Lp空間

同義語:L^p空間Lebesgue空間ルベーグ空間Lp space

概要

Lp空間($L^p$ space)とは、測度空間上の可測関数のうち $\|f\|_p=(\int|f|^p\,d\mu)^{1/p}$($p=\infty$ では本質的上限)が有限なものを、ほとんどいたるところ等しい関数を同一視して集めた空間である。$1\le p\le\infty$ では Hölder の不等式と Minkowski の不等式により $\|\cdot\|_p$ はノルムになり、Lebesgue 積分の収束定理によって完備、すなわち Banach 空間になる。$L^2$ は Hilbert 空間であり、数え上げ測度の場合が数列の空間 $\ell^p$ である。有限測度では $p$ が大きいほど空間は小さく、数列の空間では逆になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Lebesgue積分, ノルム空間, Banach空間

何を測る空間か

数の組 $(x_1,\dots,x_n)$ の大きさには、絶対値の和 $\sum_k|x_k|$、2 乗の和の平方根 $(\sum_k|x_k|^2)^{1/2}$、最大値 $\max_k|x_k|$ など、いくつもの測り方がある。これらは $p$ 乗の和の $p$ 乗根 $(\sum_k|x_k|^p)^{1/p}$ の $p=1,2$ と、$p\to\infty$ の極限にあたる。関数 $f$ の大きさも同じように、和を積分に替えて $(\int|f|^p)^{1/p}$ で測れる。$p=1$ は「平均の絶対誤差」、$p=2$ は「平均 2 乗誤差」、$p=\infty$ は「最大の誤差」にあたり、$p$ を大きくするほど大きな値をとる所を重く見る。
$L^p$ 空間は、この大きさが有限な関数を集め、積分では区別できない関数(ほとんどいたるところ等しい関数)を同じものとみなした空間である。$1\le p\le\infty$ では、これはノルム空間になり、さらに完備、すなわち Banach空間 になる。完備性は Lebesgue 積分の収束定理から来るもので、連続関数だけを集めた空間に同じ積分のノルムを入れても成り立たない(Banach空間 の例「反例:積分のノルムでは完備でない」)。$L^2$ は内積をもつので Hilbert 空間の代表例になり、$L^1$ は確率論の期待値、$L^p$ 一般は偏微分方程式の関数空間(Sobolev 空間)や作用素の評価の基本的な舞台になる。

定義

以下、$(X,\mathcal{F},\mu)$ を測度空間とし(測度 の記事の定義「測度」、Lebesgue測度 の記事の定義「σ-代数と測度」)、$F$ は実数体 $\mathbb{R}$ または複素数体 $\mathbb{C}$ を表す。関数 $f\colon X\to\mathbb{C}$ が可測であるとは、実部と虚部がともに可測であることとする。可測関数 $f$ について $|f|$ は可測であり、$p>0$ について $|f|^p$ も値が $[0,\infty)$ の可測関数である($|f|^2$ は実部と虚部の 2 乗の和なので可測であり、$\{|f|^p>a\}=\{|f|^2>a^{2/p}\}$($a\ge0$)が可測集合だからである)。したがって積分 $\int|f|^p\,d\mu\in[0,\infty]$ がつねに定まる(Lebesgue積分 の記事の定義「非負可測関数の積分」)。複素数値の可積分関数 $f$ の積分は $\int f\,d\mu:=\int\operatorname{Re}f\,d\mu+i\int\operatorname{Im}f\,d\mu$ で定める。

$p$ ノルムと本質的上限

可測関数 $f\colon X\to F$ と $0< p<\infty$ について
$$ \|f\|_p:=\Bigl(\int|f|^p\,d\mu\Bigr)^{1/p}\in[0,\infty] $$
とおく。また
$$ \|f\|_\infty:=\inf\bigl\{t\ge0\ \big|\ \mu(\{x\in X\mid|f(x)|>t\})=0\bigr\}\in[0,\infty] $$
を $f$ の本質的上限(essential supremum)という(条件を満たす $t$ がなければ $\|f\|_\infty=\infty$)。$0< p\le\infty$ について、$\|f\|_p<\infty$ を満たす可測関数 $f\colon X\to F$ 全体を $\mathcal{L}^p(\mu)$ と書く。

本質的上限は、零集合の上での値を無視したときの $|f|$ の上限である。たとえば $\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度について、有理数で $n$($n$ は既約分数の分母)、無理数で $0$ をとる関数は有界でないが、有理数全体は零集合なので本質的上限は $0$ である。本質的上限は下限として定義したが、実際に達成される。

