Dirichlet指標(Dirichlet character)とは、正の整数 $m$ について、既約剰余類群 $(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ から $\mathbb C^\times$ への準同型を、$m$ と互いに素でない整数では $0$ として整数全体に延ばした関数である。法 $m$ の指標はちょうど $\varphi(m)$ 個あり、2 種類の直交関係をみたす。これにより等差数列に属するかどうかを指標の 1 次結合で書け、Dirichlet の算術級数定理の証明の基礎になる。指標を定義できる最小の法を導手といい、定義できる法はすべて導手の倍数である。導手が法に等しい指標を原始指標といい、各指標はただ 1 つの原始指標から誘導される。$m\equiv2\pmod4$ なら法 $m$ の原始指標は存在しない。
前提知識: 既約剰余類群, 巡回群の指標と直交関係, 中国剰余定理, 1の冪根
Dirichlet指標(Dirichlet character)とは、正の整数 $m$ について、既約剰余類群 $(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ から $0$ でない複素数の乗法群 $\mathbb C^\times$ への群準同型を、$m$ と互いに素でない整数では値 $0$ として整数全体に延ばした関数のことである。$m$ をその指標の 法 という。$\mathbb Z$ 上の関数としては、周期 $m$ をもち、完全乗法的で、$m$ と互いに素な整数でだけ $0$ でない関数にあたる。
Dirichlet 指標は、公差 $m$ の等差数列 $a,a+m,a+2m,\dots$($\gcd(a,m)=1$)に素数が無限に含まれること(Dirichlet の算術級数定理)の証明の道具である。証明の要は、「$n\equiv a\pmod m$ であるか」という $0$ か $1$ の関数を指標の 1 次結合で書く直交関係と、指標ごとの級数 $L(s,\chi)=\sum_n\chi(n)n^{-s}$(Dirichlet L関数)である。
同じ規則が複数の法で書けることがある。例えば、法 $8$ で $\chi(1)=\chi(5)=1$、$\chi(3)=\chi(7)=-1$ と定めた指標は、実は $n$ を $4$ で割った余りだけで決まる。こうした指標を書ける最小の法が 導手 であり、導手と法が一致する指標を 原始指標 という。この記事では、(1) 法 $m$ の指標がちょうど $\varphi(m)$ 個あり 2 種類の直交関係をみたすこと、(2) 導手がつねに存在し、すべての「定義できる法」を割り切ること、および各指標がただ 1 つの原始指標から誘導されること、(3) 法 $m$ の原始指標の個数の公式と、$m\equiv2\pmod4$ なら原始指標がないこと、を完全に証明する。
$m$ を正の整数とする。群準同型 $\chi:(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times\to\mathbb C^\times$ に対し、整数 $n$ について
$$
\chi(n):=\begin{cases}\chi(n\bmod m)&(\gcd(n,m)=1)\\ 0&(\gcd(n,m)>1)\end{cases}
$$
と定めた関数 $\chi:\mathbb Z\to\mathbb C$ を、法 $m$ の Dirichlet 指標 という。
$(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ の位数は $\varphi(m)$ なので、$\gcd(n,m)=1$ なら $\chi(n)^{\varphi(m)}=\chi(n^{\varphi(m)})=1$ であり、$\chi(n)$ は $1$ の $\varphi(m)$ 乗根である(1の冪根)。特に $\lvert\chi(n)\rvert=1$ で $\chi(n)^{-1}=\overline{\chi(n)}$ となる。$\chi(-1)^2=\chi(1)=1$ なので、指標は偶か奇のどちらかである。
$\mathbb Z$ 上の関数としては、法 $m$ の Dirichlet 指標とは、(a) $f(n+m)=f(n)$、(b) $f(nn')=f(n)f(n')$、(c) $f(n)\neq0\iff\gcd(n,m)=1$ をみたす関数 $f:\mathbb Z\to\mathbb C$ のことだと言ってもよい。
(a) により $f$ は $\mathbb Z/m\mathbb Z$ 上の関数で、(b)(c) によりその $(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ への制限は $\mathbb C^\times$ への準同型なので、$f$ は法 $m$ の指標である。逆に Dirichlet 指標が (a)(c) をみたすことは定義から分かり、(b) は、$n,n'$ の一方が $m$ と互いに素でなければ両辺が $0$ であることによる。
