連接層

同義語:coherent sheaf連接加群層

概要

連接層(coherent sheaf)とは、環付き空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ 上の $\mathcal{O}_X$ 加群層のうち、局所的に有限個の切断で生成され(有限型)、かつ任意の有限個の切断の間の関係の層 $\ker(\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U)$ がつねに有限型であるものをいう。射の核・像・余核と拡大はふたたび連接であり、連接層の全体はアーベル圏をなす。局所 Noether スキーム上では、連接層は有限型の準連接層、すなわち各アフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ 上で有限生成 $A$ 加群 $M$ に付随する層 $\widetilde{M}$ と同じものであり、構造層・局所自由層・イデアル層がその例である。射影スキーム上では十分ひねればコホモロジーが消え、固有射の高次順像は連接である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 環付き空間, 層, 加群, スキーム, 準連接層, Noether環

定義

連接層は、環付き空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ 上の $\mathcal{O}_X$ 加群の層($\mathcal{O}_X$ 加群層)のうち、局所的に有限個の切断で生成され、しかも切断の間の関係もまた局所的に有限個で尽きるものである。スキームの上では「有限型の準連接層」と言い換えられるが、一般の環付き空間ではそうではないので、まず Serre と Grothendieck による一般の定義を述べ、次にスキームの場合の言い換えを述べる。

有限型と有限表示の加群層

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間、$\mathcal{F}$ を $\mathcal{O}_X$ 加群層とする。

  1. $\mathcal{F}$ が有限型(of finite type)であるとは、$X$ の各点 $x$ に対して、$x$ の開近傍 $U$ と自然数 $n$ と $\mathcal{O}_U$ 加群層の全射 $\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ が存在することをいう。ここで $\mathcal{O}_U=\mathcal{O}_X|_U$ であり、層の射が全射であるとは各点の茎で全射であることをいう。
  2. $\mathcal{F}$ が局所有限表示(locally of finite presentation)であるとは、各点 $x$ に対して、開近傍 $U$ と自然数 $m,n$ と $\mathcal{O}_U$ 加群層の完全列
    $$ \mathcal{O}_U^{\oplus m}\longrightarrow\mathcal{O}_U^{\oplus n}\longrightarrow\mathcal{F}|_U\longrightarrow 0 $$
    が存在することをいう。

射 $\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ を与えることは $n$ 個の切断 $s_1,\dots,s_n\in\mathcal{F}(U)$ を与えることと同じであり、その全射性は各点 $y\in U$ の茎 $\mathcal{F}_y$ が $s_i$ の芽で $\mathcal{O}_{X,y}$ 加群として生成されることを意味する。その核は関係の層 $\{(a_1,\dots,a_n)\mid\sum a_is_i=0\}$ である。局所有限表示は、生成元の間の関係の層が局所的に有限型であることを要求する。連接性はこれを「任意の有限個の切断の間の関係」に強めたものである。

連接層の定義

環付き空間 $(X,\mathcal{O}_X)$ 上の $\mathcal{O}_X$ 加群層 $\mathcal{F}$ が連接(coherent)である、または連接層(coherent sheaf)であるとは、次の 2 条件をみたすことをいう。

  1. $\mathcal{F}$ は有限型である。
  2. 任意の開集合 $U\subset X$、任意の自然数 $n$、任意の $\mathcal{O}_U$ 加群層の射 $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ に対して、核 $\ker u$ は有限型の $\mathcal{O}_U$ 加群層である。
    連接層のなす $\mathcal{O}_X$ 加群層の圏の充満部分圏を $\operatorname{Coh}(X)$ と書く。

条件 2 は $u$ の全射性を仮定しない点が局所有限表示との違いである。どちらの条件も局所的なので、連接性は局所的な性質である。すなわち開被覆の各開集合への制限が連接なら連接であり、逆に連接層の開集合 $U$ への制限 $\mathcal{F}|_U$ は $\mathcal{O}_U$ 加群層として連接である。
スキームの上では次の言い換えがある。以下 $\widetilde{M}$ はアフィンスキーム $\operatorname{Spec}A$ 上で $A$ 加群 $M$ に付随する準連接層($D(f)$ 上の切断が局所化 $M_f$)を表す(準連接層)。

Noetherスキーム上の連接層

$X$ を局所Noetherスキーム(各点が Noether環のスペクトルと同型な開近傍をもつスキーム)とする。$\mathcal{O}_X$ 加群層 $\mathcal{F}$ について次は同値であり(thm-coherent-sheaf-noetherian)、これをみたす $\mathcal{F}$ を $X$ 上の連接層という。

  1. $\mathcal{F}$ は def-coherent-sheaf の意味で連接である。
  2. $\mathcal{F}$ は準連接層であり、かつ有限型である。
  3. $X$ の任意のアフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}A$ について、有限生成加群 $M$ があって $\mathcal{F}|_U\cong\widetilde{M}$ となる。
  4. $X$ のあるアフィン開被覆 $X=\bigcup_iU_i$、$U_i=\operatorname{Spec}A_i$ について、有限生成 $A_i$ 加群 $M_i$ があって $\mathcal{F}|_{U_i}\cong\widetilde{M_i}$ となる。

Hartshorne Har77 II.5 は条件 3・4 の形を定義として採用している。Noether でない一般のスキームでは条件 1 と条件 2 は同値ではなく(ex-coherent-sheaf-noncoherent-structure)、Grothendieck EGA1 0.5.3 の定義は条件 1 である。

