弧・弦・中心角

同義語:弧と弦と中心角の関係arcs, chords and central angles

概要

弧・弦・中心角(arcs, chords and central angles)とは、円周上の 2 点を結ぶ線分(弦)、2 点で分けた円周の部分(弧)、弧の両端と中心を結ぶ角(中心角)の 3 つの関係である。半径の等しい円(同じ円を含む)で、劣弧か半円どうしを比べると、中心角が等しいこと、弧の長さが等しいこと、弦の長さが等しいことは同値である。証明は中心と弦の両端でできる二等辺三角形の合同による。半径 $r$ の円で中心角 $\theta$($0^\circ<\theta\le180^\circ$)の弧に対する弦の長さは $2r\sin\frac\theta2$ で、中心角が大きいほど弦は長い。中心を通らない弦に中心から下ろした垂線は、弦と劣弧を 2 等分する。半径の違う円どうしや、劣弧と優弧を比べると、同値は成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の合同条件, 三角形の辺と角の大小, 一般角と弧度法, 三角比と鈍角への拡張

高校での出発点:同じ円の中で弦の長さを測る

円の周の上に 2 点をとって線分で結ぶと、円の中に 弦 ができる。弦の両端と円の中心を結ぶと、中心のまわりに角ができる。この角が同じなら弦の長さも同じになりそうだし、弦が同じなら角も同じになりそうである。図 1 は、中心 $O$、弦 $AB$、中心角 $\theta$ と、弦の両端を結ぶ 2 つの弧を描いたものである。まず、手で計算できる例で確かめる。
中心 O、弦 AB、中心角 θ の劣弧 AB(青)と優弧 AB(灰色の破線) 中心 O、弦 AB、中心角 θ の劣弧 AB(青)と優弧 AB(灰色の破線)

半径 $5$ の円で中心角を変える

半径 $5$ の円の中心を $O$ とし、円周上の 2 点 $A$、$B$ に対して $\angle AOB=\theta$ とする。$OA=OB=5$ なので、三角形 $OAB$ は二等辺三角形である。
(1) $\theta=60^\circ$ のとき。二等辺三角形の底角は等しく、内角の和は $180^\circ$ なので、底角は $\dfrac{180^\circ-60^\circ}2=60^\circ$ である。3 つの角がすべて $60^\circ$ なので三角形 $OAB$ は正三角形で、$AB=5$ である。
(2) $\theta=90^\circ$ のとき。三角形 $OAB$ は直角二等辺三角形なので、三平方の定理より $AB^2=5^2+5^2=50$、$AB=5\sqrt2$ である。
(3) $\theta=120^\circ$ のとき。$O$ から $AB$ に垂線 $OM$ を下ろす。二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺に垂直で底辺を 2 等分する(下の lem-acc-perp で確かめる)ので、$\angle AOM=60^\circ$、$AM=MB$ である。直角三角形 $OAM$ で $AM=OA\sin60^\circ=5\cdot\dfrac{\sqrt3}2$ なので
$$ AB=2AM=5\sqrt3 $$
である。
中心角 $60^\circ$、$90^\circ$、$120^\circ$ に対して、弦の長さは $5$、$5\sqrt2\fallingdotseq7.07$、$5\sqrt3\fallingdotseq8.66$ と長くなる。ただし中心角が 2 倍の $120^\circ$ になっても、弦は 2 倍の $10$ にはならない。

位置の違う 2 本の弦

原点 $O$ を中心とする半径 $5$ の円 $x^2+y^2=25$ の上に、4 点 $P(4,3)$、$Q(4,-3)$、$R(5,0)$、$S\left(\dfrac75,\dfrac{24}5\right)$ をとる。どれも $x^2+y^2=25$ を満たす($S$ は $\dfrac{49}{25}+\dfrac{576}{25}=\dfrac{625}{25}=25$)。
(1) 弦の長さ。$PQ^2=0^2+6^2=36$、$RS^2=\left(5-\dfrac75\right)^2+\left(\dfrac{24}5\right)^2=\dfrac{324}{25}+\dfrac{576}{25}=\dfrac{900}{25}=36$ なので、$PQ=RS=6$ である。
(2) 中心角。ベクトルの内積で余弦を求める(ベクトルの内積(高校数学))。
$$ \cos\angle POQ=\frac{\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{OQ}}{5\cdot5}=\frac{4\cdot4+3\cdot(-3)}{25}=\frac7{25},\qquad \cos\angle ROS=\frac{5\cdot\frac75+0\cdot\frac{24}5}{25}=\frac7{25} $$
余弦が等しく、どちらの角も $0^\circ$ と $180^\circ$ の間にあるので、$\angle POQ=\angle ROS$ である(約 $73.7^\circ$)。
(3) 中心から弦までの距離。弦 $PQ$ の中点は $M(4,0)$、弦 $RS$ の中点は $N\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ で、$OM=4$、$ON=\sqrt{\dfrac{256}{25}+\dfrac{144}{25}}=\sqrt{16}=4$ である。長さの等しい弦は、中心から同じ距離にある。

