Morleyの範疇性定理

同義語:Morleyのカテゴリー性定理Morleyのカテゴリシティ定理モーリーの範疇性定理Morley's categoricity theoremMorley categoricity theorem

概要

Morleyの範疇性定理(Morley's categoricity theorem)とは、可算言語の一階の理論が無限のモデルをもち、ある非可算基数 $\kappa$ で $\kappa$-範疇的ならば、すべての非可算基数で範疇的である、という定理である。証明は、範疇性から $\omega$-安定性を導き、非可算モデルがすべて飽和であることを示し、同じ濃度の飽和モデルが同型であることで終わる。可算言語の完全な理論のうち、定義可能な部分集合が有限か補集合が有限になる強極小なものでは、モデルが代数的閉包の基底の濃度で決まり、非可算範疇性を直接に証明できる。代数閉体の理論はその例である。

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前提知識: カテゴリー性, 安定性理論, Löwenheim–Skolemの定理, 初等部分モデル

Morley の範疇性定理(Morley's categoricity theorem)は、可算言語の一階の理論が 1 つの非可算な濃度で範疇的なら、すべての非可算な濃度で範疇的であることを述べる定理である。ここで $\kappa$-範疇的とは、濃度 $\kappa$ のモデルが同型を除いてただ 1 つであることをいう(カテゴリー性 の定義「カテゴリー性」)。標数を固定した代数閉体の理論は、どの非可算な濃度でも範疇的だが、可算では範疇的でない。逆に稠密な線形順序の理論は、可算では範疇的だが非可算では範疇的でない。Morley の定理は、非可算の側では「1 つの濃度で範疇的か」と「すべての濃度で範疇的か」が区別されないことを示している。
この定理は カテゴリー性 の記事で主張だけが述べられている。この記事では、主張と Morley の証明の筋を述べ、筋の最後の段である「同じ濃度の飽和モデルは同型」を証明する。さらに、可算言語の完全な理論で、定義可能な部分集合がどれも有限か補集合が有限になるもの(強極小な理論)について、非可算な濃度のモデルが「次元」で決まることを完全に証明し、定理の重要な場合を確かめる。

主張

以下、$L$ は一階言語、構造の台集合は空でなく、基数の議論では選択公理を仮定する。$\kappa$-範疇的の定義は カテゴリー性 の記事のとおりで、$T$ が濃度 $\kappa$ のモデルをもつことを含む。

Morley の範疇性定理

可算言語 $L$ の理論 $T$ が無限のモデルをもち、ある非可算基数 $\kappa$ について $\kappa$-範疇的ならば、$T$ はすべての非可算基数 $\lambda$ について $\lambda$-範疇的である。

出典と完全な理論への帰着

Mor65 Theorem 5.6(p. 537)である。この記事では一般の場合を証明しない。同論文は §2 以降、$T$ を可算言語の完全な理論で無限のモデルをもつものとしている(p. 518)。一般の $T$ はこれに帰着する。$T$ に「少なくとも $n$ 元ある」という文をすべての $n$ について加えた理論 $T'$ のモデルは $T$ の無限のモデルにほかならず、$T'$ は有限のモデルをもたず $\kappa$-範疇的なので、Löwenheim–Skolemの定理 の定理「Łoś–Vaught の判定法」により完全である。$T'$ に定理を使えば、$T$ の濃度 $\lambda$ のモデル(無限なので $T'$ のモデル)はすべて同型になる。

証明の筋

Mor65 の証明は次の 4 段からなる(同論文の序文 pp. 514–515 と §5、pp. 534–537)。$T$ は可算言語の完全な理論で、無限のモデルをもつとする。型の空間 $S^M(A)$ と $\omega$-安定性は 安定性理論 の記事の定義「完全型」「安定性」による。

