとる層では、$X$ が局所的に singular shape(次の段落)なら、局所定数層の∞圏は $\operatorname{Fun}(\operatorname{Sing}X,\mathcal S)$ と同値である(HA17 Theorem A.4.19、p. 1421)。ここで $\mathcal S$ は空間の∞圏である。
位相空間 $X$ が singular shape をもつとは、余単位写像 $|\operatorname{Sing}X|\to X$ が形の同値(層の∞トポスの間の幾何的射として形を保つもの)であることをいう(HA17 Definition A.4.9、p. 1419)。$X$ がパラコンパクトなら、これは任意の CW 複体 $Y$ について、写像空間の比較 $\operatorname{Map}(X,Y)\to\operatorname{Map}(\operatorname{Sing}X,\operatorname{Sing}Y)$ がホモトピー同値であることと同じである(同 Example A.4.12、p. 1419)。すべての開集合が singular shape をもつとき、$X$ は局所的に singular shape であるという(同 Definition A.4.15、p. 1420)。距離化可能な絶対近傍レトラクトは singular shape をもち(同 pp. 1401–1402)、ANRの開集合は ANR なので(ANRの命題「開集合とレトラクトへの遺伝」)、多様体や有限単体複体の実現は局所的に singular shape である(ANRの例「多様体と局所有限CW複体」)。半順序集合 $P$ が昇鎖条件を満たすとは、空でない部分集合がつねに極大元をもつことをいう(同 Definition A.5.7、p. 1422)。

Lurie の exodromy の定理

exodromy の定理(円錐的な場合)

$X$ をパラコンパクトで局所的に singular shape な空間とし、昇鎖条件を満たす半順序集合 $P$ による円錐的な層別をもつとする。このとき、関手 $F\colon\operatorname{Sing}^P(X)\to\mathcal S$ に、開集合 $U$ ごとの極限 $\varprojlim_{\operatorname{Sing}^P(U)}F$ を対応させる関手
$$ \Psi_X\colon\operatorname{Fun}(\operatorname{Sing}^P(X),\mathcal S)\longrightarrow\operatorname{Shv}_P(X) $$
は∞圏の同値である。

仮定の役割

定理は、構成可能層の∞圏を、出口道の∞圏 $\operatorname{Sing}^P(X)$ から $\mathcal S$ への関手の∞圏として完全に記述する。層別が円錐的であるという仮定と $P$ の昇鎖条件は、層についての帰納法と、錐の近傍での貼り合わせのために使われる。円錐的でない層別では $\operatorname{Sing}^P(X)$ が∞圏になるとは限らないので、定理の形のままでは成り立たない。

これは HA17 Theorem A.9.3(p. 1457)である。この記事では証明しない。Lurie は関手を左ファイブレーション $Y\to\operatorname{Sing}^P(X)$ で表し、$\Psi_X(Y)(U)$ を $\operatorname{Sing}^P(U)$ の上の切断の空間 $\operatorname{Fun}_{\operatorname{Sing}^P(X)}(\operatorname{Sing}^P(U),Y)$ として定める(同 Construction A.9.2、p. 1457)。左ファイブレーションの切断の空間は、それが分類する関手の極限である(HTT09 Corollary 3.3.3.4、p. 216)。証明は、昇鎖条件を使った層についての帰納法で、錐の近傍 $Z\times C(Y)$ の上の構成可能層を、層 $Z$ の上の局所定数層と、その外側の層の上の構成可能層との貼り合わせ(recollement)で記述して行う(HA17 §A.8(p. 1443 から)と §A.9 の Lemma A.9.13 以下)。同じ仮定の下で、包含 $\operatorname{Sing}^P(X)\to\operatorname{Sing}X$ は弱ホモトピー同値である(同 Corollary A.9.4、p. 1457)。
直観的には、$\Psi_X$ の逆は層 $F$ に「茎と特殊化写像」を対応させる関手である。同値はどちらの側でも 0-切断対象(写像空間がすべて離散的な対象)を保つ。$X$ の上の空間に値をとる層の 0-切断対象は集合に値をとる層と同じものである(HTT09 Corollary 7.2.1.17 の証明、p. 724)ので、0-切断対象どうしを比べると、集合に値をとる $P$-構成可能層の圏が、集合に値をとる関手 $\operatorname{Sing}^P(X)\to\mathbf{Set}$ の圏と同値になる。集合に値をとる関手はホモトピー圏 $h\operatorname{Sing}^P(X)$ を経由する(ホモトピー圏をとる関手は脈体の左随伴である。HTT09 Proposition 1.2.3.1、p. 28)。$h\operatorname{Sing}^P(X)$ の射は、出口道を出口道のホモトピーで割った類であり、これが MacPherson の考えた出口道の圏である。

