鎖(順序集合)(chain)とは、半順序集合の部分集合で、どの 2 元も比較可能なもの、すなわち順序を制限すると全順序になる部分集合である。有限の半順序集合では、鎖が極大であることは、最小の元が極小元、最大の元が極大元で、隣り合う元が被覆の関係にあることと同値であり、$n$ 元集合の冪集合の極大鎖は元の並べ方と一対一に対応して $n!$ 本ある。包含について鎖をなす部分群や線形独立な集合の族の和集合はまた部分群・線形独立であり、Zorn の補題を代数に使うときの要になる。$\mathbb{N}$ の冪集合には非可算個の元からなる鎖があるが、包含について整列した鎖はどれも高々可算である。
集合 $\{1,2,3\}$ の部分集合を包含で比べると、$\{1\}$ と $\{2\}$ のように比べられない組がある。その中から $\emptyset\subset\{2\}\subset\{2,3\}\subset\{1,2,3\}$ のように、どの 2 つも比べられる部分集合だけを選び出すと、一列に並んだ「はしご」ができる。半順序集合の中の、どの 2 元も比較できる部分集合を 鎖 という。鎖は半順序集合の中に埋まっている全順序の部分であり、Zornの補題 の仮定(「どの鎖にも上界がある」)、Dilworthの定理 の鎖への分割、可換環論の素イデアルの鎖による次元など、順序を扱うあちこちに現れる。
有限の半順序集合では、これ以上のばせない鎖(極大鎖)は「下端が極小元、上端が極大元で、隣り合う元の間に何も挟まらない」鎖として特徴付けられる。$n$ 元集合の冪集合では極大鎖が元の並べ方と一対一に対応し、ちょうど $n!$ 本ある。無限の場合には、$\mathbb{N}$ の部分集合の中に非可算個の元からなる鎖がある一方で、包含について整列した鎖はどれも可算である。
以下、$(P,\le)$ を 半順序集合 とし、$a< b$ は「$a\le b$ かつ $a\ne b$」を表す。$a\le b$ または $b\le a$ が成り立つとき、$a$ と $b$ は 比較可能 であるという。
鎖の長さを元の個数 $\lvert C\rvert$ で数える流儀もある(Dilworthの定理 の記事の定義「高さと幅」の高さは、鎖の元の個数の最大値である)。この記事の長さは、鎖を $c_0< c_1< \cdots< c_k$ と並べたときの段数 $k$ にあたる。
鎖とは逆に、相異なるどの 2 元も比較できない部分集合を 反鎖 という。1 元集合と空集合は鎖でも反鎖でもある(KT17 §6.1、p. 118)。「鎖」という語は全順序集合そのものを指すこともあるが、この記事では半順序集合の中の部分集合を指す(全順序 の記事の注意「「全順序」「線形順序」「鎖」の呼び分け」)。
最長鎖は極大鎖である。$C\subsetneq C'$ となる鎖 $C'$ があれば、$C'$ のほうが元が多いからである。逆は成り立たない(ex-chain-maximal-not-longest)。極大鎖と最長鎖の区別は KT17 §6.3(p. 123)にもある。
有限な鎖 $C$ は、全順序 の記事の命題「有限な全順序集合の整列性」により最小元と最大元をもち、最小元から順に取り出していくことで、$C=\{c_0,c_1,\dots,c_k\}$、$c_0< c_1< \cdots< c_k$ と、ただ 1 通りに並べられる。以下、有限な鎖はこのように並べて書く。
半順序集合を、下から上へ向かう矢印で結んだ図(Hasse 図)で描くと、鎖は図の中の「下から上への道筋」の上にある点の集まりである。途中で枝分かれしたり、横にそれたりしない。極大鎖は、これ以上点を書き足せない道筋で、有限なら一番下の点から一番上の点まで、途中を飛ばさずにたどる道筋になる(thm-chain-maximal-finite)。
半順序集合の中で「大きさ」を測るとき、鎖は「縦の長さ」を、反鎖は「横の広がり」を測る。縦と横の兼ね合いを述べるのが Dilworthの定理 の記事の定理「Dilworthの定理」と定理「Mirskyの定理」である。
$\{1,2,3\}$ の冪集合を包含で順序づける。
実数 $r>0$ ごとに区間 $[0,r)$ をとると、$\{[0,r)\mid r>0\}$ は $\mathbb{R}$ の冪集合の中の鎖である。$r\le s$ なら $[0,r)\subset[0,s)$ だからである。この鎖は非可算個の元をもち、包含について最小の元をもたない($[0,r/2)\subsetneq[0,r)$)。
$P=\{a,b,c,d\}$ に、$a< b< c$、$d< c$ で生成される順序を入れる($d$ は $a,b$ と比較できない)。$\{d,c\}$ は極大鎖である。実際、$d$ と比較可能な元は $d$ 自身と $c$ だけなので、$\{d,c\}$ にほかの元を加えると $d$ と比較できない元が入る。一方 $\{a,b,c\}$ は元が 3 個の鎖である。したがって $\{d,c\}$ は極大だが最長ではなく、この $P$ の極大鎖は長さが $1$ のものと $2$ のものがある。