  1. $\omega$-安定性. ある非可算な $\kappa$ で $\kappa$-範疇的なら、$T$ は $\omega$-安定である(Mor65 Theorem 3.8、p. 528。安定性理論 の定理「Morley の $\omega$-安定性定理」)。識別不能な元の列を使って、どの可算な部分集合の上でも可算個の型しか実現しない濃度 $\kappa$ のモデルを作り(同 Theorem 3.7、p. 527)、$\omega$-安定でなければ可算な集合の上の非可算個の型を実現する濃度 $\kappa$ のモデルもあることと比べる。
  2. 大きな飽和度をもつモデルの存在. $\omega$-安定なら、どの非可算な $\lambda$ にも、可算な部分集合の上の型をすべて実現する濃度 $\lambda$ のモデルがある(同 Theorem 5.2、p. 535)。
  3. 非飽和モデルの移動. $\omega$-安定で、飽和でない非可算モデルがあれば、どの非可算な $\lambda$ にも、可算な部分集合の上のある型を実現しない濃度 $\lambda$ のモデルがある(同 Lemma 5.3・Theorem 5.4、pp. 535–536)。証明には、部分集合の上の素モデルの存在と識別不能な元の集合(同 §4)が使われる。
  4. 結論. 2 と 3 から、$\kappa$-範疇的なら非可算モデルはすべて飽和である(同 Theorem 5.5、p. 536)。同じ濃度の飽和モデルは同型なので(同 Theorem 5.1、p. 535。thm-morley-saturated)、すべての非可算な $\lambda$ で範疇的になる。
    1〜3 はこの記事では証明しない。段 4 の後半を次節で証明する。

飽和モデルの一意性

$\mathcal M,\mathcal N$ を $L$ 構造、$A$ を $\mathcal M$ の台集合 $M$ の部分集合とする。写像 $f\colon A\to N$ が 部分初等写像 であるとは、$L$ の論理式 $\varphi(x_1,\dots,x_k)$ と $a_1,\dots,a_k\in A$ について常に $\mathcal M\models\varphi[\bar a]\iff\mathcal N\models\varphi[f(\bar a)]$ となることをいう。論理式 $x_1=x_2$ によりこれは単射であり、全単射な部分初等写像 $M\to N$ は同型写像である。$\mathcal M$ と $\mathcal N$ が同じ文を満たせば、空写像は部分初等写像である。

飽和モデル

$T$ の無限のモデル $\mathcal M$ が 飽和 であるとは、$\lvert A\rvert<\lvert M\rvert$ を満たす任意の $A\subset M$ について、$S^{\mathcal M}(A)$ のすべての型が $\mathcal M$ の元で実現されることをいう。

これは Mor65 の定義(p. 534)と同じである。型を部分初等写像で写すことが、次の定理の証明の鍵である。

型を写して実現する

$\mathcal M,\mathcal N$ を同じ言語の構造、$f\colon A\to N$ を部分初等写像、$a\in M$ とする。$\mathcal N$ が $f(A)$ の上の型をすべて実現するならば、$f$ を延長する部分初等写像 $f'\colon A\cup\{a\}\to N$ がある。

$a\in A$ なら $f':=f$ でよい。そうでないとき、$p:=\operatorname{tp}(a/A)$ とし、$L_A$ の論理式 $\varphi(x,\bar c)$($\bar c\in A$ はパラメータ)の $\bar c$ を $f(\bar c)$ に替えた論理式の集合を $f(p):=\{\varphi(x,f(\bar c))\mid\varphi(x,\bar c)\in p\}$ とおく。$f$ は単射なので、$L_{f(A)}$ の論理式はどれも $\varphi(x,f(\bar c))$ の形にただ 1 通りに書ける。$p$ の有限個の元の連言 $\varphi(x,\bar c)$ について $\mathcal M\models\exists x\,\varphi[\bar c]$ であり、$f$ が部分初等的なので $\mathcal N\models\exists x\,\varphi[f(\bar c)]$ である。よって $f(p)$ は $\mathcal N$ で有限充足可能で、$p$ が各論理式かその否定を含むので $f(p)$ もそうであり、$f(p)\in S^{\mathcal N}(f(A))$ である。仮定によりそれを実現する $b\in N$ がある。$f':=f\cup\{(a,b)\}$ とおくと、$\mathcal M\models\varphi[a,\bar c]\iff\varphi(x,\bar c)\in p\iff\varphi(x,f(\bar c))\in f(p)\iff\mathcal N\models\varphi[b,f(\bar c)]$ なので、$f'$ は部分初等写像である。$\square$

飽和モデルの一意性

$T$ を完全な理論、$\mathcal M,\mathcal N$ を $T$ の飽和モデルで $\lvert M\rvert=\lvert N\rvert$ とする。このとき $\mathcal M\cong\mathcal N$ である。