直感

$\mathcal{O}_X$ 加群層は、空間 $X$ の各点の上に「環 $\mathcal{O}_{X,x}$ 上の加群」をのせて連続的に貼り合わせたものである。連接層は、そのうち「有限の情報で決まる」ものである。有限型は「各点の近くで有限個の切断が全体を生成する」こと、連接はさらに「どの有限個の切断をとっても、それらの間の関係が有限個で書き尽くせる」ことを要求する。この 2 番目の条件のおかげで、連接層の射の核・余核・像がふたたび連接になり、連接層の全体がアーベル圏をなす。有限型だけでは核が有限型にならないことがある(ex-coherent-sheaf-noncoherent-structure)。
Noether スキーム(Noetherスキーム)の上では、連接層とは「有限生成加群を貼り合わせたもの」にほかならない。射影多様体の上では、連接層は有限個の $\mathcal{O}(-n)$ の直和の商として書け(Serre の定理、thm-coherent-sheaf-serre)、そのコホモロジーは有限次元になる(thm-coherent-sheaf-proper)。この有限性が、層コホモロジーを用いる代数幾何のほとんどすべての計算の土台である。

例と反例

Noether スキームの構造層と局所自由層

$X$ を局所 Noether スキームとする。構造層 $\mathcal{O}_X$ は連接である。実際、アフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}A$ 上で $\mathcal{O}_X|_U=\widetilde{A}$ であり、$A$ は $A$ 加群として 1 個の元 $1$ で生成されるので、def-coherent-sheaf-noetherian の条件 3 をみたす。より一般に、有限階数の局所自由層 $\mathcal{E}$(各点の近傍で $\mathcal{O}_U^{\oplus r}$ と同型)は連接である。アフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ の基本開集合 $D(f)=\operatorname{Spec}A_f$ で $\mathcal{E}$ が自由になるものの全体は $X$ のアフィン開被覆をなし、その上で $\mathcal{E}\cong\widetilde{A_f^{\oplus r}}$ だから、条件 4 をみたす。とくに可逆層、射影空間 $\mathbb{P}^n_A$ 上の $\mathcal{O}(d)$、体 $k$ 上有限型の滑らかなスキームの Kähler微分の層 $\Omega^1_{X/k}$ とその外積 $\Omega^p_{X/k}$ は連接である。滑らかでなくても、$k$ 上有限型のスキーム $X$ の $\Omega^1_{X/k}$ は連接である。実際 $U=\operatorname{Spec}A$、$A=k[x_1,\dots,x_n]/I$ のとき $\Omega^1_{X/k}|_U=\widetilde{\Omega_{A/k}}$ で、$\Omega_{A/k}$ は $dx_1,\dots,dx_n$ で生成される(Har77 II.8)。

閉部分スキームのイデアル層と押し出し

$X$ を局所 Noether スキーム、$i\colon Z\hookrightarrow X$ を閉部分スキームとし、$\mathcal{I}_Z\subset\mathcal{O}_X$ をそのイデアル層(全射 $\mathcal{O}_X\to i_*\mathcal{O}_Z$ の核)とする。$\mathcal{I}_Z$ は連接である。実際、$\mathcal{I}_Z$ は準連接であり(Har77 II.5.9)、アフィン開集合 $U=\operatorname{Spec}A$ 上で $\mathcal{I}_Z|_U=\widetilde{I}$($I\subset A$ はイデアル)と書け、$A$ が Noether 環なので $I$ は有限生成である。同様に $i_*\mathcal{O}_Z=\widetilde{A/I}$ も連接である。より一般に、$Z$ 上の連接層 $\mathcal{G}$ の押し出し $i_*\mathcal{G}$ は $X$ 上連接である。$\mathcal{G}|_{Z\cap U}=\widetilde{N}$($N$ は有限生成 $A/I$ 加群)とすると $i_*\mathcal{G}|_U=\widetilde{N}$($N$ を $A$ 加群とみる)であり、$N$ は $A$ 加群としても有限生成だからである。同じ理由で、有限射 $f\colon Y\to X$ と $Y$ 上の連接層 $\mathcal{G}$ に対して $f_*\mathcal{G}$ は連接である($f^{-1}(U)=\operatorname{Spec}B$ で $B$ は有限生成 $A$ 加群であり、有限生成 $B$ 加群は有限生成 $A$ 加群になる)。

反例:有限型でない準連接層

$X$ を空でないスキームとし、$\mathcal{F}:=\bigoplus_{n\in\mathbb{N}}\mathcal{O}_X$(可算無限個の構造層の直和)とおく。$\mathcal{F}$ は準連接である(アフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ 上で $\widetilde{A^{\oplus\mathbb{N}}}$ であり、$\widetilde{\ }$ は直和と交換する)が、有限型ではなく、したがって連接でもない。実際 prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により、$\mathcal{F}|_{\operatorname{Spec}A}$ が有限型なら $A^{\oplus\mathbb{N}}$ は有限生成 $A$ 加群になる。しかし $A\neq0$ の極大イデアル $\mathfrak{m}$ をとると、$A^{\oplus\mathbb{N}}\otimes_AA/\mathfrak{m}=(A/\mathfrak{m})^{\oplus\mathbb{N}}$ は $A/\mathfrak{m}$ 上の無限次元ベクトル空間であり、有限生成加群の底変換は有限生成だから矛盾する。この例は、準連接が連接を含意しないこと、すなわち def-coherent-sheaf-noetherian の条件 2 で有限型の仮定を外せないことを示す。
有限型でない準連接層は開部分スキームからの押し出しとしても現れる。$X=\mathbb{A}^1_k=\operatorname{Spec}k[x]$、$U=D(x)$、$j\colon U\hookrightarrow X$ を開埋め込みとすると、$j_*\mathcal{O}_U=\widetilde{k[x,x^{-1}]}$ は準連接だが、$k[x,x^{-1}]$ は $k[x]$ 加群として有限生成でない(有限個の元 $g_1,\dots,g_r$ の分母の次数の最大値を $N$ とすると、$k[x]$ 係数の一次結合の分母の次数は $N$ 以下であり $x^{-N-1}$ が書けない)。よって $j_*\mathcal{O}_U$ は有限型でなく、連接でない。固有射でない射による押し出しは連接性を保たない(thm-coherent-sheaf-proper の「固有」の仮定が必要である)。

