円と直線の位置関係

同義語:position of a circle and a line

概要

円と直線の位置関係(position of a circle and a line)とは、中心 $C$、半径 $r$ の円と直線の共有点の個数が、中心と直線の距離 $d$ と $r$ の大小だけで決まるという事実である。$d<r$ なら 2 個、$d=r$ なら 1 個(接する)、$d>r$ なら 0 個で、理由は直線上の点を垂線の足から符号付きの長さ $t$ で表すと、円の上にある条件が $t^2=r^2-d^2$ になることにある。直線の式を円の方程式に代入した 2 次方程式の判別式は $r^2-d^2$ の正の数倍なので、2 つの判定法はいつも一致する。円 $x^2+y^2=r^2$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線は $x_0x+y_0y=r^2$ で、これは円の方程式の 2 次式を偏極した形である。距離による判定は楕円などの円でない曲線には使えない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 直線の方程式と点と直線の距離, 判別式(高校数学), 2次関数の最大・最小, ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:2 つの判定法

数学 II では、円と直線が何個の点で交わるかを 2 つの方法で調べる。1 つは、円の方程式と直線の方程式を連立して 1 文字を消し、残った 2 次方程式の判別式の符号を見る方法である。もう 1 つは、円の中心と直線の距離を半径と比べる方法である。

判別式で調べる

円 $x^2+y^2=5$ と直線 $y=2x+k$ の共有点の個数を、$k$ の値で分けて調べる。
$y=2x+k$ を円の方程式に代入すると
$$ x^2+(2x+k)^2=5 $$
である。左辺を展開すると $x^2+4x^2+4kx+k^2=5x^2+4kx+k^2$ なので、
$$ 5x^2+4kx+k^2-5=0 $$
となる。この 2 次方程式の実数解 $x$ 1 つごとに、$y=2x+k$ で $y$ が決まり、共有点が 1 つ決まる。判別式を $D$ とすると、$x$ の係数が $4k=2\cdot 2k$ なので
$$ \frac D4=(2k)^2-5(k^2-5)=4k^2-5k^2+25=25-k^2 $$
である。

  • $-5< k<5$ のとき $\dfrac D4>0$ で、異なる 2 つの実数解があるので、共有点は 2 個。
  • $k=\pm5$ のとき $\dfrac D4=0$ で、重解が 1 つなので、共有点は 1 個(接する)。
  • $k<-5$ または $k>5$ のとき $\dfrac D4<0$ で、実数解がないので、共有点はない。
    $k=5$ のとき 2 次方程式は $5x^2+20x+20=0$、つまり $5(x+2)^2=0$ で、$x=-2$、$y=2\cdot(-2)+5=1$ である。接点は $(-2,1)$ で、$(-2)^2+1^2=5$ を満たす。
中心と直線の距離で調べる

同じ円 $x^2+y^2=5$ と直線 $y=2x+k$ を、距離で調べる。円の中心は原点 $O(0,0)$、半径は $r=\sqrt5$ である。直線を $2x-y+k=0$ と書き直すと、点と直線の距離 の公式により、中心と直線の距離は
$$ d=\frac{|2\cdot0-0+k|}{\sqrt{2^2+(-1)^2}}=\frac{|k|}{\sqrt5} $$
である。$d< r$ は $\dfrac{|k|}{\sqrt5}<\sqrt5$、両辺に $\sqrt5$ を掛けて $|k|<5$ である。同じように $d=r$ は $|k|=5$、$d>r$ は $|k|>5$ である。ex-ccl-hs-disc と同じ答えになる(図 1)。

円 x² + y² = 5 と直線 y = 2x + k。k = 1, 5, 7 のとき、中心から直線までの距離 d が半径 √5 より小さい・等しい・大きい 円 x² + y² = 5 と直線 y = 2x + k。k = 1, 5, 7 のとき、中心から直線までの距離 d が半径 √5 より小さい・等しい・大きい
2 つの方法が同じ答えを出すのは偶然ではない。この記事では次の問いに答える。

  1. 距離による判定はなぜ正しいのか。→ thm-ccl-position
  2. 判別式による判定と距離による判定は、なぜいつも同じ答えを出すのか。→ prop-ccl-disc-dist
  3. 円の接線は、円上の点 $(x_0,y_0)$ を使ってどう書けるか。なぜ「$x^2$ を $x_0x$ に替える」形になるのか。→ thm-ccl-tangent、thm-ccl-polar-tangent
  4. 円の外の点から引いた接線はどう求めるか。傾きを使うと何を見落とすか。→ ex-ccl-two-tangents、ex-ccl-vertical-tangent
  5. 同じ判定法は、円でない曲線にも使えるか。→ ex-ccl-ellipse、ex-ccl-parabola
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    中心と直線の距離 $d$ と半径 $r$ の比較垂線の足からの距離 $t$ が $t^2=r^2-d^2$ を満たす(thm-ccl-position)三平方の定理(直交分解)
    連立した 2 次方程式の判別式$\dfrac D4=b^2(a^2+b^2)(r^2-d^2)$(prop-ccl-disc-dist)2 次式を直線に制限した 1 変数の 2 次式
    弦の長さ $2\sqrt{r^2-d^2}$2 つの交点の $t$ の差(cor-ccl-chord)
    接線 $x_0x+y_0y=r^2$半径に垂直な直線(thm-ccl-tangent)2 次形式の偏極(thm-ccl-polar-tangent)