円錐的でない層別と係数

円錐的でない層別では、$\operatorname{Sing}^P(X)$ が∞圏になるとは限らない(出口道の∞圏の例「反例:出口道の単体的集合が∞圏にならない層別」)。Haine–Porta–Teyssier は、層別空間 $(X,P)$ が exodromic であることを、構成可能な超層の∞圏 $\operatorname{Cons}_P^{\mathrm{hyp}}(X)$ について次の 3 条件で定めた(HPT24 Definition 0.2.1、p. 2):(1) 原子的な対象(写像空間の関手が余極限を保つ対象)で生成される、(2) すべての超層の∞圏の中で極限と余極限で閉じている、(3) 半順序集合からの引き戻し $\operatorname{Fun}(P,\mathcal S)\to\operatorname{Cons}^{\mathrm{hyp}}_P(X)$ が極限を保つ。このとき原子的な対象のなす∞圏の反対圏を出口道の∞圏 $\Pi_\infty(X,P)$ と定めると、定義により $\operatorname{Cons}^{\mathrm{hyp}}_P(X)\simeq\operatorname{Fun}(\Pi_\infty(X,P),\mathcal S)$ である。

  • 円錐的で層が局所的に弱可縮なら exodromic で、$\Pi_\infty(X,P)\simeq\operatorname{Sing}^P(X)$ である(HPT24 Example 2.2.13、p. 17、Recollection 5.5.1、p. 56)。
  • exodromic な層別の粗化は exodromic で、出口道の∞圏は、粗化で同値になる射を可逆にした局所化である(同 Theorem 0.3.1 の 3、p. 3)。局所的に、層が局所的に弱可縮な円錐的な細分をもつ層別は exodromic である(同 Corollary 0.4.1、p. 4)。
  • 実解析多様体の局所有限な劣解析的層別は exodromic で、コンパクトなら出口道の∞圏は有限である(同 Theorem 0.4.2、p. 4)。
  • 係数:exodromic なら、コンパクトに組み立てられた表示可能∞圏 $\mathcal E$(たとえば加群の導来∞圏)に値をとる構成可能層についても exodromy が成り立つ(同 Corollary 4.1.15、p. 45)。

実直線と複素平面での計算

$\Lambda$ を環とする。$\mathbb R$ を $X_0=\{0\}$、$X_1=\mathbb R\setminus\{0\}$ に分けた $[1]$-層別を考える。$[1]$-構成可能な $\Lambda$ 加群の層とは、$\mathbb R\setminus\{0\}$ の上で局所定数な層であり、構成可能層の記事の層別 $\mathcal S_0$ に関して弱構成可能な層と同じである。出口道の∞圏は、半順序集合 $Q=\{c,-,+\}$($c< -$、$c< +$)の脈体と同値である(出口道の∞圏の系「原点で分けた Euclid 空間」の 1。$c$ は原点、$\pm$ は正負の半直線の点にあたる)。
層 $F$ と原点から出る出口道 $\beta_\pm(\tau):=\pm\tau$ について、特殊化写像 $\operatorname{sp}_\pm\colon F_0\to F_{\pm1}$ を次で定める:$\sigma\in F_0$ を $(-\varepsilon,\varepsilon)$ の上の切断 $s$ に延ばし(構成可能層の補題「原点のまわりの切断は茎で決まる」により延長はただ 1 つ)、$s$ を $\pm(0,\varepsilon)$ に制限する。$F|_{\mathbb R_\pm}$ は開区間の上の局所定数層なので定数層であり、制限 $\Gamma(\mathbb R_\pm,F)\to\Gamma(\pm(0,\varepsilon),F)$ と $\Gamma(\mathbb R_\pm,F)\to F_{\pm1}$ は同型である。この同型で $s|_{\pm(0,\varepsilon)}$ を $F_{\pm1}$ の元とみたものを $\operatorname{sp}_\pm(\sigma)$ とする。

