閉写像(closed map)とは、位相空間の間の写像 $f\colon X\to Y$ で、$X$ の任意の閉集合 $C$ の像 $f(C)$ が $Y$ の閉集合になるもののことである。連続性・開写像性とは独立な条件で、射影 $\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$ は開写像だが閉写像でなく、定値写像 $\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ は閉写像だが開写像でない。閉写像であることは、任意の $A\subset X$ について $\overline{f(A)}\subset f(\overline{A})$ が成り立つこと、また各ファイバー $f^{-1}(y)$ を含む開集合が $y$ のある開近傍の逆像を含むことと同値である。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続写像はつねに閉写像であり、連続な閉全射は商写像である。
前提知識: 位相空間, 開集合, 閉集合, 写像, 像(写像), 逆像, 連続写像
位相空間 $X$ の部分集合 $C$ が閉集合であるとは、補集合 $X\setminus C$ が開集合であることをいう。写像 $f\colon X\to Y$ と部分集合 $A\subset X$ に対し、$f(A):=\{f(x)\mid x\in A\}$ を $A$ の像(像(写像))、部分集合 $B\subset Y$ に対し $f^{-1}(B):=\{x\in X\mid f(x)\in B\}$ を $B$ の逆像という。一点 $y\in Y$ の逆像 $f^{-1}(y):=f^{-1}(\{y\})$ を $f$ の $y$ 上のファイバーという。
$X,Y$ を位相空間とする。写像 $f\colon X\to Y$ が閉写像(closed map)であるとは、$X$ の任意の閉集合 $C$ に対し、その像 $f(C)$ が $Y$ の閉集合であることをいう。量化記号で書けば
$$
\forall C\subset X\ \bigl(C \text{ は } X \text{ で閉}\ \Longrightarrow\ f(C) \text{ は } Y \text{ で閉}\bigr)
$$
である。同様に、$X$ の任意の開集合 $U$ に対し $f(U)$ が $Y$ の開集合である写像を開写像(open map)という。
この定義では $f$ の連続性を仮定しない。閉写像であることと連続写像であることは独立な条件であり、どちらか一方から他方は導けない(ex-closed-map-vs-continuous)。文献によっては「写像」という語に連続性を含める流儀があり(Engelking89 §1.4 など)、その場合の「閉写像」は「連続な閉写像」を意味する。本記事では両者を区別し、連続性が必要な主張ではそのつど明示する。
連続写像は「開集合の逆像が開」「閉集合の逆像が閉」で定義され、逆像は和・共通部分・補集合と両立するので、開集合による定義と閉集合による定義が同値になる。これに対し像は補集合と両立しない(一般に $f(X\setminus A)\neq Y\setminus f(A)$)ので、閉写像と開写像は別の概念である。両者が一致する場合は prop-closed-map-bijection で扱う。
連続写像 $f\colon X\to Y$ の連続性は「終域の閉集合を逆像で引き戻すと閉集合になる」という、$Y$ から $X$ への向きの条件である。閉写像はその逆向きで、「定義域の閉集合を像で押し出しても閉集合のままである」ことを要求する。閉集合とは自分の閉包と一致する集合、すなわち触点を取りこぼさない集合なので、閉写像とは「像をとる操作で触点が逃げていかない写像」である。典型的な失敗は、定義域の閉集合の上で点が「無限遠へ逃げる」一方、その像は有限の点に近づく場合に起こる(ex-closed-map-projection の双曲線)。定義域がコンパクトで終域が Hausdorff なら、連続写像は自動的に閉写像になる(thm-closed-map-compact-hausdorff)。これが閉写像の最も基本的な供給源である。
$X$ を空でない位相空間、$y_0\in Y$ とし、$c\colon X\to Y$ を $c(x)=y_0$ で定める定値写像とする。$X$ の閉集合 $C$ の像は、$C=\emptyset$ なら $\emptyset$、$C\neq\emptyset$ なら一点集合 $\{y_0\}$ である。よって $c$ が閉写像であることと、$\{y_0\}$ が $Y$ の閉集合であることは同値である。特に、一点集合がすべて閉であるような空間(T1空間、たとえば任意の距離空間)への定値写像はつねに閉写像である。
