連結成分(グラフ)

同義語:connected component of a graphグラフの連結成分

概要

連結成分(グラフ)(connected component of a graph)とは、グラフの頂点を「道で結ばれる」という同値関係で分けたとき、1 つの同値類とその頂点どうしを結ぶ辺すべてからなる部分グラフのことで、包含について極大な連結部分グラフと一致する。グラフは連結成分の非交和であり、異なる連結成分の間に辺はなく、2 つのグラフが同型であることは連結成分どうしが 1 対 1 に同型に対応することと同値である。接続行列の階数は頂点数から連結成分の個数(標数が 2 でない体の上の符号なしの場合は二部グラフである連結成分の個数)を引いたものに等しく、ここから $m$ 辺 $n$ 頂点で連結成分が $c$ 個のグラフの閉路空間の次元 $m-n+c$ が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: グラフ, 道(グラフ), 連結グラフ

グラフの頂点を「辺をたどって互いに行き来できるか」で分けると、互いに行き来できる頂点の集まりが頂点集合を重なりなく覆う。その 1 つ 1 つの集まりと、その中を結ぶ辺をあわせた部分グラフを連結成分(connected component)という。どのグラフも連結成分の非交和であり、異なる連結成分の間には辺がない。グラフの多くの性質と量は、連結成分ごとに調べて結果を合わせれば求まる。
この記事では、連結成分を定義したあと、グラフの同型が連結成分ごとの同型に帰着すること(thm-ccg-isomorphism)、頂点を 1 つ除いたときに連結成分の個数がどれだけ増えうるか(prop-ccg-vertex-deletion)、接続行列の階数が連結成分の個数と二部グラフである連結成分の個数で決まること(thm-ccg-incidence-rank)を証明する。連結であることの判定法や、連結グラフの辺の本数については 連結グラフ で扱う。

定義

この記事の「グラフ」は、グラフ の記事の定義「グラフの定義」の単純無向グラフ $G=(V,E)$ である。道は 道(グラフ) の定義「歩道と道」のとおりで、長さ $0$ の道も道である。頂点集合 $C\subset V$ に対し、$C$ の頂点と両端点が $C$ に属する辺すべてからなる部分グラフを $G[C]:=(C,\ E\cap[C]^2)$ と書く($C$ の誘導部分グラフ)。

グラフの連結成分

グラフ $G=(V,E)$ の頂点 $u,v$ について、$u$ と $v$ を結ぶ道が存在することを $u\sim_G v$ と書く。$\sim_G$ は $V$ 上の同値関係であり、その各同値類 $C$ に対し、誘導部分グラフ $G[C]$ を $G$ の連結成分(connected component)という。頂点 $v$ を含む連結成分を $G_v$ と書く。$G$ が有限のとき、連結成分の個数を $c(G)$ と書く。

この定義は グラフ の記事の定義「連結性」、連結グラフ の記事の定義「連結グラフと連結成分」と同じである。次の事実はそれらの記事で証明されている。

  • $\sim_G$ は同値関係であり、各連結成分は連結で、$G$ のすべての辺はちょうど 1 つの連結成分に属する(グラフ の記事の命題「連結成分への分解」)。
  • 連結成分は、包含について極大な連結部分グラフと同じものである(連結グラフ の記事の命題「連結成分は極大な連結部分グラフ」)。
  • $u\sim_G v$ は、距離(グラフ) $d_G(u,v)$ が有限であることと同値である(距離(グラフ) の記事の命題「有限距離と連結成分」)。
    $G$ が連結であることと $c(G)=1$ であることは同値である。頂点を持たないグラフでは $c=0$ である。次数 $0$ の頂点(孤立点)$v$ は、それだけで連結成分 $(\{v\},\emptyset)$ をなす。

直感

1 つの頂点から出発して、辺でつながる頂点に次々に印を付けていくと、印が広がらなくなったところで 1 つの連結成分が塗り終わる。印の付いていない頂点が残っていれば、そこから同じことを繰り返す。こうして頂点集合は、描き方や出発点の選び方によらない形で、いくつかの「島」に分かれる。島と島の間には辺がないので、島の中で何をしても他の島には影響しない。グラフについての問いの多くが「各連結成分について答え、結果を合わせる」ことで片付くのはこのためである。