半径 5 の円の、位置の違う長さ 6 の 2 本の弦。中心から弦の中点までの距離はどちらも 4 である 半径 5 の円の、位置の違う長さ 6 の 2 本の弦。中心から弦の中点までの距離はどちらも 4 である
2 つの例から、次の問いが出てくる。この記事ではこれに答える。

  1. 中心角・弧・弦の 3 つのうち 1 つが等しければ、残りも等しいか。どんな条件が要るか。→ thm-acc-main、ex-acc-cx-radius、ex-acc-cx-major
  2. 弦の長さを中心角で表す式はあるか。中心角が大きいほど弦は長いか。→ thm-acc-length
  3. 中心から弦に下ろした垂線は、弦と弧をどう分けるか。→ lem-acc-perp、cor-acc-bisect
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    二等辺三角形 $OAB$ の合同中心角・弧・弦の対応中心のまわりの回転と折り返し
    直角三角形 $OAM$ の正弦弦の長さ $2r\sin\dfrac\theta2$円周上の 2 点の距離
    弧の長さ $r\theta$ と弦の比べ方中心角が大きいほど弦は長い$\dfrac{\sin x}x\to1$ と関数の凹凸

言葉の準備:弦・弧・中心角

以下、円の中心を $O$、半径を $r>0$ とする。弧と中心角の定め方は用語解説 円周角の定理 の定義と同じで、ここでは記事の中で使う形で述べ直す。

弦・弧・中心角

$A$、$B$ を円周上の異なる 2 点とする。
(1) 線分 $AB$ を 弦 という。中心 $O$ を通る弦を 直径 という。
(2) 円周から $A$、$B$ を除くと 2 つの部分に分かれる。それぞれを $A$ と $B$ を結ぶ 弧 という。
(3) $O$ が直線 $AB$ の上にないとき、$\angle AOB$ は $0^\circ$ と $180^\circ$ の間の角である。2 つの弧のうち、角 $\angle AOB$ の内部にある方を 劣弧、他方を 優弧 という。劣弧の 中心角 は $\angle AOB$、優弧の中心角は $360^\circ-\angle AOB$ と定める。
(4) $AB$ が直径のときは、2 つの弧をどちらも 半円 といい、中心角はどちらも $180^\circ$ と定める。
弧 $AB$ と弦 $AB$ は同じ 2 点 $A$、$B$ を両端にもつ。このとき、弦 $AB$ を「弧 $AB$ に対する弦」、弧を「弦 $AB$ に対する弧」という。

冒頭の図 1 は、半径 $5$ の円で中心角 $\theta=100^\circ$ の劣弧(青)、優弧(灰色の破線)、弦(赤)を描いたものである。1 本の弦には 2 つの弧が対応し、その中心角の和は $360^\circ$ である。
弧の長さは、一般角と弧度法 の定理「扇形の弧の長さと面積」のとおり、中心角に比例する。中心角が $\alpha^\circ$ の弧の長さは $2\pi r\cdot\dfrac{\alpha}{360}$ で、中心角を弧度法で $\theta$ と表せば $r\theta$ である。この記事ではこれを認めて使う(弧の長さの厳密な定義には積分が要る。媒介変数表示と曲線の長さ)。

中心角・弧の長さ・弦の長さを並べる

半径 $r=1$ の円で、中心角が $60^\circ$、$90^\circ$、$120^\circ$、$180^\circ$ の劣弧(最後は半円)を考える。弧の長さは $r\theta=\theta$ なので、順に $\dfrac\pi3\fallingdotseq1.047$、$\dfrac\pi2\fallingdotseq1.571$、$\dfrac{2\pi}3\fallingdotseq2.094$、$\pi\fallingdotseq3.142$ である。弦の長さは ex-acc-start と同じ計算を半径 $1$ で行うと、$1$、$\sqrt2\fallingdotseq1.414$、$\sqrt3\fallingdotseq1.732$、$2$ である(中心角 $180^\circ$ の弦は直径)。
どの場合も、弦の長さは弧の長さより短い。弦は 2 点を結ぶ線分で、弧は同じ 2 点を結ぶ曲がった道だからである。