$(P,\le)$、$(Q,\le)$ を半順序集合とする。
1:$C$ が鎖で $D\subset C$ なら、$D$ の 2 元は $C$ の 2 元でもあるので比較可能である。
2:$f(C)$ の 2 元は $f(a),f(b)$($a,b\in C$)と書ける。$C$ は鎖なので $a\le b$ または $b\le a$ であり、$f$ が単調なので、それぞれ $f(a)\le f(b)$ または $f(b)\le f(a)$ となる。
3:$a,b\in\bigcup\mathcal{K}$ とし、$a\in C$、$b\in C'$ となる $C,C'\in\mathcal{K}$ をとる。$\mathcal{K}$ は包含について鎖なので、$C\subset C'$ または $C'\subset C$ である。前者なら $a,b$ はともに鎖 $C'$ に属し、後者ならともに鎖 $C$ に属するので、どちらの場合も比較可能である。
4:比較可能であることの条件「$a\le b$ または $b\le a$」は、$\le$ と $\ge$ を入れ替えても同じ条件である。$\square$
3 は、Zornの補題 を「鎖全体の族」に当てるときにそのまま使われる。2 で単調性を外すと成り立たない(下の節「条件を外した反例」の表)。
有限の半順序集合では、極大鎖は次のように局所的な条件で判定できる。
$P$ を有限な半順序集合とし、$C=\{c_0< c_1< \cdots< c_k\}$ を $P$ の空でない鎖とする。$C$ が極大鎖であるための必要十分条件は、次の 3 つがすべて成り立つことである。
必要性。 $C$ が極大鎖であるとし、1〜3 のどれかが成り立たないとして矛盾を導く。いずれの場合も、$C$ に属さない元 $d$ で $C\cup\{d\}$ が鎖になるものを作る。$C\subsetneq C\cup\{d\}$ なので、これは極大性に反する。
十分性。 1〜3 が成り立つとし、$C\subsetneq C'$ となる鎖 $C'$ があったとする。$d\in C'\setminus C$ をとる。$d$ は各 $c_j$ と比較可能で、$d\ne c_j$ なので、各 $j$ について $d< c_j$ または $c_j< d$ のちょうど一方が成り立つ。
極大鎖の存在。 $D$ を $P$ の鎖とする。$P$ は有限なので、$D$ を含む $P$ の鎖は有限個しかなく、$D$ 自身がその 1 つである。その中で元の個数が最大のもの $C$ をとる。$C\subsetneq C'$ となる鎖 $C'$ があれば、$C'$ も $D$ を含み、元の個数が $C$ より多いので、$C$ の選び方に反する。よって $C$ は $D$ を含む極大鎖である。$P\ne\emptyset$ なら、$a\in P$ について $\emptyset\subsetneq\{a\}$ であり $\{a\}$ は鎖なので、$\emptyset$ は極大鎖でない。$\square$
$P=\emptyset$ のときは、空集合がただ 1 つの鎖であり、極大鎖でもある。この定理の証明は選択公理を使わない。$P$ の有限性は極大鎖の存在(元の個数の最大値をとるところ)で使い、十分性では $C$ が有限であること($c_0,c_k$ があり、最小の $i$ がとれること)だけを使っている。無限の場合の事情は下の節「無限の場合の極大鎖」で述べる。
$X$ を $n$ 個の元からなる有限集合とし、冪集合 $\mathcal{P}(X)$ を包含で順序づける。
1:$A\subsetneq B$ で $B\setminus A$ が 2 個以上の元をもつとき、$b\in B\setminus A$ を 1 つとると $A\subsetneq A\cup\{b\}\subsetneq B$ なので、$B$ は $A$ を被覆しない。$B\setminus A=\{b\}$ のとき、$A\subsetneq D\subset B$ となる $D$ をとると、$D\setminus A$ は $B\setminus A=\{b\}$ の空でない部分集合なので $\{b\}$ であり、$D=A\cup\{b\}=B$ となる。よって $A< D< B$ となる $D$ はなく、$A\lessdot B$ である。
