多角形の内角の和と外角の和(angle sums of polygons)とは、自分と交わらない 1 本の閉じた折れ線で囲まれた平面の $n$ 角形では、凸でなくても内角の和が $(n-2)\times180^\circ$ になり、周を内部が左手に見える向きに回るときの曲がる角(右へ曲がるときは負)の和が $360^\circ$ になるという定理である。内角の和は、対角線で多角形を 2 つに分ける帰納法で証明する。外角の和は内角の和の言い換えで、周を 1 周すると進む向きもちょうど 1 回転することを表す。自分と交わる閉じた折れ線では外角の和は $360^\circ$ の整数倍だが、星形五角形では $720^\circ$ になる。穴が $h$ 個ある図形では曲がる角の総和は $360^\circ\times(1-h)$ で、Euler 標数と Gauss–Bonnet の定理につながる。
前提知識: 三角形の内角の和, 一般角と弧度法, 複素数の掛け算は回転と拡大
中学校では、$n$ 角形の内角の和は $(n-2)\times180^\circ$、外角の和は $n$ によらず $360^\circ$ であると習う。凸多角形のときの理由は、1 つの頂点から対角線を引いて $n-2$ 個の三角形に分けることだった(三角形の内角の和 の例「凸多角形の角の和」)。まず公式を使ってみる。
では、へこんだ頂点をもつ多角形ではどうなるか。座標で角を測ってみる。
4 点 $A=(-2,0)$、$B=(0,1)$、$C=(2,0)$、$D=(0,4)$ を $A\to B\to C\to D\to A$ の順に結ぶと、$B$ のところでへこんだ矢じり形の四角形ができる(図1 の左)。内角をベクトルの内積(ベクトルの内積(高校数学))で求める。
矢じり形の四角形 $ABCD$。左は内角($B$ の内角は $180^\circ$ より大きい)、右は周を $A\to B\to C\to D$ の向きに回るときの曲がる角(左へ曲がるときを正、右へ曲がるときを負とする)。$B$ では右へ約 $53.13^\circ$ 曲がる
ex-asp-start-dart の $B$ のように、内角が $180^\circ$ より大きい頂点では、「外角 $=180^\circ-(\text{内角})$」が負の数 $180^\circ-233.13^\circ=-53.13^\circ$ になる。それでも負のまま足すと、外角の和は $143.13^\circ+(-53.13^\circ)+143.13^\circ+126.87^\circ=360^\circ$ で、やはり $360^\circ$ である。負の外角は、周を回るときに「右へ曲がる」ことを表している(図1 の右)。
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事での見方 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 内角の和 $(n-2)\times180^\circ$ | 対角線で三角形に分ける | 多角形の三角形分割 |
| 外角の和 $360^\circ$ | 周を 1 周する間に向きが 1 回転する | 接線の 回転数、Hopf の回転数定理 |
| 外角の和はいつも $360^\circ$ の整数倍 | 複素数の積が $1$ に戻る | 回転数は整数 |
| 穴の数で角の和が変わる | $360^\circ\times(1-\text{穴の数})$ | Euler標数、Gauss–Bonnetの定理 |
$n\ge3$ とする。平面上の $n$ 個の点 $P_1,P_2,\dots,P_n$ を順に線分で結び、最後に $P_n$ と $P_1$ を結んだ折れ線を考える。線分 $P_1P_2,\ P_2P_3,\ \dots,\ P_nP_1$ を 辺 という。どの 2 本の辺も、隣り合う 2 本が端の点を共有するほかには共有点をもたないとき、この折れ線(と、それが囲む部分)を $n$ 角形 といい、$P_i$ を 頂点 という。
$n$ 角形の周は平面を、囲まれた有界な部分(内部)と外側に分ける。頂点 $P_i$ のすぐ近くで内部が占める角の大きさを、$P_i$ における 内角 といい、$\alpha_i$ と書く。$0^\circ<\alpha_i<360^\circ$ である。すべての内角が $180^\circ$ より小さいものを 凸多角形 という。
「周が平面を内部と外側に分ける」ことは直観的には当たり前に見えるが、証明には手間がかかる(多角形の Jordan曲線定理、多角形のJordan曲線定理)。この記事では、次の 3 つの事実を証明せずに使う。
(J1) $n$ 角形の周は平面を内部と外側に分ける。周と交わらずに動く点は、内部か外側のどちらか一方にとどまる。
(J2) 2 つの頂点 $P_i$、$P_j$ を結ぶ線分が、両端以外で周と交わらず内部を通るとき、この線分を 対角線 という。対角線は多角形を 2 つの多角形 $P_iP_{i+1}\cdots P_j$ と $P_jP_{j+1}\cdots P_i$(番号は $n$ の次を $1$ に戻して読む)に分ける。2 つの内部を合わせると、もとの内部から対角線を除いたものになる。
