媒介変数表示の曲線が囲む面積(area enclosed by a parametric curve)とは、$x=x(t)$、$y=y(t)$ と表された曲線の下や閉曲線の内側の面積を、$t$ の積分で求める方法である。$x(t)$ が狭義単調増加で $y\ge0$ なら、曲線の下の面積は置換積分により $\int y(t)x'(t)\,dt$ に等しく、$x(t)$ が減少する向きでは符号が負になる。2 つのグラフにはさまれた図形の周を反時計回りに 1 周する閉曲線では、面積は $-\int yx'\,dt=\int xy'\,dt=\frac12\int(xy'-yx')\,dt$ である。サイクロイドの 1 つのアーチの下の面積は $3\pi a^2$ になる。時計回りでは符号が逆になる。8 の字の曲線では輪ごとに符号がつき打ち消し合う。Green の定理の特別な場合である。
数学 III では、曲線が $x=x(t)$、$y=y(t)$ と媒介変数で表されているとき、曲線と $x$ 軸の間の面積を
$$
S=\int y\,dx=\int y(t)\,\frac{dx}{dt}\,dt
$$
と計算する。$dx$ を $\dfrac{dx}{dt}\,dt$ に置き換える、置換積分の形である。まず 2 つの例で計算してみる。
$a>0$ とする。半径 $a$ の円が $x$ 軸の上を滑らずに転がるとき、円周上の 1 点が描く曲線(サイクロイド)は
$$
x=a(t-\sin t),\qquad y=a(1-\cos t)\qquad(0\le t\le2\pi)
$$
と表せる(この式の導き方は 媒介変数表示と曲線の長さ の例「サイクロイドの長さ」で $a=1$ の場合を扱った)。$t$ が $0$ から $2\pi$ まで動くと、点は原点から $(2\pi a,0)$ まで、1 つのアーチを描く。$\dfrac{dx}{dt}=a(1-\cos t)$ なので
$$
S=\int_0^{2\pi}a(1-\cos t)\cdot a(1-\cos t)\,dt=a^2\int_0^{2\pi}\bigl(1-2\cos t+\cos^2t\bigr)\,dt
$$
である。$\displaystyle\int_0^{2\pi}\cos t\,dt=0$、$\displaystyle\int_0^{2\pi}\cos^2t\,dt=\int_0^{2\pi}\frac{1+\cos2t}2\,dt=\pi$ なので
$$
S=a^2(2\pi-0+\pi)=3\pi a^2
$$
である。転がる円の面積 $\pi a^2$ のちょうど 3 倍になる(図 1)。
半径 $1$ の円が転がってできるサイクロイドのアーチと、$x$ 軸との間の部分(青)。面積は転がる円(破線)の面積の 3 倍の $3\pi$ である。矢印は $t$ が増える向き。
$x=\cos t$、$y=\sin t$($0\le t\le\dfrac\pi2$)は、単位円の第 1 象限の部分である。同じ式で計算すると、$\dfrac{dx}{dt}=-\sin t$ なので
$$
\int_0^{\pi/2}\sin t\cdot(-\sin t)\,dt=-\int_0^{\pi/2}\sin^2t\,dt=-\int_0^{\pi/2}\frac{1-\cos2t}2\,dt=-\frac\pi4
$$
となる。しかし、この弧と $x$ 軸の間の部分は半径 $1$ の円の 4 分の 1 で、面積は $\dfrac\pi4$ である。符号が逆になった。$t$ が増えると点は $(1,0)$ から $(0,1)$ へ、つまり 左向き に動くからである。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $\displaystyle\int y\,dx=\int y\,\frac{dx}{dt}\,dt$ | 置換積分で $x$ の積分に戻す | lem-pca-substitution、thm-pca-under |
| 符号に気をつける | $x$ が減る向きの部分は負に数える | cor-pca-sign |
| 閉曲線の面積 | 反時計回りに 1 周する積分 $\frac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ | thm-pca-closed |
| 8 の字の曲線 | 輪ごとに向きの符号がつく | ex-pca-eight |
$\displaystyle\int y\,dx$ を $t$ の積分に直すのは、置換積分である。この記事で使う形を補題として述べ、定積分で表された関数 の結果から証明しておく。以下、関数が $C^1$ 級 であるとは、微分可能で導関数が連続であることをいう。
