塗り分けによる証明(coloring arguments)とは、マス目の盤がタイルで敷き詰められないことを、マスに色を塗って色ごとの個数を数えることで示す方法である。どこに置いても各色のマスをちょうど 1 つずつ覆うタイルで敷き詰められるなら、どの色のマスも同じ個数あるので、個数が違えば敷き詰められない。$8\times8$ の盤から向かい合う 2 隅を除いた 62 マスは、市松模様で 2 色が 30 マスと 32 マスになるので、ドミノ 31 枚で敷き詰められない。$10\times10$ の盤は、マス $(r,c)$ を $r+c$ を 4 で割った余りで塗ると 4 色が 25・24・25・26 マスになるので、$1\times4$ のタイル 25 枚で敷き詰められない。色の個数がそろうことは必要条件にすぎず、そろっていても敷き詰められない盤がある。
縦 1 マス・横 2 マスの長方形のタイルを ドミノ という。マス目の盤を、ドミノをすき間なく重ならずに並べて覆うことを考える。覆えるときは実際に並べて見せればよい。覆えないことを示すのは難しい。並べ方は非常に多いので、全部を試すことはできないからである。この記事では、マスに色を塗って数えるだけで「覆えない」ことを示す方法を扱う。
| 高校の言葉 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 市松模様に塗る | 2 色の塗り分け | 二部グラフの頂点の 2 つの組 |
| タイルが覆う色の数を数える | 色ごとの個数の比較 | 不変量(各色の個数の差) |
| $(\text{行})+(\text{列})$ を $4$ で割った余りで塗る | 4 色の塗り分け | 剰余類による塗り分け |
| ドミノで覆う | 敷き詰め | 完全マッチング |
上から $r$ 行目・左から $c$ 列目のマスを $(r,c)$ と書く。有限個のマスの集まりを 盤 という。縦 $m$ マス・横 $n$ マスの長方形の盤を $m\times n$ の盤 という。
横に $k$ マス並んだ長方形、または縦に $k$ マス並んだ長方形を $1\times k$ のタイル という($k=2$ のときがドミノ)。タイルはマス目に沿って置く。盤のどのマスも、ちょうど 1 枚のタイルに覆われ、どのタイルも盤の外にはみ出さないように置けるとき、盤はそのタイルで 敷き詰められる という。
盤の各マスに、$0,1,\dots,q-1$ のどれか 1 つの番号を対応させることを、盤の $q$ 色の塗り分け といい、番号をそのマスの 色 という。とくに、マス $(r,c)$ の色を $r+c$ を $2$ で割った余りとする 2 色の塗り分けを 市松模様 という。
市松模様では、左右に隣り合う 2 マス $(r,c)$ と $(r,c+1)$ は $r+c$ が $1$ だけ違うので、$2$ で割った余りが違い、色が違う。上下に隣り合う 2 マスでも同じである。ex-col-start の灰色は余り $0$、白は余り $1$ にあたる。
盤に $q$ 色の塗り分けがあり、決められた形のタイルは、盤の中のどこに置いても、$q$ 色のマスをちょうど 1 つずつ覆うとする。盤がこのタイル $N$ 枚で敷き詰められるなら、どの色のマスもちょうど $N$ 個ある。したがって、色によってマスの個数が違えば、盤はこのタイルで敷き詰められない。
盤が $N$ 枚のタイルで敷き詰められたとする。色 $j$ のマスの個数を、タイルごとに数える。敷き詰めでは盤のどのマスもちょうど 1 枚のタイルに覆われるので、色 $j$ のマスの個数は、各タイルが覆う色 $j$ のマスの個数を $N$ 枚分足したものに等しい。仮定により、各タイルは色 $j$ のマスをちょうど 1 つ覆うので、その和は $\underbrace{1+1+\cdots+1}_{N\text{ 個}}=N$ である。どの色 $j$ でも同じなので、どの色のマスも $N$ 個である。後半は前半の対偶である。$\square$
補題は「敷き詰められるなら色の個数がそろう」という 必要条件 だけを述べている。色の個数がそろっていても、敷き詰められるとは限らない(ex-col-cx-converse)。
$8\times8$ の盤から、向かい合う 2 つの隅のマス $(1,1)$ と $(8,8)$ を除いた 62 マスの盤は、ドミノ 31 枚で敷き詰められない。
方針:市松模様(def-col-coloring)に塗り、2 つの色のマスの個数が違うことを示して、lem-col-count を使う。