(J3) 周の辺のすぐ近くでは、辺の片側は内部、反対側は外側である。周を一方の向きに回ると、内部はどの辺でもいつも左手にあり、逆向きに回ると、いつも右手にある。
凸多角形では、隣り合わない 2 頂点を結ぶ線分はどれも対角線になる。凸でない多角形では、そうとは限らない。ex-asp-start-dart の線分 $AC$ は、$B$ のへこみの下(外側)を通るので対角線ではない。一方、線分 $BD$ は対角線で、矢じり形を 2 つの三角形 $ABD$、$BCD$ に分ける。
ex-asp-start-dart の四角形を対角線 $BD$ で三角形 $ABD$ と $BCD$ に分ける。$B$ の内角 $180^\circ+y$ は、$\angle ABD$ と $\angle DBC$ に分かれる。$\overrightarrow{BA}=(-2,-1)$、$\overrightarrow{BD}=(0,3)$ で $\cos\angle ABD=\dfrac{-3}{\sqrt5\cdot3}=-\dfrac1{\sqrt5}$、同じく $\cos\angle DBC=-\dfrac1{\sqrt5}$ なので、2 つは等しく、どちらも約 $116.57^\circ$ で、和は約 $233.13^\circ$ である。
2 つの三角形の内角をすべて足すと $180^\circ\times2=360^\circ$ で、これは四角形の 4 つの内角をすべて足したものに等しい($A$ と $C$ の角は 1 つの三角形に、$B$ と $D$ の角は 2 つの三角形に分かれて入る)。
外角を、周を歩くときに「どれだけ向きを変えたか」として定め直す。向きを測るのに 一般角と弧度法 の一般角を使う。
$n$ 角形の周を $P_1\to P_2\to\cdots\to P_n\to P_1$ の向きに歩く。頂点 $P_i$ に入ってくる辺 $P_{i-1}P_i$ の向きのベクトルを $\vec d_{\mathrm{in}}$、出ていく辺 $P_iP_{i+1}$ の向きのベクトルを $\vec d_{\mathrm{out}}$ とする($P_0=P_n$、$P_{n+1}=P_1$ と読む)。$\vec d_{\mathrm{in}}$ を回転して $\vec d_{\mathrm{out}}$ と同じ向きにする角のうち、$-180^\circ$ より大きく $180^\circ$ より小さいものを、$P_i$ で 曲がる角 といい、$\tau_i$ と書く。左へ曲がるとき $\tau_i>0$、右へ曲がるとき $\tau_i<0$ である。$\tau_1+\tau_2+\dots+\tau_n$ を 外角の和 という。
rem-asp-facts の (J3) により、周を回る 2 つの向きのうち一方では内部がいつも左手に見える。その向きを 正の向き(反時計回り)という。
$\vec d_{\mathrm{in}}$ と $\vec d_{\mathrm{out}}$ がちょうど逆向きになるのは、周が $P_i$ で折り返すときだけで、隣り合う 2 辺が重なるので def-asp-polygon では起こらない。したがって $\tau_i$ はいつもただ 1 つに決まる。
正の向きに回るとき、各頂点で
$$
\alpha_i=180^\circ-\tau_i
$$
が成り立つ。
方針:頂点 $P_i$ のまわりで、内部が占める角を、$\vec d_{\mathrm{out}}$ から反時計回りに測る。
段 1(内部の位置)。正の向きに回ると、(J3) により $P_i$ に入る辺と $P_i$ から出る辺のどちらでも内部は左手にあるので、$P_i$ のすぐ近くで内部が占める角の範囲は、出ていく辺の向き $\vec d_{\mathrm{out}}$ から反時計回りに回って、入ってきた辺を逆にたどる向き $-\vec d_{\mathrm{in}}$ に達するまでの範囲である。その大きさが内角 $\alpha_i$ である。
段 2(向きの角で書く)。$\vec d_{\mathrm{in}}$ の向きを表す一般角を $\theta$ とする。$\vec d_{\mathrm{out}}$ は $\vec d_{\mathrm{in}}$ を $\tau_i$ だけ回した向きなので一般角 $\theta+\tau_i$、$-\vec d_{\mathrm{in}}$ は $\vec d_{\mathrm{in}}$ を $180^\circ$ 回した向きなので一般角 $\theta+180^\circ$ である。
段 3(差をとる)。$\theta+\tau_i$ から反時計回りに $\theta+180^\circ$ まで回る角は $(\theta+180^\circ)-(\theta+\tau_i)=180^\circ-\tau_i$ である。$-180^\circ<\tau_i<180^\circ$ なので、この値は $0^\circ$ と $360^\circ$ の間にあり、1 周より少ない回り方として正しい。よって $\alpha_i=180^\circ-\tau_i$ である。