原点で分けた実直線の exodromy

$F\mapsto(F_{-1}\xleftarrow{\operatorname{sp}_-}F_0\xrightarrow{\operatorname{sp}_+}F_1)$ は、$[1]$-構成可能な $\Lambda$ 加群の層の圏から、関手 $Q\to\operatorname{Mod}_\Lambda$ の圏への圏同値である。

関手 $Q\to\operatorname{Mod}_\Lambda$ は、$Q$ の射が $c\to-$ と $c\to+$(と恒等射)だけで、合成の条件がないので、$\Lambda$ 加群 $V_-,V_0,V_+$ と線形写像 $V_0\to V_\pm$ の組、すなわち 構成可能層の定義「原点で分けた直線の図式」の図式 $V_-\leftarrow V_0\to V_+$ と同じものである。関手の間の自然変換も図式の射と同じものである。
構成可能層の記事は、$F$ に図式 $\Phi(F)=(\Gamma(\mathbb R_-,F)\xleftarrow{r_-}F_0\xrightarrow{r_+}\Gamma(\mathbb R_+,F))$ を対応させる関手 $\Phi$ を、$r_\pm(\sigma)$ を「$\sigma$ を $(-\varepsilon,\varepsilon)$ の上の切断に延ばし、$\pm(0,\varepsilon)$ に制限して $\Gamma(\mathbb R_\pm,F)$ の元とみたもの」として定め、$\Phi$ が圏同値であることを証明している(同記事の定理「実直線の上の構成可能層の分類」)。特殊化写像の定義を比べると、自然な同型 $\Gamma(\mathbb R_\pm,F)\cong F_{\pm1}$ の下で $\operatorname{sp}_\pm$ は $r_\pm$ に一致する。これらの同型は層の射と両立するので、主張の関手は $\Phi$ と自然同型であり、圏同値である。$\square$

$Q$ は出口道の∞圏と同値で、$\operatorname{sp}_\pm$ は出口道 $\beta_\pm$ に沿った特殊化写像なので、この定理は、exodromy を $\Lambda$ 加群の層について $(\mathbb R,\{0\})$ で直接確かめたものである。$0$ から $y>0$ への出口道はどれも、$\beta_+$ と $\mathbb R_+$ の中の道をつないだものと出口道としてホモトピックで、特殊化写像は道によらない。これは $Q$ で $c$ から $+$ への射がただ 1 つであることに対応する。
円錐的でない層別でも、構成可能層は出口道の圏からの関手になりうる。

円錐的でない層別での exodromy

$\mathbb R$ を $Y_0=(-\infty,0]$、$Y_1=(0,\infty)$ に分けた $[1]$-層別(円錐的でない。層別空間の例「反例:円錐的でない層別」)について、$F\mapsto(F_0\xrightarrow{\operatorname{sp}_+}F_1)$ は、この層別に関して構成可能な $\Lambda$ 加群の層の圏から、関手 $[1]\to\operatorname{Mod}_\Lambda$ の圏への圏同値である。

要点:この層別に関して構成可能であることは、原点で分けた層別に関して構成可能で、しかも図式の $r_-$ が同型であることと同値である。

詳しい証明を開く

$F$ が $\{Y_0,Y_1\}$ に関して構成可能なら、$F|_{(-\infty,0)}$ と $F|_{(0,\infty)}$ は局所定数なので、$F$ は原点で分けた層別に関して構成可能であり、構成可能層の記事の図式 $\Phi(F)=(V_-\xleftarrow{r_-}V_0\xrightarrow{r_+}V_+)$ をもつ(prf-exo-line を参照)。$F|_{Y_0}$ が局所定数であることと $r_-$ が同型であることが同値であることを示す。