$\chi$ を法 $m$ の Dirichlet 指標とし、$d$ を $m$ の正の約数とする。
誘導された指標 $\chi$ は法 $d$ で定まる($a\equiv1\pmod d$ なら $\chi(a)=\psi(a)=\psi(1)=1$)。逆に法 $d$ で定まる指標が法 $d$ のある指標から誘導されることは、後の thm-dch-conductor で示す。自明な指標は法 $1$ で定まるので、導手は $1$ である。法 $1$ の指標は $\chi(n)=1$(すべての $n$)ただ 1 つで、これは原始指標である。
法 $8$ の指標を表にまとめる。$(\mathbb Z/8\mathbb Z)^\times=\{1,3,5,7\}$ で、どの元も 2 乗すると $1$ になるので、値は $\pm1$ である。
| 指標 | $n\equiv1$ | $n\equiv3$ | $n\equiv5$ | $n\equiv7$ | 偶奇 | 導手 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $\chi_0$ | $1$ | $1$ | $1$ | $1$ | 偶 | $1$ |
| $\chi_{-4}$ | $1$ | $-1$ | $1$ | $-1$ | 奇 | $4$ |
| $\chi_8$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $1$ | 偶 | $8$ |
| $\chi_{-8}$ | $1$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | 奇 | $8$ |
表の $\chi_{-4}$ は法 $4$ の指標 $\chi_{-4}$ から誘導された法 $8$ の指標で(同じ記号で書く)、冒頭で述べた指標にあたる。$\chi_8$ と $\chi_{-8}$ は $5\equiv1\pmod4$ で値 $-1$ をとるので法 $4$ では定まらず、法 $2$・法 $1$ でも定まらない($5\equiv1$ はそれらの法でも成り立つ)ので、導手 $8$ の原始指標である。$\chi_{-8}=\chi_{-4}\chi_8$ である。
有限アーベル群の指標の第 1 の直交関係は 巡回群の指標と直交関係 の定理「指標の直交関係」の (1) で証明されている。ここでは $(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ が巡回群の直積であること(既約剰余類群 の定理「既約剰余類群の構造定理」)を使って、指標がちょうど $\varphi(m)$ 個あることと、第 2 の直交関係を示す。
$m$ を正の整数とする。
$G:=(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times$ とおく。
1 と 2.構造定理により、$G$ は巡回群 $\langle g_1\rangle,\dots,\langle g_r\rangle$($g_i$ の位数を $n_i$ とする)の直積であり、$G$ の元は $g_1^{e_1}\cdots g_r^{e_r}$($0\le e_i< n_i$)とただ 1 通りに書ける。準同型 $\chi:G\to\mathbb C^\times$ は値 $\chi(g_i)$ で決まり、$\chi(g_i)^{n_i}=\chi(g_i^{n_i})=1$ なので $\chi(g_i)$ は $1$ の $n_i$ 乗根である。逆に、$1$ の $n_i$ 乗根 $z_i$ を任意に選ぶと、$\chi(g_1^{e_1}\cdots g_r^{e_r}):=z_1^{e_1}\cdots z_r^{e_r}$ は well-defined な準同型である($z_i^{n_i}=1$ なので $e_i$ を $n_i$ を法として取り替えても値は変わらない)。$1$ の $n_i$ 乗根はちょうど $n_i$ 個あるので、指標の個数は $n_1\cdots n_r=\lvert G\rvert=\varphi(m)$ である。
$a\in G$、$a\neq1$ を $g_1^{e_1}\cdots g_r^{e_r}$ と書くと、ある $i$ で $e_i\not\equiv0\pmod{n_i}$ である。$\zeta:=e^{2\pi i/n_i}$ とし、$z_i=\zeta$、$z_j=1$($j\neq i$)として作った指標 $\chi$ について $\chi(a)=\zeta^{e_i}\neq1$ である。
