開被覆(open cover)とは、位相空間 $X$ の開集合の族であって、その合併が $X$ 全体になるもののことであり、開被覆の部分族で再び被覆になるものを部分被覆という。開被覆には、有限、可算、点有限(各点を含む成員が有限個)、局所有限(各点のある近傍と交わる成員が有限個)、星状有限(各成員と交わる成員が有限個)の条件があり、有限 ⇒ 星状有限 ⇒ 局所有限 ⇒ 点有限 が成り立つが逆は成り立たない。任意の開被覆が有限部分被覆・可算部分被覆を持つ空間がコンパクト・Lindelöf 空間、星状有限・局所有限・点有限な開細分を持つ空間が強パラコンパクト・パラコンパクト・メタコンパクト空間であり、コンパクト ⇒ 強パラコンパクト ⇒ パラコンパクト ⇒ メタコンパクト が成り立つ。第二可算空間は Lindelöf であり、局所有限な族の合併の閉包は閉包の合併に等しい。
位相空間 $X$ の部分集合の族(部分集合の集合)$\mathcal{U}$ が $X$ の被覆であるとは、$\bigcup\mathcal{U}=X$、すなわち $X$ の各点がある $U\in\mathcal{U}$ に属することをいう。成員がすべて開集合である被覆を $X$ の開被覆(open cover)といい、成員がすべて閉集合である被覆を閉被覆という。添字づけて $\mathcal{U}=\{U_i\mid i\in I\}$ と書くとき、開被覆であることは各 $U_i$ が開集合で $X=\bigcup_{i\in I}U_i$ となることである。
$X$ の部分集合 $A$ に対し、$X$ の開集合の族 $\mathcal{U}$ で $A\subset\bigcup\mathcal{U}$ となるものを、$A$ の($X$ における)開被覆という。
$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ について、次の用語を用いる。
開被覆は、空間を「各点の近くを見るための開集合の集まり」で覆ったものである。位相空間の多くの性質は、「どんな開被覆をとっても、それを有限個・可算個・点有限・局所有限・星状有限の開被覆で置き換えられるか」という形で述べられる。コンパクト性は有限部分被覆の存在、Lindelöf 性は可算部分被覆の存在であり、パラコンパクト性やメタコンパクト性は局所有限・点有限な開細分の存在である。有限性の条件の間には「有限 ⇒ 星状有限 ⇒ 局所有限 ⇒ 点有限」という含意があり、対応する空間のクラスの間にも同じ向きの含意がある。
$X=\mathbb{R}$ とする。
$A=[0,1]\subset\mathbb{R}$ とする。$\mathbb{R}$ の開集合の族 $\{(-1,1/2),\ (1/4,2)\}$ は $A$ の $\mathbb{R}$ における開被覆である。各成員と $A$ の共通部分 $[0,1/2)$、$(1/4,1]$ は相対位相に関する $A$ の開集合であり、$A$ の(部分空間としての)開被覆をなす(prop-open-cover-subspace)。
次の例は、prop-open-cover-chain の含意「有限 ⇒ 星状有限 ⇒ 局所有限 ⇒ 点有限」のどれも逆が成り立たないこと、および「開被覆 ⇒ 点有限」が成り立たないことを示す。すべて $X=\mathbb{R}$ とする。
開被覆は集合の族であり、被覆空間(covering space)とは別の概念である。被覆写像とは、連続写像 $p\colon E\to B$ であって、$B$ の各点が次の開近傍 $U$(被覆近傍)を持つものをいい、このとき $E$ を $B$ の被覆空間という:$p^{-1}(U)$ は $E$ の開集合の非交和であり、その各片は $p$ により $U$ に同相に写される。被覆写像の定義に現れる被覆近傍の全体は $B$ の開被覆であるが、開被覆自体は写像を伴わない。
$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ について、有限ならば星状有限、星状有限ならば局所有限、局所有限ならば点有限である。
有限 ⇒ 星状有限:成員が有限個なので、各成員と交わる成員も有限個である。星状有限 ⇒ 局所有限:$x\in X$ に対し、$x\in U$ となる $U\in\mathcal{U}$ をとる。$U$ は開集合なので $x$ の近傍であり、$U$ と交わる成員は星状有限性により有限個である。局所有限 ⇒ 点有限:$x$ の近傍 $V$ で有限個の成員としか交わらないものをとると、$x$ を含む成員は $V$ と交わる($x\in V\cap U$)ので有限個である。$\square$
$A$ を位相空間 $X$ の部分集合とし、相対位相を入れる。
$\mathcal{A}$ を位相空間 $X$ の部分集合の局所有限な族とする。このとき閉包の族 $\{\overline{A}\mid A\in\mathcal{A}\}$ も局所有限であり、$\overline{\bigcup\mathcal{A}}=\bigcup_{A\in\mathcal{A}}\overline{A}$ が成り立つ。特に、局所有限な閉集合の族の合併は閉集合である。