$x(t)$ を区間 $[\alpha,\beta]$ で $C^1$ 級の関数、$Y(u)$ を $x(t)$ のとる値をすべて含む区間で連続な関数とする。このとき
$$
\int_{x(\alpha)}^{x(\beta)}Y(u)\,du=\int_\alpha^\beta Y\bigl(x(t)\bigr)\,x'(t)\,dt
$$
である。
方針:上端の $\beta$ を変数 $s$ に替え、両辺を $s$ の関数と見る。2 つの関数の導関数が等しく、$s=\alpha$ で値が等しいことを示す。
段 1(2 つの関数)。$\alpha\le s\le\beta$ について
$$
P(s)=\int_{x(\alpha)}^{x(s)}Y(u)\,du,\qquad Q(s)=\int_\alpha^sY\bigl(x(t)\bigr)\,x'(t)\,dt
$$
とおく。$Y(x(t))\,x'(t)$ は連続関数の積なので連続である。
段 2(導関数)。定積分で表された関数 の定理「両端が関数の場合の微分」(上端 $x(s)$、下端は定数)により $P'(s)=Y\bigl(x(s)\bigr)\,x'(s)$ である。同じ記事の定理「積分の上端についての微分」により $Q'(s)=Y\bigl(x(s)\bigr)\,x'(s)$ である。
段 3(差は 0)。$P-Q$ の導関数は $0$ なので、$P-Q$ は定数である(平均値の定理 から出る事実。この記事では証明しない)。$s=\alpha$ では $P(\alpha)=0$、$Q(\alpha)=0$ なので、その定数は $0$ である。$s=\beta$ とすると補題の式を得る。$\square$
この補題では、$x(t)$ が単調でなくてもよい。$x(t)$ が行ったり戻ったりすると、行きと帰りの積分が打ち消し合う(後の ex-pca-back-and-forth)。
$x(t)$、$y(t)$ を区間 $[\alpha,\beta]$ で $C^1$ 級の関数とし、次を仮定する。
方針:$x(t)$ が狭義単調増加なので、$x$ の値から $t$ がただ 1 つ決まる。すると曲線は $x$ の関数のグラフになり、その下の面積は 定積分と面積 の定積分で表せる。それを lem-pca-substitution で $t$ の積分に直す。
段 1($t$ を $x$ で表す)。$x(t)$ は $[\alpha,\beta]$ で連続かつ狭義単調増加なので、中間値の定理 により $[a,b]$ のすべての値をとり、各値をとる $t$ はただ 1 つである。$u$ を $[a,b]$ の点とするとき、$x(t)=u$ となる $t$ を $\tau(u)$ と書く($\tau$ は $x(t)$ の 逆関数)。狭義単調な連続関数の逆関数は連続であることが知られている(この記事では証明しない)。
段 2(曲線はグラフ)。$Y(u)=y\bigl(\tau(u)\bigr)$ とおくと、$Y$ は $[a,b]$ で連続で、$Y(u)\ge0$ である。点 $\bigl(x(t),y(t)\bigr)$ は $u=x(t)$ とすると $\bigl(u,Y(u)\bigr)$ なので、曲線は $y=Y(u)$ のグラフ($a\le u\le b$)と同じである。
段 3(グラフの下の面積)。定積分と面積 により、グラフと $x$ 軸、2 直線で囲まれた部分の面積は $S=\displaystyle\int_a^bY(u)\,du$ である。
段 4($t$ の積分に直す)。$Y$ は $x(t)$ のとる値の区間 $[a,b]$ で連続なので、lem-pca-substitution が使える。$Y\bigl(x(t)\bigr)=y\bigl(\tau(x(t))\bigr)=y(t)$ なので
$$
S=\int_a^bY(u)\,du=\int_\alpha^\beta Y\bigl(x(t)\bigr)\,x'(t)\,dt=\int_\alpha^\beta y(t)\,x'(t)\,dt
$$
である。$\square$
ex-pca-start-cycloid では、$x'(t)=a(1-\cos t)$ は $0< t<2\pi$ で正なので、$x(t)$ は $[0,2\pi]$ で狭義単調増加である(導関数が正なら増加することは 関数の増減と極値)。$y(t)=a(1-\cos t)\ge0$ なので、定理の仮定を満たしている。
$x(t)$ が狭義単調 減少 のとき、つまり $t$ が増えると点が左へ動くときは、符号が逆になる。
thm-pca-under で、1 の代わりに「$x(t)$ は狭義単調減少で、$a=x(\beta)< b=x(\alpha)$」とすると、同じ部分の面積 $S$ について