3.$\gcd(n,m)>1$ の項は $0$ なので、左辺は $\sum_{a\in G}\chi(a)\overline{\psi(a)}$ であり、巡回群の指標と直交関係 の定理「指標の直交関係」の (1)(有限アーベル群 $G$ に当てる)により、$\chi=\psi$ なら $\lvert G\rvert=\varphi(m)$、そうでなければ $0$ である。
4.$a$ と $b$ の一方が $m$ と互いに素でなければ各項は $0$ で、右辺も $0$ である。両方が $m$ と互いに素なら、$c:=ab^{-1}\in G$ とおくと $\chi(a)\overline{\chi(b)}=\chi(a)\chi(b)^{-1}=\chi(c)$ なので、左辺は $S:=\sum_{\chi}\chi(c)$ である。$c=1$(すなわち $a\equiv b$)なら $S=\lvert X_m\rvert=\varphi(m)$ である。$c\neq1$ なら 2 により $\psi(c)\neq1$ となる $\psi$ がある。$\chi\mapsto\psi\chi$ は $X_m$ の全単射(逆写像は $\chi\mapsto\overline\psi\chi$)なので
$$
S=\sum_{\chi}(\psi\chi)(c)=\psi(c)\sum_\chi\chi(c)=\psi(c)S
$$
であり、$\psi(c)\neq1$ から $S=0$ である。$\square$
4 で $b$ を固定し $a=n$ を動かすと、$\gcd(b,m)=1$ のとき
$$
\frac1{\varphi(m)}\sum_{\chi\in X_m}\overline{\chi(b)}\,\chi(n)=\begin{cases}1&(n\equiv b\pmod m)\\0&(\text{それ以外})\end{cases}
$$
となる。つまり「$n$ が等差数列 $b,b+m,b+2m,\dots$ に属するか」という関数が、完全乗法的な関数 $\chi$ の 1 次結合で書ける。素数 $p$ にわたる和 $\sum_{p\equiv b}p^{-s}$ を $\sum_\chi\overline{\chi(b)}\sum_p\chi(p)p^{-s}$ に分け、$\chi\neq\chi_0$ の項が $s\to1$ で有界にとどまることを示すのが Dirichlet の算術級数定理の証明の骨格であり、そこでは $L(1,\chi)\neq0$ が要になる(Was82 Theorem 4.5、p. 34。この記事では証明しない)。
ex-dch-small の 2 の 4 つの指標を $\chi_k(2)=i^k$($k=0,1,2,3$)とおくと、$b=3$ について $\sum_k\overline{\chi_k(3)}\chi_k(n)$ は $n=3$ で $4=\varphi(5)$、$n=2$ で $0$ になり、thm-dch-orthogonality の 4 と一致する。
$3=2^3$ なので $\chi_k(3)=i^{3k}$、$\overline{\chi_k(3)}=i^{-3k}$ である。$n=3$ なら各項は $i^{-3k}i^{3k}=1$ で和は $4$、$n=2$ なら $\sum_{k=0}^3i^{-3k}i^{k}=\sum_{k=0}^3i^{-2k}=1-1+1-1=0$ である。
$d$ を $m$ の正の約数とする。整数 $a$ が $\gcd(a,d)=1$ をみたすならば、$a'\equiv a\pmod d$ かつ $\gcd(a',m)=1$ となる整数 $a'$ がある。すなわち、還元写像 $(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times\to(\mathbb Z/d\mathbb Z)^\times$ は全射である。
$m$ の素因数のうち $d$ を割らないものを $q_1,\dots,q_r$ とする。$d,q_1,\dots,q_r$ はどの 2 つも互いに素なので、中国剰余定理 により $a'\equiv a\pmod d$、$a'\equiv1\pmod{q_j}$($j=1,\dots,r$)となる整数 $a'$ がある。$m$ の素因数は $d$ を割るか $q_j$ のどれかである。前者は $a'\equiv a\pmod d$ と $\gcd(a,d)=1$ から $a'$ を割らず、後者は $a'\equiv1\pmod{q_j}$ から $a'$ を割らない。よって $\gcd(a',m)=1$ である。$\square$
$\chi$ を法 $m$ の Dirichlet 指標とし、$f:=f_\chi$ をその導手とする。
1.$g:=\gcd(d_1,d_2)$ とし、$\gcd(a,m)=1$、$a\equiv1\pmod g$ とする。$\chi(a)=1$ を示す。