超限の往復

$\kappa:=\lvert M\rvert=\lvert N\rvert$ とし、$M=\{a_\alpha\mid\alpha<\kappa\}$、$N=\{b_\alpha\mid\alpha<\kappa\}$ と番号を付ける。$\alpha\le\kappa$ について部分初等写像 $f_\alpha$ を、包含について増大し、$\alpha<\kappa$ では定義域の濃度が $\kappa$ 未満になるように作る。$f_0:=\emptyset$ は、$T$ が完全で $\mathcal M,\mathcal N$ が同じ文を満たすので部分初等写像である。極限の $\alpha$ では $f_\alpha:=\bigcup_{\beta<\alpha}f_\beta$ とおく。有限個の元は 1 つの $f_\beta$ の定義域に入るので、これも部分初等写像である。
$f_\alpha$($\alpha<\kappa$)から $f_{\alpha+1}$ を作る。定義域を $A$ とすると $\lvert A\rvert<\kappa$ で、$\mathcal N$ は飽和なので $f_\alpha(A)$ の上の型をすべて実現する。lem-morley-transfer により $a_\alpha$ を定義域に加えた部分初等写像 $g$ が得られる。$g^{-1}$ は $\mathcal N$ から $\mathcal M$ への部分初等写像で、定義域の濃度は $\kappa$ 未満、$\mathcal M$ も飽和なので、同じ補題により $b_\alpha$ を定義域に加えて延長でき、その逆写像を $f_{\alpha+1}$ とする。定義域の濃度は、$\alpha$ が有限なら有限、無限なら $\lvert\alpha\rvert+\lvert\alpha\rvert=\lvert\alpha\rvert$ 以下であり、どちらも $\kappa$ 未満である($\kappa$ は無限基数で、$\alpha<\kappa$ なら $\lvert\alpha\rvert<\kappa$)。
$f:=f_\kappa$ は、すべての $a_\alpha$ を定義域に、すべての $b_\alpha$ を値域に含む部分初等写像、すなわち全単射な部分初等写像なので、同型写像である。$\square$

カテゴリー性 の記事の Cantor の定理の証明も同じ形の往復を可算の場合に行っており、そこでの「隙間に元を選ぶ」段が、ここでは lem-morley-transfer の型の実現に置き換わっている。飽和の仮定は外せない(後の反例の表)。

強極小な理論

一般の場合の段 1〜3 は長いが、モデルが「次元」で決まる理論では、範疇性を直接に証明できる。この節では、$T$ を可算言語 $L$ の完全な理論で無限のモデルをもつものとする。$\exists^{\le n}x\,\varphi$ は「$\varphi$ を満たす $x$ は $n$ 個以下」を表す一階の論理式の略記である($n+1$ 個の相異なる元がないことを書けばよい)。

強極小な理論と代数的閉包

$T$ が 強極小(strongly minimal)であるとは、$T$ のどのモデル $\mathcal M$ でも、$\mathcal M$ の元をパラメータとする論理式で定義される $M$ の部分集合が、有限集合か補集合が有限な集合であることをいう。
$\mathcal M\models T$、$A\subset M$ について、$a\in M$ が $A$ 上 代数的 であるとは、$A$ の元をパラメータとする論理式 $\varphi(x)$ で、$\mathcal M\models\varphi[a]$ かつ $\varphi$ を満たす元が有限個のものがあることをいう。その全体を $\operatorname{acl}(A)$ と書く。$B\subset M$ が 独立 であるとは、どの $b\in B$ も $b\notin\operatorname{acl}(B\setminus\{b\})$ となることをいい、包含について極大な独立集合を 基底 という。

定義からすぐに、$A\subset\operatorname{acl}(A)$(論理式 $x=a$)、$A\subset B$ なら $\operatorname{acl}(A)\subset\operatorname{acl}(B)$、$a\in\operatorname{acl}(A)$ ならある有限集合 $A_0\subset A$ で $a\in\operatorname{acl}(A_0)$ となること(論理式に現れるパラメータは有限個)が分かる。また $L$ が可算なので、$A$ の元をパラメータとする論理式は $\lvert A\rvert+\aleph_0$ 個以下で、それぞれ有限個の元しか加えないから、$\lvert\operatorname{acl}(A)\rvert\le\lvert A\rvert+\aleph_0$ である。