$x\in X$ に対し、$x$ の近傍 $V$ で有限個の $A\in\mathcal{A}$ としか交わらないものをとり、$V$ に含まれる $x$ の開近傍 $W$ をとる。開集合 $W$ が $\overline{A}$ と交わるなら $W$ は $A$ とも交わる($W\cap\overline{A}$ の点の近傍 $W$ は $A$ と交わる)ので、$W$ と交わる $\overline{A}$ は有限個であり、閉包の族は局所有限である。
包含 $\supset$ は $A\subset\bigcup\mathcal{A}$ から従う。包含 $\subset$:$x\in\overline{\bigcup\mathcal{A}}$ とし、上の $W$ と交わる成員を $A_1,\dots,A_k$ とする。$x$ がどの $\overline{A_i}$ にも属さないと仮定すると、$W':=W\setminus(\overline{A_1}\cup\cdots\cup\overline{A_k})$ は $x$ の開近傍であり、$W'$ は $A_1,\dots,A_k$ と交わらず、他の成員とも($W$ と交わらないので)交わらない。よって $W'\cap\bigcup\mathcal{A}=\emptyset$ となり、$x\in\overline{\bigcup\mathcal{A}}$ に反する。ゆえに $x\in\overline{A_i}$ となる $i$ がある。最後の主張は、閉集合 $A$ について $\overline{A}=A$ であることから従う。$\square$
位相空間 $X$ が高々可算な開基 $\mathcal{B}$ を持つならば、$X$ の任意の開被覆は高々可算な部分被覆を持つ。すなわち $X$ は Lindelöf である。また、有限部分被覆は高々可算なので、コンパクト空間は Lindelöf である。
$\mathcal{U}$ を開被覆とし、$\mathcal{B}':=\{B\in\mathcal{B}\mid B\subset U\text{ となる }U\in\mathcal{U}\text{ が存在する}\}$ とおく。$\mathcal{B}'$ は高々可算なので、可算選択公理により各 $B\in\mathcal{B}'$ に対し $B\subset U_B$ となる $U_B\in\mathcal{U}$ を選べる。$x\in X$ に対し $x\in U$ となる $U\in\mathcal{U}$ をとると、$\mathcal{B}$ が開基なので $x\in B\subset U$ となる $B\in\mathcal{B}$ があり、$B\in\mathcal{B}'$、$x\in B\subset U_B$ である。よって $\{U_B\mid B\in\mathcal{B}'\}$ は高々可算な部分被覆である。$\square$
位相空間 $X$ について、任意の開被覆が星状有限な開細分を持つとき強パラコンパクト、局所有限な開細分を持つときパラコンパクト、点有限な開細分を持つときメタコンパクトという(本記事ではコンパクトを含めいずれも分離公理を仮定しない)。このとき、コンパクトならば強パラコンパクト、強パラコンパクトならばパラコンパクト、パラコンパクトならばメタコンパクトである。
$\mathcal{U}$ を開被覆とする。$X$ がコンパクトなら、有限部分被覆 $\mathcal{V}$ は $\mathcal{U}$ の有限な開細分(各 $V\in\mathcal{V}$ は $V\in\mathcal{U}$ に含まれる)であり、prop-open-cover-chain により星状有限である。開細分 $\mathcal{V}$ はそれ自身 $X$ の開被覆なので、prop-open-cover-chain により、星状有限な開細分は局所有限な開細分であり、局所有限な開細分は点有限な開細分である。$\square$
| 開被覆に課す条件 | 「任意の開被覆がその条件を満たす部分被覆・開細分を持つ」空間 |
|---|---|
| 有限な部分被覆 | コンパクト空間 |
| 高々可算な部分被覆 | Lindelöf 空間 |
| 星状有限な開細分 | 強パラコンパクト空間 |
| 局所有限な開細分 | パラコンパクト空間 |
| 点有限な開細分 | メタコンパクト空間 |
パラコンパクト空間・強パラコンパクト空間・メタコンパクト空間の定義には、Hausdorff 性や正則性を含める流儀(Engelking89 §5.1・§5.3、公開記事 パラコンパクト空間)と含めない流儀(Mun00 §41)がある。四つのクラスすべてに同じ分離公理を付け加えても、prop-open-cover-space-classes の含意はそのまま成り立つ。第二可算空間が Lindelöf であることは公開記事 Lindelöf空間・第二可算公理 でも扱われるが、本記事では開被覆の操作の例として証明を与えた。局所有限な開被覆は、prop-open-cover-locally-finite-closure により閉包をとっても局所有限であり、この性質は 1 の分割の構成で用いられる。