$F|_{Y_0}$ が局所定数なら、原点の近傍 $(-\delta,0]$ で $F|_{(-\delta,0]}$ は定数層 $M$ と同型である。$(-\delta',0]$($0< \delta'\le\delta$)は連結なので、その上の切断は $M$ の元 $m$ で、原点での芽も $(-\delta',0)$ への制限も $m$ である。$(-\varepsilon,\varepsilon)$ の上の切断を $(-\varepsilon,0]$ に制限すると $F|_{Y_0}$ の切断になるので、$r_-$ はこの同一視の下で $M$ の恒等写像であり、同型である。

逆に $r_-$ が同型とする。$v\in V_0$ に、原点で $v$、$x< 0$ で $r_-(v)$、$x>0$ で $r_+(v)$ という切断(構成可能層の記事の定理の証明の層 $\mathcal M(V)$ の大域切断で、$F\cong\mathcal M(\Phi(F))$ により $F$ の大域切断とみなせる)を対応させると、$Y_0$ の上の定数層 $(V_0)_{Y_0}$ から $F|_{Y_0}$ への層の射が得られる。茎で見ると、原点では恒等写像、$x< 0$ では $r_-$ なので、どの茎でも同型であり、この射は同型である。よって $F|_{Y_0}$ は定数層である。

したがって考えている層の圏は、$r_-$ が同型である図式の圏と同値である。そのような図式の射 $(\psi_-,\psi_0,\psi_+)$ では $\psi_-=r'_-\psi_0r_-^{-1}$ と決まるので、図式に $V_0\xrightarrow{r_+}V_+$ を対応させる関手は充満忠実であり、$V_0\to V_+$ は図式 $V_0\xleftarrow{\mathrm{id}}V_0\to V_+$ から来るので本質的全射である。最後に、同型 $V_+\cong F_1$ で $r_+$ は $\operatorname{sp}_+$ に一致する。$\square$

この層別の $\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb R)$ は∞圏にならないが(出口道の∞圏の例「反例:出口道の単体的集合が∞圏にならない層別」)、構成可能層は $[1]$ からの関手と同じものである。これは HPT24 の結果(この層別は円錐的な層別の粗化なので exodromic で、出口道の∞圏は $N(Q)$ で $c\to-$ を可逆にした局所化 $\Delta^1$ である)の $\Lambda$ 加群の層での形である。
複素平面では、層 $\mathbb C\setminus\{0\}$ が単連結でないので、モノドロミーが現れる。

原点で分けた複素平面の上の構成可能層

$\mathbb C$ を原点とその補集合に分けた $[1]$-層別について、集合に値をとる構成可能層の圏は、集合 $V_0$、全単射 $T$ をもつ集合 $V$、写像 $f\colon V_0\to V^T$($V^T$ は $T$ の固定点の集合)の組 $(V_0,V,T,f)$ の圏と同値である。層 $F$ に対応する組は、$V_0=F_0$、$V=F_1$、$T$ は $F|_{\mathbb C\setminus\{0\}}$ の単位円に沿ったモノドロミー、$f$ は出口道 $\tau\mapsto\tau$ に沿った特殊化写像である。

要点:Lurie の定理を集合に値をとる層に制限し、出口道の∞圏のホモトピー圏が「始対象 $c$ と自己同型 $\mathbb Z$ をもつ対象 $o$」の圏であることを使う。