一方、定値写像 $c\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$、$c(x)=0$(通常の位相)は閉写像だが開写像でない。空でない開集合 $U\subset\mathbb{R}$ の像は $\{0\}$ であり、$0$ を中心とするどの開区間も $\{0\}$ に収まらないので、$\{0\}$ は $\mathbb{R}$ の開集合でないからである。この例は「閉写像である」という性質を満たし「開写像である」という性質を満たさず、含意「閉写像ならば開写像」を破る。
$\mathbb{R}^2$ に通常の位相(Euclid空間としての位相。これは直積位相と一致する)を入れ、第 1 成分への射影 $p\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$、$p(s,t)=s$ を考える。
$p$ は開写像である。$U\subset\mathbb{R}^2$ を開集合、$a=(a_1,a_2)\in U$ とする。開集合の定義により $B(a,\varepsilon)\subset U$ となる $\varepsilon>0$ があり、$\delta:=\varepsilon/2$ とおくと、$|y_1-a_1|<\delta$ かつ $|y_2-a_2|<\delta$ なる $y=(y_1,y_2)$ は $\|y-a\|\le|y_1-a_1|+|y_2-a_2|<\varepsilon$ を満たすので、開正方形 $(a_1-\delta,a_1+\delta)\times(a_2-\delta,a_2+\delta)$ は $U$ に含まれる。その像 $(a_1-\delta,a_1+\delta)$ は $p(U)$ に含まれるので、$p(a)=a_1$ は $p(U)$ の内点である。$a\in U$ は任意だったので $p(U)$ は開集合である。
$p$ は閉写像でない。$g\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$、$g(s,t)=st$ は連続なので、双曲線
$$
C:=g^{-1}(\{1\})=\{(s,t)\in\mathbb{R}^2\mid st=1\}
$$
は閉集合 $\{1\}$ の逆像として $\mathbb{R}^2$ の閉集合である。ところが $p(C)=\mathbb{R}\setminus\{0\}$ であり、これは $\mathbb{R}$ で閉でない($0$ は $p(C)$ の触点だが $p(C)$ に属さない)。$C$ 上で $s\to0$ とすると $t=1/s$ は無限遠へ逃げ、像の側の触点 $0$ が取りこぼされている。この例は「開写像である」という性質を満たし「閉写像である」という性質を満たさず、含意「開写像ならば閉写像」を破る。ex-closed-map-constant とあわせて、閉写像と開写像は互いに他方を含意しない。
$X$ を任意の位相空間、$K$ をコンパクト空間とすると、直積位相を入れた $X\times K$ からの射影 $p\colon X\times K\to X$ は閉写像である。証明は 完全写像 の記事の命題(コンパクトな因子に沿う積射影)に譲る。ex-closed-map-projection は、第 2 因子 $\mathbb{R}$ がコンパクトでないときにこの結論が破れることを示している。
$f\colon X\to Y$ を位相空間の間の写像とする。
条件 1 の包含 $\overline{f(A)}\subset f(\overline{A})$ は、「$f(A)$ の極限点はすべて $A$ の極限点の像である」と読める。ex-closed-map-projection の双曲線 $C$ では、$0\in\overline{p(C)}$ だが $0$ は $\overline{C}=C$ の点の像ではない。
閉写像を定義どおりに確かめるには定義域の閉集合をすべて調べる必要があるが、実際には「終域の一点のファイバーを含む開集合は、その点の近傍の逆像を含む」という条件に言い換えるのが便利である。この形は、射影に対する管状近傍の議論の一般形であり、完全写像の理論の基本道具でもある。
$f\colon X\to Y$ を位相空間の間の写像とする。次の三条件は同値である。
1 ⇒ 2:$B\subset Y$ と開集合 $U\supset f^{-1}(B)$ をとり、$V:=Y\setminus f(X\setminus U)$ とおく。$X\setminus U$ は閉集合なので、$f$ が閉写像であることから $f(X\setminus U)$ は $Y$ の閉集合であり、$V$ は開集合である。
$f^{-1}(V)\subset U$ を示す。$x\in f^{-1}(V)$ とすると $f(x)\notin f(X\setminus U)$ である。もし $x\notin U$ なら $f(x)\in f(X\setminus U)$ となって矛盾するので $x\in U$ である。