段 1(ドミノは 2 色を 1 つずつ覆う)。ドミノが横に置かれてマス $(r,c)$ と $(r,c+1)$ を覆うとき、$r+c$ と $r+c+1$ は一方が偶数で他方が奇数なので、$2$ で割った余りは $0$ と $1$ が 1 つずつである。縦に置かれて $(r,c)$ と $(r+1,c)$ を覆うときも同じである。
段 2($8\times8$ の盤の色の個数)。各行には 8 マスあり、$c=1,2,\dots,8$ に対して $r+c$ は連続する 8 個の整数なので、偶数と奇数が 4 個ずつある。8 行あるので、$8\times8$ の盤には余り $0$ のマスと余り $1$ のマスが $32$ 個ずつある。
段 3(2 隅を除く)。$(1,1)$ では $1+1=2$、$(8,8)$ では $8+8=16$ で、どちらも偶数なので、除いた 2 マスはどちらも余り $0$ である。残りの盤には、余り $0$ のマスが $32-2=30$ 個、余り $1$ のマスが $32$ 個ある。
段 4(結論)。段 1 により、ドミノは lem-col-count の仮定(2 色のマスを 1 つずつ覆う)をみたす。段 3 により 2 色のマスの個数が違うので、lem-col-count により敷き詰められない。$\square$
8×8 の盤から向かい合う 2 隅(×印)を除き、市松模様に塗った。灰色は 30 マス、白は 32 マスで、青で囲んだドミノはどこに置いても灰色 1 マスと白 1 マスを覆う
図 1 は、市松模様に塗った盤である。灰色が 30 マス、白が 32 マスある。ドミノ 31 枚は灰色 31 マスと白 31 マスを覆うので、灰色が 1 マス足りず、白が 1 マス余る。
$6\times6$ の盤から $(1,1)$ と $(6,6)$ を除いた 34 マスの盤も、ドミノ 17 枚で敷き詰められない。$6\times6$ の盤では、各行の $r+c$ が連続する 6 個の整数なので偶数と奇数が 3 個ずつで、盤全体では余り $0$ と余り $1$ が 18 個ずつある。$(1,1)$ と $(6,6)$ はどちらも $r+c$ が偶数なので、残りは余り $0$ が 16 個、余り $1$ が 18 個で、個数が違う。一般に、$m$ と $n$ が偶数の $m\times n$ の盤から向かい合う 2 隅 $(1,1)$ と $(m,n)$ を除くと、$1+1$ と $m+n$ はどちらも偶数なので、同じ議論で敷き詰められない。
$8\times8$ の盤から、同じ行の両端 $(1,1)$ と $(1,8)$ を除く。$1+1=2$ は偶数、$1+8=9$ は奇数なので、除いた 2 マスは色が違い、残りは余り $0$ と余り $1$ が 31 個ずつで、lem-col-count の必要条件をみたす。実際に敷き詰められる。1 行目の残り $(1,2)$〜$(1,7)$ の 6 マスに横のドミノを 3 枚、2 行目から 8 行目の各行に横のドミノを 4 枚ずつ置けば、ドミノは $3+4\cdot7=31$ 枚で、盤が覆われる。
$10\times10$ の盤を $1\times4$ のタイル 25 枚で敷き詰められるかを考える。盤は 100 マスで、$100=4\cdot25$ なので、マスの数からは矛盾が出ない。
市松模様も役に立たない。$1\times4$ のタイルは連続する 4 マスを覆うので、余り $0$ と余り $1$ を 2 つずつ覆う。$10\times10$ の盤には余り $0$ と余り $1$ が 50 マスずつあり、25 枚のタイルが覆う $50$ マスずつと合っていて、矛盾は出ない。そこで、タイルが 4 色を 1 つずつ覆うように、4 色で塗る。
$10\times10$ の盤は、$1\times4$ のタイル 25 枚で敷き詰められない。
方針:マス $(r,c)$ の色を $r+c$ を $4$ で割った余り($0,1,2,3$ のどれか)とする 4 色の塗り分けを使う。タイルは 4 色を 1 つずつ覆うが、盤の 4 色の個数はそろわないことを示し、lem-col-count を使う。
段 1(タイルは 4 色を 1 つずつ覆う)。横に置いたタイルがマス $(r,c)$、$(r,c+1)$、$(r,c+2)$、$(r,c+3)$ を覆うとき、4 マスの $r+c$ の値は連続する 4 個の整数 $r+c$、$r+c+1$、$r+c+2$、$r+c+3$ である。連続する 4 個の整数を $4$ で割った余りは、$0,1,2,3$ が 1 つずつ現れる(合同式の計算規則。$x$ を $4$ で割った余りが $j$ なら、$x+1,x+2,x+3$ の余りは $j$ から $1$ ずつ進み、$3$ の次は $0$ にもどる)。縦に置いたタイルでも、$(r,c)$、$(r+1,c)$、$(r+2,c)$、$(r+3,c)$ の $r+c$ は連続する 4 個の整数なので同じである。