交換法則

$T$ を強極小、$\mathcal M\models T$、$A\subset M$、$a,b\in M$ とする。$b\in\operatorname{acl}(A\cup\{a\})\setminus\operatorname{acl}(A)$ ならば $a\in\operatorname{acl}(A\cup\{b\})$ である。

$A$ の元をパラメータとする論理式 $\varphi(x,y)$ と $n\ge1$ で、$\mathcal M\models\varphi[b,a]$ かつ $\varphi(x,a)$ を満たす $x$ がちょうど $n$ 個のものをとる。$\varphi'(x,y):=\varphi(x,y)\land\exists^{\le n}x'\,\varphi(x',y)$ とおくと、$\mathcal M\models\varphi'[b,a]$ である。$a\notin\operatorname{acl}(A\cup\{b\})$ と仮定して矛盾を導く。
$\varphi'(b,y)$ を満たす $y$ の集合は $a$ を含み、$A\cup\{b\}$ の元をパラメータとして定義されるので、無限集合であり、強極小性から補集合は有限である。その補集合の元の個数を $k$ とし、$\chi(x):=\exists^{\le k}y\,\lnot\varphi'(x,y)$ とおく。$\chi$ は $A$ の元をパラメータとする論理式で $\mathcal M\models\chi[b]$ であり、$b\notin\operatorname{acl}(A)$ なので $\chi$ を満たす元は無限個ある。その中から相異なる $b_0,\dots,b_n$ をとる。各 $i$ について $\varphi'(b_i,y)$ を満たさない $y$ は $k$ 個以下なので、$M$ が無限であることから、すべての $i$ について $\mathcal M\models\varphi'[b_i,a']$ となる $a'\in M$ がある。すると $\varphi(x,a')$ を満たす $x$ が $b_0,\dots,b_n$ の $n+1$ 個以上あることになり、$\varphi'(b_0,a')$ の $\exists^{\le n}$ の部分に反する。$\square$

基底と濃度

$T$ を強極小、$\mathcal M\models T$ とする。

  1. $\mathcal M$ は基底をもつ。
  2. $B$ が基底なら $\operatorname{acl}(B)=M$ である。
  3. $M$ が非可算なら、どの基底 $B$ も $\lvert B\rvert=\lvert M\rvert$ を満たす。

1:独立集合の鎖の和は独立である。$b\in\operatorname{acl}(B\setminus\{b\})$ なら、ある有限集合 $B_0\subset B\setminus\{b\}$ で $b\in\operatorname{acl}(B_0)$ となり、$B_0\cup\{b\}$ は鎖のある 1 つの元に含まれるからである。空集合は独立なので、Zorn の補題により極大な独立集合がある。
2:$a\notin\operatorname{acl}(B)$ とすると、$B\cup\{a\}$ は独立になり、極大性に反する。実際 $a\notin\operatorname{acl}(B)$ であり、$b\in B$ について $b\in\operatorname{acl}((B\setminus\{b\})\cup\{a\})$ とすると、$b\notin\operatorname{acl}(B\setminus\{b\})$ なので lem-morley-exchange により $a\in\operatorname{acl}(B)$ となり矛盾する。
3:2 と上の濃度の評価から $\lvert M\rvert=\lvert\operatorname{acl}(B)\rvert\le\lvert B\rvert+\aleph_0$ である。$\lvert M\rvert$ は非可算なので $\lvert B\rvert\ge\lvert M\rvert$ であり、$B\subset M$ から等号が成り立つ。$\square$

独立な組の型

$T$ を強極小、$\mathcal M,\mathcal N\models T$ とし、$b_1,\dots,b_n\in M$ と $c_1,\dots,c_n\in N$ がそれぞれ相異なる元からなる独立集合をなすとする。このとき $L$ の論理式 $\varphi(x_1,\dots,x_n)$ について $\mathcal M\models\varphi[\bar b]\iff\mathcal N\models\varphi[\bar c]$ である。