$$
\int_\alpha^\beta y(t)\,x'(t)\,dt=-S
$$
である。
方針:$t$ を逆向きにたどる媒介変数に取り替えると、thm-pca-under の形になる。
段 1(取り替え)。$\tilde x(s)=x(\alpha+\beta-s)$、$\tilde y(s)=y(\alpha+\beta-s)$($\alpha\le s\le\beta$)とおく。$s$ が増えると $\alpha+\beta-s$ は減るので、$\tilde x(s)$ は狭義単調増加で、$\tilde x(\alpha)=a$、$\tilde x(\beta)=b$ である。点の集まりは同じ曲線である。
段 2(定理を使う)。thm-pca-under により $S=\displaystyle\int_\alpha^\beta\tilde y(s)\,\tilde x'(s)\,ds$ である。連鎖律から $\tilde x'(s)=-x'(\alpha+\beta-s)$ なので
$$
S=-\int_\alpha^\beta y(\alpha+\beta-s)\,x'(\alpha+\beta-s)\,ds
$$
である。
段 3(元の変数に戻す)。$t=\alpha+\beta-s$ と置換すると、$s=\alpha$ で $t=\beta$、$s=\beta$ で $t=\alpha$、$dt=-ds$ なので
$$
\int_\alpha^\beta y(\alpha+\beta-s)\,x'(\alpha+\beta-s)\,ds=\int_\beta^\alpha y(t)\,x'(t)\,(-dt)=\int_\alpha^\beta y(t)\,x'(t)\,dt
$$
である。段 2 と合わせて $S=-\displaystyle\int_\alpha^\beta y(t)\,x'(t)\,dt$ となる。$\square$
ex-pca-start-quarter の $-\dfrac\pi4$ は、この系の場合である。$\displaystyle\int y\,\frac{dx}{dt}\,dt$ は「右へ動く部分の下の面積は $+$、左へ動く部分の下の面積は $-$」と数える。$x$ 軸より下($y<0$)の部分でも、定積分と面積 の符号つき面積と同じく符号が逆になる。
楕円やアステロイドのように、曲線が 1 周して元の点に戻るときは、上下に分けて計算しなくても、1 周分の積分 1 回で面積が求まる。$t$ の区間 $[\alpha,\beta]$ で $\bigl(x(\beta),y(\beta)\bigr)=\bigl(x(\alpha),y(\alpha)\bigr)$ となる曲線を 閉曲線 という。
$a< b$ とし、$g$、$h$ を $[a,b]$ で連続な関数で、$g(x)\le h(x)$、$g(a)=h(a)$、$g(b)=h(b)$ を満たすとする。図形
$$
D=\{(x,y)\mid a\le x\le b,\ g(x)\le y\le h(x)\}
$$
の周をたどる閉曲線 $\bigl(x(t),y(t)\bigr)$($\alpha\le t\le\beta$)が、ある $\gamma$($\alpha<\gamma<\beta$)について次を満たすとする。
1・2 の向きでは、周をたどる人の左手にいつも $D$ がある。これを 反時計回り(正の向き)という。
方針:$-\displaystyle\int y\,x'\,dt$ を下の境界と上の境界に分け、それぞれを lem-pca-substitution で $x$ の積分に直すと、定積分と面積 の「上 − 下」の積分になる。残りの 2 つの式は、積の微分を使って 1 つ目の式に直す。
段 1(下の境界)。$[\alpha,\gamma]$ では $y(t)=g\bigl(x(t)\bigr)$ なので、lem-pca-substitution を $Y=g$ として使うと
$$
\int_\alpha^\gamma y\,x'\,dt=\int_\alpha^\gamma g\bigl(x(t)\bigr)\,x'(t)\,dt=\int_a^bg(u)\,du
$$
である。
段 2(上の境界)。$[\gamma,\beta]$ では $x(\gamma)=b$、$x(\beta)=a$ なので、同じく
$$
\int_\gamma^\beta y\,x'\,dt=\int_b^ah(u)\,du=-\int_a^bh(u)\,du
$$
である。
段 3(1 つ目の式)。段 1 と段 2 を足して符号を変えると
$$
-\int_\alpha^\beta y\,x'\,dt=\int_a^bh(u)\,du-\int_a^bg(u)\,du=\int_a^b\bigl(h(u)-g(u)\bigr)\,du
