Kepler–Poinsotの多面体

同義語:ケプラー・ポアンソの多面体星形正多面体Kepler–Poinsot polyhedron

概要

Kepler–Poinsotの多面体(Kepler–Poinsot polyhedron)とは、合同な正多角形または合同な五芒星を面とし、どの頂点にも同じ枚数の面が集まり、面どうしが交わる星形の正多面体で、大十二面体・小星形十二面体・大星形十二面体・大二十面体の 4 つである。1 辺 $2$ の正二十面体では、1 つの頂点に隣り合う 5 頂点が 1 辺 $2$、対角線 $2\varphi$ の正五角形をなし、その正五角形 12 個から大十二面体が、同じ 5 点の五芒星 12 個から小星形十二面体ができる。4 つの頂点・辺・面の数は $(12,30,12)$、$(12,30,12)$、$(20,30,12)$、$(12,30,20)$ で、前の 2 つでは $V-E+F=-6$ となり Euler の多面体定理の式が成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 正多面体の分類, 正五角形と黄金比, Eulerの多面体定理(高校数学), 半正多面体

高校での出発点:五芒星

正多面体は、面が合同な正多角形で、どの頂点にも同じ枚数の面が集まる 凸 多面体であり、5 種類しかない(正多面体の分類)。半正多面体 では面の種類を増やした。この記事では、面の種類は 1 つのまま「凸」をやめ、面どうしが突き抜けて交わってよいことにする。そのとき面として使えるのが、星の形の五角形である。

正五角形と五芒星

正五角形 $A_1A_2A_3A_4A_5$ の頂点を、辺でなく対角線で 1 つおきに $A_1\to A_3\to A_5\to A_2\to A_4\to A_1$ と結ぶと、星の形(五芒星)ができる(図 1)。
(1) 先の角。$A_1$ での角 $\angle A_3A_1A_4$ を求める。5 つの頂点は 1 つの円の上にあり、円周は 5 つの弧 $A_1A_2$、$A_2A_3$、… に等分されるので、弧 1 つの中心角は $72^\circ$ である。$\angle A_3A_1A_4$ は弧 $A_3A_4$ に対する円周角なので、その中心角の半分の $36^\circ$ である。
(2) 角の和。先の角は 5 つとも $36^\circ$ なので、和は $5\times36^\circ=180^\circ$ である。正五角形の内角の和 $540^\circ$ とは違う。
(3) 長さ。正五角形の辺を $1$ とすると、対角線(五芒星の辺)は黄金比 $\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}2$ である(正五角形と黄金比)。

正五角形(左)と、同じ 5 点を対角線で結んだ五芒星(右)。五芒星の先の角は 36 度 正五角形(左)と、同じ 5 点を対角線で結んだ五芒星(右)。五芒星の先の角は 36 度
正多面体の分類 の反例「大十二面体」では、正二十面体の頂点を使って、合同な正五角形 12 枚でどの頂点にも 5 枚が集まる、凸でない立体を作った。この記事ではその作り方をきちんと確かめ、五芒星を面にした立体も作る。
この記事では次の問いに答える。

  1. 正二十面体の頂点から、正五角形や五芒星を面とする立体をどう作るか。→ thm-kpp-link
  2. 星形の正多面体はいくつあり、頂点・辺・面の数はどうなるか。→ thm-kpp-count、def-kpp-kp
  3. Euler の多面体定理 $V-E+F=2$ はなぜ成り立たないことがあるのか。→ ex-kpp-euler
    高校での見方この記事の言葉大学の言葉
    正五角形の対角線で結ぶ五芒星 $\{5/2\}$正星形多角形
    面どうしが突き抜ける立体星形正多面体Kepler–Poinsot の多面体
    正二十面体の頂点の内積隣・2 つ先・反対側頂点の配置、対称性
    $V-E+F=-6$Euler の定理の仮定が外れる自分と交わる曲面、Euler 標数

言葉の準備:星形の正多面体

正五角形と五芒星の面

正五角形の 5 つの頂点を、隣り合う順に結んだ閉じた折れ線を $\{5\}$、1 つおきに結んだ閉じた折れ線を 五芒星(正星形五角形)といい $\{5/2\}$ と書く。五芒星を面として使うときは、5 つの点を面の 頂点、5 本の対角線を面の 辺 という。対角線どうしの交点は頂点とみなさない。