反例:構造層が連接でない環付き空間

局所 Noether の仮定を外すと、スキームの構造層 $\mathcal{O}_X$ でさえ連接とは限らない。$k$ を体とし、可算無限個の変数の多項式環を
$$ A:=k[x,y_1,y_2,y_3,\dots]/(xy_1,xy_2,xy_3,\dots),\qquad X:=\operatorname{Spec}A $$
とおく。$\mathcal{O}_X=\widetilde{A}$ は 1 個の切断 $1$ で生成されるので有限型であり、準連接である。しかし連接ではない。実際、$x$ 倍写像 $u\colon\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_X$ を考えると、$\widetilde{\ }$ が完全関手であることから $\ker u=\widetilde{J}$、$J:=\{a\in A\mid xa=0\}$ である。$A$ は単項式 $x^ay_1^{b_1}\cdots y_r^{b_r}$ のうち「$a\ge1$ なら $b_1=\dots=b_r=0$」をみたすものを $k$ 上の基底にもち、$x$ 倍で $0$ になる単項式はある $b_i\ge1$ をもつものだから、$J$ は $y_1,y_2,\dots$ で生成されるイデアルである。$J$ が有限生成なら有限個の $y_1,\dots,y_r$ で生成されるが、$A\to A/(x)=k[y_1,y_2,\dots]$ での像を考えると、イデアル $(y_1,y_2,\dots)$ が $y_1,\dots,y_r$ で生成されることになり、$y_{r+1}$ がその元でない($y_1=\dots=y_r=0$ を代入すると $y_{r+1}\neq0$ が残る)ことに矛盾する。よって $J$ は有限生成でなく、prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により $\ker u$ は有限型でない。これは def-coherent-sheaf の条件 2 を破る。
この例では $\mathcal{O}_X$ は有限型かつ準連接だが連接ではない。すなわち def-coherent-sheaf-noetherian の条件 1 と条件 2 の同値性は Noether の仮定なしには成り立たない。逆に $\mathcal{O}_X$ が連接なスキームでは、任意のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ で $A$ の任意の有限生成イデアル $I=(a_1,\dots,a_n)$ は有限表示加群である($(a_1,\dots,a_n)$ が定める $\mathcal{O}^{\oplus n}\to\mathcal{O}$ の核が有限型だから、prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により関係の加群が有限生成)。このような環を連接環という。

解析空間と可微分多様体

複素解析空間(とくに複素多様体)$X$ の正則関数の層 $\mathcal{O}_X$ は連接である。これは Oka の連接定理であり、Weierstrassの予備定理を用いて証明される(GR84 第 2 章)。この事実のおかげで、複素解析幾何でも連接層(連接解析層)の理論が代数幾何と並行して展開でき、射影的な場合には両者が一致する(GAGA)。一方、可微分多様体の $C^\infty$ 関数の層 $\mathcal{E}$ は連接でない。たとえば $\mathbb{R}$ 上で、$x\le0$ で $0$、$x>0$ で $e^{-1/x}$ となる $C^\infty$ 関数 $f$ による掛け算 $\mathcal{E}\to\mathcal{E}$ の核は、原点の近傍で有限型にならない(Mal66。本記事はこの証明を確かめておらず、引用にとどめる)。連接性は「解析的・代数的」な世界に固有の有限性である。

性質

核・余核・拡大で閉じること

一般の環付き空間で成り立つ基本性質を先に示す。以下、$\mathcal{O}_X$ 加群層の射の核・像・余核はすべて層の圏でとる。

有限型の像と部分層

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間とする。

  1. 有限型の $\mathcal{O}_X$ 加群層 $\mathcal{F}$ から $\mathcal{G}$ への射 $v\colon\mathcal{F}\to\mathcal{G}$ の像 $v(\mathcal{F})$ は有限型である。とくに有限型の層の商は有限型である。
  2. $\mathcal{F}$ が連接で $\mathcal{G}\subset\mathcal{F}$ が有限型の部分層なら、$\mathcal{G}$ は連接である。
  3. 有限個の連接層の直和は連接である。
定義からの確認
  1. 各点の近傍 $U$ で全射 $\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ をとると、合成 $\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U\to v(\mathcal{F})|_U$ は茎で全射である。
  2. $\mathcal{G}$ は仮定により有限型である。開集合 $U$ と射 $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{G}|_U$ に対し、包含 $\mathcal{G}\subset\mathcal{F}$ との合成 $u'\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ は $u$ と同じ核をもつ。$\mathcal{F}$ の連接性から $\ker u=\ker u'$ は有限型である。
  3. 2 個の場合を示せばよい。$\mathcal{F}_1,\mathcal{F}_2$ が連接なら、thm-coherent-sheaf-closure を分裂完全列 $0\to\mathcal{F}_1\to\mathcal{F}_1\oplus\mathcal{F}_2\to\mathcal{F}_2\to0$ に適用すればよい。その証明(場合 1)は本補題の 1 だけを使うので循環しない。$\square$
連接層の 2 out of 3