ex-asp-start-dart の四角形を $A\to B\to C\to D\to A$ の向きに回る。最初の辺 $AB$ は右上へ向かい、内部はその左(上側)にあるので、これは正の向きである。
まず、へこみがあっても証明が易しい場合を見る。
$n$ 角形の内部に点 $O$ があって、$O$ と周のどの点を結ぶ線分も、端の点を除いて内部を通るとする。このとき内角の和は $(n-2)\times180^\circ$ である。
要点:$O$ と各頂点を結び、$n$ 個の三角形 $OP_iP_{i+1}$ に分けて、三角形の内角の和を足す。
段 1($O$ から出る半直線)。$O$ から出るどの半直線も、周とちょうど 1 点で交わる。少なくとも 1 点で交わるのは、$O$ は内部にあり、半直線を遠くまでたどると有界な内部の外へ出るので、(J1) により途中で周を通るからである。2 点 $Q$、$R$($O$ に近いほうを $Q$ とする)で交わるとすると、$O$ と $R$ を結ぶ線分が、端の点でない $Q$ で周を通ることになり、仮定に反する。
段 2(三角形に分ける)。$O$ は直線 $P_iP_{i+1}$ の上にない(上にあれば、$O$ と、辺 $P_iP_{i+1}$ の $O$ から遠いほうの端を結ぶ線分が、近いほうの端を途中で通り、仮定に反する)。よって $OP_iP_{i+1}$ は三角形である。この三角形は、$O$ と辺 $P_iP_{i+1}$ の点を結ぶ線分を集めたもので、仮定からそれらの線分は内部を通るので、辺 $P_iP_{i+1}$ を除いて内部に含まれる。段 1 から、周の異なる 2 点は $O$ から見て異なる方向にあるので、それらと $O$ を結ぶ 2 本の線分は $O$ 以外に共有点をもたない。したがって、隣り合う三角形 $OP_iP_{i+1}$ と $OP_{i+1}P_{i+2}$ は線分 $OP_{i+1}$ だけを共有し、隣り合わない 2 つの三角形は $O$ だけを共有する。こうして多角形は $n$ 個の三角形 $OP_1P_2,\ OP_2P_3,\ \dots,\ OP_nP_1$ に分かれる。
段 3(角を足す)。$n$ 個の三角形の内角をすべて足すと、三角形の内角の和 から $n\times180^\circ$ である。
段 4($O$ のまわり)。三角形 $OP_iP_{i+1}$ の $O$ の角 $\angle P_iOP_{i+1}$ は、$O$ から辺 $P_iP_{i+1}$ の点を見る方向をすべて集めた角である。段 1 から、$O$ から出るどの方向にも周の点がちょうど 1 つあり、その点はどれか 1 つの辺の上にある(頂点なら、隣り合う 2 辺の共通の端)。よって $n$ 個の角 $\angle P_iOP_{i+1}$ は、境目の半直線 $OP_i$ を除いて重ならずに $O$ のまわりを 1 周し、和は $360^\circ$ である。
段 5(頂点のまわり)。頂点 $P_i$ では、線分 $OP_i$ が内角 $\alpha_i$ を $\angle P_{i-1}P_iO$ と $\angle OP_iP_{i+1}$ に分ける($OP_i$ は内部を通るので、$P_i$ の内角の範囲の中を通る)。したがって、$O$ 以外の角をすべて足すと内角の和 $\alpha_1+\dots+\alpha_n$ になる。
段 6(まとめ)。段 3〜段 5 から $\alpha_1+\dots+\alpha_n=n\times180^\circ-360^\circ=(n-2)\times180^\circ$ である。
ex-asp-start-dart の四角形で $O=(0,2)$ をとると、$O$ から 4 つの辺のどの点も見える(たとえば $O$ と $C=(2,0)$ を結ぶ線分は直線 $x+y=2$ の上にあり、$x=1$ では $y=1$ で、へこみの辺 $BC$($x=1$ で $y=\frac12$)より上、辺 $CD$($x=1$ で $y=2$)より下を通る)。4 つの三角形 $OAB$、$OBC$、$OCD$、$ODA$ の内角の和は $4\times180^\circ=720^\circ$、$O$ のまわりの角は $360^\circ$ なので、内角の和は $720^\circ-360^\circ=360^\circ$ で、ex-asp-start-dart の計算と一致する。
ところが、どの点からも全体が見渡せるとは限らない。
12 個の点
$$
(0,0),\ (3,0),\ (3,3),\ (1,3),\ (1,4),\ (3,4),\ (3,5),\ (0,5),\ (0,2),\ (2,2),\ (2,1),\ (0,1)
$$