2:$\mathcal{P}(X)$ の極小元は最小元 $\emptyset$ だけであり、極大元は最大元 $X$ だけである。$X\ne\emptyset$ のとき、thm-chain-maximal-finite により、極大鎖は $\emptyset$ から始まり $X$ で終わり、隣り合う 2 つが被覆の関係にある鎖である。1 により、1 段上がるごとに元がちょうど 1 個増えるので、$\lvert S_i\rvert=i$ であり、段数は $\lvert X\rvert-\lvert\emptyset\rvert=n$ である。$X=\emptyset$ のときは $\mathcal{P}(X)=\{\emptyset\}$ で、極大鎖は $\{\emptyset\}$ だけであり、主張は $n=0$ の場合として成り立つ。
3:並べ方 $(a_1,\dots,a_n)$ から作った $S_0\subsetneq\cdots\subsetneq S_n$ は、$S_0=\emptyset$、$S_n=X$ で、$S_i\setminus S_{i-1}=\{a_i\}$ なので、1 と thm-chain-maximal-finite により極大鎖である。逆に、2 の形の極大鎖に対し、$S_i\setminus S_{i-1}$ のただ 1 つの元を $a_i$ とおく。$i< j$ なら $a_i\in S_i\subset S_{j-1}$、$a_j\notin S_{j-1}$ なので $a_i\ne a_j$ であり、$\{a_1,\dots,a_n\}=S_n=X$ なので、$(a_1,\dots,a_n)$ は $X$ の並べ方である。帰納法で $S_i=\{a_1,\dots,a_i\}$ が分かるので、2 つの対応は互いに逆である。$n$ 個の元の並べ方は $n!$ 通りある(階乗)ので、極大鎖は $n!$ 本である。$\square$
$X=\{1,2,3\}$ なら極大鎖は $3!=6$ 本で、ex-chain-power-set の 1 本目は並べ方 $(2,3,1)$ に対応する。正の整数 $N$ の約数を整除で順序づけたときの極大鎖については、整除関係 の記事の系「約数の順序の被覆関係と極大鎖」に、長さが素因数の個数(重複をこめて数えたもの)に等しく、本数が多項係数で与えられることが示されている。$N$ が相異なる $n$ 個の素数の積なら、$N$ の約数は素因数の部分集合と一対一に対応し、この系の本数は $n!$ となって cor-chain-boolean と一致する。ex-chain-maximal-not-longest のように、一般の有限半順序集合では極大鎖の長さはそろわない。
Zornの補題 を代数で使うときは、部分群・部分空間・イデアルなどを包含で順序づけ、「鎖の和集合が上界になる」ことを確かめる。その核心にあるのが次の補題である。
$\mathcal{C}$ を集合からなる空でない族で、包含について鎖であるものとする。$F$ が $\bigcup\mathcal{C}$ の有限部分集合ならば、$F\subset C$ となる $C\in\mathcal{C}$ がある。
$F=\emptyset$ なら、$\mathcal{C}$ の元を 1 つとればよい。$F=\{x_1,\dots,x_m\}$($m\ge1$)とする。各 $i$ について、$x_i\in\bigcup\mathcal{C}$ なので $x_i\in C_i$ となる $C_i\in\mathcal{C}$ がある(有限個の選び方なので、選択公理は要らない)。$\{C_1,\dots,C_m\}$ は鎖 $\mathcal{C}$ の空でない有限部分集合であり、prop-chain-basic の 1 により包含について鎖、すなわち全順序集合である。全順序 の記事の命題「有限な全順序集合の整列性」により、その中に包含について最大のもの $C_j$ がある。各 $i$ について $x_i\in C_i\subset C_j$ なので、$F\subset C_j$ である。$\square$
1:$U:=\bigcup\mathcal{C}$ とおく。$\mathcal{C}$ は空でないので、その元 $H$ をとると単位元 $e$ は $H$ に属し、$e\in U$ である。$x,y\in U$ とすると、lem-chain-finite-subset を $F=\{x,y\}$ に当てて、$x,y\in H'$ となる $H'\in\mathcal{C}$ がある。$H'$ は部分群なので $xy^{-1}\in H'\subset U$ である。よって $U$ は部分群である。
2:ベクトルの集合 $S$ が線形独立であるとは、$S$ の相異なる有限個の元 $v_1,\dots,v_m$ と $\lambda_1,\dots,\lambda_m\in K$ について $\lambda_1v_1+\cdots+\lambda_mv_m=0$ ならばすべての $\lambda_i$ が $0$ であること、すなわち $S$ のどの有限部分集合も線形独立であることである。$\bigcup\mathcal{C}$ の有限部分集合 $F$ をとると、lem-chain-finite-subset により $F\subset C$ となる $C\in\mathcal{C}$ があり、$C$ は線形独立なのでその部分集合 $F$ も線形独立である。$\square$