段 2(左の 8 列の色の個数)。盤を、左の 8 列($1\le c\le8$)と右の 2 列($c=9,10$)に分ける。左の 8 列では、各行の $r+c$ は連続する 8 個の整数なので、段 1 と同じ理由で余り $0,1,2,3$ が 2 個ずつある。10 行あるので、余り $0,1,2,3$ のマスは $20$ 個ずつである。
段 3(右の 2 列の色の個数)。9 列目のマス $(r,9)$ の $r+c$ は、$r=1,2,\dots,10$ に対して $10,11,\dots,19$ で、$4$ で割った余りは順に
$$
2,\ 3,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3
$$
である。余り $0,1,2,3$ の個数は $2,2,3,3$ である。10 列目のマス $(r,10)$ の $r+c$ は $11,12,\dots,20$ で、余りは順に
$$
3,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3,\ 0
$$
である。余り $0,1,2,3$ の個数は $3,2,2,3$ である。
段 4(盤全体)。段 2・段 3 を足すと、余り $0,1,2,3$ のマスの個数は
$$
20+2+3=25,\qquad 20+2+2=24,\qquad 20+3+2=25,\qquad 20+3+3=26
$$
である。個数がそろわないので、段 1 と lem-col-count により、$10\times10$ の盤は $1\times4$ のタイルで敷き詰められない。$\square$
10×10 の盤のマスに、行の番号と列の番号の和を 4 で割った余りを書き、余りごとに色を塗った。赤で囲んだタイルは、横でも縦でも 4 つの余りを 1 つずつ覆う
図 2 では、同じ余りのマスが右上から左下への斜めの帯に並ぶ。タイルを横に置いても縦に置いても、4 本の帯を 1 本ずつ横切るので、4 色を 1 つずつ覆う。
$8\times8$ の盤では、各行の $r+c$ が連続する 8 個の整数なので、余り $0,1,2,3$ が 2 個ずつあり、8 行で $16$ 個ずつになる。lem-col-count の必要条件はみたされる。実際、各行に横のタイルを 2 枚ずつ置けば、16 枚で敷き詰められる(図 3)。
8×8 の盤のマスに行と列の番号の和を 4 で割った余りを書いた。どの余りも 16 マスで、青で囲んだ横のタイル 16 枚で敷き詰められる
$6\times6$ の盤は 36 マスで、$36=4\cdot9$ なので、マスの数からは矛盾が出ない。prf-col-ten と同じ塗り方で数える。左の 4 列($1\le c\le4$)では、各行に余り $0,1,2,3$ が 1 個ずつで、6 行で $6$ 個ずつある。右の 2 列では、5 列目の $r+c$ は $6,7,\dots,11$ で余りは $2,3,0,1,2,3$、6 列目の $r+c$ は $7,8,\dots,12$ で余りは $3,0,1,2,3,0$ である。合わせると、余り $0,1,2,3$ の個数は
$$
6+1+2=9,\qquad 6+1+1=8,\qquad 6+2+1=9,\qquad 6+2+2=10
$$
で、そろわない。lem-col-count により、$6\times6$ の盤も $1\times4$ のタイルで敷き詰められない。
塗り分けは「敷き詰められない」ことを示す道具だった。敷き詰められる盤では、何通りの敷き詰め方があるかも問える。いちばん簡単な場合を数える。
$2\times n$ の盤をドミノで敷き詰める方法の数を $a_n$ とする。$n=1$ では縦に 1 枚置くだけなので $a_1=1$、$n=2$ では縦 2 枚か横 2 枚なので $a_2=2$ である。$n=4$ の 5 通りを図 4 に示す。
$n\ge3$ のとき、左上のマス $(1,1)$ を覆うドミノで場合を分ける。
(1) $(1,1)$ が縦のドミノで覆われるとき、そのドミノは $(1,1)$ と $(2,1)$ を覆い、残りは $2\times(n-1)$ の盤である。その敷き詰め方は $a_{n-1}$ 通りある。