$B\subset V$ を示す。$y\in B$ とし、$y\notin V$、すなわち $y\in f(X\setminus U)$ と仮定する。$f(x)=y$ かつ $x\notin U$ となる $x$ がある。しかし $f(x)=y\in B$ から $x\in f^{-1}(B)\subset U$ となり矛盾する。よって $y\in V$ である。
最大性を示す。$V'$ を $f^{-1}(V')\subset U$ を満たす $Y$ の任意の部分集合とし、$y\in V'$ とする。$f(x)=y$ なる任意の $x$ は $f^{-1}(V')\subset U$ に属するので、$y\notin f(X\setminus U)$、すなわち $y\in V$ である。よって $V'\subset V$ である。
2 ⇒ 3:$B:=\{y\}$ とすればよい。
3 ⇒ 1:$C\subset X$ を閉集合とし、$Y\setminus f(C)$ が開集合であることを示す。$y\in Y\setminus f(C)$ をとる。$y\notin f(C)$ は $f^{-1}(y)\cap C=\emptyset$ を意味するので、開集合 $U:=X\setminus C$ は $f^{-1}(y)$ を含む。条件 3 により、$y$ を含む開集合 $V$ で $f^{-1}(V)\subset X\setminus C$ となるものがある。このとき $V\cap f(C)=\emptyset$ である。実際、$y'\in V\cap f(C)$ とすると $y'=f(x)$ なる $x\in C$ があり、$x\in f^{-1}(V)\subset X\setminus C$ となって矛盾する。よって $V\subset Y\setminus f(C)$ であり、$y$ は $Y\setminus f(C)$ の内点である。$y$ は任意だったので $Y\setminus f(C)$ は開集合、すなわち $f(C)$ は閉集合である。$\square$
$K$ をコンパクト空間、$X$ を任意の位相空間とし、射影 $p\colon X\times K\to X$ を考える。ex-closed-map-compact-projection により $p$ は閉写像なので、thm-closed-map-fiber の条件 3 を点 $x\in X$ に適用すると、ファイバー $\{x\}\times K$ を含む任意の開集合 $N\subset X\times K$ に対し、$x$ を含む開集合 $W$ で $p^{-1}(W)=W\times K\subset N$ となるものが存在する。これは管状近傍補題(tube lemma、Mun00 §26 Lemma 26.8)そのものである。逆に、管状近傍補題を直接示せば、条件 3 を経由して射影の閉写像性が従う。完全写像 の記事の補題(閉写像で開集合を押し出す)は、上の定理の 1 ⇒ 2 の方向を $V=Y\setminus f(X\setminus U)$ の形で述べたものであり、そこではこの構成とファイバーのコンパクト性を組み合わせて、終域のコンパクト集合の逆像がコンパクトになることが示される。
位相空間 $X$ がコンパクト空間であるとは、$X$ の任意の開被覆($X$ を覆う開集合の族)が有限部分被覆をもつことをいう。部分集合 $K\subset X$ がコンパクトであるとは、相対位相を入れた部分空間 $K$ がコンパクトであることをいい、これは「$X$ の開集合の族で $K$ を覆うものは必ず有限部分族で $K$ を覆う」ことと同値である(相対開集合は $X$ の開集合と $K$ の共通部分だからである)。位相空間 $Y$ がHausdorff空間であるとは、相異なる任意の二点 $y_1,y_2\in Y$ に対し、$y_1\in V_1$、$y_2\in V_2$、$V_1\cap V_2=\emptyset$ を満たす開集合 $V_1,V_2$ が存在することをいう。
$X$ をコンパクト空間、$Y$ を Hausdorff 空間とする。任意の連続写像 $f\colon X\to Y$ は閉写像である。
$C\subset X$ を閉集合とし、$f(C)$ が $Y$ の閉集合であることを、三段階に分けて示す。各段階は コンパクト空間 の記事の命題(保存と閉性)と同じ内容だが、本定理の証明が単独で読めるように再掲する。
第 1 段:$C$ はコンパクトである。$X$ の開集合の族 $(U_i)_{i\in I}$ が $C$ を覆うとする。$C$ が閉なので $X\setminus C$ は開集合であり、$(U_i)_{i\in I}$ に $X\setminus C$ を付け加えた族は $X$ の開被覆である。$X$ のコンパクト性により有限部分被覆があり、そこから $X\setminus C$ を除いた有限個の $U_{i_1},\dots,U_{i_n}$ は、$X\setminus C$ が $C$ の点を含まないので、なお $C$ を覆う。