例と反例

小さいグラフの連結成分
  1. 道グラフ $P_3$(頂点 $1,2,3$)と閉路グラフ $C_4$(頂点 $a,b,c,d$)を並べた 7 頂点のグラフでは、連結成分は $P_3$ と $C_4$ の 2 つで、$c=2$ である。
  2. $n$ 頂点の空グラフ(辺のないグラフ)では、各頂点が孤立点なので $c=n$ である。
  3. 加法群 $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の 2 頂点 $g,h$ を $h-g\in\{2,4\}$ のとき辺で結んだグラフでは、連結成分は $\{0,2,4\}$ と $\{1,3,5\}$ の 2 つの三角形である(連結グラフ の記事の例「Cayley グラフの例」)。
2 色で塗られた部分の連結成分

グラフ $H$ の頂点に色を塗り、隣接する頂点が異なる色になっているとする(頂点彩色)。相異なる 2 色 $\alpha,\beta$ について、色が $\alpha$ か $\beta$ の頂点全体の誘導部分グラフを考え、その連結成分 $K$ の中だけで色 $\alpha$ と $\beta$ を入れ替えても、頂点彩色のままである。$K$ の外の頂点 $y$ が $K$ の頂点と隣接するなら、$y$ の色は $\alpha,\beta$ のどちらでもない(どちらかなら $y$ も $K$ に入る)からである。この $K$ は Kempe 鎖とよばれ、四色定理 の記事の補題「Kempe 鎖による色の入れ替え」で使われる。連結成分の「外へ辺が出ない」性質(prop-ccg-closed-set)が、入れ替えの影響を $K$ の中に閉じ込めている。

反例:連結な部分グラフでも連結成分とは限らない

道グラフ $P_4$(頂点 $1,2,3,4$)の部分グラフ $(\{1,2\},\{12\})$ は連結であるが、連結成分ではない。満たす性質:連結な部分グラフである。満たさない定義条件:頂点集合 $\{1,2\}$ が $\sim$ の同値類である($2\sim3$ なので同値類は $\{1,2,3,4\}$)。連結成分は極大な連結部分グラフでなければならない。

反例:同値類の上の部分グラフでも誘導部分グラフでなければ連結成分でない

三角形 $K_3$(頂点 $a,b,c$)の頂点集合はただ 1 つの同値類であるが、全域部分グラフ $(\{a,b,c\},\{ab,bc\})$ は辺 $ca$ を欠くので連結成分ではない。満たす性質:頂点集合が同値類で、連結である。満たさない定義条件:同値類の頂点を両端にもつ辺をすべて含む。

性質

外へ辺が出ない頂点集合

頂点の部分集合 $S\subset V$ について、一方の端点が $S$ に、他方の端点が $V\setminus S$ に属する辺の集合を $E(S,V\setminus S)$ と書く。

連結成分の和集合の特徴づけ

グラフ $G=(V,E)$ と $S\subset V$ について、次は同値である。

  1. $E(S,V\setminus S)=\emptyset$ である。
  2. $S$ は、いくつかの連結成分の頂点集合の和集合である(空の和集合 $S=\emptyset$ も含む)。

2 ⇒ 1:$G$ の辺はどれも 1 つの連結成分に属し、両端点が同じ同値類にある。$S$ は同値類の和集合なので、各辺の両端点はともに $S$ に属するか、ともに $S$ に属さない。
1 ⇒ 2:$u\in S$ と $u\sim_G v$ を満たす $v$ をとり、$u$–$v$ 道 $(u=v_0,v_1,\dots,v_\ell=v)$ をとる。$v_{i-1}\in S$ なら、辺 $v_{i-1}v_i$ は $E(S,V\setminus S)$ に属さないので $v_i\in S$ である。$i$ についての帰納法で $v\in S$ となる。よって $u$ の同値類は $S$ に含まれ、$S$ はその要素の同値類の和集合である。$\square$