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間、
$$ 0\longrightarrow\mathcal{F}'\xrightarrow{\ \alpha\ }\mathcal{F}\xrightarrow{\ \beta\ }\mathcal{F}''\longrightarrow0 $$
を $\mathcal{O}_X$ 加群層の短完全列とする。$\mathcal{F}',\mathcal{F},\mathcal{F}''$ のうち 2 つが連接なら、残りの 1 つも連接である。

3 つの場合に分けた証明

層の射が全射であることと、切断が局所的に持ち上がることが同値であることを繰り返し使う。条件はすべて局所的なので、必要に応じて開集合を縮める。
場合 1:$\mathcal{F}'$ と $\mathcal{F}''$ が連接ならば $\mathcal{F}$ は連接である。
有限型であること:点 $x$ の近傍 $U$ で、$\mathcal{F}''|_U$ の生成元 $s_1,\dots,s_p\in\mathcal{F}''(U)$ と $\mathcal{F}'|_U$ の生成元 $r_1,\dots,r_q\in\mathcal{F}'(U)$ をとる。$\beta$ は全射なので、$U$ を縮めて各 $s_i$ を $t_i\in\mathcal{F}(U)$ に持ち上げられる。各点 $y\in U$ で $\mathcal{F}'_y\to\mathcal{F}_y\to\mathcal{F}''_y\to0$ は完全だから、$m\in\mathcal{F}_y$ に対し $\beta(m)=\sum a_is_i$ と書け、$m-\sum a_it_i$ は $\beta$ で $0$ に写るので $\alpha(r_j)$ の芽の一次結合である。よって $t_1,\dots,t_p,\alpha(r_1),\dots,\alpha(r_q)$ は $\mathcal{F}|_U$ を生成する。
核の条件:開集合 $U$ と $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ をとる。$v:=\beta\circ u$ の核 $\mathcal{K}$ は $\mathcal{F}''$ の連接性により有限型なので、点 $x\in U$ の近傍 $V$ で全射 $\pi\colon\mathcal{O}_V^{\oplus m}\to\mathcal{K}|_V$ がとれる。合成 $w\colon\mathcal{O}_V^{\oplus m}\xrightarrow{\pi}\mathcal{K}|_V\subset\mathcal{O}_V^{\oplus n}\xrightarrow{u}\mathcal{F}|_V$ は $\beta\circ w=v\circ\pi=0$ をみたすので、その像は $\ker\beta=\alpha(\mathcal{F}')$ に含まれ、$\alpha$ が単射だから $\alpha\circ w'=w$ となる $w'\colon\mathcal{O}_V^{\oplus m}\to\mathcal{F}'|_V$ が定まる。$\mathcal{F}'$ の連接性により $\ker w'=\ker w$ は有限型である。ここで $\ker(u|_V)=\pi(\ker w)$ である。実際 $\pi(\ker w)\subset\ker u$ は $u\circ\pi=w$ から明らかであり、逆に $s$ を $\ker u$ の局所切断とすると $v(s)=0$ なので $s$ は $\mathcal{K}$ の切断であり、$\pi$ の全射性により局所的に $s=\pi(t)$ と書け、$w(t)=u(s)=0$ だから $t$ は $\ker w$ の切断である。よって $\ker(u|_V)$ は有限型の層 $\ker w$ の像として有限型(lem-coherent-sheaf-image の 1)であり、このような $V$ は $U$ を被覆するので $\ker u$ は有限型である。
場合 2:$\mathcal{F}$ と $\mathcal{F}''$ が連接ならば $\mathcal{F}'$ は連接である。
$\alpha$ により $\mathcal{F}'=\ker\beta\subset\mathcal{F}$ とみなす。lem-coherent-sheaf-image の 2 により、$\mathcal{F}'$ が有限型であることを示せばよい。点 $x$ の近傍 $U$ で全射 $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ をとると、$\mathcal{K}:=\ker(\beta\circ u)$ は $\mathcal{F}''$ の連接性により有限型である。$u(\mathcal{K})\subset\ker\beta=\mathcal{F}'$ は明らかであり、逆に $\mathcal{F}'|_U$ の局所切断 $s$ は $u$ の全射性により局所的に $s=u(t)$ と書け、$\beta(u(t))=\beta(s)=0$ だから $t$ は $\mathcal{K}$ の切断である。よって $\mathcal{F}'|_U=u(\mathcal{K})$ は有限型の層の像として有限型である。
場合 3:$\mathcal{F}'$ と $\mathcal{F}$ が連接ならば $\mathcal{F}''$ は連接である。
$\mathcal{F}''$ は有限型の層 $\mathcal{F}$ の商なので有限型である。開集合 $U$ と $v\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}''|_U$ をとり、$v$ を定める切断を $s_1,\dots,s_n\in\mathcal{F}''(U)$ とする。点 $x\in U$ の近傍 $V$ で各 $s_i$ を $t_i\in\mathcal{F}(V)$ に持ち上げ、$t_1,\dots,t_n$ が定める射を $u\colon\mathcal{O}_V^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_V$ とする($\beta\circ u=v|_V$)。さらに $V$ を縮めて全射 $w\colon\mathcal{O}_V^{\oplus m}\to\mathcal{F}'|_V$ をとり、
$$ \theta\colon\mathcal{O}_V^{\oplus n}\oplus\mathcal{O}_V^{\oplus m}\to\mathcal{F}|_V,\qquad(a,b)\mapsto u(a)+\alpha(w(b)) $$
とおく。$\mathcal{F}$ の連接性により $\mathcal{L}:=\ker\theta$ は有限型である。第 1 成分への射影を $\operatorname{pr}_1$ とすると $\ker(v|_V)=\operatorname{pr}_1(\mathcal{L})$ である。実際 $(a,b)$ が $\mathcal{L}$ の切断なら $u(a)=-\alpha(w(b))$ は $\ker\beta$ に入るので $v(a)=\beta(u(a))=0$ である。逆に $a$ が $\ker v$ の局所切断なら $\beta(u(a))=0$ だから $u(a)$ は $\alpha(\mathcal{F}')$ の切断であり、$w$ の全射性により局所的に $u(a)=\alpha(w(b))$ となる $b$ がとれ、$\theta(a,-b)=0$、$a=\operatorname{pr}_1(a,-b)$ である。よって $\ker(v|_V)$ は有限型の層 $\mathcal{L}$ の像として有限型であり、$\ker v$ は有限型である。$\square$