本質的上限は達成される

可測関数 $f$ について $\|f\|_\infty<\infty$ なら、ほとんどいたるところ $|f|\le\|f\|_\infty$ である。

$s:=\|f\|_\infty$ とおく。下限の定義から、各 $n\ge1$ について $\mu(\{|f|>t_n\})=0$ となる $t_n< s+\frac1n$ があり、$\{|f|>s+\frac1n\}\subset\{|f|>t_n\}$ も零集合である。$\{|f|>s\}=\bigcup_n\{|f|>s+\frac1n\}$ は零集合の可算個の和なので零集合である(測度の可算劣加法性)。$\square$

$\|f\|_p=0$ でも $f=0$ とは限らない($\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度では、有理数の指示関数 $1_{\mathbb{Q}}$ は $\|1_{\mathbb{Q}}\|_p=0$)。そこで、ほとんどいたるところ等しい関数を同じものとみなす。$f=g$(ほとんどいたるところ)なら $\int|f|^p=\int|g|^p$ であり(Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 3)、本質的上限も等しいので、次の定義は代表元のとり方によらない。

$L^p$ 空間

$0< p\le\infty$ とする。$\mathcal{L}^p(\mu)$ に「ほとんどいたるところ等しい」という同値関係を入れた商集合を $L^p(\mu)$ と書き、$L^p$ 空間(Lebesgue 空間)という。$f\in\mathcal{L}^p(\mu)$ の同値類を再び $f$ と書き、$\|f\|_p$ を代表元の値で定める。区間などの Lebesgue 可測集合 $E\subset\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度については $L^p(E)$ と書き、$\mathbb{N}$ 上の数え上げ測度(各集合に元の個数を与える測度)の場合を
$$ \ell^p:=L^p(\text{数え上げ測度}),\qquad \|x\|_p=\Bigl(\sum_k|x_k|^p\Bigr)^{1/p},\quad\|x\|_\infty=\sup_k|x_k| $$
と書く(Lebesgue積分 の記事の例「数え上げ測度による積分と級数」により積分は級数の和になる。数え上げ測度では空集合以外に零集合がないので、同一視は起こらない)。

$0< p<1$ でも $L^p(\mu)$ は定義できるが、$\|\cdot\|_p$ は一般に三角不等式を満たさず、ノルムにならない(ノルム空間 の記事の例「反例:$p=1/2$ の「ノルム」」は、2 点上の数え上げ測度の $\|\cdot\|_{1/2}$ である)。以下では主に $1\le p\le\infty$ を扱う。$1\le p\le\infty$ に対し、$\frac1p+\frac1{p'}=1$ を満たす $p'\in[1,\infty]$ を $p$ の双対指数という($1'=\infty$、$\infty'=1$、$2'=2$)。

例

数の組と数列の空間

$X=\{1,\dots,n\}$ 上の数え上げ測度では $L^p=F^n$ であり、$\|\cdot\|_1,\|\cdot\|_2,\|\cdot\|_\infty$ は ノルム空間 の記事の例「数ベクトル空間の 3 つのノルム」のノルムである。$X=\mathbb{N}$ では $\ell^p$ は $p$ 乗の和が収束する数列の空間、$\ell^\infty$ は有界数列の空間である。たとえば $x_k=\frac1{k+1}$ は $\sum_k\frac1{(k+1)^2}<\infty$ なので $\ell^2$ に入るが、調和級数が発散するので $\ell^1$ に入らない。

区間上の冪関数は、$p$ の大小によって $L^p$ に入るかどうかが入れ替わる典型である。$a>0$ とし、$f_a(x):=x^{-a}$ を考える。

定義域$f_a\in L^p$($1\le p<\infty$)の条件$f_a\in L^\infty$大きさが問題になる所
$(0,1)$$ap<1$入らない$x\to0$ で大きくなる
$(1,\infty)$$ap>1$入る$x\to\infty$ で減り方が遅い
$(0,\infty)$どの $p$ でも入らない入らない両方
冪関数が $L^p$ に入る条件

$\int_{(0,1)}x^{-ap}\,dx$ は $ap<1$ なら $\frac1{1-ap}$、$ap\ge1$ なら $\infty$ であり、$\int_{(1,\infty)}x^{-ap}\,dx$ は $ap>1$ なら $\frac1{ap-1}$、$ap\le1$ なら $\infty$ である。$(0,\infty)$ 上では両方が有限である必要があり、$ap<1< ap$ は起こらない。