段 1($a$ を 2 つに分ける).$a=1+gt$ と書き、$g=ud_1+vd_2$ となる整数 $u,v$ をとる。$x:=1+tud_1$ とおくと、$x\equiv1\pmod{d_1}$ であり、$x=1+t(g-vd_2)=a-tvd_2\equiv a\pmod{d_2}$ である。$L:=\operatorname{lcm}(d_1,d_2)$ の素因数は $d_1$ か $d_2$ を割り、$x$ はどちらとも互いに素なので $\gcd(x,L)=1$ である。$L\mid m$ なので、lem-dch-lift により $b\equiv x\pmod L$、$\gcd(b,m)=1$ となる $b$ がある。このとき $b\equiv1\pmod{d_1}$、$b\equiv a\pmod{d_2}$ である。
段 2.$b$ は法 $m$ で逆元をもつので、$cb\equiv a\pmod m$ となる $c$ があり、$\gcd(c,m)=1$ である。$cb\equiv a\equiv b\pmod{d_2}$ で $b$ は法 $d_2$ で逆元をもつので、$c\equiv1\pmod{d_2}$ である。$\chi$ は法 $d_1$ と法 $d_2$ で定まるので $\chi(b)=\chi(c)=1$ であり、$\chi(a)=\chi(c)\chi(b)=1$ である。
2.$f\mid d$ なら、$a\equiv1\pmod d$ から $a\equiv1\pmod f$ なので、$\chi$ は法 $d$ で定まる。逆に $\chi$ が法 $d$ で定まるなら、1 により法 $\gcd(f,d)$ でも定まる。$\gcd(f,d)\le f$ と $f$ の最小性から $\gcd(f,d)=f$、すなわち $f\mid d$ である。
3.還元写像 $\pi:(\mathbb Z/m\mathbb Z)^\times\to(\mathbb Z/f\mathbb Z)^\times$ は lem-dch-lift により全射で、その核は $a\equiv1\pmod f$ となる類の全体 $K$ である。$\chi$ は法 $f$ で定まるので $\chi(K)=1$ である。
存在:$\bar a\in(\mathbb Z/f\mathbb Z)^\times$ に対し、$\pi(a)=\bar a$ となる $a$ を選んで $\chi^*(\bar a):=\chi(a)$ とおく。別の選び方 $a'$ とは $a'a^{-1}\in K$ だけ違うので $\chi(a')=\chi(a)$ であり、$\chi^*$ は well-defined な準同型である。これを法 $f$ の指標とみなすと、$\gcd(n,m)=1$ なら $\chi(n)=\chi^*(n)$ である。
原始性:$\chi^*$ が $f$ の真の約数 $d$ の法で定まるとする。$\gcd(a,m)=1$、$a\equiv1\pmod d$ なら $\gcd(a,f)=1$ なので $\chi(a)=\chi^*(a)=1$ となり、$\chi$ が法 $d< f$ で定まって導手の最小性に反する。よって $\chi^*$ は原始指標である。
一意性:法 $f$ の指標 $\psi$ が $\gcd(n,m)=1$ で $\chi(n)=\psi(n)$ をみたすなら、$\pi$ の全射性により $(\mathbb Z/f\mathbb Z)^\times$ のすべての類で $\psi=\chi^*$ である。$\square$
$\chi^*$ を $\chi$ に 付随する原始指標 という。2 により、$\chi$ を定義できる法の全体は「$f_\chi$ の倍数で $m$ の約数であるもの」とちょうど一致する。導手が「最小の法」であるだけでなく「すべての法の約数」でもあることが、この定理の要点である。
法 $m$ の指標 $\chi$ に、組 $(f_\chi,\chi^*)$ を対応させる。逆に $m$ の約数 $f$ と法 $f$ の原始指標 $\psi$ があれば、$\psi$ から誘導された法 $m$ の指標 $\chi$ の導手は $f$ で、$\chi^*=\psi$ である($\chi$ が法 $d$ で定まれば $\psi$ も法 $\gcd(d,f)$ で定まり、$\psi$ の原始性から $f\mid d$ となる)。したがって thm-dch-conductor により、この対応は全単射である。
法 $m$ の原始指標の個数を $\varphi^*(m)$ とおく。
1.直前の全単射により、法 $m$ の指標は「$m$ の約数 $f$ と法 $f$ の原始指標の組」と 1 対 1 に対応する。thm-dch-orthogonality の 1 により左辺は $\varphi(m)$ である。後半は Möbiusの反転公式 による。