取り出す構造:円の方程式と、直線との共有点

以下、平面のベクトルを成分で $u=(u_1,u_2)$ と書き、内積を $u\cdot v=u_1v_1+u_2v_2$、長さを $|u|=\sqrt{u\cdot u}$ とする。点 $P$ と、原点から $P$ へ向かう位置ベクトルを同じ記号で表す。

円とその中心・半径

点 $C=(p,q)$ と正の数 $r$ について、$C$ からの距離が $r$ である点全体の集合
$$ \{(x,y): (x-p)^2+(y-q)^2=r^2\} $$
を、中心 $C$、半径 $r$ の 円 という。方程式 $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ をこの円の方程式という。

2 点 $(x,y)$ と $(p,q)$ の距離は $\sqrt{(x-p)^2+(y-q)^2}$ なので、「距離が $r$」は「距離の 2 乗が $r^2$」と同じである(距離も $r$ も $0$ 以上なので、2 乗しても同値である)。これが円の方程式の意味である。
展開すると $x^2+y^2+lx+my+n=0$ の形になる。逆にこの形の方程式は、$x$、$y$ それぞれについて平方完成すると円の方程式に戻せることがある。

展開した形から中心と半径を読む
  1. $x^2+y^2-2x-4y=0$。$x^2-2x=(x-1)^2-1$、$y^2-4y=(y-2)^2-4$ なので、方程式は
    $$ (x-1)^2-1+(y-2)^2-4=0,\qquad\text{つまり}\qquad (x-1)^2+(y-2)^2=5 $$
    である。中心 $(1,2)$、半径 $\sqrt5$ の円である。原点 $(0,0)$ は $0+0-0-0=0$ を満たすので、この円の上にある。
  2. $x^2+y^2+6x-2y+10=0$。$x^2+6x=(x+3)^2-9$、$y^2-2y=(y-1)^2-1$ なので $(x+3)^2+(y-1)^2=0$ である。2 乗の和が $0$ になるのは両方が $0$ のときだけなので、この方程式を満たす点は $(-3,1)$ ただ 1 つで、円ではない。定数項を $11$ にすると $(x+3)^2+(y-1)^2=-1$ となり、満たす点はない。
  3. 一般の $x^2+y^2+lx+my+n=0$。$x^2+lx=\left(x+\dfrac l2\right)^2-\dfrac{l^2}4$、$y^2+my=\left(y+\dfrac m2\right)^2-\dfrac{m^2}4$ なので、方程式は
    $$ \left(x+\frac l2\right)^2+\left(y+\frac m2\right)^2=\frac{l^2+m^2-4n}4 $$
    となる。右辺が正なら中心 $\left(-\dfrac l2,-\dfrac m2\right)$、半径 $\dfrac{\sqrt{l^2+m^2-4n}}2$ の円である。右辺が $0$ なら (2) の前半のように 1 点だけ、負なら (2) の後半のように満たす点はない。

ex-ccl-general-form の (3) により、$x^2+y^2+lx+my+n=0$ が円を表すのは $l^2+m^2-4n>0$ のときだけである。

共有点と、接すること

円と直線の両方に属する点を 共有点 という。円と直線の共有点がちょうど 1 個のとき、円と直線は 接する といい、その直線を円の 接線、共有点を 接点 という。

円と直線の共有点の個数は、次の主定理によって $0$、$1$、$2$ のどれかになる。

主定理:距離と半径で位置関係が決まる

直線上の点を、垂線の足からの距離で表す。これが証明の鍵である。

円と直線の位置関係

中心 $C$、半径 $r$ の円と直線 $\ell$ について、$C$ と $\ell$ の距離を $d$ とし、$C$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $H$ とする。$\ell$ の方向ベクトルで長さ $1$ のものを $e$ とする。このとき、$\ell$ 上の点 $X=H+te$($t$ は実数)が円の上にあることは
$$ t^2=r^2-d^2 $$
と同値である。したがって次が成り立つ。

  1. $d< r$ のとき、共有点は $t=\pm\sqrt{r^2-d^2}$ の 2 個である。
  2. $d=r$ のとき、共有点は $t=0$、つまり $H$ の 1 個である(接する)。
  3. $d>r$ のとき、共有点はない。
垂線の足で三平方の定理を使う

方針:直線上の点を「垂線の足 $H$ から方向 $e$ に $t$ だけ進んだ点」と書き、中心からの距離の 2 乗を三平方の定理で $d^2+t^2$ と表す。
段 1(直線上の点の表し方)。$H$ は $\ell$ 上の点なので、$\ell$ 上の点はすべて $X=H+te$($t$ は実数)の形にただ 1 通りに書ける(直線は 1 点と方向ベクトルで表せる。直線の方程式と点と直線の距離 の媒介変数表示。$e$ の長さが $1$ なので、$t$ は $H$ から $X$ までの符号付きの長さである)。
段 2(直交している)。$H$ は垂線の足なので、$\overrightarrow{CH}$ は $\ell$ に垂直であり、$\overrightarrow{CH}\cdot e=0$ である。また $|\overrightarrow{CH}|=d$ である(距離は中心から垂線の足までの長さ。点と直線の距離)。
段 3(距離の 2 乗)。$\overrightarrow{CX}=\overrightarrow{CH}+te$ なので、内積で展開すると
$$ |\overrightarrow{CX}|^2=|\overrightarrow{CH}|^2+2t\,(\overrightarrow{CH}\cdot e)+t^2|e|^2=d^2+0+t^2 $$
である。最後の等号で段 2 と $|e|=1$ を使った。
段 4(円の上にある条件)。$X$ が円の上にあることは $|\overrightarrow{CX}|=r$、つまり $|\overrightarrow{CX}|^2=r^2$(どちらも $0$ 以上なので 2 乗しても同値)である。段 3 より、これは $d^2+t^2=r^2$、つまり $t^2=r^2-d^2$ と同値である。
段 5(場合分け)。段 1 により、共有点の個数は方程式 $t^2=r^2-d^2$ の実数解 $t$ の個数に等しい。$r^2-d^2>0$($d< r$。$d$、$r$ は $0$ 以上なので $d^2< r^2$ と同値)なら解は $t=\pm\sqrt{r^2-d^2}$ の 2 個、$r^2-d^2=0$ なら $t=0$ の 1 個、$r^2-d^2<0$ なら実数解はない(実数の 2 乗は $0$ 以上)。$\square$