詳しい証明を開く

$\mathbb C$ はパラコンパクトな多様体なので局所的に singular shape であり、層別は円錐的で($\mathbb C\cong C(S^1)$。層別空間の命題「円錐性の遺伝」)、$[1]$ は有限なので昇鎖条件を満たす。よって thm-exo-lurie を集合に値をとる層に制限した形により、構成可能層の圏は、$h\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb C)$ から $\mathbf{Set}$ への関手の圏と同値である。出口道の∞圏の系「原点で分けた Euclid 空間」の 2 により、$h\operatorname{Sing}^{[1]}(\mathbb C)$ は、対象 $c$、$o$ をもち、$\operatorname{Hom}(c,o)=\{\iota\}$、$\operatorname{End}(o)=\{t^n\mid n\in\mathbb Z\}$、$\operatorname{Hom}(o,c)=\emptyset$ である圏 $D$ と同値である。

関手 $G\colon D\to\mathbf{Set}$ は、集合 $V_0=G(c)$、$V=G(o)$、全単射 $T=G(t)$ と写像 $f=G(\iota)\colon V_0\to V$ で決まる。$\operatorname{Hom}(c,o)$ が 1 元なので $t\circ\iota=\iota$ であり、$Tf=f$、すなわち $f$ は $V^T$ に値をとる。逆にこの条件を満たす組は関手を定める。自然変換 $G\to G'$ は、写像 $V_0\to V'_0$ と $T$ と可換な写像 $V\to V'$ の組で、$f$ と両立するものと同じである。対応する層の側の解釈は、茎と特殊化写像による $\Psi$ の逆の記述と、$o$ の自己同型が $\mathbb C\setminus\{0\}$ の基本群の元であることによる。$\square$

たとえば、2 元集合 $\{a,b\}$ を $T$ で入れ替える $\mathbb C\setminus\{0\}$ の上の局所定数層 $L$ を考える。$T$ は固定点をもたないので $V_0$ は空集合でなければならず、$L$ を $\mathbb C$ の上の構成可能層に延ばす方法は、原点での茎を空にするものしかない。原点の近くの切断は小さな穴あき円板の上の切断で、それはモノドロミーの固定点に対応する(局所系の命題「大域切断とモノドロミー不変部分」)ので、これは直接にも確かめられる。

exodromy が成り立たない例

空間の局所的なよさ(局所的に singular shape)を外すと、層別が自明でも、局所定数層がどの圏の上の関手としても書けなくなる。

反例:収束点列の上の局所定数層

$K:=\{0\}\cup\{1/n\mid n\ge1\}\subset\mathbb R$ とし、$E_n$ を点 $1/n$ だけに 1 点の茎をもつ集合の層(開かつ閉な 1 点 $\{1/n\}$ の上の 1 点集合の零延長)とする。$E_n$ は局所定数である。

  1. 集合の層の圏での余積 $\coprod_nE_n$ は局所定数でない。
  2. 集合に値をとる局所定数層の充満部分圏 $\operatorname{Loc}(K)$ の中で、族 $(E_n)_{n\ge1}$ は余積をもたない。
  3. したがって $\operatorname{Loc}(K)$ は、どんな小さな圏 $C$ についても関手の圏 $\operatorname{Fun}(C,\mathbf{Set})$ と同値でない。とくに、モノドロミーの形の記述 $\operatorname{Loc}(K)\simeq\operatorname{Fun}(h\operatorname{Sing}K,\mathbf{Set})$ は成り立たない。