(2) $(1,1)$ が横のドミノで覆われるとき、そのドミノは $(1,1)$ と $(1,2)$ を覆う。このとき $(2,1)$ を覆うドミノは、上の $(1,1)$ がふさがっているので縦には置けず、$(2,1)$ と $(2,2)$ を覆う横のドミノである。残りは $2\times(n-2)$ の盤で、敷き詰め方は $a_{n-2}$ 通りある。
(1) と (2) は $(1,1)$ を覆うドミノの向きが違うので重ならない。よって
$$
a_n=a_{n-1}+a_{n-2}\qquad(n\ge3)
$$
である。$a_1=1$、$a_2=2$ から順に $a_3=3$、$a_4=5$、$a_5=8$、$a_6=13$、$a_7=21$、$a_8=34$ となる。これは Fibonacci数列 と同じ漸化式である。
2×4 の盤をドミノで敷き詰める 5 通りの方法で、縦のドミノを青、横のドミノをだいだい色で塗った
lem-col-count は必要条件であり、塗り方の選び方にも注意が要る。条件を変えると何が起こるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 逆向き(色の個数がそろう) | 図 5 の 6 マスの形 | 敷き詰められる |
| 除く 2 マスが同じ色 | $8\times8$ から $(1,1)$ と $(1,8)$ を除く | 敷き詰められない |
| タイルが各色を 1 つずつ覆う | 市松模様と $1\times4$ のタイル | $10\times10$ で色の個数に矛盾が出る |
6 つのマス $(1,2)$、$(2,1)$、$(2,2)$、$(2,3)$、$(2,4)$、$(3,3)$ からなる盤を考える(図 5)。$r+c$ が偶数のマスは $(2,2)$、$(2,4)$、$(3,3)$ の 3 つ、奇数のマスは $(1,2)$、$(2,1)$、$(2,3)$ の 3 つで、市松模様の 2 色の個数はそろっている。
しかし、ドミノ 3 枚では敷き詰められない。マス $P=(2,1)$ に上下左右で隣り合う盤のマスは $R=(2,2)$ だけなので、$P$ を覆うドミノは $P$ と $R$ を覆うしかない。マス $Q=(1,2)$ に隣り合う盤のマスも $R$ だけなので、$Q$ を覆うドミノも $Q$ と $R$ を覆うしかない。$R$ を 2 枚のドミノで覆うことはできないので、敷き詰めはない。色の個数は必要条件にすぎず、形の細かいつながり方までは見ていない。
6 マスの形を市松模様に塗ると灰色と白が 3 マスずつになるが、P と Q はどちらも R としか隣り合っていない
ex-col-diff は 2 行目の反例である。除く 2 マスの色が違うと prf-col-mutilated の段 3 の計算が成り立たず、実際に敷き詰められる。
$10\times10$ の盤を市松模様に塗ると、余り $0$ と余り $1$ のマスは 50 個ずつある。$1\times4$ のタイルは 1 枚で余り $0$ と余り $1$ を 2 つずつ覆うので、lem-col-count の仮定「各色をちょうど 1 つずつ覆う」をみたさない。25 枚で覆えるとしても、覆う個数は各色 50 個ずつで、盤の個数と合う。つまり市松模様からは矛盾が出ず、thm-col-ten は示せない。一方で、矛盾が出ないことは敷き詰められることを意味しない。塗り分けによる証明では、タイルの形に合わせて、タイルが各色を同じ数だけ覆う塗り方を選ぶことが要になる。
マスを点とし、上下左右に隣り合う 2 マスの点を線で結ぶと、盤は グラフ になる。ドミノ 1 枚は線 1 本にあたり、ドミノによる敷き詰めは、どの点もちょうど 1 本の選んだ線の端になるような線の選び方(完全マッチング)にあたる。市松模様では隣り合うマスの色が違うので、線はいつも灰色の点と白の点を結ぶ。点が 2 組に分かれ、線が組と組の間にしかないグラフを 二部グラフ という。
結婚定理とマッチング で扱う Hall の結婚定理を使うと、ex-col-cx-converse は次のように見える。白の点の集まり $X=\{P,Q\}$ と線で結ばれる灰色の点は $R$ だけで、その個数 $1$ は $X$ の点の個数 $2$ より少ない。これは Hall の条件が破れていることを意味し、白の点をすべて違う灰色の点と組にすることはできない。塗り分けによる判定は、Hall の条件のうち $X$ を「白の点全部」にとった場合(色の個数の比較)だけを見ていることになる。