主定理 1:中心角・弧・弦の対応

弦に対する弧は 2 つあるので、「弦が等しい」から「弧が等しい」を言うには、どちらの弧で比べるかを決めておく必要がある。この記事では、中心角が $180^\circ$ 以下の弧、つまり劣弧か半円で比べる。

中心角・弧・弦の対応

半径の等しい 2 つの円(同じ円でもよい)の上に、弧 $AB$ と弧 $A'B'$ をとる。どちらも劣弧か半円(中心角が $180^\circ$ 以下)とする。このとき、次の 3 つの条件は同値である。
(R1) 2 つの弧の中心角が等しい。
(R1) 2 つの弧の長さが等しい。
(R1) 2 つの弧に対する弦の長さが等しい:$AB=A'B'$。

二等辺三角形の合同で示す

方針:条件 (i) と (ii) は弧の長さの公式で結びつける。条件 (i) と (iii) は、中心と弦の両端でできる三角形の合同で結びつける。2 つの円の中心を $O$、$O'$、共通の半径を $r$ とし、2 つの弧の中心角を $\theta$、$\theta'$ とする($0^\circ<\theta\le180^\circ$、$0^\circ<\theta'\le180^\circ$)。
段 1(条件 (i) と (ii) の同値)。弧の長さは $2\pi r\cdot\dfrac{\theta}{360^\circ}$ と $2\pi r\cdot\dfrac{\theta'}{360^\circ}$ である(一般角と弧度法 の扇形の弧の長さ)。半径 $r$ が共通なので、2 つが等しいことと $\theta=\theta'$ は同値である。
段 2(半円の場合)。$\theta=180^\circ$ なら $AB$ は直径で、$AB=2r$ である。$\theta<180^\circ$ なら $O$ は直線 $AB$ の上になく、三角形 $OAB$ ができる。三角形の 2 辺の和は残りの 1 辺より大きい(三角形の辺と角の大小 の系)ので、$AB< OA+OB=2r$ である。したがって、$AB=2r$ であることと $\theta=180^\circ$ であることは同値である。弧 $A'B'$ についても同じである。
段 3(条件 (i) から (iii))。$\theta=\theta'$ とする。$\theta=\theta'=180^\circ$ なら、段 2 より $AB=2r=A'B'$ である。$\theta=\theta'<180^\circ$ なら、三角形 $OAB$ と $O'A'B'$ で
$$ OA=O'A'=r,\qquad OB=O'B'=r,\qquad \angle AOB=\theta=\theta'=\angle A'O'B' $$
である。2 辺とその間の角が等しいので、2 つの三角形は合同である(三角形の合同条件)。対応する辺として $AB=A'B'$ である。
段 4(条件 (iii) から (i))。$AB=A'B'$ とする。$AB=2r$ なら $A'B'=2r$ で、段 2 より $\theta=\theta'=180^\circ$ である。$AB<2r$ なら、段 2 より $\theta<180^\circ$、$\theta'<180^\circ$ で、三角形 $OAB$ と $O'A'B'$ は
$$ OA=O'A'=r,\qquad OB=O'B'=r,\qquad AB=A'B' $$
を満たす。3 辺が等しいので 2 つの三角形は合同で(三角形の合同条件)、対応する角として $\angle AOB=\angle A'O'B'$、つまり $\theta=\theta'$ である。
段 1〜4 で、条件 (i)、(ii)、(iii) が互いに同値であることが示された。

証明の中心は段 3 と段 4 で、中心と弦の両端を結んでできる二等辺三角形の合同である。半径が等しいことは、段 1 の「$r$ が共通」、段 3・段 4 の「$OA=O'A'$」、段 4 の「$A'B'=2r$ なら $\theta'=180^\circ$」で使った。劣弧か半円に限ることは、中心角が角 $\angle AOB$ そのもの(または $180^\circ$)であるために使った。

Euclid『原論』との対応

thm-acc-main は、Euclid『原論』第 III 巻の命題 26〜29 にあたる(Hea56)。命題 26 は「等しい円で、中心または円周で等しい角は等しい弧の上に立つ」、命題 27 はその逆、命題 28 は「等しい円で、等しい弦は大きい弧を大きい弧に、小さい弧を小さい弧に等しく切り取る」、命題 29 はその逆(等しい弧は等しい弦で張られる)である。『原論』は弧の長さを数で測らず、弧どうしを重ね合わせて「等しい」と言う。