をこの順に結ぶと、S の字の形の 12 角形ができる(図2)。内角は $90^\circ$ が 8 個、$270^\circ$ が 4 個($(1,3)$、$(1,4)$、$(2,2)$、$(2,1)$)で、和は $8\times90^\circ+4\times270^\circ=720^\circ+1080^\circ=1800^\circ=(12-2)\times180^\circ$ である。
この多角形には、prop-asp-star の点 $O$ がない。辺の中点 $M$ と $O$ を結ぶ線分が内部を通るなら、$O$ はその辺を含む直線の内部の側(周を正の向きに回るときの左側)にある。辺 $(1,3)\to(1,4)$ は上向きで、左側は $x<1$ の側、辺 $(2,2)\to(2,1)$ は下向きで、左側は $x>2$ の側である。$O$ の $x$ 座標が $1$ より小さく、同時に $2$ より大きいことはないので、そのような $O$ はない。
S の字の形の 12 角形。赤い点は内角が $270^\circ$ の頂点。どの点からも全体は見渡せないが、9 本の対角線(橙の破線)で 10 個の三角形に分けられる
図2 のように、見渡せる点がなくても対角線で三角形に分けられれば、内角の和が数えられる。その出発点が次の補題である。
$n\ge4$ のとき、$n$ 角形には対角線が少なくとも 1 本ある。
要点:いちばん左の頂点 $v$ をとると、$v$ の内角は $180^\circ$ より小さい。$v$ の両隣を $u$、$w$ とし、三角形 $uvw$ の中に他の頂点があるかどうかで場合を分ける(図3)。ない場合は $uw$ が、ある場合は直線 $uw$ から最も遠い頂点 $z$ と $v$ を結ぶ $vz$ が対角線になる。
証明の中で、次の事実を何度も使う。(K) 線分は直線と 1 点でしか交わらない(直線上に乗っている場合を除く)。多角形の辺は、隣り合う辺と端を共有するほかは、互いに交わらない。
段 1(左端の頂点)。頂点のうち $x$ 座標が最小のものをとり、そのうち $y$ 座標が最小のものを $v$ とする。多角形の点はすべて直線 $x=(v\text{ の }x\text{ 座標})$ の上か右にある。$v$ の左側には多角形の点がないので、その近くは外側である(十分左へ離れた点は有界な内部には入らないので外側にあり、そこから $v$ を通る横の直線に沿って右へ、周と交わらずに $v$ のすぐ左まで動けるので、(J1) により外側にとどまる)。$v$ で出会う 2 辺 $vu$、$vw$ は $v$ のまわりを 2 つの角に分け、(J3) により一方が内部、他方が外側である。左向きの方向を含む角が外側なので、$v$ の内角は右側に開いた $180^\circ$ 以下の角である。$180^\circ$ ちょうどなら $u,v,w$ が縦の直線上に並び、$u$ か $w$ の一方は $v$ の真下にある。それは $v$ の $y$ 座標が最小であることに反するので、内角は $180^\circ$ より小さい。したがって、三角形 $uvw$ の $v$ の近くの部分は内部にある。
段 2(三角形 $uvw$ に他の頂点がない場合)。$u,v,w$ 以外の頂点が三角形 $uvw$(周も含む)にないとする。辺 $e$ が三角形 $uvw$ の中の点を通るとすると、$e$ が三角形に入ったり出たりできるのは辺 $uw$ の側からだけである(辺 $vu$、$vw$ は多角形の辺なので (K) により横切れない)。(K) により $e$ は直線 $uw$ を高々 1 回しか横切れないので、$e$ の端の点の一方は三角形の中にある。これは頂点が三角形にないことに反する($e$ が $u$ や $w$ から出る辺のときも、残りの端が三角形の中にあることになり、同じく反する。$e$ が直線 $uw$ の上に乗るときは、$e$ は頂点 $u$、$w$ を途中に含めないので、両端が線分 $uw$ の上、つまり三角形の中にあることになり、やはり反する)。よって三角形 $uvw$ は、辺 $vu$、$vw$ のほかには周と共有点をもたない。段 1 から三角形の $v$ の近くは内部なので、(J1) により、三角形から辺 $vu$、$vw$ を除いた部分はすべて内部にある。$n\ge4$ なので $u$ と $w$ は隣り合わず、線分 $uw$ は対角線である。
段 3(三角形 $uvw$ に他の頂点がある場合)。三角形 $uvw$ の中にある頂点($u,v,w$ 以外)のうち、直線 $uw$ から最も遠いものを $z$ とする。$z$ を通って $uw$ に平行な直線を $\ell$ とし、三角形 $uvw$ のうち $\ell$ より $v$ の側にある小さな三角形を $T$ とする。$T$ の内部には頂点がない(あれば $z$ より $uw$ から遠い)。段 2 と同じ理由で、周が $T$ の内部に入り込むには、$\ell$ の上の辺から入って $T$ の中の頂点で終わる必要があるので、周は $T$ の内部と共有点をもたない。線分 $vz$ は、両端を除いて $T$ の内部を通るので周と交わらず、$v$ の近くでは段 1 により内部にある。(J1) により線分 $vz$ は内部を通る。$z$ は $v$ の隣($u$ か $w$)ではないので、$vz$ は対角線である。