五芒星の辺どうしは頂点以外でも交わる。これは、面をつくる折れ線が自分自身と交わってよいことにした、ということである。

Kepler–Poinsot の多面体

合同な正多角形または合同な五芒星を面とし、どの辺もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点にも同じ枚数の面が集まり、面どうしが(辺以外のところでも)交わる多面体のうち、次の 4 つを Kepler–Poinsot の多面体(星形正多面体)という。
(R1) 大十二面体:面は正五角形 12 枚で、どの頂点にも 5 枚が集まる。
(R2) 小星形十二面体:面は五芒星 12 枚で、どの頂点にも 5 枚が集まる。
(R3) 大星形十二面体:面は五芒星 12 枚で、どの頂点にも 3 枚が集まる。
(R4) 大二十面体:面は正三角形 20 枚で、どの頂点にも 5 枚が集まる。

Wei26 によれば、この 4 つは面の平面どうしが交わる正多面体であり、小星形十二面体と大星形十二面体は Kepler が 1619 年の著作『Harmonice Mundi』で述べ、大十二面体と大二十面体は 1809 年に Poinsot が(改めて)見つけた(名前は 1859 年に Cayley が使い始めた)。さらに Cauchy が 1813 年に、星形の正多面体がこの 4 つで尽きることを示した。この記事では、4 つで尽きることは証明しない。4 つを座標で作り、頂点・辺・面の数を数える。

面と頂点の数え方
  1. 大十二面体:正五角形 12 枚の辺を面ごとに数えると $5\times12=60$ 本で、どの辺も 2 枚に共有されるなら辺は $30$ 本である。
  2. 大星形十二面体:五芒星 12 枚の頂点を面ごとに数えると $60$ 個で、どの頂点にも 3 枚が集まるなら頂点は $\dfrac{60}3=20$ 個である。

正二十面体の頂点の配置

$\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}2$ とする。$\varphi^2=\varphi+1$ を何度も使う。正二十面体の頂点は、正多面体の分類 の命題「5 つの正多面体の座標」のとおり
$$ (0,\pm1,\pm\varphi),\quad(\pm1,\pm\varphi,0),\quad(\pm\varphi,0,\pm1) $$
の 12 点で、辺の長さは $2$ である。この 12 点の集まりを $\mathcal I$ と書く。どの点も $\lvert x\rvert^2=1+\varphi^2=\varphi+2$ を満たす。
2 点 $x,y\in\mathcal I$ の距離は、内積で
$$ \lvert x-y\rvert^2=\lvert x\rvert^2+\lvert y\rvert^2-2\,x\cdot y=2(\varphi+2)-2\,x\cdot y $$
と表せる。したがって、内積が分かれば距離が分かる。

1 つの頂点から見た残りの 11 点

$v=(0,1,\varphi)$ とする。$\mathcal I$ の残りの 11 点は、$v$ との内積で次の 3 組に分かれる。
(R1) $x\cdot v=\varphi$ の 5 点 $(0,-1,\varphi)$、$(\pm1,\varphi,0)$、$(\pm\varphi,0,1)$。$v$ との距離は $2$ で、正二十面体の辺で $v$ と結ばれる($v$ の 隣)。
(R2) $x\cdot v=-\varphi$ の 5 点 $(0,1,-\varphi)$、$(\pm1,-\varphi,0)$、$(\pm\varphi,0,-1)$。$v$ との距離は $2\varphi$ である。
(R3) $x\cdot v=-(\varphi+2)$ の 1 点 $-v=(0,-1,-\varphi)$。$v$ との距離は $2\sqrt{\varphi+2}$ である。
(ii) の 5 点は、(i) の 5 点に $-1$ を掛けたものである。

内積を 1 つずつ計算する

要点:$x=(a,b,c)$ に対して $x\cdot v=b+\varphi c$ で、たとえば $(0,-1,\varphi)$ では $-1+\varphi^2=\varphi$ である。距離の 2 乗は $2(\varphi+2)-2\,x\cdot v$ で求まる。