$S$ を 1 つの同値類にとると、連結成分 $G[S]$ から外へ出る辺はないことがわかる。頂点集合が空でない $G$ について、$G$ が連結であることは、$\emptyset\neq S\subsetneq V$ となる $S$ がどれも 1 を満たさないことと同値である(連結グラフ の記事の命題「切断による判定」)。

同型は連結成分ごとに決まる

連結成分への分解と同型

グラフ $G=(V,E)$ と $H=(V',E')$ について、次は同値である。

  1. $G$ と $H$ は同型である。
  2. $G$ の $\sim_G$ の同値類全体から $H$ の $\sim_H$ の同値類全体への全単射 $\varphi$ があって、各同値類 $C$ について $G[C]$ と $H[\varphi(C)]$ が同型である。
    さらに 1 の同型 $f\colon V\to V'$ は、各連結成分 $G[C]$ を連結成分 $H[f(C)]$ へ同型に写す。

1 ⇒ 2:$f$ を同型とする。$(v_0,\dots,v_\ell)$ が $G$ の道なら、$f$ は隣接関係を保つ単射なので $(f(v_0),\dots,f(v_\ell))$ は $H$ の道である。逆写像 $f^{-1}$ も同型なので(グラフ の記事の命題「同型の基本性質」)、$u\sim_G v$ と $f(u)\sim_H f(v)$ は同値である。よって $f$ は各同値類 $C$ を同値類 $f(C)$ の上へ写し、$\varphi(C):=f(C)$ は同値類の間の全単射である。$u,v\in C$ について $uv\in E\iff f(u)f(v)\in E'$ なので、$f$ の $C$ への制限は $G[C]$ から $H[f(C)]$ への同型である。これで 2 と最後の主張が示された。
2 ⇒ 1:各同値類 $C$ について同型 $f_C\colon G[C]\to H[\varphi(C)]$ を選び、$v\in V$ に対し $f(v):=f_{C}(v)$($C$ は $v$ を含む同値類)と定める。同値類は $V$ と $V'$ をそれぞれ重なりなく覆い、$\varphi$ と各 $f_C$ は全単射なので、$f\colon V\to V'$ は全単射である。
$uv\in E$ とすると、$u,v$ は同じ同値類 $C$ に属するので、$f(u)f(v)=f_C(u)f_C(v)$ は $H[\varphi(C)]$ の辺であり、$E'$ に属する。逆に $f(u)f(v)\in E'$ とする。$H$ の辺の両端点は同じ同値類に属するので、$f(u),f(v)$ はある $\varphi(C)$ に属する。$f(u)\in\varphi(C_u)$($C_u$ は $u$ の同値類)と $\varphi$ の単射性から $C_u=C$、同様に $v\in C$ であり、$f_C$ が同型なので $uv\in E$ である。よって $f$ は同型である。$\square$

したがって、グラフは「連結成分の同型類と、その個数の組」によって同型を除いて決まる。たとえば辺を持たない $n$ 頂点のグラフは $K_1$ が $n$ 個、森は木がいくつか並んだものである。この定理は、連結成分の頂点数や辺数がそろうだけでは足りず、成分そのものの同型が必要であることも示している(ex-ccg-table の 4 行目)。
連結成分ごとに決まる性質と量を、この記事と他の記事から集めると次のようになる。$G$ の連結成分を $G_1,\dots,G_c$ とする。

性質・量連結成分との関係所在
二部グラフであることすべての $G_i$ が二部グラフであることと同値二部グラフ の命題「部分グラフと連結成分への遺伝」
彩色数 $\chi$$\chi(G)=\max_i\chi(G_i)$彩色数 の命題「部分グラフと連結成分」
辺の本数の下界$\lvert E\rvert\ge\lvert V\rvert-c$、等号は森のとき連結グラフ の定理「辺の本数の下界と森」
隣接行列のスペクトル各 $G_i$ のスペクトルの和(重複度を足す)BH11 Proposition 1.3.6(p. 7)
Laplacian行列の核の次元$c$ に等しいLaplacian行列 の定理「核の次元と連結成分の個数」
接続行列の階数$\lvert V\rvert-c$ または $\lvert V\rvert-b$thm-ccg-incidence-rank