$$
である。$g\le h$ なので、定積分と面積 の定理「2 曲線の間の面積」により、これは $D$ の面積 $S$ である。
段 4(2 つ目の式)。積の微分により、各区間で $(xy)'=x'y+xy'$ である。$[\alpha,\gamma]$ と $[\gamma,\beta]$ で積分して足すと
$$
\int_\alpha^\beta\bigl(x'y+xy'\bigr)\,dt=\Bigl[xy\Bigr]_\alpha^\gamma+\Bigl[xy\Bigr]_\gamma^\beta=x(\beta)y(\beta)-x(\alpha)y(\alpha)=0
$$
である(最後は閉曲線であることを使った)。よって $\displaystyle\int_\alpha^\beta x\,y'\,dt=-\int_\alpha^\beta y\,x'\,dt=S$ である。
段 5(3 つ目の式)。段 3 と段 4 の 2 つの式を足して 2 で割ると $\dfrac12\displaystyle\int_\alpha^\beta\bigl(xy'-yx'\bigr)\,dt=S$ である。$\square$
同じ計算は、等周不等式(高校数学) で閉曲線の「符号付き面積」を定めるときにも使う(直線の辺を含む形で述べてある)。3 つの式のうち、$\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ は $x$ と $y$ を同じように扱うので、曲線の形によっては計算がいちばん楽になる。
左はアステロイド $x=\cos^3t$、$y=\sin^3t$(面積 $\frac38\pi$)、右は $x=1-t^2$、$y=t-t^3$ の $-1\le t\le1$ の部分がつくるループ(面積 $\frac{8}{15}$)。矢印は $t$ が増える向きで、どちらも囲む部分を左に見て反時計回りに進むことを見る図。
$x=1-t^2$、$y=t-t^3$ を考える。$t=\pm1$ でどちらも原点 $(0,0)$ に来るので、$-1\le t\le1$ の部分は閉じたループになる(図 2 の右)。
段 1(向きの確認)。$y=t(1-t^2)=t\,x$ である。$-1\le t\le0$ では $x'=-2t\ge0$ で、$x$ は $0$ から $1$ へ増え、$y=t\,x\le0$ である。$0\le t\le1$ では $x$ は $1$ から $0$ へ減り、$y\ge0$ である。下の境界を右へ、上の境界を左へ進むので、thm-pca-closed の形(反時計回り)である。
段 2(積分)。$x'=-2t$、$y'=1-3t^2$ なので
$$
xy'-yx'=(1-t^2)(1-3t^2)+2t(t-t^3)=(1-t^2)(1-3t^2)+2t^2(1-t^2)=(1-t^2)^2
$$
である。よって
$$
S=\frac12\int_{-1}^1(1-t^2)^2\,dt=\frac12\int_{-1}^1\bigl(1-2t^2+t^4\bigr)\,dt=\frac12\Bigl(2-\frac43+\frac25\Bigr)=\frac12\cdot\frac{16}{15}=\frac8{15}
$$
である。
段 3(グラフで確かめる)。$x=1-t^2$ から $t=\pm\sqrt{1-x}$ なので、上の境界は $y=x\sqrt{1-x}$、下の境界は $y=-x\sqrt{1-x}$($0\le x\le1$)である。面積は $\displaystyle\int_0^12x\sqrt{1-x}\,dx$ で、$s=1-x$ と置換すると $\displaystyle\int_0^12(1-s)\sqrt s\,ds=2\Bigl(\frac23-\frac25\Bigr)=\frac8{15}$ となり、段 2 と一致する。
極方程式で表された曲線も、媒介変数表示の特別な場合である。
$r=f(\theta)$ の曲線を、$\theta$ を媒介変数として $x=f(\theta)\cos\theta$、$y=f(\theta)\sin\theta$ と表す。$\theta$ で微分すると $x'=f'\cos\theta-f\sin\theta$、$y'=f'\sin\theta+f\cos\theta$ なので
$$
xy'-yx'=f\cos\theta\,(f'\sin\theta+f\cos\theta)-f\sin\theta\,(f'\cos\theta-f\sin\theta)=f^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=f(\theta)^2