11 点の計算を開く

(i):$(0,-1,\varphi)$ では $-1+\varphi^2=\varphi$、$(\pm1,\varphi,0)$ では $\varphi$、$(\pm\varphi,0,1)$ では $\varphi$ である。距離の 2 乗は $2(\varphi+2)-2\varphi=4$ で、距離は $2$ である。

(ii):$(0,1,-\varphi)$ では $1-\varphi^2=-\varphi$、$(\pm1,-\varphi,0)$ では $-\varphi$、$(\pm\varphi,0,-1)$ では $-\varphi$ である。距離の 2 乗は $2(\varphi+2)+2\varphi=4\varphi+4=4\varphi^2$ で、距離は $2\varphi$ である。

(iii):$(0,-1,-\varphi)$ では $-1-\varphi^2=-(\varphi+2)$ で、距離の 2 乗は $4(\varphi+2)$ である。

これで 11 点がすべて現れた。(ii) の各点は (i) の点の符号をすべて変えたもので、たとえば $(0,1,-\varphi)=-(0,-1,\varphi)$ である。$\square$

$\mathcal I$ は、座標の巡回的な並べかえ $(x,y,z)\mapsto(z,x,y)$ と、各座標の符号の変更で変わらない。これらの操作は内積(したがって距離)を変えず、組み合わせると $v$ を $\mathcal I$ のどの点にも移せる(正多面体の分類 の例「正二十面体と黄金長方形」)。よって、lem-kpp-ico と同じことが $\mathcal I$ のどの点 $u$ についても成り立つ。$u$ との距離が $2$ の 5 点を $u$ の 隣 と呼び、その集まりを $N(u)$ と書く。

隣どうしの距離

$N(v)$ の 5 点の間の距離を計算する。たとえば
$$ \lvert(0,-1,\varphi)-(\varphi,0,1)\rvert^2=\varphi^2+1+(\varphi-1)^2=2\varphi^2-2\varphi+2=2(\varphi+1)-2\varphi+2=4 $$
で距離は $2$、
$$ \lvert(0,-1,\varphi)-(1,\varphi,0)\rvert^2=1+(\varphi+1)^2+\varphi^2=1+\varphi^4+\varphi^2 $$
で、$\varphi^4=(\varphi+1)^2=\varphi^2+2\varphi+1=3\varphi+2$ を使うと $1+(3\varphi+2)+(\varphi+1)=4\varphi+4=4\varphi^2$ となり、距離は $2\varphi$ である。10 組すべてを計算すると、
$$ B_1=(0,-1,\varphi),\ B_2=(\varphi,0,1),\ B_3=(1,\varphi,0),\ B_4=(-1,\varphi,0),\ B_5=(-\varphi,0,1) $$
と並べたとき、隣り合う $B_iB_{i+1}$($B_5B_1$ も)の距離が $2$、1 つおきの $B_iB_{i+2}$ の距離が $2\varphi$ になる。

正二十面体の頂点 v(黒い点)と、その 5 つの隣を結んだ正五角形(赤)。v に集まる 5 枚の正三角形を黄色で示した 正二十面体の頂点 v(黒い点)と、その 5 つの隣を結んだ正五角形(赤)。v に集まる 5 枚の正三角形を黄色で示した
5 点が同じ平面にあり、辺と対角線の長さがそろえば、正五角形になる。これを補題にしておく。

辺と対角線がそろった五角形

平面上の 5 点 $B_1,\dots,B_5$ について、隣り合う $B_iB_{i+1}$($B_5B_1$ も)の長さがどれも $a$、1 つおきの $B_iB_{i+2}$ の長さがどれも $\varphi a$ ならば、$B_1B_2B_3B_4B_5$ は正五角形である。