詳細

Lebesgue積分 の記事の命題「非負関数の広義積分との一致」により、これらの積分は広義積分 $\lim_{\varepsilon\to+0}\int_\varepsilon^1x^{-ap}\,dx$、$\lim_{R\to\infty}\int_1^Rx^{-ap}\,dx$ に等しい。$ap\ne1$ なら $\int x^{-ap}dx=\frac{x^{1-ap}}{1-ap}$、$ap=1$ なら $\log x$ から値が分かる。$L^\infty$ については、$(1,\infty)$ 上では $0< x^{-a}<1$ なので $\|f_a\|_\infty\le1$、$(0,1)$ 上ではどの $t$ についても $\{x^{-a}>t\}$ が長さ正の区間を含むので $\|f_a\|_\infty=\infty$ である。


とくに $(0,1)$ 上の $x^{-1/2}$ は $L^1$ に入るが($\int_0^1x^{-1/2}dx=2$)$L^2$ に入らず、$(1,\infty)$ 上の $x^{-1}$ は $L^2$ に入るが($\int_1^\infty x^{-2}dx=1$)$L^1$ に入らない。$(0,1)$ 上の $x^{-1/3}$ は $L^2$ に入り、$\|x^{-1/3}\|_2^2=\int_0^1x^{-2/3}dx=3$ である。

$L^2$ と内積

$L^2(\mu)$ では $\langle f,g\rangle:=\int f\,\overline g\,d\mu$ が内積になり、そのノルムが $\|\cdot\|_2$ である。$L^2(\mu)$ はこの内積について完備な内積空間、すなわち Hilbert 空間である(Hilbert空間 の例「2 乗可積分関数の空間」)。$L^2$ の場合の三角不等式は内積の Cauchy–Schwarz の不等式から従うが、$p\ne2$ では内積がないので、次の節の Hölder の不等式が代わりの道具になる。

確率変数の平均と中央値

確率空間 $(\Omega,\mathcal{F},P)$ は $P(\Omega)=1$ の測度空間であり、実数値の確率変数 $X$ について $\|X\|_1=E|X|$、$\|X\|_2=\sqrt{E[X^2]}$ である。$X\in L^2(P)$ のとき、定数 $c$ のうち $L^2$ の距離 $\|X-c\|_2$ を最小にするのは平均 $c=E[X]$ である。実際 $E[(X-c)^2]=E[(X-E[X])^2]+(E[X]-c)^2$(交差項 $2(E[X]-c)E[X-E[X]{}]$ は $0$)であり、第 2 項だけが $c$ によって変わる。一方、$X\in L^1(P)$ のとき、$L^1$ の距離 $\|X-c\|_1=E|X-c|$ を最小にするのは中央値である(確率分布の中央値 の定理「中央値は $E\lvert X-a\rvert$ を最小にする」)。どの $p$ の距離で測るかによって「最も近い定数」が変わる。

Hölder の不等式と Minkowski の不等式

$\|\cdot\|_p$ がノルムであることの要は三角不等式(Minkowski の不等式)であり、その証明には積の積分を評価する Hölder の不等式を使う。出発点は 2 つの数についての Young の不等式である:$1< p<\infty$ なら、$a,b\ge0$ について
$$ ab\le\frac{a^p}p+\frac{b^{p'}}{p'} $$
が成り立つ(凸関数 の記事の系「Youngの不等式」。対数関数の凹性から従う)。

Hölderの不等式

$1\le p\le\infty$ とし、$f,h\colon X\to F$ を可測関数とする。このとき
$$ \int|fh|\,d\mu\le\|f\|_p\,\|h\|_{p'} $$
が成り立つ(右辺が $0\cdot\infty$ の形のときは $0$ と約束する)。とくに $f\in\mathcal{L}^p(\mu)$、$h\in\mathcal{L}^{p'}(\mu)$ なら $fh$ は可積分である。

$p=1$ または $p=\infty$ のときは、ほとんどいたるところ成り立つ不等式 $|fh|\le|f|\,\|h\|_\infty$(または $|fh|\le\|f\|_\infty|h|$)を積分すればよい。

詳細

$p=1$($p'=\infty$)とする。$\|h\|_\infty<\infty$ なら、lem-lp-space-esssup により零集合 $N$ の外で $|h|\le\|h\|_\infty$ なので $|fh|1_{X\setminus N}\le|f|\,\|h\|_\infty$ であり、積分すると結論を得る($N$ の上の値を変えても積分は変わらない。Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 3)。$\|h\|_\infty=\infty$ のときは、$\|f\|_1>0$ なら右辺が $\infty$ で自明であり、$\|f\|_1=0$ なら $f=0$(ほとんどいたるところ、同じ補題の 2)なので左辺も $0$ である。$p=\infty$ は $f$ と $h$ の役を入れ替えればよい。