第 2 段:$f(C)$ はコンパクトである。$Y$ の開集合の族 $(W_j)_{j\in J}$ が $f(C)$ を覆うとする。$f$ の連続性により各 $f^{-1}(W_j)$ は $X$ の開集合であり、$x\in C$ に対して $f(x)\in W_j$ となる $j$ をとれば $x\in f^{-1}(W_j)$ なので、族 $(f^{-1}(W_j))_{j\in J}$ は $C$ を覆う。第 1 段により有限個の $f^{-1}(W_{j_1}),\dots,f^{-1}(W_{j_m})$ が $C$ を覆い、したがって $W_{j_1},\dots,W_{j_m}$ は $f(C)$ を覆う。
第 3 段:Hausdorff 空間 $Y$ のコンパクト部分集合 $K:=f(C)$ は閉集合である。$K=\emptyset$ なら閉である。$K\neq\emptyset$ とし、$y\in Y\setminus K$ を固定する。各 $k\in K$ に対し $k\neq y$ なので、Hausdorff 性により $k\in U_k$、$y\in V_k$、$U_k\cap V_k=\emptyset$ を満たす開集合 $U_k,V_k$ をとる(各 $k$ について一組ずつ選ぶので、$K$ が無限集合のときは選択公理を使う)。族 $(U_k)_{k\in K}$ は $K$ を覆うので、$K$ のコンパクト性により有限個の $k_1,\dots,k_r$ で $K\subset U_{k_1}\cup\cdots\cup U_{k_r}$ となる。$V:=V_{k_1}\cap\cdots\cap V_{k_r}$ は $y$ を含む開集合であり、各 $i$ について $V\cap U_{k_i}\subset V_{k_i}\cap U_{k_i}=\emptyset$ なので $V\cap K=\emptyset$ である。よって $y$ は $Y\setminus K$ の内点であり、$Y\setminus K$ は開集合、すなわち $K=f(C)$ は閉集合である。$\square$
二つの仮定はどちらも落とせない。定義域のコンパクト性を落とすと、包含写像 $(0,1)\to\mathbb{R}$(ex-closed-map-vs-continuous)が反例になる。終域の Hausdorff 性を落とすと、二点集合 $X=\{0,1\}$ に離散位相を入れたコンパクト空間から、開集合が $\emptyset,\{1\},\{0,1\}$ である Sierpinski空間 $Y$ への恒等写像が反例になる。離散空間からの写像は連続であり、$\{1\}$ は $X$ で閉だが、その像 $\{1\}$ は $Y$ で閉でない(補集合 $\{0\}$ が開でない)。この写像は「定義域がコンパクトで連続」という性質を満たし「閉写像である」という性質を満たさず、含意「コンパクト空間からの連続写像は閉写像」を破る。
この定理は 完全写像 の記事の命題(コンパクトから Hausdorff への連続写像)の閉写像性の部分にあたる。そこではさらに各ファイバーがコンパクトであることも示され、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続写像は完全写像であると結論される。
全射 $q\colon X\to Y$ が商写像(quotient map)であるとは、$Y$ の部分集合 $V$ について「$V$ が $Y$ の開集合であること」と「$q^{-1}(V)$ が $X$ の開集合であること」が同値になることをいう。補集合をとれば、これは閉集合について同じ同値が成り立つことと同じである。商写像は連続であり、連続な全射のうち「終域の位相が定義域の位相から像で決まる」ものである。詳しくは 商写像・商空間 を参照。
$q\colon X\to Y$ を連続な全射とする。$q$ が閉写像ならば、$q$ は商写像である。同様に、$q$ が開写像ならば商写像である。
$V\subset Y$ とする。$V$ が開なら、連続性により $q^{-1}(V)$ は開である。逆に $q^{-1}(V)$ が開であるとする。$X\setminus q^{-1}(V)=q^{-1}(Y\setminus V)$ は閉集合なので、$q$ が閉写像であることから $q(q^{-1}(Y\setminus V))$ は $Y$ の閉集合である。$q$ が全射なので $q(q^{-1}(B))=B$ が任意の $B\subset Y$ について成り立ち、したがって $Y\setminus V$ は閉集合、すなわち $V$ は開集合である。よって $q$ は商写像である。
$q$ が開写像の場合は、$q^{-1}(V)$ が開なら $q(q^{-1}(V))=V$ が直接開集合になる。$\square$