隣接行列については、頂点を連結成分ごとにまとめて並べると、異なる連結成分の間に辺がないので、隣接行列は各 $G_i$ の隣接行列を対角に並べたブロック対角行列になる。並べ替えは置換行列による相似変換なので(隣接行列 の記事の定理「同型と置換行列」)、固有多項式は各 $G_i$ の固有多項式の積になり、上の表のスペクトルの関係が従う。

頂点を除いたときの連結成分

辺を 1 本除くと連結成分の個数は高々 $1$ しか増えない(連結グラフ の記事の補題「辺を 1 本加えたときの連結成分」)。頂点を除く場合はもっと増えうる。頂点 $v$ に対し、$v$ と $v$ に接続する辺を除いたグラフを $G-v$ と書く。

頂点の除去と連結成分の個数

$G$ を有限グラフ、$v$ を次数 $d$ の頂点とする。

  1. $d=0$ なら $c(G-v)=c(G)-1$ である。
  2. $d\ge1$ なら $c(G)\le c(G-v)\le c(G)+d-1$ である。
  3. $d\ge1$ で、$v$ を含む連結成分 $G_v$ のすべての頂点の次数が偶数なら、$c(G-v)\le c(G)+\frac d2-1$ である。

$G_v$ 以外の連結成分 $G[C]$ は $G-v$ の連結成分でもある。実際、$C$ の 2 頂点を結ぶ $G[C]$ の道は $v$ を通らないので $G-v$ の道であり、prop-ccg-closed-set により $C$ から外へ出る $G$ の辺はないので $G-v$ の辺もない。$G-v$ の頂点の同値類で $C$ を含むものは、再び prop-ccg-closed-set の 1 ⇒ 2 の議論により $C$ に含まれ、$C$ と一致する。
残りの $G-v$ の連結成分は、頂点集合 $C_v\setminus\{v\}$($C_v$ は $G_v$ の頂点集合)を分割する。その個数を $k$ とすると $c(G-v)=c(G)-1+k$ である。$d=0$ なら $C_v=\{v\}$ なので $k=0$ で、1 が従う。
$d\ge1$ とする。$C_v\setminus\{v\}$ は $v$ の隣接頂点を含むので空でなく、$k\ge1$ である。$G-v$ の連結成分 $K\subset C_v\setminus\{v\}$ の頂点 $x$ をとり、$G$ の $x$–$v$ 道 $(x=w_0,\dots,w_r=v)$ をとると、$w_{r-1}$ は $v$ の隣接頂点であり、区間 $(w_0,\dots,w_{r-1})$ は $v$ を通らないので $G-v$ の道である。よって $K$ は $v$ の隣接頂点 $w_{r-1}$ を含む。異なる $K$ は交わらないので、$k$ は $v$ の隣接頂点の個数 $d$ 以下である。これで 2 が示された。
3:$K$ を上の連結成分とし、$v$ と $K$ の頂点を結ぶ辺の本数を $d_K$ とする。$K$ の頂点 $x$ に接続する $G$ の辺の他端は $K$ か $v$ にある。他端 $y$ が $K\cup\{v\}$ の外にあると、$y$ は $G-v$ の頂点で $x$ と隣接するので $K$ に属することになり矛盾するからである。したがって、$K$ の頂点の次数の和は、両端が $K$ にある辺を 2 回、$v$ との辺を 1 回ずつ数えて
$$ \sum_{x\in K}\deg_G(x)=2\,\lvert E\cap[K]^2\rvert+d_K $$
となる。左辺は偶数の和なので偶数であり、$d_K$ は偶数である。$K$ は $v$ の隣接頂点を含むので $d_K\ge1$、よって $d_K\ge2$ である。$v$ の各辺はちょうど 1 つの $K$ に入るので $\sum_Kd_K=d$ であり、$2k\le d$ となる。$\square$