$n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では $T$ が完全なことから従う。$n$ まで成り立つとし、$\mathcal M\models\varphi[\bar b,b_{n+1}]$ とする($\bar b=(b_1,\dots,b_n)$)。$b_{n+1}\notin\operatorname{acl}(\{b_1,\dots,b_n\})$ なので、$\varphi(\bar b,y)$ を満たす $y$ の集合は無限であり、強極小性から補集合は有限で、その元の個数を $k$ とする。論理式 $\theta(\bar x):=\exists^{\le k}y\,\lnot\varphi(\bar x,y)$ について $\mathcal M\models\theta[\bar b]$ であり、$b_1,\dots,b_n$ も独立なので帰納法の仮定により $\mathcal N\models\theta[\bar c]$ である。すると $\lnot\varphi(\bar c,y)$ を満たす $y$ は有限個で、それらは $\operatorname{acl}(\{c_1,\dots,c_n\})$ に属する。$c_{n+1}$ はそこに属さないので $\mathcal N\models\varphi[\bar c,c_{n+1}]$ である。$\mathcal M$ と $\mathcal N$ を入れ替えれば逆も成り立つ。$\square$

強極小な理論の非可算範疇性

可算言語の完全な理論 $T$ が無限のモデルをもち強極小ならば、$T$ はすべての非可算基数 $\kappa$ について $\kappa$-範疇的である。

基底の全単射を広げる

$T$ の濃度 $\kappa$ のモデルは、Löwenheim–Skolemの定理 の定理「Löwenheim–Skolem の定理」により存在する。$\mathcal M,\mathcal N$ を濃度 $\kappa$ のモデルとし、prop-morley-basis により基底 $B\subset M$、$C\subset N$ で $\lvert B\rvert=\lvert C\rvert=\kappa$ のものと、全単射 $f_0\colon B\to C$ をとる。独立集合の部分集合は独立なので、lem-morley-generic により $f_0$ は部分初等写像である(論理式の変数に同じ元が入る場合は、変数を同一視した論理式に当てはめればよい)。
$f_0$ を延長する部分初等写像(定義域は $M$ の部分集合)の全体を包含で順序づけると、鎖の和はまた部分初等写像なので、Zorn の補題により極大元 $g$ がある。
段 1($g$ の定義域は $M$ 全体). そうでないとし、$a\in M$ を定義域 $D$ の外にとる。prop-morley-basis の 2 により $a\in\operatorname{acl}(B)\subset\operatorname{acl}(D)$ である。$a$ を満たし、満たす元の個数 $n\ge1$ が最小になる、$D$ の元をパラメータとする論理式 $\varphi(x,\bar d)$ をとる。$a$ を満たす論理式 $\psi(x,\bar e)$($\bar e\in D$)について、$\varphi\land\psi$ も $a$ を満たし、元の個数は $n$ 以下なので最小性から $n$ 個であり、$\mathcal M\models\forall x\,(\varphi(x,\bar d)\to\psi(x,\bar e))$ となる。$g$ は部分初等的なので $\mathcal N\models\forall x\,(\varphi(x,g(\bar d))\to\psi(x,g(\bar e)))$ であり、$\mathcal N\models\exists x\,\varphi[g(\bar d)]$ も成り立つ。$\varphi(x,g(\bar d))$ を満たす $a'\in N$ をとれば、$a$ が満たすすべての論理式を $a'$ も満たすので、$g\cup\{(a,a')\}$ は部分初等写像になり、極大性に反する。
段 2($g$ は全射). $c\in N$ とすると、prop-morley-basis の 2 により $c$ は、$C$ の元 $\bar c=g(\bar b)$ をパラメータとし満たす元がちょうど $k$ 個の論理式 $\varphi(x,\bar c)$ を満たす。$\mathcal M$ でも $\varphi(x,\bar b)$ を満たす元がちょうど $k$ 個あり、$g$ はそれらを $\varphi(x,\bar c)$ を満たす相異なる $k$ 個の元に移すので、$c$ はその像に含まれる。
よって $g$ は全単射な部分初等写像、すなわち $\mathcal M$ から $\mathcal N$ への同型写像である。$\square$

証明の要点は、強極小なモデルが基底の濃度(次元)だけで決まることである。非可算なモデルでは次元が濃度に一致する(prop-morley-basis の 3)ので範疇性が出る。可算なモデルでは次元が濃度と一致するとは限らない($\mathrm{ACF}_0$ では $0,1,2,\dots,\aleph_0$ のどれにもなる)ので、可算では範疇的とは限らない。