この記事の証明との対応を開く

命題 28 が劣弧どうし・優弧どうしを分けて述べているのは、rem-acc-major の注意と同じである。命題 29 の証明は、この記事の prf-acc-main の段 3 と同じく、中心と弦の両端でできる三角形の 2 辺とその間の角による。Heath は命題 28 への注で、Euclid の証明が弦が中心を通る場合(2 つの弧が半円になる場合)を扱っていないことを指摘し、その場合を補っている(p. 60)。この記事では、その場合を prf-acc-main の段 2 で扱った。

長さ $6$ の 2 本の弦で確かめる

ex-acc-two-chords の弦 $PQ$ と $RS$ は長さがどちらも $6$ で、中心角は $\cos\theta=\dfrac7{25}$ を満たす同じ角 $\theta\fallingdotseq73.7^\circ$ だった。これは条件 (iii) から (i) が出ることの例である。
弧の長さも確かめる。$\theta$ を弧度法で表すと約 $1.287$ なので、劣弧 $PQ$、$RS$ の長さはどちらも約 $5\times1.287=6.435$ で等しい(条件 (ii))。弧の長さ $6.435$ は弦の長さ $6$ より長い。
さらに、原点のまわりに角 $\alpha$($\cos\alpha=\dfrac45$、$\sin\alpha=\dfrac35$)だけ回転すると、$Q$ は $R$ に、$P$ は $S$ に移る。弦 $QP$ が回転でそのまま弦 $RS$ に重なるので、弦・弧・中心角がまとめて等しい。

回転の計算を開く

点 $(x,y)$ を原点のまわりに角 $\alpha$ だけ回転した点は $(x\cos\alpha-y\sin\alpha,\ x\sin\alpha+y\cos\alpha)$ である。$Q(4,-3)$ は $\left(4\cdot\dfrac45-(-3)\cdot\dfrac35,\ 4\cdot\dfrac35+(-3)\cdot\dfrac45\right)=(5,0)=R$ に、$P(4,3)$ は $\left(4\cdot\dfrac45-3\cdot\dfrac35,\ 4\cdot\dfrac35+3\cdot\dfrac45\right)=\left(\dfrac75,\dfrac{24}5\right)=S$ に移る。

中心から弦に下ろした垂線

ex-acc-start の (3) と ex-acc-two-chords の (3) では、中心から弦に下ろした垂線の足が弦の中点になっていた。これはいつでも成り立つ。

中心から弦に下ろした垂線

弦 $AB$ が中心 $O$ を通らないとし、$\angle AOB=\theta$ とする。$O$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の足を $M$ とすると、$M$ は弦 $AB$ の中点であり、$\angle AOM=\angle BOM=\dfrac\theta2$ である。

三平方の定理と 3 辺の合同

段 1($M$ は中点)。$OM\perp AB$ なので、三角形 $OMA$ と $OMB$ は $M$ で直角である($M$ が $A$ や $B$ に一致する場合は下で除く)。三平方の定理より
$$ MA^2=OA^2-OM^2=r^2-OM^2,\qquad MB^2=OB^2-OM^2=r^2-OM^2 $$
なので $MA=MB$ である。もし $M=A$ なら $MB=MA=0$ で $B=A$ となり、$A\ne B$ に反する。$M=B$ の場合も同じである。直線 $AB$ の上で $A$ と $B$ から等しい距離にある点は線分 $AB$ の中点だけなので、$M$ は弦 $AB$ の中点である。
段 2(角の 2 等分)。三角形 $OMA$ と $OMB$ は、$OA=OB=r$、$MA=MB$、$OM$ が共通で、3 辺が等しいので合同である(三角形の合同条件)。よって $\angle AOM=\angle BOM$ である。$M$ は線分 $AB$ の上にあるので半直線 $OM$ は角 $\angle AOB$ の内部を通り、$\angle AOM+\angle MOB=\angle AOB=\theta$ である。2 つの角は等しいので、どちらも $\dfrac\theta2$ である。