連接層の射の核・像・余核

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間、$u\colon\mathcal{F}\to\mathcal{G}$ を連接層の間の射とする。このとき $\ker u$、$u(\mathcal{F})$、$\operatorname{coker}u$ はすべて連接である。したがって $\operatorname{Coh}(X)$ は $\mathcal{O}_X$ 加群層のアーベル圏の、有限直和・核・余核で閉じた充満部分圏であり、それ自身アーベル圏である。

定理の適用

$u(\mathcal{F})$ は有限型の層 $\mathcal{F}$ の像なので有限型であり(lem-coherent-sheaf-image の 1)、連接層 $\mathcal{G}$ の有限型部分層なので連接である(同 2)。短完全列 $0\to\ker u\to\mathcal{F}\to u(\mathcal{F})\to0$ に thm-coherent-sheaf-closure の場合 2 を適用して $\ker u$ が連接、$0\to u(\mathcal{F})\to\mathcal{G}\to\operatorname{coker}u\to0$ に場合 3 を適用して $\operatorname{coker}u$ が連接である。有限直和は lem-coherent-sheaf-image の 3 による。$\mathcal{O}_X$ 加群層の圏での核・余核がそのまま $\operatorname{Coh}(X)$ の核・余核になるので、アーベル圏の公理は大きい圏から遺伝する。$\square$

連接性と有限表示

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間とする。

  1. 連接な $\mathcal{O}_X$ 加群層は局所有限表示である。
  2. 構造層 $\mathcal{O}_X$ が連接ならば、逆に局所有限表示の $\mathcal{O}_X$ 加群層は連接である。すなわちこのとき「連接」と「局所有限表示」は同値である。
有限表示との比較
  1. $\mathcal{F}$ を連接とする。点 $x$ の近傍 $U$ で全射 $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U$ をとると $\ker u$ は有限型だから、$U$ を縮めて全射 $\mathcal{O}_U^{\oplus m}\to\ker u$ がとれ、$\mathcal{O}_U^{\oplus m}\to\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U\to0$ は完全である。
  2. $\mathcal{O}_X$ が連接なら $\mathcal{O}_U^{\oplus n}$ は連接である(lem-coherent-sheaf-image の 3)。局所有限表示 $\mathcal{O}_U^{\oplus m}\xrightarrow{\varphi}\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U\to0$ において、$\mathcal{F}|_U\cong\operatorname{coker}\varphi$ は連接層の間の射の余核なので、cor-coherent-sheaf-abelian により連接である。連接性は局所的なので $\mathcal{F}$ は連接である。$\square$
テンソル積と内部 Hom

$(X,\mathcal{O}_X)$ を構造層が連接な環付き空間(たとえば局所 Noether スキーム、thm-coherent-sheaf-noetherian)とし、$\mathcal{F},\mathcal{G}$ を連接層とする。このときテンソル積 $\mathcal{F}\otimes_{\mathcal{O}_X}\mathcal{G}$ と内部Hom $\mathcal{H}om_{\mathcal{O}_X}(\mathcal{F},\mathcal{G})$ は連接である。

有限表示の利用

点 $x$ の近傍 $U$ で有限表示 $\mathcal{O}_U^{\oplus m}\xrightarrow{\varphi}\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U\to0$ をとる(prop-coherent-sheaf-presentation)。テンソル積は右完全(右完全関手)なので
$$ \mathcal{G}|_U^{\oplus m}\xrightarrow{\varphi\otimes1}\mathcal{G}|_U^{\oplus n}\longrightarrow(\mathcal{F}\otimes\mathcal{G})|_U\longrightarrow0 $$
は完全であり、$(\mathcal{F}\otimes\mathcal{G})|_U$ は連接層の間の射 $\varphi\otimes1$ の余核として連接である(cor-coherent-sheaf-abelian)。$\mathcal{H}om(-,\mathcal{G})$ は左完全(左完全関手)なので
$$ 0\longrightarrow\mathcal{H}om(\mathcal{F},\mathcal{G})|_U\longrightarrow\mathcal{G}|_U^{\oplus n}\xrightarrow{\ \varphi^*\ }\mathcal{G}|_U^{\oplus m} $$
は完全であり、$\mathcal{H}om(\mathcal{F},\mathcal{G})|_U$ は連接層の間の射 $\varphi^*$ の核として連接である。どちらも局所的な主張なので、$X$ 全体で連接である。$\square$