共有点を $t$ で求める

円 $x^2+y^2=5$ と直線 $\ell$:$x-y+1=0$(つまり $y=x+1$)。
段 1。中心 $O$ と $\ell$ の距離は $d=\dfrac{|0-0+1|}{\sqrt{1^2+(-1)^2}}=\dfrac1{\sqrt2}$ で、$d^2=\dfrac12<5=r^2$ なので、共有点は 2 個である。
段 2。垂線の足は $H=\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)$ である(法線ベクトル $(1,-1)$ の向きに原点から進んで、$H=s(1,-1)$ を $\ell$ に代入すると $s+s+1=0$、$s=-\dfrac12$)。$\ell$ の方向ベクトル $(1,1)$ を長さ $1$ にすると $e=\dfrac1{\sqrt2}(1,1)$ である。
段 3。$t^2=5-\dfrac12=\dfrac92$ なので $t=\pm\dfrac3{\sqrt2}$ である。$te=\pm\dfrac3{\sqrt2}\cdot\dfrac1{\sqrt2}(1,1)=\pm\dfrac32(1,1)$ なので、共有点は
$$ H+\frac32(1,1)=(1,2),\qquad H-\frac32(1,1)=(-2,-1) $$
である。どちらも $x^2+y^2=5$ と $y=x+1$ を満たす。

接点は垂線の足

ex-ccl-hs-disc の $k=5$、つまり $\ell$:$2x-y+5=0$ では、$d=\dfrac5{\sqrt5}=\sqrt5=r$ なので接する。thm-ccl-position の 2 により、接点は中心から $\ell$ に下ろした垂線の足である。法線ベクトル $(2,-1)$ の向きに $H=s(2,-1)$ とおいて $\ell$ に代入すると $4s+s+5=0$、$s=-1$ で、$H=(-2,1)$ である。ex-ccl-hs-disc で判別式から求めた接点と一致する。

弦の長さ

thm-ccl-position の $t$ は $H$ からの符号付きの長さなので、2 つの共有点の間の長さ(弦の長さ)もすぐに分かる。

弦の長さ

中心 $C$、半径 $r$ の円と、$C$ からの距離が $d< r$ の直線 $\ell$ について、2 つの共有点を結ぶ線分(弦)の長さは $2\sqrt{r^2-d^2}$ であり、その中点は垂線の足 $H$ である。

$t$ の差をとる

方針:thm-ccl-position の 2 つの解 $t=\pm\sqrt{r^2-d^2}$ の差と和を見る。
2 つの共有点は $X_\pm=H\pm\sqrt{r^2-d^2}\,e$ である。差は $X_+-X_-=2\sqrt{r^2-d^2}\,e$ で、$|e|=1$ なので長さは $2\sqrt{r^2-d^2}$ である。和の半分は $\dfrac{X_++X_-}2=H$ なので、中点は $H$ である。$\square$

弦の長さを 2 通りに計算する

ex-ccl-position の円 $x^2+y^2=5$ と直線 $y=x+1$ では、$d=\dfrac1{\sqrt2}$ なので、弦の長さは
$$ 2\sqrt{5-\frac12}=2\sqrt{\frac92}=2\cdot\frac3{\sqrt2}=3\sqrt2 $$
である。共有点 $(1,2)$、$(-2,-1)$ の距離を直接計算しても $\sqrt{3^2+3^2}=3\sqrt2$ となる。中点は $\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)$ で、ex-ccl-position の垂線の足 $H$ と一致する。

「中心から弦に下ろした垂線は弦を 2 等分する」という中学校で習う事実は、cor-ccl-chord の後半にあたる。円の内部の点を通る 2 本の弦の長さの積が一定になる事実(方べきの定理)は、この $t$ を使って 方べきの定理(高校数学) で証明する。