族が鎖であることは外せない。$\mathbb{Z}$ の部分群 $2\mathbb{Z}$ と $3\mathbb{Z}$ は包含で比較できず、和集合 $2\mathbb{Z}\cup3\mathbb{Z}$ は $2+3=5$ を含まないので部分群でない。2 と Zornの補題 を合わせると、線形独立な集合を含む極大な線形独立集合(基底)の存在が得られる(極大元 の記事の例「線形独立集合の極大化」)。イデアルについての同じ議論は 極大元 の記事の命題「真のイデアル族の鎖上界」にある。
$\mathbb{N}$ は可算集合だが、その部分集合を包含で並べた鎖には非可算個の元をもつものがある。ところが、鎖に「整列している」という条件をつけると、可算個の元しかもてなくなる。ここで、鎖 $W$ が包含について 整列している とは、$W$ の空でないどの部分集合も包含について最小元をもつことである(整列順序)。
$\mathbb{N}$ の冪集合 $\mathcal{P}(\mathbb{N})$ を包含で順序づける。
1:有理数全体 $\mathbb{Q}$ は可算無限集合なので(有理数 の記事の命題「有理数全体は可算無限集合である」)、全単射 $q\colon\mathbb{N}\to\mathbb{Q}$ がある。実数 $r$ ごとに
$$
S_r:=\{n\in\mathbb{N}\mid q(n)< r\}
$$
とおく。$r< s$ とすると、$q(n)< r$ なら $q(n)< s$ なので $S_r\subset S_s$ である。さらに $r< t< s$ となる有理数 $t$ がある(有理数 の記事の定理「実数内での稠密性」)ので、$t=q(n)$ となる $n$ をとると $n\in S_s\setminus S_r$ であり、$S_r\subsetneq S_s$ となる。したがって $r\mapsto S_r$ は単射であり、$\{S_r\mid r\in\mathbb{R}\}$ の 2 元 $S_r,S_s$ は、$r\le s$ か $s\le r$ に応じて $S_r\subset S_s$ か $S_s\subset S_r$ となって比較可能である。よってこれは鎖であり、$\mathbb{R}$ と一対一に対応するので、非可算個の元からなる(可算集合 の記事の定理「実数全体の非可算性」)。
2:$W$ を、包含について整列している $\mathcal{P}(\mathbb{N})$ の鎖とする。$W$ の最大元(包含について最大の元)があればそれを除いた集合を、なければ $W$ 自身を $W'$ とおく。$S\in W'$ をとると、$S$ は $W$ の最大元でないので、$S\subsetneq T$ となる $T\in W$ がある($W$ は鎖なので、$S$ と比較可能で $S$ に含まれない元 $T$ は $S$ を真に含む)。そこで
$$
S^{+}:=\{T\in W\mid S\subsetneq T\}\ \text{の包含についての最小元}
$$
とおく($W$ が整列しているので存在する)。$S^{+}\setminus S$ は $\mathbb{N}$ の空でない部分集合なので、自然数の大小について最小元をもつ。それを $g(S)$ とおく。
$g\colon W'\to\mathbb{N}$ が単射であることを示す。$S,S'\in W'$、$S\ne S'$ とする。$W$ は鎖なので、必要なら入れ替えて $S\subsetneq S'$ としてよい。すると $S'$ は $\{T\in W\mid S\subsetneq T\}$ の元なので、その最小元 $S^{+}$ について $S^{+}\subset S'$ である。よって $g(S)\in S^{+}\subset S'$ である。一方 $g(S')\in S'^{+}\setminus S'$ なので $g(S')\notin S'$ である。したがって $g(S)\ne g(S')$ である。
$\mathbb{N}$ への単射があるので $W'$ は高々可算であり(可算集合 の記事の命題「単射・全射による特徴づけ」)、$W$ は $W'$ に高々 1 元を加えた集合なので高々可算である。$\square$