台と茎

$(X,\mathcal{O}_X)$ を環付き空間、$\mathcal{F}$ を有限型の $\mathcal{O}_X$ 加群層とする。

  1. 台(台(層))$\operatorname{Supp}\mathcal{F}:=\{x\in X\mid\mathcal{F}_x\neq0\}$ は $X$ の閉集合である。
  2. 各点 $x$ で茎 $\mathcal{F}_x$ は有限生成 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群である。
  3. $(X,\mathcal{O}_X)$ が局所環付き空間で、$\kappa(x)$ を $\mathcal{O}_{X,x}$ の剰余体とする。$\mathcal{F}_x\otimes_{\mathcal{O}_{X,x}}\kappa(x)=0$ ならば、$x$ のある近傍 $V$ で $\mathcal{F}|_V=0$ である。
生成元の芽による議論

点 $x$ の近傍 $U$ で $\mathcal{F}|_U$ が切断 $s_1,\dots,s_n\in\mathcal{F}(U)$ で生成されているとする。2 は、$\mathcal{F}_x$ が $s_1,\dots,s_n$ の芽で生成されることから直ちに従う。1 を示す。$\mathcal{F}_x=0$ とすると、各 $s_i$ の $x$ での芽は $0$ なので、$x$ の近傍 $V\subset U$ で $s_i|_V=0$($i=1,\dots,n$)となる。$V$ の各点 $y$ で $\mathcal{F}_y$ は $s_i$ の芽で生成されるから $\mathcal{F}_y=0$ であり、$V\cap\operatorname{Supp}\mathcal{F}=\emptyset$ である。よって台の補集合は開である。3 は、$\mathcal{F}_x\otimes\kappa(x)=\mathcal{F}_x/\mathfrak{m}_x\mathcal{F}_x=0$ と $\mathcal{F}_x$ の有限生成性から Nakayamaの補題により $\mathcal{F}_x=0$ となり、1 の議論により $x$ の近傍で $\mathcal{F}=0$ となることによる。$\square$

アフィンスキームと Noether スキームの場合

以下、$A$ を可換環、$X=\operatorname{Spec}A$ とし、$A$ 加群 $M$ に付随する準連接層を $\widetilde{M}$ と書く。使う事実は次の 3 つである(準連接層、Har77 II.5.1、II.5.4、II.5.5)。(a) $\Gamma(D(f),\widetilde{M})=M_f$ であり、$\widetilde{M}$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ での茎は $M_{\mathfrak{p}}$ である。(b) $M\mapsto\widetilde{M}$ は $A$ 加群の圏から $\mathcal{O}_X$ 加群層の圏への完全かつ充満忠実(充満忠実関手)な関手であり、直和と交換する。(c) $X$ 上の準連接層 $\mathcal{F}$ は $\mathcal{F}\cong\widetilde{\Gamma(X,\mathcal{F})}$ をみたす。

アフィンスキーム上の有限型

$M$ を $A$ 加群とする。$\widetilde{M}$ が $\operatorname{Spec}A$ 上で有限型であることと、$M$ が有限生成 $A$ 加群であることは同値である。

基本開集合と局所化

$M$ が $m_1,\dots,m_n$ で生成されるなら、全射 $A^{\oplus n}\to M$ に (b) を適用して全射 $\mathcal{O}_X^{\oplus n}\to\widetilde{M}$ を得るので、$\widetilde{M}$ は有限型である。
逆に $\widetilde{M}$ が有限型とする。基本開集合は位相の開基をなすので、各点 $\mathfrak{p}$ について $D(f)\ni\mathfrak{p}$ と全射 $\mathcal{O}_{D(f)}^{\oplus n}\to\widetilde{M}|_{D(f)}$ がある。(a) により、この射は $M_f$ の $n$ 個の元 $m_1/f^k,\dots,m_n/f^k$($m_i\in M$)で定まり、全射性は $D(f)$ の各点 $\mathfrak{q}$ で茎 $M_{\mathfrak{q}}$ がこれらの像で生成されることを意味する。$f\notin\mathfrak{q}$ より $f$ は $M_{\mathfrak{q}}$ 上で可逆だから、$M_{\mathfrak{q}}$ は $m_1,\dots,m_n$ の像で生成される。$X$ は準コンパクトなので、このような $D(f_1),\dots,D(f_r)$ が $X$ を被覆する。各 $D(f_j)$ でとった有限個の元をすべて集めた有限集合が生成する部分加群を $N\subset M$ とすると、任意の素イデアル $\mathfrak{q}$ はある $D(f_j)$ に属するので $N_{\mathfrak{q}}=M_{\mathfrak{q}}$、すなわち $(M/N)_{\mathfrak{q}}=0$ である。すべての素イデアルでの局所化が $0$ になる加群は $0$ である。実際 $m\in M/N$ が $0$ でなければ、その零化イデアル $\operatorname{Ann}(m)$ は真のイデアルであり、それを含む極大イデアル $\mathfrak{q}$ をとると $sm=0$ となる $s\notin\mathfrak{q}$ が存在しないので、$(M/N)_{\mathfrak{q}}$ での $m/1$ は $0$ でない。よって $M=N$ は有限生成である。$\square$

Noether 環上の有限生成加群の連接性

$A$ を Noether 環、$M$ を有限生成 $A$ 加群とすると、$\widetilde{M}$ は $\operatorname{Spec}A$ 上の連接層である。