$1< p<\infty$ のとき:$\|f\|_p=0$ なら $f=0$(ほとんどいたるところ)なので左辺は $0$ であり、$\|h\|_{p'}=0$ でも同じである。どちらも $0$ でなく一方が $\infty$ なら右辺は $\infty$ で自明である。そこで $0<\|f\|_p,\|h\|_{p'}<\infty$ とし、$u:=|f|/\|f\|_p$、$v:=|h|/\|h\|_{p'}$ とおく。各点で Young の不等式を使うと $uv\le\frac{u^p}p+\frac{v^{p'}}{p'}$ であり、積分すると
$$ \frac{\int|fh|\,d\mu}{\|f\|_p\,\|h\|_{p'}}=\int uv\,d\mu\le\frac1p\int u^p\,d\mu+\frac1{p'}\int v^{p'}\,d\mu=\frac1p+\frac1{p'}=1 $$
となる。$\square$

$p=p'=2$ の場合は積分の形の Cauchy–Schwarz の不等式 $\int|fh|\le\|f\|_2\|h\|_2$ である。有限個の数についての Hölder の不等式(凸関数 の記事の系「Hölderの不等式」)は、$\{1,\dots,n\}$ 上の数え上げ測度の場合にあたる。

Minkowskiの不等式

$1\le p\le\infty$ とし、$f,g\in\mathcal{L}^p(\mu)$ とする。このとき $f+g\in\mathcal{L}^p(\mu)$ であり
$$ \|f+g\|_p\le\|f\|_p+\|g\|_p. $$

$p=1$ と $p=\infty$ のときは、各点の $|f+g|\le|f|+|g|$ から直ちに従う。

詳細

$p=1$ では各点の不等式を積分すればよい。$p=\infty$ では、lem-lp-space-esssup により零集合の外で $|f+g|\le|f|+|g|\le\|f\|_\infty+\|g\|_\infty$ なので、本質的上限の定義から $\|f+g\|_\infty\le\|f\|_\infty+\|g\|_\infty$ である。


$1< p<\infty$ のとき:各点で $|f+g|\le2\max(|f|,|g|)$ なので $|f+g|^p\le2^p(|f|^p+|g|^p)$ であり、$f+g\in\mathcal{L}^p(\mu)$ である。$|f+g|^p\le|f|\,|f+g|^{p-1}+|g|\,|f+g|^{p-1}$ を積分し、右辺の 2 項それぞれに thm-lp-space-holder を使う。$(p-1)p'=p$ なので $\bigl\||f+g|^{p-1}\bigr\|_{p'}=\bigl(\int|f+g|^p\bigr)^{1/p'}=\|f+g\|_p^{p-1}$ であり、
$$ \|f+g\|_p^p\le\bigl(\|f\|_p+\|g\|_p\bigr)\|f+g\|_p^{p-1} $$
を得る。$\|f+g\|_p=0$ なら結論は明らかであり、そうでなければ両辺を有限の正の数 $\|f+g\|_p^{p-1}$ で割ればよい。$\square$

$L^p$ はノルム空間

$1\le p\le\infty$ のとき、$L^p(\mu)$ は関数の和とスカラー倍でベクトル空間になり、$\|\cdot\|_p$ はその上のノルムである。

要点:三角不等式は thm-lp-space-minkowski、斉次性は定義から従い、正値性は「$\|f\|_p=0$ なら $f=0$(ほとんどいたるところ)」、すなわち $L^p(\mu)$ の元として $f=0$ であることによる。

詳しい証明を開く

和とスカラー倍は同値類の代表元のとり方によらない。$\|af\|_p=|a|\,\|f\|_p$ は定義から従う($p=\infty$ では、$a\ne0$ について $\{|af|>|a|t\}=\{|f|>t\}$)。和で閉じることと三角不等式は thm-lp-space-minkowski である。正値性:$1\le p<\infty$ で $\|f\|_p=0$ なら $\int|f|^p=0$ なので $|f|^p=0$、すなわち $f=0$(ほとんどいたるところ)である(Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 2)。$p=\infty$ では lem-lp-space-esssup により $|f|\le0$(ほとんどいたるところ)である。$\square$

$\mathcal{L}^p(\mu)$ の上では $\|\cdot\|_p$ は半ノルムにすぎず、$L^p(\mu)$ へ移ってはじめてノルムになる。これは ノルム空間 の記事の注意「半ノルムからノルムを作る」の構成の一例である。

完備性

ノルム空間が完備であることは、絶対収束する級数がつねに収束することと同値である(Banach空間 の記事の定理「絶対収束する級数による完備性の特徴づけ」)。$L^p$ ではこの級数が、ほとんどいたるところ各点でも収束することが示せる。