対角線の存在の補題。左:三角形 $uvw$(黄)の中に他の頂点がないので $uw$ が対角線。右:三角形 $uvw$ の中に頂点 $z$ があるので、$uw$(点線)は外側を通るが、$z$ を通り $uw$ に平行な直線(緑の破線)より左には頂点がなく、$vz$ が対角線になる
$n$ 角形(凸でなくてもよい)の内角の和は
$$
\alpha_1+\alpha_2+\dots+\alpha_n=(n-2)\times180^\circ
$$
である。
要点:$n$ についての数学的帰納法で示す。lem-asp-diagonal の対角線で頂点の少ない 2 つの多角形に分け、角の和を足し合わせる。「$n$ より小さいすべての場合に成り立つ」ことを仮定する形の帰納法を使う(数学的帰納法と整列性)。
段 1($n=3$)。三角形なので、三角形の内角の和 により内角の和は $180^\circ=(3-2)\times180^\circ$ である。
段 2(分ける)。$n\ge4$ とし、頂点が $n$ より少ない多角形では成り立つと仮定する。lem-asp-diagonal により対角線 $P_iP_j$($i< j$)がある。(J2) により、多角形は $Q_1=P_iP_{i+1}\cdots P_j$ と $Q_2=P_jP_{j+1}\cdots P_nP_1\cdots P_i$ に分かれる。$Q_1$ の頂点は $k:=j-i+1$ 個、$Q_2$ の頂点は $n-k+2$ 個である。$P_i$ と $P_j$ は隣り合わないので $k\ge3$、同じく $n-k+2\ge3$ で、どちらも $n$ より少ない。
段 3(角を配る)。$P_i$ では、対角線が内角 $\alpha_i$ の範囲の中を通るので、$\alpha_i$ は $Q_1$ の $P_i$ の内角と $Q_2$ の $P_i$ の内角に分かれる。$P_j$ でも同じである。それ以外の頂点は $Q_1$ か $Q_2$ の一方だけの頂点で、内角はもとのままである。よって、$Q_1$ の内角の和と $Q_2$ の内角の和を足すと、もとの $n$ 角形の内角の和になる。
段 4(帰納法の仮定を使う)。帰納法の仮定から、$Q_1$ の内角の和は $(k-2)\times180^\circ$、$Q_2$ の内角の和は $(n-k)\times180^\circ$ である。足すと $(k-2+n-k)\times180^\circ=(n-2)\times180^\circ$ である。
帰納法をくり返すと、多角形は対角線で三角形に分かれる(三角形分割)。三角形がいくつできるかも決まる。
$n$ 角形を、交わらない対角線で三角形に分けると、三角形は必ず $n-2$ 個、対角線は必ず $n-3$ 本である。
方針:三角形の個数を $t$、対角線の本数を $d$ とし、角の和と辺の数を 2 通りに数える。
段 1(角)。三角形の頂点は多角形の頂点だけなので、$t$ 個の三角形の内角をすべて足すと、多角形の内角の和になる。thm-asp-interior から $180^\circ\times t=(n-2)\times180^\circ$、よって $t=n-2$ である。
段 2(辺)。三角形ごとに辺を数えると $3t$ 本になる。多角形の辺はちょうど 1 つの三角形の辺として、対角線は両側の 2 つの三角形の辺として数えられるので、$3t=n+2d$ である。$t=n-2$ を入れると $3n-6=n+2d$、よって $d=n-3$ である。
ex-asp-s-shape の 12 角形は、図2 の 9 本の対角線で 10 個の三角形に分かれる。cor-asp-triangulation の $n-2=10$、$n-3=9$ と一致し、内角の和 $10\times180^\circ=1800^\circ$ も ex-asp-s-shape の直接の計算と一致する。
外角の和が $360^\circ$ になることを、角の和の計算ではなく「向きが何回転したか」として見直す。まず、自分と交わってもよい閉じた折れ線で考える。
点 $P_1,\dots,P_n$($n\ge2$)を順に結び、$P_n$ と $P_1$ も結んだ折れ線を 閉じた折れ線 という。辺どうしが交わってもよいが、隣り合う 2 点は異なり、どの頂点でも周が折り返さない(入る向きと出る向きがちょうど逆にならない)とする。各頂点での曲がる角 $\tau_i$ は def-asp-turn と同じに定める。和 $\tau_1+\dots+\tau_n$ を $360^\circ$ で割った数を、この折れ線の 回転数 という。
閉じた折れ線について、$\tau_1+\tau_2+\dots+\tau_n$ は $360^\circ$ の整数倍である。つまり回転数は整数である。
要点:辺の向きを絶対値 $1$ の複素数で表し、曲がることを「$\cos\tau_i+i\sin\tau_i$ を掛けること」と見る。1 周すると最初の向きに戻ることから、積が $1$ になる。