判別式と距離はなぜ同じ答えを出すか

まず ex-ccl-hs-disc と ex-ccl-hs-dist の答えを数で比べる。

判別式と $r^2-d^2$ を比べる

円 $x^2+y^2=5$ と直線 $y=2x+k$ では、ex-ccl-hs-disc で $\dfrac D4=25-k^2$、ex-ccl-hs-dist で $d=\dfrac{|k|}{\sqrt5}$ だった。$r^2=5$ なので
$$ r^2-d^2=5-\frac{k^2}5=\frac{25-k^2}5 $$
である。したがって
$$ \frac D4=5(r^2-d^2) $$
で、判別式は $r^2-d^2$ の正の数倍になっている。

ex-ccl-disc-vs-dist のように判別式が $r^2-d^2$ の正の数倍になることが、いつも成り立つことを示す。

判別式は $r^2-d^2$ の正の数倍

中心 $(p,q)$、半径 $r$ の円 $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ と、直線 $ax+by+c=0$($b\ne0$)を考える。直線の式を $y=-\dfrac{ax+c}{b}$ と変形して円の方程式に代入し、両辺に $b^2$ を掛けて得られる $x$ の 2 次方程式を
$$ b^2(x-p)^2+(ax+c+bq)^2-b^2r^2=0 $$
とする。その判別式 $D$ について、中心と直線の距離を $d$ とすると
$$ \frac D4=b^2(a^2+b^2)(r^2-d^2) $$
が成り立つ。$b^2(a^2+b^2)>0$ なので、$D$ と $r^2-d^2$ は同じ符号をもつ。

中心を原点に移してから展開する

方針:$x$ を $X=x-p$ に置きかえて式を短くし、判別式が置きかえで変わらないことを使う。
段 1(代入した式の確認)。$y=-\dfrac{ax+c}b$ なので $y-q=-\dfrac{ax+c+bq}b$ である。これを $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ に代入して両辺に $b^2$ を掛けると、$b^2(x-p)^2+(ax+c+bq)^2=b^2r^2$ となる。これが命題の 2 次方程式である。
段 2($X=x-p$ で書く)。$c'=ap+bq+c$ とおく。$ax+c+bq=a(x-p)+ap+bq+c=aX+c'$ なので、方程式は
$$ b^2X^2+(aX+c')^2-b^2r^2=0 $$
となる。展開して $X$ について整理すると
$$ (a^2+b^2)X^2+2ac'X+(c'^2-b^2r^2)=0 $$
である。
段 3($X$ の方程式の判別式)。$X$ の係数が $2ac'$ なので
$$ \frac{D_X}4=(ac')^2-(a^2+b^2)(c'^2-b^2r^2) $$
である。右辺を展開すると $a^2c'^2-a^2c'^2+a^2b^2r^2-b^2c'^2+b^4r^2$ で、$a^2c'^2$ が消えて
$$ \frac{D_X}4=b^2\bigl((a^2+b^2)r^2-c'^2\bigr) $$
となる。
段 4(距離で書く)。点と直線の距離の公式から $d=\dfrac{|ap+bq+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}=\dfrac{|c'|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ なので、$c'^2=(a^2+b^2)d^2$ である。段 3 に代入すると $\dfrac{D_X}4=b^2(a^2+b^2)(r^2-d^2)$ である。
段 5($x$ の方程式に戻す)。2 次式 $A X^2+BX+C$ に $X=x-p$ を代入して展開すると、$x$ の 2 次式 $Ax^2+(B-2Ap)x+(Ap^2-Bp+C)$ になる。その判別式は
$$ (B-2Ap)^2-4A(Ap^2-Bp+C)=B^2-4ABp+4A^2p^2-4A^2p^2+4ABp-4AC=B^2-4AC $$
で、$X$ の方程式の判別式と等しい。よって $D=D_X$ で、命題の式が成り立つ。$\square$

段 5 は「2 次方程式の解を全部同じ数だけずらしても、判別式は変わらない」ということである。判別式が解の差の 2 乗で決まることは 2次方程式の判別式の正体 で扱う。

公式で判別式を先に読む
  1. ex-ccl-hs-disc の場合。円 $x^2+y^2=5$($p=q=0$、$r^2=5$)と直線 $2x-y+k=0$($a=2$、$b=-1$、$c=k$)では、$d^2=\dfrac{k^2}5$ なので
    $$ \frac D4=(-1)^2\cdot(2^2+1^2)\cdot\Bigl(5-\frac{k^2}5\Bigr)=5\cdot\frac{25-k^2}5=25-k^2 $$
    で、ex-ccl-hs-disc の計算と一致する。
  2. 円 $(x-1)^2+(y-2)^2=5$ と直線 $x+y-1=0$($a=b=1$、$c=-1$)。$d=\dfrac{|1+2-1|}{\sqrt2}=\sqrt2$ なので、公式は $\dfrac D4=1\cdot2\cdot(5-2)=6$ を与える。直接計算すると、$y=1-x$ より $y-2=-x-1$ なので $(x-1)^2+(x+1)^2=5$、つまり $2x^2+2=5$、$2x^2-3=0$ で、$\dfrac D4=0^2-2\cdot(-3)=6$ である。一致する。$D>0$ なので共有点は 2 個である。
$y$ 軸に平行な直線の場合