集合の層を、そのエタール空間($K$ への局所同相写像)で表す。局所定数層とは、各点の近傍 $U$ と集合 $B$ があって、エタール空間が $U$ の上で $U\times B$($B$ は離散)と同型になる層である。$U_N:=\{0\}\cup\{1/m\mid m\ge N\}$ とおく。これらは $0$ の開かつ閉な近傍の基本系である。$E_n$ のエタール空間は 1 点 $\{1/n\}$ で、$1/n$ は孤立点なので局所定数である。
1:余積のエタール空間は $K\setminus\{0\}$ で、$0$ の上の茎は空、$1/n$ の上の茎は 1 点である。局所定数層では $0$ のある近傍の上で茎の濃度が一定なので、これは局所定数でない。
2:$\operatorname{Loc}(K)$ の中の余積 $L$ と射 $\iota_n\colon E_n\to L$ があったとし、$\iota_n$ の像の点を $l_n\in L_{1/n}$ とする。余積の性質は、「任意の $X\in\operatorname{Loc}(K)$ と $x_n\in X_{1/n}$ について、$\varphi(l_n)=x_n$ となる射 $\varphi\colon L\to X$ がただ 1 つある」ことである。2 元集合の定数層を $X:=K\times\{a,b\}$ とする。
(i) $L$ のエタール空間の開かつ閉な部分集合 $W$ で、どの $l_n$ も含まないものは空である。実際、$W$ を $b$ に、残りを $a$ に写す写像は($W$ が開かつ閉なので)層の射 $L\to X$ であり、定値 $a$ の射と同じく各 $l_n$ を $a$ に写すので、一意性からこの 2 つは等しく、$W=\emptyset$ である。
(ii) $L$ のエタール空間は、ある $N$ について $U_N$ の上で $U_N\times B$ と同型である。$B=\emptyset$ なら $m\ge N$ の $l_m$ が存在しえないので、$B\neq\emptyset$ である。$m\ge N$、$\beta\in B$ について、点 $(1/m,\beta)$ は孤立点なので開かつ閉であり、(i) によりある $l_n$ に等しく、$1/m$ の上にあるので $l_m$ に等しい。よって $B$ は 1 点 $\{\beta\}$ で、$m\ge N$ で $l_m=(1/m,\beta)$ である。
(iii) $n$ が偶数なら $x_n=a$、奇数なら $x_n=b$ とし、対応する $\varphi\colon L\to X$ をとる。$\varphi$ を $U_N\times\{\beta\}$ に制限すると、$U_N$ から $\{a,b\}$ への連続関数 $g$ で $g(1/m)=x_m$ となるものが得られる。連続性から $m$ が大きければ $g(1/m)=g(0)$ でなければならないが、$x_m$ は $a$ と $b$ を交互にとるので矛盾する。よって余積は存在しない。
3:$\operatorname{Fun}(C,\mathbf{Set})$ は小さな余積を(各対象ごとの非交和として)すべてもち、圏同値は余積を保つので、2 と両立しない。$K$ の連結な部分集合は 1 点だけなので、$K$ の中の道は定値であり、$\operatorname{Sing}K$ は $K$ の点の数だけの $\Delta^0$ の非交和で、$h\operatorname{Sing}K$ は $K$ を離散圏とみたものである。$\square$

空間に値をとる超層でも同じ族を考えると、各点での茎をとる関手は余極限を保つので、余積の茎は $0$ で空、$1/n$ で 1 点となり、局所定数でない。よって自明な層別をもつ $K$ は HPT24 Definition 0.2.1(p. 2)の条件 (2)(構成可能な超層が余極限で閉じていること)を満たさず、exodromic でない。また 3 と HA17 Theorem A.4.19 から、$K$ は局所的に singular shape でない。

エタール層の exodromy

Barwick–Glasman–Haine は、スキーム $X$ に対し、彼らが Galois 圏と呼ぶ圏 $\operatorname{Gal}(X)$ を次のように定めた(BGH20 Construction 0.0.1、p. 6。有限エタール被覆の圏を公理化した Grothendieck の Galois 圏とは別のものである)。対象は幾何的点 $x\to X$(像の点の剰余体の分離閉包を与えるもの)であり、$x$ から $y$ への射は $y$ を狭義局所化 $\operatorname{Spec}\mathcal O^{\mathrm{sh}}_{X,x}$ の幾何的点へ持ち上げたもの、すなわち $x$ への $y$ の特殊化である。$x\mapsto$(像の点)は Zariski 位相の特殊化の半順序集合への関手で、そのファイバーは剰余体の絶対 Galois 群を自己同型群とする連結な亜群である。射の集合には副有限な位相が入る(同 Construction 0.0.2、p. 6)。閉点のような「低い層」から生成点のような「高い層」への特殊化が出口道の役割を果たし、各層の中では Galois 群が基本群の役割を果たす。