垂線は弧も 2 等分する

弦 $AB$ が中心 $O$ を通らないとし、$M$ を弦 $AB$ の中点とする。
(1) 弦 $AB$ の垂直二等分線は中心 $O$ を通り、直線 $OM$ に一致する。
(2) 半直線 $OM$ が円と交わる点を $N$ とすると、$N$ は劣弧 $AB$ を 2 等分する。つまり弧 $AN$ と弧 $NB$ の中心角と長さは等しく、弦 $AN$ と $NB$ の長さも等しい。
(3) 中心から弦までの距離は $OM=\sqrt{r^2-\left(\dfrac{AB}2\right)^2}$ である。特に、同じ円(または半径の等しい円)の中で、長さの等しい弦は中心から等しい距離にある。

補題の足 $M$ を使う
  1. $OA=OB$ なので、$O$ は $A$ と $B$ から等しい距離にある。2 点から等しい距離にある点は垂直二等分線の上にあるので、$O$ は弦 $AB$ の垂直二等分線の上にある。lem-acc-perp より、$O$ から下ろした垂線の足は中点 $M$ なので、直線 $OM$ は $M$ を通り $AB$ に垂直である。これは垂直二等分線そのものである。
  2. lem-acc-perp より $\angle AON=\angle AOM=\dfrac\theta2$、$\angle NOB=\dfrac\theta2$ である($\theta=\angle AOB<180^\circ$)。$N$ は劣弧 $AB$ の上にあり、弧 $AN$、$NB$ はどちらも中心角 $\dfrac\theta2$ の劣弧である。thm-acc-main により、2 つの弧の長さと弦 $AN$、$NB$ の長さは等しい。
  3. 直角三角形 $OMA$ で、三平方の定理より $OM^2=OA^2-AM^2=r^2-\left(\dfrac{AB}2\right)^2$ である。右辺は $r$ と $AB$ だけで決まる。
弧の中点を座標で求める

ex-acc-two-chords の弦 $RS$($R(5,0)$、$S\left(\dfrac75,\dfrac{24}5\right)$)の中点は $N_0\left(\dfrac{16}5,\dfrac{12}5\right)$ で、$ON_0=4$ である。半直線 $ON_0$ の上で原点からの距離が $5$ の点は
$$ \frac54\left(\frac{16}5,\frac{12}5\right)=(4,3) $$
で、これは ex-acc-two-chords の点 $P$ である。cor-acc-bisect の (2) より、$P$ は劣弧 $RS$ の中点である。実際、$RP^2=(5-4)^2+(0-3)^2=10$、$PS^2=\left(4-\dfrac75\right)^2+\left(3-\dfrac{24}5\right)^2=\dfrac{169}{25}+\dfrac{81}{25}=10$ で、弦 $RP$ と $PS$ の長さは等しい。
中心から弦までの距離は、(3) の式で $\sqrt{25-3^2}=4$ で、ex-acc-two-chords の (3) と一致する。

3 点を通る円の中心を垂直二等分線で求める

3 点 $A(4,6)$、$B(-2,6)$、$C(5,-1)$ を通る円の中心を求める。cor-acc-bisect の (1) より、中心は弦 $AB$ の垂直二等分線と弦 $AC$ の垂直二等分線の交点である。計算すると、中心は $(1,2)$、半径は $5$ である。

計算を開く

弦 $AB$ の中点は $(1,6)$ で、$AB$ は $x$ 軸に平行なので、垂直二等分線は $x=1$ である。弦 $AC$ の中点は $\left(\dfrac92,\dfrac52\right)$、$\overrightarrow{AC}=(1,-7)$ なので、垂直二等分線は $1\cdot\left(x-\dfrac92\right)-7\left(y-\dfrac52\right)=0$、つまり $x-7y+13=0$ である。$x=1$ を代入すると $7y=14$、$y=2$ なので、中心は $(1,2)$ である。半径は $\sqrt{(4-1)^2+(6-2)^2}=5$ で、$B$、$C$ までの距離も $\sqrt{9+16}=5$、$\sqrt{16+9}=5$ と一致する。

主定理 2:弦の長さの式と大小

ex-acc-start の (3) の計算を、一般の中心角で行う。

弦の長さ

半径 $r$ の円で、中心角 $\theta$($0^\circ<\theta\le180^\circ$)の弧に対する弦の長さは
$$ 2r\sin\frac\theta2 $$
である。さらに、$0^\circ<\theta<\theta'\le180^\circ$ なら、中心角 $\theta$ の弧に対する弦は、中心角 $\theta'$ の弧に対する弦より短い。