$b=0$ の直線 $ax+c=0$($a\ne0$)では $y$ について解けないので、$x=-\dfrac ca$ を円の方程式に代入し、両辺に $a^2$ を掛けて $y$ の 2 次方程式を作る。$x-p=-\dfrac{ap+c}a$ なので、得られる方程式は
$$ a^2(y-q)^2+(ap+c)^2-a^2r^2=0 $$
である。prf-ccl-disc-dist の $x$ と $y$、$a$ と $b$ の役割を入れかえた計算で、この方程式の判別式は
$$ \frac D4=a^2(a^2+b^2)(r^2-d^2)=a^4(r^2-d^2) $$
となる($b=0$ を使った)。
$a^2$ を掛けずに代入しただけの方程式 $(y-q)^2+\left(p+\dfrac ca\right)^2-r^2=0$ では $\dfrac D4=r^2-d^2$ になる。方程式の両辺に正の数 $s$ を掛けると、係数がすべて $s$ 倍になるので、判別式は $(sB)^2-4(sA)(sC)=s^2(B^2-4AC)$ と $s^2$ 倍になるだけである。だから、どの正の数を掛けても判別式の符号は $r^2-d^2$ と同じである。prop-ccl-disc-dist で「$b^2$ を掛ける」としたのも、分母を払うためで、符号には影響しない。
たとえば円 $x^2+y^2=5$ と直線 $x=1$($a=1$、$c=-1$)では、$a^2=1$ なので方程式は
$$ y^2+1-5=0,\qquad\text{つまり}\qquad y^2-4=0 $$
で、$\dfrac D4=0^2-1\cdot(-4)=4$ である。公式でも $d=1$ から $1^4\cdot(5-1)=4$ である。

どちらの判定法を使ってもよいが、使い分けの目安がある。「共有点があるか」「接するか」だけを知りたいなら、距離による判定のほうが計算が短い。共有点の座標まで知りたいなら、連立して 2 次方程式を解く必要がある。同じように、2 次方程式の判別式を別の量で読みかえる考え方は 判別式(高校数学) と 判別式で示す不等式 でも使う。

円の接線:高校数学で解く

thm-ccl-position の 2 から、接点は中心から直線に下ろした垂線の足である。これを逆から使うと、円上の点での接線の式が求まる。

円上の点での接線

中心 $C$、半径 $r$ の円の上の点 $P$ を通る直線のうち、円に接するものはただ 1 本あり、それは $P$ を通り $\overrightarrow{CP}$ に垂直な直線である。特に、円 $x^2+y^2=r^2$ 上の点 $P(x_0,y_0)$ での接線は
$$ x_0x+y_0y=r^2 $$
であり、円 $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ 上の点 $(x_0,y_0)$ での接線は
$$ (x_0-p)(x-p)+(y_0-q)(y-q)=r^2 $$
である。

距離が半径に等しくなるのは垂線の足が $P$ のとき

方針:$P$ を通る直線 $\ell$ について、中心との距離 $d$ と $CP=r$ を比べ、$d=r$ になる条件を調べる。
段 1($d\le r$)。$P$ を通る直線 $\ell$ をとり、$C$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $H$ とする。$H$ は $\ell$ 上で $C$ に最も近い点なので(点と直線の距離)、$d=CH\le CP=r$ である。
段 2(等号の条件)。$P\ne H$ なら $d< r$ であることを、2 つの場合に分けて示す。

  • $\ell$ が中心 $C$ を通るとき。垂線の足は $H=C$ で、$d=0$ である。$r>0$ なので $d=0< r$ である(このとき $CP=r>0$ なので、たしかに $P\ne C=H$ である)。
  • $\ell$ が $C$ を通らないとき。$H\ne C$ なので、$P\ne H$ なら 3 点 $C$、$H$、$P$ は三角形 $CHP$ をつくり、$H$ が直角の直角三角形である。斜辺 $CP$ は辺 $CH$ より長いので $d< r$ である。
    したがって $d=r$ となるのは $H=P$ のとき、つまり $\overrightarrow{CP}$ が $\ell$ に垂直なときだけである。
    段 3(接する条件)。thm-ccl-position により、$\ell$ が円に接するのは $d=r$ のときだけである。段 2 と合わせると、$P$ を通る接線は「$P$ を通り $\overrightarrow{CP}$ に垂直な直線」ただ 1 本である。
    段 4(式にする)。$C=(p,q)$ のとき $\overrightarrow{CP}=(x_0-p,y_0-q)$ である。$\ell$ 上の点 $X=(x,y)$ について、$\overrightarrow{PX}\perp\overrightarrow{CP}$ は内積が $0$ であること、つまり
    $$ (x_0-p)(x-x_0)+(y_0-q)(y-y_0)=0 $$
    である($X=P$ のときも成り立つ)。ここで $x-x_0=(x-p)-(x_0-p)$、$y-y_0=(y-q)-(y_0-q)$ と書きかえて展開すると
    $$ (x_0-p)(x-p)+(y_0-q)(y-q)=(x_0-p)^2+(y_0-q)^2 $$
    となる。$P$ は円の上にあるので右辺は $r^2$ である。これが 2 つ目の式で、$p=q=0$ とおくと 1 つ目の式 $x_0x+y_0y=r^2$ になる。$\square$
円上の点での接線を 2 つ
  1. 円 $x^2+y^2=5$ 上の点 $(-2,1)$ での接線は $-2x+y=5$、つまり $y=2x+5$ である。これは ex-ccl-hs-disc で $k=5$ のときの直線で、接点 $(-2,1)$ も一致する。
  2. ex-ccl-general-form の円 $(x-1)^2+(y-2)^2=5$ は原点を通る。原点での接線は、公式に $(x_0,y_0)=(0,0)$、$(p,q)=(1,2)$ を代入して
    $$ (0-1)(x-1)+(0-2)(y-2)=5 $$
    である。左辺は $-x+1-2y+4=-x-2y+5$ なので、$-x-2y+5=5$、つまり $x+2y=0$ である。中心と原点を結ぶベクトル $(1,2)$ は、この直線の法線ベクトルになっている。