エタールの exodromy
  1. コヒーレントなスキーム $X$ について、$\operatorname{Gal}(X)$ から $\pi$-有限な空間の∞圏への関手の∞圏と、$X$ のエタール∞トポスの構成可能な対象の∞圏とのあいだに、自然な同値がある。
  2. 位相空間がネーター的なスキーム $X$ と有限環 $\Lambda$ などについて、構成可能な導来圏 $D_{\mathrm{cons}}(X;\Lambda)$ は、$\operatorname{Gal}(X)$ から完全複体の∞圏 $\operatorname{Perf}(\Lambda)$ への連続な関手の∞圏と同値である。
2 つの主張の違い

1 は $\pi$-有限な空間に値をとる関手を扱い、2 は環 $\Lambda$ を係数とする完全複体に値をとる関手を扱う。どちらも、層をその茎と特殊化写像の集まりとして見る点では、円錐的な場合の exodromy と同じ考え方である。ただし、ここでの $\operatorname{Gal}(X)$ は射の集合に副有限な位相をもつ圏であり、位相を忘れた圏とは区別しなければならない。そのため 2 では「連続な関手」を考える。

これは BGH20 Corollary 0.5.2(p. 16)と Theorem 0.0.3(p. 7)である。この記事では証明しない。係数 $\Lambda$ としては、有限環のほか、$\ell$ 進的な係数を含むいくつかの場合が許される(同 p. 6 に列挙)。2 の同値は、層 $F$ に、幾何的点での茎を並べた連続な関手 $\rho_F\colon\operatorname{Gal}(X)\to\operatorname{Perf}(\Lambda)$ を対応させる(同 p. 7)。たとえば曲線では、閉点の上の幾何的点から生成点の上の幾何的点への射が、閉点での茎から生成点での茎(生成点の Galois 群の表現)への特殊化写像を与える。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
空間が局所的に singular shape であること収束点列 $K$ の自明な層別(prop-exo-sequence)局所定数層の圏が関手の圏と同値であること(余積すら存在しない)
層別が円錐的であること$\mathbb R=(-\infty,0]\sqcup(0,\infty)$(prop-exo-nonconical)$\operatorname{Sing}^P(X)$ を使った記述。ただし構成可能層は $[1]$ からの関手と同値で、exodromy そのものは成り立つ
層がすべて単連結であること原点で分けた $\mathbb C$(prop-exo-plane)構成可能層が層の半順序集合 $[1]$ からの関手で記述されること(モノドロミー $T$ が落ちる)

2 行目は、円錐性が exodromy に必要な条件ではなく、Lurie の単体的なモデルを使うための条件であることを示す。3 行目で、$[1]$ からの関手 $V_0\to V$ から作る層は $\mathbb C\setminus\{0\}$ の上で定数層になるので、prop-exo-plane の $L$ のような、モノドロミーが自明でない層を表せない。

関連項目

参考文献

[2]
Jacob Lurie, Higher Topos Theory, Annals of Mathematics Studies, Princeton University Press, 2009, Proposition 1.2.3.1(ホモトピー圏と脈体の随伴、p. 28)、Corollary 3.3.3.4(左ファイブレーションの切断と極限、p. 216)
[3]
Peter J. Haine, Mauro Porta, Jean-Baptiste Teyssier, Exodromy beyond conicality, arXiv:2401.12825, 2024, 頁は arXiv:2401.12825v2 による。§0.1 と脚注 2(pp. 1–2)、Definition 0.2.1(p. 2)、Theorem 0.3.1(p. 3)、Corollary 0.4.1・Theorem 0.4.2(p. 4)、Example 2.2.13(p. 17)、Corollary 4.1.15(p. 45)、Recollection 5.5.1(p. 56)
[4]
Clark Barwick, Saul Glasman, Peter Haine, Exodromy, arXiv:1807.03281, 2020, 頁は arXiv:1807.03281v7 による。Construction 0.0.1・0.0.2 と係数の一覧(p. 6)、Theorem 0.0.3(p. 7)、Corollary 0.5.2(p. 16)

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