角を求めて曲がる向きを調べる

方針:余弦定理で各頂点の角が $108^\circ$ と分かる。折れ線 $B_1B_2\cdots B_5B_1$ を進むと各頂点で $72^\circ$ ずつ曲がり、曲がる向きがそろうことを示す。
段 1(角)。三角形 $B_{i-1}B_iB_{i+1}$ は 2 辺が $a$、残りの辺が $\varphi a$ なので、余弦定理(高校数学) から
$$ \cos\angle B_{i-1}B_iB_{i+1}=\frac{a^2+a^2-\varphi^2a^2}{2a^2}=\frac{2-\varphi^2}2=\frac{1-\varphi}2 $$
である。正五角形と黄金比 で求めた $\cos72^\circ=\dfrac{\sqrt5-1}4$ から $\cos108^\circ=-\cos72^\circ=\dfrac{1-\sqrt5}4$ で、これは $\dfrac{1-\varphi}2$ と等しい。$0^\circ$ から $180^\circ$ の範囲で余弦の値が同じ角は 1 つなので、各頂点の角は $108^\circ$ である。
段 2(曲がる角)。折れ線を $B_{i-1}\to B_i\to B_{i+1}$ と進むとき、進む向きは $B_i$ で $180^\circ-108^\circ=72^\circ$ だけ、左か右に変わる。
段 3(向きがそろう)。1 周して $B_1\to B_2$ に戻ると進む向きはもとに戻るので、5 回の曲がり(左を正、右を負とする)の和は $360^\circ$ の整数倍である。左に $k$ 回、右に $5-k$ 回曲がるとすると、和は $72^\circ\times(2k-5)$ で、$2k-5$ は $-5,-3,-1,1,3,5$ のどれかである。$72^\circ\times(2k-5)$ が $360^\circ$ の整数倍になるのは $2k-5=\pm5$、つまり $k=5$ か $k=0$ のときだけである。よって 5 回とも同じ向きに曲がる。
段 4(まとめ)。同じ向きに $72^\circ$ ずつ 5 回曲がって 1 周する、辺の長さがそろった五角形は、凸で、内角がすべて $108^\circ$、辺がすべて $a$ なので、正五角形である。$\square$

主定理 1:正二十面体の頂点から大十二面体と小星形十二面体を作る

隣の正五角形と五芒星

$\mathcal I$ を正二十面体の 12 頂点とする。
(1) 各 $u\in\mathcal I$ について、隣の 5 点 $N(u)$ は、$u$ に垂直な平面 $x\cdot u=\varphi$ の上にある、1 辺 $2$、対角線 $2\varphi$ の正五角形の頂点である。
(2) 12 個の正五角形 $N(u)$ を面とすると、どの辺(距離 $2$ の 2 点)もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点にも 5 枚の面が集まる。こうしてできる大十二面体は $V=12$、$E=30$、$F=12$ である。
(3) 12 個の正五角形 $N(u)$ のかわりに、同じ 5 点を結んだ五芒星を面とすると、どの辺(距離 $2\varphi$ の 2 点)もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点にも 5 枚の面が集まる。こうしてできる小星形十二面体も $V=12$、$E=30$、$F=12$ である。