$L^p$ 空間の完備性(Riesz–Fischer)

$1\le p\le\infty$ とする。$f_k\in\mathcal{L}^p(\mu)$ が $\sum_k\|f_k\|_p<\infty$ を満たすなら、ほとんどすべての $x$ で級数 $\sum_kf_k(x)$ は絶対収束し、その和(収束しない零集合の上では $0$ とおく)$f$ は $\mathcal{L}^p(\mu)$ に属して、部分和 $s_n:=\sum_{k=1}^nf_k$ について $\|f-s_n\|_p\to0$ である。したがって $L^p(\mu)$ は Banach 空間である。

$1\le p<\infty$ のとき:$S:=\sum_k\|f_k\|_p$、$G_n:=\sum_{k=1}^n|f_k|$、$G:=\sum_{k=1}^\infty|f_k|\in[0,\infty]$ とおく。thm-lp-space-minkowski により $\|G_n\|_p\le\sum_{k\le n}\|f_k\|_p\le S$ である。$G_n^p$ は $G^p$ に増加して収束するので、単調収束定理(Lebesgue積分 の記事の定理「単調収束定理」)により
$$ \int G^p\,d\mu=\lim_{n\to\infty}\int G_n^p\,d\mu\le S^p<\infty $$
である。よって零集合 $N$ の外で $G<\infty$ であり(Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 2)、そこでは級数 $\sum_kf_k(x)$ が絶対収束する。$f:=\lim_ns_n1_{X\setminus N}$ は可測関数の各点の極限なので可測で、$|f|\le G$ から $f\in\mathcal{L}^p(\mu)$ である。
同じ議論を番号 $n+1$ から始まる級数 $\sum_{k>n}f_k$ に当てると、$R_n:=\sum_{k>n}|f_k|$ について $\|R_n\|_p\le\sum_{k>n}\|f_k\|_p$ である。$N$ の外で $|f-s_n|\le R_n$ なので
$$ \|f-s_n\|_p\le\|R_n\|_p\le\sum_{k>n}\|f_k\|_p\xrightarrow[n\to\infty]{}0. $$
$p=\infty$ のとき:零集合を除けば $|f_k(x)|\le\|f_k\|_\infty$ なので、級数は零集合の外で一様に絶対収束する。

詳細

lem-lp-space-esssup により、$N_k:=\{|f_k|>\|f_k\|_\infty\}$ は零集合で、$N:=\bigcup_kN_k$ も零集合である。$N$ の外では $|f_k(x)|\le\|f_k\|_\infty$ なので級数は絶対収束し、$f:=\lim_ns_n1_{X\setminus N}$ について $N$ の外で $|f-s_n|\le\sum_{k>n}\|f_k\|_\infty$ となる。よって $\|f-s_n\|_\infty\le\sum_{k>n}\|f_k\|_\infty\to0$ であり、$N$ の外で $|f|\le S$ なので $f\in\mathcal{L}^\infty(\mu)$ である。


どちらの場合も、$L^p(\mu)$ の絶対収束する級数が $L^p(\mu)$ で収束することが示されたので、Banach空間 の記事の定理「絶対収束する級数による完備性の特徴づけ」により $L^p(\mu)$ は完備である。$\square$

$\mathbb{N}$ 上の数え上げ測度に当てると、$\ell^p$($1\le p\le\infty$)が Banach 空間であることが得られる。$L^p$ で収束する列が各点でも収束するとは限らない(ex-lp-space-typewriter)が、部分列をとれば各点で収束する。

各点収束する部分列

$1\le p<\infty$ とし、$L^p(\mu)$ で $f_n\to f$ とする。このとき部分列 $(f_{n_j})$ で、ほとんどすべての $x$ で $f_{n_j}(x)\to f(x)$ となるものがある。$p=\infty$ なら、部分列をとらなくても、ある零集合の外で $f_n\to f$ は一様収束する。

要点:$\|f_{n_j}-f\|_p<2^{-j}$ となる部分列をとると、$\sum_j|f_{n_j}-f|^p$ の積分が有限になり、ほとんどいたるところで級数の項が $0$ に近づく。

詳しい証明を開く

$\|f_{n_j}-f\|_p<2^{-j}$ となるように $n_1< n_2<\cdots$ を選ぶ。単調収束定理により

$$\int\sum_{j=1}^\infty|f_{n_j}-f|^p\,d\mu=\sum_{j=1}^\infty\|f_{n_j}-f\|_p^p\le\sum_{j=1}^\infty2^{-jp}<\infty$$