核の局所化

$\widetilde{M}$ は prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により有限型である。開集合 $U\subset X$ と射 $u\colon\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\widetilde{M}|_U$ をとる。$U$ は基本開集合 $D(f)$ で被覆されるので、各 $D(f)\subset U$ 上で $\ker u$ が有限型であることを示せばよい。$D(f)=\operatorname{Spec}A_f$ であり、$\mathcal{O}_U^{\oplus n}|_{D(f)}=\widetilde{A_f^{\oplus n}}$、$\widetilde{M}|_{D(f)}=\widetilde{M_f}$($A_f$ 加群として)である。(b) を環 $A_f$ に適用すると、$u|_{D(f)}=\widetilde{\varphi}$ となる $A_f$ 線形写像 $\varphi\colon A_f^{\oplus n}\to M_f$ がただ一つ存在し、$\widetilde{\ }$ の完全性から $\ker(u|_{D(f)})=\widetilde{\ker\varphi}$ である。$A_f$ は Noether 環(Noether 環の局所化)だから $A_f^{\oplus n}$ は Noether加群であり、その部分加群 $\ker\varphi$ は有限生成である。よって prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により $\widetilde{\ker\varphi}$ は有限型である。$\square$

Noether スキーム上の連接層の特徴づけ

$X$ を局所 Noether スキームとする。$\mathcal{O}_X$ 加群層 $\mathcal{F}$ について、def-coherent-sheaf-noetherian の 4 条件(連接/準連接かつ有限型/任意のアフィン開集合上で有限生成加群に付随/あるアフィン開被覆上で有限生成加群に付随)は同値である。とくに $\mathcal{O}_X$ は連接である。

4 条件の巡回

条件の番号は def-coherent-sheaf-noetherian のものである。局所 Noether スキームの任意のアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ で $A$ は Noether 環であることを使う(Har77 II.3.2)。
(3) $\Rightarrow$ (4) は明らかである。(4) $\Rightarrow$ (1):連接性は局所的な性質だから、被覆の各 $U_i=\operatorname{Spec}A_i$ で $\mathcal{F}|_{U_i}\cong\widetilde{M_i}$ が連接であればよく、$A_i$ は Noether 環、$M_i$ は有限生成なので prop-coherent-sheaf-affine-coherent による。
(1) $\Rightarrow$ (2):連接なら定義により有限型である。準連接性を示す。prop-coherent-sheaf-presentation の 1 により、各点は開近傍 $U$ と完全列 $\mathcal{O}_U^{\oplus m}\xrightarrow{\psi}\mathcal{O}_U^{\oplus n}\to\mathcal{F}|_U\to0$ をもつ。$U$ の中のアフィン開集合 $V=\operatorname{Spec}B$ をとると、(b) により $\psi|_V=\widetilde{\varphi}$ となる $B$ 線形写像 $\varphi\colon B^{\oplus m}\to B^{\oplus n}$ があり、$\widetilde{\ }$ の完全性から $\mathcal{F}|_V\cong\operatorname{coker}\widetilde{\varphi}\cong\widetilde{\operatorname{coker}\varphi}$ である。このような $V$ は $X$ を被覆するので $\mathcal{F}$ は準連接である。
(2) $\Rightarrow$ (3):$U=\operatorname{Spec}A$ を任意のアフィン開集合とすると、$\mathcal{F}|_U$ は準連接なので (c) により $\mathcal{F}|_U\cong\widetilde{M}$、$M=\Gamma(U,\mathcal{F})$ である。$\mathcal{F}|_U$ は有限型だから、prop-coherent-sheaf-affine-finite-type により $M$ は有限生成である。
最後に $\mathcal{O}_X$ は、各アフィン開集合で $\widetilde{A}$ であり $A$ は 1 個の元で生成されるので、条件 3 をみたす。$\square$

一般のスキームでの注意

証明のうち (1) $\Rightarrow$ (2) と (2) $\Rightarrow$ (3) $\Rightarrow$ (4) は任意のスキームで成り立ち、Noether の仮定を使うのは (4) $\Rightarrow$ (1)、すなわち「有限生成加群に付随する層が連接である」ことだけである。一般のスキームでは、$\widetilde{M}$ が連接であることは $M$ が連接 $A$ 加群(有限生成で、任意の有限生成部分加群が有限表示)であることと同値であり、ex-coherent-sheaf-noncoherent-structure はこれが崩れる例である。Noether でないスキーム上で連接層の代わりに使われるのは「有限表示の準連接層」であり、構造層が連接なスキーム上ではこれが連接層と一致する(prop-coherent-sheaf-presentation、Stacks Tag 01BZ)。局所 Noether スキームでの本定理の形は Stacks Tag 01XZ にもある。

コホモロジーの有限性

連接層が代数幾何の中心にある理由は、そのコホモロジーの有限性にある。以下の定理はいずれも本記事の水準を超えるので言明にとどめ、出典を示す。

アフィンスキーム上の消滅

$X=\operatorname{Spec}A$ をアフィンスキーム、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の準連接層(とくに連接層)とすると、すべての $q\ge1$ で $H^q(X,\mathcal{F})=0$ である。逆に、$X$ を Noether スキームとするとき、すべての連接イデアル層 $\mathcal{I}\subset\mathcal{O}_X$ について $H^1(X,\mathcal{I})=0$ ならば $X$ はアフィンである(Serre の判定法)。

消滅定理の出典

証明は Har77 III.3.5(消滅)と III.3.7(Serre の判定法)に譲る。消滅の証明は、Noether 環 $A$ 上では入射加群 $I$ に付随する層 $\widetilde{I}$ が脆弱層であることを用いて $\widetilde{M}$ の脆弱分解を作る(一般の $A$ では Čechコホモロジーとの比較による)。系として、分離的なスキーム(分離射)のアフィン開被覆による Čech コホモロジーは準連接層の層コホモロジーと一致する(Har77 III.4.5)。