内積と共通の隣を数える

方針:$u=v=(0,1,\varphi)$ で確かめれば、座標の巡回と符号の変更で $v$ をどの点にも移せるので、すべての $u$ で成り立つ。辺を共有する面は「辺の両端の共通の隣」で数える。
段 1(平面)。lem-kpp-ico の (i) から、$N(v)$ の 5 点はどれも $x\cdot v=\varphi$ を満たす。これは $v$ に垂直な 1 つの平面の式である。
段 2(正五角形)。ex-kpp-link の順 $B_1,\dots,B_5$ で、隣り合う 2 点の距離は $2$、1 つおきの 2 点の距離は $2\varphi$ である。段 1 から 5 点は同じ平面上にあるので、lem-kpp-pentagon($a=2$)により $B_1B_2B_3B_4B_5$ は正五角形である。これで (1) が示された。
段 3(面の頂点の数)。点 $w$ が面 $N(u)$ の頂点であるのは、$w$ が $u$ の隣、つまり $u$ が $w$ の隣のときである。$w$ の隣は 5 つなので、$w$ を頂点にもつ面は 5 枚である。(2) の面と (3) の面は同じ 5 点を頂点とするので、どちらでもどの頂点にも 5 枚の面が集まる。
段 4((2) の辺)。距離 $2$ の 2 点 $w_1,w_2$ が面 $N(u)$ の辺になるのは、$w_1,w_2$ がどちらも $u$ の隣のときである(面 $N(u)$ の中で距離 $2$ の 2 点は、段 2 のとおり隣り合う頂点、つまり辺の両端だからである)。$w_1=v$、$w_2=B_3=(1,\varphi,0)$ のとき、$v$ と $B_3$ の両方の隣である点は、$v$ の隣 $B_1,\dots,B_5$ のうち $B_3$ から距離 $2$ のもので、ex-kpp-link から $B_2$ と $B_4$ の 2 つである。$B_3$ を $v$ のほかの隣に替えても、輪の両隣の 2 つになる。よって $v$ から出る辺は、どれもちょうど 2 枚の面に共有される。$v$ をどの点にも移せるので、どの辺もちょうど 2 枚の面に共有される。
段 5((3) の辺)。距離 $2\varphi$ の 2 点 $w_1,w_2$ が五芒星の面の辺になるのは、どちらも $u$ の隣のとき(五芒星の辺は正五角形の対角線)である。$w_1=v$ とする。lem-kpp-ico から、$v$ から距離 $2\varphi$ の点は $w_2=-B_i$($i=1,\dots,5$)の形である。$v$ と $-B_i$ の両方の隣である点 $x$ は、$v$ の隣 $B_j$ で $\lvert B_j-(-B_i)\rvert=2$、つまり $B_j\cdot(-B_i)=\varphi$ を満たすものである。これは $B_j\cdot B_i=-\varphi$、つまり $\lvert B_j-B_i\rvert=2\varphi$ と同じである(距離と内積の関係の式)。段 2 から、$B_i$ から距離 $2\varphi$ の $B_j$ は、正五角形で $B_i$ と隣り合わない 2 つである。よって共通の隣はちょうど 2 つで、$v$ から出る五芒星の辺は、どれもちょうど 2 枚の面に共有される。
たとえば $w_2=(0,1,-\varphi)=-B_1$ のとき、共通の隣は $B_3=(1,\varphi,0)$ と $B_4=(-1,\varphi,0)$ で、実際 $\lvert B_3-w_2\rvert^2=1+(\varphi-1)^2+\varphi^2=1+(2-\varphi)+(\varphi+1)=4$ である。
段 6(数える)。頂点は $\mathcal I$ の $V=12$ 個、面は $F=12$ 枚である。辺は、面ごとに数えると $5\times12=60$ 本で、どの辺も 2 回ずつ数えているので $E=30$ である。(2) でも (3) でも同じである。$\square$

大十二面体。正二十面体の 1 つの頂点の 5 つの隣を頂点とする正五角形を、12 個の頂点のそれぞれについてとったもの 大十二面体。正二十面体の 1 つの頂点の 5 つの隣を頂点とする正五角形を、12 個の頂点のそれぞれについてとったもの
小星形十二面体。大十二面体と同じ 12 の平面の上に、正五角形のかわりに五芒星をとったもの 小星形十二面体。大十二面体と同じ 12 の平面の上に、正五角形のかわりに五芒星をとったもの

図 3・図 4 は、面どうしが交わるところで手前の面だけを描いている。大十二面体では各面の正五角形の中に、ほかの面とぶつかってへこんで見える五芒星の模様が現れる。小星形十二面体では、各面の五芒星の 5 つの先が外に突き出して、12 本の角をもつ星の形になる。

大十二面体の頂点のまわり

大十二面体の頂点 $v$ には、$v$ の隣 $B_1,\dots,B_5$ のそれぞれについての面 $N(B_1),\dots,N(B_5)$ の 5 枚が集まる。どの面も正五角形なので、$v$ での角の和は $5\times108^\circ=540^\circ$ で、$360^\circ$ を超える。正多面体の分類 の補題「凸多面体の頂点の角の和」は凸多面体についてのもので、大十二面体は凸でないので、矛盾はない。

主定理 2:4 つの多面体の頂点・辺・面の数

残りの 2 つも座標で作る。大二十面体は正二十面体の頂点 $\mathcal I$ を、大星形十二面体は正十二面体の頂点を使う。正十二面体の頂点は、正多面体の分類 の命題「5 つの正多面体の座標」の
$$ (\pm1,\pm1,\pm1),\quad\left(0,\pm\tfrac1\varphi,\pm\varphi\right),\quad\left(\pm\tfrac1\varphi,\pm\varphi,0\right),\quad\left(\pm\varphi,0,\pm\tfrac1\varphi\right) $$
の 20 点で、この集まりを $\mathcal D$ と書く。$\dfrac1\varphi=\varphi-1$ である。