$1\times k$ のタイルでは、色の代わりに複素数を置く方法がある。複素数の極形式 を使う。
$k\ge2$ とする。$m\times n$ の盤が $1\times k$ のタイルで敷き詰められるのは、$m$ か $n$ の少なくとも一方が $k$ の倍数であるとき、そのときに限る。
要点:$\omega=\cos\dfrac{2\pi}k+i\sin\dfrac{2\pi}k$ とし、マス $(r,c)$ に複素数 $\omega^{r+c}$ を置く。どのタイルが覆う $k$ 個の数の和も $0$ なので、敷き詰められるなら全部の和は $0$ である。一方、全部の和は $\Bigl(\sum_{r=1}^m\omega^r\Bigr)\Bigl(\sum_{c=1}^n\omega^c\Bigr)$ と因数分解でき、$m$ も $n$ も $k$ の倍数でなければ $0$ にならない。
段 1($\omega$ の性質)。de Moivre の定理により $\omega^j=\cos\dfrac{2\pi j}k+i\sin\dfrac{2\pi j}k$ なので、$\omega^k=1$ であり、$1\le j\le k-1$ では $\omega^j\ne1$ である。とくに $\omega\ne1$ で、等比数列の和の公式(等差数列と等比数列)から
$$1+\omega+\omega^2+\cdots+\omega^{k-1}=\frac{\omega^k-1}{\omega-1}=0$$
である。
段 2(タイル 1 枚の和)。横のタイルが $(r,c),\dots,(r,c+k-1)$ を覆うとき、置いた数の和は $\omega^{r+c}(1+\omega+\cdots+\omega^{k-1})=0$ である。縦のタイルでも同じである。敷き詰められるなら、全部のマスの数の和 $S$ は、タイルごとの和を足したものなので $S=0$ である。
段 3($S$ の因数分解)。$\Bigl(\sum_{r=1}^m\omega^r\Bigr)\Bigl(\sum_{c=1}^n\omega^c\Bigr)$ を展開すると、各マス $(r,c)$ に対して $\omega^r\omega^c=\omega^{r+c}$ がちょうど 1 回ずつ現れるので、これは $S$ に等しい。
段 4(各因数が $0$ になる条件)。$\sum_{r=1}^m\omega^r=\omega\cdot\dfrac{\omega^m-1}{\omega-1}$ で、$\omega\ne0$ なので、これが $0$ になるのは $\omega^m=1$ のときだけである。$m=qk+j$($0\le j\le k-1$)と割り算すると $\omega^m=(\omega^k)^q\omega^j=\omega^j$ なので、段 1 により $\omega^m=1$ と $j=0$、つまり $m$ が $k$ の倍数であることは同じである。$n$ についても同じである。
段 5(結論)。$m$ も $n$ も $k$ の倍数でなければ、段 4 により 2 つの因数はどちらも $0$ でなく、その積 $S$ も $0$ でない。段 2 により敷き詰められない。逆に $m$ が $k$ の倍数なら、各列に縦のタイルを $\dfrac mk$ 枚ずつ置けば敷き詰められる。$n$ が $k$ の倍数なら各行に横のタイルを置けばよい。$\square$
thm-col-ten は $m=n=10$、$k=4$ の場合で、$\omega=i$ である。$\sum_{r=1}^{10}i^r=i-1-i+1+i-1-i+1+i-1=-1+i$ なので、$S=(-1+i)^2=-2i\ne0$ となる。複素数 $i^{r+c}$ は $r+c$ を $4$ で割った余りだけで決まる(余り $0,1,2,3$ に $1,i,-1,-i$ が対応する)ので、この証明は 4 色の塗り分けに、色ごとに複素数の重みを付けたものと見られる。実際、prf-col-ten の段 4 の個数 $25,24,25,26$ を使うと $S=25\cdot1+24\cdot i+25\cdot(-1)+26\cdot(-i)=-2i$ である。
地図の隣り合う国を違う色で塗る 四色定理 も「塗り分け」とよばれるが、そちらは「条件をみたす塗り方があるか」を問う主題である。この記事の塗り分けは、証明のために自分で選んで塗る道具であり、役目が違う。
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