1・2 で $c(G)$ を引いた値が「$v$ を除くと増える連結成分の個数」であり、2 の上限 $d-1$ は星グラフ $K_{1,d}$ の中心 $v$ で達成される($K_{1,d}-v$ は $d$ 個の孤立点)。より一般に、木 $T$ では $c(T-v)=\deg v$ であり(木 の記事の命題「頂点の除去と連結成分の数」)、木の次数が正のどの頂点でも 2 の上限が達成される。3 の上限は、$v$ を共有する $d/2$ 個の三角形からなるグラフ(風車形)の中心で達成される。2 の不等式 $c(G-v)\le c(G)+d-1$ は BM76 Exercise 1.6.8 (b)(p. 13。辺の場合の不等式を頂点に置き換えられないことを問う)の内容を定量化したもので、3 は同書 Exercise 1.6.9(p. 13)である。次数が偶数という条件は、Euler閉路 をもつグラフの特徴づけに現れる条件である。

接続行列の階数

$G$ を $n$ 頂点 $m$ 辺の有限グラフとし、$F$ を体とする。$G$ の接続行列(incidence matrix)とは、頂点で行を、辺で列を添字づけた $n\times m$ 行列 $M$ で、頂点 $v$ が辺 $e$ の端点なら $M_{ve}=1$、そうでなければ $M_{ve}=0$ とするものである。各辺に向きを 1 つずつ決め、辺 $e$ が $u$ から $w$ へ向くとき $N_{ue}=1$、$N_{we}=-1$、それ以外を $0$ とした行列 $N$ を向き付き接続行列という(Laplacian行列 の記事の定義「向き付き接続行列」)。$M$ と $N$ の成分を $F$ の元とみて、$F$ 上の階数を考える。$G$ の連結成分のうち二部グラフであるもの(孤立点を含む)の個数を $b(G)$ と書く。

接続行列の階数と連結成分

$G$ を $n$ 頂点の有限グラフ、$F$ を体とする。

  1. $F$ 上で $\operatorname{rank}N=n-c(G)$ である(向きの選び方によらない)。
  2. $F$ の標数が $2$ なら、$F$ 上で $\operatorname{rank}M=n-c(G)$ である。
  3. $F$ の標数が $2$ でなければ、$F$ 上で $\operatorname{rank}M=n-b(G)$ である。

行列 $X$ について、$\operatorname{rank}X=n-\dim\{x\in F^V\mid x^{\top}X=0\}$ である(行の個数 $n$ から左核の次元を引いたもの)。左核を調べる。
1:辺 $e$ が $u$ から $w$ へ向くとき $(x^{\top}N)_e=x_u-x_w$ なので、$x^{\top}N=0$ は「すべての辺 $uw$ で $x_u=x_w$」と同値である。この条件を満たす $x$ は道に沿って値が変わらないので、各同値類の上で定数である。逆に各同値類の上で定数なら、辺の両端点は同じ同値類にあるので条件を満たす。よって左核は「同値類ごとに定数のベクトル」全体で、次元は同値類の個数 $c(G)$ である。
2:$(x^{\top}M)_e=x_u+x_w$ であり、標数 $2$ では $x_u+x_w=x_u-x_w$ なので、1 と同じ左核になる。
3:左核の条件は「すべての辺 $uw$ で $x_w=-x_u$」である。この条件は辺ごとに両端点だけにかかわり、辺の両端点は同じ同値類にあるので、左核は、各同値類 $C$ について「$C$ の上の値 $x|_C$ が $G[C]$ の辺について条件を満たす」ベクトルの空間 $L_C$ の直和である。各 $C$ について、$G[C]$ が二部グラフなら $\dim L_C=1$、そうでなければ $L_C=0$ であることを示せば、$\dim(\text{左核})=b(G)$ となって 3 が従う。
$C$ の頂点 $r$ を 1 つ固定する。$x\in L_C$ とし、$r$–$v$ 道 $(r=v_0,\dots,v_\ell=v)$ をとると、条件から $x_{v_i}=-x_{v_{i-1}}$ なので $x_v=(-1)^\ell x_r$ である。よって $x$ は $x_r$ で決まり、$\dim L_C\le1$ である。
$G[C]$ が二部グラフで、二部分割を $C=A\sqcup B$($r\in A$)とする。$x_v:=1$($v\in A$)、$x_v:=-1$($v\in B$)と定めると、辺は $A$ と $B$ を結ぶので条件を満たし、$x\neq0$ である。よって $\dim L_C=1$ である。
逆に $0\neq x\in L_C$ があるとする。上の式から $x_r\neq0$ で、すべての $v\in C$ について $x_v\in\{x_r,-x_r\}$ である。標数が $2$ でないので $x_r\neq-x_r$ である。$A:=\{v\in C\mid x_v=x_r\}$、$B:=\{v\in C\mid x_v=-x_r\}$ とおくと $C=A\sqcup B$ であり、辺 $uw$ では $x_w=-x_u\neq x_u$ なので $u,w$ は $A$ と $B$ に分かれる。よって $G[C]$ は二部グラフである。対偶により、$G[C]$ が二部グラフでなければ $L_C=0$ である。$\square$