2.$m=m_1m_2$、$\gcd(m_1,m_2)=1$ なら、$m$ の約数 $d$ は $d=d_1d_2$($d_i\mid m_i$)とただ 1 通りに書け、$\mu(d)=\mu(d_1)\mu(d_2)$、$\varphi(m/d)=\varphi(m_1/d_1)\varphi(m_2/d_2)$ である($\mu$ と $\varphi$ の乗法性)。よって 1 の和は $\varphi^*(m_1)\varphi^*(m_2)$ に分かれる。素数冪 $p^e$($e\ge1$)の約数で $\mu(d)\neq0$ なのは $d=1,p$ だけなので $\varphi^*(p^e)=\varphi(p^e)-\varphi(p^{e-1})$ である。$e=1$ では $(p-1)-1=p-2$、$e\ge2$ では $p^{e-1}(p-1)-p^{e-2}(p-1)=p^{e-2}(p-1)^2$ である。
3.2 の式は、$p$ が奇素数なら $p-2\ge1$ と $p^{e-2}(p-1)^2\ge1$ で正、$p=2$ なら $\varphi^*(2)=0$、$\varphi^*(2^e)=2^{e-2}\ge1$($e\ge2$)である。乗法性から、$\varphi^*(m)=0$ となるのは $m$ の素因数分解に $2$ がちょうど 1 乗で現れるとき、すなわち $m\equiv2\pmod4$ のときに限る。$\square$
| $m$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ | $9$ | $10$ | $11$ | $12$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $\varphi(m)$ | $1$ | $1$ | $2$ | $2$ | $4$ | $2$ | $6$ | $4$ | $6$ | $4$ | $10$ | $4$ |
| $\varphi^*(m)$ | $1$ | $0$ | $1$ | $1$ | $3$ | $0$ | $5$ | $2$ | $4$ | $0$ | $9$ | $1$ |
例えば $m=8$ の原始指標は表の $\chi_8,\chi_{-8}$ の 2 つ、$m=9$ では ex-dch-conductor の 2 の $\chi(2)$ が原始 $6$ 乗根または原始 $3$ 乗根になる 4 つ、$m=12$ では ex-dch-conductor の 3 の指標ただ 1 つである。$m\equiv2\pmod4$ で原始指標がないのは、$(\mathbb Z/2m'\mathbb Z)^\times\to(\mathbb Z/m'\mathbb Z)^\times$($m'$ 奇数)が同型で、どの指標も法 $m'$ で定まってしまうからである(奇数 $a$ について $a\equiv1\pmod{m'}$ なら $a\equiv1\pmod{2m'}$)。
法 $m$ の指標 $\chi$ の Dirichlet L 関数 を $L(s,\chi):=\sum_{n\ge1}\chi(n)n^{-s}$ で定める。$\lvert\chi(n)\rvert\le1$ なので、$\operatorname{Re}s>1$ で絶対収束する。誘導された指標と付随する原始指標の L 関数は、有限個の因子だけ違う。
$\chi$ を法 $m$ の指標、$\chi^*$ を付随する原始指標とする。$\operatorname{Re}s>1$ で
$$
L(s,\chi)=L(s,\chi^*)\prod_{p\mid m}\bigl(1-\chi^*(p)p^{-s}\bigr)
$$
が成り立つ(積は $m$ を割る素数 $p$ にわたる)。
$r$ を $m$ の相異なる素因数の積とする。$\chi(n)$ は、$\gcd(n,r)=1$ なら $\chi^*(n)$、そうでなければ $0$ である。$\sum_{d\mid k}\mu(d)$ は $k=1$ なら $1$、$k>1$ なら $0$ なので(Möbius関数)
$$
\chi(n)=\chi^*(n)\sum_{d\mid\gcd(n,r)}\mu(d)
$$
である。$n=dk$ と書き、$\chi^*$ の完全乗法性を使うと
$$
L(s,\chi)=\sum_{d\mid r}\mu(d)\sum_{k\ge1}\chi^*(dk)(dk)^{-s}=\Bigl(\sum_{d\mid r}\mu(d)\chi^*(d)d^{-s}\Bigr)L(s,\chi^*)
$$
である($\operatorname{Re}s>1$ で級数は絶対収束するので、和の順序を入れ替えてよい)。$r$ は平方因子をもたないので、$\sum_{d\mid r}\mu(d)\chi^*(d)d^{-s}=\prod_{p\mid r}(1-\chi^*(p)p^{-s})$ である。$\square$
$p\mid f_\chi$ なら $\chi^*(p)=0$ なので、実際に効くのは $m$ を割り $f_\chi$ を割らない素数だけである。関数等式 $s\leftrightarrow1-s$ がきれいな形をとるのは原始指標の L 関数で(Was82 Chapter 4、p. 29。この記事では証明しない)、誘導された指標では上の有限個の因子がそれを崩す。