4 つの多面体の頂点・辺・面の数
  1. $\mathcal I$ の 3 点で、どの 2 点の距離も $2\varphi$ である正三角形は 20 個あり、それを面とすると、どの辺もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点にも 5 枚の面が集まる(大二十面体)。
  2. $\mathcal U$ を $(0,\pm\varphi,\pm1)$、$(\pm\varphi,\pm1,0)$、$(\pm1,0,\pm\varphi)$ の 12 点とする。各 $u\in\mathcal U$ について、$\mathcal D$ のうち平面 $x\cdot u=\dfrac1\varphi$ の上にある点はちょうど 5 つで、1 辺 $2$ の正五角形の頂点である。その五芒星 12 個を面とすると、どの辺(距離 $2\varphi$ の 2 点)もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点にも 3 枚の面が集まる(大星形十二面体)。
  3. 4 つの多面体の $V$、$E$、$F$ と $V-E+F$ は次のとおりである。
    多面体面1 頂点の面の数$V$$E$$F$$V-E+F$
    大十二面体正五角形$5$$12$$30$$12$$-6$
    小星形十二面体五芒星$5$$12$$30$$12$$-6$
    大星形十二面体五芒星$3$$20$$30$$12$$2$
    大二十面体正三角形$5$$12$$30$$20$$2$
1 つの頂点で調べて数える

方針:(1) は lem-kpp-ico の (ii) の 5 点が正五角形になることを使う。(2) は代表の点で直接確かめ、座標の巡回と符号の変更で残りに広げる。(3) は面ごとの数え上げである。
段 1((1) の面)。$v$ を頂点にもつ正三角形 $vw_1w_2$(辺 $2\varphi$)では、$w_1,w_2$ は $v$ から距離 $2\varphi$ なので、lem-kpp-ico の (ii) の 5 点 $-B_1,\dots,-B_5$ のどれかである。$-B_i$ どうしの距離は $B_i$ どうしの距離と同じなので、$-B_1,\dots,-B_5$ も 1 辺 $2$、対角線 $2\varphi$ の正五角形で、距離 $2\varphi$ の組は 5 本の対角線だけである。よって $v$ を頂点にもつ正三角形は 5 個で、どの頂点にも 5 枚の面が集まる。面の数は、頂点ごとに数えた $12\times5=60$ を、1 つの面が 3 つの頂点で数えられることで割って $F=20$ である。
段 2((1) の辺)。辺 $v(-B_i)$ を含む面は、$-B_i$ と距離 $2\varphi$ の $-B_j$ を 3 つめの頂点とするもので、段 1 から 2 つある。辺は、頂点ごとに数えた $12\times5=60$ を 2 で割って $E=30$ である。
段 3((2) の面)。$u_0=(0,\varphi,1)$ のとき、$x\cdot u_0=\varphi y+z$ である。$\mathcal D$ の 20 点でこれを計算すると、値 $\dfrac1\varphi$ をとるのは
$$ C_1=(1,1,-1),\ C_2=(\varphi,0,\tfrac1\varphi),\ C_3=(0,-\tfrac1\varphi,\varphi),\ C_4=(-\varphi,0,\tfrac1\varphi),\ C_5=(-1,1,-1) $$
の 5 点である(たとえば $C_1$ では $\varphi-1=\frac1\varphi$、$C_3$ では $-1+\varphi=\frac1\varphi$)。隣り合う $C_iC_{i+1}$($C_5C_1$ も)の距離は $2$、1 つおきの距離は $2\varphi$ で(たとえば $\lvert C_1-C_2\rvert^2=(\varphi-1)^2+1+(1+\frac1\varphi)^2=(2-\varphi)+1+\varphi^2=4$)、lem-kpp-pentagon により正五角形である。座標の巡回と符号の変更は $\mathcal D$ と $\mathcal U$ をそれぞれ変えず、$u_0$ を $\mathcal U$ のどの点にも移すので、どの $u$ でも同じである。
段 4((2) の頂点と辺)。$\mathcal D$ の点は、座標の巡回と符号の変更で $(1,1,1)$ か $\left(0,\frac1\varphi,\varphi\right)$ に移る。$x=(1,1,1)$ では、$x\cdot u=\frac1\varphi$ となる $u$ は $(0,\varphi,-1)$、$(\varphi,-1,0)$、$(-1,0,\varphi)$ の 3 つで、面は 3 枚である。$x$ から距離 $2\varphi$ の点は $\left(0,-\frac1\varphi,-\varphi\right)$、$\left(-\frac1\varphi,-\varphi,0\right)$、$\left(-\varphi,0,-\frac1\varphi\right)$ の 3 つで、それぞれ 3 枚の面のうちちょうど 2 枚に含まれる(たとえば $\left(0,-\frac1\varphi,-\varphi\right)$ は $u=(0,\varphi,-1)$ と $(\varphi,-1,0)$ の面にある)。$\left(0,\frac1\varphi,\varphi\right)$ でも同じ計算で、面は 3 枚、距離 $2\varphi$ の点は 3 つで、それぞれちょうど 2 枚の面に含まれる。
段 5((3))。大十二面体と小星形十二面体は thm-kpp-link で求めた。大二十面体は段 1・段 2 から $(V,E,F)=(12,30,20)$ である。大星形十二面体は $V=20$、$F=12$ で、辺は面ごとに数えた $5\times12=60$ を 2 で割って $E=30$ である。$V-E+F$ はそれぞれ $12-30+12=-6$、$-6$、$20-30+12=2$、$12-30+20=2$ である。$\square$