$F=\mathbb{R}$ の場合、$NN^{\top}$ はLaplacian行列 $L$、$MM^{\top}$ は符号なし Laplacian 行列 $Q=D+A$($D$ は次数の対角行列)であり、実行列 $X$ について $\operatorname{rank}XX^{\top}=\operatorname{rank}X$ が成り立つ(BH11 Lemma 2.9.2、p. 30)。したがって 1 と 3 から、$L$ の固有値 $0$ の重複度は $c(G)$、$Q$ の固有値 $0$ の重複度は $b(G)$ である。前者は Laplacian行列 の記事の定理「核の次元と連結成分の個数」、後者は BH11 Proposition 1.3.9(pp. 7–8)である。

三角形と 4 頂点の閉路

三角形 $K_3$(頂点 $a,b,c$、辺 $ab,ac,bc$ の順)の接続行列は
$$ M=\begin{pmatrix}1&1&0\\1&0&1\\0&1&1\end{pmatrix},\qquad \det M=-2 $$
である。$\mathbb{R}$ 上では $\det M\neq0$ なので階数 $3=3-b(K_3)$($K_3$ は二部グラフでないので $b=0$)であり、$\mathbb{F}_2$ 上では $\det M=0$ で、3 行の和が $0$ になるので階数は $2=3-c(K_3)$ である。
4 頂点の閉路 $C_4$ は二部グラフなので、どの体の上でも $\operatorname{rank}M=4-1=3$ である。実際、頂点を一周の順に $1,2,3,4$ とすると、ベクトル $x=(1,-1,1,-1)$ が $x^{\top}M=0$ を満たす。

偶数次数の部分グラフの個数

$G=(V,E)$ を $n$ 頂点 $m$ 辺の有限グラフとする。辺の部分集合 $S\subset E$ で、全域部分グラフ $(V,S)$ のすべての頂点の次数が偶数になるもの全体は、対称差を和として $\mathbb{F}_2$ 上の線形空間をなし、その次元は $m-n+c(G)$ である。特にそのような $S$ はちょうど $2^{m-n+c(G)}$ 個ある。

$S\subset E$ に、$e\in S$ で $1$、それ以外で $0$ をとるベクトル $y_S\in\mathbb{F}_2^E$ を対応させると、部分集合と $\mathbb{F}_2^E$ の元が 1 対 1 に対応し、対称差はベクトルの和に対応する。$(My_S)_v$ は $v$ に接続する $S$ の辺の本数を $2$ で割った余りなので、条件は $My_S=0$ と同値である。よって求める集合は $M$ の核であり、その次元は次元公式と thm-ccg-incidence-rank の 2 により $m-\operatorname{rank}M=m-n+c(G)$ である。$\square$