$$
である($ff'\sin\theta\cos\theta$ の項が打ち消し合う)。したがって $\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,d\theta=\dfrac12\int f(\theta)^2\,d\theta$ となる。これが極座標の面積の公式で、極座標で表された図形の面積 で扇形から直接導く。たとえば円 $r=c$($c>0$ は定数)は $x=c\cos\theta$、$y=c\sin\theta$ で、ex-pca-closed-examples の 1 の楕円で $a=b=c$ とした場合である。そこと同じく $\theta$ を $\pi$ から $3\pi$ まで動かせば thm-pca-closed の形になり、被積分関数 $c^2$ は定数なので、$\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}c^2\,d\theta=\pi c^2$ である。
thm-pca-under と thm-pca-closed の仮定を 1 つ外すと、積分は面積に等しくならない。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $x(t)$ が狭義単調(thm-pca-under) | $\displaystyle\int y\,x'\,dt$ が曲線の下の面積 | ex-pca-back-and-forth |
| 反時計回り(thm-pca-closed) | $\frac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ が面積 | ex-pca-clockwise |
| 周が 2 つのグラフに分かれ、自分自身と交わらない(thm-pca-closed) | $\frac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ が囲まれた部分の面積の和 | ex-pca-eight |
$x=\cos t$、$y=1$($0\le t\le2\pi$)は、高さ $1$ の線分の上を、$(1,1)$ から $(-1,1)$ まで左へ進み、また $(1,1)$ まで右へ戻る。
$$
\int_0^{2\pi}y\,x'\,dt=\int_0^{2\pi}1\cdot(-\sin t)\,dt=\Bigl[\cos t\Bigr]_0^{2\pi}=0
$$
である。しかし、線分と $x$ 軸、直線 $x=\pm1$ で囲まれた長方形の面積は $2$ である。$0\le t\le\pi$(左へ進む)の部分は cor-pca-sign により $-2$、$\pi\le t\le2\pi$(右へ戻る)の部分は thm-pca-under により $+2$ で、打ち消し合った。
満たす性質:$C^1$ 級、$y\ge0$。満たさない性質:$x(t)$ が狭義単調であること。破る主張:thm-pca-under の「積分が曲線の下の面積」。
$x=a\cos t$、$y=-b\sin t$($0\le t\le2\pi$、$a,b>0$)は、ex-pca-closed-examples の 1 と同じ楕円を時計回りにたどる。$y'=-b\cos t$ なので
$$
xy'-yx'=a\cos t\cdot(-b\cos t)-(-b\sin t)\cdot(-a\sin t)=-ab
$$
で、$\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}(xy'-yx')\,dt=-\pi ab$ となる。面積 $\pi ab$ の符号が逆になった。
満たす性質:閉曲線で、自分自身と交わらない。満たさない性質:反時計回り(ここでは下の境界を左へ進む)。破る主張:thm-pca-closed の「積分が面積」。時計回りのときは、符号を変えれば面積になる。
8 の字の曲線 $x=\sin t$、$y=\sin t\cos t$。右の輪は時計回り、左の輪は反時計回りにたどるので、$\frac12\int(xy'-yx')\,dt$ はそれぞれ $-\frac23$、$+\frac23$ になり、合計が $0$ になることを見る図。
$x=\sin t$、$y=\sin t\cos t$($0\le t\le2\pi$)は、原点で自分自身と交わる 8 の字の閉曲線である(図 3)。
段 1(全体の積分)。$x'=\cos t$、$y'=\cos^2t-\sin^2t$ なので
$$
xy'-yx'=\sin t\,(\cos^2t-\sin^2t)-\sin t\cos t\cdot\cos t=-\sin^3t