段 1(向きを複素数で表す)。辺 $P_iP_{i+1}$ の向きの単位ベクトルを、絶対値 $1$ の複素数 $e_i$ で表す($P_{n+1}=P_1$、$e_0=e_n$ と読む)。
段 2(曲がることは掛け算)。$P_i$ で向きを $\tau_i$ だけ回すので、$e_i$ は $e_{i-1}$ を $\tau_i$ 回転したものである。複素数の掛け算は回転なので(複素数の掛け算は回転と拡大)、$z_i:=\cos\tau_i+i\sin\tau_i$ とおくと $e_i=z_ie_{i-1}$ である。
段 3(1 周する)。$i=1,2,\dots,n$ について順に使うと$$e_n=z_nz_{n-1}\cdots z_1\,e_0=z_nz_{n-1}\cdots z_1\,e_n$$である。$e_n\ne0$ なので $z_1z_2\cdots z_n=1$ である。
段 4(偏角を足す)。複素数の積の偏角は偏角の和なので(de Moivre の定理)$$z_1z_2\cdots z_n=\cos(\tau_1+\dots+\tau_n)+i\sin(\tau_1+\dots+\tau_n)$$である。これが $1$ に等しいので、$\cos(\tau_1+\dots+\tau_n)=1$ で、$\tau_1+\dots+\tau_n$ は $360^\circ$ の整数倍である。
自分と交わる閉じた折れ線。左:星形五角形では各頂点で左へ $144^\circ$ 曲がり、外角の和は $720^\circ$(向きが 2 回転する)。右:蝶ネクタイ形では左右に同じだけ曲がり、外角の和は $0^\circ$
$n$ 角形(凸でなくてもよい)の周を正の向きに回るとき、外角の和は
$$
\tau_1+\tau_2+\dots+\tau_n=360^\circ
$$
である。つまり、自分と交わらない閉じた折れ線の回転数は、正の向きに回れば $1$、逆向きに回れば $-1$ である。
方針:lem-asp-interior-turn で曲がる角を内角に直し、thm-asp-interior を使う。
段 1(内角に直す)。lem-asp-interior-turn から $\tau_i=180^\circ-\alpha_i$ である。
段 2(足す)。$i=1,\dots,n$ について足すと
$$
\tau_1+\dots+\tau_n=n\times180^\circ-(\alpha_1+\dots+\alpha_n)
$$
である。
段 3(内角の和を入れる)。thm-asp-interior から $\alpha_1+\dots+\alpha_n=(n-2)\times180^\circ$ なので、右辺は $n\times180^\circ-(n-2)\times180^\circ=360^\circ$ である。
段 4(逆向き)。逆向きに回ると、各頂点で入る向きと出る向きが入れ替わって逆になるので、曲がる角はすべて符号が変わり(ex-asp-dart-turn)、和は $-360^\circ$ である。
prf-asp-turning の段 1〜段 3 は逆にもたどれる。$\tau_1+\dots+\tau_n=360^\circ$ を知っていれば $\alpha_1+\dots+\alpha_n=n\times180^\circ-360^\circ=(n-2)\times180^\circ$ が出る。つまり、thm-asp-interior と thm-asp-turning は同じ内容の 2 つの言い方である。内角の和の公式は「多角形の周を 1 周すると、進む向きもちょうど 1 回転する」という事実を、角の大きさで書き直したものだと言える。
ex-asp-start-dart の四角形を $A$ から出発して正の向きに回り、進む向きを表す一般角を、曲がるたびに足していく。最初の辺 $AB$ の向き $(2,1)$ の一般角を $\varphi$($\tan\varphi=\frac12$、約 $26.57^\circ$)とする。
多角形の中から、いくつかの多角形をくり抜いた図形を考える。たとえば正方形の板から小さな正方形をくり抜いた額縁の形である。このような図形の周は何本かの閉じた折れ線からなる。どの周も、図形(色のついた部分)が左手に見える向きに回ることにする。外側の周は反時計回り、穴の周は時計回りになる(図5)。
外側の正方形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(4,4)$、$(0,4)$ から、内側の正方形 $(1,1)$、$(3,1)$、$(3,3)$、$(1,3)$ をくり抜く(図5)。頂点は全部で $N=8$ 個である。
正方形の額縁。図形が左手に見える向きに回ると、外周は反時計回り(曲がる角の和 $+360^\circ$)、内周は時計回り(和 $-360^\circ$)になる