大星形十二面体。正十二面体の 20 頂点を使い、五芒星 12 枚を面とする。20 本の三角錐の形の角が突き出る 大星形十二面体。正十二面体の 20 頂点を使い、五芒星 12 枚を面とする。20 本の三角錐の形の角が突き出る
大二十面体。正二十面体の 12 頂点を使い、辺の長さ 2φ の正三角形 20 枚を面とする 大二十面体。正二十面体の 12 頂点を使い、辺の長さ 2φ の正三角形 20 枚を面とする

小星形十二面体の辺と大二十面体の辺は、どちらも $\mathcal I$ の距離 $2\varphi$ の 30 組で、同じ線分である。大十二面体の辺は正二十面体の辺(距離 $2$ の 30 組)と同じである。

例と反例:Euler の多面体定理と角欠損

Eulerの多面体定理(高校数学) は「凸多面体では $V-E+F=2$」という定理で、Descartesの角欠損定理 は「凸多面体では角欠損($360^\circ$ から頂点の角の和を引いたもの)の総和が $720^\circ$」という定理である。星形の正多面体では、仮定のどれかが外れ、結論が崩れることがある。

外す条件反例成り立たなくなること
凸(反例では面どうしが突き抜けている)大十二面体・小星形十二面体$V-E+F=2$
面が(自分と交わらない)多角形小星形十二面体・大星形十二面体角欠損の総和 $=360^\circ\times(V-E+F)$
反例:$V-E+F=-6$

大十二面体と小星形十二面体は $V-E+F=12-30+12=-6$ である(thm-kpp-count)。Eulerの多面体定理(高校数学) の証明では、凸多面体の 1 枚の面を外して平面に広げ、辺が交わらない平面の網を作った(同記事の注意「凸多面体を平らに広げる」)。大十二面体の頂点と辺は正二十面体の頂点と辺と同じなので、頂点と辺だけなら交わらないように平面にかける。しかしその網の領域は正二十面体の 20 枚の正三角形にあたり、大十二面体の 12 枚の正五角形の面とは対応しない。証明のこの段で使ったのは「面が網の領域に 1 つずつ写る」ことで、面どうしが突き抜けて交わる立体ではそれが成り立たない。凸という仮定を外すと、$V-E+F=2$ は成り立たなくなる。