$$
である。$\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin^3t\,dt=0$($\sin^3(t+\pi)=-\sin^3t$ により前半と後半が打ち消し合う)なので、$\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}(xy'-yx')\,dt=0$ である。
段 2(輪ごとの積分)。$\displaystyle\int_0^\pi\sin^3t\,dt=\int_0^\pi(1-\cos^2t)\sin t\,dt=\Bigl[-\cos t+\frac{\cos^3t}3\Bigr]_0^\pi=\frac43$ なので、右の輪($0\le t\le\pi$、$x\ge0$)の積分は $\dfrac12\cdot\Bigl(-\dfrac43\Bigr)=-\dfrac23$、左の輪($\pi\le t\le2\pi$)は $+\dfrac23$ である。
段 3(実際の面積)。右の輪は、$0\le x\le1$ で $y=\pm x\sqrt{1-x^2}$ にはさまれた部分で($y^2=\sin^2t\cos^2t=x^2(1-x^2)$ から)、面積は $\displaystyle\int_0^12x\sqrt{1-x^2}\,dx=\Bigl[-\frac23(1-x^2)^{3/2}\Bigr]_0^1=\frac23$ である。左の輪も対称で $\dfrac23$ なので、囲まれた部分の面積の和は $\dfrac43$ である。
右の輪は時計回り、左の輪は反時計回りにたどるので、段 2 の符号がつき、和が $0$ になった。満たす性質:閉曲線で、各部分は $C^1$ 級。満たさない性質:自分自身と交わらないこと(周が 2 つのグラフに分かれること)。破る主張:thm-pca-closed の「積分が囲まれた部分の面積」。
同じ円を 2 周すると $\frac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ は面積の 2 倍になる。この例は 等周不等式(高校数学) の反例「同じ円を 2 周する」で扱う。
thm-pca-closed の式 $\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ は、大学では線積分の記号で $\dfrac12\displaystyle\oint_C(x\,dy-y\,dx)$ と書く。Greenの定理 は、自分自身と交わらない区分的に滑らかな閉曲線 $C$ が図形 $D$ を反時計回りに囲むとき
$$
\oint_C(P\,dx+Q\,dy)=\iint_D\Bigl(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\Bigr)\,dx\,dy
$$
が成り立つという定理で、$P=-\dfrac y2$、$Q=\dfrac x2$ とすると右辺が $D$ の面積になる(Leb26b Theorem 10.6.4。本記事では証明しない)。thm-pca-closed は、$D$ が 2 つのグラフにはさまれた形の場合の、高校の積分による証明である。$C$ が多角形の周のときは、この式は 靴ひも公式 そのものになる(定理の述べ方と多角形の場合の計算は、その記事の節「大学数学で見る:Green の定理」にある)。
原点 $O$ と、曲線上の近い 2 点 $P\bigl(x(t),y(t)\bigr)$、$Q\bigl(x(t+\Delta t),y(t+\Delta t)\bigr)$ でできる三角形の、向きを込めた面積は $\dfrac12\bigl(x\,\Delta y-y\,\Delta x\bigr)$ である($\Delta x$、$\Delta y$ は $Q$ と $P$ の座標の差。靴ひも公式 の三角形の場合)。$\Delta x\approx x'\Delta t$、$\Delta y\approx y'\Delta t$ なので、これは $\dfrac12(xy'-yx')\,\Delta t$ に近い。したがって $\dfrac12\displaystyle\int(xy'-yx')\,dt$ は、原点から曲線を見込む細い三角形の面積を、向きの符号つきで足し合わせたものと読める。ex-pca-eight で輪ごとに符号がついたのは、原点から見て点が時計回りに動く部分では三角形の面積が負に数えられるからである。極座標では、この細い三角形が細い扇形になる(ex-pca-to-polar)。
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