直角三角形 $OAM$ の正弦

段 1(弦の長さ)。$\theta=180^\circ$ なら弦は直径で、長さは $2r=2r\sin90^\circ$ である。$\theta<180^\circ$ なら弦 $AB$ は中心を通らないので、lem-acc-perp の足 $M$ は $AB$ の中点で、$\angle AOM=\dfrac\theta2$ である。直角三角形 $OMA$($M$ で直角)で、斜辺は $OA=r$、角 $\dfrac\theta2$ の向かいの辺は $AM$ なので、正弦の定義より
$$ AM=r\sin\frac\theta2,\qquad AB=2AM=2r\sin\frac\theta2 $$
である。
段 2(大小)。$\theta'=180^\circ$ なら、中心角 $\theta'$ の弦は直径 $2r$ で、中心角 $\theta<180^\circ$ の弦は prf-acc-main の段 2 より $2r$ より短い。$\theta'<180^\circ$ なら、2 つの弦に対して三角形 $OAB$ と $O'A'B'$ をつくる。どちらも 2 辺が $r$ と $r$ で、その間の角が $\theta<\theta'$ である。2 辺が等しい 2 つの三角形では、間の角が大きい方が第 3 辺も長い(三角形の辺と角の大小 の蝶番の定理)ので、$AB< A'B'$ である。

段 2 の別証(正弦の増え方)を開く

$0^\circ<\dfrac\theta2<\dfrac{\theta'}2\le90^\circ$ で、$\sin$ は $0^\circ$ から $90^\circ$ まで増えるので、$2r\sin\dfrac\theta2<2r\sin\dfrac{\theta'}2$ である。

円周を $n$ 等分した点を結ぶ

半径 $r$ の円周を $n$ 等分する点を順に結ぶと、正 $n$ 角形ができる。隣り合う 2 点の間の弧の中心角は $\dfrac{360^\circ}n$ なので、thm-acc-main により $n$ 本の辺はすべて等しく、thm-acc-length によりその長さは $2r\sin\dfrac{180^\circ}n$ である。

$n$中心角1 辺の長さ $2r\sin\dfrac{180^\circ}n$
$3$$120^\circ$$2r\sin60^\circ=\sqrt3\,r\fallingdotseq1.732r$
$4$$90^\circ$$2r\sin45^\circ=\sqrt2\,r\fallingdotseq1.414r$
$5$$72^\circ$$2r\sin36^\circ\fallingdotseq1.176r$
$6$$60^\circ$$2r\sin30^\circ=r$

$n$ が大きいほど中心角が小さくなり、thm-acc-length のとおり 1 辺は短くなる。周の長さ $2nr\sin\dfrac{180^\circ}n$ を円周 $2\pi r$ と比べると円周率の評価になる。これは 正多角形で円周率を挟む で扱う。

優弧に対する弦

優弧(中心角 $\theta$ が $180^\circ<\theta<360^\circ$)に対する弦は、残りの劣弧(中心角 $360^\circ-\theta$)に対する弦と同じ線分である。その長さは
$$ 2r\sin\frac{360^\circ-\theta}2=2r\sin\left(180^\circ-\frac\theta2\right)=2r\sin\frac\theta2 $$
で、式は同じ形になる。ただし優弧どうしでは、中心角が大きいほど弦は 短い(残りの劣弧が小さくなるから)。thm-acc-main は、2 つの弧がどちらも優弧の場合にも、残りの劣弧どうしに当てはめれば成り立つ。成り立たないのは、劣弧と優弧を比べるときである(ex-acc-cx-major)。

cor-acc-bisect の (3) と thm-acc-length を合わせると、半径を決めた円の中では、弦の長さ・中心から弦までの距離・中心角($180^\circ$ 以下)の 3 つは、どれか 1 つが決まれば残りも決まる。図 2 の 2 本の弦では、半径 $5$、弦の長さ $6$ から、距離は $\sqrt{25-9}=4$、中心角 $\theta$ は $\sin\dfrac\theta2=\dfrac35$ を満たす角(約 $73.7^\circ$)である。

どの弧どうしで比べるか

thm-acc-main の「どちらも劣弧か半円」という条件を、ほかの組み合わせと比べる。表の「○」は、半径の等しい円で成り立つことを表す。

比べる 2 つの弧中心角が等しい ⇒ 弦が等しい弦が等しい ⇒ 中心角が等しい理由・例
劣弧と劣弧○○thm-acc-main
半円と半円○○弦はどちらも直径 $2r$
優弧と優弧○○残りの劣弧どうしに thm-acc-main を使う(rem-acc-major)
劣弧と優弧中心角が等しくなることはない×同じ弦の 2 つの弧(ex-acc-cx-major)
半径の違う円の劣弧××ex-acc-cx-radius