反例:角欠損の総和

各頂点の角の和と、角欠損の総和を計算する。五芒星の先の角は $36^\circ$(ex-kpp-star)である。

多面体1 頂点の角の和角欠損$V$角欠損の総和$360^\circ\times(V-E+F)$
大十二面体$5\times108^\circ=540^\circ$$-180^\circ$$12$$-2160^\circ$$-2160^\circ$
小星形十二面体$5\times36^\circ=180^\circ$$180^\circ$$12$$2160^\circ$$-2160^\circ$
大星形十二面体$3\times36^\circ=108^\circ$$252^\circ$$20$$5040^\circ$$720^\circ$
大二十面体$5\times60^\circ=300^\circ$$60^\circ$$12$$720^\circ$$720^\circ$

Descartesの角欠損定理 の主定理「角欠損の総和の公式」(総和 $=360^\circ\times(V-E+F)$)の証明では、$n$ 角形の面の内角の和が $(n-2)\times180^\circ$ であることを使った。正五角形の面(大十二面体)ではこれが成り立つので、$V-E+F=-6$ でも公式どおり $-2160^\circ$ になる。五芒星の面では角の和が $180^\circ$ で、$(5-2)\times180^\circ=540^\circ$ ではないので、公式が崩れる。

大二十面体は、面どうしが交わる凸でない立体なのに、$V-E+F=2$ で、角欠損の総和も $720^\circ$ になる。$V-E+F=2$ だからといって凸とは限らない($V-E+F=2$ は凸であるための十分条件ではない)。

大学数学で見る:星形と Euler の公式

Wei26 によれば、4 つの多面体は正十二面体と正二十面体の 星形(面の平面を延ばしてできる立体)として得られる。たとえば小星形十二面体の 12 枚の面の平面は、図 3・図 4 のように大十二面体の面の平面と同じである。

Schläfli の誤りと、Euler の公式の読み直しを開く

Wei26 によれば、小星形十二面体と大十二面体が $V-E+F=2$ を満たさないことから、Schläfli は 1860 年に、これらは存在しえないと誤って結論した。この記事の thm-kpp-link のとおり、2 つは座標で作れる。

$V-E+F$ は、多面体を「どこに置かれているか」ではなく「面がどうつながっているか」だけで決まる数で、大学では曲面の Euler標数 として学ぶ(定義は Eulerの多面体定理(高校数学) にもある)。凸多面体の表面は球面と同じつながり方で、Euler 標数は $2$ である。

演習

大二十面体の頂点のまわり

大二十面体の頂点 $v=(0,1,\varphi)$ に集まる 5 枚の正三角形の、$v$ 以外の頂点をすべて書け。また、5 枚の正三角形の $v$ での角の和を求めよ。

解答を開く

$v$ から距離 $2\varphi$ の点は $-B_1=(0,1,-\varphi)$、$-B_2=(-\varphi,0,-1)$、$-B_3=(-1,-\varphi,0)$、$-B_4=(1,-\varphi,0)$、$-B_5=(\varphi,0,-1)$ である。この順で隣り合う 2 点の距離は $2$、1 つおきの距離は $2\varphi$ なので、正三角形の残りの 2 頂点は、1 つおきの組 $\{-B_1,-B_3\}$、$\{-B_2,-B_4\}$、$\{-B_3,-B_5\}$、$\{-B_4,-B_1\}$、$\{-B_5,-B_2\}$ である。角の和は $5\times60^\circ=300^\circ$ である。

五芒星の先の角

1 辺 $2$ の正五角形の対角線は $2\varphi$ である。五芒星の先の角 $\theta$ を、2 辺 $2\varphi$、残りの辺 $2$ の二等辺三角形に余弦定理を使って求め、$36^\circ$ になることを確かめよ。

解答を開く

$\cos\theta=\frac{(2\varphi)^2+(2\varphi)^2-2^2}{2\cdot2\varphi\cdot2\varphi}=\frac{8\varphi^2-4}{8\varphi^2}=1-\frac1{2\varphi^2}$ である。$\varphi^2=\varphi+1=\frac{3+\sqrt5}2$ なので $\frac1{2\varphi^2}=\frac1{3+\sqrt5}=\frac{3-\sqrt5}4$ で、$\cos\theta=\frac{1+\sqrt5}4$ である。これは 正五角形と黄金比 で求めた $\cos36^\circ$ と等しいので、$\theta=36^\circ$ である。

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関連項目

参考文献

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