1 の鎖 $\{S_r\mid r\in\mathbb{R}\}$ は整列していない。たとえば $\{S_r\mid r>0\}$ は最小元をもたない($S_{r/2}\subsetneq S_r$)。2 の証明では、整列していることを「すぐ上の元 $S^{+}$ がある」という形で使い、$S^{+}$ に入って $S$ に入らない自然数で $S$ に目印をつけた。$\mathbb{N}$ の代わりに、整列順序の与えられた集合 $X$ をとれば、同じ議論で、$\mathcal{P}(X)$ の整列した鎖 $W$ から最大元を除いた $W'$ から $X$ への単射が得られる(したがって $W$ の元の個数は $X$ の元の個数より高々 1 多い)。
無限の半順序集合では、極大鎖が有限とは限らないので、thm-chain-maximal-finite の形で極大鎖をとらえることはできない(有限な鎖 $C$ については、$P$ が無限でも 1〜3 は $C$ が極大であるための必要十分条件である)。$(\mathbb{Q},\le)$ は全順序集合なので $\mathbb{Q}$ 全体がただ 1 つの極大鎖だが、最小元も最大元もなく、どの 2 元の間にも別の有理数がある(有理数 の記事の命題「二つの有理数の間の有理数」)ので被覆の関係にある組もない。
極大鎖の存在も、有限の場合のように元の個数の最大値をとって示すことはできない。「どの半順序集合にも極大鎖がある」という主張(Hausdorff の極大原理)は、Zornの補題 と同値であり(Zornの補題 の記事の定理「Zornの補題と同値な原理」)、したがって選択公理と同値である。Zorn の補題そのものも鎖を使って述べられる。半順序集合のどの鎖も上界をもつならば、極大元が存在する(Zornの補題 の記事の定理「鎖の上界から得られる極大元」、HJ99 Chapter 8 §1、Theorem 1.13、p. 142)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| どの 2 元も比較可能 | 包含で順序づけた $\mathcal{P}(\{1,2\})$ の $\{\{1\},\{2\}\}$ | 鎖である |
| 写像が単調(prop-chain-basic の 2) | $f\colon\{0< 1\}\to\mathcal{P}(\{1,2\})$、$f(0)=\{1\}$、$f(1)=\{2\}$ | 鎖の像は鎖 |
| 族が包含について鎖(cor-chain-unions) | $\mathbb{Z}$ の部分群 $2\mathbb{Z},3\mathbb{Z}$ | 部分群の族の和集合は部分群 |
| $P$ が有限(thm-chain-maximal-finite) | $(\mathbb{Q},\le)$ の極大鎖 $\mathbb{Q}$ | 極大鎖は極小元から始まり、隣り合う元が被覆の関係にある |
| 冪集合 $\mathcal{P}(X)$ である(cor-chain-boolean の 2) | ex-chain-maximal-not-longest の $\{d,c\}$ と $\{a,b,c\}$ | 極大鎖はどれも同じ長さをもつ |
| 鎖が整列している(thm-chain-power-set-n の 2) | $\{S_r\mid r\in\mathbb{R}\}$ | $\mathcal{P}(\mathbb{N})$ の鎖は高々可算 |
1 行目は ex-chain-power-set で確かめた。2 行目:$0< 1$ だが、像 $\{1\}$ と $\{2\}$ は包含で比較できないので、鎖 $\{0,1\}$ の像は鎖でない。$f$ は $f(0)\subset f(1)$ を満たさないので単調でない。3 行目:$2\in2\mathbb{Z}$、$3\in3\mathbb{Z}$ だが $5$ は $2$ でも $3$ でも割り切れない。$2\mathbb{Z}\not\subset3\mathbb{Z}$($2\notin3\mathbb{Z}$)、$3\mathbb{Z}\not\subset2\mathbb{Z}$ なので、この 2 つからなる族は鎖でない。4 行目は「無限の場合の極大鎖」の節で確かめた。5 行目:ex-chain-maximal-not-longest の $P$ は冪集合と順序同型でない(元が 4 個の冪集合 $\mathcal{P}(\{1,2\})$ は最小元をもつが、$P$ の極小元は $a,d$ の 2 つある)。$P$ の極大鎖 $\{d,c\}$ は 2 元、$\{a,b,c\}$ は 3 元($\{a,b,c\}$ に加えられる元は $d$ しか残らないが、$d$ は $a$ と比較できないので極大)で、長さがそろわない。6 行目は thm-chain-power-set-n の 1 の証明と、そのあとの注意による。
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