例と反例

thm-acc-main と thm-acc-length の条件を外したり、主張を読み違えたりすると、次のように崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
半径が等しい半径 $1$ と $2$ の円で中心角 $60^\circ$中心角が等しいのに弦は $1$ と $2$
半径が等しい半径 $5$ と $3$ の円で長さ $6$ の弦弦が等しいのに中心角は約 $73.7^\circ$ と $180^\circ$
どちらも劣弧か半円同じ弦 $AB$ の劣弧($60^\circ$)と優弧($300^\circ$)弦が等しいのに弧と中心角は等しくない
(読み違い)弦は中心角に比例する半径 $1$ で中心角 $60^\circ$ と $120^\circ$中心角は 2 倍でも、弦は $1$ と $\sqrt3$ で 2 倍にならない
中心角 60° のまま半径を 1 から 2 にすると、弦は 1 から 2 になる 中心角 60° のまま半径を 1 から 2 にすると、弦は 1 から 2 になる
同じ弦 AB に対して、中心角 60° の劣弧と 300° の優弧がある 同じ弦 AB に対して、中心角 60° の劣弧と 300° の優弧がある
反例:半径の違う円
  1. 半径 $1$ の円と半径 $2$ の円で、中心角 $60^\circ$ の弧をとる(図 3)。どちらも中心と弦の両端でできる三角形は、2 辺が等しく頂角が $60^\circ$ なので正三角形である。弦の長さは半径と同じで、$1$ と $2$ である。中心角は等しいが、弦は等しくない。弧の長さも $\dfrac\pi3$ と $\dfrac{2\pi}3$ で等しくない。
  2. 逆向きの反例は、半径 $5$ と $3$ の円の長さ $6$ の弦である(表の 2 行目)。
    (2) の確認を開く

    半径 $5$ の円では ex-acc-two-chords のとおり中心角は約 $73.7^\circ$ である。半径 $3$ の円では $6=2\cdot3$ なので弦は直径で、中心角は $180^\circ$ である。弦は等しいが、中心角は等しくない。

    どちらも、prf-acc-main の段 3・段 4 で使った「$OA=O'A'$」が成り立たないため、三角形が合同にならない。
反例:劣弧と優弧を比べる

半径 $1$ の円で $\angle AOB=60^\circ$ となる 2 点 $A$、$B$ をとる(図 4)。弦 $AB$ は 1 本で、長さは $1$ である。この弦に対する弧は、中心角 $60^\circ$ の劣弧と、中心角 $300^\circ$ の優弧の 2 つある。弧の長さは $\dfrac\pi3\fallingdotseq1.05$ と $\dfrac{5\pi}3\fallingdotseq5.24$ である。
つまり「弦が等しい」から「弧が等しい」を言うには、比べる弧を劣弧どうし(または優弧どうし)にそろえる必要がある。thm-acc-main の「どちらも劣弧か半円」という仮定は、このためにある。

反例:弦は中心角に比例しない

弧の長さは中心角に比例する(一般角と弧度法)が、弦の長さは比例しない。半径 $1$ の円で、中心角 $60^\circ$ の弦は $1$、中心角 $120^\circ$ の弦は $\sqrt3\fallingdotseq1.732$ である。中心角を 2 倍にしても、弦は 2 倍の $2$ にならず、それより短い。
一般に、$0^\circ<\theta\le90^\circ$ のとき、2 倍角の公式より
$$ 2r\sin\frac{2\theta}2=2r\sin\theta=2r\cdot2\sin\frac\theta2\cos\frac\theta2=\underbrace{2\cdot2r\sin\frac\theta2}_{\text{中心角 }\theta\text{ の弦の 2 倍}}\cdot\cos\frac\theta2 $$
である。$0^\circ<\dfrac\theta2\le45^\circ$ なので $0<\cos\dfrac\theta2<1$ で、中心角 $2\theta$ の弦は、中心角 $\theta$ の弦の 2 倍より短い。