逆は成り立たない。商写像で開写像でも閉写像でもないものがある。
$\mathbb{R}^2$ の部分集合
$$
A:=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x\ge0\ \text{または}\ y=0\}
$$
に相対位相を入れ、$q\colon A\to\mathbb{R}$、$q(x,y)=x$ とする。$q$ は射影の制限なので連続であり、$q(x,0)=x$ から全射である。
$q$ は商写像である。$s\colon\mathbb{R}\to A$、$s(x)=(x,0)$ は連続で $q\circ s=\operatorname{id}_{\mathbb{R}}$ を満たす。$V\subset\mathbb{R}$ について $q^{-1}(V)$ が $A$ で開なら、$V=s^{-1}(q^{-1}(V))$ は連続写像による開集合の逆像なので開である。
$q$ は開写像でない。$N:=A\cap\bigl((-1,1)\times(1,2)\bigr)=\{(x,y)\mid 0\le x<1,\ 1< y<2\}$ は $A$ の開集合だが、$q(N)=[0,1)$ は $\mathbb{R}$ で開でない。
$q$ は閉写像でない。双曲線の枝 $C:=\{(x,1/x)\mid x>0\}$ は、$\{(s,t)\mid st=1\}$(ex-closed-map-projection により $\mathbb{R}^2$ で閉)と $A$ の共通部分に等しい($st=1$ かつ $t=0$ は不可能なので、$A$ との共通部分は $s>0$ の枝である)から $A$ の閉集合であるが、$q(C)=(0,\infty)$ は $\mathbb{R}$ で閉でない。
この写像は「商写像である」という性質を満たし「開写像である」「閉写像である」のどちらの性質も満たさず、含意「商写像ならば開写像または閉写像」を破る。Mun00 §22 にも同種の例がある。
単射な連続写像 $f\colon X\to Y$ が埋め込み(embedding)であるとは、終域を像に制限した写像 $X\to f(X)$($f(X)$ には $Y$ の相対位相を入れる)が同相写像であることをいう。
埋め込み $f\colon X\to Y$ の像 $f(X)$ が $Y$ の閉集合であるとき、$f$ を閉埋め込み(closed embedding)という。同様に、像が $Y$ の開集合である埋め込みを開埋め込み(open embedding)という。
$f\colon X\to Y$ を単射な連続写像とする。次は同値である。
$g\colon X\to f(X)$ を終域を像に制限した写像とする。$g$ は全単射であり、$f(X)$ の開集合 $f(X)\cap W$($W$ は $Y$ の開集合)の逆像は $g^{-1}(f(X)\cap W)=f^{-1}(W)$ で、$f$ の連続性により開なので、$g$ は連続である。
1 ⇒ 2:$X$ は $X$ の閉集合なので $f(X)$ は $Y$ の閉集合である。$g^{-1}\colon f(X)\to X$ が連続であることを示す。$C\subset X$ を閉集合とすると、$(g^{-1})^{-1}(C)=g(C)=f(C)$ であり、$f(C)$ は $Y$ で閉かつ $f(X)$ に含まれるので $f(C)=f(X)\cap f(C)$ は $f(X)$ の閉集合である。閉集合の逆像がつねに閉なので $g^{-1}$ は連続であり、$g$ は同相写像である。よって $f$ は閉埋め込みである。
2 ⇒ 1:$C\subset X$ を閉集合とする。$g$ が同相写像なので $g(C)=f(C)$ は $f(X)$ の閉集合であり、$Y$ の閉集合 $F$ を用いて $f(C)=f(X)\cap F$ と書ける。$f(X)$ が $Y$ で閉なので、$f(C)$ は二つの閉集合の共通部分として $Y$ の閉集合である。$\square$
$f\colon X\to Y$ を全単射とする。$f$ が閉写像であることと開写像であることは同値であり、さらにこれらは逆写像 $f^{-1}\colon Y\to X$ が連続であることと同値である。特に、連続な全単射が閉写像(または開写像)であることと同相写像であることは同値である。
$f$ が全単射なので、任意の $A\subset X$ に対して $f(X\setminus A)=Y\setminus f(A)$ が成り立つ($y=f(x)$ の $x$ が一意に決まるからである)。したがって「閉集合 $C$ の像が閉」は「開集合 $X\setminus C$ の像 $Y\setminus f(C)$ が開」と同じことであり、閉写像と開写像は一致する。また $(f^{-1})^{-1}(A)=f(A)$ なので、$f$ が開写像であることは $f^{-1}$ による開集合の逆像が開であること、すなわち $f^{-1}$ の連続性と同値である。最後の主張は同相写像の定義(連続な全単射で逆写像も連続)そのものである。$\square$