円の外の点から引いた接線

円の外の点 $A$ から円に引いた接線は、接点を未知数にして thm-ccl-tangent を使うと求まる。

接点を未知数にする

点 $A(3,1)$ から円 $x^2+y^2=5$ に接線を引く。$3^2+1^2=10>5$ なので $A$ は円の外にある。
段 1(条件を式にする)。接点を $(x_0,y_0)$ とすると、接線は $x_0x+y_0y=5$ である(thm-ccl-tangent)。これが $A(3,1)$ を通るので $3x_0+y_0=5$ である。接点は円の上にあるので $x_0^2+y_0^2=5$ である。
段 2(解く)。$y_0=5-3x_0$ を代入すると $x_0^2+(5-3x_0)^2=5$、展開して $10x_0^2-30x_0+25=5$、つまり $x_0^2-3x_0+2=0$ である。$(x_0-1)(x_0-2)=0$ から $x_0=1$、$2$ で、$y_0=2$、$-1$ である。
段 3(答え)。接点は $(1,2)$ と $(2,-1)$、接線は $x+2y=5$ と $2x-y=5$ の 2 本である(図 2)。
段 4(接線の長さ)。接点を $T$ とすると、thm-ccl-tangent により $OT\perp AT$ なので、三角形 $OAT$ は $T$ が直角の直角三角形である。三平方の定理から
$$ AT^2=OA^2-OT^2=OA^2-r^2=(3^2+1^2)-5=10-5=5 $$
で、$AT=\sqrt5$ である(接点が $(1,2)$、$(2,-1)$ のどちらでも同じ)。この値は、円の方程式 $x^2+y^2-5=0$ の左辺に $A$ の座標を代入した値
$$ 3^2+1^2-5=9+1-5=5 $$
に等しい。
別の解き方として、傾きを $m$ とおいて直線 $y-1=m(x-3)$、つまり $mx-y+1-3m=0$ を考え、中心との距離が半径に等しい条件 $\dfrac{|1-3m|}{\sqrt{m^2+1}}=\sqrt5$ を使ってもよい。両辺を 2 乗して分母を払うと $(1-3m)^2=5(m^2+1)$、展開して $9m^2-6m+1=5m^2+5$、$4m^2-6m-4=0$、$2m^2-3m-2=0$、$(2m+1)(m-2)=0$ で、$m=2$、$-\dfrac12$ である。同じ 2 本の接線が得られる。

点 A(3, 1) から円 x² + y² = 5 に引いた 2 本の接線。接点と中心を結ぶ半径は接線に垂直である 点 A(3, 1) から円 x² + y² = 5 に引いた 2 本の接線。接点と中心を結ぶ半径は接線に垂直である
ex-ccl-two-tangents の段 4 で見たように、接線の長さの 2 乗 $OA^2-r^2$ は、円の方程式の左辺に $A$ の座標を代入した値に等しい。この量(方べき)は 方べきの定理(高校数学) で中心的な役割をする。
傾きを使う解き方は短いが、落とし穴がある。

傾きでは $y$ 軸に平行な接線が出てこない

点 $A(2,4)$ から円 $x^2+y^2=4$ に接線を引く。
傾きで解く。直線 $y-4=m(x-2)$、つまり $mx-y+4-2m=0$ と中心の距離が $2$ である条件は $\dfrac{|4-2m|}{\sqrt{m^2+1}}=2$ である。2 乗して分母を払うと $(4-2m)^2=4(m^2+1)$、展開して $16-16m+4m^2=4m^2+4$ で、$m^2$ が消えて $-16m=-12$、$m=\dfrac34$ である。傾きは 1 つしか出てこない。
接点で解く。接点を $(x_0,y_0)$ とすると $2x_0+4y_0=4$、$x_0^2+y_0^2=4$ である。$x_0=2-2y_0$ を代入すると $(2-2y_0)^2+y_0^2=4$、展開して $5y_0^2-8y_0=0$、$y_0(5y_0-8)=0$ で、$y_0=0$ または $y_0=\dfrac85$ である。

  • $y_0=0$ のとき $x_0=2$、接線は $2x=4$、つまり $x=2$ である。
  • $y_0=\dfrac85$ のとき $x_0=2-\dfrac{16}5=-\dfrac65$、接線は $-\dfrac65x+\dfrac85y=4$、つまり $-3x+4y=10$ で、傾きは $\dfrac34$ である。
    接線 $x=2$ は $y$ 軸に平行で、傾きをもたない。「$y-4=m(x-2)$ とおく」ことは「$y$ 軸に平行でない直線だけを考える」ことなので、この接線を落とした。傾きで解くときは、$y$ 軸に平行な直線 $x=2$ を別に調べる必要がある。中心 $(0,0)$ と直線 $x=2$ の距離は $2$ で半径に等しいので、たしかに接している。

大学数学で見る:「$x^2$ を $x_0x$ に替える」のはなぜか

thm-ccl-tangent の接線 $x_0x+y_0y=r^2$ は、円の方程式 $x^2+y^2=r^2$ の $x^2=x\cdot x$ の片方を $x_0$ に、$y^2=y\cdot y$ の片方を $y_0$ に替えた形をしている。円の方程式を展開した形 $x^2+y^2+lx+my+n=0$ でも、同じ規則で接線が書ける。1 次の項 $lx$ は $x$ と $x_0$ の平均をとって $l\cdot\dfrac{x+x_0}2$ に替える。この規則が正しい理由を、2 次式を「2 つの点の式」に割る見方で説明する。