この空間は 閉路 の記事の定義「閉路空間」の $\mathcal{Z}(G)$ であり、この系は同記事の定理「閉路空間の次元と基本閉路」の次元の主張を、接続行列の階数から導き直したものである(同記事は全域森に関する基本閉路の基底で示している)。$m-n+c(G)$ は同記事で閉路階数とよばれている。たとえば完全グラフ $K_4$ では $6-4+1=3$ で、すべての頂点の次数が偶数の辺集合は、空集合、4 つの三角形、3 つの 4 頂点の閉路の $8=2^3$ 個である(閉路 の記事の例「$K_4$ の閉路空間」)。

定理の仮定を外した場合

外す条件・替える条件反例成り立たなくなること
辺の除去($c$ は高々 $1$ 増える)を頂点の除去に替える星グラフ $K_{1,3}$ の中心$c$ が $1$ から $3$ に増える
prop-ccg-vertex-deletion の 3 の「次数が偶数」星グラフ $K_{1,3}$ の中心$c(G-v)=3>c(G)+\frac32-1$
prop-ccg-vertex-deletion の 3 で、偶数次数を $G_v$ でなく $v$ だけに課す中央の頂点 $v$ の次数が $2$ の道グラフ $P_3$$\deg v=2$ でも $c(G-v)=2>1$
thm-ccg-isomorphism の成分の同型を、成分の頂点数と辺数の一致に弱める星グラフ $K_{1,3}$ と道グラフ $P_4$どちらも連結で 4 頂点 3 辺だが同型でない
thm-ccg-incidence-rank の 3 の「標数が $2$ でない」$\mathbb{F}_2$ 上の $K_3$$\operatorname{rank}M=2\neq3=n-b$
表の反例の確認

1・2 行目:$K_{1,3}$ は連結($c=1$)で、中心を除くと 3 つの孤立点が残る。中心の次数は $3$ で奇数であり、$c(G)+\frac32-1=\frac32<3$ である。
3 行目:$P_3$ の頂点を $a,v,b$ とすると、$v$ の次数は $2$ で偶数だが、$a,b$ の次数は $1$ で奇数である。$v$ を除くと孤立点 $a,b$ が残り $c=2$ となるが、$c(G)+\frac22-1=1$ である。3 の証明では $K$ の頂点の次数がすべて偶数であることを使っている。
4 行目:$K_{1,3}$ には次数 $3$ の頂点があり、$P_4$ の次数は $1,2,2,1$ なので、同型でない(グラフ の記事の命題「同型の基本性質」の 2 により同型は次数を保つ)。
5 行目:ex-ccg-incidence で確かめた。3 の証明では $x_r\neq-x_r$ に標数が $2$ でないことを使っている。

補足

連結成分を求めるには、未訪問の頂点から幅優先探索や深さ優先探索を行い、到達した頂点を 1 つの連結成分として取り出すことを繰り返せばよい(幅優先探索 の記事の系「連結性の判定と連結成分」)。辺を 1 本ずつ加えながら連結成分を併合していく方法もあり、その正しさは 連結グラフ の記事の補題「辺を 1 本加えたときの連結成分」による。
有向グラフ では、向きを無視した基礎グラフの連結成分(弱連結成分)と、互いに有向歩道で行き来できる頂点の同値類から作る強連結成分が区別される。強連結成分への分解と、強連結成分を 1 点に縮めたグラフが有向閉路をもたないことは 有向グラフ の記事の命題「強連結成分への分解」「凝縮は非巡回である」で扱われている。
連結成分は BM76 §1.6(p. 13)では、連結という同値関係による頂点集合の分割 $V_1,\dots,V_\omega$ の誘導部分グラフ $G[V_1],\dots,G[V_\omega]$ として定義され、個数は $\omega(G)$ と書かれている。位相空間の連結成分(連結成分)とは定義の言葉が異なるが、有限グラフの各辺を線分とみなして貼り合わせた図形では、グラフの連結成分の図形がちょうどその図形の連結成分になる(連結グラフ の記事の注意「位相空間の連結性との関係」の議論を各連結成分に当てはめればよい)。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する