法 $m$ の指標 $\chi$ の Gauss 和を $\tau(\chi):=\sum_{a=1}^{m}\chi(a)e^{2\pi ia/m}$ と定める。$\chi$ が原始指標なら $\lvert\tau(\chi)\rvert^2=m$ であり、すべての整数 $b$ について $\sum_{a=1}^m\chi(a)e^{2\pi iab/m}=\overline{\chi(b)}\,\tau(\chi)$ となる。原始性を外すとどちらも成り立たない(法 $6$ の ex-dch-conductor の 1 の指標では $\lvert\tau(\chi)\rvert^2=3$)。証明と反例は Gauss和 で扱う。
$\mathbb Q$ の有限アーベル拡大は Kronecker–Weberの定理 によりある 円分体 $\mathbb Q(\zeta_n)$ に含まれ、$\operatorname{Gal}(\mathbb Q(\zeta_n)/\mathbb Q)\cong(\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times$ である。この同型を通して、Dirichlet 指標の有限群と、円分体の部分体とが 1 対 1 に対応する(Was82 Chapter 3、pp. 22–23)。対応する体で素数 $p$ が分岐するかどうかは指標の導手で読める(Was82 Theorem 3.5、p. 23 と Corollary 3.6、p. 24)。例えば ex-dch-conductor の 3 の法 $12$ の偶指標は $\mathbb Q(\sqrt3)$ に対応し、導手 $12$ を割る素数 $2,3$ がちょうど分岐する素数である(Was82 p. 24 の例)。これらはこの記事では証明しない。
| 外す条件・替える条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 原始性 | 法 $6$、$\chi(5)=-1$ | $\mathbb Z$ 上の関数 $\chi$ が導手 $f_\chi$ を周期にもつ |
| 法を $m\equiv2\pmod4$ にする | $m=2,6,10$ | 法 $m$ の原始指標が存在する(cor-dch-primitive-count) |
| 積の導手 | $\chi_{-4}\cdot\chi_{-4}=\chi_0$(法 $4$) | 導手 $f$ の指標どうしの積の導手は $f$ |
| 法を素数から素数冪に替える | 法 $9$、$\chi(2)=-1$ | 自明でない指標の導手は法そのもの |
| 巡回性 | 法 $8$ | 法 $m$ の指標はすべて 1 つの指標の冪 |
| $\gcd(a,m)=1$ | 法 $4$、$a=b=2$ | thm-dch-orthogonality の 4 の和が $\varphi(m)$ になる |
各行を確かめる。
1 行目:ex-dch-conductor の 1 により導手は $3$ だが、$\chi(2)=0$、$\chi(5)=-1$ で $2\equiv5\pmod3$ なので、$\mathbb Z$ 上の関数は周期 $3$ をもたない。原始指標でないと、$m$ と共通の素因数をもつ $n$ で値が $0$ に落ち、付随する原始指標の値 $\chi^*(2)=\left(\frac23\right)=-1$ と食い違う。
2 行目:cor-dch-primitive-count の 3 による。例えば法 $6$ の指標は $\chi_0$ と 1 行目の指標で、導手はそれぞれ $1$ と $3$ である。
3 行目:$\chi_{-4}(3)^2=1$ なので $\chi_{-4}^2=\chi_0$ で、導手は $1$ である。導手 $4$ どうしの積なのに導手は $\operatorname{lcm}(4,4)=4$ より小さい。
4 行目:ex-dch-conductor の 2 により導手は $3\neq9$ である。法が素数 $p$ なら約数は $1,p$ だけなので、自明でない指標の導手は $p$ である(ex-dch-small の 3)。
5 行目:法 $8$ の指標は $\chi^2=\chi_0$ をみたすので、1 つの指標の冪は高々 2 つしかなく、4 つの指標を尽くせない。$(\mathbb Z/8\mathbb Z)^\times$ が巡回群でないことの反映である。
6 行目:$\chi(2)=0$ なので和は $0$ であり、$a\equiv b$ でも $\varphi(4)=2$ にならない。
注意を 2 つ挙げる。
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