なので、ほとんどすべての $x$ で $\sum_j|f_{n_j}(x)-f(x)|^p<\infty$ であり(Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 2)、とくにその項は $0$ に収束する。$p=\infty$ なら、lem-lp-space-esssup により $N_n:=\{|f_n-f|>\|f_n-f\|_\infty\}$ は零集合で、$\bigcup_nN_n$ の外では $\sup|f_n-f|\le\|f_n-f\|_\infty\to0$ である。$\square$

$p$ による包含関係

$L^p$ どうしの包含は測度空間によって向きが変わる。全体の測度が有限なら大きな $p$ の空間ほど小さく、数え上げ測度では逆に小さな $p$ の空間ほど小さい。

有限測度空間での包含

$\mu(X)<\infty$ とし、$1\le p< q\le\infty$ とする。$f\in\mathcal{L}^q(\mu)$ なら $f\in\mathcal{L}^p(\mu)$ であり
$$ \|f\|_p\le\mu(X)^{\frac1p-\frac1q}\,\|f\|_q\qquad\Bigl(q=\infty\text{ のときは }\tfrac1q=0\Bigr). $$
とくに確率空間では $\|f\|_p\le\|f\|_q$ であり、$L^\infty\subset L^q\subset L^p\subset L^1$ である。

$q=\infty$ のとき:ほとんどいたるところ $|f|^p\le\|f\|_\infty^p$ なので $\int|f|^p\le\|f\|_\infty^p\mu(X)$ である。$q<\infty$ のとき:$r:=q/p>1$ とおくと $r'=\frac q{q-p}$ である。thm-lp-space-holder を指数 $r$ で $|f|^p$ と定数関数 $1$ に使うと
$$ \int|f|^p\,d\mu\le\Bigl(\int|f|^{q}\,d\mu\Bigr)^{p/q}\Bigl(\int1\,d\mu\Bigr)^{1/r'}=\|f\|_q^p\,\mu(X)^{1-\frac pq} $$
であり、両辺を $\frac1p$ 乗すると結論を得る。$\square$

数列の空間での包含

$1\le p< q\le\infty$ とする。$x\in\ell^p$ なら $x\in\ell^q$ であり、$\|x\|_q\le\|x\|_p$ である。

各 $k$ で $|x_k|\le(\sum_j|x_j|^p)^{1/p}=\|x\|_p$ なので $\|x\|_\infty\le\|x\|_p$ であり、$q=\infty$ の場合が示された。$q<\infty$ とし、$x\ne0$ として $y:=x/\|x\|_p$ とおく。$|y_k|\le1$ なので $|y_k|^q\le|y_k|^p$ であり、$\sum_k|y_k|^q\le\sum_k|y_k|^p=1$、すなわち $\|y\|_q\le1=\|y\|_p$ である。斉次性から $\|x\|_q\le\|x\|_p$ を得る。$\square$

たとえば $\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度では、どちらの向きの包含もない。

外す条件・逆向き反例成り立たなくなること
測度の有限性$(1,\infty)$ 上で $x^{-1}$、それ以外で $0$ の関数($\mathbb{R}$ 上)$L^2(\mathbb{R})\subset L^1(\mathbb{R})$
数え上げ測度であること$(0,1)$ 上で $x^{-1/2}$、それ以外で $0$ の関数($\mathbb{R}$ 上)$L^1(\mathbb{R})\subset L^2(\mathbb{R})$
包含の向き(有限測度)$(0,1)$ 上の $x^{-1/2}$$L^1(0,1)\subset L^2(0,1)$
包含の向き(数え上げ測度)$x_k=\frac1{k+1}$$\ell^2\subset\ell^1$

各行は ex-lp-space-power と ex-lp-space-sequences で確かめた。$(0,1)$ 上の $x^{-1/2}$ は大きな値を小さな集合でとるので $p$ が大きいと積分が発散し、$(1,\infty)$ 上の $x^{-1}$ はゆっくり減る値を大きな集合でとるので $p$ が小さいと積分が発散する。有限測度は前者だけを許し、数え上げ測度は(各点の測度が $1$ なので)後者だけを許す。

収束のしかたの違い

$L^p$ での収束($\|f_n-f\|_p\to0$)は「積分の意味で近づく」ことであり、各点での収束とは互いに独立である。$[0,1)$ 上の Lebesgue 測度で、$1\le p<\infty$ とする。

外す条件反例成り立たなくなること
各点収束($L^p$ 収束だけを仮定)区間を動く指示関数の列(下の $g_n$)どの点でも各点収束すること
$L^p$ 収束(各点収束だけを仮定)$f_n=n\,1_{(0,1/n)}$$\Vert f_n\Vert_p\to0$
$p<\infty$($p=\infty$ にする)下の $g_n$$L^\infty$ で $0$ に収束すること
関数の同一視$1_{\mathbb{Q}\cap[0,1)}$$\Vert f\Vert_p=0$ なら $f=0$(関数として)
反例:$L^p$ で収束するが各点では収束しない列