2 次式の偏極

$F(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n$ とする。2 点 $P=(x_0,y_0)$、$X=(x,y)$ に対して
$$ G(P;X)=x_0x+y_0y+l\cdot\frac{x_0+x}2+m\cdot\frac{y_0+y}2+n $$
と定め、$G$ を $F$ の 偏極 という。$G(P;X)$ は $P$ と $X$ を入れかえても変わらず、$P$ を固定すると $X$ の 1 次式である。$X=P$ とおくと $G(P;P)=x_0^2+y_0^2+lx_0+my_0+n=F(P)$ である。

偏極を書いてみる
  1. $F(x,y)=x^2+y^2-5$($l=m=0$、$n=-5$)では $G(P;X)=x_0x+y_0y-5$ である。$P=(1,2)$ なら $G(P;X)=x+2y-5$ で、$G(P;P)=1+4-5=0=F(P)$ である。
  2. $F(x,y)=x^2+y^2-2x-4y$($l=-2$、$m=-4$、$n=0$)では
    $$ G(P;X)=x_0x+y_0y-(x_0+x)-2(y_0+y) $$
    である。$P=(0,0)$ なら $G(P;X)=-x-2y$ で、$G(P;X)=0$ は ex-ccl-tangent-at-point の (2) の接線 $x+2y=0$ である。
偏極で書いた接線

$F(x,y)=x^2+y^2+lx+my+n$ が円を表す($l^2+m^2-4n>0$)とし、$G$ をその偏極とする。

  1. すべての点 $P$、$X$ について $F(X)=F(P)+2\bigl(G(P;X)-F(P)\bigr)+|X-P|^2$ が成り立つ。
  2. $P$ が円の上の点($F(P)=0$)なら、直線 $G(P;X)=0$ は $P$ での円の接線である。
$F$ を $P$ のまわりで展開する

方針:1 は両辺を $x-x_0$、$y-y_0$ でまとめて比べる。2 は 1 に $F(P)=0$ を代入し、直線上の $P$ 以外の点が円の上にないことを示す。
段 1(左辺を因数分解する)。$F(X)-F(P)=(x^2-x_0^2)+(y^2-y_0^2)+l(x-x_0)+m(y-y_0)$ である。$x^2-x_0^2=(x-x_0)(x+x_0)$ などを使ってまとめると
$$ F(X)-F(P)=(x-x_0)(x+x_0+l)+(y-y_0)(y+y_0+m) $$
となる。
段 2($x+x_0$ を書きかえる)。$x+x_0=2x_0+(x-x_0)$、$y+y_0=2y_0+(y-y_0)$ なので、段 1 の右辺は
$$ (x-x_0)(2x_0+l)+(y-y_0)(2y_0+m)+(x-x_0)^2+(y-y_0)^2 $$
である。最後の 2 項の和は $|X-P|^2$ である。
段 3(偏極と比べる)。定義から
$$ G(P;X)-F(P)=x_0(x-x_0)+y_0(y-y_0)+\frac l2(x-x_0)+\frac m2(y-y_0) $$
で、これを 2 倍すると $(x-x_0)(2x_0+l)+(y-y_0)(2y_0+m)$ になる。段 2 と合わせて $F(X)-F(P)=2\bigl(G(P;X)-F(P)\bigr)+|X-P|^2$ で、1 が示された。
段 4(直線であること)。$G(P;X)$ の $x$、$y$ の係数は $\Bigl(x_0+\dfrac l2,\ y_0+\dfrac m2\Bigr)$ で、中心は $\Bigl(-\dfrac l2,-\dfrac m2\Bigr)$ なので(ex-ccl-general-form の (3))、係数は中心から $P$ へのベクトル $\overrightarrow{CP}$ である。$P$ が円の上にあるとき $|\overrightarrow{CP}|=r>0$ なので、係数は $(0,0)$ でなく、$G(P;X)=0$ は直線を表す。
段 5(共有点は $P$ だけ)。$F(P)=0$ のとき、1 は $F(X)=2G(P;X)+|X-P|^2$ となる。直線 $G(P;X)=0$ 上の点 $X$ では $F(X)=|X-P|^2$ である。$X\ne P$ なら $|X-P|^2>0$ なので $F(X)\ne0$、つまり $X$ は円の上にない。$X=P$ は $G(P;P)=F(P)=0$ なので直線上にも円の上にもある。よって共有点は $P$ ただ 1 つで、この直線は $P$ での接線である(def-ccl-common)。$\square$

段 4 で見たとおり、偏極で書いた接線の法線ベクトルは $\overrightarrow{CP}$ で、thm-ccl-tangent の「半径に垂直な直線」と同じ直線を別の道で求めたことになる。