穴の数で角の和がどう変わるかは、Euler の多面体定理と同じ数え方で分かる。平面の網(頂点と、交わらない線分の辺でできたひとつながりの図)について、頂点の数 $V$、辺の数 $E$、網に囲まれた有界な領域の数 $F_{\mathrm{in}}$ の間に $V-E+F_{\mathrm{in}}=1$ が成り立つことは、Eulerの多面体定理(高校数学) の命題「平面の網の数え方」で証明した。
多角形の内部から、互いに離れた $h$ 個の多角形の内部をくり抜いた図形を考える(穴どうし、穴と外周は共有点をもたない)。周の頂点が全部で $N$ 個あり、この図形が、周の頂点だけを頂点とする三角形で、辺と辺が重ならないように分けられるとする。このとき
要点:三角形に分けた図を平面の網とみて $V-E+F_{\mathrm{in}}=1$ を使い、辺の数を 2 通りに数えて三角形の数 $T$ を求める。
段 1(網とみる)。三角形分割の頂点と辺は、ひとつながりの平面の網である。頂点は $V=N$ 個である。辺は、周の辺 $N$ 本と、三角形を分ける内側の線分 $D$ 本で、$E=N+D$ 本である。網に囲まれた有界な領域は、$T$ 個の三角形と $h$ 個の穴で、$F_{\mathrm{in}}=T+h$ 個である。
段 2(Euler の数え方)。$V-E+F_{\mathrm{in}}=1$ から $N-(N+D)+(T+h)=1$、つまり $T-D=1-h$ である。
段 3(辺を 2 通りに数える)。三角形ごとに辺を数えると $3T$ 本になる。周の辺は 1 つの三角形に、内側の線分は 2 つの三角形に属するので $3T=N+2D$、つまり $D=\dfrac{3T-N}2$ である。
段 4($T$ を求める)。段 2 に入れると $T-\dfrac{3T-N}2=1-h$、両辺を $2$ 倍して $N-T=2-2h$、よって $T=N-2+2h$ である。三角形の頂点は周の頂点だけなので、三角形の内角をすべて足すと図形の内角の和になり、それは $180^\circ\times T=(N-2+2h)\times180^\circ$ である。これが 1 である。
段 5(曲がる角)。外周では (J3) により、反時計回りに回ると図形はいつも左手にある。穴の周では、(J3) を穴の多角形に使うと、時計回りに回るとき穴の内部はいつも右手、したがってその反対側の図形はいつも左手にある。このように、どの周も図形が左手に見える向きに回るので、lem-asp-interior-turn と同じ理由で、各頂点で $\tau_i=180^\circ-\alpha_i$ である。$N$ 個足すと $N\times180^\circ-(N-2+2h)\times180^\circ=(2-2h)\times180^\circ=360^\circ\times(1-h)$ である。これが 2 である。
ex-asp-frame では $N=8$、$h=1$ である。prop-asp-holes から三角形の数は $8-2+2=8$、内角の和は $8\times180^\circ=1440^\circ$、曲がる角の総和は $360^\circ\times0=0^\circ$ で、どれも ex-asp-frame の直接の計算と一致する。実際、外側と内側の対応する頂点を結ぶ 4 本の線分で額縁を台形 4 枚に分け、各台形に対角線を 1 本引くと、三角形 $8$ 個に分かれる。内側の線分は $4+4=8$ 本で、prf-asp-holes の段 3 の $D=\frac{3\times8-8}2=8$ と合う。
穴が 2 つの場合、たとえば $6\times3$ の長方形から $1\times1$ の正方形の穴を 2 つくり抜くと、$N=12$、$h=2$ で、内角の和は $(12-2+4)\times180^\circ=2520^\circ$、曲がる角の総和は $-360^\circ$ である。直接数えると、外側の 4 頂点が $90^\circ$、穴の 8 頂点が $270^\circ$ で、$360^\circ+2160^\circ=2520^\circ$ である。
prop-asp-holes の $1-h$ は、図形の Euler 標数 $\chi$ とよばれる数である。実際、prf-asp-holes の段 2 の $T-D$ は、三角形分割の(頂点の数)$-$(辺の数)$+$(三角形の数)$=N-(N+D)+T$ に等しい。穴のない多角形では $\chi=1$、額縁では $\chi=0$ である。曲がる角の総和が $360^\circ\times\chi$ になるという形は、rem-asp-gauss-bonnet で見る Gauss–Bonnet の定理の、平らな図形の場合である。
thm-asp-interior と thm-asp-turning は、「平面の上の」「1 本の自分と交わらない折れ線で囲まれた」図形を「正の向きに」回るときの定理である。仮定を 1 つ外すと、次のように崩れる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 周が自分と交わらない | 外角の和が $360^\circ$ になる(星形五角形では $720^\circ$、蝶ネクタイ形では $0^\circ$) | ex-asp-star |