制限する部分集合が閉でなければ 2 は成り立たない。恒等写像 $\operatorname{id}_{\mathbb{R}}$ は閉写像だが、$(0,1)$ への制限は包含写像 $(0,1)\to\mathbb{R}$ であり閉写像でない(ex-closed-map-vs-continuous)。一方、終域の部分集合 $W\subset Y$ とその逆像 $f^{-1}(W)$ に同時に制限した写像 $f_W\colon f^{-1}(W)\to W$、$f_W(x):=f(x)$ は、$W$ が閉でなくても閉写像である。実際、$f^{-1}(W)$ の閉集合は $A:=C\cap f^{-1}(W)$($C$ は $X$ の閉集合)の形であり、$f_W(A)=f(C)\cap W$ が成り立つ。$f$ が閉写像なので $f(C)$ は $Y$ の閉集合であり、したがって $f(C)\cap W$ は $W$ の閉集合である。
$X$ をコンパクト空間、$Y$ を Hausdorff 空間、$f\colon X\to Y$ を連続写像とする。
thm-closed-map-compact-hausdorff により $f$ は閉写像である。1 は prop-closed-map-bijection、2 は prop-closed-map-closed-embedding、3 は prop-closed-map-quotient から従う。$\square$
系の 1 は、コンパクト Hausdorff 空間の間では連続な全単射がただちに同相写像になることを述べており、位相空間論で最も頻繁に使われる同相写像の判定法である。コンパクト性を落とすと成り立たない。半開区間 $[0,1)$ から単位円周 $S^1$ への連続な全単射 $t\mapsto(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ は、$[0,1/2)$ が $[0,1)$ で開なのにその像が $S^1$ で開でないので、同相写像でない。
完全写像とは、連続な閉写像であって各ファイバー $f^{-1}(y)$ がコンパクトなもののことである。閉写像性だけではファイバーについて何も分からない。定値写像 $\mathbb{R}\to\{*\}$ は連続な閉写像だがファイバー $\mathbb{R}$ はコンパクトでなく、終域のコンパクト集合 $\{*\}$ の逆像もコンパクトでない。閉写像性にファイバーのコンパクト性を加えると、thm-closed-map-fiber の構成を通じて、終域のコンパクト集合の逆像がコンパクトになり、Hausdorff 空間であること・正則空間であること・正規空間であることが像へ遺伝する。これらは 完全写像 の記事が扱う。Bou98 Chapter I §10 は、連続写像 $f$ であって任意の位相空間 $Z$ に対し $f\times\operatorname{id}_Z\colon X\times Z\to Y\times Z$ が閉写像であるもの、という条件(普遍閉性)で proper map を定義し、これが連続な閉写像でファイバーがコンパクトであることと同値であることを示している。閉写像は、この意味でコンパクト性を写像の言葉に翻訳する際の出発点である。
閉写像の定義に連続性を含めるかどうかは文献によって異なる。Bou98 Chapter I §5 は本記事と同じく任意の写像に対して閉写像・開写像を定義し、Engelking89 §1.4 は「写像」を連続写像の意味で使うので、そこでの閉写像は連続な閉写像である。Mun00 §22 は商写像の文脈で開写像・閉写像を導入し、連続な全射が開または閉なら商写像であることを述べている。どの流儀でも、閉写像性そのものは「閉集合の像が閉」という一つの条件であり、本記事の thm-closed-map-fiber の同値は連続性なしに成り立つ。
閉写像の判定には prop-closed-map-closure の閉包条件と thm-closed-map-fiber のファイバー条件が使える。閉写像でないことを示すには、閉集合 $C$ と $C$ 内の点列 $(x_n)$ で、$f(x_n)$ が $f(C)$ に属さない点に収束するものを一つ見つければよい(収束先は $f(C)$ の触点なので、$f(C)$ は閉でない)。ex-closed-map-projection では $x_n=(1/n,n)$ がその点列である。終域が距離空間(より一般に第1可算公理を満たす空間)のときは閉包が点列の収束で記述できるので、逆に閉写像でなければ必ずこのような点列が存在する。
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