Serre の定理:ひねりによる生成と消滅

$A$ を Noether 環、$X$ を $A$ 上射影的なスキーム(射影スキーム)、$\mathcal{O}_X(1)$ を $\mathbb{P}^N_A$ からの引き戻しで得られる非常に豊富な可逆層、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の連接層とし、$\mathcal{F}(n):=\mathcal{F}\otimes\mathcal{O}_X(1)^{\otimes n}$ とおく。このとき整数 $n_0$ があって、$n\ge n_0$ なら次が成り立つ。

  1. $\mathcal{F}(n)$ は有限個の大域切断で生成される。すなわち全射 $\mathcal{O}_X^{\oplus r}\to\mathcal{F}(n)$ が存在する。したがって $\mathcal{F}$ は $\mathcal{O}_X(-n)^{\oplus r}$ の商である。
  2. すべての $q\ge1$ で $H^q(X,\mathcal{F}(n))=0$ である。
    また、$n$ によらず、すべての $q$ で $H^q(X,\mathcal{F})$ は有限生成 $A$ 加群である。
Serre の定理の出典と意味

1 は Har77 II.5.17、2 と有限生成性は Har77 III.5.2 にある。原論文は Serre Ser55 である。1 により、射影スキーム上の任意の連接層は $\mathcal{O}_X(-n_i)$ の有限直和の商として書け、その核もまた連接なので(cor-coherent-sheaf-abelian)、繰り返して局所自由層による分解 $\cdots\to\bigoplus\mathcal{O}_X(-n_{2,i})\to\bigoplus\mathcal{O}_X(-n_{1,i})\to\mathcal{F}\to0$ が得られる。射影空間上の連接層の Chern類や Grothendieck群の計算はこの分解に基づく。2 は「十分ひねればコホモロジーは消える」という主張であり、連接層のコホモロジーを $\mathcal{O}_X(n)$ のコホモロジー(Har77 III.5.1 で明示的に計算される)に帰着させる。

固有射による押し出しの連接性

$f\colon X\to S$ を固有射、$S$ を局所 Noether スキーム、$\mathcal{F}$ を $X$ 上の連接層とすると、すべての $q\ge0$ で高次順像 $R^qf_*\mathcal{F}$ は $S$ 上の連接層である。とくに $X$ が体 $k$ 上固有なスキームなら、$H^q(X,\mathcal{F})$ は有限次元 $k$ ベクトル空間である。

有限性定理の出典

$f$ が射影射の場合は Har77 III.8.8(thm-coherent-sheaf-serre の相対版)、一般の固有射の場合は Grothendieck EGA3 3.2.1 に譲る。後者は Chowの補題により射影射の場合に帰着させる。固有性を外すと結論は崩れる。ex-coherent-sheaf-infinite-sum の $j_*\mathcal{O}_U$ は、固有でない開埋め込み $j$ による連接層の押し出しが連接でない例である。複素数体上射影的なスキームでは、連接層の圏とコホモロジーが解析化によって連接解析層のそれと一致する(GAGA)。

補足

Noether スキーム $X$ 上の準連接層 $\mathcal{F}$ は、その連接部分層の有向和(帰納極限)$\mathcal{F}=\varinjlim\mathcal{F}_\lambda$ である。さらに、開集合 $U\subset X$ と $\mathcal{F}|_U$ の連接部分層 $\mathcal{G}$ が与えられれば、$\mathcal{F}$ の連接部分層 $\mathcal{G}'$ で $\mathcal{G}'|_U=\mathcal{G}$ となるものが存在する(連接層の拡張、Har77 II 演習 5.15)。これにより、準連接層に関する多くの主張が連接層の場合に帰着される。また、連接層 $\mathcal{F}$ の茎 $\mathcal{F}_x$ が自由 $\mathcal{O}_{X,x}$ 加群(自由加群)になる点 $x$ の集合は開集合であり、$X$ が被約(被約スキーム)なら、階数関数 $x\mapsto\dim_{\kappa(x)}\mathcal{F}_x\otimes\kappa(x)$ が局所定数であることと $\mathcal{F}$ が局所自由であることは同値である(Har77 II 演習 5.7、5.8)。前者の開性は、$x$ の茎で同型になる射 $\mathcal{O}_U^{\oplus r}\to\mathcal{F}|_U$ の余核と核(余核は $\mathcal{F}$ の商として有限型、余核が消える近傍では核は連接層への全射の核として有限型)に prop-coherent-sheaf-support の 1 を適用して得られる。

関連項目

参考文献

[1]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II.3.2、II.5(準連接層と連接層、5.1・5.4・5.5・5.9・5.17、演習 5.7・5.8・5.15)、II.8、III.3.5・3.7、III.4.5、III.5.1・5.2、III.8.8
[2]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique I : Le langage des schémas, Publications Mathématiques de l'IHÉS 4, pp. 5–228, 1960, Chapitre 0, §5.3(連接層の定義と基本性質)
[3]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique III : Étude cohomologique des faisceaux cohérents, Première partie, Publications Mathématiques de l'IHÉS 11, pp. 5–167, 1961, Théorème 3.2.1(固有射の有限性定理)
[4]
Jean-Pierre Serre, Faisceaux algébriques cohérents, Annals of Mathematics 61, pp. 197–278, 1955, Chapitre I §2(連接層の一般論)、Chapitre III(射影多様体上の連接層)
[6]
Bernard Malgrange, Ideals of Differentiable Functions, Tata Institute of Fundamental Research / Oxford University Press, 1966, $C^\infty$ 関数の層が連接でないこと(掛け算写像の核が有限型でない例)
[7]
The Stacks Project Authors, The Stacks Project, The Stacks Project Authors, 閲覧日 2026年9月22日

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