大学数学で見る:回転と、弦と弧の比

thm-acc-main の背景には、円の 回転対称性 がある。中心 $O$ のまわりの回転は、円を円自身に移し、2 点の距離を変えない。したがって、回転は弧を中心角の等しい弧に、弦を長さの等しい弦に移す。ex-acc-main-check では、角 $\alpha$ の回転で弦 $QP$ が弦 $RS$ に重なった。
逆に、中心角の等しい 2 つの弧は、$O$ を動かさない合同変換(回転と折り返し)で重なる。平面の合同変換の分類は 平面の合同変換の分類、行列での表し方は 回転・鏡映と行列の群 で扱う。

重なることの説明を開く

同じ円の上に中心角の等しい 2 つの劣弧 $AB$、$A'B'$ があるとする。$A$ を $A'$ に移す回転で、$B$ は $A'$ から中心角だけ離れた円周上の点に移る。そのような点は 2 つあり、$B'$ か、$B'$ を直線 $OA'$ で折り返した点である。後者の場合は、さらに直線 $OA'$ に関する折り返しを続ければ $B'$ に移る。『原論』が弧の「等しさ」を重ね合わせで言うのは、この見方と同じである(rem-acc-euclid)。


半径 1 の円で、中心角 θ に対する弧の長さ θ(青)と弦の長さ 2 sin(θ/2)(赤)。θ が小さいと 2 つはほとんど重なる 半径 1 の円で、中心角 θ に対する弧の長さ θ(青)と弦の長さ 2 sin(θ/2)(赤)。θ が小さいと 2 つはほとんど重なる
図 5 は、半径 $1$ の円で、中心角 $\theta$(弧度法)に対する弧の長さ $\theta$ と弦の長さ $2\sin\dfrac\theta2$ を比べたグラフである。$\theta$ が小さいとき 2 つはほとんど同じで、$\theta$ が大きくなるにつれて弦の方が短くなる。

弦と弧の比は $1$ に近づく

弦の長さと弧の長さの比は
$$ \frac{2r\sin\frac\theta2}{r\theta}=\frac{\sin\frac\theta2}{\frac\theta2} $$
で、$\theta\to0$ のとき $\dfrac{\sin x}x\to1$ より $1$ に近づく。$\sin x=x-\dfrac{x^3}6+\cdots$(関数の近似とTaylor展開)を使うと、弧と弦の差は
$$ r\theta-2r\sin\frac\theta2=r\theta-2r\left(\frac\theta2-\frac{\theta^3}{48}+\cdots\right)=\frac{r\theta^3}{24}+\cdots $$
で、$\theta$ の 3 乗の程度の小ささである。曲線の長さを細かい弦の和で近づけるとき(媒介変数表示と曲線の長さ)、この差が小さいことが効いてくる。

弦の長さのグラフの凹凸を開く

$f(\theta)=2\sin\dfrac\theta2$ は $0\le\theta\le\pi$ で上に凸($f''(\theta)=-\dfrac12\sin\dfrac\theta2\le0$)である。図 5 の赤い曲線が弧の長さの直線 $y=\theta$ の下で曲がっていくのはこのためで、ex-acc-cx-proportional の「中心角 2 倍でも弦は 2 倍より短い」も、上に凸で $f(0)=0$ であることから出る($f(\theta)\ge\dfrac{f(0)+f(2\theta)}2=\dfrac{f(2\theta)}2$)。

さらに先へ

  • 同じ弧に対する 円周角 は中心角の半分である。弧・弦・中心角の対応と合わせると、半径の等しい円では、長さの等しい劣弧(したがって長さの等しい弦で、劣弧の側にない点から見るとき)に対する円周角は等しいことが分かる(円周角の定理(高校数学)、円周角の定理)。
  • 中心角の弦の長さ $2r\sin\dfrac\theta2$ を円周角 $\varphi=\dfrac\theta2$ で書くと $2r\sin\varphi$ になる。これは正弦定理 $\dfrac a{\sin A}=2R$ の形である(正弦定理(高校数学))。
  • 対角線が直交する円に内接する四角形では、cor-acc-bisect の「中心から弦に下ろした垂線は弦を 2 等分する」を使って、中心から辺までの距離が対辺の半分になることが示せる(Brahmaguptaの定理(直交対角線))。

関連項目

参考文献

[1]
Euclid, translated with introduction and commentary by Thomas L. Heath, The Thirteen Books of Euclid's Elements, translated with introduction and commentary by T. L. Heath, Vol. II (Books III–IX), Dover Publications, 1956, Vol. II:『原論』第 III 巻 命題 26(pp. 56–58。注を含む)、命題 27(pp. 58–59)、命題 28(pp. 59–60)、命題 29(p. 60。命題 28 への注も p. 60)

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