$n\ge1$ を $n=2^k+j$($k\ge0$、$0\le j<2^k$)と書き、$g_n:=1_{[j2^{-k},(j+1)2^{-k})}$ とおく。$g_1$ は $[0,1)$、$g_2,g_3$ は $[0,1)$ を 2 等分した区間、$g_4,\dots,g_7$ は 4 等分した区間、…の指示関数であり、区間は $[0,1)$ を左から右へ掃くことを、幅を半分にしながら繰り返す(下の図)。
$\|g_n\|_p=(2^{-k})^{1/p}\to0$ なので、$L^p$ では $g_n\to0$ である。一方、各 $x\in[0,1)$ と各 $k$ について、$x$ を含む幅 $2^{-k}$ の区間がちょうど 1 つあるので、$g_n(x)=1$ となる $n$ は各段 $k$ に 1 つずつ無限にあり、$k\ge1$ の段には $g_n(x)=0$ となる $n$ もある。よって $(g_n(x))$ はどの $x$ でも収束しない。満たす性質は $L^p$ 収束、満たさない性質は各点収束である。cor-lp-space-subsequence のとおり、部分列 $g_{2^k}=1_{[0,2^{-k})}$ は $x>0$ で $0$ に収束する。また $\|g_n\|_\infty=1$ なので、$L^\infty$ では収束しない。

区間を動く指示関数の列 g_1 から g_15。区間の幅は段ごとに半分になり、各段で左端から右端まで動く 区間を動く指示関数の列 g_1 から g_15。区間の幅は段ごとに半分になり、各段で左端から右端まで動く
図では縦に $g_1,\dots,g_{15}$ を並べた。どの点 $x$ の上にも、各段で 1 本ずつ値 $1$ の区間が通る。

反例:各点で収束するが $L^p$ では収束しない列

$f_n:=n\,1_{(0,1/n)}$ は各点で $0$ に収束する($x\le0$ では常に $0$、$x>0$ では $n>1/x$ で $0$)が、$\|f_n\|_p^p=n^p\cdot\frac1n=n^{p-1}\ge1$ なので、$L^p$ で $0$ に収束しない。$L^p$ で他の関数 $f$ に収束することもない。もし収束すれば、cor-lp-space-subsequence により部分列がほとんどいたるところ $f$ に収束するので $f=0$ となり、矛盾するからである。値が小さな集合に集中して「高く細い山」になると、各点では消えても積分は消えない。優収束定理(Lebesgue積分 の記事の定理「優収束定理」)の可積分な優関数の仮定は、この現象を排除する条件である。

稠密性と双対

単関数の稠密性

$1\le p<\infty$ とする。$\mu(\{s\ne0\})<\infty$ を満たす単関数 $s=\sum_{i=1}^mc_i1_{A_i}$($c_i\in F$、$A_i\in\mathcal{F}$)全体は、$L^p(\mu)$ で稠密である。

要点:$f\ge0$ なら、下から増加して近づく単関数の列に優収束定理を使う。一般の $f$ は非負の 4 つの部分に分ける。

詳しい証明を開く

まず $f\ge0$ とする。Lebesgue積分 の記事の補題「単関数による近似」の単関数 $s_n$ は $0\le s_n\le f$、各点で $s_n\to f$ を満たす。$|f-s_n|^p\le f^p$ で $f^p$ は可積分なので、優収束定理(Lebesgue積分 の記事の定理「優収束定理」)により $\|f-s_n\|_p^p=\int|f-s_n|^p\to0$ である。$s_n$ の $0$ でない値の最小値を $c>0$ とすると、$c^p\mu(\{s_n\ne0\})\le\int s_n^p\le\int f^p<\infty$ なので、$\mu(\{s_n\ne0\})<\infty$ である。一般の $f$ は $f=f_1-f_2+i(f_3-f_4)$($f_1=(\operatorname{Re}f)^+$、$f_2=(\operatorname{Re}f)^-$、$f_3=(\operatorname{Im}f)^+$、$f_4=(\operatorname{Im}f)^-$。各 $f_j$ は $0\le f_j\le|f|$ なので $\mathcal{L}^p$ に属する)と分け、各部分を近似して thm-lp-space-minkowski で誤差を足せばよい。$\square$