| 周を正の向き(内部が左手)に回る | 外角の和が $+360^\circ$ になる(逆向きでは $-360^\circ$) | ex-asp-dart-turn |
| 周が 1 本の閉じた折れ線である(穴がない) | 内角の和が $(N-2)\times180^\circ$ になる(額縁では $8$ 頂点で $1440^\circ$) | ex-asp-frame |
| 図形が平面の上にある | 内角の和が $(n-2)\times180^\circ$ になる(球面の四角形では $480^\circ$) | ex-asp-sphere |
半径 $1$ の球面の上で、立方体の中心を球の中心に置き、立方体の 8 つの頂点を球面に写して、隣り合う頂点を大円の弧で結ぶ。球面は 6 つの合同な四角形に分かれる。各頂点には 3 つの四角形が集まり、どの角も等しいので、1 つの角は $360^\circ\mathbin{÷}3=120^\circ$ である。
1 つの四角形の内角の和は $4\times120^\circ=480^\circ$ で、平面の $(4-2)\times180^\circ=360^\circ$ より $120^\circ$ 大きい。曲がる角は各頂点で $180^\circ-120^\circ=60^\circ$ で、和は $240^\circ$ であり、$360^\circ$ に $120^\circ$ 足りない。この四角形の面積は球面の面積 $4\pi$ の $\frac16$、つまり $\frac{2\pi}3$ で、弧度法で $120^\circ$ と同じ数である。足りない角が面積に等しいことは、球面三角形の面積 の Girard の定理から出る(同じ四角形はそこでも計算している)。
多角形の角を丸めて、なめらかな曲線に近づけることを考える。頂点 $P_i$ の角を、中心角 $\tau_i$ の小さな円弧で置き換えると、接線の向きは円弧に沿って少しずつ $\tau_i$ だけ回る。こうしても、1 周での向きの変化の合計は $\tau_1+\dots+\tau_n=360^\circ$ のままである。同じ考え方は 等周不等式(高校数学) でも使う。凸多角形を太らせた図形の角にできる扇形の中心角は外角に等しく、その和が $360^\circ$ になるからである。
なめらかな曲線では、曲がる角の和の代わりに、接線の向きの変化を曲線に沿って積分する。曲線に沿って長さ $s$ だけ進んだときの接線の向きの角を $\theta(s)$ とすると、$\dfrac{d\theta}{ds}$ は曲がり具合(符号つきの 曲率)で、グラフの場合は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱った。
自分と交わらないなめらかな閉曲線を、内部が左手に見える向きに 1 周するとき、接線の向きの角の変化の合計は $360^\circ$($2\pi$)である。曲線の長さを $L$、符号つきの曲率を $\kappa(s)$ とすると
$$
\int_0^L\kappa(s)\,ds=2\pi
$$
である。
thm-asp-hopf は回転数定理(Umlaufsatz)とよばれる。本記事では証明しない。H. Hopf は 1935 年の論文で、この定理を以前から知られていた事実として紹介したうえで、より短い新しい証明を与え、有限個の角(かど)がある曲線でも適切に述べれば成り立つことを注意している(Hop35 pp. 50–51)。そのため Hopf の名でよばれることが多い。多角形の場合の thm-asp-turning は、対角線で三角形に分けるという多角形ならではの方法で示した。なめらかな曲線では対角線が使えないので、別の工夫が要る。
楕円 $x=2\cos t$、$y=\sin t$($0\le t\le2\pi$)を考える(媒介変数表示と曲線の長さ)。接線の向きのベクトルは $(x',y')=(-2\sin t,\cos t)$ である。
ex-asp-sphere では、球面の四角形の曲がる角の和が $360^\circ$ に面積の分だけ足りなかった。prop-asp-holes では、穴があると曲がる角の和が $360^\circ\times(1-h)$ になった。この 2 つは、次の 1 つの式にまとまる。
曲面の上の、辺が「まっすぐな線」(測地線。球面では大円の弧)でできた多角形の形の図形 $D$ について、
$$
(\text{曲がる角の総和})+(\text{$D$ の上での Gauss 曲率の積分})=2\pi\times\chi(D)
$$
が成り立つ。ここで $\chi(D)$ は $D$ の Euler 標数(穴のない図形なら $1$、穴が $h$ 個なら $1-h$)である。本記事では証明しない(doC16)。
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