偏極の一般形

偏極の考え方を一般の形で述べる。ベクトル空間 $V$ 上の関数 $\beta(u,w)$ で、$u$ を固定すると $w$ について線形、$w$ を固定すると $u$ について線形なものを 双線形形式 といい、$\beta(u,w)=\beta(w,u)$ を満たすものを対称という。対称な双線形形式 $\beta$ から $q(v)=\beta(v,v)$ で作った関数を 2 次形式 という。逆に 2 次形式 $q$ から
$$ \beta(u,w)=\frac12\bigl(q(u+w)-q(u)-q(w)\bigr) $$
で元の $\beta$ がただ 1 つに戻る(Axl24 の 9.1、9.18、9.21)。たとえば $q(x,y)=x^2+y^2$ では $\dfrac12\bigl((x+x_0)^2+(y+y_0)^2-x^2-y^2-x_0^2-y_0^2\bigr)=xx_0+yy_0$ で、戻ってくるのは内積である。
円の方程式の左辺 $F$ は 1 次の項と定数項を含むので、そのままでは 2 次形式ではない。そこで点 $(x,y)$ を 3 つの数の組 $(x,y,1)$ とみなすと、$F$ は 3 変数の 2 次形式
$$ \widetilde F(x,y,z)=x^2+y^2+lxz+myz+nz^2 $$
の $z=1$ での値になる。この 2 次形式に対応する対称な双線形形式を $(x_0,y_0,1)$ と $(x,y,1)$ で計算したものが、def-ccl-polarization の $G(P;X)$ である。「$x^2$ を $x_0x$ に、$lx$ を $l\cdot\dfrac{x+x_0}2$ に替える」規則は、この双線形形式を書き下したものにすぎない。同じ規則は楕円・双曲線・放物線の接線にも使える(2次曲線と2次形式)。

円の外の点で偏極をとる

ex-ccl-two-tangents の点 $A(3,1)$ と $F(x,y)=x^2+y^2-5$ で、$G(A;X)=0$ は $3x+y=5$ である。$A$ は円の上にないので、thm-ccl-polar-tangent の 2 は使えない。実際、この直線は $A$ を通らない($3\cdot3+1=10\ne5$)ので、$A$ から引いた接線ではない。
一方、2 つの接点 $(1,2)$、$(2,-1)$ はどちらも $3x+y=5$ を満たす($3+2=5$、$6-1=5$)。$3x+y=5$ は 2 つの接点を結ぶ直線である。理由は次のとおりである。接点 $T$ での接線 $G(T;X)=0$ は $A$ を通るので $G(T;A)=0$ である。$G$ は 2 つの点を入れかえても変わらないので $G(A;T)=0$、つまり $T$ は直線 $G(A;X)=0$ の上にある。この直線を $A$ の 極線 という。極線は 円の接線と極線 で詳しく扱う。

例と反例

この記事の主張がどの仮定に支えられているかを、仮定を外した例で確かめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
曲線が円である中心との距離だけで共有点の個数が決まるex-ccl-ellipse
直線が $y$ 軸に平行でない(傾きで表せる)傾きの方程式の解が接線をすべて与えるex-ccl-vertical-tangent
点 $P$ が円の上にある$x_0x+y_0y=r^2$ は $P$ での接線であるex-ccl-polar-outside
代入した式が本当に 2 次式である共有点が 1 個なら接する(判別式が $0$)ex-ccl-parabola
$l^2+m^2-4n>0$$x^2+y^2+lx+my+n=0$ は円を表すex-ccl-general-form の (2)
楕円では距離で判定できない

楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ の中心は原点である。直線 $x=\dfrac65$ と $y=\dfrac65$ は、どちらも原点からの距離が $\dfrac65$ である。

  • $x=\dfrac65$ を代入すると $\dfrac{36}{100}+y^2=1$、$y^2=\dfrac{16}{25}$ で、$y=\pm\dfrac45$ の 2 点で交わる。
  • $y=\dfrac65$ を代入すると $\dfrac{x^2}4=1-\dfrac{36}{25}=-\dfrac{11}{25}<0$ で、共有点はない。
    中心からの距離が同じでも共有点の個数が違う(図 3)。thm-ccl-position の証明の段 3($|\overrightarrow{CX}|^2=d^2+t^2$)は直線だけの計算なので、楕円でもそのまま成り立つ。崩れるのは段 4 である。段 4 は、円の上の点が中心からの距離 $r$ の点であること($X$ が円の上にある $\iff$ $|\overrightarrow{CX}|=r$)を使っていた。楕円の上の点は中心からの距離が一定でないので、この書きかえができず、距離による判定は使えない。一方、代入して 2 次方程式の判別式を見る方法は、楕円でもそのまま使える。

楕円 x²/4 + y² = 1 と、中心からの距離がどちらも 6/5 の 2 本の直線。一方は 2 点で交わり、もう一方は交わらない 楕円 x²/4 + y² = 1 と、中心からの距離がどちらも 6/5 の 2 本の直線。一方は 2 点で交わり、もう一方は交わらない

共有点が 1 個でも接しない

放物線 $y=x^2$ と直線 $x=1$ の共有点は $(1,1)$ だけである($x=1$ を代入すると $y=1$)。しかし直線 $x=1$ は放物線を横切っていて、接してはいない。代入した式は $y=1$ という 1 次式で、2 次方程式にならないので、判別式は使えない。
これに対して直線 $y=2x-1$ では、代入すると $x^2-2x+1=0$、つまり $(x-1)^2=0$ で重解 $x=1$ をもち、$(1,1)$ で接する。
円の場合は、どの直線を代入しても $x$ または $y$ の 2 乗の係数が $a^2+b^2>0$(prf-ccl-disc-dist の段 2)になり、必ず 2 次方程式になる。だから円では「共有点がちょうど 1 個」を接することの定義にしてよい(def-ccl-common)。放物線の接線を定義するには、微分を使う(接線・法線と曲線の凹凸)。

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関連項目

参考文献

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