この命題により、$L^p$ についての多くの主張は、指示関数 $1_A$($\mu(A)<\infty$)で確かめてから線形性と極限で広げられる。有界線形写像が稠密な部分空間の上で決まればその連続な延長は 1 つしかないので、たとえば 畳み込み や Sobolev空間の基本事項 で扱う作用素の評価は、まず扱いやすい関数で示してから $L^p$ 全体へ広げる形で行われる。$p=\infty$ ではこの命題は成り立たない。$\mathbb{R}$ 上の Lebesgue 測度で定数関数 $1$ を考えると、$\mu(\{s\ne0\})<\infty$ の単関数 $s$ は測度無限の集合 $\{s=0\}$ の上で $0$ なので、$\|1-s\|_\infty\ge1$ である。

双対空間

$1< p\le\infty$ で $h\in L^{p'}(\mu)$ なら、thm-lp-space-holder により $\varphi_h(f):=\int fh\,d\mu$ は $L^p(\mu)$ 上の有界線形汎関数で $|\varphi_h(f)|\le\|h\|_{p'}\|f\|_p$ であり、実際 $\|\varphi_h\|=\|h\|_{p'}$ である(Axl20 7.25、p. 206)。さらに $1\le p<\infty$($p=1$ では $\mu$ が σ-有限、すなわち $X$ が測度有限の集合の可算個の和であることを仮定する)なら、$L^p(\mu)$ 上の有界線形汎関数はすべてある $h\in L^{p'}(\mu)$ によって $\varphi_h$ と書け、$h\mapsto\varphi_h$ は $L^{p'}(\mu)$ から双対空間 $L^p(\mu)'$ へのノルムを保つ線形な全単射である(Axl20 9.42、p. 275。証明には Radon–Nikodym の定理を使うので、この記事では割愛する)。$p=2$ では、これは Hilbert 空間の Rieszの表現定理 の場合にあたる($\langle f,\overline h\rangle=\int fh$)。

補足

冒頭で「$p$ を大きくするほど大きな値をとる所を重く見る」と述べたことは、次の極限で正確になる。

$p\to\infty$ の極限

ある $1\le p_0<\infty$ について $f\in\mathcal{L}^{p_0}(\mu)\cap\mathcal{L}^\infty(\mu)$ なら、$\displaystyle\lim_{p\to\infty}\|f\|_p=\|f\|_\infty$ である。

要点:上からは $|f|^p\le\|f\|_\infty^{p-p_0}|f|^{p_0}$ で、下からは $t<\|f\|_\infty$ について $\|f\|_p\ge t\,\mu(\{|f|>t\})^{1/p}$ で押さえる。

詳しい証明を開く

$M:=\|f\|_\infty$ とおき、$M>0$ とする($M=0$ なら $f=0$(ほとんどいたるところ)ですべての $\|f\|_p$ が $0$)。$p\ge p_0$ なら、ほとんどいたるところ $|f|^p\le M^{p-p_0}|f|^{p_0}$ なので $\|f\|_p\le M^{1-p_0/p}\|f\|_{p_0}^{p_0/p}$ であり、右辺は $p\to\infty$ で $M$ に収束する。逆に $0< t< M$ をとると、$A:=\{|f|>t\}$ は本質的上限の定義から零集合でなく、Lebesgue積分 の記事の補題「零集合と積分」の 1(Markov の不等式)から $\mu(A)\le t^{-p_0}\|f\|_{p_0}^{p_0}<\infty$ である。$\|f\|_p\ge t\,\mu(A)^{1/p}$ で $0<\mu(A)<\infty$ なので右辺は $t$ に収束する。よって $t\le\liminf_p\|f\|_p\le\limsup_p\|f\|_p\le M$ であり、$t\uparrow M$ として結論を得る。$\square$

仮定 $f\in\mathcal{L}^{p_0}$ は外せない。$\mathbb{R}$ 上の定数関数 $1$ は $\|1\|_\infty=1$ だが、すべての $p<\infty$ で $\|1\|_p=\infty$ である。

文献

$\|\cdot\|_p$ と本質的上限の定義は Axl20 Definition 7.1(p. 194)、$L^p(\mu)$ と $\ell^p$ は 7.3・7.4(pp. 194–195)、Young の不等式は 7.8、Hölder の不等式は 7.9(p. 196)、有限測度での包含は 7.10(p. 197)、Minkowski の不等式は 7.14(p. 199)、ほとんどいたるところ等しい関数の同一視は 7.16・7.17(pp. 202–203)、完備性は 7.20・7.24(pp. 204–205)、各点収束する部分列は 7.23(p. 205)にある。本記事の証明はこれらを本記事の記号で書き直したもので、完備性は Banach空間 の記事の級数による特徴づけを経由して示した。

関連項目

参考文献

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