例

強極小な理論
  1. 無限集合の理論 $T_\infty$(カテゴリー性 の例「無限集合の理論」)は強極小である。$\mathcal M\models T_\infty$ の部分集合 $X$ が有限個のパラメータ $\bar a$ を使う論理式で定義されるとする。等号だけの言語では、$\bar a$ を固定する $M$ の置換はすべて自己同型であり、自己同型は論理式の真偽を保つ(一階述語論理 の定理「同型補題」)ので、$X$ をそれ自身に移す。$\bar a$ に属さない 2 元は、それらを入れ替える互換で移り合うので、$X\setminus\bar a$ は空か $M\setminus\bar a$ 全体であり、$X$ は有限か補集合が有限である。
  2. 標数 $p$ の代数閉体の理論 $\mathrm{ACF}_p$($p$ は素数または $0$)は完全で(量化記号消去 の系「代数閉体の理論の帰結」の 1)、強極小である(同系の 3)。thm-morley-strongly-minimal により、$\mathrm{ACF}_p$ はすべての非可算基数で範疇的である。基底は素体上の超越基底にあたる。

カテゴリー性 の記事の $T_{\mathbb Q}$($\{0\}$ でない $\mathbb Q$ 上のベクトル空間の理論)も非可算基数で範疇的で、そこでは線形代数の基底が同じ役をしている。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
thm-morley-main の「$\kappa$ が非可算」稠密な線形順序の理論 $\mathrm{DLO}$ と $\kappa=\aleph_0$すべての非可算基数で範疇的であること
thm-morley-main の「言語が可算」下の理論 $T_{\aleph_1}$ と $\kappa=\aleph_2$$\aleph_1$-範疇的であること
thm-morley-saturated の「飽和」$(\mathbb R,<)$ と $(\mathbb R\setminus\{0\},<)$同型であること
thm-morley-strongly-minimal の「強極小」$\mathrm{DLO}$非可算基数で範疇的であること
反例の確かめ

1 行目:$\mathrm{DLO}$ は $\aleph_0$-範疇的だが、$2^{\aleph_0}$-範疇的でない(カテゴリー性 の定理「Cantor の定理」と例「連続体濃度では範疇的でない」)。
2 行目:相異なる定数記号 $c_\alpha$($\alpha<\omega_1$)からなる言語で、文 $\lnot\,c_\alpha=c_\beta$($\alpha\ne\beta$)の全体を $T_{\aleph_1}$ とする。モデルは「$c_\alpha$ の値の全体」と「それ以外の元の集合 $E$」に分かれ、同型写像は $c_\alpha$ の値を保つので、2 つのモデルが同型であることと $E$ の濃度が等しいことは同値である($E$ の間の全単射を $c_\alpha$ の値の上の恒等写像と合わせればよい)。濃度 $\lambda>\aleph_1$ のモデルでは $\lvert E\rvert=\lambda$ なので $T_{\aleph_1}$ は $\aleph_2$-範疇的だが、濃度 $\aleph_1$ のモデルでは $\lvert E\rvert$ が $0$ にも $\aleph_1$ にもなるので $\aleph_1$-範疇的でない。
3 行目:どちらも濃度 $2^{\aleph_0}$ の $\mathrm{DLO}$ のモデルで、同型でない(1 行目と同じ カテゴリー性 の例)。$\mathrm{DLO}$ は完全である(量化記号消去 の系「DLO の完全性と定義可能集合」)ので、thm-morley-saturated から、これらの少なくとも一方は飽和でない。
4 行目:$\mathrm{DLO}$ は可算言語の完全な理論で無限のモデルをもつが、強極小でない。$(\mathbb Q,<)$ でパラメータ $0$ を使う論理式 $x< 0$ が定義する集合は、負の有理数の全体で無限であり、補集合($0$ 以上の有理数)も無限だからである。1 行目のとおり $2^{\aleph_0}$-範疇的でない。

関連項目

参考文献

[1]
Michael Morley, Categoricity in power, Transactions of the American Mathematical Society, 1965, 序文 pp. 514–515、§2 冒頭の約束(可算言語の完全な理論)p. 518、Theorem 3.7 p. 527、Theorem 3.8 p. 528、飽和の定義 p. 534、Theorem 5.1・5.2・Lemma 5.3 p. 535、Theorem 5.4・5.5 p. 536、Theorem 5.6 p. 537

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